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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159230
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】打抜き用刃型
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20221006BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20221006BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B26F1/44 C
B26F1/40 B
B26D7/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060144
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021060707
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306026980
【氏名又は名称】株式会社タイカ
(72)【発明者】
【氏名】浅見 和典
(72)【発明者】
【氏名】笹澤 宣弘
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021AA05
3C021FD02
3C021FD07
3C060BA03
3C060BB05
3C060BD01
3C060BG20
3C060BH01
(57)【要約】
【課題】可撓性と曲げ弾性に乏しい材料からなる打抜きカスであっても確実に保持して除去できる打抜き用刃型及び打抜き加工方法の提供。
【解決手段】本発明の打抜き用刃型は、基板と、基板の片面に取り付けられた打抜き刃とからなり、基板が打抜き刃の打抜きカスが形成される側の領域内に貫通部を備えており、打抜き刃は打抜きカスの打抜き断面と接する面に打抜き刃の先端に達しない単数または複数の凹部を備えている。また、本発明の打抜き加工方法は、被加工物を上記打抜き用刃型で抜いて打抜きカスの打抜き断面を打抜き刃の少なくとも凹部で保持する打抜き工程と、打抜きカスを打抜き刃で保持した状態で打抜き用刃型を被加工物から離反移動して打抜きカスを除去するカス除去工程と、さらに打抜きカスを貫通部から外部に回収する回収工程、または気体圧によって打抜き刃先側から排出するカス排出工程を備えている。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の片面に取り付けられた打抜き刃とからなり、前記打抜き刃で打抜きカスが形成される位置に対応する前記基板の領域内に貫通部を備えた打抜き用刃型であって、前記打抜き刃は前記打抜きカスの打抜き断面と接する面に前記打抜き刃の先端に達しない単数または複数の凹部を備えることを特徴とする打抜き用刃型。
【請求項2】
前記複数の凹部がストライプ状または斑点状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の打抜き用刃型。
【請求項3】
前記凹部は線状溝であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の打抜き用刃型。
【請求項4】
前記線状溝は前記打抜き刃の先端側から前記基板に向かって前記打抜きカスの打抜き断面が移動する方向を長手方向とする線状溝であることを特徴とする請求項3に記載の打抜き用刃型。
【請求項5】
前記打抜き刃は、前記打抜きカスが形成される部分がクローズパス構造であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の打抜き用刃型。
【請求項6】
前記貫通部の前記打抜き刃側の開口形状は前記打抜きカスの形状であり、前記基板の打抜き刃が取付けられた側とは反対側に前記貫通部と接続された回収手段を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の打抜き用刃型。
【請求項7】
前記貫通部の前記打抜き刃が取付けられた側とは反対側の開口部と接続された気体噴き出し手段を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の打抜き用刃型。
【請求項8】
請求項6に記載の打抜き用刃型を用いて被加工物を打抜き加工して打抜き成形品を形成する打抜き加工方法であって、前記被加工物を前記打抜き用刃型で抜いて前記打抜きカスの打抜き断面を前記打抜き刃の少なくとも前記凹部で保持する打抜き工程と、前記打抜きカスを前記打抜き刃で保持した状態で前記打抜き用刃型を前記被加工物から離反移動して前記打抜きカスを除去するカス除去工程と、前記カス除去工程で除去した前記打抜きカスを前記貫通部に接続された回収手段によって回収する回収工程と、を備えることを特徴とする打抜き成形品の打抜き加工方法。
【請求項9】
請求項7に記載の打抜き用刃型を用いて被加工物を打抜き加工して打抜き成形品を形成する打抜き加工方法であって、前記被加工物を前記打抜き用刃型で抜いて前記打抜きカスの打抜き断面を前記打抜き刃の少なくとも前記凹部で保持する打抜き工程と、前記打抜きカスを前記打抜き刃で保持した状態で除去するカス除去工程と、前記カス除去工程で保持した前記打抜きカスを前記気体噴き出し手段によって前記貫通部から供給される気体圧によって排出するカス排出工程と、を備えることを特徴とする打抜き成形品の打抜き加工方法。
【請求項10】
前記打抜き刃は、前記打抜きカスが形成される部分がクローズパス構造であり、前記打抜き工程において、前記貫通部から少なくとも前記打抜きカス側と打抜き刃で囲まれた空間内を減圧吸引することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の打抜き成形品の打抜き加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打抜き刃型を用いて打抜き加工した時に発生する打抜きカスを、打抜き成形品上に落下させることなく確実に除去できる打抜き用刃型及びこれを用いた打抜き加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
打抜き加工は、シート状の被加工物に打抜き刃型を押圧して押し切ることによって、打抜き刃型パターン形状の打抜き成形品を形成する加工技術であり、打抜き刃型としては主にトムソン刃型、ピナクル(登録商標)刃型、ビク刃型が加工目的に応じて使用されている。打抜き加工においては、打抜き成形品となる以外の部分は打抜きカスとして処分されるため、打抜きカスの除去作業は打抜き加工の生産効率に大きく影響する。そのため、打抜きカスを打抜き成形品と分離して、確実に回収することが重要な技術課題である。
【0003】
この課題に対して、打抜き刃型に打抜きカス除去作用を具備させる方法が提案されており、例えば特許文献1には、一端側に刃部を有する筒状体と、内部が筒状体の内部空間と通じるようにして筒状体の他端側に接続された収容体とを備え、刃部は、一端側から他端側へ向かって筒状体の内径が徐々に小さくなるように肉厚が変化している打抜き用具が提案されている。この打抜き用具で打抜き加工すると、打抜きカスは刃部を有する筒状体の内壁に対して反った状態で突っ張る格好となり、そのまま刃部を有する筒状体の内部空間に保持され、繰り返して打抜き加工することによって、打抜きカスが収容体内に押されて移動するため、確実に打抜きカスを回収することができるものである。この方法では、打抜き用具は、刃型内刃部を有する筒状体の内部空間に打抜きカスを保持した状態で次の被加工物の上方に配置されるため、刃部を有する筒状体内に打抜きカスを確実に保持し続ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6802329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の打抜き用具は、打抜きカスが撓んで反った状態で刃部の内壁に対して突っ張る格好となる必要があり、被加工物が可撓性と曲げ弾性に乏しい場合には、打抜きカスが刃部の内壁に対して突っ張る作用が得にくく、打抜きカスが刃部から落下し易くなる課題があった。従って、本発明は従来技術の上述した点を改良したものであり、その目的は可撓性と曲げ弾性に乏しい材料からなる打抜きカスであっても確実に保持して除去できる打抜き用刃型を提供することにある。
【0006】
また、本発明の第2の目的は、上記の打抜き刃型を使用して、従来よりも打抜き加工の効率を向上できる打抜き加工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の打抜き用刃型は、基板と、基板の片面に取り付けられた打抜き刃とからなり、打抜き刃で打抜きカスが形成される位置に対応した基板の領域内に貫通部を備えた打抜き用刃型であって、打抜き刃は打抜きカスの打抜き断面と接する面に打抜き刃の先端に達しない単数または複数の凹部を備えている。
【0008】
この構成の打抜き用刃型によれば、被加工物を基板に取り付けられた打抜き刃で打抜き加工した際に、打抜き刃の打抜きカスと接する面に備えられた単数または複数の凹部に打抜きカスが達すると、打抜き加工の際に打抜き断面と直交する方向(被加工物の面方向)に打抜き刃で圧縮されて打抜きカス内に生じた圧縮応力が凹部内に開放されて体積膨張を起こすとともに、凹部が打抜き刃の先端に達していないため、打抜きカスは凹部が形成されていない刃の先端側よりも溝内で体積が大きくなることによって、打抜きカスの打抜き断面が打抜き刃に食い付くように作用する。この作用によって、打抜きカスが可撓性と曲げ弾性に乏しい材料からなる場合であっても確実に打抜き刃内に打抜きカスを保持することができる。また、打抜き刃で打抜きカスが形成される位置に対応した基板の領域内に貫通部を備えるため、貫通部に打抜きカスを回収または排出するための機構を付加することができる。また、打抜き加工時の上記保持作用と併せて、貫通部から減圧吸引することによって、打抜きカスの打抜き断面の保持作用を補強できるため、打抜きカスの保持性を一層向上させることができる。
【0009】
また、本発明の打抜き用刃型は、打抜き刃が打抜きカスの打抜き断面と接する面に備える複数の凹部がストライプ状または斑点状に配置されていることが好ましい。これによって、複数の凹部の配置パターンに応じて、打抜き刃内に打抜きカスを保持する作用を多様に調整できるため、打抜きカスが可撓性と曲げ弾性に乏しい材料からなる場合であってもより確実に打抜き刃内に打抜きカスを保持することができる。
【0010】
また、本発明の打抜き用刃型は、打抜き刃が打抜きカスの打抜き断面と接する面に備える凹部が線状溝であることも好ましい。これによって、凹部の形状に応じて、打抜き刃内に打抜きカスを保持する作用を調整できるため、打抜きカスが可撓性と曲げ弾性に乏しい材料からなる場合であってもより確実に打抜き刃内に打抜きカスを保持することができる。
【0011】
また、本発明の打抜き用刃型は、打抜き刃が打抜きカスの打抜き断面と接する面に備える凹部は、打抜き刃の先端側から基板に向かって打抜きカスの打抜き断面が移動する方向を長手方向とする線状溝であることも好ましい。これにより、打抜きカスの打抜き断面を打抜き刃で保持し易くすると共に、打抜きカスを回収また排出する際に、打抜きカスが溝内を回収方向または排出方向に移動しやすくなるため、打抜きカスの保持性の発現と解除をバランスよく両立することができる。
【0012】
また、本発明の打抜き用刃型における打抜き刃は、打抜きカスが形成される部分がクローズパス構造であることが好ましい。これによって、貫通部から気体を噴射して打抜き刃で保持された打抜きカスを打抜き刃先端側から排出する場合や、貫通部から減圧吸引することによって、打抜きカスの打抜き断面を保持する作用を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の打抜き用刃型は、貫通部の開口形状は打抜き刃形状に沿った形状であり、基板の打抜き刃が取付けられた側とは反対側に貫通部と接続された回収手段を備えていることも好ましい。これによって、打抜き刃で保持した打抜きカスを、貫通部を通じて打抜き刃型の外部に排出して回収することができる。
【0014】
また、本発明の打抜き用刃型は、基板が備える貫通部の打抜き刃が取付けられた側とは反対側の開口部と接続された気体噴き出し手段を備えることも好ましい。これによって、貫通部を通じて気体を打抜きカスに噴出して、打抜き刃で保持した打抜きカスを打抜き刃の先端側から強制的に所定の回収容器等へ排出し、回収することができる。
【0015】
また、本発明の打抜き加工方法は、本発明の打抜き用刃型のうち、基板が備えた貫通部の開口形状が打抜き刃形状に沿った形状であって、貫通部の打抜き刃が取付けられた側とは反対側の開口部に接続された回収手段を備えている打抜き用刃型を用いて被加工物を打抜き加工して打抜き成形品を形成する打抜き加工方法であって、被加工物を打抜き用刃型で抜いて打抜きカスの打抜き断面を打抜き刃の少なくとも前記凹部で保持する打抜き工程と、打抜きカスを打抜き刃で保持した状態で打抜き用刃型を被加工物から離反移動して打抜きカスを除去するカス除去工程と、カス除去工程で除去した打抜きカスを貫通部に接続された回収手段によって回収する回収工程と、を備えている。この方法によって、打抜き加工と同時に打抜きカスを打抜き刃で保持し、この保持状態のまま打抜き用刃型を被加工物から離反移動させることによって、打抜きカスが成形品と分離されて除去され、続いて貫通部を通じて打抜きカスを打抜き刃型の外部に排出して回収することができるため、打抜きカスが可撓性と曲げ弾性に乏しい場合であっても、確実かつ効率的に打抜きカスを除去して打抜き成形品を得ることができる。
【0016】
また、本発明の打抜き加工方法は、本発明の打抜き用刃型のうち、基板が備えた貫通部の打抜き刃が取付けられた側とは反対側の開口部に接続された気体噴き出し手段を備えた打抜き用刃型を用いて、被加工物を打抜き加工して打抜き成形品を形成する打抜き加工方法であって、被加工物を打抜き用刃型で抜いて打抜きカスの打抜き断面を打抜き刃の少なくとも前記凹部で保持する打抜き工程と、打抜きカスを打抜き刃でする保持した状態で除去するカス除去工程と、カス除去工程で除去した打抜きカスを気体噴き出し手段によって貫通部から供給される気体圧によって打抜き刃の先端側から排出するカス排出工程と、を備えるものである。この方法により、打抜きと同時に打抜きカスを打抜き刃で保持し、この保持状態のまま打抜き用刃型を被加工物から離反移動させることによって、打抜きカスが成形品と分離されて除去され、続いて気体噴き出し手段から貫通部を通じて気体を打抜きカスに噴出して、打抜きカスを打抜き刃の先端側から強制的に所定の回収容器等へ排出し、回収することができるため、打抜きカスが可撓性と曲げ弾性に乏しい場合であっても、確実かつ効率的に打抜きカスを除去して打抜き成形品を得ることができる。
【0017】
また、本発明の打抜き加工方法は、上記の二つの打抜き加工方法において、打抜き刃は打抜きカスが形成される部分がクローズパス構造であり、カス除去工程において、貫通部を通じて、打抜きカスと打抜き刃と基板とで囲まれた空間内を減圧吸引することも好ましい。これにより、上記の打抜きカスの打抜き断面を打抜き刃で保持する作用を補強できるため、打抜き刃による打抜きカスの保持性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の打抜き用刃型とそれを用いた打抜き加工方法によれば、打抜き刃は打抜きカスの打抜き断面と接する部分に、打抜き刃の先端に達しない単数または複数の凹部を備えた構造であるため、打抜き加工時に打抜きカス内に生じた圧縮応力が打抜き刃の凹部に開放されて、打抜きカスの打抜き断面が打抜き刃の凹部内に体積膨張するとともに、凹部が打抜き刃の先端に到達していない構造であるため、打抜きカスの打抜き断面が打抜き刃に食い付くように作用することによって、打抜きカスが可撓性と曲げ弾性に乏しい材料からなる場合であっても、確実に打抜き刃内に打抜きカスを保持して、打抜き成形品と分離して除去することができる。また、基板が備える貫通部の打抜き刃が取付けられた側とは反対側の開口部に回収手段や気体噴出手段を接続することによって、打抜き刃内に保持した打抜きカスを排出し回収できるので、打抜きカスが可撓性と曲げ弾性に乏しい場合であっても、確実かつ効率的に打抜きカスを除去して打抜き成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態で形成される打抜き成形品と打抜きカスの配置平面図である。
図2】本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態を模式的に示す斜視図である。(a)は打抜き刃型全景を示す斜視図である。(b)は図2(a)のA-A´領域の拡大斜視図である。
図3】本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態において、打抜き用刃型内部の構造を説明するための図2(b)のB-B´断面図である。
図4】本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態において、打抜き刃が打抜きカスの打抜き断面を保持する作用を説明するための模式的な断面図である。(a)は打抜き加工初期の状態、(b)は被加工体を打抜き加工した状態、(c)は、打抜きカスを打抜き刃内に保持して除去する状態を、それぞれ模式的に表した断面図である。
図5】本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態において、打抜き刃が備えた凹部の形状を説明するための模式的な断面図であり、(a)は凹部を備えた打抜き刃の部分的な平面図であり、(b)~(d)は図5(a)のC-C´断面である。
図6】本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態において、打抜き刃が備えた凹部の形状を説明するための模式的な断面図であり、(a)は凹部を備えた打抜き刃の部分的な平面図であり、(b)~(d)は図6(a)のE-E´断面である。
図7】本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態において、打抜き刃が備える凹部の実施形態のバリエーション例を示す模式図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る打抜き用刃型において、貫通部が打抜きカスの排出口として機能する構造例を説明するための模式的な断面図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る打抜き用刃型において、貫通部が打抜きカスを打抜き刃側から気圧で排出するための気体噴射口として機能する構造例を説明するための模式的な断面図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る打抜き用刃型において、貫通部が、打抜き刃内面空間を減圧して打抜きカスを吸引保持するための吸引口として機能する構造例を説明するための模式的な断面図である。
図11】本発明の打抜き用刃型に係る第2の実施形態について説明する模式図である。(a)は、打抜き用刃型の該実施形態で形成される打抜き成形品と打抜きカスの配置平面図であり、(b)は打抜き刃型の打抜き刃側から見た平面図であり、(c)は(a)のG-G´断面図である。
図12】本発明の打抜き用刃型に係る第2の実施形態において、別の打ち抜き形状とした構成について説明する模式図である。(a)は、打抜き用刃型の該実施形態で形成される打抜き成形品と打抜きカスの配置平面図である。(b)は打抜き刃型の打抜き刃側から見た平面図であり、(c)は(a)のH-H´断面図である。
図13】本発明の打抜き加工法の第1の実施形態を説明するための模式的な断面図である。
図14】本発明の打抜き加工法の第2の実施形態を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の打抜き用刃型は、基板と、基板の片面に取り付けられた打ち抜き刃とからなり、打抜き刃で打抜きカスが形成される位置に対応した基板の領域内に貫通部を備えた打抜き用刃型であって、打抜き刃は打抜きカスの打抜き断面と接する面に打抜き刃の先端に達しない単数または複数の凹部を備えている。以下、具体例として、打抜き用刃型に係る第1の実施形態及び第2の実施形態を示して、詳細に説明する。
【0021】
(打抜き用刃型に係る第1の実施形態)
本発明の打抜き用刃型に係る第1の実施形態について、図1に示した打抜き成形品Waと打抜きカスWbを形成する打抜き加工形態を例に、図2図10を参照して説明する。
【0022】
本発明の第1の実施形態に係る打抜き用刃型1は、図2(a)に示すように、基板2と、基板2に取り付けられた複数の打抜き刃3と、打抜き刃3で囲まれた基板2の領域内に形成された貫通部5と、から構成されている。打抜き刃3は、図2(a)のA-A´部を拡大した図2(b)で示すように、略小判型のクローズパス構造からなっており、打抜き刃3で閉じられた領域で略小判型の打抜きカスが形成される。ここでクローズパス構造とは、打抜き刃3の配置パターンが閉じた形状パターンからなる構造をいう。
【0023】
本実施形態に係る打抜き用刃型1を構成する基板2は、打抜き刃3を取り付ける加工を施すことができ、打抜き加工時において十分な機械強度を有するものであれば特に限定されず、従来の打抜き刃型用の基板を用いることができ、例えば、単層または積層したベニヤ板や樹脂板などが適用できる。基板2の形状や厚みも目的の打抜き加工に応じて適宜設定できる。
【0024】
本実施形態に係る打抜き用刃型1を構成する打抜き刃3は、帯状の単数または複数の打抜き刃を曲げ加工して図2(b)に示すようなクローズパス構造の形状で、刃先とは逆の端部を基板2に埋め込んで固定して取り付けられている。打抜き刃3の材料は、炭素鋼などの公知の打抜き刃用の材質を適用でき、被加工物に応じて適宜選定できる。打抜き刃3の刃先形状は、片刃や両刃、二段刃等の公知の形状を適用でき、被打抜き加工物に応じて適宜選定できる。
【0025】
打抜き刃3の打抜きカスWbと接触する側の面には図2(b)のB-B‘線断面図として図3に示すように、打抜きカスWbの打抜き断面と接する面に、打抜き刃3の先端(以下、刃先ともいう。)側から基板2に向かって打抜きカスWbの打抜き断面が移動する方向を長手方向とする複数の線状溝からなる凹部4(以下、線状の凹部ともいう。)が打抜き刃3の刃先に向けて直線状に形成されており、各凹部4は打抜き刃3の内周面に均等間隔でストライプ状に配置されている。線状の凹部4の刃先側の端部は、打抜き刃3の先端に達しないことが重要である。この線状の凹部4を備えることによる打抜きカス打抜き断面の保持作用について、図4を参照して説明する。まず、図4(a)に示すように、打抜き刃型1の打抜き刃3が被打抜き加工物Wに押し込まれていくと、打抜き刃3で囲まれた内部の被打抜き加工物Wは、打抜き刃3の体積分だけ圧縮され、その圧縮応力の反力で打抜き刃の面に接しながら被加工物Wの切断が進む。次に図4(b)に示すように、打抜き刃3の先端が被打抜き加工物Wの底面に達して打抜き成形品Waと打抜きカスWbが形成されるが、打抜き刃3が被加工物Wの底面に向かって進んでいく過程で、被打抜き加工物Wの打抜き断面が打抜き刃3の線状の凹部4に到達すると、打抜きカスの内部に蓄積された内部応力(図内 黒矢印で表現)が線状の凹部4内で解放(図内 白矢印で表現)され、打抜きカスの打抜き断面が線状の凹部4内を向けて膨出変形を起こす一方で、線状の凹部4の端部は打抜き刃3の刃先には達していないため、線状の凹部4を有しない刃先側の打抜き刃3の表面領域では、打抜きカスWbは内部応力を解放できずに打抜き断面の形状が変わらないので、線状の凹部4内に膨出した部分(膨出変形部)が刃先側への打抜きカスの移動を制限するため、打抜きカスWbが打抜き刃3から抜け難くなり、図4(c)に示すように、打抜き刃3で打抜きカスの打抜き断面が確実に保持された状態で、打抜き用刃型1が被加工物Wから離反移動することによって、打抜きカスWbのみ除去される。
【0026】
このように、打抜きカスWbの打抜き断面と接する打抜き刃3の表面に備えられた線状の凹部4が、上述の打抜きカスWbの打抜き断面を保持する作用を発揮するためには、線状の凹部4の刃先側の端部の位置は、最も刃先側に配置された凹部4の刃先側端部から刃先までの最短距離Lが被加工物Wの厚みよりも小さくなるように設定され、打抜き刃の先端に達しない範囲で最短距離Lが小さいほど打抜きカスWbの打抜き断面と線状の凹部4との接触面積が大きくなるため、打抜き刃3による打抜きカスWbの打抜き断面の保持性が向上する。一方で、最短距離Lが小さくなりすぎると、線状の凹部4を有さない打抜き刃3の刃先側の表面領域によって、打抜きカスWbの膨出変形部が線状の凹部4の刃先側端部から刃先側へ容易に移動しやすくなり、刃先側への打抜きカスWbの移動を制限される作用が十分に得られない場合があるので、被加工品厚みに対する最短距離Lの割合は5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。なお、図3及び図4に示した打抜き用刃型1においては、全ての凹部4は上記の最短距離Lが等しい位置に配置されている例であるが、凹部4ごとに最短距離Lを異ならせてもよい。
【0027】
線状の凹部4の内部形状は、本発明の作用効果が得られる形状であれば特に限定しない。例えば、図5(a)に示す打抜き刃3の長手方向のC―C´断面形状として、図5(b)に示す打抜き刃3のように深さが均等な溝や、図5(c)に示す打抜き刃3のように深さに勾配がついた形状、図5(d)に示す打抜き刃3のように円弧状に窪んだ形状などが適用できる。また、図6(a)に示す打抜き刃3の幅方向のD-D´断面形状として、例えば、図6(b)に示す打抜き刃3のように深さが均等な形状や、図6(c)に示す打抜き刃3のように円弧状に窪んだ形状、図6(d)に示す打抜き刃3のようにV字状に窪んだ形状などを適用できる。これらの長手方向と幅方向の断面形状を適宜組合せて凹部4の形状を設計できる。
【0028】
打抜き刃3の打抜きカスと接触する側の面に形成されている線状の凹部4の形状と配置パターンは、本発明の作用効果が得られれば特に限定されず、例えば、図7に示すように刃先3CEを上端とした打抜き刃3の展開平面図として、図7(a)に示す打抜き刃3のように、線状の凹部4の両端の幅を変えた略三角形状の複数の線状の凹部4を打抜き刃3の内周となる方向に均一間隔でストライプ状に配置したパターンや、図7(b)に示す打抜き刃3のように、略小判型の複数の溝を刃先方向に対して傾斜させて、打抜き刃3の内周となる方向に均等間隔でストライプ状に配置したパターン、図7(c)に示す打抜き刃3のように、略小判型の複数の線状の凹部4aが打抜き刃3の内周となる方向に均等間隔でストライプ状に配置され、それらの線状の凹部4aの中央付近を垂直に貫くように線状の凹部4bが形成されたパターン、図7(d)に示す打抜き刃3のように、内周方向に一本の線状の凹部4が配置されたパターン、図7(e)に示す打抜き刃3のように、打抜き刃3の内周方向に対して斜めに一本の線状の凹部4が配置されたパターンなどが適用できる。また、打抜きカスWbの打抜き断面を打抜き刃3で保持すると共に、打抜きカスWbを回収また排出する際に、打抜きカスWbが線状の凹部4内を回収または排出方向に移動しやすくして、打抜きカスの保持性と発現と解除を両立しやすくする観点においては、図3図7(a)に例示した打抜き刃3のように、打抜きカスWbの打抜き断面の進行方向(打抜き刃3の進行方向)を縦方向とした縦溝や、図7(b)に例示された打抜き刃3のように斜め溝が好ましく、縦溝がストライプ状に配置されたパターンが特に好ましい。なお、図7(a)から図7(e)の例示では、線状の凹部4の長手方向の軸が直線状であるが、曲線状であってもよい。
【0029】
また、打抜き刃3の打抜きカスWbと接触する側の面に設けられる凹部として、線状の凹部4に代えて、複数の凹部が斑点状に配置されたパターンとしてもよく、例えば、図7(f)に示す打抜き刃3のように、開口形状が円形の複数の凹部4cがドット状で刃先方向に直線的に配置されたパターンや、図7(g)に示す打抜き刃3のように、開口形状が円形の複数の凹部4cを均等間隔で斑点状に配置したパターンなどが適用できる。また斑点状に配置された凹部と線状の凹部とを複合したパターンとしてもよい。なお、斑点状に配置される凹部の開口形状は、図7(f)及び図7(g)の例では円形としているが、楕円形、正多角形、星形など円に内接可能な形状の他、線状形状や不定形としてもよい。
【0030】
本実施形態に係る打抜き用刃型1を構成する貫通部5は、図3に示す打抜き用刃型1のように、打抜き刃3によって打抜きカスWbが形成される位置に対応する基板2の領域内の少なくとも一部に形成された貫通穴である。この貫通部5は、打抜き加工時に打抜き刃3によって保持された打抜きカスWbを打抜き用刃型1の打抜き刃3とは反対側に排出するための排出口として機能したり、打抜き加工時に打抜き刃3によって保持された打抜きカスWbを気体圧によって打抜き刃3の刃先側から排出するための気体噴射口として機能する。また、打抜き刃3によって打抜きカスWbを保持した状態で吸引保持するための吸引口としても機能する。
【0031】
貫通部5が打抜きカスWbの排出口として機能する場合には、例えば図8(a)の打抜き用刃型1ように、貫通部5は打抜きカスWbが通過できるように、打抜きカスWbを形成する打抜き刃3のパターン形状(カットパス形状)と略同じ形状で形成され、図8(b)に示すように、貫通部5の打抜き刃3側とは反対側の開口部に打抜きカスを回収する回収手段である回収ボックス6が接続された構造の打抜き用刃型1となる。回収ボックス6へ打抜きカスWbを移動させる手段は、図8(c)に示すように、打抜き加工を繰り返して複数の打抜きカスWbを形成及び積層して回収ボックス6側に押込んで、順次打抜きカスWbを回収ボックス6へ移動させる方法や、図8(d)に示すように、回収ボックス6に例えば真空ポンプPとバルブVで構成された吸引手段を接続し、貫通部5を通じて打抜きカスWbを回収ボックス6内に吸引移動させる方法などを適用できる。
【0032】
また、貫通部5が気体噴射口としての機能する場合には、打抜きカスWbの形状に応じた位置に単個または複数個の貫通部5が配置され、貫通部5の打抜き刃3側とは反対側の開口部に、打抜き刃3の刃先側から気体の圧力で打抜きカスWbを排出するための気体噴き出し手段が接続された構造の打抜き用刃型1となる。貫通部5の形状や大きさは特に限定されず、例えば図9(a)と図9(a)のE-E´断面図である図9(b)に示す打抜き用刃型1のように、単個の断面円形の貫通穴5を打抜きカスの位置に対応する基板2の領域の略中央に配置した構造や、図9(c)と図9(c)のF-F´断面図である図9(d)に示す打抜き用刃型1のように、開口形状が円形の複数個の貫通穴5を多重同心円状に配置した構造などが適用できる。
【0033】
また、貫通部5が吸引口としての機能する場合には、貫通部5は減圧装置に接続され、図10で示すように、打抜き刃3の線状の凹部4で保持した打抜きカスWbと、打抜き刃3の内面と、基板2とで囲まれた空間内を貫通部5から脱気して減圧することにより、打抜き刃3の線状の凹部4で打抜きカスWbの打抜き断面を保持する作用に加えて、打抜きカスWbが打抜き刃3内に減圧保持されるため、より確実に打抜きカスWbを打抜き刃3内に保持することができる。特に、打抜きカスWbが打抜き刃3の線状の凹部4で膨出し難い場合に有効である。
【0034】
(打抜き用刃型に係る第2の実施形態)
本発明の打抜き用刃型は、打抜きカスを形成する部分の打抜き刃3の配置パターン(カットパス)が、図1に示した本実施形態に係る打抜き用刃型のようなクローズパス構造に限定されず、第2の実施形態として、オープンパス構造とすることもできる。以下、本発明の打抜き用刃型に係る第2の実施形態について、図11(a)に示した、被加工物W1を短冊状の打抜き成形体W1aと短冊状の打抜きカスW1bを形成する打抜き加工形態を例に、図11及び図12を参照して詳細に説明する。
【0035】
本発明の第2の実施形態に係る打抜き用刃型10は、図11(b)に示すように、基板20に直線状の複数の打抜き刃が平行に離間配置されたオープンパス構造の打抜き刃30を備え、打抜きカスW1bが形成される基板20の領域には、打抜きカスが通過可能な長尺の貫通部50を備えている。また、図11(b)のG-G´の断面図である図11(c)に示すように、打抜き用刃型10は、打抜きカスW1bの打抜き断面と接する側の打抜き刃30の面に、略小判状の複数の線状の凹部40が均等に配置されている。この打抜き用刃型10で被加工物W1を打抜き加工した時にも、複数の線状の凹部40の内部に打抜きカスW1bの打抜き断面が膨出変形することによって、打抜き刃30で打抜きカスW1bが保持される作用効果が発揮され、打抜きカスW1bが打抜き成形品W1aと分離して除去され、貫通部50を通じて打抜き用刃型10の外部に排出及び回収される。また、貫通部50を複数の小孔として配置し、気体噴き出し口として機能させれば、打抜き刃30の刃先側から打抜きカスW1bを排出して回収することもできる。
【0036】
また、打抜き刃3をオープンパス構造で配置した打抜き用刃型の別の打抜き形状の例として、図12(a)に示すように、打抜き成形体W2aがクローズパス構造の打抜き刃で形成される場合には、図12(b)に示す打抜き用刃型11のように、打抜き成形体W2aを打抜き加工するためのクローズパス構造の打抜き刃31の外側面に沿って打抜きカスW2bが形成されるが、打抜きカスW2bの打抜き断面を打抜き刃30の側面で保持するためには、隣接する打抜き刃30の打抜きカスW2bの打抜き断面と接触する外側面を対向させた部分で本発明の作用効果を発揮させる必要がある。そのため、図12(b)の例においては、隣り合う打抜き刃31の外側面が対向して配置された基板21の領域内に3つの貫通部51が設けられている。また、図12(b)のH-H´の断面図である図12(c)に示すように、隣接する打抜き刃31のお互いに対向する外側面に略小判状の複数の線状の凹部41が均等間隔でストライプ状に配置されている。この打抜き用刃型11で被加工物W2を打抜き加工した時にも、複数の線状の凹部41の内部に打抜きカスW2bの打抜き断面が膨出変形することによって打抜き刃31で打抜きカスW2bが保持される作用効果が発揮され、打抜きカスW2bが打抜き成形品W2aと分離して除去され、貫通部51を気体噴き出し口として機能さることによって、打抜き刃30の刃先側から打抜きカスW1bを排出して回収することもできる。
【0037】
この図11図12に例示した構造の打抜き用刃型10(11)のように、打抜き刃30(31)がオープンパスのパターンで配置されている場合には、貫通部5は吸引口としての機能は小さく、主に打抜きカスW1b(W2b)を打抜き刃30(31)とは反対側に移動させて回収するための回収口、または打抜き刃30(31)の刃先側から気体の圧力で打抜きカスWbを排出するための気体噴射口として機能する。
【0038】
(打抜き加工方法)
次に、本発明の打抜き加工方法について、具体的な実施形態を例示して説明する。
【0039】
(打抜き加工方法に係る第1の実施形態)
本発明の打抜き加工方法に係る第1の実施形態は、被加工物を打抜き用刃型で抜く打抜き工程と、打抜きカスの打抜き断面を打抜き刃の少なくとも凹部4で保持するカス保持工程と、カス保持工程で保持した打抜きカスを打抜き用刃型に備えられた回収手段によって回収する回収工程とを備えている。以下、本実施形態について図13を参照しながら詳しく説明する。
【0040】
本実施形態に係る打抜き加工方法で用いる打抜き用刃型1は、図13(a)に示したように、基板2と、基板2の片面に取り付けられた打抜き刃3とからなり、打抜き刃3で打抜きカスWbが形成される位置に対応する基板2の領域内に貫通部5を備えており、打抜き刃3は打抜きカスWbの打抜き断面と接する面に打抜き刃3の先端に達しない線状の凹部4を少なくとも1つ備えており、最も刃先側の凹部4の端部から刃先までの最短距離が被加工品Wの厚みよりも小さくなるように配置されている。図13(a)では、図3に例示した直線状の複数の線状凹部が均等間隔でストライプ状に配置されたパターンを例示している。貫通部5の打抜き刃3側の開口形状は打抜き刃3で形成される打抜きカスの形状に沿った形状であり、貫通部5の打抜き刃3側とは反対側の開口部に接続された回収ボックス6が回収手段として備えられている。この打抜き用刃型1を打抜き加工装置の上部にある昇降動自在な基台(図示省略)に取付け、打抜き刃3と対向する位置に設置された載置台S上に被加工物Wを設置する。
【0041】
打抜き工程では、図13(b)に示したように、打抜き加工装置の基台を被加工物Wに向かって移動させ、打抜き刃3を被加工物Wに押し入れ、被加工物Wを貫通する位置まで押し切って、打抜き成形品Waと打抜きカスWbを形成する。この打抜き工程において、被加工物Wの打抜き断面が打抜き刃3の凹部4に達すると、打抜き刃3の凹部4内に被加工物Wの打抜き断面が膨出することによって膨出変形部が打抜き刃3の進行とともに形成されて、打抜きカスWbの打抜き断面を打抜き刃3で保持する作用が増加しながら打抜き工程の完了時に最大となり、打抜きカスWbの打抜き断面が打抜き刃3の表面で確実に保持された状態になる。
【0042】
続いて実行されるカス除去工程では、図13(c)に示したように、打抜きカスWbの打抜き断面が打抜き刃3の表面で保持された状態で打抜き用刃型1が打抜き加工の開始位置に向かって移動して被加工物Wから離反すると、打抜きカスWbのみが打抜き刃3で保持されて載置台Sから除去される。
【0043】
カス除去工程で打抜き刃3によって保持されて除去された打抜きカスWbは、回収工程において、基板2に設けられた貫通部5を通過して、貫通部5に接続された回収ボックス6からなる回収手段内に移動し回収される。回収工程の具体例としては、カス除去工程で打抜き刃3に打抜きカスWbを保持した状態で、打抜き工程とカス除去工程を繰り返すことによって、図13(d)に示すように複数の打抜きカスWbが積層されながら順次基板2側に移動していき、基板2に設けられた貫通部5を通過して、貫通部5に接続された回収手段である回収ボックス6に回収される実施形態を適用できる。また、別の回収工程の実施形態として、図8(d)の例で説明したように、カス除去工程と同時またはその後に貫通部5を通じて回収ボックス6側から打抜きカスWbを吸引して回収してもよい。この場合には、回収ボックス6に接続された真空ポンプPを稼働させてバルブVで切り換え制御し、打抜きカスWbを吸引して回収ボックス6内に回収すればよい。
【0044】
(打抜き加工方法に係る第2の実施形態)
本発明の打抜き加工方法に係る第2の実施形態は、被加工物を打抜き用刃型で抜く打抜き工程と、打抜きカスの打抜き断面を打抜き刃の少なくとも凹部で保持するカス保持工程と、カス保持工程で保持した打抜きカスを気体噴き出し手段によって貫通部から供給される気体圧によって排出するカス排出工程とを備えている。以下、図14を参照しながら本実施形態について詳しく説明する。
【0045】
本実施形態に係る打抜き加工方法で用いる打抜き用刃型1は、図14(a)に示すように、基板2と、基板2の片面に取り付けられた打抜き刃3とからなり、打抜き刃3で打抜きカスWbが形成される位置に対応する基板2の領域内の略中央に一つの貫通部5を備えており、打抜き刃3は打抜きカスWbの打抜き断面と接する面に打抜き刃3の先端に達しない線状の凹部4を少なくとも1つ備えており、最も刃先側の凹部4の端部から刃先までの最短距離が被加工品Wの厚みよりも小さくなるように配置されている。図14(a)では、図3に例示した直線状の複数の線状凹部が均等間隔でストライプ状に配置されたパターンを例示しているが、図7で例示したような様々な凹部パターンを適用できる。貫通部5は、打抜き刃の方向に気体を噴射する気体噴射口として機能し、貫通部5の打抜き刃3側とは反対側の開口部に、気体噴き出し手段61としてコンプレッサーCが接続されている。この打抜き用刃型1を打抜き加工装置の上部にある昇降動自在な基台(図示省略)に取付け、打抜き刃3と対向する位置に設置された載置台S上に被加工物Wを設置する。
【0046】
本実施形態に係る打抜き加工方法は、図14(b)及び図14(c)に示したように、前述の打抜き加工方法に係る第1の実施形態と同様の操作と作用によって打抜き工程とカス除去工程を実行し、打抜き刃3で保持された状態で載置台Sから除去された打抜きカスWbは、図14(d)に示すように、カス排出工程において、貫通部5に接続された気体噴き出し手段61から供給される空気などの気体圧によって打抜き刃3の先端側から所定の回収ボックス(図示せず)排出される。
【0047】
また、本発明の打抜き加工方法に係る第1の実施形態及び第2の実施形態において、打抜き刃3の凹部4による打抜きカスWbの打抜き断面の保持作用を補う目的で、カス除去工程のみ、または打抜き工程とカス除去工程の両方において、打抜きカスWbと、打抜き刃3の内面と、基板2とで囲まれた空間内を貫通部5から脱気して減圧してもよい。なお、打抜き加工方法に係る第2の実施形態において、上述の脱気減圧操作を組合せる場合には、カス除去工程から回収工程へ移行するタイミングで減圧するための真空ポンプPなどの減圧手段と、気体を噴出するためのコンプレッサーCなどの気体噴射手段を切り換え弁Vなどで切換えて制御する構成とすればよい。
【0048】
以上の通り、本発明について具体的に説明したが、以上述べた打抜き用刃型並びに打抜き加工方法に係る実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の打抜き用刃型は、打抜き刃内に打抜きカスを保持することで打抜き成形品と分離して打抜きカスを回収できるため、打抜きカスの除去が必要になる打抜き加工を効率化に有用であり、特に可撓性と曲げ弾性に乏しい材料の打抜き加工に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1、10、11 打抜き用刃型
2、20、21 基板
3、30、31 打抜き刃
4、4a、4b、4c、40、41 線状の凹部(線状溝)
4c ドット状凹部
5、50、51 貫通部
6 回収手段
61 吸引手段
W、W1、W2 被加工物
Wa、W1a、W2a 打抜き成形品
Wb、W1b、W2b 打抜きカス
C コンプレッサー
P 真空ポンプ
V バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14