(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159248
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】積層構造体、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20221006BHJP
C08G 59/02 20060101ALI20221006BHJP
C08G 59/17 20060101ALI20221006BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20221006BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B32B27/30 102
C08G59/02
C08G59/17
C08G59/42
H05K1/03 630D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061167
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021062069
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】小池 直之
(72)【発明者】
【氏名】米山 成美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大地
(72)【発明者】
【氏名】宮部 英和
【テーマコード(参考)】
4F100
4J036
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AK01B
4F100AK12A
4F100AK22A
4F100AK36B
4F100AK42C
4F100AK53B
4F100AK54A
4F100AL01A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02B
4F100CA13B
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100GB43
4F100JB13B
4F100JK07
4J036AD08
4J036AD11
4J036CA21
4J036DB17
4J036DC45
4J036EA04
4J036FA05
4J036GA04
4J036HA02
4J036JA07
4J036JA08
4J036JA10
(57)【要約】
【課題】従来のPETフィルムを支持フィルムとして用いた場合の問題を解決し、回路の保護膜として、凹みやガタツキの無いパターンが得られ、十分な埋め込み性とカバーリング性があり、汚染や欠落の生じることなくソルダーレジストを形成することが可能な積層構造体等を提供する。
【解決手段】(A)支持体および(B)硬化性樹脂組成物層を有する積層構造体であって、(A)支持体がポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸から選ばれた少なくとも一種以上の樹脂を含み、(B)硬化性樹脂組成物層がアルカリ可溶性樹脂を含み、(A)支持体の引張弾性率が100~2500MPaの範囲である積層構造体等である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)支持体および(B)硬化性樹脂組成物層を有する積層構造体であって、
前記(A)支持体がポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸から選ばれた少なくとも一種以上の樹脂を含み、
前記(B)硬化性樹脂組成物層がアルカリ可溶性樹脂を含み、
前記(A)支持体の引張弾性率が100~2500MPaの範囲であることを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
基材に、前記(B)硬化性樹脂組成物層側をラミネートする用途用であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記(A)支持体の、前記(B)硬化性樹脂組成物層とは反対側に(C)第一フィルムを有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の積層構造体において、前記(B)硬化性樹脂組成物層を硬化したことを特徴とする硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物を含むことを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体部品の進歩により、電子機器は小型軽量化の流れが急速に進んでおり、これに伴い、プリント配線板においても導体回路の微細化、高密度実装が進みつつある。この高密度プリント配線板上に永久保護膜であるソルダーレジストを形成する手法として、近年、樹脂組成物を支持フィルム(主にPETフィルム)上に塗布乾燥して得られるドライフィルムタイプの積層構造体が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この積層構造体はPETフィルムごと回路基板上に真空熱プレス(以下、ラミネートとも称する)を用いて貼り合わせ、露光、現像などのパターニング工程と硬化工程を経ることでソルダーレジストを形成することができる。また従来、感光性ソルダーレジストへの露光工程では酸素による重合阻害の影響から光反応性が低下する問題があったが、ドライフィルムを用い、露光の際にもPETフィルム上から行うことで酸素による重合阻害を抑制することが出来ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最近の更なる回路パターンの微細化や基板の低背化に伴い、回路の保護膜としてソルダーレジストを形成するにあたり、従来のPETフィルムを用いたドライフィルムタイプの積層構造体は以下のような問題を有している。たとえば、PETフィルム中には、滑剤などの微量成分が含有されており、この微量成分によって、露光時に極微小の一部分が遮光されるという現象が起こる。このため、PETフィルムを用いたドライフィルムでは、得られるソルダーレジストのパターン表面や側面に、凹みやガタツキを生じるという問題がある。
【0006】
また、基板の低背化に伴い、回路上の絶縁層の薄膜化の要求が強くなっており、そのため、従来のPETフィルムを用いたドライフィルムタイプの積層構造体では回路間の絶縁性と回路上の保護を両立できるラミネートが困難であった。つまり、回路間の絶縁性を確保するためには、導体回路間に樹脂を充填する必要があるが、薄膜化の要求から流れる樹脂量が少なくなっているために、十分に回路間を埋めることが出来ずに空隙が残り、絶縁性を悪化させる原因となる。一方で、充填を重視して高温高圧のラミネートを行うと、回路の凸部上の樹脂層が薄くなり回路のカバーリング性が悪化するという問題が発生する。
【0007】
さらに微細回路間にラミネートにより樹脂組成物を流し込む必要があることから、ソルダーレジスト組成物には意図的に低粘度や低分子量の樹脂や化合物を用いているため、指触乾燥性が悪くなり、従来のPETフィルム等を支持フィルムとして用いた場合にPETフィルム等の剥離時に剥離痕がつく問題がある。また、PETフィルムの剥離後、現像前に剥離した基板を重ねておくこともあり、この時に重なった部分が融着して基板に汚染や欠落が生じる問題や、現像時に未露光部が装置の搬送系と接触し装置を汚染するといった問題も発生する。
【0008】
そこで、本発明の課題は、上述のPETフィルムを支持フィルムとして用いた場合の問題を解決し、回路の保護膜として、凹みやガタツキの無いパターンが得られ、十分な埋め込み性とカバーリング性があり、汚染や欠落の生じることなくソルダーレジストを形成することが可能な積層構造体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記積層構造体を硬化した硬化物や、前記硬化物を含むプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した。その結果、ポリ酢酸ビニルの鹸化物, ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体、ポリスチレンスルホン酸から選ばれる1種以上の樹脂を含む、引張弾性率が特定の範囲にある樹脂を支持体に用いることにより解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の積層構造体は、(A)支持体および(B)硬化性樹脂組成物層を有する積層構造体であって、前記(A)支持体がポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸から選ばれた少なくとも一種以上の樹脂を含み、前記(B)硬化性樹脂組成物層がアルカリ可溶性樹脂を含み、前記(A)支持体の引張弾性率が100~2500MPaの範囲であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の積層構造体は、基材に、前記(B)硬化性樹脂組成物層側をラミネートする用途用であることが好ましく、前記(A)支持体の、前記(B)硬化性樹脂組成物層とは反対側に(C)第一フィルムを有することが好ましい。
【0012】
本発明の硬化物は、積層構造体において、前記(B)硬化性樹脂組成物層を硬化したことを特徴とする。
【0013】
本発明のプリント配線板は、前記硬化物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上述のPETフィルムを支持フィルム(以下、本願においては「第一フィルム」とも記載する。)として用いた場合の問題を解決し、回路の保護膜として、凹みやガタツキの無いパターンが得られ、十分な埋め込み性とカバーリング性があり、汚染や欠落の生じることなくソルダーレジストを形成することが可能な積層構造体、該積層構造体を硬化した硬化物および該硬化物を含むプリント配線板を提供することができる。また、本発明によれば、従来のPETフィルムを支持フィルムとして用いないため、ラミネート後の工程においても剥離の必要が無く、PETフィルムの剥離時に剥離痕がつく等の問題も生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一好適な実施の形態に係る積層構造体の断面図である。
【
図2】本発明の他の好適な実施の形態に係る積層構造体の断面図である。
【
図3】本発明の他の好適な実施の形態に係る積層構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の一好適な実施の形態に係る積層構造体の断面図を示す。積層構造体10は、支持体1および硬化性樹脂組成物層2を有する積層構造体であって、支持体1はポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸から選ばれる1種以上の樹脂を含み、かつ引張弾性率が100~2500MPaの範囲である。尚、本発明の引張弾性率の測定方法は、実施例に記載の(引張弾性率の測定方法)による。
【0017】
図2に、本発明の他の好適な実施の形態に係る積層構造体の断面図を示す。積層構造体20は、第一フィルム13、支持体11および硬化性樹脂組成物層12をこの順に備える積層構造体であって、支持体11はポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸から選ばれる1種以上の樹脂を含み、かつ引張弾性率が100~2500MPaの範囲である。
図2に示す積層構造体20は、
図3に示すように、硬化性樹脂組成物層12の支持体11側とは反対の面に、第二フィルム14をさらに備えていてもよい。
【0018】
本発明の積層構造体は、引張弾性率が特定の範囲にある支持体を硬化性樹脂層の上に有し、露光時には滑剤などの微量成分を含まない支持体を通して感光することから、凹みやガタツキの無いパターンが得られる。また、ラミネート時には引張弾性率が特定の範囲にある支持体も同時に変形するために比較的低温、低圧力でも埋め込みを容易にし、高温高圧でのラミネートにおいても、低弾性の支持体が緩衝材となるため、回路上の樹脂が過剰に薄くなることを防ぎ、回路のカバーリング性を確保することができる。支持体はまたアルカリ水溶液に可溶であるため、ラミネート後の工程においても剥離の必要が無く、未硬化の硬化性樹脂層の表面保護と外部の汚染防止をする役割を持ち、現像工程ですべて溶解・除去することが可能である。
【0019】
以下、本発明の積層構造体を構成する各構成要素について詳述する。
【0020】
[(A)支持体]
本発明の積層構造体は(A)支持体を含む。本発明の(A)支持体は自己支持性を有するフィルム乃至シート状物であり、ポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸から選ばれる1種以上の樹脂を含み、かつ引張弾性率が100~2500MPaの範囲である。より好ましい引張弾性率は、500~1800MPaの範囲である。支持体として従来のPETの代わりに特定の樹脂を用い、引張弾性率が、この範囲内であることで、回路の保護膜として、凹みやガタツキの無いパターンが得られ、十分な埋め込み性とカバーリング性があり、汚染や欠落の生じることなくソルダーレジストを形成することが可能な積層構造体を提供することができる。
【0021】
ポリ酢酸ビニルの鹸化物は、完全鹸化物はポリビニルアルコールであり、部分鹸化物はビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体である。これらの中で鹸化度(ポリ酢酸ビニル中で鹸化された部分のmol%)は65~95mol%が好ましく、70~90mol%がより好ましい。ポリ酢酸ビニルの鹸化物の鹸化度がこの範囲にあると、アルカリ水溶液によって剥離することができる。また、ポリ酢酸ビニルの鹸化物の重量平均分子量は1,000~500,000が好ましく、2,000~150,000がより好ましく、5,000~50,000が特に好ましい。ポリ酢酸ビニルの鹸化物の重量平均分子量がこの範囲にあると、成膜性が良好でかつアルカリ水溶液での現像性が良好である。
【0022】
ポリ酢酸ビニルの鹸化物の市販品としては、(株)クラレ製ポリビニルアルコール クラレポバール5-98、クラレポバール5-88、クラレポバール27-96、クラレポバール48-80、クラレポバールL-10クラレポバール3-98、クラレポバール11-98、クラレポバール17-94、クラレポバール27-96、クラレポバール3-88、クラレポバール5-74、クラレポバール30-80E、クラレポバールL-8、クラレポバールL-9、(株)アイセロ製ポリビニルアルコール、ソルブロンPT、ソルブロンGA等が挙げられる。
【0023】
ポリエチレンオキシドは、HO-(CH2-CH2-O)n-Hで表される化合物である。上記nは、ポリエチレンオキシドの重合度を表す2以上の整数である。上記ポリエチレンオキシドの重量平均分子量は、1,000~500,000が好ましく、2,000~150,000がより好ましく、5,000~50,000が特に好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、成膜性が良好でかつアルカリ水溶液での現像性が良好である。
【0024】
また、ポリエチレンオキシドの共重合体は、ポリエチレンオキシド構造を有する重合体であればよく、特に限定されないが、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体などが挙げられる。
【0025】
ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの共重合体の市販品としては、住友精化(株)製ポリエチレンオキシド PEO-15P、明成化学工業(株)製アルコックスEP-10、E-300、E-30、E-45等が挙げられる。
【0026】
ポリスチレンスルホン酸は、ポリスチレンスルホン酸およびその誘導体であり、特に、ポリスチレンスルホン酸塩である。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。ポリスチレンスルホン酸およびその誘導体は、水溶性であれば中和度100%でなくてもよい。また、ポリスチレンスルホン酸は、スチレンをスルホン化処理して得られたものでもよく、この場合、スチレンが多少残存しても水溶性であれば問題ない。また、ポリスチレンスルホン酸構造を含む重合体であれば、他の構造単位を有する共重合体であっても、水溶性を示す限りは使用可能である。ポリスチレンスルホン酸およびその誘導体の重量平均分子量は1,000~500,000が好ましく、2,000~150,000がより好ましく、5,000~50,000が特に好ましい。ポリスチレンスルホン酸およびその誘導体の重量平均分子量がこの範囲にあると、成膜性が良好でかつアルカリ水溶液での現像性が良好である。
【0027】
ポリスチレンスルホン酸およびその誘導体の市販品としては、アクゾノーベル社製ポリスチレンスルホン酸VERSA-TL3、VERSA-TL72、VERSA-TL70、VERSA-TL77、VERSA-TL125、VERSA-TL130、VERSA-TL132、VERSA-TL501、VERSA-TL502、NARLEXD72等が挙げられる。
【0028】
本発明の積層構造体に用いられる支持体は、ポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸から選ばれた少なくとも一種以上の樹脂を含み、さらにポリ酢酸ビニルの鹸化物を含むことが好ましい。割合としては固形物換算で、ポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体またはポリスチレンスルホン酸を合計で、全体の70~100質量%含むことが好ましく、80~100質量%含むことがより好ましい。ポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体およびポリスチレンスルホン酸を合計で、全体の70質量%以上含めば、本願発明の効果を得ることができる。なお、支持体が、ポリ酢酸ビニルの鹸化物、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドの共重合体またはポリスチレンスルホン酸以外の成分を含む場合でも、それらの成分は水溶性であることが好ましい。また、支持体は、その支持体全体が水溶性であることが好ましく、アルカリ水溶液に溶解することがより好ましい。水溶性であれば、アルカリ水溶液での現像性が良好である。なお、本発明において水溶性とは、1気圧25℃の純水に対する溶解度が1g/L以上であることをいう。
【0029】
本発明の支持体として用いる樹脂は、上述した樹脂の内、予め測定した引張弾性率が所定の数値範囲に入っているものを用いる。
また、好ましい引張弾性率となるように、例えば、予め測定した引張弾性率が異なる二種類以上のポリ酢酸ビニル鹸化物を混合し、調製した支持体を用いることもできる。この場合、例えば、上述した樹脂の引張弾性率が所望の弾性率より高いものと、その引張弾性率が所望の弾性率より低いものとを、混合する樹脂の質量比を適宜調整して混合することにより、所望の引張弾性率に調整することができる。
【0030】
支持体の厚さは、3~50μmが好ましく、5~30μmがさらに好ましい。厚さが3μm以上であれば、十分な取り扱い性、回路への充填性を得ることができ、また、厚さが50μm以下であれば、アルカリ水溶液での現像が容易である。
【0031】
[(B)硬化性樹脂組成物層]
本発明の積層構造体に用いられる硬化性樹脂組成物層は硬化性樹脂組成物からなる層である。以下、本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物について説明する。硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有する。以下、硬化性樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。
【0032】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有する。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物が挙げられる。中でも、アルカリ可溶性樹脂がカルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂であると、下地との密着性が向上するため好ましい。特に、現像性に優れるため、アルカリ可溶性樹脂はカルボキシル基含有樹脂であることがより好ましい。カルボキシル基含有樹脂は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂でも、エチレン性不飽和基を有さないカルボキシル基含有樹脂でもよい。アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0034】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0035】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0036】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0037】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0038】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0039】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0040】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0041】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0042】
(9)多官能オキセタン化合物にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0043】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0044】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0045】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0046】
(13)アミド構造およびイミド構造の少なくともいずれかを有するカルボキシル基含有樹脂。
【0047】
(14)N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド等のマレイミドまたはマレイミド誘導体と、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和基含有化合物と、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香環を有する不飽和基含有化合物とを単量体とするカルボキシル基含有共重合樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる、共重合構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0048】
(15)上記(1)~(13)等に記載のカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有樹脂。
【0049】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ビフェニル骨格若しくはフェニレン骨格またはその両方の骨格を有する化合物や、フェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、メタクレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール等を用いて合成した、様々な骨格を有するフェノール樹脂が挙げられる。
【0050】
また、フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS型フェノール樹脂、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物などの公知慣用のフェノール樹脂が挙げられる。
【0051】
フェノール樹脂の市販品としては、例えば、HF-1M(明和化成社製)、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2131、ベスモールCZ-256-A(DIC社製)、シヨウノールBRG-555、シヨウノールBRG-556、シヨウノールCRG-951(アイカ工業社製)、ポリビニルフェノールのCST70、CST90、S-1P、S-2P(丸善石油社製)が挙げられる。
【0052】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、40~200mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは45~120mgKOH/gの範囲である。アルカリ可溶性樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であるとアルカリ現像が容易となり、一方、200mgKOH/g以下である正常な硬化物パターンの描画が容易となるので好ましい。
【0053】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、1,500~150,000、さらには1,500~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が1,500以上の場合、成膜性が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良好で、現像時の膜減りを抑制し、解像度の低下を抑制できる。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性が良好で、貯蔵安定性にも優れる。
【0054】
アルカリ可溶性樹脂の配合量は、例えば、組成物の固形分全量中、5~50質量%である。
【0055】
(光硬化性樹脂)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂以外の光硬化性樹脂を含んでいてもよい。光硬化性樹脂としては、活性エネルギー線照射により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく用いられる。エチレン性不飽和基を有する化合物としては、公知慣用の感光性モノマーである光重合性オリゴマー、光重合性ビニルモノマー等を用いることができ、ラジカル重合性のモノマーやカチオン重合性のモノマーでもよい。また、光硬化性樹脂として、前述したようなエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂等のポリマーを用いることができる。光硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
前記感光性モノマーとして、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する室温で液体、固体又は半固形の感光性(メタ)アクリレート化合物が使用できる。室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物は、組成物の光反応性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助けたりする役割も果たす。
【0057】
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル-n-ブチルエーテル、ビニル-t-ブチルエーテル、ビニル-n-アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル-n-オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル等のアリル化合物;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート等のイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0059】
(熱硬化性樹脂)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂を含むことにより、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性が向上し、硬化性樹脂組成物層を基板上へ転写した際に基板との密着性が向上する。熱硬化性樹脂としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。これらの中でもエポキシ樹脂、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
上記エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂であり、従来公知のものをいずれも使用できる。好ましくは分子中に複数のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、水素添加されたエポキシ樹脂であってもよい。
【0061】
多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂;チオエーテル型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0062】
オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0063】
エピスルフィド樹脂としては従来公知のものを使用することができるが、例えば、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換したエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0064】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0065】
イソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンイソシアネートダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0066】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0067】
(光反応開始剤)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有することができる。光反応開始剤は、光照射により組成物を硬化できるものであればよく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤および光照射により塩基を発生する光塩基発生剤が好ましい。なお、光反応開始剤は、光照射によりラジカルと塩基の両方を発生する化合物でももちろんよい。光照射とは、波長350~450nmの範囲の紫外線を照射することをいう。
【0068】
光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のビスアシルホスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)等のモノアシルホスフィンオキサイド類;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、熱硬化反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。
【0070】
光塩基発生剤として、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ化合物,N-ホルミル化芳香族アミノ化合物、N-アシル化芳香族アミノ化合物、ニトロベンジルカーバメイト化合物、アルコオキシベンジルカーバメート化合物等が挙げられる。α-アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。光塩基発生剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この他、光塩基発生剤としては、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0071】
その他の光塩基発生剤として、WPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-082(商品名:guanidinium2-(3-benzoylphenyl)propionate)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)(以上、富士フィルム和光純薬社製)等を使用することもできる。
【0072】
さらに、前述した光重合開始剤の一部の物質が光塩基発生剤としても機能する。光塩基発生剤としても機能する光重合開始剤としては、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤が好ましい。
なかでも、オキシムエステル化合物がより好ましく、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)がより好ましい。
【0073】
光反応開始剤の配合量は、例えば、組成物の固形分全量中、0.01~30質量%である。
【0074】
(無機フィラー)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含むことができる。無機フィラーとしては、特に限定されず、公知慣用の無機フィラー、例えばシリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、非繊維状ガラス、ハイドロタルサイト、ミネラルウール、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、亜鉛華等の無機フィラーを用いることができる。中でも、シリカが好ましく、表面積が小さく、応力が全体に分散するためクラックの起点になりにくいことから球状シリカであることがより好ましい。
【0075】
無機フィラーは、光硬化性反応基として、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基等を有するよう、光反応性の表面処理をされていてもよく、この場合、メタクリル基、アクリル基、ビニル基が特に好ましい。また、熱硬化性反応基として、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等を有するよう熱反応性の表面処理をされていてもよく、この場合、アミノ基、エポキシ基が特に好ましい。さらにまた、無機フィラーは2種以上の硬化性反応基を有していてもよい。無機フィラーとしては、表面処理されたシリカが好ましい。表面処理されたシリカを含むことにより、硬化性樹脂組成物の硬化物のCTEを低く、ガラス転移温度を高くすることができる。
【0076】
無機フィラーの表面に硬化性反応基の導入する場合の導入方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いて導入すればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理すればよい。
【0077】
無機フィラーの表面処理としては、カップリング剤による表面処理が好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。中でも、シランカップリング剤が好ましい。
【0078】
シランカップリング剤としては、無機フィラーに、硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤が好ましい。熱硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤としては、エポキシ基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、イソシアネート基を有するシランカップリング剤が挙げられ、中でもエポキシ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。光硬化反応性基を導入可能なシランカップリング剤としては、ビニル基を有するシランカップリング剤、スチリル基を有するシランカップリング剤、メタクリル基を有するシランカップリング剤、アクリル基を有するシランカップリング剤が好ましく、中でもメタクリル基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0079】
無機フィラーを表面処理する場合、表面処理された状態で硬化性樹脂組成物に配合されていればよく、表面未処理の無機フィラーと表面処理剤とを別々に配合して組成物中で無機フィラーが表面処理されてもよいが、予め表面処理した無機フィラーを配合することが好ましい。予め表面処理した無機フィラーを配合することによって、別々に配合した場合に残存しうる表面処理で消費されなかった表面処理剤によるクラック耐性等の低下を防ぐことができる。予め表面処理する場合は、溶剤や樹脂成分に無機フィラーを予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理し無機フィラーを溶剤に予備分散し、該予備分散液を組成物に配合するか、表面未処理の無機フィラーを溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、該予備分散液を組成物に配合することがより好ましい。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物において、無機フィラーは、平均粒径が1μm以下であることが、クラック耐性により優れることから好ましい。より好ましくは、0.8μm以下である。なお、本明細書において、平均粒径とは体積累積50%粒子径(D50体積%)の値のことをいい、レーザー回折式粒子径分布測定装置と動的光散乱法による測定装置を用いて測定した体積基準粒度分布から求めた値である。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII、動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151が挙げられる。
【0081】
また、無機フィラーは、最大粒径が4.0μm以下であることが、硬化性樹脂組成物がクラック耐性、基板との密着性により優れることから好ましい。より好ましくは3.0μm以下である。なお、本明細書において、最大粒径とは体積累積95%粒子径(D95体積%)の値のことをいい、例えば上述した測定装置用いて測定した体積基準粒度分布から求めた値である。
【0082】
無機フィラーの配合量は、硬化性樹脂組成物の固形分の全量あたり10~70質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましく、20~55質量%であることがさらに好ましい。
【0083】
(硬化促進剤)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-ジメチルアミノピリジン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもできる。また、金属系硬化促進剤を用いてもよく、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体または有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。硬化促進剤としては、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を硬化促進剤と併用する。硬化促進剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
硬化促進剤の配合量は、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分全量中、0.01~30質量%である。
【0085】
(硬化剤)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含有することができる。硬化剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル基を有する化合物、活性エステル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物、脂環式オレフィン重合体等が挙げられる。硬化剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂、α-ナフトール骨格含有フェノール樹脂、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ザイロック型フェノールノボラック樹脂等の従来公知のものを用いることができる。
前記フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、水酸基当量が100g/eq.以上のものが好ましい。水酸基当量が100g/eq.以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン骨格フェノールノボラック樹脂(GDPシリーズ、群栄化学社製)、ザイロック型フェノールノボラック樹脂(MEH-7800、明和化成社製)、ビフェニルアラルキル型ノボラック樹脂(MEH-7851、明和化成社製)、ナフトールアラルキル型硬化剤(SNシリーズ、新日鉄住金社製)、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック樹脂(LA-3018-50P、DIC社製)、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂(LA-705N、DIC社製)などが挙げられる。
【0087】
前記シアネートエステル基を有する化合物は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(-OCN)を有する化合物であることが好ましい。シアネートエステル基を有する化合物は、従来公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル基を有する化合物としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。
【0088】
市販されているシアネートエステル基を有する化合物としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製、PT30S)、ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン社製、BA230S75)、ジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製、DT-4000、DT-7000)等が挙げられる。
【0089】
前記活性エステル基を有する化合物は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物であることが好ましい。活性エステル基を有する化合物は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル基を有する化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。また、活性エステル基を有する化合物としては、ナフタレンジオールアルキル/安息香酸型でもよい。
【0090】
市販されている活性エステル基を有する化合物としては、シクロペンタジエン型のジフェノール化合物、例えば、HPC8000-65T(DIC社製)、HPC8100-65T(DIC社製)、HPC8150-65T(DIC社製)が挙げられる。
【0091】
前記マレイミド基を有する化合物は、マレイミド骨格を有する化合物であり、従来公知のものをいずれも使用できる。マレイミド基を有する化合物は、2以上のマレイミド骨格を有することが好ましく、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、2,2’-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、およびこれらのオリゴマー、ならびにマレイミド骨格を有するジアミン縮合物のうちの少なくとも何れか1種であることがより好ましい。前記オリゴマーは、上述のマレイミド基を有する化合物のうちのモノマーであるマレイミド基を有する化合物を縮合させることにより得られたオリゴマーである。
【0092】
市販されているマレイミド基を有する化合物としては、BMI-1000(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-2300(フェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-3000(m-フェニレンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-5100(3,3’-ジメチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-7000(4-メチル-1,3,-フェニレンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-TMH((1,6-ビスマレイミド-2,2,4-トリメチル)ヘキサン、大和化成工業社製)、MIR-3000(ビフェニルアラルキル型マレイミド、日本化薬社製)などが挙げられる。
【0093】
硬化剤の配合量は、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分全量中、0.01~30質量%である。
【0094】
(熱可塑性樹脂)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物は、得られる硬化膜の機械的強度を向上させるために、さらに熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂は、溶剤に可溶であることが好ましい。溶剤に可溶である場合、ドライフィルム化した場合に柔軟性が向上し、クラックの発生や粉落ちを抑制できる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体、ゴム粒子等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
熱可塑性樹脂の配合量は、例えば、組成物の固形分全量中、0.01~10質量%である。
【0096】
(着色剤)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物には、着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄、黒、白等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。着色剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
着色剤の配合量は、例えば、組成物の固形分全量中、0.01~10質量%である。
【0098】
(有機溶剤)
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、支持体に塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で、または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0099】
(その他の任意成分)
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物には、電子材料の分野において公知慣用の他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光開始助剤、増感剤、有機フィラー、エラストマー、離型剤、表面処理剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、安定剤、蛍光体等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物層に用いられる硬化性樹脂組成物が含有する任意成分は、硬化性や用途に合わせて、公知慣用の成分を選択すればよい。
【0100】
[(C)第一フィルム]
本発明の積層構造体は、支持体と硬化性樹脂組成物層とを備えるが、さらに第一フィルムを備えてもよい。第一フィルムとしては、プラスチックフィルムが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。第一フィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0101】
[第二フィルム]
本発明の積層構造体は、硬化性樹脂組成物層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、硬化性樹脂組成物層の表面に剥離可能な第二フィルムが積層されてもよい。剥離可能な第二フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第二フィルムを剥離するときに硬化性樹脂組成物層と支持体との接着力よりも硬化性樹脂組成物層と第二フィルムとの接着力がより小さいものであればよい。中でも、機械的特性(強度、剛性)や経済性の点から二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムが好ましい。第二フィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、5~150μmの範囲で適宜選択される。
【0102】
[積層構造体]
支持体上に硬化性樹脂組成物層を形成した本発明の積層構造体を製造する方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、まず、水及び/又は有機溶剤に支持体組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコータなどを用いて第一フィルムに塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により水及び/又は有機溶剤を乾燥させて支持体を形成し、そのうえで、硬化性樹脂組成物をダイコータなどを用いて、支持体上に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0103】
本発明の積層構造体が第一フィルムおよび第二フィルムの双方を含む場合は、上記、支持体組成物を溶解した樹脂ワニスを第一フィルムの上に塗布、乾燥させることにより支持体および第一フィルムを形成し、さらに支持体の上に硬化性樹脂組成物層を形成し、そのうえで硬化性樹脂組成物層の表面に第二フィルムを積層することで積層構造体を製造してもよいし、第二フィルム上に塗布、乾燥させることにより硬化性樹脂組成物層および支持体を形成して、その表面に第一フィルムを積層することで積層構造体を製造してもよい。すなわち、本発明において、第一フィルムおよび第二フィルムの双方を含む積層構造体を製造する際に支持体および硬化性樹脂組成物層を塗布、乾燥させることにより形成するフィルムとしては、第一フィルムおよび第二フィルムのいずれを用いてもよい。上記乾燥は、通常、熱風循環式乾燥炉を用いて、50~130℃の温度で1~30分間加熱して行う。
【0104】
支持体組成物を溶解した樹脂ワニスを作成するための有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0105】
乾燥条件は特に限定されないが、硬化性樹脂組成物層及び支持体での水及び/又は有機溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニスや溶液中の水及び/又は有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30~60質量%の水及び/又は有機溶剤を含むワニス又は溶液を50~150℃ で3~10分程度乾燥させることにより、各層が形成される。
【0106】
積層は、作業性及び一様な接触状態が得られやすい点から、ロールやプレス圧着等で行うことができる。なかでも、真空ラミネート法により減圧下で積層するのが好適である。また、積層の方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。積層構造体を内層回路基板の片面又は両面上に積層する場合も、同様の方法で積層することができる。
【0107】
積層の際の加熱温度は、60~140℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。圧着圧力は、1~11kgf/cm2(9.8×104~107.8×104N/m2)の範囲が好ましく、2~7kgf/cm2(19.6×104~68.6×104N/m2)の範囲が特に好ましい。空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で積層するのが好ましい。
【0108】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製真空ダイアフラム式ラミネーターMVLP-500、ニッコー・マテリアルズ(株)製CV-300、CV-300T、CVP-300、CVP-600、CVP-700、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0109】
[プリント配線板の製造方法]
本発明の積層構造体を用いたプリント配線板の製造方法としては、従来公知の方法を用いればよい。例えば、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせることにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0110】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウェハ板等を挙げることができる。回路には、前処理が施されていてもよく、例えば、四国化成社製のGliCAP、メック社製のNew Organic AP(Adhesion promoter)、アトテックジャパン社製のNova Bond等で前処理を施し、ソルダーレジスト等の硬化被膜との密着性等を向上させたり、防錆剤で前処理を施したりしてもよい。
【0111】
プリント配線板上に積層構造体を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
【0112】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、基板と非接触なマスクレス露光として投影レンズを使用した投影露光機や直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0113】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0114】
本発明の積層構造体は、電子部品に硬化膜を形成するために、特にはプリント配線板上に硬化膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイ、封止材を形成するために使用される。また、高度な信頼性が求められるプリント配線板、例えばパッケージ基板用の永久被膜(特にソルダーレジスト)の形成に好適である。
【実施例0115】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0116】
表1に示す種々の成分を表記の割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、硬化性樹脂組成物1を調製した。
【0117】
【0118】
(*1) ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製ZFR-1401H)
(*2) フェノールノボラック型エポキシ樹脂を出発原料とするカルボキシル基含有樹脂(日本化薬(株)製PCR-1170H)
(*3) ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)
(*4) ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(DIC(株)製HP-7200H)
(*5) アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド)
(*6) 球状シリカ((株)アドマテックス製SO-C2)
(*7) 青色顔料(トーヨーカラー(株)製C.I.Pigment Blue 15:3)
【0119】
実施例1~9および比較例1~2については、まず、表2および3の支持体組成物に記載の材料の10質量%水溶液を第一フィルム(材質:ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製ルミラー#12-F68(13μm厚)))上に塗布し、80℃で30分間乾燥して13μm厚の支持体を得た。実施例1,2,3のポリ酢酸ビニル鹸化物は、支持体としたときの引張弾性率を調整するために、クラレポバール5-74(引張弾性率:1800MPa)と(株)アイセロ製ソルブロンPT(引張弾性率:50MPa)を混合したものを用いた。実施例6および7の支持体においては、ポリ酢酸ビニルの鹸化物と他の樹脂(ポリエチレンオキシドまたはポリスチレンスルホン酸)を質量比8:2で混合したものを用いた。
次に支持体上に硬化性樹脂組成物1を塗布し、80℃で30分間乾燥して15μm厚の硬化性樹脂層を得た。
そのうえで、実施例1~7、比較例1~2については第一フィルム(ポリエチレンテレフタレート)を剥離することで、第一フィルムを有しない積層構造体を得た。また、実施例8および9については第一フィルム(ポリエチレンテレフタレート)を剥離せずに、第一フィルムを有する積層構造体を得た。
【0120】
比較例3は、PETフィルム(東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート ルミラー#12-F68(13μm厚))を支持体として用い、該支持体上に硬化性樹脂組成物1を塗布し、80℃で30分間乾燥して15μm厚の硬化性樹脂層を形成し、積層構造体を得た。
【0121】
【0122】
【0123】
(*11) ポリ酢酸ビニル鹸化物((株)クラレ製クラレポバール5-74と(株)アイセロ製ソルブロンPTの質量比2:8の混合物)
(*12) ポリ酢酸ビニル鹸化物((株)クラレ製クラレポバール5-74と(株)アイセロ製ソルブロンPTの質量比4:6の混合物)
(*13) ポリ酢酸ビニル鹸化物((株)クラレ製クラレポバール5-74と(株)アイセロ製ソルブロンPTの質量比8:2の混合物)
(*14) ポリ酢酸ビニル鹸化物((株)クラレ製クラレポバール5-74)
(*15) ポリ酢酸ビニル鹸化物((株)クラレ製クラレポバール5-88)
(*16) ポリエチレンオキシド(住友精化(株)製PEO-15P)
(*17) ポリスチレンスルホン酸(アクゾノーベル社製VERSA-TL3)
(*18) ポリ酢酸ビニル鹸化物((株)アイセロ製ソルブロンGA)
(*19) ポリ酢酸ビニル鹸化物((株)クラレ製クラレポバール5-98)
(*20) ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製ルミラー#12-F68)
【0124】
このようにして得た、実施例1~9および比較例1~3の評価サンプル(積層構造体)について、以下の測定および評価を行なった。これらの結果を表2および3中に併せて示す。
【0125】
(引張弾性率の測定方法)
支持体の引張弾性率(MPa)を測定するに当たり、実施例1~9および比較例1~2については、第一フィルム(東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート ルミラー#12-F6838T6AM(13μm厚))上に支持体組成物の水溶液を塗布、乾燥(80℃で30分間)して得た支持体塗膜を第一フィルムから剥離し、得られた支持体塗膜の単独塗膜を試験片として用いた。また、比較例3については、支持体に用いたポリエチレンテレフタレートフィルムを試験片として用いた。試験片は1cm×10cmのサイズにカットし、室温22℃、湿度40%の条件下において1日放置した後、(株)島津製作所製EZ-SXを用いてMD方向にて測定した。
【0126】
(回路間気泡の有無、回路のカバーリング性)
フィルム状の各積層構造体について、銅回路の形成された基板上に温度70℃、90℃および110℃、加圧力2MPaの条件で真空ラミネートを行い、回路間に樹脂組成物が埋め込まれているか確認するために、10mm2の範囲について回路間気泡の有無を光学顕微鏡(倍率:100倍)にて確認した。回路間気泡の有無の評価基準は以下の通りとした。
◎:70℃、90℃および110℃のいずれにおいても気泡無し。
〇:70℃で気泡有り、90℃および110℃で気泡無し。
△:70℃および90℃で気泡有り、110℃で気泡無し。
×:70℃、90℃および110℃のいずれにおいても気泡あり。
また、100℃でラミネートしたときの回路カバーリング性を光学顕微鏡(倍率:200倍)で確認した。回路のカバーリング性の評価基準は以下の通りとした。
◎:回路が樹脂で覆われている。
〇:回路が樹脂で覆われているが、部分的に薄くなっている箇所がある。
×:回路が樹脂で覆われていない箇所がある。
【0127】
(現像機のロール汚染)
実施例1~7および比較例1~2のフィルム状の各積層構造体については、銅回路の形成された基板上に温度90℃、加圧力2MPaの条件で真空ラミネート後に、高圧水銀灯搭載の露光装置を用いて100mJ/cm2の露光量で解像性確認用試験パターン(L/S=100μm/100μm,Φ50μm)のパターン露光を行った。実施例8および9のフィルム状の各積層構造体については、上述のラミネート工程と同条件でラミネート後、第一フィルムを剥離し、上述の露光工程と同条件で露光した。また、支持体としてPETフィルムを用いた比較例3のフィルム状の積層構造体については、上述のラミネート工程と同条件でラミネート後、上述の露光工程と同条件で露光の後に、支持体を剥離した。その後、実施例1~9および比較例1~3のフィルム状の各積層構造体について30℃の1質量%Na2CO3水溶液で60秒間現像を行った。現像後の現像機投入口付近の搬送ロールを目視で確認し、ロールへの付着物による汚染の有無を確認した。現像機のロール汚染の評価基準は以下の通りとした。
〇:汚染無し。
×:汚染有り。
【0128】
(現像工程での現像性)
現像工程での現像性の評価として、現像後の基板上に現像残りがあるかどうか、目視にて確認した。ラミネート、露光、現像工程は上述の(現像機のロール汚染)と同様に実施した。ただし、現像時間は30秒および60秒で行った。現像工程での現像性の評価基準は以下の通りとした。
◎:30秒現像で残渣無し。
〇:30秒現像で残渣有り、60秒現像で残渣無し。
×:60秒現像で残渣有り。
【0129】
(パターン表面の凹み有無)
パターン表面の凹み有無の評価として、上述の(現像機のロール汚染)の評価で作製した現像後の基板を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、10mm2の範囲について、塗膜表面に直径0.1~10μmの微細な凹みがあるか確認した。パターン表面の凹み有無の評価基準は以下の通りとした。
〇:凹み無し。
×:凹み有り。
【0130】
上記表2および3に示す評価結果から、本発明によれば、従来のPETフィルムを支持フィルムとして用いた場合の問題を解決し、回路の保護膜として、凹みやガタツキの無いパターンが得られ(パターン表面の凹みの有無の評価結果参照)、十分な埋め込み性とカバーリング性(回路間気泡の有無および回路のカバーリング性の評価結果参照)があり、汚染(現像機のロール汚染の評価結果参照)や欠落の生じることなくソルダーレジストを形成することが可能な積層構造体、該積層構造体を硬化した硬化物および該硬化物を含むプリント配線板を提供することができることが分かる。