(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159209
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】車軸トリム高さを制御するためのサスペンション用液圧昇降アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B60G17/015 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058917
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/168,592
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202210157290.5
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】510288840
【氏名又は名称】ベイジンウェスト・インダストリーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJINGWEST INDUSTRIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.85 Puan Road,Doudian Town,Fangshan District,Beijing,The People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ノーバート ボージメンケ
(72)【発明者】
【氏名】アダム マイケル オズワルド
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド フレドリック ロイター
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウィリアム ランディス
(72)【発明者】
【氏名】アール ウェイン ロイド
(72)【発明者】
【氏名】ランドール エル. ディア
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA48
3D301DA33
3D301DB25
3D301DB27
3D301DB35
3D301DB38
3D301DB39
3D301DB42
3D301EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の乗車高さを制御する。
【解決手段】液圧アクチュエータは、ポンプアッセンブリ30と、第一分離弁54と、第二分離弁56とを備える。ポンプアッセンブリは、第一および第二ポンプに連結されるとともに液圧流体を吐出ヘッダ38へ送出するよう構成される電気モータ70を有する。第一分離弁は、エラストマ弁座を有するとともに、高さ調整ダンパ22a,22bと流体連通状態にあるポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される。第二分離弁は、金属弁座を有するとともに、ポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう第一分離弁と直列に接続される。第一ポンプは、液圧流体を供給流体通路から第一吐出ヘッダへと送出する。第二ポンプは、液圧流体を供給流体通路34,35から第二吐出ヘッダへと送出する。再循環弁は、第二吐出ヘッダから供給流体通路への流体フローを選択的に制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプに連結されるとともに液圧流体を吐出ヘッダへと送出するよう構成される電気モータを有するポンプアッセンブリと、
エラストマ弁座を有するとともに、高さ調整ダンパと流体連通状態にあるポートから前記吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される第一分離弁と、
金属弁座を有するとともに、前記ポートから前記吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう前記第一分離弁と直列に接続される第二分離弁と、
を備える車両サスペンションのための液圧アクチュエータ。
【請求項2】
エラストマ弁座を有する第三分離弁と、
金属弁座を有する第四分離弁と、
を更に備えており、
前記第三分離弁と前記第四分離弁とは互いに直列に接続されており、前記第三分離弁と前記第四分離弁とは、それぞれ、第二高さ調整ダンパと流体連通状態にある第二ポートから前記吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成されている、
請求項1に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記吐出ヘッダと前記ポートおよび前記第二ポートのうちの少なくとも一方との間で流体フローを制御することによって前記高さ調整ダンパと前記第二高さ調整ダンパとの間の前記液圧流体の分配を制御するよう構成される、少なくとも一の制御弁を更に備える
請求項2に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記少なくとも一つの制御弁は、前記吐出ヘッダと前記ポートとの間の流体フローを規制するように構成される第一制御弁と、前記吐出ヘッダと前記第二ポートとの間の流体フローを制御するように構成される第二制御弁と、を含む、
請求項3に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記吐出ヘッダからの前記液圧流体のフローを制御することによって前記吐出ヘッダにおける前記液圧流体の圧力を制御するよう構成される圧力制御バルブを更に備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項6】
前記電気モータは、第一ポンプと第二ポンプとに連結され、
前記第一ポンプは、前記液圧流体を供給流体通路から第一吐出ヘッダへと送出するよう構成され、
前記第二ポンプは、前記液圧流体を前記供給流体通路から第二吐出ヘッダへと送出するよう構成されており、
前記液圧アクチュエータは、前記第二吐出ヘッダから前記供給流体通路および前記供給流体通路と流体連通状態にある流体リザーバのうちの少なくとも一方への流体フローを選択的に制御するよう構成されるバイパス再循環弁を更に備える、
請求項1に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項7】
前記第二吐出ヘッダから前記第一吐出ヘッダへと流体を送出すると同時に反対方向の流体フローを遮断するよう構成される逆止弁、および/または
前記第一吐出ヘッダからの前記液圧流体のフローを制御することによって前記第一吐出ヘッダにおける前記液圧流体の圧力を制御するよう構成される圧力制御バルブ
を更に備える、
請求項6に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項8】
エラストマ弁座を有する第三分離弁と、
金属弁座を有する第四分離弁と、
を更に備えており、
前記第三分離弁と前記第四分離弁とは互いに直列に接続されており、前記第三分離弁と前記第四分離弁とは、それぞれ、第二高さ調整ダンパと流体連通状態にある第二ポートから前記第一吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成されている、
請求項6または7に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項9】
前記第一分離弁は、前記第一吐出ヘッダから中間流体通路への流体フローを選択的に遮断するよう構成され、
前記第二分離弁は、前記中間流体通路から前記ポートへの流体フローを選択的に遮断するよう構成されており、
前記液圧アクチュエータは、金属弁座を有するとともに、第二高さ調整ダンパと流体連通状態にある第二ポートから前記中間流体通路への流体フローを選択的に遮断するよう構成される第三分離弁を更に備える、
請求項6または7に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項10】
前記第一ポンプと前記第二ポンプとは互いに異なるフロー特性を有する、かつ/または
前記第一ポンプと前記第二ポンプとは、それぞれが、前記電気モータの標準回転間隔において互いから位相がずれるよう構成されるポンプ要素を有する、かつ/または
前記第一ポンプと前記第二ポンプのうちの少なくとも一方が共通の偏心軸受を介して前記電気モータによって駆動される少なくとも二つのピストンを有する、
請求項6~9のいずれか1項に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項11】
前記電気モータに連結されるとともに前記液圧流体を前記供給流体通路から第三吐出ヘッダへと送出するよう構成される第三ポンプと、
前記第三吐出ヘッダから前記供給流体通路および前記供給流体通路と流体連通状態にある流体リザーバのうちの少なくとも一方への流体フローを選択的に制御するよう構成される第二バイパス再循環弁と、
を更に備える、
請求項6~10のいずれか1項に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項12】
本体を更に備えており、
前記ポンプアッセンブリは前記本体内においてピストンを移動させるよう構成され、
前記第一分離弁と前記第二分離弁とは、高さ調整ダンパへと液圧流体を供給するための少なくとも一のポートへの、前記ポンプアッセンブリからの流体フローを選択的に制御する弁機構に含まれており、
前記弁機構と前記ポンプアッセンブリとは、少なくとも部分的に前記本体内に配置されており、
前記電気モータは、前記本体の第一面に配置され、前記弁機構は、前記第一面と平行でありかつ前記第一面から離間している第二面に配置される、
請求項1に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項13】
前記本体の最上面に配置される流体リザーバを更に備えており、
前記最上面は前記第一面と前記第二面のそれぞれに対して直交している、
請求項12に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項14】
前記第一面は、前記液圧アクチュエータが車両に装着される状態で上方に向いている最上面である、
請求項12に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項15】
前記本体の前記最上面に配置されるとともに前記電気モータに重なる流体リザーバを更に備える、
請求項14に記載の液圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、車両のサスペンション高さを制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗車高さを制御するために、車両のサスペンション高さを制御するための従来のシステムは、全体が液圧システムを有する液圧シリンダ、または全体が空気圧のシステムとしての空気式バネあるいは空気充填ダンパを用いている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、ポンプアッセンブリと、第一分離弁と、第二分離弁とを備える、車両サスペンションのための液圧アクチュエータを提供する。ポンプアッセンブリは、ポンプに連結されるとともに液圧流体を吐出ヘッダへと送出するよう構成される電気モータを有する。第一分離弁は、エラストマ弁座を有するとともに、高さ調整ダンパと流体連通状態にあるポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される。第二分離弁は、金属弁座を有するとともに、ポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう第一分離弁と直列に接続される。
【0004】
本開示は、また、ポンプアッセンブリと、バイパス再循環弁とを備える、車両サスペンションのための液圧アクチュエータを提供する。ポンプアッセンブリは、第一ポンプと第二ポンプとに連結される電気モータを有する。第一ポンプは、液圧流体を供給流体通路から第一吐出ヘッダへと送出するよう構成される。第二ポンプは、液圧流体を供給流体通路から第二吐出ヘッダへと送出するよう構成される。バイパス再循環弁は、第二吐出ヘッダから供給流体通路および供給流体通路と流体連通状態にある流体リザーバのうちの少なくとも一方への流体フローを選択的に制御するよう構成される。
【0005】
本開示は、また、本体と、ポンプアッセンブリと、弁機構とを備える、車両サスペンションのための液圧アクチュエータを提供する。ポンプアッセンブリは、本体内においてピストンを移動させるよう構成される電気モータを有する。弁機構は、高さ調整ダンパへと液圧流体を供給するための少なくとも一のポートへの、ポンプアッセンブリからの流体フローを選択的に制御する少なくとも一の電磁弁を有する。弁機構とポンプアッセンブリとは、少なくとも部分的に本体内に配置される。電気モータは、本体の第一面に配置され、弁機構は、第一面の反対側にある第二面に配置される。第一面と第二面とは互いに直接対向する。
【0006】
本開示は、また、あらゆる構成で、上述した特徴のいずれかを、それぞれの特徴を個別にまたは組み合わせて、備えるサスペンション用液圧昇降システムおよびサスペンション用液圧昇降アクチュエータを提供する。
【0007】
本発明の設計のさらなる詳細、特徴および利点は、添付の図面を参照した以下の実施形態の説明から理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示のサスペンション用液圧昇降システムのブロック図を示す。
【
図2】本開示の第一実施態様にかかるサスペンション用液圧昇降アクチュエータ(SHLA)アッセンブリの概略図を示す。
【
図3A】車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す上昇モードにおける
図2のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図3B】車両を下降させる場合の流体のフロー通路を表す下降モードにおける
図2のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図3C】車両の高さを維持する場合の流体のフロー通路を表す維持モードにおける
図2のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図4A】
図2のSHLAアッセンブリの上面図を示す。
【
図4B】
図2のSHLAアッセンブリの前面図を示す。
【
図4C】
図2のSHLAアッセンブリの側面図を示す。
【
図5A】電気配信センタ(EDC)が取り付けられていない、
図2のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図5B】EDCが所定位置にある、
図2のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図5C】ポンプアッセンブリが取り付けられた状態を示す、
図2のSHLAアッセンブリの他の斜視図を示す。
【
図6】
図2のSHLAアッセンブリのEDCの斜視図を示す。
【
図7】
図2のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリの斜視図を示す。
【
図8】本開示の第二実施態様にかかるサスペンション用液圧昇降アクチュエータ(SHLA)アッセンブリの概略図を示す。
【
図9】
図8のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリにおけるピストンの相対位置を示す概略図である。
【
図10A】
図8のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリにおけるピストンの位置を示す上面図である。
【
図10B】
図8のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリにおけるピストンの位置を示す端面図である。
【
図11】
図8のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリの動作を示すタイミング図である。
【
図12A】低中圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、
図8のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図12B】中高圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、
図8のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図14A】EDCが取り付けられていない、
図8のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図14B】EDCが所定位置にある、
図8のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図14C】ポンプアッセンブリが取り付けられた状態を示す、
図8のSHLAアッセンブリの他の斜視図を示す。
【
図15】
図8のSHLAアッセンブリのEDCの斜視図を示す。
【
図16】
図8のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリの斜視図を示す。
【
図17】本開示の第三実施態様にかかるSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図18A】低圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、
図17のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図18B】中間圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、
図17のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図18C】高圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、
図17のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図20A】EDCが取り付けられていない、
図17のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図20B】EDCが所定位置にある、
図17のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図20C】ポンプアッセンブリが取り付けられた状態を示す、
図17のSHLAアッセンブリの他の斜視図を示す。
【
図21】
図17のSHLAアッセンブリのEDCの斜視図を示す。
【
図22】
図17のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリの斜視図を示す。
【
図23】本開示の第四実施態様にかかるSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図24】EDCが取り付けられていない、
図23のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図25】本開示の第五実施態様にかかるSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図26】
図25のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリにおけるピストンの相対位置を示す概略図である。
【
図27A】
図25のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリにおけるピストンの位置を示す上面図である。
【
図27B】
図25のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリにおけるピストンの位置を示す端面図である。
【
図28】
図25のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリの動作を示すタイミング図である。
【
図29A】低中圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、
図25のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図29B】中高圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、
図25のSHLAアッセンブリの概略図を示す。
【
図31】EDCが取り付けられていない、
図25のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図32A】EDCとリザーバとが取り付けられた、
図25のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図32B】EDCとリザーバとが取り付けられた、
図25のSHLAアッセンブリの斜視図を示す。
【
図33】
図25のSHLAアッセンブリのEDCの斜視図を示す。
【
図34】
図25のSHLAアッセンブリのポンプアッセンブリの斜視図を示す。
【
図35】本開示のいくつかの実施形態のポンプアッセンブリの断面図を示す。
【
図36】本開示のいくつかの実施形態のポンプアッセンブリの偏心軸受の斜視図を示す。
【
図37】本開示のいくつかの実施形態のポンプアッセンブリの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら、本発明を、以下の実施形態に基づいて詳細に説明する。本開示は、一般的な空気式システムではなく油圧(液圧)を用いて車両のサスペンション高さ制御を実現する新たな方法を提供する。このシステム設計では、サスペンショントリム高さを、特別な設計のダンパに印加する圧力を用いて変更できる。圧力が高いほど、車両はより高く上昇する。本開示の各アクチュエータは、液圧の力を一以上の特別な設計の液圧・油圧式ダンパへと印加することによって、車両のコーナーを完全に別々にまたは車軸を独立して昇降させることができる。
【0010】
種々の実施形態のアクチュエータアッセンブリを説明する。こうした設計は、性能、パッケージングおよびコストに対する具体的な顧客の要求に応じて行われる。本開示のアクチュエータアッセンブリは、特定の車両車軸上の二つのダンパに流体を供給するよう設計される。なお、本開示の思想を、車両の任意の構成の任意の数のダンパに流体を供給するよう構成されるアクチュエータアッセンブリにも適用できることを記載しておく。ある実施形態では、アクチュエータアッセンブリを、所定の最小支持圧力(例えば20バール超)までは液圧系に全く漏れが生じない設計要求を満たすよう構成できる。
【0011】
図1は、車両、例えば自動車やトラックを昇降するためのサスペンション用液圧昇降システム10のブロック図を示す。サスペンション用液圧昇降システム10は、サスペンション用液圧昇降アクチュエータ(SHLA)アッセンブリ20,120,220,320,420を有する。SHLAアッセンブリ20,120,220,320,420は、SHLAアッセンブリ20,120,220,320,420の対応する流体供給ポート24a,24bを介して一以上の高さ調整ダンパに加圧された液圧流体を供給するとともにその供給を制御するよう構成される。説明する実施形態においては、SHLAアッセンブリ20,120,220,320,420は、二つの高さ調整ダンパ22a,22bのそれぞれに加圧された液圧流体を供給するとともにその供給を制御するよう構成される。高さ調整ダンパ22a,22bには、右側流体供給ポート24aを介してSHLAアッセンブリ20,120,220,320,420へと流体連通可能に接続される右側ダンパ22aが含まれる。高さ調整ダンパ22a,22bには、また、左側流体供給ポート24bを介してSHLAアッセンブリ20,120,220,320,420へと流体連通可能に接続される左側ダンパ22bが含まれる。それぞれの高さ調整ダンパ22a,22bには、高さセンサHSが取り付けられている。高さ調整ダンパ22a,22bのそれぞれは、車両の共通の車軸における対応する側に連結できる。例えば車両の本体制御(ボディコントロール)モジュール(BCM)としての電子制御ユニット(ECU)26は、SHLAアッセンブリ20,120,220,320,420の動作を制御するための一以上のプロセッサを有する。
図1には、高さ調整ダンパ22a,22bと、車両の後部車軸上の二つの高さ調整ダンパ22a,22bを制御するためのSHLAアッセンブリ20,120,220,320,420の細部と、をのみ示している。なお、サスペンション用液圧昇降システム10は前部車軸の高さを制御するための同様なまたは同一の構成を有することもできる。さらにあるいは任意選択に、本開示のSHLAアッセンブリを、任意の数の高さ調整ダンパ22a,22bに、例えば後部車軸の高さ調整ダンパ22a,22b及び前部車軸の高さ調整ダンパ22c,22d(図示せず)に、四つの高さ調整ダンパ22a,22bに、または他の数の高さ調整ダンパ22xに、加圧された液圧流体を供給するとともにその供給を制御するよう構成することもできる。
【0012】
SHLAアッセンブリ20,120,220,320,420は、ポンプアッセンブリ30,130,230,430と、流体貯留器(リザーバ)32,132,232と、電気配信センタ68,168,268,368,468と、圧力センサ40と、を有する。SHLAアッセンブリ20,120,220,320,420は、また、高さ調整ダンパ22a,22bへのそして高さ調整ダンパ22a,22bからの流体の供給を制御するための複数の制御弁を有する。制御弁の数やタイプ、さらに制御弁の構成は、実施形態毎に異なり、本開示の以降の説明においてより詳細に説明する。
【0013】
図2は、本開示の第一実施態様にかかる第一SHLAアッセンブリ20の概略図を示す。第一SHLAアッセンブリ20は、7バルブ2ポンプアッセンブリとしての特徴を有する。第一SHLAアッセンブリ20は、既存のまたは多少変更した部品を用いることができ、したがって、投資を最小限にでき、安全重視である自動車システムに関して安全が既に証明されている部品を用いることができ、既存の製造設備能力を利用できるといういくつもの利点が得られる。第一SHLAアッセンブリ20は、第一供給流体通路34及び第二供給流体通路35を介して第一流体リザーバ32へと接続される第一ポンプアッセンブリ30を有する。レベルスイッチ36は、第一流体リザーバ32における流体のレベルを監視する。第一ポンプアッセンブリ30は、供給流体通路34,35の少なくとも一方から吐出ヘッダ38内へと流体を圧送する。吐出ヘッダ38を、加圧状態に維持することができる。圧力センサ40は、吐出ヘッダ38内の流体の圧力および/または温度を監視する。
【0014】
圧力制御弁44は、吐出ヘッダ38から供給流体通路34,35の一方への流体フローを選択的に制御する。これにより、圧力制御弁44は、吐出ヘッダ38内の圧力を制御できる。第一セットの制御弁50,54,56は、吐出ヘッダ38と右側流体供給ポート24aとの間の流体フローを制御する。第一セットの制御弁50,54,56には、第一線形(リニア)応答制御弁50と、エラストマシート(弁座)を有する第一分離弁54と、金属シート(弁座)を有する第二分離弁56と、が含まれる。第一線形応答制御弁50は、第一分離弁54及び第二分離弁56と直列に接続される。第一線形応答制御弁50を、通常開いている(NO)電磁弁(ソレノイドバルブ)とできる。第一分離弁54および第二分離弁56を、遮断弁54,56と呼ぶこともできる。第一分離弁54および第二分離弁56を、通常閉じている(NC)電磁弁として構成することもできる。第一逆止弁52は、右側流体供給ポート24aから吐出ヘッダ38への線形応答制御弁50を迂回する流体フローを供給する。同様に、第二セットの制御弁60,64,66は、吐出ヘッダ38と左側流体供給ポート26aとの間の流体フローを制御する。
【0015】
第二セットの制御弁60,64,66には、第二線形応答制御弁60と、エラストマ弁座を有する第三分離弁64と、金属弁座を有する第四分離弁66と、が含まれる。第二線形応答制御弁60は、第三分離弁64及び第四分離弁66と直列に接続される。第二線形応答制御弁60を、通常開いている(NO)電磁弁とできる。第三分離弁64および第四分離弁66を、遮断弁64,66と呼ぶこともできる。第三分離弁64および第四分離弁66を、通常閉じている(NC)電磁弁として構成することもできる。第二逆止弁62は、左側流体供給ポート26aから吐出ヘッダ38へ第二線形応答制御弁60を迂回する流体フローを供給する。
【0016】
第一ポンプアッセンブリ30は、二つの第一圧送要素72を駆動するよう構成される第一電気モータ70を有し、これにより、供給流体通路34,35のうちの少なくとも一方から吐出ヘッダ38へと流体を圧送する。それぞれの第一圧送要素72は、対応する内空部(ボア)において可動である1つのピストンを有する。なお、第一圧送要素72のいずれかまたはすべては、異なる数のピストンおよび/または異なるポンプ構成を有することもできる。それぞれが一のピストンを有する二つの圧送要素を備えるシステムにおいては、過大なノイズを吸収する重複圧力吐出領域がない。そのため、ポンプダンパ孔76a,76bとダンパ室74a,74bとが、それぞれの第一圧送要素72の吐出ポートに接続され、これにより、圧力の脈動を吸収して第一ポンプアッセンブリ30の動作によって生じるノイズを低減する。
【0017】
第一電気配信センタ(EDC)68は、圧力制御弁44と、第一および第二セットの制御弁50,54,56,60,64,66と、第一電気モータ70と、に供給される電力を制御する。第一EDC68は、レベルスイッチ36を介して第一流体リザーバ32の流体レベルを監視する。また、第一EDC68は、圧力センサ40を介して吐出ヘッダ38内の圧力および/または温度を監視する。
【0018】
図2に示す通り、所定の車両車軸の右側ダンパアッセンブリ22aおよび左側ダンパアッセンブリ22bを独立して制御するための、第一SHLAアッセンブリ20を独特な設計とするいくつかの大きな特徴がある。
・圧力制御弁(PCV)44は、通常開いている線形分離弁である。PCV44を作動させるための電流を精度良く制御することによって、システム背圧を精度良く制御できる。
・第二分離弁56および第四分離弁66を、「ほぼ漏れゼロ」とできる金属弁座を有する通常閉じている電磁弁とすることができる。これらの弁56,66により、コーナー間の流体を分離させることによって、ポンプ高圧補充サイクルの数を最小限とできる。
・第一分離弁54および第三分離弁64を、エラストマ弁座を有する通常閉じている電磁弁とすることができる。これら弁はエラストマ弁座を有するので、システム圧力を20バール以上に維持することができ、長期にわたって漏れを防止できる。
・線形応答制御弁50,60を、通常開いている線形印加電磁弁とでき、これにより、右側ダンパ22aと左側ダンパ22bとのバランスを独立して取るよう別々に流れ(フロー)を制御できる。
・車両電子制御ユニット(ECU-V)26を適切にSHLAに接続するよう、電子配信センタ(EDC)68には、種々の部品からのすべての電気のリード線が集まる。
・圧力センサ40は、計算されたポンプ能力対実際のポンプ能力に関するフィードバックを提供し、そして全体的なシステム能力に関する診断に役立てるために、圧力と温度と両方を監視できる。
【0019】
図3Aは、車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、上昇モードにおける
図2の第一SHLAアッセンブリ20の概略図を示す。車両のトリム高さを上昇させるには、第一電気モータ70がオンにされ、全体的なポンプ流量を調整するためにPCV44が完全にまたは部分的に閉じられ、四つの通常閉じている弁54,56,64,66が通電されてフローが可能な状態になり、通常開いている線形応答制御弁50,60がオフの状態(完全に開いた状態)とされ、または、高さ調整ダンパ22a,22bの対応する一方に対する、左側及び右側のフロー分配を制御するため、適切な電流を印加することによって部分的に閉じられる。
【0020】
図3Bは、車両を下降させる場合の流体のフロー通路を表す、下降モードにおける
図2の第一SHLAアッセンブリ20の概略図を示す。車両のトリム高さを下降させるには、四つの通常閉じている弁54,56,64,66が通電されてフローが可能な状態となり、線形応答制御弁50,60がオフとされ(完全に開かれ)、同時に逆止弁52,62も吐出ヘッダ38への迂回フローが完全に可能な状態とされる。PCV44は、完全に開かれる、または第一流体リザーバ32へと戻る吐出流量を制御するよう部分的に通電状態とすることもできる。
【0021】
図3Cは、車両の高さを維持する場合の流体のフロー通路を表す、維持モードにおける第一SHLAアッセンブリ20の概略図を示す。考慮すべき主な事項が二つある。一つは、高い維持圧力でも、漏れを最小限とすることが望ましいことである。もう一つは、20バール未満の圧力では、漏れ率に対する要求はゼロであり、エラストマ弁座でのみ達成可能であることである。そこで、ほぼ漏れゼロである金属弁(プロ・シール)56,66が、エラストマ封止弁(カウンタ・シール)54,64と直列で用いられる。
【0022】
図4A~
図4Cは、第一SHLAアッセンブリ20の種々の外観を示す。7バルブ2ポンプ設計の第一SHLAアッセンブリ20は、非常にコンパクトなパッケージである。単一の偏心軸受を有する2ポンプ横置きモータは、安定制御システムといった他の用途でもよく用いられている。
【0023】
図5Aは、両側(反対側)に二つの大きい正方形の面を有する直方体である第一液圧制御ユニット(HCU)本体80を有するとともに、第一流体リザーバ32が最上部側端部に取り付けられており、第一EDC68が装着されていない第一SHLAアッセンブリ20の斜視図を示す。圧力制御弁44と、第一および第二セットの制御弁50,54,56,60,64,66と、のバルブステムが、第一HCU本体80の同じ(共通の)面から突出している。また、圧力センサ40と、第一電気モータ70とに電力を供給するための一セットの電力リード線82とが、第一HCU本体80の共通の面から突出している。これにより、第一EDC68を第一HCU本体80の共通の面にただ取り付けるだけで、圧力センサ40と第一電気モータ70とを第一EDC68の対応する端子に電気的に接続できる。同様に、第一EDC68は、圧力制御弁44および制御弁50,54,56,60,64,66のステムに対して位置決めされて、第一HCU本体80の共通の面に配置される、第一EDC68でこれらの弁を動作するためのソレノイドコイルを有することもできる。
【0024】
図5Bは、第一EDC68が所定位置にある、第一SHLAアッセンブリ20の斜視図を示す。
図5Cは、第一EDC68が装着されている側とは反対側の第一HCU80の面への、第一ポンプアッセンブリ30の取り付けを示す、第一SHLAアッセンブリ20の他の斜視図を示す。
【0025】
図6は、第一SHLAアッセンブリ20のEDC68の斜視図を示す。EDC68は、ECU26との接続のための配線ケーブルが差し込まれる配線コネクタ86を保持しているハウジング84を有する。また、EDC68は、種々の電気部品と配線コネクタ86との間の電気通信を提供するとともにこれらを保持するプリント回路基板(PCB)88を有する。複数のソレノイドコイル90が、制御弁44,50,54,56,60,64,66を動作させるようPCB88に配置される。また、PCB88は、第一電気モータ70の電力リード線82と圧力センサ40とを配線コネクタ86に電気的に接続するためのコネクタを有することができる。
【0026】
図7は、第一SHLAアッセンブリ20の第一ポンプアッセンブリ30の斜視図を示す。具体的には、
図7は、第一電気モータ70を収容する円筒状のハウジング92を示す。円筒状のハウジング92は、円筒状のハウジング92を第一HCU本体80に保持するための一対の装着耳部93を有する。装着耳部93を、第一HCU本体80にカシメ止めや圧着によって連結することもできる。なお、他の技術を、例えば一以上の締め具および/または接着剤を用いることもできる。第一ポンプアッセンブリ30は、第一電気モータ70によって回転することによって二つの第一圧送要素72を駆動する偏心軸受94を有する。二つの第一圧送要素72は、180度の間隔を空けて偏心軸受94の両側に装着される。
【0027】
図8は、本開示の第二実施態様にかかる第二SHLAアッセンブリ120の概略図を示す。第二SHLAアッセンブリ120は、液圧流体を、第二流体リザーバ132から一以上の供給流体通路34,35を介して圧送するよう構成される第二ポンプアッセンブリ130を有する。第二SHLAアッセンブリ120は、第一吐出ヘッダ38aと第二吐出ヘッダ38bとに分かれている吐出ヘッダ38を有する。第二吐出ヘッダ38bから第一吐出ヘッダ38aへの流体フローを可能とするとともに逆方向の流体フローを遮断する第一逆止弁147が、吐出ヘッダ38a,38bを分離している。第二SHLAアッセンブリ120は、第二吐出ヘッダ38bから第二流体リザーバ132と流体連通状態にある供給流体通路34,35のうちの一方への流体フローを選択的に制御するよう構成される第一ポンプ再循環弁(PRV)146を有する。
【0028】
図8に示す通り、第二ポンプアッセンブリ130は、第二流体リザーバ132から高さ調整ダンパ22a,22bへと吐出ヘッダ38a,38bのうちの少なくとも一方を介して液圧流体を圧送するよう圧送要素を動作させる二つの圧送群(ポンピンググループ)172a,172bに接続される第二電気モータ170を有する。
【0029】
第二SHLAアッセンブリ120は、六つの圧送要素が二つのポンピンググループ172a,172bに配置され、二つの異なるモードで動作可能である8バルブ6-3ポンプアッセンブリとしての特徴を有する。二つのポンピンググループ172a,172bには、第一ポンピンググループ172aと第二ポンピンググループ172bとが含まれる。第一ポンピンググループ172aは、供給流体通路34,35のうちの少なくとも一方から第一吐出ヘッダ38aへと流体を送出するよう並列に接続される三つの圧送要素1A,2A,3Aを有する。第二ポンピンググループ172bは、供給流体通路34,35のうちの少なくとも一方から第二吐出ヘッダ38bへと流体を送出するよう並列に接続される三つの圧送要素1B,2B,3Bを有する。第一ポンピンググループ172aおよび第二ポンピンググループ172bは、ともに、フロー能力を増大するための6ピストン設計である。第一ポンピンググループ172aおよび第二ポンピンググループ172bは、それぞれが三つの異なる圧送要素を有する。それぞれの圧送要素は、対応する内空部において可動であるピストンを有する。なお、第一ポンピンググループ172aおよび/または第二ポンピンググループ172bは、異なる数の圧送要素を有することもできる。
【0030】
より高い出力ポンプを設計する場合の一つの問題は、モータに通電される電流も、能動的に液圧流体を圧送するよう動作しているピストンの数に比例して大きくなることにある。第二SHLAアッセンブリ120の第一ポンピンググループ172aと第二ポンピンググループ172bは、6-3可変出力回路バイパスポンプとしての特徴を有することもできる。通常動作では、六つの圧送要素はすべて、高さ調整ダンパ22a,22bに液圧流体を供給することになる。なお、第一PRV146を開くことによって、第二ポンピンググループ172bの流体出力が、大気圧に近い第二流体リザーバ132へと迂回して戻り、これにより、負荷を大幅に低減し、第一ポンピンググループ172aで高圧で圧送しているモータに通電される電流を低減できる。第二SHLAアッセンブリ120を、第一SHLAアッセンブリ20と同様とすることもできる。第一吐出ヘッダ38aは、第一SHLAアッセンブリ20と同様または同一とできる線形応答制御弁50,60に直接接続される。
【0031】
第二ポンプアッセンブリ130は、供給流体通路34,35の少なくとも一方から吐出ヘッダ38a,38b内へと流体を圧送する。第二ポンプアッセンブリ130は、それぞれが対応しているボア内を移動するピストンを有する六つのポンプ要素を有する。六つのポンプ要素のうちの三つが、二つの吐出ヘッダ38a,38bの対応する一方に流体を供給する。圧力制御弁(PCV)144は、第一吐出ヘッダ38aから供給流体通路34,35の少なくとも一方への流体フローを選択的に制御する。
【0032】
図9は、第二SHLAアッセンブリ120のポンプアッセンブリにおけるピストンの相対位置を示す概略図である。
図9は、六つのポンプ要素を示しているとともに、一連の三つの偏心軸受における各ペアがどのように位置しているかを示している。同様な設計思想が米国特許第7823982号明細書に記載されており、その全体を参照によって援用する。なお、六つの個別のポンプ要素は60度ずつ均等にずらされており、これにより、性能を最適化するとともにノイズを低減できる。
【0033】
図10Aは、第二SHLAアッセンブリ120のポンプアッセンブリにおけるピストンの位置を示す上面図である。また、
図10Bは、第二SHLAアッセンブリ120におけるピストンの位置を示す端面図である。
【0034】
図11は、第二SHLAアッセンブリ120のポンプアッセンブリの動作を示すタイミング図である。ポンプ吐出ノイズは、ポンプサイクルにおけるポンプ吐出が開始される時点で発生する。もし六つの対向するポンプ要素(1A,1B,2A,2B,3A,3B)もしくは四つの対向するポンプ要素(1A,2B,2A,2B)、または一方の側の三つのポンプ要素(1A,2A,3A)が圧送している場合、ある一の吐出サイクルが開始されるときには少なくとも二つの吐出サイクルが常に同時に行われていることになる。吐出サイクルが重複することによって、ポンプ脈動ノイズをそれに応じた瞬間的な増加分だけ低減する。もし二つの対向するポンプ要素のみが圧送している場合、吐出サイクルの重複は生じず、ポンプ脈動ノイズを低減するために他の手段(例えばオリフィスや減衰室(ダンピングチャンバ))が必要となる場合もある。
【0035】
図12Aは、低中圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、第二SHLAアッセンブリ120の概略図を示す。車両のトリム高さを速く上昇させるには、第二電気モータ170がオンにされ、流量を調整するためにPCV144が完全にまたは部分的に閉じられ、四つの通常閉じている弁54,56,64,66が通電されてフローが可能な状態になり、通常開いている線形応答制御弁50,60がオフとされ(完全に開かれ)、または、高さ調整ダンパ22a,22b間の流体フローの分配を制御するため適切な電流を印加することによって部分的に閉じられる。
【0036】
図12Bは、中高圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、第二SHLAアッセンブリ120の概略図を示す。第二電気モータ170に通電される電流を低減し、そしてストールプレッシャ(停止圧力)を大きくするために、第一PRV146は、複数のポンプ要素のうちの半分の負荷を低減し、フローをリザーバに戻るように迂回させるように通電される。このタイプのシステムにおいて圧力が高くなるにつれ、それに対応して非常に大きな流量の必要性が小さくなる。下降および維持機能では、
図3B~
図3Cに関連して上で説明した2ポンプシステムと同様にまたは同一に動作することができる。
【0037】
図13A~
図13Cは、第二SHLAアッセンブリ120の種々の外観を示す。8バルブ6ポンプ型設計の第二SHLAアッセンブリ120は、非常にコンパクトなパッケージである。
【0038】
図14Aは、第二HCU本体180を有する第二SHLAアッセンブリ120の斜視図を示す。第二HCU本体180は、第二SHLAアッセンブリ120の八つの弁と六つの圧送要素とを保持するような大きさおよび構成にされていることを除いて、第一SHLAアッセンブリ20の第一HCU本体80と同様とまたは同一とすることができる。
図14Bは、第二EDC168と第二流体リザーバ132とが第二HCU本体180に装着されている、第二SHLAアッセンブリ120の斜視図を示す。
図14Cは、第二EDC168が装着されている側とは反対側の第二HCU本体180の面への第二ポンプアッセンブリ130の取り付けを示す、第二SHLAアッセンブリ120の他の斜視図を示す。
図15は、第二SHLAアッセンブリ120の第二EDC168の斜視図を示す。
図16は、第二SHLAアッセンブリ120の第二ポンプアッセンブリ130の斜視図を示す。
【0039】
図17は、本開示の第三実施態様にかかる第三SHLAアッセンブリ220の概略図を示す。第三SHLAアッセンブリ220は、
図8の第二SHLAアッセンブリ120と同様であり、第三吐出ヘッダ38cが追加されている。第三SHLAアッセンブリ220は、第三流体リザーバ232から液圧流体を一以上の供給流体通路34,35を介して圧送するよう構成される第三ポンプアッセンブリ230を有する。
【0040】
第三SHLAアッセンブリ220は、六つのポンピング要素が三つのポンピンググループ272a,272b,272cに配置され、三つの異なるモードで動作可能である9バルブ6-4-2ポンプアッセンブリとしての特徴を有する。三つのポンピンググループ272a,272b,272cは、それぞれが、二つの圧送要素を有する。それぞれの圧送要素は、液圧流体を送出するよう、内空部において可動であるピストンを有する。ポンピンググループが、(第二SHLAアッセンブリ120のように)三つからなるグループの出口において一つにつながっているのではなく、ポンプ出口は二つからなるグループで一つにつながっている。より具体的には、それぞれのグループの二つの圧送要素はポンプ出力シャフト上の対応する共通の偏心軸受に連結される。この機構には二つの利点がある。1)ポンプ要素のうちの二つあるいは四つからの出力フローが迂回してリザーバに戻ることができる点と、2)複数のポンプ偏心軸受をここでは異なるオフセットとできる点と、である。これにより、メカニカルアドバンテージを変えることができ、高圧においてモータを高速で動作させることができ、その結果として効率を高め、通電される電流を小さくできるというさらなる利点が得られる。
【0041】
図17に示す通り、第三SHLAアッセンブリ220は、三つの吐出ヘッダ38a,38b,38cと、三つのポンピンググループ272a,272b,272cのそれぞれに連結されてそれらの圧送要素を駆動する第三電気モータ270と、を有する。具体的には、三つのポンピンググループ272a,272b,272cには、第三ポンピンググループ272aと第四ポンピンググループ272bと第五ポンピンググループ272cとが含まれる。第三ポンピンググループ272aは、供給流体通路34,35のうちの少なくとも一方から第一吐出ヘッダ38aへと流体を送出するよう構成される二つの圧送要素を有する。第四ポンピンググループ272bは、供給流体通路34,35のうちの少なくとも一方から第二吐出ヘッダ38bへと流体を送出するよう構成される二つの圧送要素を有する。第五ポンピンググループ272cは、供給流体通路34,35のうちの少なくとも一方から第三吐出ヘッダ38cへと流体を送出するよう構成される二つの圧送要素を有する。それぞれの圧送要素は、対応する内空部において可動であるピストンを有する。なお、ポンピンググループ272a,272b,272cのいずれかまたはすべては、異なる数の圧送要素を有することもできる。
【0042】
三つのポンピンググループ272a,272b,272cのフロー特性を互いに異なる特性とすることができる。例えば、第三ポンピンググループ272aの圧送要素のフローを第四ポンピンググループ272bの圧送要素のフローの0.8倍とするよう構成し、第五ポンピンググループ272cの圧送要素のフローを第四ポンピンググループ272bの圧送要素のフローの1.2倍とするよう構成できる。これらは単なる例であって、三つのポンピンググループ272a,272b,272cのフロー特性をこれらとは異なる特性とすることもできる。
【0043】
第二SHLAアッセンブリ120と同様にまたは同一に、第三SHLAアッセンブリ220は、第二吐出ヘッダ38bから第三流体リザーバ232と流体連通状態にある供給流体通路34,35のうちの一方への流体フローを選択的に制御するよう構成される第一PRV146を有する。また、第三SHLAアッセンブリ220は、第三吐出ヘッダ38cから第三流体リザーバ232と流体連通状態にある供給流体通路34,35のうちの一方への流体フローを選択的に制御するよう構成される第二PRV246を有する。
【0044】
第一逆止弁147は、第一吐出ヘッダ38aと第二吐出ヘッダ38bとを分離するとともに、第二吐出ヘッダ38bから第一吐出ヘッダ38aへの流体フローを可能とし同時に逆方向の流体フローを遮断する。第二逆止弁247は、第一吐出ヘッダ38aと第三吐出ヘッダ38cとを分離するとともに、第三吐出ヘッダ38cから第一吐出ヘッダ38aへの流体フローを可能とし同時に逆方向の流体フローを遮断する。
【0045】
図17に示す通り、第三SHLAアッセンブリ220は、
図8に示した第二SHLAアッセンブリ120の制御弁と同様にまたは同一に構成される第一セットおよび第二セットの制御弁50,54,56,60,64,66を有する。
【0046】
図18Aは、低圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、第三SHLAアッセンブリ220の概略図を示す。車両のトリム高さを速く上昇させるには、ポンプモータがオンにされ、流量を調整するためにPCVが完全にまたは部分的に閉じられ、四つの通常閉じている制御弁54,56,64,66が通電されてフローが可能な状態になり、通常開いている制御弁50,60がオフとされ(完全に開かれ)、または、右側および左側の高さ調整ダンパ22a,22b間の流体フローの分配を制御するため(例えば適切な電流を印加することによって)部分的に閉じられる。
【0047】
図18Bは、中間圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、第三SHLAアッセンブリ220の概略図を示す。モータに通電される電流を低減し、停止圧力を大きくするために、第二ポンプ再循環弁246は、複数のポンプ要素のうちの三分の一の負荷を低減し、そしてフローをリザーバへと戻るよう迂回させるように通電される。このタイプのシステムにおいて圧力が高くなるにつれ、それに対応して非常に大きな流量の必要性が小さくなる。
【0048】
図18Cは、高圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、第三SHLAアッセンブリ220の概略図を示す。モータに通電される電流をさらに低減し、停止圧力を大きくするために、第一ポンプ再循環弁146および第二ポンプ再循環弁246は、複数のポンプ要素のうちの三分の二の負荷を低減し、フローをリザーバへと戻るよう迂回させるように通電される。このタイプのシステムにおいて圧力が高くなるにつれ、それに対応して非常に大きな流量の必要性が小さくなる。下降および維持機能では、
図3B~
図3Cに関連して上で説明した2ポンプシステムと同様にまたは同一に動作することができる。
【0049】
図19A~
図19Cは、第三SHLAアッセンブリ220の種々の外観を示す。8バルブ6ポンプ設計の第三SHLAアッセンブリ220は、非常にコンパクトなパッケージである。リザーバの大きさを所定の用途のパッケージングに合わせることもできる。
【0050】
図20Aは、第三HCU本体280を有する第三SHLAアッセンブリ220の斜視図を示す。第三HCU本体280は、第三SHLAアッセンブリ220のポンピンググループ272a,272b,272cにおける九つの弁と六つの圧送要素とを保持するような大きさおよび構成にされていることを除いて、第二SHLAアッセンブリ120の第一HCU本体180と同様または同一とすることができる。
図20Bは、第三EDC268と第三流体リザーバ232とが第三HCU本体280に装着されている、第三SHLAアッセンブリ220の斜視図を示す。
図20Cは、第三EDC268が装着されている側とは反対側の第三HCU本体280の面への第三ポンプアッセンブリ230の取り付けを示す、第三SHLAアッセンブリ220の他の斜視図を示す。
図21は、第三SHLAアッセンブリ220の第三EDC268の斜視図を示す。第三HCU本体280は、9バルブ6-4-2ポンプアッセンブリであり、パッケージング空間を最小限にできる。二つのポンプ要素が15度の角度でオフセットしていることを除いて、他のすべての穴が、第三HCU本体280の面に対して直交しており、したがって、多数が直交していない従来の設計と比べて機械加工コストを低減できる。
図22は、図示のために第三HCU本体280が装着されていない、第三SHLAアッセンブリ220の第三ポンプ230の斜視図を示す。
【0051】
図23は、本開示の第四実施態様にかかる第四SHLAアッセンブリ320の概略図を示す。第四SHLAアッセンブリ320は、三つの異なるモードで動作可能である六つのポンプを有する7バルブ6-4-2ポンプアッセンブリとしての特徴を有する。第四SHLAアッセンブリ320は、通常開いている(NO)線形応答制御弁50,60がないことを除いて、第三SHLAアッセンブリ220と同様とすることができる。通常開いている(NO)線形応答制御弁50,60が備えられていないので、所定の車軸における横(左右)方向のフロー制御が必要でない場合のコストを低減することができる。他のすべての機能を同一とできる。
図24は、第四HCU本体380を有する第四SHLAアッセンブリ320の斜視図を示す。第四HCU本体380は、四二SHLAアッセンブリ320の七つの弁と六つのポンピンググループ272a,272b,272cとを保持するような大きさおよび構成にされていることを除いて、第三SHLAアッセンブリ220の第三HCU本体280と同様とまたは同一とすることができる。
【0052】
図25は、本開示の第五実施態様にかかる第五SHLAアッセンブリ420の概略図を示す。第五SHLAアッセンブリ420は、ここで説明するいくつかの変更を除いて、
図8の第二SHLAアッセンブリ120と同様である。
【0053】
第五SHLAアッセンブリ420は、四つのポンピング要素が二つのポンピンググループ472a,472bに配置されて二つの異なるモードで動作可能である5バルブ4-2ポンプアッセンブリとしての特徴を有する。第五SHLAアッセンブリ420は、横方向のフロー制御が必要ない場合、ベースとなる2ポンプの設計と比較して流量を大きくできる。第五SHLAアッセンブリ420では、他の実施形態において用いられる二つの通常閉じている弁54,56または64,66を、エラストマシールを有する一つの通常閉じている弁に統合するよう置き換える。
【0054】
図25の第五SHLAアッセンブリ420は、第六ポンピンググループ472aと第七ポンピンググループ472bとに配置される四つの圧送要素を駆動するよう構成される第五電気モータ470を有する第四ポンプアッセンブリ430を有する。第六ポンピンググループ472aおよび第七ポンピンググループ472bは、それぞれ、液圧流体を吐出ヘッダ38a,38bの対応する一方へと送出するよう構成される一以上の圧送要素を有する。それぞれの圧送要素は、対応する内空部において可動であるピストンを有する。なお、第六ポンピンググループ472aおよび/または第七ポンピンググループ472bは、異なる数の圧送要素を有することもできる。
【0055】
第五SHLAアッセンブリ420は、エラストマ弁座を有するとともに第一吐出ヘッダ38aから中間流体通路455への流体フローを選択的に遮断するよう構成される第一分離電磁弁454を有する。金属弁座を有する第二分離電磁弁456は、第一分離電磁弁454と直列に接続されており、中間流体通路455から右側流体供給ポート24aへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される。
【0056】
また、第五SHLAアッセンブリ420は、金属弁座を有するとともに中間流体通路455から左側流体供給ポート24bへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される第三分離電磁弁466を有する。
【0057】
分離電磁弁454,456,466は通常閉じている弁であるが、通常開いている弁を分離電磁弁454,456,466のうちのいずれかまたは全てに用いることもできる。
【0058】
図26は、
図25の第五SHLAアッセンブリ420のポンプアッセンブリにおけるピストンの相対位置を示す概略図である。最大ポンピング効率と耐久性のために、それぞれのセットのポンプを別の偏心軸受アッセンブリによって駆動することもできる。これにより、対向するピストンが同時に高圧を受けることによって抵抗が大きくなることを防止できる。
【0059】
図27Aは、第五SHLAアッセンブリ420のポンプアッセンブリにおけるピストンの位置を示す上面図である。
図27Bは、第五SHLAアッセンブリ420におけるピストンの位置を示す端面図である。
【0060】
図28は、第五SHLAアッセンブリ420のポンプアッセンブリの動作を示すタイミング図である。吐出は、典型的には下死点後約30度で開始される。次のポンプ要素吐出サイクルの開始を合わせる(center)には、75度のオフセットが必要となる。これにより、常に、第二ポンプ要素が吐出している間に、他方のポンプ要素に吐出サイクルを開始させることができる。ポンプ吐出ノイズは、ポンプサイクルにおけるポンプ吐出が開始される時点で発生する。適切なオフセットによって、四つの対向するポンプ要素が圧送している場合、ある一の吐出サイクルが開始されるときには少なくとも二つの吐出サイクルが常に同時に行われていることになる。吐出サイクルが重複することによって、ポンプ脈動ノイズを低減できる。もし圧送が二つの対向するポンプ要素のみで行われる場合、吐出サイクルの重複は生じず、ポンプ脈動ノイズを低減するために他の手段(例えばオリフィスや減衰室(ダンピングチャンバ))が必要となる場合もある。
【0061】
図29Aは、低中圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、第五SHLAアッセンブリ420の概略図を示す。車両のトリム高さを速く上昇させるには、ポンプモータがオンにされ、流量を調整するためにPCVが完全にまたは部分的に閉じられ、通常閉じている弁が通電されてフローが可能な状態になる。
【0062】
図29Bは、中高圧で車両を上昇させる場合の流体のフロー通路を表す、第五SHLAアッセンブリ420の概略図を示す。モータに通電される電流を低減し、停止圧力を大きくするために、ポンプ再循環弁146もまた、複数のポンプ要素のうちの半分の負荷を低減しそしてフローをリザーバへと戻るよう迂回させるように通電される。このタイプのシステムにおいて圧力が高くなるにつれ、それに対応して非常に大きな流量の必要性が小さくなる。下降および維持機能では、
図3B~
図3Cに関連して上で説明した2ポンプシステムと同様にまたは同一に動作することができる。
【0063】
図30A~
図30Cは、第五SHLAアッセンブリ420の種々の外観を示す。5バルブ4ポンプ設計の第五SHLAアッセンブリ420は、非常にコンパクトなパッケージである。リザーバの大きさを所定の用途のパッケージングに合わせることもできる。4ポンプ横置きモータは、パッケージ空間を小さくするために15度オフセットを用いている。
【0064】
図31は、第四ポンプアッセンブリ430が取り付けられた第五HCU本体480を有する第五SHLAアッセンブリ420の斜視図を示す。第五HCU本体480は、第五SHLAアッセンブリ420に配置される五つの弁と四つの圧送要素とを保持するような大きさおよび構成にされていることを除いて、第一SHLAアッセンブリ20の第一HCU本体80と同様とまたは同一とすることができる。
図32Aは、第五EDC468と第五流体リザーバ432とが取り付けられた第五SHLAアッセンブリ420の斜視図を示す。具体的には、第五流体リザーバ432は、第四ポンプアッセンブリ430の最上部を跨ぐようにかつ全体にわたって広がるように、第四ポンプアッセンブリ430の最上部面に取り付けられる。第五EDC468は、第四ポンプアッセンブリ430とは反対側にある第五HCU本体480の底面に取り付けられる。
図32Bは、第五EDC468とリザーバとが取り付けられた第五SHLAアッセンブリ420他の斜視図を示す。
図33は、第五EDC468の斜視図を示す。
図34は、第五SHLAアッセンブリ420の第四ポンプアッセンブリ430の斜視図を示す。
図34に示す4ポンプの設計は、パッケージ空間を節約するために、15°の角度オフセットで配置された二つの偏心軸受94とポンプをと有する。
【0065】
図35は、ウェットサンプ設計として構成される第三ポンプアッセンブリ230の断面図を示す。図に示す通り、第三ポンプアッセンブリ230は、一対の第一モータ軸受474によって回転可能に支持される第一モータシャフト472を有する第三電気モータ270を有する。第一モータ軸受474は、比較的簡単かつ/または安価な装置、例えばすべり軸受やブッシュを有することができる。第三電気モータ270は、第三ポンプアッセンブリ230の他の部品を有する第五HCU本体480の面に取り付けられる。第一モータシャフト472は、シャフトシール476を貫通して、HCU本体480内に形成される第一ポンプボア482内へと延設される。第一ポンプボア482には、少なくとも部分的に、オイル等の流体を充填できる。シャフトシール476によって、第三電気モータ270の巻き線等の電気部品と液体が接触することを防止できる。第五HCU本体480には、水抜き孔484がシャフトシール476のモータ側に形成される。水抜き孔484によって、シャフトシール476を通り抜けて入ってしまった他の液体が排水され、そのような液体が第三電気モータ270に溜まってしまうことを防止している。
【0066】
また、第三ポンプアッセンブリ230は、第一ポンプボア482内に配置されるとともに第一モータシャフト472によって回転されるよう構成されるほぞ(スタブ)シャフト486を有する。スタブシャフト486は、一対の支持軸受488によって第一ポンプボア482内で支持される。支持軸受488の一方はスタブシャフト486の一方の軸方向端部に配置される。それぞれの支持軸受488は、第五HCU本体480に囲繞されている。それぞれの支持軸受488は玉軸受(ボールベアリング)を有することができる。偏心軸受94は、適切な120度の角度間隔でスタブシャフト486へと圧入される。スタブシャフトアッセンブリは、工場内で組み立てることができ、第五HCU本体480内へと圧入されるまたはかしめられる。二つの支持軸受488がピストンからの側方負荷を受けているので、第三電気モータ270は、高価なボールベアリングを必要としない。ガタツキ防止バネ492を有する例えば六角ピンで示すドライバピン490によって、第一モータシャフト472とスタブシャフト486との間の接続が行われ、これにより、第一モータシャフト472によって回転可能に駆動されるようスタブシャフト486を連結する。シャフトシール476は、第一ポンプボア482内のポンプサンプ領域に液体を部分的にまたは完全に充填できるようリップシールを有することもできる。
【0067】
図36は、本開示のポンプアッセンブリ30,130,230,430の偏心軸受94の斜視図を示す。偏心軸受94を、市場で入手可能な偏心ブッシング95を含む偏心ローラベアリングとすることもできる。偏心ブッシング95を、スタブシャフト486等の適切な大きさのシャフトに圧入できる。
【0068】
図37は、ドライサンプ設計の第六ポンプアッセンブリ530の断面図を示す。第六ポンプアッセンブリ530のドライサンプ設計を、本開示のポンプアッセンブリ30,130,230,430のいずれにも適用できる。第六ポンプアッセンブリ530は、いくつかを除いて、
図36に示した第三ポンプアッセンブリ230と同様とできる。偏心軸受94をオイル等の潤滑流体に浸すことなく、第六ポンプアッセンブリ530は乾燥(ドライ)状態で動作するよう構成できる。
【0069】
図に示す通り、第六ポンプアッセンブリ530は、第二モータ軸受574と第三モータ軸受575とによって回転可能に支持される第二モータシャフト572を有する第六モータ570を有する。第二モータ軸受574および第三モータ軸受575はそれぞれ、偏心軸受94と作用するピストンによって生じる負荷とトルクとを支持するボールベアリングを有する。第六電気モータ570は、第六ポンプアッセンブリ530の他の部品を有する第六HCU本体580の面に取り付けられる。第六HCU本体580には、第六電気モータ570に隣接する支持軸受488を備えていないことを除いて第五HCU本体480の第一ポンプボア482と同様とできる第二ポンプボア582が形成される。したがって、第二ポンプボア582を第一ポンプボア482より短くできる。
【0070】
第二モータシャフト572は第二ポンプボア582を通って延設され、その先端部でパイロットボール軸受584によって支持される。偏心軸受94は、適切な120度の角度間隔で第二モータシャフト572へと圧入されるとともに第三モータ軸受575とパイロットボール軸受584との間で軸方向に配置される。ドライサンプ設計では、一体オフセットブッシングを有する偏心軸受94は、上述の通り、第二モータシャフト572に圧入される。この設計では、モータシャフト572がワンピース(一体的)モータシャフトであるので、特に第二モータシャフト572の背部を支持することができない場合に、第六電気モータ570が製造されるときにモータ軸受574,575を取り付けることができる。第六電気モータ570のメイン軸受とも呼ぶことができる第三モータ軸受575を、流体が入り込むことを防止するよう封止することができる。
【0071】
車両サスペンションのための液圧アクチュエータは、ポンプアッセンブリと、第一分離弁と、第二分離弁と、を備える。ポンプアッセンブリは、ポンプに連結されるとともに液圧流体を吐出ヘッダへと送出するよう構成されるモータを有する。第一分離弁は、エラストマ弁座(seat)を有するとともに、高さ調整ダンパと流体連通状態にあるポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される。第二分離弁は、金属弁座(seat)を有するとともに、ポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう第一分離弁と直列に接続される。ポンプは、第一ポンプアッセンブリ30の一以上の第一圧送要素72を有することができる。任意選択的に、または、加えて、ポンプは、第二ポンプアッセンブリ130の、第一ポンピンググループ172aおよび/または第二ポンピンググループ172bを有することができる。任意選択的に、または、加えて、ポンプは、第三ポンプアッセンブリ230の、第三ポンピンググループ272a、第四ポンピンググループ272b、および/または第五ポンピンググループ272cを有することができる。任意選択的に、または、加えて、ポンプは、第四ポンプアッセンブリ430の、第六ポンピンググループ472aおよび/または第七ポンピンググループ472bを有することができる。
【0072】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、エラストマ弁座を有する第三分離弁と、金属弁座を有する第四分離弁と、を有する。第三分離弁と第四分離弁とは互いに直列に接続されており、第三分離弁と第四分離弁とは、それぞれ、第二高さ調整ダンパと流体連通状態にある第二ポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される。
【0073】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、吐出ヘッダと、ポートおよび第二ポートのうちの少なくとも一方との間で流体フローを制御することによって、高さ調整ダンパと第二高さ調整ダンパとの間の液圧流体の分配を制御するよう構成される、少なくとも一の制御弁を有する。
【0074】
ある実施形態では、少なくとも一つの制御弁には、吐出ヘッダとポートとの間の流体フローを制御するように構成される第一制御弁と、吐出ヘッダと第二ポートとの間の流体フローを制御するように構成される第二制御弁と、が含まれる。
【0075】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、吐出ヘッダからの液圧流体のフローを制御することによって、吐出ヘッダにおける液圧流体の圧力を制御するよう構成される圧力制御バルブを有する。
【0076】
車両サスペンションのための液圧アクチュエータは、ポンプアッセンブリと、バイパス再循環弁と、を備える。ポンプアッセンブリは、第一ポンプと第二ポンプとに連結される電気モータを有する。第一ポンプは、液圧流体を供給流体通路から第一吐出ヘッダへと送出するよう構成される。第二ポンプは、液圧流体を供給流体通路から第二吐出ヘッダへと送出するよう構成される。バイパス再循環弁は、第二吐出ヘッダから、供給流体通路および供給流体通路と流体連通状態にある流体リザーバのうちの少なくとも一方への流体フローを選択的に制御するよう構成される。第一ポンプは、例えば、第二SHLAアッセンブリ120の第一ポンピンググループ172aを有することができる。任意選択的に、または、加えて、第一ポンプは、第三ポンプアッセンブリ230の第三ポンピンググループ272aを有することができる。任意選択的に、または、加えて、第一ポンプは、第四ポンプアッセンブリ430の第六ポンピンググループ472aを有することができる。第二ポンプは、例えば、第二ポンプアッセンブリ130の第二ポンピンググループ172bを有することができる。任意選択的にまたは加えて、第二ポンプは、第三ポンプアッセンブリ230の第四ポンピンググループ272bを有することができる。任意選択的に、または、加えて、第二ポンプは、第四ポンプアッセンブリ430の第七ポンピンググループ472bを有することができる。バイパス再循環弁は、例えば、第一PRV146を有することができる。
【0077】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、第二吐出ヘッダから第一吐出ヘッダへと流体を送出すると同時に反対方向の流体フローを遮断するよう構成される逆止め弁を有する。
【0078】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、第一吐出ヘッダからの液圧流体のフローを制御することによって、第一吐出ヘッダにおける液圧流体の圧力を制御するよう構成される圧力制御バルブを有する。
【0079】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、高さ調整ダンパと流体連通状態にあるポートから吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される少なくとも一の分離弁を有する。
【0080】
ある実施形態では、少なくとも一の分離弁には、エラストマ弁座を有する第一分離弁と、金属弁座を有するとともに第一分離弁と直列に接続される第二分離弁と、が含まれる。
【0081】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、エラストマ弁座を有する第三分離弁と、金属弁座を有する第四分離弁と、を有する。第三分離弁と第四分離弁とは互いに直列に接続されており、第三分離弁と第四分離弁とは、それぞれ、第二高さ調整ダンパと流体連通状態にある第二ポートから第一吐出ヘッダへの流体フローを選択的に遮断するよう構成される。
【0082】
ある実施形態では、少なくとも一の分離弁には、エラストマ弁座を有するとともに第一吐出ヘッダから中間流体通路への流体フローを選択的に遮断するよう構成される第一分離弁と、金属弁座を有するとともに中間流体通路からポートへの流体フローを選択的に遮断するよう第一分離弁と直列に接続される第二分離弁と、が含まれる。ある実施形態では、液圧アクチュエータは、さらに、金属弁座を有するとともに、第二高さ調整ダンパと流体連通状態にある第二ポートから中間流体通路への流体フローを選択的に遮断するよう構成される第三分離弁を有する。
【0083】
ある実施形態では、第一ポンプと第二ポンプとは互いに異なるフロー特性を有する。
【0084】
ある実施形態では、第一ポンプと第二ポンプとは、それぞれが、電気モータの標準回転間隔(regular rotational intervals)において互いから位相がずれるよう構成されるポンプ要素を有する。
【0085】
ある実施形態では、第一ポンプと第二ポンプのうちの少なくとも一方が共通の偏心軸受を介して電気モータによって駆動される少なくとも二つのピストンを有する。
【0086】
ある実施形態では、液圧アクチュエータは、電気モータに連結されるとともに液圧流体を供給流体通路から第三吐出ヘッダへと送出するよう構成される第三ポンプと、第三吐出ヘッダから、供給流体通路および供給流体通路と流体連通状態にある流体リザーバのうちの少なくとも一方への、流体フローを選択的に制御するよう構成される第二バイパス再循環弁と、を有する。第三ポンプは、例えば、第三ポンプアッセンブリ230の第五ポンピンググループ272bを有することができる。第二バイパス再循環弁は、例えば、第二PRV246を有することができる。
【0087】
車両サスペンションのための液圧アクチュエータは、本体と、ポンプアッセンブリと、弁機構と、を備える。ポンプアッセンブリは、本体内においてピストンを移動させるよう構成される電気モータを有する。弁機構は、高さ調整ダンパへと液圧流体を供給するための少なくとも一のポートへの、ポンプアッセンブリからの流体フローを選択的に制御する少なくとも一の電磁弁を有する。ある実施形態では、弁機構とポンプアッセンブリとは、少なくとも部分的に本体内に配置されており、電気モータは、本体の第一面に配置されるとともに、弁機構は、第一面と平行でありかつ第一面から離間している第二面に配置される。このような配置の例は、
図4A~
図4C、
図5A~
図5C、
図13A~
図13C、
図14B~
図14C、
図19A~
図19C、
図20B~
図20C、
図30A~
図30Cおよび
図32A~
図32Bに示されている。
【0088】
【0089】
以上の説明は、他を排除するものではなく、本開示を限定するものではない。特定の実施形態のそれぞれの要素または特徴はその特定の実施形態に必ずしも限定されるものではなく、特段の定めや記載がない限り、適用可能な場合には実施形態間で置き換え可能である。それぞれの要素または特徴は、種々の変形が可能である。このような変形は、本開示から逸脱するものではなく、このような変更はすべて本開示の範囲内にある。
【符号の説明】
【0090】
1A 圧送要素
1B 圧送要素
2A 圧送要素
2B 圧送要素
3A 圧送要素
3B 圧送要素
10 サスペンション用液圧昇降システム
20 第一SHLAアッセンブリ
22a 右側高さ調整ダンパ
22b 左側高さ調整ダンパ
24a 右側流体供給ポート
24b 左側流体供給ポート
26 電子制御ユニット(ECU)
26a 左側流体供給ポート
30 第一ポンプアッセンブリ
32 第一流体リザーバ
34 第一供給流体通路
35 第二供給流体通路
36 レベルスイッチ
38a 第一吐出ヘッダ
38b 第二吐出ヘッダ
38c 第三吐出ヘッダ
38 吐出ヘッダ
40 圧力センサ
44 圧力制御弁
50 第一線形応答制御弁
52 第一逆止弁
54 第一分離弁
56 第二分離弁
60 第二線形応答制御弁
62 第二逆止弁
64 第三分離弁
66 第四分離弁
68 第一電気配信センタ(EDC)
70 第一電気モータ
72 第一圧送要素
74a ダンパ室
74b ダンパ室
76a ポンプダンパ孔
76b ポンプダンパ孔
80 第一液圧制御ユニット(HCU)本体
82 電力リード線
84 ハウジング
86 配線コネクタ
88 プリント回路基板(PCB)
90 ソレノイドコイル
92 ハウジング
93 装着耳部
94 偏心軸受
95 偏心ブッシング
120 第二SHLAアッセンブリ
130 第二ポンプアッセンブリ
132 第二流体リザーバ
144 圧力制御バルブ(PCV)
146 第一ポンプ再循環弁
147 第一逆止弁
168 第二電気配信センタ(EDC)
170 第二電気モータ
172a 第一ポンピンググループ
172b 第二ポンピンググループ
180 第二液圧制御ユニット(HCU)本体
220 第三SHLAアッセンブリ
230 第三ポンプアッセンブリ
232 第三流体リザーバ
246 第二ポンプ再循環弁
247 第二逆止弁
268 第三電気配信センタ(EDC)
270 第三電気モータ
272a 第三ポンピンググループ
272b 第四ポンピンググループ
272c 第五ポンピンググループ
280 第三液圧制御ユニット(HCU)本体
320 第四SHLAアッセンブリ
368 電気配信センタ(EDC)
380 第四液圧制御ユニット(HCU)本体
420 第五SHLAアッセンブリ
430 第四ポンプアッセンブリ
432 第五流体リザーバ
454 第一分離電磁弁
455 中間流体通路
456 第二分離電磁弁
466 第三分離電磁弁
468 第五電気配信センタ(EDC)
470 第五電気モータ
472a 第六ポンピンググループ
472b 第七ポンピンググループ
472 第一モータシャフト
474 第一モータ軸受
476 シャフトシール
480 第五液圧制御ユニット(HCU)本体
482 第一ポンプボア
484 水抜き孔
486 スタブシャフト
488 支持軸受
490 ドライバピン
492 ガタツキ防止バネ
530 第六ポンプアッセンブリ
570 第六電気モータ
572 第二モータシャフト
574 第二モータ軸受
575 第三モータ軸受
580 第六液圧制御ユニット(HCU)本体
582 第二ポンプボア
584 パイロットボール軸受