IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱樹脂インフラテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-パネルおよびタンク 図1
  • 特開-パネルおよびタンク 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159244
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】パネルおよびタンク
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221006BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20221006BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20221006BHJP
   C08J 5/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/14
C08K7/18
C08J5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060907
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021061773
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安藤 隆臣
(72)【発明者】
【氏名】八木 善史
(72)【発明者】
【氏名】西澤 保
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 竜也
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD38
4F072AF04
4F072AF06
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH21
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL07
4J002AA022
4J002CF211
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL007
4J002DL008
4J002FA047
4J002FA048
4J002FB267
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD018
4J002GG01
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の粉末を材料に用いた、所期の成形性および機械的強度を実現可能なGFRP製のパネルおよびタンクを実現する。
【解決手段】パネルは、熱硬化性樹脂と、無機粒子と、GFRP粉末と、ガラス繊維とを含有する。パネルにおいて、GFRP粉末の含有量は1~10質量%であり、降伏点における曲げ強度は150~210MPaである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、無機粒子と、ガラス繊維強化プラスチックの粉末と、ガラス繊維と、を含有し、
前記ガラス繊維強化プラスチックの粉末の含有量は、1~10質量%であり、
降伏点における曲げ強度は、150~210MPaである、ガラス繊維強化プラスチック製のパネル。
【請求項2】
曲げ弾性率は7700~11000MPaである、請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記無機粒子の含有量は、1~45質量%である、請求項1および2に記載のパネル。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステルを含む一以上の樹脂である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項5】
前記無機粒子は、炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、マイカ粒子、ゼオライト粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子および酸化亜鉛粒子からなる群から選ばれる一以上の粒子である、請求項1~4のいずれか1項に記載のパネル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のパネルを組み立てて構成されるタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルおよびタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維強化プラスチック製のパネル(「GFRPパネル」とも言われる)は、複数の単位パネルを組立てて接合し、貯槽を形成する組立式のタンクの好適に使用される。当該組み立て式のタンクは、例えば貯水槽として使用される。GFRPパネルは、シート状成形材料(「SMC」とも言われる)の加熱成形によって製造することができる。
【0003】
一方、プラスチック製品については、環境への負荷を軽減する観点から、そのリサイクルが行われる。強化繊維プラスチック成形品をリサイクルする技術には、回収した強化繊維プラスチック成形品を粉砕してなる粉末を、強化繊維プラスチック成形品の材料の一部として強化繊維プラスチック成形品の製造に利用する技術が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-169407号公報
【特許文献2】特開2005-305876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガラス繊維強化プラスチック製のパネルを上述の従来技術のように原料として再利用すると、得られる強化繊維プラスチック成形品における強度などの機械的特性が不十分となることがある。
【0006】
本発明の一態様は、ガラス繊維強化プラスチックの粉末を含有するとともに、所期の機械的特性を発現するガラス繊維強化プラスチック製のパネルおよびタンクを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るガラス繊維強化プラスチック製のパネルは、熱硬化性樹脂と、無機粒子と、ガラス繊維強化プラスチックの粉末と、ガラス繊維と、を含有し、前記ガラス繊維強化プラスチックの粉末の含有量が1~10質量%であり、降伏点における曲げ強度が150~210MPaである。
【0008】
さらに、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るタンクは、本発明の一態様に係るガラス繊維強化プラスチック製のパネルを組み立てて構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ガラス繊維強化プラスチックの粉末を含有するとともに、所期の機械的特性を発現するガラス繊維強化プラスチック製のパネルおよびタンクを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るパネルの凹凸形状を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタンクの一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔パネル〕
本発明の実施形態におけるパネルは、ガラス繊維強化プラスチック製のパネル(以下、「GFRPパネル」とも言う)である。当該パネルは、熱硬化性樹脂と、無機粒子と、ガラス繊維強化プラスチックの粉末(以下、「GFRP粉末」とも言う)と、ガラス繊維と、を含有する。まず、当該パネルの物性を説明し、当該パネルの材料をその後に説明する。なお、本明細書において、特に断り書きがなければ、「~」は、その両端の数値を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0012】
[物性]
<曲げ強度>
上記GFRPパネルの曲げ強度は、150~210MPaであることが好ましい。当該GFRPパネルの上記曲げ強度が上記の範囲にあることは、組み立て式のタンクの用途に適している。上記の用途における十分な強度を発現する観点から、GFRPパネルの曲げ強度は、150Mpa以上であることがより好ましく、160Mpa以上であることがさらに好ましい。また、GFRPパネルの曲げ強度は、上記タンク用のパネルの材料として通常使用される材料で実現可能な観点から、210Mpa以下であることがより好ましく、200Mpa以下であることがさらに好ましい。
【0013】
GFRPパネルの曲げ強度は、JIS K7171(ISO178)で規定される曲げ応力の測定に基づいて求めることが可能である。
【0014】
GFRPパネルの曲げ強度は、後述するシート材の量あるいは無機粒子およびGFRP粉末の含有量によって調整することが可能である。たとえば、シート材の含有量が多いとGFRPパネルの曲げ強度が高くなる傾向にある。また、無機粒子およびGFRP粉末の含有量が多いとGFRPパネルの曲げ強度が高くなる傾向にある。
【0015】
<曲げ弾性率>
上記GFRPパネルの曲げ弾性率は、7700~11000MPaであることが好ましい。当該GFRPパネルの上記曲げ弾性率が上記の範囲にあることは、組み立て式のタンクの用途に適している。上記の用途における十分な強度を発現する観点から、GFRPパネルの降伏点における曲げ弾性率は7700Mpa以上であることがより好ましく、7800Mpa以上であることがさらに好ましい。また、GFRPパネルの曲げ弾性率は、上記タンク用のパネルの材料として通常使用される材料で実現可能な観点から、12000Mpa以下であることがより好ましく、11000Mpa以下であることがさらに好ましい。
【0016】
GFRPパネルの曲げ弾性率は、JIS K7171(ISO178)にしたがって測定することにより求めることが可能である。
【0017】
GFRPパネルの曲げ弾性率は、後述するシート材の量あるいは無機粒子およびGFRP粉末の含有量によって調整することが可能である。たとえば、シート材の含有量が多いとGFRPパネルの曲げ弾性率が高くなる傾向にある。また、無機粒子およびGFRP粉末を添加するとGFRPパネルの曲げ弾性率が高くなるが、逆に添加しすぎると脆くなり、曲げ弾性率は低下する傾向にある。
【0018】
<その他の物性>
本発明の実施形態のパネルは、本実施形態の効果が得られる範囲において、前述した以外の他の物性を有していてもよい。たとえば、GFRPパネルの厚さは、SMCの成形によって所期の形状に成形可能な範囲において適宜に決めることができる。GFRPパネルの厚さは、一定であってもよいし、複数箇所で異なっていてもよい。GFRPパネルの厚さは、例えば、GFRPパネルに所望の凹凸形状を形成する観点、および、組み立て式のタンクの用途に好適な強度を発現する観点から、5~20mmの範囲内であってよい。
【0019】
また、GFRPパネルの表面には、加飾の観点からフィルムを貼り付けてもよい。この場合、GFRPパネルの表面が平滑であることは、加飾フィルムとの接着性を高める観点から好ましい。このような観点から、GFRPパネルの表面粗さは、十点平均粗さで50μm以下であることが好ましい。GFRPパネルの表面粗さは、樹脂成形体の表面粗さを測定可能な公知の方法によって求めることが可能である。また、GFRPパネルの表面粗さは、熱処理あるいは研磨によって調整することが可能である。
【0020】
<形状>
本実施形態のGFRPパネルは、凹凸形状を有していてもよい。当該凹凸形状は、GFRPパネルの用途に適した形状の範囲、あるいは、GFRPパネルの製法から実現可能な範囲から適宜に決めることが可能である。図1は、本発明の一実施形態のGFRPパネルの凹凸形状を説明するための図である。
【0021】
図1に示されるように、GFRPパネル20は、矩形の平面形状を有しており、平板状の周縁部21と、周縁部21よりも内側の凸曲面部22とを有している。凸曲面部22は、略矩形の平面形状を有しており、当該平面形状の縦方向および横方向のいずれの方向においても凸の曲面で形成されている。なお、GFRPパネル20は、組み立て式タンクの外装用パネルの一例である。
【0022】
凸曲面部22は、縦方向に、第一凹部23、第二凹部24および第三凹部25を有している。第一凹部23および第三凹部25は、いずれも、略半円状の平面形状を有しており、弧の部分の斜面部231、251と、それに囲まれる平板部232、252とを有している。斜面部231、251は、それぞれ、GFRPパネル20を平面視したときの凹曲面部である。第二凹部24は、凸曲面部22の頂部であって平面形状における中央部に位置し、略矩形の平面形状を有している。
【0023】
GFRPパネル20の凸曲面部22、第一凹部23、第二凹部24および第三凹部25のうち、平面視したときの当該曲面の部分における曲率半径(「第一の曲率半径」とも言う)は、GFRPパネルの用途における機能性および意匠性の観点、および前述の加飾フィルムの十分な密着性の観点から、150mm以上であってよく、160mm以上であってよく、170mm以上であってよい。同様の観点から、第一の曲率半径は、400mm以下であってよく、380mm以下であってよく、360mm以下であってよい。なお、第一の曲率半径は、例えば図1中の一点鎖線で示される円C1、C2のそれぞれの半径である。円C1は、平面視したときに第一凹部23の斜面部231の上縁部にほぼ接する円である。円C2は、平面視したときに第三凹部25の斜面部251の上縁部にほぼ接する円である。
【0024】
また、GFRPパネル20の凹凸形状の断面における曲面の部分の曲率半径(「第二の曲率半径」とも言う)は、GFRPパネルの用途における機能性および意匠性の観点から、1000mm以上であってよく、1050mm以上であってよく、1100mm以上であってよい。同様の観点から、第二の曲率半径は、1800mm以下であってよく、1700mm以下であってよく、1600mm以下であってよい。なお、第二の曲率半径は、例えば図1中の二点鎖線で示される弧Aを含む円の半径である。弧Aは、例えば、平面視したときにGFRPパネル20の平面形状を縦方向に二分する直線である。
【0025】
さらに、GFRPパネル20の凹凸形状における凹凸の程度、例えば凸部と凹部との最大の高低差は、GFRPパネルの用途における機能性および意匠性の観点、および前述の加飾フィルムの十分な密着性の観点から、30mm以上であってよく、50mm以上であってよく、70mm以上であってよい。また、上記の観点から、上記の最大の高低差は、120mm以下であってよく、100mm以下であってよく、90mm以下であってよい。当該最大の高低差は、例えば、図1に示されるGFRPパネル20であれば、周縁部21から凸曲面部22の頂部までの鉛直方向における距離である。
【0026】
[材料]
<熱硬化性樹脂>
本発明の実施形態のGFRPパネルは、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂は、繊維強化プラスチックにおいて使用され得る熱硬化性樹脂であればよく、熱硬化性樹脂の例には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタンおよび熱硬化性ポリイミドが含まれる。本発明の実施形態では、不飽和ポリエステルを含む一以上の樹脂であることが好ましい。不飽和ポリエステルのなかには、オルソ系、イソ系、テレ系、ビス系等があるが物性、調達が安易なこと、保存安定性の観点からイソ系、テレ系、ビス系が好ましい。
熱硬化性樹脂成形体。
【0027】
熱硬化性樹脂は、合成品でも市販品でもよい。たとえば、不飽和ポリエステルであれば、その具体例には、市販品であれば、昭和電工(株)製「リゴラック」(「リゴラック」は同社の登録商標)、日本ユピカ(株)製「ユピカ」、(「ユピカ」は同社の登録商標)等が挙げられる。
【0028】
GFRPパネルにおける熱硬化性樹脂の含有量は、GFRPパネルの用途または所期の物性に応じて適宜に決めることができる。たとえば、GFRPパネルの用途が組み立て式のタンクに用いられるGFRPパネルである場合には、GFRPパネルにおける熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂による特性を十分に発現させる観点から、25質量%以上であることが好ましく、27質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、上記の用途であれば、GFRPパネルにおける熱硬化性樹脂の含有量は、無機粒子などの粉末材料による特性を十分に発現させる観点から、45質量%以下であることが好ましく、43質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂の粘度は、25℃において5000mPa・s以上であることが好ましく、5500mPa・s以上であることがより好ましく、6000mPa・s以上であることがさらに好ましい。これにより、含浸させる工程において組成物がシート材から流出することを抑制することができる。また、熱硬化性樹脂の粘度は、25℃において、14000mPa・s以下であることが好ましく、13500mPa・s以下であることがより好ましく、13000mPa・s以下であることがさらに好ましい。これにより、含浸させる工程において当該組成物をシート材に含浸させることがより容易となる。また、組成物が含有する粉末材料を組成物中及びSMC中により均一に存在させることができるので、粉末材料の機能をより好適に発現させることができる。熱硬化性樹脂の粘度は、公知の測定技術、例えば回転式粘度計、によって測定することが可能である。
【0030】
<無機粒子>
本発明の実施形態のGFRPパネルは、無機粒子を含有する。GFRPパネルにおける無機粒子の含有量が少なすぎると、GFRPパネルの所望の用途に応じた機械的強度が不十分になることがあり、無機粒子の含有量が多すぎると、GFRPパネルの所望の用途に応じた靭性が不十分になることがある。GFRPパネルの用途に好適な機械的性状を実現する観点から、GFRPパネルにおける無機粒子の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、また、45質量%以下であることが好ましく、44質量%以下であることがより好ましく、43質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
無機粒子は、GFRPパネルの用途に応じて、GFRPパネルの材料に利用可能な範囲から適宜に選択することが可能である。無機粒子は、一種でもそれ以上でもよい。無機粒子は、一般に樹脂組成物の機械的強度を高める観点で用いられる粒子であってよいが、それに加えて、樹脂組成物の着色に用いられてもよい。無機粒子の例には、炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、マイカ粒子、ゼオライト粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子および酸化亜鉛粒子が含まれる。なかでも、無機粒子は、強度とコスト低減の両立の観点から、炭酸カルシウム粒子であることが好ましい。
【0032】
無機粒子の粒径は、無機粒子による所期の機能に応じて適宜に決めてよい。たとえば、GFRPパネルにおいて骨材として当該パネルの機械的強度保持を阻害しない(または高める)観点であれば、無機粒子の粒径は、体積平均粒径で1~100μmであってよいし、成形品の表面における凹凸を抑制する観点であれば、1~1000μmであってよい。無機粒子は、同一の機能を発現する粒子径の範囲において二以上のピークを有していてもよいし、例えば無機粒子による二以上の機能を発現させる観点から、粒度分布において二以上のピークを含んでいてもよい。
【0033】
無機粒子の粒径は、体積基準の粒子径を測定する公知の方法によって測定することが可能であり、あるいはカタログ値であってもよい。無機粒子の粒径は、分級によって、あるいは分級品の混合によって調整することが可能である。また、無機粒子の粒子形状は、限定されず、球形であってもよいし、繊維状であってもよいし、不定形であってもよい。
【0034】
無機粒子は、吸湿する特性を有するために、上記の組成物の含水量および粘度に影響を与えることがある。また、無機粒子の吸湿量は、季節によっても変化する。したがって、組成物の調製に際しては、熱風循環式乾燥機などの乾燥機を用いて無機粒子を乾燥し、無機粒子の吸湿量を一定に調整した後に組成物を調製することが好ましい。
【0035】
<ガラス繊維強化プラスチックの粉末(GFRP粉末)>
本実施形態のGFRPパネルは、GFRP粉末を含有する。GFRP粉末の含有量が少なすぎると、GFRPパネルの機械的強度が不十分になることがある。GFRP粉末の含有量が多すぎると、GFRPパネルにおいて粉末材料が偏在し、あるいは粉末材料の含有量が不十分となって所期の機械的特性が十分に発現されないことがある。本実施形態のGFRPパネルにおけるGFRP粉末の含有量は、GFRPパネルに所期の機械的特性を十分に発現させる観点から、1~10質量%である。なお、「粉末材料」とは、特に断り書きがない限り、本明細書では無機粒子およびGFRP粉末の総称を意味する。
【0036】
GFRPパネルにおけるGFRP粉末の含有量は、機械的強度を十分に高める観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、GFRP粉末の含有量は、所期の機械的特性を十分に高める観点から、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
GFRP粉末は、使用されたGFRP物を粉砕して形成されるGFRP物のリサイクル粉末であることが、資源の回収と再利用を実現する観点から好ましい。リサイクルされるGFRP物は、本発明の実施形態におけるGFRPパネルと同じ用途の物であってもよいし、異なる用途の物であってもよく、また、同じ組成を有していてもよいし、異なる組成を有していてもよい。
【0038】
上記GFRP物の例には、GFRP製の船の船体、組み立て式タンクを構成するパネル、およびその他のGFRP製品の廃棄物、が含まれる。GFRP物のリサイクル粉末を使用することは、従来廃棄処理に問題のあったGFRP製品の廃棄物の産生量を軽減し、有効活用する観点から好ましい。
【0039】
GFRP粉末の粒径は、無機粒子の粒径と同様に、GFRPパネルの用途に応じたGFRPパネルの所期の特性に応じて適宜に決めてよく、例えば体積平均粒径で1~20μmであってよい。GFRP粉末の粒子形状も、限定されず、球形であってもよいし、繊維状であってもよいし、不定形であってもよい。さらに、GFRP粉末も、その粒度分布において二以上のピークを含んでいてもよい。GFRP粉末の粒径も、分級によって、あるいは分級品の混合によって調整することが可能である。
【0040】
上記組成物における無機粒子およびGFRP粉末(粉末材料)の含有量は、少なすぎるとGFRPパネルにおいて粉末材料による機能の発現が不十分となることがあり、多すぎると当該パネルが脆くなることがある。無機粒子およびGFRP粉末の所期の機能は、GFRPパネルの用途または所期の物性に応じて適宜に決めてよい。
【0041】
<ガラス繊維>
本実施形態のGFRPパネルは、ガラス繊維を含有する。一般に、FRPの強度を持たせるためには、ロービングと呼ばれる織られたガラス繊維を使用する場合がある。また、FRP中のガラス繊維として、ガラス繊維が四方八方に広がった不織状態のガラス繊維(「マット」とも呼ばれる)を使用する場合がある。本発明の実施形態において、ガラス繊維は、通常、平面方向に広がりを有し、当該平面方向において不規則に配向する形態で使用され得る。ガラス繊維、上記のロービングであってもよいし、マットであってもよい。あるいは、ガラス繊維は、シート状に分散されてなるガラス繊維の層であってもよい。なお、本明細書において、このようなシート状に配置されているガラス繊維を「シート材」とも言う。当該シート材は、GFRP用のSMCの製造に使用される公知の材料であってよい。
【0042】
GFRPパネルにおけるガラス繊維の含有量は、GFRPパネルの用途または所期の物性に応じて適宜に決めることができる。たとえば、GFRPパネルにおけるガラス繊維の含有量は、ガラス繊維による機械的特性を十分に発現させる観点から、25質量%以上であることが好ましく、27質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、GFRPパネルにおけるガラス繊維の含有量は、組み立て式のタンクに用いられるGFRPパネルの用途の観点から、45質量%以下であることが好ましく、43質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
ガラス繊維の寸法は、GFRPパネルの用途または所期の物性に応じて適宜に決めることができる。たとえば、ガラス繊維の平均繊維径は、GFRPパネルに十分な強度を発現させる観点から、6μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、ガラス繊維の平均繊維径は、ガラス繊維による機械的特性を適切に発現させる観点から、20μm以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましく、16μm以下であることがさらに好ましい。
【0044】
また、ガラス繊維の平均繊維長は、GFRPパネルにおいてガラス繊維による機械的特性を十分に発現させる観点から、30mm以上であることが好ましく、40mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることがさらに好ましい。また、ガラス繊維の平均繊維長は、GFRPパネルの製造時における取り扱い性の観点から、80mm以下であってよい。
【0045】
<他の材料>
本発明の実施形態におけるGFRPパネルは、本実施形態の効果が得られる範囲において、前述した各種材料以外の他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分は、一種でもそれ以上でもよい。当該他の成分は、それによる所期の効果と本実施形態の効果とが得られる種類および量で使用され得る。当該他の成分の例には、溶剤、熱可塑性樹脂、ガラス繊維以外の無機繊維、および、熱硬化性樹脂の硬化剤、が含まれる。
【0046】
溶剤は、通常、低沸点または揮発性の溶剤であることが、GFRPパネルを製造する過程での材料組成物の物性を適宜に調整する観点から好ましい。溶剤の例には、酢酸エチル、ブタノン、イソプロピルアルコールおよびアセトンが含まれる。また、熱可塑性樹脂の例には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアミドおよびポリ塩化ビニルが含まれる。これらの熱可塑性樹脂は、これらの樹脂の製品の廃棄物またはその粉砕物であってもよい。さらに、ガラス繊維以外の無機繊維の例には、金属繊維およびセラミック繊維が含まれる。
【0047】
[製造方法]
本発明の実施形態におけるGFRPパネルは、GFRPパネルの製法として公知の方法を利用して製造することが可能である。たとえば、本実施形態のGFRPパネルは、前述の材料を含有するSMCを加熱成型することによって製造することが可能である。SMCの加熱成形方法は、GFRPパネルの製法として適当な方法であればよく、たとえば加熱真空成形であってよい。
【0048】
SMCは、上記の材料を含有する以外は、SMCの公知の製造方法を利用して製造することが可能であり、一例として、以下に記載する方法によって製造することが可能である。当該方法では、ポリエチレン製シートなどの熱可塑性樹脂製のシートが第一のロールから所定の方向に沿って搬送される。また、ガラス繊維のシート材が、第二のロールから上記シート上に供給され、当該シートに重ねられて所定の方向へ搬送される。そして、樹脂組成物がTダイから、シートに重ねられたシート材の上からシート材の幅方向に沿って供給される。シートとともに搬送されているシート材には、樹脂組成物が含浸する。当該樹脂組成物は、前述した無機粒子、GFRP粉末および熱硬化性樹脂を含有する組成物である。こうして、シートと樹脂組成物が含浸したシート材との積層体が製造される。こうして、シート上に担持されているSMCが製造される。SMCは、例えばカッターによって適当な大きさに切断される。
【0049】
上記のSMCの製造方法において、熱可塑性樹脂製のシートはなくてもよい。たとえば、フッ素樹脂製または金属製などの十分な離型性を有する搬送ベルト上にガラス繊維のシート材が直接供給されてもよい。また、樹脂組成物をまず熱可塑性樹脂製のシート上に供給し、次いで当該シート上の樹脂組成物にガラス繊維を分散してガラス繊維のシート材を構成してもよい。また、ガラス繊維のシート材は、シート上にガラス繊維を散布することで形成されてもよい。また、製造したSMCは、切断せずに巻き取って、ロール状の形態で取り扱ってもよい。さらに、SMCは、シート材を上から被覆する熱可塑性樹脂製のさらなるシートを有してもよい。このさらなるシートの提供の時期は、シート材に含浸した樹脂組成物が増粘し得る範囲において適宜に決めてよく、樹脂組成物の増粘前であってもよいし、増粘後であってもよい。
【0050】
GFRPパネルをSMCの加熱成形によって製造する場合では、成形時のSMCの温度を適切に調整することが、前述した凹凸形状のような所定の形状を有するGFRPパネルの製造における成形不良の発生を抑制する観点から好ましい。
【0051】
[微視的構造の観察]
本実施形態のGFRPパネルでは、たとえばX線分析顕微鏡による元素マッピングによって、シート材由来のガラス繊維と、それ以外のガラス、たとえばGFRP粉末由来のガラス、とを判別することが可能である。ガラスがGFRP粉末由来であることは、たとえば電子顕微鏡または光学顕微鏡での観察によって、GFRPに含まれる特定の元素または成分の有無および分布、あるいは廃棄物由来の成分の確認に基づいて推定することが可能である。
【0052】
[用途]
本実施形態のGFRPパネルは、組み立て式タンクの外装用のパネル以外の他の用途にも用いることができ、たとえば、パネル状の部材の組み立てまたは接合によって製造される製品に適宜に用いられる。組み立て式タンク以外に、本実施形態のGFRPパネルで構成され得る製品の例には、浴槽、浴室パネル、防水パン、洗面化粧台、洗面ボール、台所カウンター、浄化槽、小型ボート、船舶用部材および自動車用部材が含まれる。
【0053】
〔タンク〕
本発明の実施形態のタンクは、前述の本発明の実施形態のパネルを組み立てて構成される。図2は、本発明の一実施形態に係るタンクの一例を模式的に示す図である。図2に示されるように、タンク30は、GFRPパネル31、天井33および底板34を有しており、架台35の上に載置されている。
【0054】
GFRPパネル31は、矩形の平面形状を有している。GFRPパネル31の縁は、接合縁32となっている。タンク30の側部は、隣り合うGFRPパネル31の接合縁32同士を、防水用のパッキンを介して接合縁においてボルトおよびナットで締結することにより構成されている。天井33および底板34も同様に、接合縁での接合によって構成されている。GFRPパネル31は、前述した本実施形態のGFRPパネルである。天井33および底板34も、本実施形態のGFRPパネルの接合で構成することができる。
【0055】
タンク30は、GFRPパネル31同士の接合部分を補強する補強材を鉛直方向または水平方向に備えていてもよい。このような補強材および架台35は、十分に高い剛性を有していればよく、GFRP製、コンクリート製あるいは金属製の部材であってもよい。当該金属の例には、鋳鉄、鋳鋼、銅、銅合金、真鍮、ステンレス、アルミニウムおよびチタンが含まれる。
【0056】
GFRPパネル31は、タンク30に適したさらなる構成を伴ってもよい。GFRPパネル31は、たとえば保温材をタンク30の内側の表面上に有していてもよいし、前述した加飾フィルムを外表面上に有していてもよい。
【0057】
〔作用効果〕
本実施形態のGFRPパネルは、熱硬化性樹脂、無機粒子、GFRP粉末およびガラス繊維を含有する。GFRP粉末は、無機粒子と同等かそれ以上にGFRPパネルの強度向上に寄与する。その結果、GFRP物のリサイクル粉末を含有していても、本実施形態のGFRPパネルは、降伏点における引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率において所期の物性を発現させることができる。その結果、所期の成形性および機械的強度を実現可能であり、このようなパネルを組み立てて構成されるタンクに好適に使用することが可能である。
【0058】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係るガラス繊維強化プラスチック製のパネルは、熱硬化性樹脂と、無機粒子と、ガラス繊維強化プラスチックの粉末と、ガラス繊維と、を含有し、ガラス繊維強化プラスチックの粉末の含有量は、1~10質量%であり、降伏点における曲げ強度は、150~210MPaである。上記の構成によれば、所期の成形性および機械的強度を実現可能なガラス繊維強化プラスチック製のパネルを提供することができる。
【0059】
本実施形態において、GFRPパネルの曲げ弾性率が7700~11000MPaであることは、組み立て式のタンクの用途に適した機械的強度を、GFRPパネルに発現させる観点から、より一層効果的である。
【0060】
本実施形態において、無機粒子の含有量が1~45質量%であることは、所期の機械的特性を有するGFRPパネルを実現する観点から、より一層効果的である。
【0061】
本実施形態において、熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステルを含む一以上の樹脂であることは、組み立て式のタンクの用途に適した機械的特性および環境安定性を発現させる観点から、より一層効果的である。
【0062】
本実施形態において、無機粒子が炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、マイカ粒子、ゼオライト粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子および酸化亜鉛粒子からなる群から選ばれる一以上の粒子であることは、GFRPパネルの成形性および所望の機械的特性の発現の観点から、より一層効果的である。
【0063】
さらに本実施形態のタンクは、上記のパネルを組み立てて構成される。この構成によれば、所期の成形性および機械的強度を有するGFRPパネルによる組み立て式のタンクを提供することができる。
【0064】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0065】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0066】
〔実施例1〕
[SMCの製造]
120℃で3時間乾燥させた33質量部の炭酸カルシウム(CaCO、平均粒子径5μm)と、3質量部のGFRPのリサイクル粉末(GFRP粉末、平均粒子径12μm)とを混合し、粉末材料1を得た。
【0067】
次いで、36質量部の粉末材料1と34質量部の不飽和ポリエステル(不飽和PEs、樹脂粘度1700mPa・s)とを混合し、炭酸カルシウム粒子、GFRPのリサイクル粉末および不飽和ポリエステルを含有する組成物を得た。組成物の粘度を回転式粘度計によって測定したところ、9600mPa・sであった。また、当該組成物の含水量を測定したところ、920ppmであった。なお、当該含水量は、カールフィッシャー法を用いて求めた水分量である。
【0068】
次いで、30質量部のガラス繊維(平均繊維長:40~50mm、単位重量450g/mのチョップドストランドのシート材)を用意した。当該シート材の上から組成物を供給し、組成物の自重によって組成物1をシート材に含浸させた。
【0069】
[GFRPパネルの製造]
SMCを、金型に収容し、160℃、10MPaで十分に加熱加圧し、その後冷却することによって、厚さ3mmの板状のGFRPパネルを製造した。
【0070】
[GFRPパネルの評価]
<曲げ強度および曲げ弾性率>
GFRPパネルから試験片1を用意した。試験片1は、幅10mm×長さ80mm×厚み約3mmの矩形の板状片である。そして、試験片1の曲げ強度および曲げ弾性率をJIS K7171に準じて測定し、GFRPパネルの曲げ強度および曲げ弾性率とした。その結果、GFRPパネルの曲げ強度は200.2MPaであり、GFRPパネルの曲げ弾性率は10592MPaであった。
【0071】
〔実施例2〕
120℃で3時間乾燥させた31質量部の炭酸カルシウムと5質量部のGFRPのリサイクル粉末とを混合する以外は粉末材料1と同様に調製して粉末材料2を得た。そして、粉末材料1に代えて粉末材料2を用いる以外は実施例1と同様にして、組成物を調製し、SMCおよびGFRPパネルを製造し、評価した。
【0072】
〔実施例3〕
120℃で3時間乾燥させた29質量部の炭酸カルシウムと7質量部のGFRPのリサイクル粉末とを混合する以外は粉末材料1と同様に調製して粉末材料3を得た。そして、粉末材料1に代えて粉末材料3を用いる以外は実施例1と同様にして、組成物を調製し、SMCおよびGFRPパネルを製造し、評価した。
【0073】
〔実施例4〕
120℃で3時間乾燥させた26質量部の炭酸カルシウムと10質量部のGFRPのリサイクル粉末とを混合する以外は粉末材料1と同様に調製して粉末材料4を得た。粉末材料1に代えて粉末材料4を用いる以外は実施例1と同様にして、組成物を調製し、SMCおよびGFRPパネルを製造し、評価した。
【0074】
〔比較例1〕
120℃で3時間乾燥させた21質量部の炭酸カルシウムと15質量部のGFRPのリサイクル粉末とを混合する以外は粉末材料1と同様に調製して粉末材料C1を得た。粉末材料1に代えて粉末材料C1を用いる以外は実施例1と同様にして、組成物を調製した。得られた組成物は粘度が高く、流動性が不十分であり、シート材に十分に含浸せず、SMCを製造することができなかった。よってGFRPパネルを製造することができなかった。
【0075】
〔実施例5〕
120℃で3時間加熱して乾燥させたGFRPのリサイクル粉末を用いる以外は粉末材料4と同様に調製して粉末材料5を得た。そして、粉末材料4に代えて粉末材料5を用いる以外は実施例4と同様にして、組成物を調製し、SMCおよびGFRPパネルを製造し、評価した。
【0076】
〔比較例2〕
120℃で3時間加熱して乾燥させたGFRPのリサイクル粉末を用いる以外は粉末材料C1と同様に調製して粉末材料C2を得た。そして、粉末材料C1に代えて粉末材料C2を用いる以外は比較例1と同様にして、組成物を調製し、SMCおよびGFRPパネルを製造し、評価した。
【0077】
〔参考例〕
GFRPのリサイクル粉末を使用せず、120℃で3時間乾燥させた36質量部の炭酸カルシウムを用意して粉末材料R1を得た。粉末材料1に代えて粉末材料R1を用いる以外は実施例1と同様にして、組成物を調製し、SMCおよびGFRPパネルを製造し、評価した。
【0078】
〔実施例6〕
120℃で3時間乾燥させた35質量部の炭酸カルシウムと120℃3時間加熱して乾燥させた3質量部のGFRPのリサイクル粉末とを混合する以外は粉末材料1と同様に調製して粉末材料6を得た。そして、不飽和ポリエステルの量を32質量部とする以外は実施例1と同様に組成物を調製し、SMCを製造した。そして、実施例1と同様にしてGFRPパネルを製造し、評価した。
【0079】
〔実施例7〕
120℃で3時間乾燥させた40質量部の炭酸カルシウムと120℃3時間加熱して乾燥させた3質量部のGFRPのリサイクル粉末とを混合する以外は粉末材料1と同様に調製して粉末材料7を得た。そして、不飽和ポリエステルの量を27質量部とする以外は実施例1と同様に組成物を調製し、SMCを製造した。そして、実施例1と同様にしてGFRPパネルを製造し、評価した。
【0080】
〔結果の表示〕
上記の各例における材料の量比、組成物の含水量、組成物の粘度およびGFRPパネルの評価結果を表1および表2に示す。
【0081】
評価方法としてGFRPリサイクル粉末が未添加の参考例を基準に、曲げ強度が参考例のそれの90%以上を発現する物を実施例とし、それ未満の例を比較例とした。なお、実施例において、曲げ弾性率が参考例のそれの84%以上であることがより好ましい。
【0082】
【表1】
【0083】
[実施例8~13]
実施例1~6のSMCのそれぞれを、図1に示されるような形状に対応する金型に収容し、160℃、10MPaで十分に加熱加圧し、その後冷却することによって、実施例8~13のGFRPパネルのそれぞれを製造した。実施例8~13のGFRPパネルは、いずれも、図1に示されるような形状を有し、3mmの厚さを有する、組み立て式タンク用の外装用パネルである。
【0084】
[実施例14]
実施例8のGFRPパネルを用いて、図2に示されるようなタンクを製造した。また、参考例のSMCを用いて同様に外装用パネルを製造し、この外装用パネルを用いて図2に示されるようなタンクを製造した。こうして、本発明の実施例のGFRPパネルを用いることによって、GFRPのリサイクル粉末を含有しない従来のGFRPパネルと同様にして組み立て式タンクを構成し得ることを確認した。
【0085】
〔考察〕
表1から明らかなように、炭化カルシウムの一部をGFRPのリサイクル粉末に置き換えても、当該リサイクル粉末を用いない従来品と同様にGFRPパネルを製造することが可能である。
【0086】
また、炭化カルシウムの一部をGFRPのリサイクル粉末に置き換えて製造されたGFRPパネルは、概ね、当該リサイクル粉末を用いない従来のGFRPパネルに比べて、曲げ強度が90%~120%程度、曲げ弾性率が84%~120%発現している。
【0087】
さらに、炭化カルシウム粒子およびGFRPのリサイクル粉末の材料粉体の組成および含有量を調整することにより、組み立て用タンクを構成するためのGFRPパネルに適した機械的特性に調整することが可能である。
【0088】
一方で、比較例2のGFRPパネルは、その機械的特性(曲げ強度、曲げ弾性率)が不十分である。これは、ガラス繊維のシート材に含浸させる組成物の粘度が高すぎ、SMCにおいて組成物の材料が十分に分布せず、SMCを構成する材料による所期の機械的特性が十分に発現されないため、と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は種々の産業分野のパネル組立式タンクに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
20、31 GFRPパネル
21 周縁部
22 凸曲面部
23 第一凹部
24 第二凹部
25 第三凹部
30 タンク
32 接合縁
33 天井
34 底板
35 架台
231、251 斜面部
232、252 平板部
図1
図2