(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159322
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】NMDAR調節化合物の組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 38/07 20060101AFI20221006BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221006BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20221006BHJP
A61K 31/4453 20060101ALI20221006BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221006BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K38/07
A61K45/00
A61K31/13
A61K31/4453
A61P25/28
A61P43/00 121
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022116942
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2020083060の分割
【原出願日】2015-05-06
(31)【優先権主張番号】61/989,183
(32)【優先日】2014-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】モスカル ジョーゼフ アール
(57)【要約】
【課題】NMDARアンタゴニスト誘発性認知障害(例えば、新規物体認識におけるNMDARアンタゴニスト誘発性障害;例えば、NMDARアンタゴニストの繰り返し投与によって誘発)を反転及び/または予防し得る化合物の提供。
【解決手段】NMDAR調節化合物の組合せを特色とする。本開示は、1種または複数種のNMDARアンタゴニスト及びGLYX-13を含む組み合わせを特色とする(これらはそれぞれ、本明細書において時に、「構成要素」と称される)。上記組み合わせの有益効果は、部分的に、GLYX-13の投与(例えば、単回投与)が、NMDARアンタゴニスト誘発性認知障害(例えば、新規物体認識におけるNMDARアンタゴニスト誘発性障害;例えば、NMDARアンタゴニストの繰り返し投与によって誘発)を反転及び/または予防し得るという発見に基づく。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のGLYX-13を投与することを含む、NMDARアンタゴニストを急性投与される患者において認知障害を実質的に反転または予防する方法。
【請求項2】
前記NMDARアンタゴニストを急性投与する前に、有効量のGLYX-13の前記投与を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NMDARアンタゴニストを急性投与した後に、有効量のGLYX-13の前記投与を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記NMDARアンタゴニストの急性投与と実質的に同時に、有効量のGLYX-13の前記投与を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
GLYX-13及びNMDARアンタゴニストを投与することを含む、それを必要とする患者において認知欠陥障害を処置する方法。
【請求項6】
前記認知欠陥障害が、認知能力の不足、先天性欠陥、環境因子(複数可)、または薬物誘発の1つまたは複数のためである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記認知欠陥障害が、学習障害及び/または失読症である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
GLYX-13及びNMDARアンタゴニストを投与することを含む、神経学的障害または他の障害を処置する方法。
【請求項9】
前記障害が、卒中、精神病性障害、疼痛(神経障害性疼痛)、うつ病(大うつ病)、パーキンソン病、及びアルツハイマー病からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
GLYX-13及びNMDARアンタゴニストを投与することを含む、それを必要とする患者において中枢神経系疾患を処置するための方法。
【請求項11】
前記中枢神経系疾患が、神経変性疾患、卒中、外傷性脳損傷、及び脊髄損傷からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
GLYX-13及びNMDARアンタゴニストを投与することを含む、それを必要とする患者において統合失調症を処置する方法。
【請求項13】
GLYX-13及びNMDARアンタゴニストを投与することを含む、それを必要とする患者においてうつ病を処置する方法。
【請求項14】
前記うつ病が難治性うつ病である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記GLYX-13及び前記NMDARアンタゴニストを実質的に同時に投与する、請求項5から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記GLYX-13及び前記NMDARアンタゴニストを順に投与する、請求項5から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記NMDARアンタゴニストの前に、前記GLYX-13を投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記NMDARアンタゴニストの後に、前記GLYX-13を投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
GLYX-13及びNMDARアンタゴニストを含む、薬学的に許容される組成物。
【請求項20】
前記NMDARアンタゴニストが、式(I):
[式中、
R
1は、ハロ;-OH;NR
aR
b(ここで、R
a及びR
bはそれぞれ、H及びC
1~C
3アルキルから独立に選択される);C
1~C
3アルキル;及びC
1~C
3アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいフェニル、チエニル、またはベンゾチエニルであり;
R
2は、R
c及びR
dがそれぞれ、H、及び-OHまたはC
1~C
3アルコキシで置換されていてもよいC
1~C
6アルキルから独立に選択されるか;またはR
c及びR
dが、それぞれが結合している窒素原子と一緒に、1~2個の独立に選択されるC
1~C
3アルキルで置換されていてもよい5~7員環を形成している-NR
cR
dであり;
R
3は、H、オキソ、またはC
1~C
3アルキルである;
またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ]を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法、または請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
R1が、ハロ;-OH;NRaRb(ここで、Ra及びRbはそれぞれ独立に、H及びC1~C3アルキルから選択される);C1~C3アルキル;及びC1~C3アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
R1が、フェニル、3-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、3-アミノフェニル、3-メチルフェニル、4-フルオロフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、または2-クロロフェニルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
R2が、-NH(C1~C3アルキル)またはピペリジニルである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
R3が、Hまたはオキソである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
R1がフェニルであり、R2がピペリジニルであり、R3がHである、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
R1が2-クロロフェニルであり、R2が-NH(CH3)であり、R3がオキソである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記NMDARアンタゴニストが、ケタミン、メマンチン、ラニセミン(AZD6765)、CERC-301、デキストロメトルファン、デキストロルファン、フェンシクリジン、ジゾシルピン(MK-801)、アマンタジン、イフェンプロジル、AV-101、AZD6423、及びリルゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法、または請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記NMDARアンタゴニストがケタミンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記NMDARアンタゴニストが(S)-ケタミンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記NMDARアンタゴニストがフェンシクリジンである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記NMDARアンタゴニストが、メマンチンまたはアマンタジンである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記NMDARアンタゴニストがジゾシルピン(MK-801)である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記NMDARアンタゴニストが、デキストロメトルファンまたはデキストロルファンである、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記NMDARアンタゴニストが、ラニセミン(AZD6765)、CERC-301、AV-101、AZD6423、またはイフェンプロジルである、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記NMDARアンタゴニストが、亜酸化窒素、アトモキセチン、デキストラロルファン、ジフェニジン、エチシクリジン、ガシクリジン、イボガイン、メトキセタミン、ニトロメマンチン、ロリシクリジン、テノシクリジン、メトキシジン、チレタミン、ネラメキサン、エリプロジル、エトキサドロール、デキソキサドロール、メタドン、WMS-2539、NEFA、レマセミド、デルセミン、8A-PDHQ、アプチガネル(Cerestat、CNS-1102)、HU-211、レマセミド、リンコフィリン、TK-40、トラキソプロジル(CP-101,606)、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACPC)、キヌレン酸もしくはその誘導体、2-カルボキシテトラヒドロキノリンもしくはその誘導体、2-カルボキシインドールもしくはその誘導体、4-ヒドロキシ-2-キノリンもしくはその誘導体、4-ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体、キノキサリン-2,3-ジオンもしくはその誘導体、三環式アンタゴニスト、ラコサミド、L-フェニルアラニン、ミダフォテル、及びアプチガネル、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法、または請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記NMDARアンタゴニストが、2-カルボキシテトラヒドロキノリンまたはその誘導体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記NMDARアンタゴニストが、
またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記NMDARアンタゴニストが、2-カルボキシインドールまたはその誘導体である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記NMDARアンタゴニストが、
またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記NMDARアンタゴニストが、キヌレン酸またはその誘導体である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記NMDARアンタゴニストが、
またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記NMDARアンタゴニストが、4-ヒドロキシキノリンまたはその誘導体である、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記NMDARアンタゴニストが、
またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記NMDARアンタゴニストが、キノキサリン-2,3-ジオンまたはその誘導体である、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記NMDARアンタゴニストが、
またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記NMDARアンタゴニストが、三環式アンタゴニストである、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記NMDARアンタゴニストが、
またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2014年5月6日出願の米国特許仮出願第61/989,183号の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体(NMDAR)は、特に興奮性アミノ酸であるグルタマート及びグリシンならびに合成化合物であるNMDAに応答するシナプス後イオンチャネル型受容体である。NMDA受容体は、受容体関連チャネルを介して、シナプス後神経細胞への二価及び一価イオンの両方の流れを制御する(Fosterら、Nature 1987、329:395~396;Mayerら、Trends in Pharmacol.Sci.1990、11:254~260)。NMDA受容体は、発生中に、ニューロン建築(neuronal architecture)及びシナプス連結性の指定に関係しており、経験依存性シナプス修正に関係している可能性がある。加えて、NMDA受容体は、長期増強及び中枢神経系障害にも関係していると考えられている。
【0003】
NMDA受容体は、記憶取得、記憶、及び学習などの多くの高次認知機能の基礎となるシナプス可塑性において、さらには、特定の認知経路及び疼痛の知覚において主要な役割を果たしている(Collingridgeら、The NMDA Receptor、Oxford University Press、1994)。加えて、NMDA受容体の特定の特性は、それらが、意識自体の基礎となる脳において、情報処理に関係している可能性があることを示唆している。
【0004】
NMDA受容体は、広範なCNS障害に関係していると思われるので、特別な関心を引き寄せている。例えば、卒中または外傷に起因する脳虚血の間、過量の興奮性アミノ酸のグルタマートが、損傷を受けているか、または酸素が欠乏しているニューロンから放出される。この過剰のグルタマートは、NMDA受容体に結合し、NMDA受容体はそれらのリガンド開口型イオンチャネルを開き;次に、カルシウム流入が、高レベルの細胞内カルシウムを生じ、それが、タンパク質分解及び細胞死をもたらす生化学カスケードを活性化させる。この現象は、興奮毒性として知られており、低血糖及び心停止からてんかんに及ぶ他の障害と関連する神経学的損傷の原因であるとも考えられている。加えて、ハンチントン病、パーキンソン病、及びアルツハイマー病の慢性神経変性において類似した関係を示す先行する報告がある。NMDA受容体の活性化は、卒中後痙攣の原因であることが示されており、てんかんの特定のモデルでは、NMDA受容体の活性化が、発作の発生のために必要であることが示されている。動物麻酔薬PCP(フェンシクリジン)によるNMDA受容体Ca++チャネルの遮断が、統合失調症に類似するヒトにおける精神病性状態を発生させるので、NMDA受容体の神経精神病学的関係も認められている(Johnson,K.及びJones,S.、1990において総説)。さらに、NMDA受容体は、ある種の空間学習にも関係している。
【0005】
NMDA受容体は、シナプス後膜に埋設されたいくつかのタンパク質鎖からなると考えられている。これまでに発見されたサブユニットの最初の2つのタイプは大きな細胞外領域を形成し、それはおそらく、大部分のアロステリック結合部位、Ca++が透過し得る孔またはチャネルを形成するようにループ可され、折り畳まれたいくつかの膜貫通領域、及びカルボキシル末端領域を含む。細胞外表面にあるタンパク質のドメイン(アロステリック部位)への様々なリガンドの結合によって、チャネルの開閉が調節される。リガンドの結合は、タンパク質の全体的な構造における構造変化に影響を及ぼすと考えられ、それが、チャネルの開放、部分的開放、部分的閉鎖、または閉鎖に最終的に反映される。
【0006】
NMDA受容体アンタゴニストは、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)に拮抗するか、またはその作用を阻害するように作動する。しかしながら、NMDA受容体機能の低下は、認知能力に影響を及ぼすものを含むマイナスの副作用と関連し得る。
【0007】
最近、GLYX-13と名付けられた、NMDARの改善された部分アゴニストが報告された。GLYX-13は、次の構造式:
によって例示される(分子量:413.47、及び化学式:C
18H
31N
5O
6)。GLYX-13は、向知性活性、神経保護活性、及び抗侵害受容性活性を示し、in vivoで学習、記憶、及び認知を増強する。
【発明の概要】
【0008】
概要
本開示は、1種または複数種のNMDARアンタゴニスト及びGLYX-13を含む組み合わせを特色とする(これらはそれぞれ、本明細書において時に、「構成要素」と称される)。上記組み合わせの有益効果は、部分的に、GLYX-13の投与(例えば、単回投与)が、NMDARアンタゴニスト誘発性認知障害(例えば、新規物体認識におけるNMDARアンタゴニスト誘発性障害;例えば、NMDARアンタゴニストの繰り返し投与によって誘発)を反転及び/または予防し得るという発見に基づく。上記組み合わせは、1種もしくは複数種の他の生物学的活性成分(例えば、1種または複数種の他の抗うつ化合物)ならびに/または1種もしくは複数種の薬学的に許容される添加剤及び/もしくは担体をさらに含み得る。上記組合せの構成要素(本明細書において時に、化学成分または化学化合物とも称される)は、患者に、連続的に(各構成要素を、異なる時間に投与する)、または実質的に同時に投与することができる。構成要素が、同じ薬学的に許容される担体中に存在してもよく、したがって、同時に投与されてもよいことは分かるであろう。別法では、構成要素はそれぞれ、従来の経口剤形もしくは非経口形態(または一方の構成要素は経口であってよく、他方は非経口であってよい)など、同時に、または順に投与することができる別々の医薬担体中に存在することができる。一部の実施形態では、GLYX-13での事前処置(すなわち、1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与する前に投与)が、特に有利であり得る。
【0009】
したがって、一態様では、NMDARアンタゴニストを急性投与される患者における認知障害を実質的に反転または予防する方法であって、有効量のGLYX-13を投与することを含む方法を提供する。
【0010】
別の態様では、それを必要とする患者において認知欠陥障害(cognitive impairment disorder)を処置する方法であって、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。認知欠陥障害は、認知能力の不足、先天性欠陥、環境因子(複数可)、または薬物誘発の1つまたは複数のためであり得、これらだけに限定されないが、学習障害及び/または失読症が含まれる。一部の実施形態では、1種または複数種のNMDARアンタゴニストを急性投与する前に、またはその後に、有効量のGLYX-13の投与を行う。他の実施形態では、有効量のGLYX-13の投与を、1種または複数種のNMDARアンタゴニストの急性投与と実質的に同時に行う。
【0011】
さらなる一態様では、これらだけに限定されないが:神経学的障害または他の障害(例えば、卒中、精神病性障害、疼痛(神経障害性疼痛)、うつ病(大うつ病)、パーキンソン病、及びアルツハイマー病);中枢神経系疾患(例えば、神経変性疾患、卒中、外傷性脳損傷、及び脊髄損傷);統合失調症;及び/またはうつ病(例えば、難治性うつ病)を含む障害、状態、または疾患を処置する方法であって、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、GLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを実質的に同時に投与する。他の実施形態では、GLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを順に投与し、例えば、GLYX-13を、1種または複数種のNMDARアンタゴニストの前、またはその後に投与する。
【0012】
一態様では、GLYX-13、1種または複数種のNMDARアンタゴニスト、ならびに1種または複数種の薬学的に許容される添加剤及び/または担体を含む薬学的に許容される組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】連続7日間にわたって1日2回のケタミン注射(30mg/kg、腹腔内)、続いて、試験1時間前に滅菌生理食塩水ビヒクル注射(ケタミン群)、試験1時間前にGLYX-13(1mg/kg、静脈内)注射(GLYX-13+ケタミン群)、または7日間にわたって1日2回の滅菌生理食塩水注射及び試験1時間前にビヒクル注射で事前処置された雄の成体C57BL/6雄マウスにおける、新規物体認識試験での平均±SEM識別インデックススコアを示す。次式:(新規物体の探査にかけた時間-熟知した物体の探査にかけた時間)/(新規及び熟知物体の両方の探査にかけた合計時間)を使用して、識別インデックスを算出する。1群当たりN=8~10。
*p<0.001、ビヒクル群と比較してDIの有意な低下、#p<0.001、ケタミン群と比較してDIの有意な反転(Fisher PLSD事後検定)。
図2のデータは、GLYX-13(1mg/kg、静脈内)が、マウスにおける新規物体認識において、慢性ケタミン誘発性障害を反転することを実証している。
【
図3】
図3は、連続7日間にわたって1日2回のPCP注射(10mg/kg、腹腔内)、続いて、試験1時間前に滅菌生理食塩水ビヒクル注射(PCP群)、試験1時間前にGLYX-13(1mg/kg、静脈内)注射(GLYX-13+PCP群)、または7日間にわたって1日2回の滅菌生理食塩水注射及び試験1時間前にビヒクル注射で事前処置された雄の成体C57BL/6雄マウスにおける、新規物体認識試験での平均±SEM識別インデックススコアを示す。次式:(新規物体の探査にかけた時間-熟知した物体の探査にかけた時間)/(新規及び熟知物体の両方の探査にかけた合計時間)を使用して、識別インデックスを算出する。1群当たりN=8~10。
*p<0.001、ビヒクル群と比較してDIの有意な低下、#p<0.001、PCP群と比較してDIの有意な反転(Fisher PLSD事後検定)。
図3のデータは、GLYX-13(1mg/kg、静脈内)が、マウスにおける新規物体認識において、慢性フェンシクリジン誘発性障害を反転することを実証している。
【
図4】体性感覚皮質における3mpk及び30mpkのGLYX-13の事前処置に、ケタミンを続けた場合の有意な減弱を示す。
【
図5】ケタミン(10mg/kg、皮下)の30分前にGLYX-13(3mg/kg、静脈内)で事前処置され、20分後に試験された雄の成体C57BL/6雄マウスにおける、新規物体認識試験での平均±SEM識別インデックススコアを示す。次式:(新規物体の探査にかけた時間-熟知した物体の探査にかけた時間)/(新規及び熟知物体の両方の探査にかけた合計時間)を使用して、識別インデックスを算出する。1群当たりN=8~11。
***p<0.0001、ビヒクル群と比較してDIの有意な低下、##p<0.01、ケタミン群と比較してDIの有意な反転(Fisher PLSD事後検定)。
図5のデータは、GLYX-13(3mg/kg、静脈内)が、マウスにおける新規物体認識において、急性ケタミン(10mg/kg、皮下)誘発性障害を反転することを実証している。
【
図6】ケタミン(10mg/kg、静脈内)の30分前にGLYX-13(3mg/kg、静脈内)で事前処置された2~3カ月齢の雄のSprague Dawleyラットにおけるオープンフィールドでの常同行動(旋回及び首振り運動)の平均(±SEM)回数を示す。ビヒクル処置した動物には、GLYX-13及びケタミン注射の代わりに、生理食塩水ビヒクル注射を投与した。動物を、最終投与の直後にオープンフィールドに入れ、行動を20分間にわたって分析した。N=8~12。
図6のデータは、GLYX-13(3mg/kg、静脈内)が、ラットにおいてケタミン(10mg/kg、静脈内)誘発性常同行動を阻害することを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、1種または複数種のNMDARアンタゴニスト及びGLYX-13を含む組み合わせを特色とする(これらはそれぞれ、本明細書において時に、「構成要素」と称される)。上記組み合わせの有益効果は、部分的に、GLYX-13の投与(例えば、単回投与)が、NMDARアンタゴニスト誘発性認知障害(例えば、新規物体認識におけるNMDARアンタゴニスト誘発性障害;例えば、NMDARアンタゴニストの繰り返し投与によって誘発)を反転及び/または予防し得るという発見に基づく。上記組み合わせは、1種もしくは複数種の他の生物学的活性成分(例えば、1種または複数種の他の抗うつ化合物)ならびに/または1種もしくは複数種の薬学的に許容される添加剤及び/もしくは担体をさらに含み得る。上記組合せの構成要素(本明細書において時に、化学成分または化学化合物とも称される)は、患者に、連続的に(各構成要素を、異なる時間に投与する)、または実質的に同時に投与することができる。構成要素が、同じ薬学的に許容される担体中に存在してもよく、したがって、同時に投与されてもよいことは分かるであろう。別法では、構成要素はそれぞれ、従来の経口剤形もしくは非経口形態(または一方の構成要素は経口であってよく、他方は非経口であってよい)など、同時に、または順に投与することができる別々の医薬担体中に存在することができる。一部の実施形態では、GLYX-13での事前処置(すなわち、1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与する前に投与)が、特に有利であり得る。
【0015】
「GLYX-13」は、次式:
によって表され、これには、上記化合物の多形体、水和物、溶媒和物、遊離塩基、及び/または適切な塩形態が含まれる。
【0016】
「処置」は、状態、疾患、障害などの改善をもたらす任意の効果、例えば、緩和、低減、調節、または除去を含む。
【0017】
用語「アルコキシ」は、本明細書において使用する場合、酸素に結合している直鎖または分枝アルキル基(アルキル-O-)を指す。例示的なアルコキシ基には、これらだけに限定されないが、それぞれC1~C6アルコキシ及びC2~C6アルコキシと本明細書において称される1~6個または2~6個の炭素原子のアルコキシが含まれる。例示的なアルコキシ基には、これらだけに限定されないが、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどが含まれる。
【0018】
用語「アルキル」は、本明細書において使用する場合、飽和直鎖または分枝炭化水素、例えば、それぞれC1~C6アルキル、C1~C4アルキル、及びC1~C3アルキルと本明細書において称される1~6個、1~4個、または1~3個の炭素原子の直鎖または分枝基を指す。例示的なアルキル基には、これらだけに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、3-メチル-2-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシルなどが含まれる。用語「ハロアルキル」は、本明細書において使用する場合、アルキル基中の1個または複数個の水素原子が1個または複数個の独立に選択されるハロゲンで置き換えられている飽和直鎖または分枝アルキル基を指す。用語「ハロアルキル」は、アルキル基の水素原子のすべてが、独立に選択されるハロゲンで置き換えられているアルキル基を包含する(時に、「ペルハロ」アルキル基と称される)。例示的なハロアルキル基には、これらだけに限定されないが、CH2F、CH2CH2Cl、CF3、CHFCH2Clが含まれる。
【0019】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、本明細書において使用する場合、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0020】
用語「オキソ」は、本明細書において使用する場合、ラジカルの=Oを指す。
【0021】
本明細書において使用する場合、用語「NMDA受容体アンタゴニスト」及び「NMDARアンタゴニスト」は両方とも一般に、NMDA受容体のグリシン結合部位に結合することができ、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)に拮抗するか、またはその作用を阻害するように作動する化学成分を指す。
【0022】
「薬学的または薬理学的に許容される」は、動物またはヒトに適切に投与した場合に、不利か、アレルギー性か、または他の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を含む。ヒト投与では、調製物は、FDA Office of Biologics標準によって求められる無菌性、発熱原性、一般安全性、及び純度標準を満たすべきである。
【0023】
用語「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される添加剤」は、本明細書において使用する場合、医薬投与と適合性である任意かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング、等張性吸収遅延剤などを指す。薬学的活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。本明細書に記載の組合せは、補足的、追加的、または増強された治療作用をもたらす他の活性化合物を含有してもよい。
【0024】
用語「医薬組成物」は、本明細書において使用する場合、1種または複数種の薬学的に許容される担体及び/または添加剤と一緒に製剤化された、本明細書において開示する組み合わせの構成要素の少なくとも1種を含む組成物を指す。
【0025】
「個体」、「患者」、または「対象」は、互換的に使用され、これには、哺乳動物を含む任意の動物、好ましくは、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、最も好ましくはヒトが含まれる。本発明の組合せは、本明細書に記載のとおり、ヒトなどの哺乳動物に投与することができるが、他の哺乳動物、例えば、獣医学的処置を必要とする動物、例えば、家畜(例えば、イヌ、ネコなど)、牧場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験室動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)に投与することもできる。一部の実施形態では、本発明の方法で処置される哺乳動物は、例えば、疼痛またはうつ病の処置が望ましい哺乳動物である。
【0026】
用語「有効量」は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床家が求めている組織、システム、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するであろう対象構成要素の量を指す。例として、有効量は、本明細書に記載の疾患、障害、及び状態のいずれかを処置するために有効な量であり得る。別法では、有効量は、所望の治療効果及び/または予防効果を達成するために必要とされる量、例えば、NMDARアンタゴニスト誘発性認知障害(例えば、新規物体認識におけるNMDARアンタゴニスト誘発性障害;例えば、NMDARアンタゴニストの繰り返し投与によって誘発される)の反転及び/または予防をもたらすGLYX-13の量を指し得る。
【0027】
用語「薬学的に許容される塩(複数可)」は、本明細書において使用する場合、本組合せにおいて使用される化合物中に存在し得る酸性基または塩基性基の塩を指す。本来塩基性である、本組合せ中に含まれる化合物は、様々な無機酸及び有機酸と共に広範囲の様々な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用してもよい酸は、非毒性酸付加塩、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成するものであり、これらだけに限定されないが、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカル酸塩(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))が含まれる。本来酸性である、本組合せ中に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと共に塩基塩を形成することができる。そのような塩の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄塩が含まれる。塩基性部分または酸性部分を含む、本組合せに含まれる化合物はまた、様々なアミノ酸と共に薬学的に許容される塩を形成し得る。本組合せに含まれる化合物は、酸性基及び塩基性基の両方;例えば、1個のアミノ基及び1個のカルボン酸基を含むことがある。そのような場合、その化合物は、酸付加塩、双性イオン、または塩基塩として存在し得る。
【0028】
本組合せに含まれる化合物は、1個または複数個のキラル中心及び/または二重結合を含むことがあり、したがって、幾何異性体、鏡像異性体、またはジアステレオマーとして存在し得る。鏡像異性体及びジアステレオマーは、ステレオジェン炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、記号「(+)」、「(-)」、「R」、または「S」によって指定され得るが、当業者は、構造が、キラル中心を暗示し得ることが分かるであろう。炭素-炭素二重結合の周りの置換基の配置、またはシクロアルキルもしくは複素環式環の周りの置換基の配置から生じる幾何異性体も、本発明の化合物には存在し得る。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」または「E」配置にあると指定され、用語「Z」及び「E」は、IUPAC標準に従って使用される。別段の指定がない限り、二重結合を示す構造は、「E」及び「Z」異性体の両方を包含する。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は別法では、「cis」または「trans」と称され得て、「cis」は、二重結合の同じ側にある置換基を表し、「trans」は、二重結合の反対側にある置換基を表す。炭素環式環の周りの置換基の配置も、「cis」または「trans」と指定され得る。用語「cis」は、環の面の同じ側にある置換基を表し、用語「trans」は、環の面の反対側にある置換基を表す。置換基が環の面の同じ側及び反対側の両方に配置されている化合物の混合物は、「cis/trans」と指定される。
【0029】
本組合せに含まれる化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で、さらには、非溶媒和形態で存在し得、本発明が、溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方を包含することが意図されている。一実施形態では、化合物は、非晶質である。一実施形態では、化合物は、単一の多形である。別の実施形態では、化合物は、多形の混合物である。別の実施形態では、化合物は、結晶形である。
【0030】
用語「プロドラッグ」は、in vivoで変換されて、開示の化合物、またはその化合物の薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物をもたらす化合物を指す。変換は、様々な機構によって(エステラーゼ、アミダーゼ、ホスファターゼ、酸化、及びまたは還元代謝などによって)、様々な位置において(腸管腔において、または小腸、血液、もしくは肝臓を通過する際などに)起こり得る。プロドラッグは、当技術分野で周知である(例えば、Rautio,Kumpulainenら、 Nature Reviews Drug Discovery 2008、7、255を参照されたい)。例えば、本発明の化合物、またはその化合物の薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物がカルボン酸官能基を含有する場合、プロドラッグは、酸基の水素原子を、(C1~C8)アルキル、(C2~C12)アルカノイルオキシメチル、4~9個の炭素原子を有する1-(アルカノイルオキシ)エチル、5~10個の炭素原子を有する1-メチル-1-(アルカノイルオキシ)-エチル、3~6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4~7個の炭素原子を有する1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5~8個の炭素原子を有する1-メチル-1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3~9個の炭素原子を有するN-(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4~10個の炭素原子を有する1-(N-(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3-フタリジル、4-クロトノラクトニル、ガンマ-ブチロラクトン-4-イル、ジ-N,N-(C1~C2)アルキルアミノ(C2~C3)アルキル(β-ジメチルアミノエチルなど)、カルバモイル-(C1~C2)アルキル、N,N-ジ(C1~C2)アルキルカルバモイル-(C1~C2)アルキル、及びピペリジノ-、ピロリジノ-、またはモルホリノ(C2~C3)アルキルなどの基で置き換えることによって形成されるエステルを含み得る。
【0031】
組合せの構成要素
GLYX-13は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,763,393号及び同第4,086,196号において記載されているものなどの周知の組換えまたは合成方法によって得てもよい。GLYX 13の多形体、水和物、同族体、溶媒和物、遊離塩基、及び/またはこれらだけに限定されないが、酢酸塩などの適切な塩形態も企図されている。ペプチドは、米国特許第5,763,393号においてさらに記載されているとおりの環化または非環化形態であってもよい。一部の実施形態では、GLYX-13類似体は、CH2、OH、またはNH2部分の欠失など、1個または複数個のThrまたはPro基上の部分の挿入または欠失を含んでよい。他の実施形態では、GLYX-13は、1個または複数個のハロゲン、C1~C3アルキル(ハロゲンまたはアミノで置換されていてもよい)、ヒドロキシル、及び/またはアミノで置換されていてもよい。本明細書において使用するために企図される他の化合物には、それらの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,763,393号、米国特許第6,107,271号、及びWoodら、Neuro. Report、19、1059~1061、2008において開示されているNMDARのグリシン部位部分アゴニストが含まれる。
【0032】
本明細書に開示のペプチドには、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の両方、例えば、すべての天然アミノ酸(またはその誘導体)、すべての非天然アミノ酸(またはその誘導体)、または天然及び非天然アミノ酸の混合物が含まれ得ることは理解されるであろう。例えば、GLYX-13中の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のアミノ酸はそれぞれ独立に、d-またはl-配置を有してもよい。
【0033】
一部の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、ケタミン、メマンチン、ラニセミン(AZD6765)、CERC-301、デキストロメトルファン、デキストロルファン、フェンシクリジン、ジゾシルピン(MK-801)、アマンタジン、イフェンプロジル、AV-101、AZD6423、及びリルゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される。上述のNMDARアンタゴニストの誘導体も企図される。
【0034】
ある種の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、式(I)を有する:
[式中、
R
1は、ハロ;-OH;NR
aR
b(ここで、R
a及びR
bはそれぞれ、H及びC
1~C
3アルキルから独立に選択される);C
1~C
3アルキル;及びC
1~C
3アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいフェニル、チエニル、またはベンゾチエニルであり;
R
2は、R
c及びR
dがそれぞれ、H、及び-OHまたはC
1~C
3アルコキシで置換されていてもよいC
1~C
6アルキルから独立に選択されるか;またはR
c及びR
dが、それぞれが結合している窒素原子と一緒に、1~2個の独立に選択されるC
1~C
3アルキルで置換されていてもよい5~7員環を形成している-NR
cR
dであり;
R
3は、H、オキソ、またはC
1~C
3アルキルである;
またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ]。
【0035】
ある種の実施形態では、R1は、ハロ;-OH;NRaRb(ここで、Ra及びRbはそれぞれ、H及びC1~C3アルキルから独立に選択される);C1~C3アルキル;及びC1~C3アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである。例えば、R1は、フェニル、3-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、3-アミノフェニル、3-メチルフェニル、4-フルオロフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、または2-クロロフェニルであり得る。他の実施形態では、R1は、置換されていてもよいチエニルまたは置換されていてもよいベンゾチエニルである。
【0036】
ある種の実施形態では、R2は、Rc及びRdがそれぞれ独立に、H、及び-OHまたはC1~C3アルコキシで置換されていてもよいC1~C6アルキル、例えば、H及びC1~C6アルキル、例えば、H及びC1~C3アルキルから選択され、例えば、Rc及びRdの一方が、Hであり、他方が、C1~C3アルキルである-NRcRdである。例えば、R2は、-NH(C1~C3アルキル)、例えば、-NH(CH3)であり得る。他の実施形態では、R2は、Rc及びRdが、それぞれが結合している窒素原子と一緒に、1~2個の独立に選択されるC1~C3アルキルで置換されていてもよい5~7員環を形成している-NRcRd、例えば、ピペリジニルである。
【0037】
ある種の実施形態では、R3は、Hまたはオキソである。
【0038】
ある種の実施形態では:
R1は、ハロ;-OH;NRaRb(ここで、Ra及びRbはそれぞれ独立に、H及びC1~C3アルキルから選択される);C1~C3アルキル;及びC1~C3アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいフェニルであり(例えば、R1は、フェニル、3-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、3-アミノフェニル、3-メチルフェニル、4-フルオロフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、または2-クロロフェニルである);
R2は、Rc及びRdがそれぞれ独立に、H、及び-OHまたはC1~C3アルコキシで置換されていてもよいC1~C6アルキル;例えば、H及びC1~C6アルキル、例えば、H及びC1~C3アルキルから選択され;例えば、Rc及びRdの一方が、Hであり、他方が、C1~C3アルキルである-NRcRdであり;例えば、R2は、-NH(C1~C3アルキル)、例えば、-NH(CH3)であり得;
R3は、Hまたはオキソ(例えば、オキソ)である。
【0039】
ある種の実施形態では:
R1は、ハロ;-OH;NRaRb(ここで、Ra及びRbはそれぞれ独立に、H及びC1~C3アルキルから選択される);C1~C3アルキル;及びC1~C3アルコキシからなる群から独立に選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいフェニルであり(例えば、R1は、フェニル、3-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、3-アミノフェニル、3-メチルフェニル、4-フルオロフェニル、4-ヒドロキシフェニル、3-メトキシフェニル、または2-クロロフェニルである);
R2は、Rc及びRdが、それぞれが結合している窒素と一緒に、1~2個の独立に選択されるC1~C3アルキルで置換されていてもよい5~7員環を形成している-NRcRd、例えば、ピペリジニルであり;
R3は、Hまたはオキソ(例えば、H)である。
【0040】
ある種の実施形態では、R1は、フェニルであり、R2は、ピペリジニルであり、R3は、Hである。例えば、上記化合物は、フェンシクリジンであり得る。
【0041】
ある種の実施形態では、R1は、2-クロロフェニルであり、R2は、-NH(CH3)であり、R3は、オキソである。例えば、上記化合物は、ケタミン、例えば、(S)-ケタミンであり得る。
【0042】
ある種の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、メマンチンまたはアマンタジンである。ある種の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、ジゾシルピン(MK-801)である。ある種の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、デキストロメトルファンまたはデキストロルファンである。ある種の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、ラニセミン(AZD6765)、CERC-301、またはイフェンプロジルである。ある種の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、AV-101またはAZD6423である。
【0043】
一部の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、亜酸化窒素、アトモキセチン、デキストラロルファン、ジフェニジン、エチシクリジン、ガシクリジン、イボガイン、メトキセタミン、ニトロメマンチン、ロリシクリジン、テノシクリジン、メトキシジン、チレタミン、ネラメキサン、エリプロジル、エトキサドロール、デキソキサドロール、メタドン、WMS-2539、NEFA、レマセミド、デルセミン、8A-PDHQ、アプチガネル(Cerestat、CNS-1102)、HU-211、レマセミド、リンコフィリン、TK-40、トラキソプロジル(CP-101,606)、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACPC)、キヌレン酸もしくはその誘導体、2-カルボキシテトラヒドロキノリンもしくはその誘導体、2-カルボキシインドールもしくはその誘導体、4-ヒドロキシ-2-キノリンもしくはその誘導体、4-ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体、キノキサリン-2,3-ジオンもしくはその誘導体、三環式アンタゴニスト、ラコサミド、L-フェニルアラニン、ミダフォテル(midafotel)、及びアプチガネル、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群から選択される。
【0044】
例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるKvistら、J.Biol.Chem.2013 288:33124~33135に記載のものも参照されたい。その全体が参照によって本明細書に組み込まれるTraynelisら、Pharmacological Reviews 2010、62、405に記載のものも参照されたい(例えば、CGP-61594;CGP-58411;ACEA-1011及び1021;L-701,324;(R)-AP5;(R)-AP7;PMPA;(R)-CPP;NVP-AAM077;PPDA;(R)-a-AA;PBPD;UBP141;CGS-19755(セルフォテル);CGP-43487;CGP-40116;Conantokins、例えば、Br、G、Pr1、Pr2、Pr3、R、及びT;ラジプロジル;ならびにMK-0657)。
【0045】
ある種の実施形態では、NMDARアンタゴニストは、キヌレン酸もしくはその誘導体、2-カルボキシテトラヒドロキノリンもしくはその誘導体、2-カルボキシインドールもしくはその誘導体、4-ヒドロキシ-2-キノリンもしくはその誘導体、4-ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体、キノキサリン-2,3-ジオンもしくはその誘導体、または三環式アンタゴニストである。そのような化合物の例は、本明細書において、かつ例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるDanyszら、Pharmacological Reviews 1998、50、597において記載されている。
【0046】
方法
一態様では、NMDARアンタゴニストを急性投与される患者において認知障害を実質的に反転または予防する方法であって、有効量のGLYX-13を投与することを含む方法を提供する。
【0047】
別の態様では、それを必要とする患者において認知欠陥障害を処置する方法であって、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。認知欠陥障害は、認知能力の不足、先天性欠陥、環境因子(複数可)、または薬物誘発の1つまたは複数のためであり得、これらだけに限定されないが、学習障害及び/または失読症が含まれる。一部の実施形態では、1種または複数種のNMDARアンタゴニストを急性投与する前に、またはその後に、有効量のGLYX-13を行う。他の実施形態では、有効量のGLYX-13を、1種または複数種のNMDARアンタゴニストの急性投与と実質的に同時に行う。
【0048】
さらなる一態様では、これらだけに限定されないが:神経学的障害または他の障害(例えば、卒中、精神病性障害、疼痛(神経障害性疼痛)、うつ病(大うつ病)、パーキンソン病、及びアルツハイマー病);中枢神経系疾患(例えば、神経変性疾患、卒中、外傷性脳損傷、及び脊髄損傷);統合失調症;及び/またはうつ病(例えば、難治性うつ病)を含む障害、状態、または疾患を処置する方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。他の例示的な状態には、これらだけに限定されないが、学習障害、自閉障害、注意欠陥多動障害、不安、片頭痛、トゥーレット症候群、恐怖症、心的外傷後ストレス障害、認知症、加齢関連記憶欠損、AIDS認知症、ハンチントン病、痙縮、ミオクローヌス、筋肉痙攣、双極性障害、神経障害性疼痛、物質乱用障害、尿失禁、虚血、特殊学習障害、発作、卒中後痙攣、脳虚血、低血糖、心停止、及びてんかんが含まれる。一部の実施形態では、GLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを実質的に同時に投与する。他の実施形態では、GLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを順に投与し、例えば、GLYX-13を、1種または複数種のNMDARアンタゴニストの前または後に投与する。
【0049】
企図される方法には、それを必要とする患者において自閉症及び/または自閉症スペクトラム障害を処置する方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法が含まれる。一実施形態では、それを必要とする患者において自閉症の症状を低減するための方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を企図する。例えば、投与すると、上記組み合わせは、自閉症の1種または複数種の症状、例えば、アイコンタクトの回避、社会化不全、注意欠陥、不機嫌、多動性、異常音感、不適切な発語、睡眠撹乱、及び固執性の発生率を低下させ得る。そのような発生率の低下は、未処置の個体または未処置の個体(複数)における発生率と比較して測定することができる。
【0050】
一部の実施形態では、自閉症に罹患している患者はまた、別の医学的状態、例えば、脆弱X症候群、結節性硬化症、先天性風疹症候群、及び未処置フェニルケトン尿症に罹患している。
【0051】
一部の実施形態では、それを必要とする患者において脳虚血、卒中、脳外傷、脳腫瘍、急性神経障害性疼痛、慢性神経障害性疼痛、睡眠障害、薬物中毒、うつ病、特定の視覚障害、エタノール禁断症状、不安、記憶及び学習障害、自閉症、てんかん、AIDS認知症、多発性萎縮症、進行性核上麻痺、フリードライヒ運動失調、ダウン症候群、脆弱X症候群、結節性硬化症、オリーブ端小脳萎縮、脳性麻痺、薬物誘発性視神経炎、末梢神経障害、脊髄障害、虚血性網膜障害、糖尿病性網膜症、緑内障、心停止、挙動障害、衝動制御障害、アルツハイマー病、初期アルツハイマー病に随伴する記憶喪失、注意欠陥障害、ADHD、統合失調症、オピエートの寛解、ニコチン中毒、エタノール中毒、外傷性脳損傷、脊髄損傷、外傷後ストレス症候群、及びハンチントン舞踏病からなる群から選択される障害を処置する方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を企図する。
【0052】
一部の実施形態では、それを必要とする患者において注意欠陥障害、ADHD(注意欠陥多動障害)、統合失調症、不安、オピエートの寛解、ニコチン及び/またはエタノール中毒(例えば、そのような中毒を処置するか、そのような中毒からの離脱の副作用を寛解する方法)、脊髄損傷、糖尿病性網膜症、外傷性脳損傷、外傷後ストレス症候群、及び/またはハンチントン舞踏病を処置する方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を本明細書において企図する。例えば、統合失調症、中毒(例えば、エタノールまたはオピエート)、自閉症、ハンチントン舞踏病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、外傷後ストレス症候群、及び糖尿病性網膜症に罹患している患者はいずれも、NMDA受容体発現または機能の変化を受けている可能性がある。
【0053】
例えば、それを必要とする患者においてうつ病を処置する方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を本明細書において提供する。ある種の実施形態では、処置抵抗性患者は、本明細書に記載の組合せの投与前に、少なくとも2種類の抗うつ処置で処置されている患者と特定される。他の実施形態では、処置抵抗性患者は、少なくとも1種類の抗うつ処置の副作用に耐えたがらないか、または耐えることができないと特定されている患者である。
【0054】
多くの一般的なうつ状態は、大うつ病性障害及び気分変調障害を含む。他のうつ状態は、特有の状況下で発生する。そのようなうつ状態には、これらだけに限定されないが、精神病性うつ病、産後うつ病、季節性情動障害(SAD)、気分障害、癌または慢性疼痛、化学療法、慢性ストレス、心的外傷後ストレス障害、及び双極性障害(または躁うつ障害)などの慢性医学的状態に起因するうつ病が含まれる。
【0055】
難治性うつ病は、三環系抗うつ薬、MAOI、SSRI、ならびに二重及び三重取込み阻害薬、ならびに/または抗不安薬を含む標準的な薬理学的処置、さらには、心理療法、電気痙攣療法、迷走神経刺激、及び/または経頭蓋磁気刺激などの非薬理学的処置に抵抗性のあるうつ病に罹患している患者において生じる。処置抵抗性患者は、1種または複数種の標準的な薬理学的または非薬理学的処置を受けているにも関わらず、うつ病の1種または複数種の症状(例えば、持続性の不安または哀感、無力感、絶望、悲観)の緩和を経験することができない患者と特定され得る。ある種の実施形態では、処置抵抗性患者は、2種の異なる抗うつ薬での処置を受けているにも関わらず、うつ病の1種または複数種の症状の緩和を経験することができない患者である。他の実施形態では、処置抵抗性患者は、4種の異なる抗うつ薬での処置を受けているにも関わらず、うつ病の1種または複数種の症状の緩和を経験することができない患者である。処置抵抗性患者はまた、1種または複数種の標準的な薬理学的または非薬理学的処置の副作用に耐えたがらないか、または耐えることができない患者と特定され得る。
【0056】
また別の態様では、疼痛寛解を増強し、動物に感覚消失を与えるための方法を提供する。一部の実施形態では、神経障害性疼痛を処置するための方法を提供する。神経障害性疼痛は、急性または慢性であってよい。場合によっては、神経障害性疼痛は、ヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、卒中、虚血後、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィー、複合性局所疼痛症候群、脊髄損傷、坐骨神経痛、幻想肢痛、糖尿病性神経障害、及び癌化学療法薬誘発性神経障害性疼痛などの状態に関連し得る。疼痛寛解を増強し、患者に感覚消失を与えるための方法も企図される。
【0057】
ある種の実施形態では、統合失調症を処置するための方法を提供する。例えば、妄想型統合失調症、解体型統合失調症(すなわち、破瓜型統合失調症)、緊張病型統合失調症、未分化型統合失調症、残存型統合失調症、統合失調症後うつ病、及び単純型統合失調症を、本明細書において企図する方法及び組成物を使用して処置してもよい。統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、及び妄想または幻覚を伴う精神病性障害などの精神病性障害を、本明細書において企図する組成物を使用して処置してもよい。
【0058】
妄想または幻聴は存在するが、思考障害、解体性挙動、または感情の平板化は存在しない場合に、妄想型統合失調症と特徴づけられ得る。妄想は、被害的及び/または誇大的であってもよいが、これらに加えて、嫉妬、信仰心、または身体化などの他のテーマが存在してもよい。
【0059】
思考障害及び平板な感情が一緒に存在する場合に、解体型統合失調症と特徴づけられ得る。
【0060】
対象がほとんど不動であるか、または興奮した無意味な運動を示し得る場合に、緊張病型統合失調症と特徴づけられ得る。症状には、緊張病型昏迷及びろう屈症が含まれ得る。
【0061】
精神病性症状が存在するが、妄想型、解体型、または緊張病型の基準を満たしていない場合に、未分化型統合失調症と特徴づけられ得る。
【0062】
低い強度でのみ陽性症状が存在する場合に、残存型統合失調症と特徴づけられ得る。
【0063】
うつ事象が、統合失調性疾患の結果において生じ、多少の低レベルの統合失調症状がまだ存在し得る場合に、統合失調症後うつ病と特徴づけられ得る。
【0064】
単純型統合失調症は、精神病性事象の履歴を伴わない、顕著な陰性症状の潜行性及び進行性の発生によって特徴づけられ得る。
【0065】
一部の実施形態では、これらだけに限定されないが、双極性障害、境界型人格障害、薬物中毒症状、及び薬物誘発性精神病を含む他の精神障害において存在し得る精神病性症状を処置するための方法を提供する。
【0066】
別の実施形態では、例えば、妄想障害において存在し得る妄想(例えば、「奇異でない」)を処置する方法を提供する。
【0067】
また、これらだけに限定されないが、社会不安障害、回避的人格障害、及び統合失調型人格障害を含む状態におけるひきこもりを処置するための方法を提供する。
【0068】
加えて、強迫性障害(OCD)を処置するための方法を提供する。
【0069】
また、細胞における自閉症ターゲット遺伝子発現を調節する方法であって、細胞を、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストと接触させることを含む方法を本明細書において提供する。自閉症遺伝子発現は、例えば、ABAT、APOE、CHRNA4、GABRA5、GFAP、GRIN2A、PDYN、及びPENKから選択され得る。別の実施形態では、シナプス可塑性関連障害に罹患している患者においてシナプス可塑性を調節する方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。
【0070】
別の実施形態では、それを必要とする患者においてアルツハイマー病を処置する、または例えば、例えば初期アルツハイマー病に随伴する記憶喪失を処置する方法であって、本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。in-vitroまたはin-vivoで(例えば、細胞中で)アルツハイマーアミロイドタンパク質(例えば、ベータアミロイドペプチド、例えば、アイソフォームAβ1-42)を調節する方法であって、そのタンパク質を本明細書に記載の組合せ、例えば、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストと接触させることを含む方法も本明細書において提供する。例えば、一部の実施形態では、GLYX-13または別の開示化合物は、そのようなアミロイドタンパク質が海馬スライスにおける長期強化作用を阻害する能力、さらにはアポトーシス神経細胞死を遮断し得る。一部の実施形態では、開示化合物(例えば、GLYX-13)は、それを必要とするアルツハイマー患者に神経保護特性を提供し得、例えば、後期アルツハイマー関連神経細胞死に対して治療効果を提供し得る。
【0071】
一部の実施形態では、患者は、ヒト、例えば、ヒト小児患者である。
【0072】
本開示は、有効量のGLYX-13及び1種または複数種のNMDARアンタゴニストを、これらの治療薬の同時作用からの有益効果を得ることを意図した特定の処置レジメンの一部として同時投与することを含む(これだけに限定されないが)、「併用療法」を企図する。その組み合わせの有益効果には、これらだけに限定されないが、治療薬の組合せから生じる薬物動態または薬力学的同時作用が含まれる。組合せてのこれらの治療薬の投与を典型的には、規定の期間(通常、選択された組合せに応じて数日、数週、数か月、または数年)をかけて実施する。併用療法は、連続での、すなわち、各治療薬を異なる時間に投与する複数の治療薬の投与、さらには、実質的に同時の方法で、これらの治療薬、または治療薬の少なくとも2種の投与を包含することを意図する。実質的に同時の投与は、例えば、対象に、固定比の各治療薬を有する単一の錠剤もしくはカプセル剤、または複数の、治療薬それぞれのための単一のカプセル剤を投与することによって達成することができる。各治療薬の連続または実質的に同時の投与は、これらだけに限定されないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介しての直接吸収を含む任意の適切な経路によって行うことができる。治療薬は、同じ経路によって、または異なる経路によって投与することができる。例えば、選択された組合せの第1の治療薬を静脈内注射によって投与してもよい一方で、その組み合わせの他の治療薬を経口投与してもよい。別法では、例えば、すべての治療薬を経口投与してもよいし、またはすべての治療薬を、静脈内注射によって投与してもよい。
【0073】
併用療法はまた、他の生物学的活性成分及び非薬物治療とさらに組み合わせて上記のとおりの治療薬の投与を包含し得る。併用療法が非薬物処置をさらに含む場合、治療薬及び非薬物処置の組合せの同時作用からの有益効果が達成される限り、非薬物処置を任意の適切な時に行うことができる。例えば、適切な場合には、治療薬の投与によって、おそらく数日、または数週間まで一時的に非薬物処置を除いた場合にも、有益効果は達成される。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書に記載の組合せの構成要素の1種または複数種を患者に、これらだけに限定されないが、皮下及び静脈内を含む非経口で投与してもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載の組合せの構成要素の1種または複数種をまた、低速制御静脈内注入によって、またはインプラントデバイスからの放出によって投与してもよい。一部の実施形態では、患者は、GLYX-13の1回(単回)用量投与の1時間、2時間、4時間、8時間、12時間後、1日後、1週間後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、またはなお8日後に、例えば、認知障害の実質的な改善を示す。
【0075】
治療において使用するために必要な開示化合物の治療有効量は、治療を受ける自閉状態の性質、所望の処置時間の長さ、患者の年齢及び状態で変動し、最終的には、主治医によって決定される。しかしながら一般には、成人の処置で使用される用量は典型的には、本明細書に記載の組合せの各構成要素1日当たり約0.01mg/kg~約1000mg/kgの範囲(例えば、1日当たり約0.01mg/kg~約100mg/kg、1日当たり約0.01mg/kg~約10mg/kg、1日当たり約0.1mg/kg~約100mg/kg、1日当たり約0.1mg/kg~約50mg/kg、1日当たり約0.1mg/kg~約10mg/kg)である。ある種の実施形態では、成人の処置で使用されるGLYX-13の用量は典型的には、1日当たり約0.01mg/kg~約100mg/kgの範囲(例えば、1日当たり約0.01mg/kg~約10mg/kg、1日当たり約0.1mg/kg~約100mg/kg、1日当たり約0.1mg/kg~約50mg/kg、1日当たり約0.1mg/kg~約10mg/kg、1日当たり約1mg/kg)である。ある種の実施形態では、成人の処置で使用されるNMDARアンタゴニストの用量は典型的には、1日当たり約0.01mg/kg~約100mg/kgの範囲(例えば、1日当たり約0.1mg/kg~約100mg/kg、1日当たり約0.1mg/kg~約50mg/kg、1日当たり約10mg/kg、または1日当たり約30mg/kg)である。所望の用量を、単回用量で、または例えば1日当たり2回、3回、4回、もしくはそれ以上のサブ用量として適切な間隔で投与される複数回用量として、好都合に投与してもよい。
【0076】
いくつかの因子によって、本明細書に記載の組合せの各構成要素は広範な投薬量にわたって投与されることとなり得る。他の治療薬と組み合わせて投与する場合、本発明の化合物の投薬量を、比較的少ない投薬量で投与してもよい。ある種の実施形態では、GLYX-13の投薬量は、約1ng/kg~約100mg/kgであってよい。GLYX-13の投薬量は、これらだけに限定されないが、約1ug/kg、25ug/kg、50ug/kg、75ug/kg、100 uug/kg、125ug/kg、150ug/kg、175ug/kg、200ug/kg、225ug/kg、250ug/kg、275ug/kg、300ug/kg、325ug/kg、350ug/kg、375ug/kg、400ug/kg、425ug/kg、450ug/kg、475ug/kg、500ug/kg、525ug/kg、550ug/kg、575ug/kg、600ug/kg、625ug/kg、650ug/kg、675ug/kg、700ug/kg、725ug/kg、750ug/kg、775ug/kg、800ug/kg、825ug/kg、850ug/kg、875ug/kg、900ug/kg、925ug/kg、950ug/kg、975ug/kg、1mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、または100mg/kgを含む任意の投薬量であってよい。
【0077】
一部の実施形態では、開示化合物、例えば、GLYX-13を、認知障害を反転または予防する量で投与してもよい。
【0078】
開示化合物を、液体または固体製剤、例えば、水性または油性懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、及び/またはエリキシル剤の一部として提供してもよい。組成物をまた、使用前に水または他の適切なビヒクルで構成するための無水生成物として製剤化してもよい。そのような液体製剤は、これらだけに限定されないが、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル、及び防腐剤を含む添加剤を含有してもよい。懸濁化剤には、これらだけに限定されないが、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、及び水素化食用油脂が含まれる。乳化剤には、これらだけに限定されないが、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、及びアラビアゴムが含まれる。非水性ビヒクルには、これらだけに限定されないが、食用油、扁桃油、精留ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコール、及びエチルアルコールが含まれる。防腐剤には、これらだけに限定されないが、ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、及びソルビン酸が含まれる。企図される化合物をまた、これらだけに限定されないが、注射または連続注入による投与を含む非経口投与のために製剤化してもよい。注射用の製剤は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、または乳剤の形態であってもよく、これらだけに限定されないが、懸濁化剤、安定剤、及び分散剤を含む配合剤を含有してもよい。組成物をまた、これらだけに限定されないが、発熱物質不含の滅菌水(例えば、注射用水)を含む適切なビヒクルで再構成するための粉末形態で提供してもよい。
【0079】
一部の実施形態では、開示化合物、例えば、GLYX-13を、静脈内注射に適した水性組成物の一部として提供してもよい。ある種の実施形態では、そのような組成物は、(i)下式:
を有する薬学的活性化合物;またはその薬学的に許容される塩60mg/mL~約200mg/mL(例えば、約125mg/mL~約175mg/mL;例えば、約150mg/mLまたは約75mg/mL);(ii)水(例えば、注射用水);及び(iii)酸を含むことができ;安定な水性組成物は、25℃で約3.9~約5.5(例えば、約4.0~約5.0、約4.2~約5.0、約4.1~約4.7、約4.2~約4.8、約4.0、約4.5)のpHを有する。ある種の実施形態では、そのような組成物を、化合物の量を少なくとも1回の単回用量として抽出可能である容器(例えば、プレフィルドシリンジまたはバイアル)内に配分することができる。ある種の実施形態では、単回用量は、約1mL~約4mL(例えば、3mL)の体積を有し得る。
【0080】
ある種の実施形態では、水性組成物は、薬学的活性化合物約200mg~約500mg(例えば、約450mg;約375;または約225mg)を含み得る。
【0081】
ある種の実施形態では、酸は、フマル酸、リンゴ酸、乳酸、塩酸、臭化水素酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硝酸、硫酸、及びアスコルビン酸からなる群から選択することができる。ある種の実施形態では、酸は、組成物水溶液中でクロリドイオンをもたらす(例えば、塩酸)。
【0082】
ある種の実施形態では、薬学的活性化合物約150mg/mLを含み、約3mLの体積を有する組成物水溶液の用量を患者に投与すると、約800mOsmol/kg~約900mOsmol/kgの生理学的重量モル浸透圧濃度が、上記患者において得られる。他の実施形態では、薬学的活性化合物約75mg/mLを含み、約3mLの体積を有する安定な組成物水溶液の用量を患者に投与すると、約375mOsmol/kg~約475mOsmol/kgの生理学的重量モル浸透圧濃度が、上記患者において得られる。
【実施例0083】
マウスにおける新規物体認識試験(Novel Object recognition Test、「NOR」)試験を、(Hashimoto K、Fujita Y、Shimizu E、Iyo M(2005).Phencyclidine-induced cognitive deficits in mice are improved by subsequent subchronic administration of clozapine, but not haloperidol. European journal of pharmacology 519(1-2):114~117)からアレンジした。例えば、Rajagopalら、Current Pharmaceutical Design 2014、20、1も参照されたい。NORボックスは、プレキシガラスから作成された開放ボックスである(長さ52cm;幅52cm;高さ31cm)。マウスのために本発明者らが使用したボックスの寸法は、ラットのために使用されたボックスと同一であった。ボックスを、床から約30cm上に配置した。ラットNOR研究における黒色の背景に対して、ボックスの壁は、白色の背景を有した。本発明者らは、C57BL/6マウスが、黒色の背景と比較すると、白色の背景において、より探索することを見出した。試験の3日前に、マウスを、空のNORアリーナに1時間にわたって慣れさせた。マウスにおけるNOR試験は、ラットNORを研究するために以前に使用された試験と同様であるが、ただし、習得及び記憶の期間は10分間であり、マウスをマウスのホームケージに戻す24時間の試験間間隔(intertrial interval;ITI)を続けたのに対して、ラットでは、習得及び記憶試験の期間は、1分間のITIを空けて3分間であった(Horiguchi M、Meltzer HY(2012).The role of 5-HT1A receptors in phencyclidine (PCP)-induced novel object recognition (NOR) deficit in rats. Psychopharmacology 221(2):205~215)。本発明者らは、習得及び記憶試験の探索について3、5、及び10分間を比較し、信頼可能なデータ収集には10分が最適であることを見出した。両方の試験を、後のブラインドスコアリングのために記録した。
【0084】
すべてのデータを、平均±S.E.Mとして表している。探索データを、二元配置分散分析(ANOVA)によって分析した。これは、薬物処置の主な作用、タスクの主な作用、及び薬物処置と物体探索との間の相互作用を検出した。有意な作用が見出された場合、事後ステューデントt検定によるさらなる分析を行って、新規物体及び熟知物体を探索するためにかけた時間を比較した。一次エンドポイントは、識別インデックス(DI)であった。DI(新規-熟知/新規+熟知)データを、一元ANOVAを使用して分析し、ANOVAによって有意な作用が検出された場合には、続いてボンフェローニ検定した。
【0085】
図2のデータは、GLYX-13(1mg/kg、静脈内)が、マウスにおける新規物体認識において慢性ケタミン誘発性障害を反転することを実証している。
図3のデータは、GLYX-13(1mg/kg、静脈内)が、マウスにおける新規物体認識において慢性フェンシクリジン誘発性障害を反転することを実証している。
図4は、体性感覚皮質における3mpk及び30mpkのGLYX-13の事前処置に、ケタミンを続けた場合の有意な減弱を示す。
図5のデータは、GLYX-13(3mg/kg、静脈内)事前処置が、マウスにおける新規物体認識において急性ケタミン(10mg/kg、皮下)誘発性障害を反転することを実証している。
図6のデータは、GLYX-13(3mg/kg、静脈内)がラットにおけるケタミン(10mg/kg、静脈内)誘発性常同行動を阻害することを実証している。
【0086】
当業者は、通常の範囲内である実験を使用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態と同等の多くの実施形態を認めるか、または確かめることができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0087】
本明細書において引用したすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、及び他の参照文献の内容全体は、参照によってその全体が本明細書に明らかに組み込まれる。