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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015934
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】先行手摺り
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/14 20060101AFI20220114BHJP
   E04G 7/32 20060101ALI20220114BHJP
   E04G 7/34 20060101ALI20220114BHJP
   E04G 5/16 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E04G5/14 301G
E04G7/32 A
E04G7/34 303A
E04G5/16 B
E04G5/14 302A
E04G5/14 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119117
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】393000445
【氏名又は名称】株式会社三共
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】真田 孝範
(57)【要約】
【課題】 取り付ける連結部材の左右の順序に関係なく、支柱の高い位置にある連結受部への取り付け作業を容易にする先行手摺りを提供する。
【解決手段】 軸方向に沿って所定間隔に設けられた連結受部を有し、所定間隔で立設された支柱の間に、略水平方向に架設される水平部材21と斜め方向に架設される斜材51Aとが、前記連結受部に上方から差し込まれる差込部43を備えた第1連結部材30Aを介して連結された先行手摺り20である。第1連結部材30Aは、水平部材21の端部近傍と回動可能に取り付けられる水平部材取付部34と、斜材51を回動可能に取り付ける斜材取付部37とを備え、水平部材取付部34は、水平部材21と当接し、差込部材43が略直角方向に保持するための保持用突出部34cが設けられ、斜材取付部37は、斜材51Aと当接する回転防止突部37dが設けられる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って所定間隔に設けられた連結受部を有し、所定間隔で立設された支柱の間に架設される、略水平方向に伸びる水平部材と斜め方向に伸びる斜材とが、前記連結受部に上方から差し込まれる差込部材を備えた連結部材を介して連結された先行手摺りであって、
前記連結部材は、
前記差込部材の上方位置に設けられ、前記水平部材の端部近傍と回動可能に取り付けられる水平部材取付部と、
前記水平部材取付部下方位置に前記差込部材に近接して設けられ、前記斜材を回動可能に枢着する斜材取付部とを備え、
前記水平部材取付部は、前記水平部材と当接し、前記差込部材を略直角方向に保持するための保持用突出部が設けられ、
前記斜材取付部は、前記斜材と当接し、前記斜材と前記連結部材との間の角度を所定角度以内に保持するための回転防止突部が設けられる、
先行手摺り。
【請求項2】
前記水平部材の両端に、同じ前記連結部材が取り付けられる、
請求項1記載の先行手摺り。
【請求項3】
前記連結部材は、一対の側板部と、これら側板部の一端上部を連結する連結板部と、を備え、
前記斜材が、前記回転防止突部は、前記斜材が水平部材と平行状態を超えて前記連結板部側へ回転を防止する、
請求項1又は2に記載の先行手摺り。
【請求項4】
前記連結部材は、前記側板の上部に水平方向に突出した水平板材が設けられ、前記水平板材の底部に、前記保持用突出部が設けられている、
請求項3に記載の先行手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築現場に架設される仮設足場における先行手摺りに係り、特に、水平部材の両端に足場を補強するための筋交いを備えている先行手摺りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建築現場などでは、パイプ材等で構成された支柱を枠状に組み上げて作業用の仮設足場を設けるにあたり、横方向あるいは斜め方向からの荷重に耐えうるように筋交いを備える先行手摺りを設ける場合がある。
【0003】
この先行手摺りとしては、特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1に記載の先行手摺りは、水平部材と筋交いの連結部分近傍の先端に、支柱の連結受部と連結する連結部材が設けられており、水平部材の両端側の連結部材と筋交いが回動自在に設けられる。連結部材は、支柱の連結受部に設けられた挿入穴に挿入される差込部と、当該差込部と水平部材及び筋交いを連結する連結部とを備えている。
【0004】
この先行手摺りは、連結部材の差込部を連結受部の挿入孔に上側から差し込み、隣り合う支柱の連結受部間に水平部材を連結した後、さらに水平部材の両端に設けられている筋交いの先端を別の連結受部に固定することで取り付けられる。よって、支柱への取り付け時においては、連結部材の差込部と水平部材とがなす角度は、略90度となっている。
【0005】
ところで、上記の特許文献1に記載の先行手摺りの連結部材は、水平部材の両端側で異なる構成であり、一方が差込部と水平部材が回動可能に取り付けられ、他方が差込部と水平部材が固定されているように構成されている。
【0006】
特許文献1に示す先行手摺りは、最初に可動側の差込部を支柱に固定した後、固定側の差込部を支柱連結受部に挿入する。すなわち、水平部材に位置する差込部が鉛直方向となるようにして、連結受部挿入孔に挿入する作業を両端側で独立して行なうことができるため、水平部材を下側から取り付ける作業がやりやすい。また、固定側は差込部の姿勢は維持されているので、差込部を鉛直姿勢に維持した状態で挿入作業が行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-64321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した特許文献1の先行手摺りにおいては、決められた差込部から取り付け作業を行う必要があるため、予め左右の先行手摺りの方向を確認する必要があった。
【0009】
したがって、この発明は、取り付ける連結部材の左右の順序に関係なく、支柱の高い位置にある連結受部への取り付け作業を容易にすることができる先行手摺りを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の先行手摺りを提供する。
【0011】
この発明の第1態様によれば、軸方向に沿って所定間隔に設けられた連結受部を有し、所定間隔で立設された支柱の間に架設される、略水平方向に伸びる水平部材と斜め方向に伸びる斜材とが、前記連結受部に上方から差し込まれる差込部材を備えた連結部材を介して連結された先行手摺りであって、
前記連結部材は、
前記差込部材の上方位置に設けられ、前記水平部材の端部近傍と回動可能に取り付けられる水平部材取付部と、
前記水平部材取付部下方位置に前記差込部材に近接して設けられ、前記斜材を回動可能に取り付ける斜材取付部とを備え、
前記水平部材取付部は、前記水平部材と当接し、前記差込部材を略直角方向に保持するための保持用突出部が設けられ、
前記斜材取付部は、前記斜材と当接し、前記斜材と前記連結部材との間の角度を所定角度以内に保持するための回転防止突部が設けられる、先行手摺りを提供する。
【0012】
この発明の第2態様によれば、前記水平部材の両端に、同じ前記連結部材が取り付けられる、第1態様の先行手摺りを提供する。
【0013】
この発明の第3態様によれば、前記連結部材は、一対の側板部と、これら側板部の一端上部を連結する連結板部と、を備え、
前記斜材が、前記回転防止突部は、前記斜材が水平部材と平行状態を超えて前記連結板部側へ回転を防止する、第1又は第2態様の先行手摺りを提供する。
【0014】
この発明の第4態様によれば、前記連結部材は、前記側板の上部に水平方向に突出した水平板材が設けられ、前記水平板材の底部に、前記保持用突出部が設けられている、第3態様の先行手摺りを提供する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、取り付ける連結部材の左右の順序に関係なく、支柱の高い位置にある連結受部への取り付け作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態に係る先行手摺りを適用した仮設足場を示す斜視図である。
図2】この発明の実施形態にかかる先行手摺りの構成を示す正面図である。
図3】一方の第1連結部材を示す分解斜視図である。
図4】他方の第1連結部材を示す分解斜視図である。
図5】第2連結部材を示す分解斜視図である。
図6】第2連結部材を図5とは異なる方向から見た分解斜視図である。
図7】この発明の実施形態に係る先行手摺りの架設作業の第1工程を示す正面図である。
図8】この発明の実施形態に係る先行手摺りの架設作業の第2工程を示す正面図である。
図9】この発明の実施形態に係る先行手摺りの架設作業の第3工程を示す正面図である。
図10】この発明の実施形態に係る先行手摺りの架設作業の第4工程を示す正面図である。
図11】この発明の実施形態に係る先行手摺りの架設作業の第5工程を示す正面図である。
図12】一方の第1連結部材の仮設状態を示し、(A)は断面図、(B)は平面図である。
図13】第2連結部材の架設状態を示し、(A)は断面図、(B)は平面図、(C)は底面図である。
図14】参考例における先行手摺りの架設作業を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一実施形態に係る先行手摺りについて、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、この発明の第1実施形態に係る先行手摺り20を適用した仮設足場を示す斜視図である。この仮設足場は、最も下側に位置する第1階層の上層を、この発明の先行手摺り20を用いて構築したものである。
【0019】
具体的には、仮設足場100は、垂直方向に延びるように立設する複数の支柱10を備えている。これら支柱10は、水平(横)方向に所定間隔をもって2列で立設され、平面視で左右(建築物を中心とした外周方向)一対の支柱10、10と前後(建築物を中心とした内外方向)一対の支柱10、10の4本が、長方形状の角に位置するように構成されている。
【0020】
各支柱10は、断面円形のパイプからなる複数の支柱構成用パイプ11を軸方向に継ぎ足してなる。支柱構成用パイプ11には、継ぎ足し部11aが設けられている。各支柱構成用パイプ11の外周部には、断面コ字形状をなすように突出する連結受部12が、周方向に等間隔で4箇所に設けられている。
【0021】
これら連結受部12のうち、対称に位置する連結受部12、12は、同一高さに形成される。そして、隣接する連結受部12、12は、軸方向に沿って連結受部12の高さ寸法分異なる高さに形成されている。また、各連結受部12は、突端面が上側から下側に向けて内向きに(軸心に向けて)傾斜する傾斜面12aで構成されている(図12(A)、図13(A)参照)。これら4個の連結受部12の組は、軸方向に沿って所定間隔で設けられている。なお、これら連結受部12は、継ぎ足しにより複数の支柱構成用パイプ11を連接した状態で、下側の支柱構成用パイプ11の上端の組と、上側の支柱構成用パイプ11の下端の組との間隔も、同一間隔になるように構成されている。また、支柱10は、ジャッキベース13を用いて、隣接する支柱10、10の高さを調節可能としている。
【0022】
また、仮設足場100は、前後方向に隣接する支柱10、10を連結する連結パイプ14を備えている。この連結パイプ14は、支柱10と同様なパイプで構成されている。この連結パイプ14の両端には、支柱10、10の対向する連結受部12、12に連結されるクサビ状の連結部(図示せず)が設けられている。そして、横方向に隣接する連結パイプ14、14には、踏板15が架設されている。この踏板15は、矩形状に形成した枠内に金網16を取り付けるとともに、両端に連結パイプ14に引っ掛けるためのフック状の連結部17を設けたものである。
【0023】
さらに、仮設足場100は、第1階層において、横方向に隣接する支柱10、10を固定する固定部材18A、18Bを備えている。固定部材18Aは、支柱10と同様なパイプで構成され、その両端部には、支柱10の連結受部12に連結されるクサビ状の連結部(図示せず)が設けられている。また、この固定部材18Aは、横方向に隣接する支柱10、10の間隔と略同一に形成され、水平方向に組み付けられることにより、手摺としての役割もなす。
【0024】
固定部材18Bは、固定部材18Aより外径が小さいパイプにより構成され、その両端部には、支柱10の連結受部12に連結される連結部(図示せず)が設けられている。そして、この固定部材18Bは、横方向に隣接する支柱10、10間に斜めに組み付けられる。具体的には、隣接する固定部材18Bを左上がり組み付けている場合、その上端から左下がりに傾斜するように組み付けられ、トラス構造により足場の剛性向上を図っている。
【0025】
この仮設足場100の第1階層の上層は、第1階層と同様の連結パイプ14、踏板15および固定部材18Aと、この発明の先行手摺り20とで構築される。なお、固定部材18Aは、建築物の側に位置する支柱10の列に使用され、この発明の先行手摺り20は、建築物から離れた支柱10の列に使用される。
【0026】
この実施形態の先行手摺り20は、図2に示すように、水平方向に延びるように配設される水平部材21と、この水平部材21の両端に配設された一対の第1連結部材30A、30Bと、各第1連結部材30A、30Bに配設された筋交いを構成する斜材51A、51Bと、各斜材51A、51Bの自由端に配設された第2連結部材58A、58Bと、を備えている。なお、先行手摺り20の説明においては、水平部材21の両端に設けられている第1連結部材30A、30Bと、斜材51A、51Bと、第2連結部材58A、58Bについて、左右の区別をするために、符号に大文字のA、Bの枝番を付している。符号Aが水平部材21に対して左側、符号Bが水平部材21に対して右側に設けられる部材に対応している。
【0027】
なお、第1連結部材30A、30Bは、同一のもので、反転した状態で水平部材21の両端に取り付けられる。同様に、2つの斜材に取り付けられている第2連結部材58A、58Bは、同一のもので、反転した状態で斜材に固定される。
【0028】
第1連結部材30A、30Bは、後述するように、連結受部12に差し込まれる差込部材43が設けられている。この差込部材43が、差込部を構成する。
【0029】
具体的には、水平部材21は、架設状態で手摺としての役割をなすもので、支柱10より細径の支柱10の間隔に応じた長さパイプ材で構成される。なお、水平部材21は、例えば、径の異なるパイプ材を入れ子式に連結するなどの方法により、全長を変更できるように構成してもよい。また、これに伴い、斜材51A、51Bについても全長を変更できるように構成してもよい。
【0030】
水平部材21は、図2図3及び図4に示すように、一端が第1連結部材30Aに連結され、他端が第1連結部材30Bに連結される。前述したように、この実施形態においては、第1連結部材30A、30Bは同じ構成のものが用いられる。すなわち、水平部材21が一つのパイプ部材で構成されているため、両端に連結される第1連結部材30A、30Bは、共通部品として構成され、反転した状態で水平部材21の両端に取り付けられる。
【0031】
水平部材21の一端には、短軸方向に貫通するように取付孔24Aが設けられ、同様に、他端に短軸方向に貫通するように取付孔24Bが設けられている。取付孔24A、24Bに、それぞれボルト23aとナット23bを用いて、第1連結部材30A、30Bが回動可能に取り付けられる。
【0032】
前記第1連結部材30A、30Bは、支柱10の連結受部12に対して差込部材43を上方から差し込んで連結されるもので、上記したように、水平部材21の両端に回動可能に配設されている。後述するように、この実施形態においては、左側の第1連結部材30A側から支柱10の連結受部12に対して上方から差込部材43を差し込んで連結し、その後右側の第1連結部材30Bを支柱10の連結受部12に対して上方から差込部材43を差し込んで連結する。この発明においては、水平部材21の両端に取り付けられる第1連結部材30A、30Bは、同一であるので、左右どちらの第1連結部材30A、30Bから連結作業を行ってもよい。このため、取り付ける時に選択する左右の連結部材の順序に関係なく作業を行うことができ、作業者の支柱の連結受部に対する取り付け作業が簡易になる。すなわち、作業者が先行手摺り20の左右の順序を考えなくても作業を行うことができる。
【0033】
これら第1連結部材30A、30Bは、図3及び図4に示すように、平面視コ字形状をなす連結部材本体31と、この連結部材本体31内に固定される差込部材43とを備えている。
【0034】
前記連結部材本体31は、対称形状をなす一対の側板部32a、32bと、これら側板部32a、32bの一端上部を連結する連結板部33と、を備え、金属板を打ち抜いて屈曲加工を施すことにより形成されている。
【0035】
側板部32a、32bは、下部端部間に支柱10の連結受部12が挿入されるもので、該連結受部12の幅より大きい隙間を有する。また、側板部32a、32bは、上部に水平方向に突出した水平板材34a、34bが設けられている。この水平板材34a、34bが水平部材取付部34を構成する。この水平部材取付部34の水平板材34a、34bには、取付孔24A(24B)に対応して水平部材取付孔35a、35bが設けられている。水平部材21は、水平部材取付部34に回動自在に取り付けられる。具体的には、水平板材34a、34b内に水平部材21の端部が挿入され、水平部材21の取付孔24A(24B)と水平部材取付孔35a、35bにボルト23aを挿入し、ナット23bを用いて、水平部材21を水平部材取付部34に回動自在に取り付けている。
【0036】
側板部32a、32bは、下部が水平部材取付部34と同一方向に突出される突出部37a、37bが設けられている。その突出部37a、37bが斜材取付部37を構成する。この斜材取付部37の先端には、斜材取付孔38が設けられている。そして、これら水平部材取付部34、斜材取付部37の間は、差込部材配設部39を構成する。
【0037】
この差込部材配設部39は、連結受部12の幅より僅かに大きい隙間となるように、略P字形状に凹ませた第1没入部40を備えている。側板部32a、32bは、前記第1没入部40を設けることにより、剛性が大きくなるように形成されている。
【0038】
また、この第1没入部40の上部には、差込部材43より僅かに大きい隙間となるように、円錐台形状をなすように凹ませた第2没入部41が設けられている。そして、この第2没入部41の中心には差込部材の取付孔42が設けられている。
【0039】
また、連結板部33は、第1連結部材30A、30Bを連結受部12に連結した状態で、その下端が連結受部12の上端に載置される寸法で形成されている(図12(A)参照)。言い換えれば、連結部材本体31の端部(連結板部33)は、連結受部12を挿入するように、下部が切り欠かれている。
【0040】
前記差込部材43は、金属製であり、連結受部12内に差込可能な肉厚のものである。この差込部材43は、連結受部12の突出方向に対応する横幅が、連結受部12より小さく形成されている。また、差込部材43は、その上部が差込部材配設部39の形状と対応するように略半円形状をなすように突出され、その中心に差込部材の取付孔42に対応する取付孔44が設けられている。そして、この差込部材43は、連結部材本体31に対してねじ43aとナット(図示せず)などの固定金具により、回動不可能に固定されている。
【0041】
第1連結部材30A、30Bの水平部材取付部34には、差込部材43を水平部材21に対して直角方向に保持するための保持用突出部34cが設けられている。すなわち、水平板材34a、34bの底部に、保持用突出部34cが設けられ、水平板材34a、34bの間に挿入された水平部材21が保持用突出部34cと当接することにより、水平板材34a、34bとこれらの間に挿入された水平部材21とが平行になる状態を保持する。これにより、第1連結部材30A、30Bに取り付けられた差込部材43が水平部材21に対して略直角方向に保持される。
【0042】
なお、差込部材43は、水平部材21に対して厳密に直角に保持される必要はなく、直角を含み前後数度の範囲の角度を含む略直角に保持され、連結受部12に差込部材43が差し込まれ、先行手摺り20が支柱10、10間に架設された際に、水平部材21が略水平方向に支持されればよい。ここで、略水平は、支柱10に対して垂直から前後10度以内の角度を含む。すなわち、手摺りとして使用するに足りる角度であればよい。
【0043】
水平部材21に配設する第1連結部材30Aは、図3に示すように、水平部材21の取付孔24Aと水平部材取付孔35a、35bとを一致させ、ボルト23aとナット23bなどにより回動可能に連結されている。同様に、水平部材21に配設する第1連結部材30Bは、図4に示すように、水平部材21の取付孔24Bと水平部材取付孔35a、35bとを一致させ、ボルト23aとナット23bなどにより回動可能に連結されている。
【0044】
上記した第1連結部材30A、30Bは、水平部材21に対して回動し、前記した保持用突出部34cと水平部材21が当接すると、第1連結部材30A、30Bの回動は停止され、水平部材21と第1連結部材30A、30Bの水平板材34a、34bとが平行になる状態が保持される。これにより、差込部材43が水平部材21に対して直角方向に延びるように保持される。
【0045】
前記斜材51A、51Bは、図3及び図4に示すように、連結部材本体31の側板部32a、32b間に配設可能な外径のパイプからなる。この斜材51A、51Bは、上端を第1連結部材30A、30Bに回動可能に連結した状態で、下端が他方の第1連結部材30B、30Aを連結した支柱10の連結受部12の下部の連結受部12にかけて延びる寸法で形成されている。図2に示すように、この実施形態においては、2個下の連結受部12にかけて延びる寸法で形成されている。
【0046】
具体的には、この斜材51A、51Bの上端(一端)には、第1連結部材30A、30Bに対して回動可能に配設するための貫通孔52が、径方向に貫通するように設けられている。斜材取付孔38と貫通孔52とを合わせて、ボルト53aとナット53bを用いて、斜材51A、51Bが斜材取付部37に回動自在に取付られる。
【0047】
この貫通孔52は、図12(A)に示すように、第1連結部材30Aを連結受部12に組み付けた状態で、該連結受部12に斜材51Aの端部が干渉しない程度で、十分に離れた位置に設けられている。同様に、具体的には図示はしていないが、第1連結部材30Bを連結受部12に組み付けた状態で、該連結受部12に斜材51Bの端部が干渉しない程度で、十分に離れた位置に設けられている。これにより、この斜材51A、51Bの端部は、図示のように、斜材51A、51Bを斜めに延びるように回動させた架設状態で、端部が連結受部12の下部に進入する。また、この斜材51A、51Bの端部は、垂直下向きに延びるように回動させた非架設状態で、端部が連結受部12の下部から離反する。
【0048】
斜材51A、51Bの回転を規制する回転防止突部37dが斜材取付部37を構成する斜材取付用突出部37a、37bに設けられている。この回転防止突部37dは、斜材51A、51Bが斜材取付孔38から連結板部33の方向へ所定の角度以上に回転することを規制する。前記回転防止突部37dは、斜材51A、51Bと第1連結部材30A、30Bとの間の角度を所定角度以内に保持する。この実施形態においては、図12(A)の仮想線51Aで示すように、水平部材21に対して斜材51Aが直角より僅かに少ない角度で回転防止突部37d当接し、斜材51Aの回転を規制している。
【0049】
なお、回転防止突部37dは、水平部材21に対して斜材51Aが直角を超える角度で当接する位置に設けてもよく、斜材51Aを用いて第1連結部材30Aを水平部材21に対して直交する方向に力が加えることができる角度であればよい。
【0050】
この回転防止突部37dは、斜材51A、51Bを用いて第1連結部材30A、30Bを水平部材21に対して直交するように回動させる時に、斜材51A、51Bと第1連結部材30A、30Bとの角度を第1連結部材30A、30Bが回動可能な角度に保持するために、斜材51A、51Bの回転を規制するものである。
【0051】
この実施形態においては、この回転防止突部37dは、斜材51A、51Bが水平板材34a、34bに対して直交する角度から更に連結板部33の方向へ回転することを防止するために、斜材51Aが水平板材34a、34bに対して直交する角度から僅かに越えた角度において、回転防止突部37dと斜材51A、51Bが当接するように構成されている。
【0052】
図14に示すように、回転防止突部37dを設けていない第1連結部材30A‘、30B’の場合には、斜材51A、51Bが水平板材34a、34bに対して直交する角度から更に連結板部33の方向へ回転し、第1連結部材30A‘、30B’が水平部材21と略平行な位置になる場合がある。この図14の例では、第1連結部材30B‘に対して斜材51Bが水平部材21と略平行な位置まで回転すると、斜材51Bにより第1連結部材30Bを水平部材21に対して直交する方向に力を加えることができなくなる。このような状態になると、斜材51Bと第1連結部材30Bを作業者の手が届く範囲まで下へ移動させ、第1連結部材30Bを斜材51Bに対して回動させ、斜材51Bによって第1連結部材30Bと水平部材21とが直交する位置まで回動させることができるように作業をやり直す必要があり作業性が悪い。
【0053】
これに対して、この実施形態のように、回転防止突部37dを設けることにより、斜材51A、51Bを用いて第1連結部材30A、30Bと水平部材21とが直交する位置に回動可能な角度に、斜材51A、51Bと第1連結部材30A、30Bとの角度を保持することができる。
【0054】
また、斜材51A、51Bには、図5および図6に示すように、架設状態で互いに交差する略中央に、幅方向の寸法を小さくした縦長の断面楕円形状をなす扁平部54が設けられている。さらに、斜材51A、51Bの自由端である下端には、平坦にプレスした第2連結部材取付部55が設けられている。この第2連結部材取付部55には取付孔56が設けられている。
【0055】
図2に示すように、前記第2連結部材58A、58Bは、斜材51A、51Bの端部を支柱10の連結受部12に連結する。図5および図6に示すように、前記第2連結部材58A、58Bは、連結受部12に嵌合する嵌合部59と、第2連結部材取付部55に固定するためのブラケット部66とを備えている。なお、これら第2連結部材58A、58Bは同一のもので、反転状態で斜材51A、51Bに固定される。
【0056】
嵌合部59は、連結受部12の上下端部を覆う上面部60および下面部61と、これらを連続する連続部62とを備えている。上面部60には、下向きに突出して連結受部12の上端部に当接する突出部63が設けられている。また、上面部60には、連結状態で連結受部12の上部に位置し、楔部材68を挿通するための第1挿通孔64が設けられている。下面部61には、第1挿通孔64より前後方向の幅が広い第2挿通孔65が設けられている。ブラケット部66は、挿通孔64、65に対して平行に延びるように連続部62の端縁から屈曲して設けられたものである。このブラケット部66は貫通孔67を備え、第2連結部材取付部55に対してボルト67aおよびナット67bにより固定される。
【0057】
また、この第2連結部材58A、58Bは、別体の楔部材68を備えている。この楔部材68は、略三角形状をなす金属板からなり、その肉厚は、第1挿通孔64より僅かに小さいものである。そして、この楔部材68は、第1挿通孔64を挿通させた状態で、下端部に折曲加工等を施して抜止部69が設けられている。この抜止部69を形成した下端は、第1挿通孔64の幅より広く、第2挿通孔65の幅より狭くなるように構成している。
【0058】
このように構成した先行手摺り20は、足場の第1階層の構築後に、上側の第2階層以上を構築する際の先行手摺として好適に使用される。次に、この先行手摺り20を使用する架設作業について説明する。
【0059】
まず、架設前の先行手摺り20は、図7に示すように、水平部材21に対して一対の斜材51A、51Bが平行に延びるように、第1連結部材30Aに対して水平部材21を90度回動させて、該水平部材21を第1の斜材51Aに対して重ね合わせる。また、水平部材21に対して第1連結部材30Bを90度回動させるとともに、第2の斜材51Bを更に90度回動させておく。この状態で、図示のように、踏板15より上方の連結受部12に対して、一方の第1連結部材30Aの差込部材43を上方から差し込んで連結する。この実施形態においては、踏板15より6個上の連結受部12に対して、第1連結部材30Aの差込部材43を上方から差し込んで連結する。なお、差し込む第1連結部材30A、30Bは、水平部材21に取り付けた左右どちらの第1連結部材30A、30Bでもよく、作業者が作業しやすい方向を選択すればよい。この例では、水平部材21の左側に取り付けた第1連結部材30Aの差込部材43を左側の支柱10の連結受部12に差し込んで連結している。
【0060】
次いで、図8に示すように、連結されていない水平部材21の第1連結部材30Bの側を斜材51Bにより上向き回動させるとともに、水平部材21に対して他方の第1連結部材30Bを90度回動させる。
【0061】
斜材51Bを把持し、水平部材21を上側に押し上げて行く。このとき、回転防止突部37dと斜材51Bが当接し、斜材51Bの回転を抑制する。該水平部材21に対して差込部材43が直交方向に突出した状態を維持させることができる。
【0062】
その後、第1連結部材30Bに配設した斜材51Bを把持し、図9に示すように、隣接する支柱10において踏板15から6個上方の連結受部12の上方に第1連結部材30Bを位置させ、該第1連結部材30Bの差込部材43を連結受部12に上方から差し込んで連結する。
【0063】
この際、この実施形態では、回転防止突部37dによって、斜材51Bの回転が抑制されているために、差込部材43が水平部材21に対して直交方向に突出する状態に第1連結部材30Bを維持することが容易に行える。差込部材43を支柱に沿って斜材51Bと共に下方向に移動させることで、連結受部12に対して簡単に位置決めして差し込むことができる。
【0064】
このようにして、図10に示すように、一対の第1連結部材30A、30Bを隣接する支柱10、10の連結受部12、12に連結すると、続いて、図11に示すように、斜材51Bを逆側の支柱10において、第1連結部材30Aを連結した連結受部12の2個下に位置する連結受部12に向けて回動させる。そして、第2連結部材58Bの楔部材68を上向きに引き上げた状態で、嵌合部59を連結受部12に嵌合させた後、楔部材68を下向きに押し下げて、第2挿通孔65を貫通させる。
【0065】
次いで、第1連結部材30Aに配設した斜材51Aを把持し、逆側の支柱10において、第1連結部材30Bを連結した連結受部12の2個下に位置する連結受部12に向けて回動させる。そして、第2連結部材58Aの楔部材68を上向きに引き上げた状態で、嵌合部59を連結受部12に嵌合させた後、楔部材68を下向きに押し下げて、第2挿通孔65を貫通させる。これにより、図2に示すように、先行手摺り20を一対の支柱10、10間に架設することができる。
【0066】
このようにして組み付けた先行手摺り20において、第1連結部材30Aでは、図12(A)、(B)に示すように、差込部材43が連結受部12内に上方から差し込まれた状態をなす。また、斜材51Aの架設操作による回動で、該斜材51Aの端部が連結受部12の下部に進入した状態をなす。同様に、図示はしないが、第1連結部材30Bでは、差込部材43が連結受部12内に上方から差し込まれた状態をなす。また、斜材51Bの架設操作による回動で、該斜材51Bの係止部53が連結受部12の下部に進入した状態をなす。
【0067】
そのため、この状態で、第1連結部材30A、30Bを上向きに移動させるような負荷が加わった場合、斜材51A、51Bの係止部53が連結受部12の下端に当接するため、第1連結部材30A、30Bが脱落することを防止できる。
【0068】
また、第2連結部材58A、58Bでは、図13(A)、(B)、(C)に示すように、楔部材68が支柱10の連結受部12内を貫通され、その縁が傾斜面12aに圧接される。そのため、この連結状態では、楔部材68の下端以外の箇所に外力が加わっても、第2連結部材58A、58Bが脱落することはない。また、楔部材68は、ハンマーなどで確実に下向きに圧接することにより、下端に上向きの外力が加わっても、容易に離脱することはない。
【0069】
なお、このようにして組み付けた先行手摺り20を分解する際には、架設作業とは逆順で、まず、第2連結部材58Aの楔部材68を下方からハンマーなどで叩き、楔部材68を上向きに移動させて嵌合部59を移動させて離脱させる。その後、第2連結部材58Aを配設した斜材51Aを垂直に延びるように回動させる。これにより、斜材51Aの係止部53が連結受部12の下部から離反し、第1連結部材30Aを離脱可能な状態とすることができる。
【0070】
次いで、第2連結部材58Bの楔部材68を下方からハンマーなどで叩き、楔部材68を上向きに移動させて嵌合部59を移動させて離脱させる。その後、第2連結部材58Bを配設した斜材51Bを垂直に延びるように回動させる。これにより、斜材51Bの係止部53が連結受部12の下部から離反し、第1連結部材30Bを離脱可能な状態とすることができる。
【0071】
この状態で、斜材51Bを上向きに押し上げることにより、第1連結部材30Bを連結受部12から離脱させる。その後、水平部材21と斜材51Bとが重なり合うように第1連結部材30Bに対して斜材51Bを回動させるとともに、水平部材21を第1連結部材30Aに対して回動させる。これにより、斜材51A、51Bおよび水平部材21を重ね合わせた状態で、全体を押し上げることにより第1連結部材30Aを連結受部12から離脱させる。
【0072】
なお、本発明の仮設足場用先行手摺り20は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、前記各実施形態では、水平部材21、斜材51A、51Bを断面円形状のパイプにより構成したが、四角形状であってもよく、その断面形状は希望に応じて変更が可能である。勿論、中空に限られず中実の棒材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 :支柱
12 :連結受部
21 :水平部材
30A、30B :第1連結部材
31 :連結部材本体
32a :側板部
32b :側板部
33 :連結板部
34 :水平部材取付部
34a、34b :水平板材
34c :保持用突出部
35a :水平部材取付孔
35b :水平部材取付孔
37 :斜材取付部
37a :突出部
37b :突出部
37d :回転防止突部
38 :斜材取付孔
39 :差込部材配設部
51A、51B :斜材(筋交い)
100 :仮設足場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
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図13
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