IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジーの特許一覧

特開2022-159224添加剤供給部を備えたスライバドラフト装置
<>
  • 特開-添加剤供給部を備えたスライバドラフト装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159224
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】添加剤供給部を備えたスライバドラフト装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 13/30 20060101AFI20221006BHJP
   D01H 5/22 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
D01H13/30
D01H5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022059817
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】LU102753
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァイデ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA21
4L056AA23
4L056BA01
4L056BC01
4L056CA02
4L056CC01
4L056CC08
4L056CC09
4L056CC12
4L056FC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単でより廉価、かつメンテナンスのより少ない添加剤供給の可能性を提供し、紡績ユニットもしくは紡績機をより廉価に製造し運転すること。
【解決手段】紡績準備機のためのスライバドラフト装置1と、紡績準備装置と、スライバの貯蔵装置と、紡績機において引き続き加工するためのスライバ2に添加剤を施与する方法であって、紡績準備機のためのスライバドラフト装置は、スライバを受け取るスライバ入口3と、スライバの搬送方向で、受け取ったスライバをドラフトするためのローラ対により画定されている少なくとも1つのドラフト兼延伸域4と、後置されたスライバ加工装置に向かう方向で、ドラフトされたスライバを導出するスライバ出口6とを備えており、スライバに添加剤を施与するための添加剤供給装置が、スライバ入口およびスライバ出口によって囲まれた領域7a,7b、7cに配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績準備機、特にカーディング機または練条機のためのスライバドラフト装置(1)であって、
-延在方向に沿って互いに平行に位置調整され、纏められて定義された厚さおよび密度の帯を形成する定義された長さの定義された量の個別繊維から形成されている少なくとも1つのスライバ(2)を受け取るスライバ入口(3)と、
-前記スライバ(2)の搬送方向で、受け取った前記スライバ(2)をドラフトするローラ対(5a,5b,5c)によって画定されている少なくとも1つのドラフト兼延伸域(4)と、
-後置されたスライバ加工装置に向かう方向で、ドラフトされた前記スライバ(2)を導出するスライバ出口(6)と
を備えた、スライバドラフト装置(1)において、
前記スライバ(2)に添加剤を施与する添加剤供給装置(7a,7b,7c)が、前記スライバ入口(3)と前記スライバ出口(6)とにより囲まれた領域に配置されていることを特徴とする、スライバドラフト装置(1)。
【請求項2】
前記スライバ(2)に添加剤を施与する添加剤供給装置(7a)が、走入するスライバ(2)の領域に、特に前記スライバ入口(3)と最初のローラ対(5a)との間に配置されている、請求項1記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項3】
前記スライバ(2)に添加剤を施与する添加剤供給装置(7b)が、前記少なくとも1つのドラフト兼延伸域(4)の領域に、特に前記スライバドラフト装置(1)の最初のローラ対(5a)の下流側かつ最後のローラ対(5c)の上流側に配置されている、請求項1または2記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項4】
前記スライバ(2)に添加剤を施与する添加剤供給装置(7c)が、前記スライバ出口(6)の領域に、特に前記スライバドラフト装置(1)の最後のローラ対(5c)の下流側に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項5】
前記添加剤供給装置(7a,7b,7c)が、前記スライバ(2)に前記添加剤を吹き付ける少なくとも1つの手段を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項6】
前記添加剤供給装置(7a,7b,7c)が、前記添加剤を吹き付ける少なくとも1つのノズルと、該ノズルに接続された搬送管路とを有しており、前記少なくとも1つのノズルの出口開口が、前記スライバ(2)の表面に向けて配置されている、請求項5記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項7】
前記添加剤供給装置(7a,7b,7c)内の前記添加剤が、前記少なくとも1つのノズルに圧縮空気により供給される、請求項6記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項8】
前記搬送管路を介して前記ノズルに供給される前記添加剤の吐出量が、調量装置により調節可能であり、好適には各ノズルの吐出される添加剤量が個別に調節可能である、請求項6または7記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項9】
前記吐出される添加剤量が、前記調量装置によって0.01ml/分~5.0ml/分に調節可能である、請求項8記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項10】
前記添加剤供給装置(7a,7b,7c)が、種々異なる添加剤を変更するための切替え装置を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載のスライバドラフト装置(1)。
【請求項11】
紡績準備機であって、
-延在方向に沿って互いに平行に位置調整され、纏められて定義された厚さおよび密度の帯を形成する定義された長さの定義された量の個別繊維から形成されているスライバ(2)であって、前記紡績準備機により加工すべきスライバまたは形成されたスライバ(2)に添加剤を施与する少なくとも1つの添加剤供給装置(7a,7b,7c)を備えた、紡績準備機。
【請求項12】
前記添加剤供給装置(7)が、スライバドラフト装置(1)の領域、特に請求項1から10までのいずれか1項記載のスライバドラフト装置(1)の領域に配置されている、請求項11記載の紡績準備機。
【請求項13】
定義された量のスライバ(2)を中間貯蔵する貯蔵装置であって、
-延在方向に沿って互いに平行に位置調整され、纏められて定義された厚さおよび密度の帯を形成する定義された長さの定義された量の個別繊維から形成されている、前記定義された量のスライバ(2)を貯蔵する、充填可能かつ排出可能な貯蔵室と、
-前記貯蔵室への充填中かつ/または前記貯蔵室からの排出中に前記スライバ(2)に添加剤を施与する少なくとも1つの添加剤供給装置(7a,7b,7c)と
を備えた、貯蔵装置。
【請求項14】
スライバ(2)に添加剤を施与する方法であって、
-延在方向に沿って互いに平行に位置調整され、纏められて定義された厚さおよび密度の帯を形成する定義された長さの定義された量の個別繊維から形成されている少なくとも1つのスライバ(2)を、紡績準備機のスライバドラフト装置(1)および/または紡績機内で前記スライバ(2)を引き続き加工して糸を形成する前に前記スライバ(2)をプロセス前加工する別の装置に供給するステップと、
-前記スライバドラフト装置(1)内で、かつ/または前記紡績機により前記スライバ(2)を引き続き加工して糸を形成する前に、前記スライバ(2)に添加剤を施与するステップと、を有する方法。
【請求項15】
前記添加剤の施与を、前記紡績機のプロセス的に前置されたカーディング機または練条機または定義された量のスライバ(2)を中間貯蔵する貯蔵装置の領域において、特に充填および/または排出中にケンスの領域において行う、請求項14記載のスライバ(2)に添加剤を施与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績準備機のためのスライバドラフト装置と、対応する紡績準備機と、定義された量のスライバを中間貯蔵する貯蔵装置と、紡績機において引き続き加工するために規定されているスライバに添加剤を施与する方法とに関する。
【0002】
概して、紡績機では、ケンス内に置かれ、紡績ユニットに供給されるスライバが、紡績されて糸もしくはヤーンを形成する。巻取パッケージへの紡績糸の同時的な巻取りを伴う現行の紡績法は、ロータ紡績法および空気紡績法である。これらの方法では、概して、スライバから糸を紡ぐための紡績ユニットにスライバが供給され、紡がれた糸は紡績ユニットから引き出されて、巻取パッケージ上に巻き取るための巻取装置へと引き続き送られる。特に、スライバは、空気紡績時に、ドラフト装置を介して空気紡績ノズルに供給される。この空気紡績ノズル内で、スライバの外側の繊維が、空気紡績ノズルの渦動チャンバ内で空気ノズルによって形成される渦動空気流によって空気紡績ノズルの流入開口の領域において、内側に位置している繊維コアの周囲に巻き付けられ、これにより、最終的に、ヤーンの所望の強度にとって決定的な巻付き繊維が形成される。これは、基本的には種々異なる材料から成る繊維により行うことができる。コットンのような天然繊維も、ポリエステルのような合成繊維も、天然繊維と合成繊維との混合物も使用することができる。
【0003】
空気紡績機によるポリエステル繊維の紡績時に、先行技術では、添加剤を空気紡績ノズル自体内に施与するか、または紡績すべきポリエステル繊維にそれぞれの空気紡績機の加工領域において施与することが提案される。なぜならば、このような添加剤によってのみ、紡績ノズルの内部および特に糸形成エレメントの紡績円錐体の表面にポリエステル残滓、ポリエステル繊維片および/またはアビバージ処理剤(Avivage)が付着することを阻止することができるからである。このような付着により、空気紡績プロセスが著しく妨害され、紡績結果、ひいては糸品質が著しく低下する。
【0004】
しかし、空気紡績ノズルの領域における添加剤の導入は、一連の欠点を有している。まず、紡績ノズル内の空気ノズルならびに紡績ノズルの別の構成部材が、過剰な添加剤の付着により詰まってしまい、これにより、紡績プロセスが妨害され、得られた糸は低い糸強度ならびに糸品質を有している。さらに、過剰な添加剤の付与は、紡績機の紡績ユニットの時間およびコストのかかる定期的なクリーニングを必要にしてしまう。最終的に、紡績機は、多数の紡績ユニットを有しており、これらの紡績ユニットのためにそれぞれ1つの添加剤供給部が設けられており、これにより高い製造コストならびに紡績機の高いメンテナンス手間につながる。
【0005】
したがって、本発明の根底にある課題は、より簡単でより廉価、かつメンテナンスのより少ない添加剤供給の可能性を提供し、これにより特に紡績ユニットもしくは紡績機をより廉価に製造し運転することができるようにすることである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の、紡績準備機、特にカーディング機または練条機(Strecke)のためのスライバドラフト装置と、請求項11に記載の紡績準備機と、請求項13に記載の、スライバに添加剤を施与する方法とにより解決される。本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明に係るスライバドラフト装置は、スライバを受け取るスライバ入口と、スライバの搬送方向で、受け取ったスライバをドラフトするローラ対によって画定されている少なくとも1つのドラフト兼延伸域と、後置されたスライバ加工装置、特に定義された量の延伸されたスライバを中間貯蔵する貯蔵装置または紡績機の方向に、ドラフトされたスライバを導出するスライバ出口とを有しており、スライバ、特にスライバ表面に少なくとも1種の添加剤を施与する添加剤供給装置が、スライバ入口とスライバ出口とにより囲まれた領域に配置されている。
【0008】
さらに、本発明は、紡績準備機により加工すべきスライバまたは形成されたスライバに少なくとも1種の添加剤を施与する少なくとも1つの添加剤供給装置を備えた紡績準備機に関する。
【0009】
さらに、本発明により、定義された量のスライバを貯蔵する、充填可能かつ排出可能な貯蔵室と、貯蔵室への充填中かつ/または貯蔵室からの排出中にスライバに添加剤を施与する少なくとも1つの添加剤供給装置とを備えた、定義された量のスライバを中間貯蔵する貯蔵装置が提案される。
【0010】
スライバに添加剤を施与する本発明に係る方法は、方法ステップとして、まず、紡績準備機のスライバドラフト装置および/または紡績機内でスライバを引き続き加工して糸を形成する前にスライバをプロセス前加工する別の装置に少なくとも1つのスライバを供給するステップと、これに続いて、スライバドラフト装置内で、かつ/または紡績機によりスライバを引き続き加工して糸を形成する前に、特に添加剤供給装置によって、スライバの表面もしくはスライバに少なくとも1種の添加剤を施与するステップとを有している。
【0011】
先行技術とは異なり、本発明による添加剤供給は、プロセス前に、紡績準備装置の領域において、紡糸機によるスライバの加工外で行われる。これに基づいて、まず、過剰な添加剤の著しく少ない付与が生じ、これにより紡績機の紡績ユニットの時間およびコストのかかるクリーニングの必要性の頻度が著しく減じられ、さらに、改善された紡糸結果が達成されるという利点が生じる。
【0012】
さらに、本発明者らは、プロセス前にスライバを加工する装置の個数は、紡績機の(空気)紡績ユニットの個数に比べて通常は著しく少なく、これにより、特に紡績準備機のドラフト装置の領域および/またはたとえば定義された量のスライバを中間貯蔵する貯蔵装置のような、スライバをプロセス前に加工する別の装置の領域における、プロセス前の添加剤供給が、添加剤の供給の手間を減じることができることを認識した。これにより、紡績機のより簡単な構造、ひいてはより低い製造コストおよび運転コストを達成することができる。
【0013】
紡績準備機とは、本発明の意図において、紡績機の繊維を加工する加工チェーンにおいてプロセス的に前置されているあらゆる機械であると理解される。
【0014】
本発明の意図における紡績機は、まず、スライバからヤーンもしくは糸を紡績するあらゆる装置である。好適には、紡績機は空気紡績機である。空気紡績機は、少なくとも1つの空気流によって、繊維、特に巻付き繊維を内側に位置する繊維コアの周囲で渦動させて糸もしくはヤーンを形成するあらゆる紡績機であると理解される。糸形成の工程は、1つ以上の紡績エレメントから形成されている紡績ノズルの領域において行われる。好適には、空気紡績機は、紡績ノズルを含む少なくとも1つの紡績ユニットを有しており、各紡績ユニットは、紡績ノズルに供給されたスライバから糸を製造するために働く。紡績ノズルは、スライバのための入口と、内側に位置する渦流チャンバ渦流チャンバと、渦流チャンバ内に少なくとも部分的に配置された1つ以上の糸形成もしくは紡績エレメントと、渦流チャンバの内部で形成された糸のための出口とを有している。さらに、紡績ノズルは、好適には、渦流チャンバに開口する複数の空気ノズルを有しており、これらの空気ノズルは、特に好適には、少なくとも1つの空気供給管路に流体接続しており、空気紡績機の運転中に、空気供給管路によって提供される圧縮空気は、スライバを空気紡績して糸を形成するための渦動空気流を渦流チャンバ内に形成するために、空気ノズルを介して渦流チャンバ内に流入する。
【0015】
本発明の意図における糸もしくはヤーンは、紡績プロセス中に繊維の少なくとも一部が内側に位置する繊維コアに巻き付けられている、スライバから製造された繊維複合体である。ヤーンもしくは糸は、たとえば、いわゆる空気紡績糸、オープンエンド糸(OE糸)またはロータスパン糸またはリングスパン糸であってもよい。また、糸はさらに加工するための粗糸であってもよい。繊維複合体、ひいては糸は、好適には少なくとも部分的に、特に好適には完全に、天然繊維またはたとえばポリエステルから成る合成繊維もしくは化学繊維から形成されている。
【0016】
スライバは基本的に(空気)紡績プロセスに供給される繊維材料であり、この繊維材料は、紡績すべき繊維の纏まった帯もしくは複合体として提供される。全ての繊維が同じ材料で形成されているか、またはスライバが化学的に互いに異なる繊維を含んでいてもよい。しかし、基本的には、スライバ内の繊維はまだ互いに紡がれていない。したがって、本発明の意図において、スライバとは、定義された、つまり予め規定可能または予め規定された長さの個別の繊維の、定義された、つまり予め規定可能または予め規定された量であると理解される。この定義された量の個別繊維は、その延在方向に沿って互いに平行に位置調整され、定義された厚さおよび密度の帯に纏められている。したがって、纏められてスライバを形成する個別の繊維は、好適には、天然繊維、合成繊維、または天然および合成の個別の繊維から成る組み合わせであってよい。
【0017】
本発明の意図におけるスライバドラフト装置は、スライバを引き延ばしさせ、かつ/または引き抜き、かつ/またはドラフトし、かつ/または精製することができるあらゆる装置であり、好適にはスライバドラフト装置において、スライバの個別の繊維は互いに平行に位置調整され、必要に応じて圧縮され、かつ/または個別の繊維の互いに対する絡まりが減じられる。このためには、ドラフト装置は、好適には少なくとも2つのローラ対を有していてよく、これらのローラ対は、スライバの搬送方向で、その間に延伸域を形成しながら互いに離間して配置されており、これらは、定義されたドラフト比を調節するために互いに異なる回転速度で駆動可能である。
【0018】
スライバドラフト装置は、紡績準備機のために設計されており、好適には紡績準備機の構成要素である。さらに好適には、スライバドラフト装置は、カーディング機または練条機の構成要素である。
【0019】
スライバドラフト装置は、本発明によれば、スライバ入口を有しており、スライバ入口は、独立した構成要素として形成されていてよいが、単に、スライバがスライバドラフト装置に供給される、スライバドラフト装置の領域と呼ぶこともできる。スライバ入口は、基本的に、スライバドラフト装置を通るスライバの搬送方向で、最初のローラ対の上流側に位置している。
【0020】
好適には、スライバドラフト装置は、相前後して配置された複数のローラ対を有している。これらのローラ対は、特に好適には、スライバ入口から遠ざかるにつれ、かつ/またはスライバドラフト装置を通るスライバの搬送方向に沿って、回転速度を増加させて運転され、これにより、予め規定可能な、特に可変に調節可能なドラフト比でスライバをドラフトすることができる。したがって、連続した2つのローラ対の間に、スライバがドラフトされる、ドラフト兼延伸域が生じる。特に好適には、スライバドラフト装置は、相前後して配置された複数のドラフト兼延伸域を有している。
【0021】
各ローラ対は、対峙する少なくとも2つのドラフトローラを有している。しかし、1つのローラ対の複数のドラフトローラのうちの少なくとも一方の周面に沿って、それぞれ第1のドラフトローラに対峙する別の複数のドラフトローラが配置されていてよいことが考えられる。特に、1つのドラフトローラにおいて、少なくとも2つの別のドラフトローラが、それぞれ第1のドラフトローラに対峙して、かつ第1のドラフトローラ上で転動するように配置されていてよい。
【0022】
ドラフトされたスライバをスライバドラフト装置から導出し、後続の加工装置にスライバを供給するために、スライバドラフト装置は、スライバ出口を有している。この場合、スライバ出口は、スライバドラフト装置におけるスライバの搬送方向で、最後のローラ対の下流側に配置されていてよく、あるいはスライバドラフト装置の出口ローラ対、特にいわゆるデリバリローラ対により形成されていてよい。
【0023】
添加剤供給装置は、本発明によれば、スライバ入口とスライバ出口とにより囲まれた、もしくは画定された領域に配置されている。換言すると、添加剤供給装置は、スライバ入口とスライバ出口との間で、特にスライバドラフト装置または貯蔵装置の領域における少なくとも1つの箇所に配置されており、この箇所は、スライバの搬送方向に沿って、スライバ入口およびスライバ出口の加工領域またはその間に位置する領域に位置していてよい。
【0024】
添加剤供給装置は、まず、スライバに添加剤を供給する任意の装置であってよく、添加剤供給装置は、好適には、少なくとも1種の添加剤をスライバの表面に施与するために規定されている。添加剤の施与は、唯1つの位置において、またはスライバに対して唯1つの方向から行うことができる。さらに、スライバへの添加剤供給は、単独の添加剤供給装置により、複数の位置において行うことができ、かつ/または複数の方向から行うこともできる。この場合、添加剤供給は、スライバに対して非接触に行うことも、スライバの表面に接触して行うこともできる。
【0025】
さらに、複数の添加剤供給装置を互いに並行して作動させることができるか、あるいは組み合わせることができ、この場合、特に個別の構成部材を省略するか、もしくは複数の添加剤供給装置間で共用することができ、たとえば1つの添加剤リザーバもしくは添加剤収集容器を共用し、かつ/または少なくとも部分的に添加剤用の搬送管路を共用することができる。
【0026】
添加剤は、液体でもあっても、固体であってもよい。さらに、物体のエマルジョン、分散物または別の混合物も添加剤として考えられ、添加剤は、好適には液状であるか、または流動性である。好適には、添加剤は、水溶液および/または水溶性である。添加剤は、たとえば毛羽立ち、強度、伸張性、糸均一性に関する、スライバから製造される糸の特性を改善するために、スライバに添加することができる。さらに、この添加剤を、製造プロセスを支援するために使用することができる。
【0027】
純粋に例示的に、可能な添加剤の組み合わせとして、欧州特許出願公開第2730695号明細書および欧州特許出願公開第2735644号明細書を参照して先行技術から既に知られている組み合わせを挙げることができる。特に、添加剤は、水と、少なくとも1種の別の成分から成る混和物との組み合わせから形成されていてよい。
【0028】
プロセス前加工とは、たとえばスライバの供給、スライバの延伸、供給されたスライバからの糸の紡績および紡績された糸の巻取りのような、(空気)紡績機に対応する、もしくは(空気)紡績機に固有の加工ステップに先行している、つまり(空気)紡績機の加工領域の外側に前置された加工領域に入れ込まれた、スライバの加工ステップであると理解される。プロセス前加工は、好適には、紡績準備機の領域におけるスライバの送りおよび/または処理、カーディング機から練条機へのような、紡績準備機の間でのスライバの搬送および/または紡績準備機から紡績機への搬送、またはたとえば貯蔵装置として形成されたケンス内での定義された量のスライバの中間貯蔵もしくは保管のような製造されたスライバの取扱いが含まれる。
【0029】
本発明に係るスライバドラフト装置の好適な構成では、スライバまたはスライバの表面に少なくとも1種の添加剤を施与する添加剤供給装置が、走入するスライバの領域、特にスライバ入口と最初のドラフトローラもしくは最初のローラ対との間に配置されており、これにより、スライバの後続のドラフト時に、スライバの表面全体への添加剤の特に良好な分布が達成される。走入するスライバの領域における添加剤供給は、特に、スライバドラフト装置の別の位置における別の添加剤供給、もしくは少なくとも1つの別の添加剤供給装置に対して代替的または付加的に行うことができる。
【0030】
付加的または代替的に、スライバもしくはスライバの表面に少なくとも1種の添加剤を施与する添加剤供給装置は、スライバドラフト装置の加工領域において、もしくは少なくとも1つのドラフト兼延伸域の領域において、特にスライバドラフト装置の最初のローラ対の下流側かつ最後のローラ対の上流側に配置されていてよく、これにより、一方では、既に部分的にドラフトされた、ひいてはより吸収性のあるスライバへの付与が行われ、他方では依然としてスライバ表面への添加剤の良好な塗布を、少なくとも1つの後続のローラ対の通過中に行うことができる。特に好適には、複数のドラフト兼延伸域の領域において、それぞれ1つの添加剤供給装置が配置されており、極めて特別に好適には、各ドラフト兼延伸域に少なくとも1つの添加剤供給装置が配置されている。
【0031】
さらに付加的または代替的には、スライバにまたはスライバの表面に少なくとも1種の添加剤を施与する添加剤供給装置が、スライバドラフト装置の加工領域もしくはスライバドラフト装置から走出するスライバの領域もしくはスライバ出口の領域、特にスライバドラフト装置の最後のローラ対の下流側に配置されていてよい。これにより、添加剤は特にスライバの表面に残り、これにより特に紡績のために必要な外側に位置する巻付き繊維上にあるので、後続の紡績プロセスを特に良好に、かつ特に少量の添加剤で支援することができる。さらに、紡績された糸の表面特性にも、このような付与によって特別に影響を与えることができる。添加剤供給装置は、特に好適には、スライバ出口の上流側の最後のローラ対の下流側に、またはスライバドラフト装置のスライバ出口の加工領域に配置されている。
【0032】
スライバへの添加剤の付与を基本的に任意の形式で行うことができる場合も、添加剤供給装置が、スライバに添加剤を吹き付ける少なくとも1つの手段を有していると特に好適であり、これにより、簡単な形式で添加剤を非接触に、かつ特に均一な分配でスライバの表面に施与することができる。特に好適には、添加剤供給装置の有利な改良形は、添加剤に吹き付ける少なくとも1つのノズル、好適には複数のノズルと、各ノズルに接続された搬送管路とを有しており、少なくとも1つのノズルは、特に好適には、スライバの表面に対峙しているか、もしくは出口開口をスライバの表面に向けて配置されており、これにより簡単な形式で添加剤の直接的な噴霧が可能にされる。
【0033】
さらに、添加剤供給装置内の添加剤が少なくとも1つのノズルに圧縮空気により供給されることが好適であり、添加剤供給装置は、特に好適には、少なくとも1つの圧力容器、特に複数のノズルのための圧縮空気容器を含んでおり、この圧力容器内には、添加剤がドラフトの領域に引き続き送るために保持され、さらに、圧力容器内には気体状の圧力媒体が含まれている。
【0034】
本発明によるスライバドラフト装置の有利な改良形は、搬送管路を介してノズルに供給される添加剤の吐出量、特に吐出される体積流量および/または質量流量が、調量装置によって調節可能であり、特に好適には、各ノズルに別個の調量装置が割り当てられており、もしくは各ノズルの吐出される添加剤量が個別に調節可能であり、これにより、有利な形式で、調量が正確に調節可能であり、これにより個別の繊維複合体区分に予め規定された添加剤目標量よりも多いまたは少ない添加剤が施与されることを阻止することができる。調量装置は、好適にはポンプおよび/または弁を有している。
【0035】
添加剤の流速もしくは体積流量および/または質量流量が調節可能であると有利であり、これにより、たとえば、指定された添加剤量をそれぞれのスライバおよび/またはこのスライバから紡がれるべき糸の所望の特性に適合させることができる。好適には、特に各ノズルの吐出される添加剤量は、調量装置によって、0.001ml/分~7.0ml/分、特に好適には0.01ml/分~5.0ml/分、極めて特に好適には0.05ml/分~3.0ml/分に調節可能であり、かつ/または供給される添加物の質量流量は、好適には0.001g/分~7.0g/分、特に好適には0.01g/分~5.0g/分、極めて特に好適には0.05g/分~3.0g/分である。
【0036】
さらに、種々異なる添加剤を変更する少なくとも1つの切替え装置を備えた添加剤供給装置を有し、これにより特に簡単かつ迅速に現在使用されている添加剤を変更することができるスライバドラフト装置の実施形態が好適である。
【0037】
本発明による紡績準備機の好適な改良形は、添加剤供給装置がドラフト装置、特に本発明によるスライバドラフト装置の領域に配置されていることを規定する。
【0038】
最後に、スライバに添加剤を施与する方法の代替的または好適な構成では、添加剤の施与は、スライバをその製造後にプロセス前加工する装置の領域において行われ、これによって、添加剤の特に早期の付与、ひいてはスライバの表面上での特に良好な分布を達成することができる。概して、添加剤付与は、紡績機によってスライバを加工して糸を形成する前、かつ特に紡績機の紡績ユニットへのスライバの搬送前の、スライバのプロセス前加工の任意の時点において、さらに好適には定義された量のスライバの中間貯蔵の途中で行うことができ、この場合、複数の箇所における添加剤付与も考えられる。同一の添加剤の塗布を複数回行うことができ、あるいは互いに異なる複数の添加剤の付与も行うことができる。
【0039】
好適な実施形態の1つによる添加剤供給装置は、好適な形式でスライバに添加剤を施与する好適な方法のために使用することができ、かつ/または紡績準備機および/または貯蔵装置の構成要素であるか、または紡績準備機および/または貯蔵装置にそれぞれ割り当てられていてよい。
【0040】
スライバをドラフトするための本発明に係るスライバドラフト装置の実施例を、以下に図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】複数のローラ対および複数の添加剤供給装置を備えたスライバドラフト装置の概略図である。
【0042】
図1に概略的に図示されたスライバドラフト装置1によって、スライバ2がドラフトされ、これによりスライバを、次いで図示しない紡績準備機、たとえばカーディング機または練条機に供給され、次いでスライバ2から糸を紡ぐためのロータ紡績機または空気紡績機のような紡績機に供給することができる。特に練条機の場合、図示しない実施形態例によれば、1つ以上のスライバ2を供給することができる。
【0043】
スライバドラフト装置1は、スライバドラフト装置1の内部におけるスライバ2の経過に沿って相前後して配置された3つのローラ対5a,5b,5cを有しており、それぞれ、連続する2つのローラ対の間の中間空間がそれぞれドラフト兼延伸域4を形成する。
【0044】
ドラフトに続く紡糸プロセスのためのスライバ2の特性に有利に影響を与えるために、スライバドラフト装置1の領域に複数の添加剤供給装置7a,7b,7cが配置されており、これらの添加剤供給装置7a,7b,7cは、スライバ2の表面に向けられている、添加剤供給管路に接続された添加剤ノズルをそれぞれ有している。添加剤供給装置7a,7b,7cのそれぞれが固有の添加剤容器を有していることも可能であるが、添加剤ノズルに至る全ての添加剤供給管路はそれぞれ、好ましくは空気圧下にある添加剤容器に接続されているので、添加剤は添加剤供給管路を通じて添加剤ノズルに向かって押圧される。
【0045】
第1の添加剤供給装置7aは、スライバドラフト装置1のスライバ入口3と最初のローラ対5aとの間に配置されているのに対して、別の添加剤供給装置7bは、最初のローラ対5aと第2のローラ対5bとの間のドラフト兼延伸域4内に配置されている。最後に、最後のローラ対5cの下流側かつスライバドラフト装置1のスライバ出口6の上流側に、第3の添加剤供給装置7cが配置されている。
【0046】
好適には、それぞれの添加剤供給装置7a,7b,7cのノズルにおいて指定された添加剤量を調節することができるようにするために、ノズルの上流側もしくは各ノズルの添加剤管路に調量装置が配置されている。
【0047】
スライバ2への添加剤の施与は、スライバドラフト装置1へのスライバ2の供給後に、スライバドラフト装置1内で対応して配置された添加剤供給装置7a,7b,7cを介して行われる。
【0048】
図示しない実施例によれば、ケンスの充填および排出中にスライバ2に添加剤を施与する添加剤供給装置が配置されている。このためには、添加剤供給装置は、スライバ2にケンス室内への走入中に添加剤を備えることができるように配置されている。ケンスを充填するための入口は、好適な1つの実施例によれば、ケンスからスライバ2を取り出すための出口とは離れて配置されているか、または好適な別の実施例によれば、出口に一致して形成されている。入口および出口の領域における少なくとも1つの添加剤供給装置の好適な配置は、充填および/または排出工程中に添加剤をスライバ2に必要に応じて施与することを可能にする。添加剤供給装置は、上記のように構成されていてよい。
【符号の説明】
【0049】
1 スライバドラフト装置
2 スライバ
3 スライバ入口
4 ドラフト兼延伸域
5a~c ローラ対
6 スライバ出口
7a~c 添加剤供給装置
図1
【外国語明細書】