(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159329
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20221006BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20221006BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221006BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20221006BHJP
B41M 3/06 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B33/00
B41J2/01 121
B41J2/01 129
E04F13/02 F
B41M3/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117974
(22)【出願日】2022-07-25
(62)【分割の表示】P 2018180119の分割
【原出願日】2018-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、高価なグラビア版を用いずに生産できる、絵柄と完全に同調した凹凸と触感を有する化粧材を提案するものである。
【解決手段】基材2上に、紫外線硬化型インキによるインクジェット印刷絵柄層3を有し、JIS B0601:2001に規定する最大高さ(Rz)が8μm以上であり、色調が薄い部分と濃い部分が存在し、色調が薄い部分のインキ量が少なく、色調が濃い部分のインキ量が多いことを特徴とする化粧材1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、紫外線硬化型インキによるインクジェット印刷絵柄層を有し、JIS B0601:2001に規定する最大高さ(Rz)が8μm以上であり、色調が薄い部分と濃い部分が存在し、色調が薄い部分のインキ量が少なく、色調が濃い部分のインキ量が多いことを特徴とする化粧材。
【請求項2】
前記インクジェット印刷絵柄層は、少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインキ層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
前記各色のインキ層の厚さが等しくないことを特徴とする請求項2に記載の化粧材。
【請求項4】
最外面に表面保護層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、建物、車両、エレベーター等の内装や、器物の外装等に用いる化粧材に関し、特に表面に絵柄と完全に一致した凹凸を有する化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧材としては、各種基材に印刷手法を用いて、さまざまな意匠を施したものが用いられている。紙を基材としたものは、化粧紙と呼ばれ、主としてグラビア印刷法によって絵柄を形成した後に、熱硬化性樹脂を含浸したり、表面に保護層を塗布したりして各種化粧板に加工される。
【0003】
基材として合成樹脂シートを用いた化粧シートは、木質基材の表面にラミネートされて内装用建材や造作材として用いられたり、金属板や金属型材の表面にラミネートされて金属製建材として用いられたりしている。また、裏面に粘着加工を施して、エレベーター内装のリフォーム用途など、現場で施工する用途等にも用いられる。
【0004】
化粧材の意匠性を評価する上では、印刷された絵柄の意匠性のみならず、表面の艶や凹凸、触感等も重要な要素となる。中でも絵柄と調和した凹凸と触感を有する化粧材をいかに作るかは化粧材メーカーにとって永遠の課題ともいえるものである。
【0005】
特許文献1に記載されたエンボス化粧シートは、基材シート上に印刷絵柄層、透明保護シートが積層され、保護シートにエンボスが施されているものである。このエンボス化粧シートは、押出機から溶融させた透明保護層を押し出して、印刷済みの基材シートと貼り合わせると同時に冷圧エンボス処理を施すものであるため、印刷絵柄とエンボスとを同調させることは、技術的に困難である。
【0006】
特許文献2に記載されたエンボス同調化粧シートは、基材として伸度が2%以下の紙質系基材を用いたことにより、トップコート層にエンボスを施す際のずれを小さくし、絵柄と同調したエンボスを有する化粧シートを実現したものである。
【0007】
特許文献2に記載されたエンボス同調化粧シートは、絵柄を木目模様にすることで、多少のエンボスのずれが気にならないようにしたものであり、本来の意味での同調エンボス化粧シートではない。
【0008】
一方、化粧シートの印刷方法としては、従来グラビア印刷法が一般的に用いられてきたが、グラビア印刷法は、製版コストが高いため、大量生産には向いているが、多品種少量生産には不向きである。そこで生産が確定していない試作段階では、小サイズの平板版や短い面長の版を用いた校正刷りが多用されてきたが、校正刷りでは実用サイズの試作品ができないという問題があった。
【0009】
特許文献3に記載されたエンボス化粧シートは、この問題を解消するために提案されたものであり、予め透明熱可塑性樹脂フィルムの表面にエンボス加工を施し、裏面に粘着加工を施したものを作成しておき、インクジェット印刷法で絵柄を印刷した合成樹脂基材フィルムの絵柄面に、前記透明熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせるというものである。
【0010】
この方法によれば、建具など実用サイズの試作も十分可能であるが、同調エンボスという観点から見れば、全く異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-254631号公報
【特許文献2】特開平8-267696号公報
【特許文献3】特開2007-90797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、高価なグラビア版を用いずに生産できる、絵柄と完全に同調した凹凸と触感を有する化粧材を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材上に、紫外線硬化型インキによるインクジェット印刷絵柄層を有し、JIS B0601:2001に規定する最大高さ(Rz)が8μm以上であり、色調が薄い部分と濃い部分が存在し、色調が薄い部分のインキ量が少なく、色調が濃い部分のインキ量が多いことを特徴とする化粧材である。
【0014】
本発明に係る化粧材は、固形分の高い紫外線硬化型インキによる絵柄層を有するため、表面に絵柄と完全に同調した凹凸を有する。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記インクジェット印刷絵柄層が、少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインキ層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧材である。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、前記各色のインキ層の厚さが等しくないことを特徴とする請求項2に記載の化粧材である。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、最外面に表面保護層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧材である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る化粧材は、基材上に固形分の高い紫外線硬化型インキによるインクジェット印刷絵柄層を有し、JIS B0601:2001に規定する最大高さ(Rz)を8μm以上としたことにより、表面に絵柄と完全に同調した凹凸を有し、極めて意匠性が高いものとなった。
【0019】
色調の薄い部分(ハイライト部)はインキ量が少なく、濃い部分(シャドー部)はインキ量が多いため、絵柄の濃淡に沿った凹凸触感を有する化粧材とすることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明のように、インクジェット印刷絵柄層が、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインキ層から構成されている場合、特色を用いるグラビア印刷と異なり、調色の手間がかからず、多品種少量生産に適している。
【0021】
また、請求項3に記載の発明のように、各色のインキ層の厚さを異なるものとすることにより、凹凸の変化が増し、さらに意匠性が向上する。
【0022】
また、請求項4に記載の発明のように、最外面に表面保護層を設けた場合には、化粧材の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に係る化粧材の基本的な実施形態における断面構造を模式的に示した断面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る化粧材の実施形態における断面構造を模式的に示した断面模式図であり、
図1の構成に表面保護層を付加したものである。
【
図3】
図3は、本発明に係る化粧材の実施形態における断面構造を模式的に示した断面模式図であり、
図2の構成にさらに下地層を付加したものである。
【
図4】
図4は、本発明に係る化粧材の実施形態における断面構造を模式的に示した断面模式図であり、ハイライト部とシャドー部で高さが異なる状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面を参照しながら、本発明に係る化粧材について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る化粧材の基本的な実施形態における断面構造を模式的に示した断面模式図である。
【0025】
本発明に係る化粧材は、基材2上に、紫外線硬化型インキによるインクジェット印刷絵柄層3を有し、JIS B 0601:2001に規定する最大高さ(Rz)が8μm以上であることを特徴とする化粧材である。
【0026】
基材2としては、特に制約はなく、一般的に化粧材の基材として用いられる各種の材料が使用可能であるが、チタン紙などのインキを吸収する材料は、凹凸が緩和されるため好ましくない。合成樹脂シートのように、吸い込み難い材料が適している。しかし紙を用いた場合であっても、インキ吸収性を低減させるための処理を施したものは使用できる。
【0027】
合成樹脂シートとしては、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂等のベース樹脂に有機顔料、無機顔料、充填材、添加剤等を添加して混練した着色シートが好適に用いられる。近年においては、焼却時に塩化水素ガスを発生する塩化ビニル樹脂が嫌われ、コストや性能の面でバランスの良いポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等ポリオレフィン系樹脂が多く用いられるようになった。
【0028】
インクジェット印刷用インキとしては、固形分の高い公知の紫外線硬化型インクジェットインキを用いることができるが、本発明の趣旨から、インク滴がだれないように、チクソトロピック性を付与したインキは、さらに好ましい。また、印刷後にインキ層がレベリングしないうちに、直ちに紫外線を照射して硬化させることが望ましい。
【0029】
インクジェット印刷絵柄層3としては、イエローインキ層4、マゼンタインキ層5、シアンインキ層6、ブラックインキ層7の4色から構成されるものとすることにより、予め調色した特色を用いるグラビア印刷法と異なり、調色の手間が掛からないため、多品種少量生産にも対応できる。
【0030】
また、
図1に示したように、各色のインキの濃度を調整することで、各色のインク滴の高さを異なるようにすると、絵柄層の凹凸が顕著となり、意匠性がさらに向上する。
【0031】
インクジェット印刷機としては、基材の巻出部と製品の巻取部を備え、印刷部の直後に紫外線照射装置を備えた連続式のインクジェット印刷機を用いることが望ましいが、極く少量生産であれば、固定ベッドによる枚葉式の印刷機でも可能である。
【0032】
図2は、本発明に係る化粧材1の実施形態における断面構造を模式的に示した断面模式図であり、
図1の構成に表面保護層8を付加したものである。表面保護層8は、インクジ
ェット印刷絵柄層3を保護する目的で設けるものであり、化粧材1の表面の耐摩耗性や耐傷付き性、耐光性等を向上させることができる。
【0033】
表面保護層8としては、熱硬化性アクリルウレタン樹脂ワニス、紫外線硬化型樹脂ワニス、電子線硬化型樹脂ワニス等、公知の透明樹脂ワニスを用いることができる。表面保護層8は、あまり厚塗りするとインクジェット印刷絵柄層の凹凸を埋めてしまうので、数μm程度の厚さに、薄く設けることが望ましい。
【0034】
表面保護層8には、例えば耐摩耗性を向上させる目的でシリカ、アルミナ等の耐摩剤を添加したり、耐光性を向上させる目的で紫外線吸収剤や光安定剤を添加したり、表面の艶を調整する目的で艶消剤を添加したりすることができる。
【0035】
基材2の表面には、
図3に示した例のように、下地層9を設けても良い。下地層9は、インクジェットインキの基材2に対する接着性を向上させたり、下地着色層としての機能を持たせたり、基材が紙のようにインキ吸収性が高い場合に、吸収を抑制する働きを持たせたりする事ができる。
【0036】
図4に示した例では、ハイライト部11とシャドー部12とにおけるインキ量の差を利用して凹凸を発現させている。このようにすることにより、絵柄の濃度に応じた凹凸が発現されるため、絵柄と調和した高度な意匠性が発揮される。以下実施例に基いて本発明に係る化粧材についてさらに具体的に説明する。
【実施例0037】
<実施例1>
基材2として、着色ポリエチレンフィルム(リケンテクノス社製FZ)を用い、インクジェットインキとして紫外線硬化型インクジェットインキ(リコー社製)を用い、インクジェット印刷機によって、中間色の木目柄を印刷し、UVランプによって紫外線を照射して硬化させた。この上に表面保護層8としてシリカの内添された熱硬化型多官能アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス社製)を塗布して、乾燥後の厚さが1μmとなるように形成した。こうして得られた化粧材について、表面粗さとしてRa(算術平均粗さ)とRz(最大高さ)を測定すると共に、実際に手で触れた時の触感を評価した。触感の評価としては、触感があると感じられたものを○、感じられなかったものを×とした。
【0038】
<実施例2>
濃色の木目柄を印刷した以外は、実施例1と同様にして化粧材を作成し、評価した。
【0039】
<比較例1>
基材として紙を用い、グラビアインキ(東洋インキ社製ラミスター(登録商標))を用いて木目柄をグラビア印刷した以外は、実施例1と同様にして化粧材を作成し、評価した。
【0040】
<比較例2>
基材として紙を用い、インクジェットインキとして水性インキ(東洋インキ社製)を用いた以外は、実施例と同様にして化粧材を作成し、評価した。
【0041】
<比較例3>
淡色の木目柄を印刷した以外は、実施例1と同様にして化粧材を作成し、評価した。以上の各サンプルの評価結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
表1の結果からも分かるように、本発明に係る化粧材は、絵柄と完全に同調した凹凸を有し、手で触れた時に触感を有する化粧材であり、意匠的にも優れたものである。