IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンファインテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-インクジェット記録装置 図1
  • 特開-インクジェット記録装置 図2
  • 特開-インクジェット記録装置 図3
  • 特開-インクジェット記録装置 図4
  • 特開-インクジェット記録装置 図5
  • 特開-インクジェット記録装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015935
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220114BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/14 201
B41J2/165 211
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119119
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青戸 竜太
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB38
2C056EB49
2C056EC37
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA03
2C057AM31
2C057BA03
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】発熱素子の吐出機能を回復させるフラッシングを適切に実行することが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、インクが充填される充填部150と、充填部150に配置され、充填部150のインクを吐出口150aから吐出させる吐出動作を行うヒータ155とを有する記録ヘッドを備える。インクジェット記録装置のCPUは、吐出動作によってシートに画像を記録する画像記録処理と、画像記録処理時より大きな熱エネルギーを用いた吐出動作によって記録ヘッドの吐出性能を回復させるフラッシングとを実行可能である。CPUは、インクが充填部150に充填された充填状態が継続する充填継続時間と、充填部150が充填状態となってから画像記録処理による吐出動作が行われた累計吐出回数とに応じてフラッシングを実行するタイミングを決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが充填される充填部と、前記充填部に充填されたインクをシートに吐出する吐出口と、前記充填部に配置され、熱エネルギーを発生させて前記充填部に充填されたインクを前記吐出口から吐出させる吐出動作を行う発熱素子と、を有する記録ヘッドと、
前記吐出動作によってシートに画像を記録する画像記録処理と、前記画像記録処理時より大きな熱エネルギーを用いた前記吐出動作によって前記記録ヘッドの吐出性能を回復させる吐出回復処理と、を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、インクが前記充填部に充填された充填状態が継続する継続時間と、前記充填部が前記充填状態となってから前記画像記録処理による前記吐出動作が行われた累計吐出回数と、に応じて前記吐出回復処理を実行するタイミングを決定する、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記継続時間が所定時間に達していない状態において、前記累計吐出回数が第1閾値に達した場合、又は前記継続時間が前記所定時間に達した状態において、前記累計吐出回数が前記第1閾値より小さい第2閾値に達した場合に前記吐出回復処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記累計吐出回数のうち前記継続時間が前記所定時間に達していない状態において前記吐出動作が行われた第1吐出回数及び第1値の積と、前記継続時間が前記所定時間に達した状態において前記吐出動作が行われた第2吐出回数及び前記第1値より大きい第2値の積との合計が前記第1閾値に達した場合に前記吐出回復処理を実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記充填部に充填されたインクを排出して入れ替えることにより前記吐出性能を回復させる入替回復処理を実行可能であり、
前記入替回復処理を実行した場合に、前記継続時間をリセットする、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記入替回復処理において、前記充填部から前記吐出口を介してインクを吸引することで前記充填部に充填されたインクを排出する、
ことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、インクの種類に応じて前記第1閾値及び前記第2閾値を変更する、
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出してシートに画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置において、インクを吐出する吐出機能を回復するものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、ノズルに連通するインク流路に設けられた発熱素子の熱エネルギーにより気泡を発生させてインクを吐出する。インクジェット記録装置では、シートに画像を記録するときより大きな気泡を発生させるフラッシングを行うことにより、発熱素子に堆積して発熱素子の動作を妨げるインクの焦げを除去する。インクジェット記録装置では、インクの吐出回数に基づいて焦げの堆積量を予測し、その予測に基づいてフラッシングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-262010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、記録ヘッドにおいてインクが格納される格納部からインクに溶出される無機物成分によって焦げが発熱素子に堆積しやすくなる。このために、インクジェット記録装置では、例えばインク流路にインクが長時間残留した場合に、実際の堆積量に対して予測した焦げの堆積量が少なく、フラッシングの実行頻度が足りない虞があった。一方、インクジェット記録装置では、インクの残留時間が短い場合に、実際の堆積量が少ないにもかかわらず、フラッシングが過剰に行われ、発熱素子への負担が増加する虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、発熱素子の吐出機能を回復させる吐出回復処理を適切に実行することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インクジェット記録装置において、インクが充填される充填部と、前記充填部に充填されたインクをシートに吐出する吐出口と、前記充填部に配置され、熱エネルギーを発生させて前記充填部に充填されたインクを前記吐出口から吐出させる吐出動作を行う発熱素子と、を有する記録ヘッドと、前記吐出動作によってシートに画像を記録する画像記録処理と、前記画像記録処理時より大きな熱エネルギーを用いた前記吐出動作によって前記記録ヘッドの吐出性能を回復させる吐出回復処理と、を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、インクが前記充填部に充填された充填状態が継続する継続時間と、前記充填部が前記充填状態となってから前記画像記録処理による前記吐出動作が行われた累計吐出回数と、に応じて前記吐出回復処理を実行するタイミングを決定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、発熱素子の吐出機能を回復させる吐出回復処理を適切に実行することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置を示す概略図。
図2】記録ヘッドの構成を示す概略図。
図3】記録ヘッドにおける吐出口の詳細を示す概略図であり、(a)は図2におけるHH´断面図を示し、(b)は(a)において矢印方向Kから視た開口部を示す図であり、(c)は(a)における領域Lの拡大図を示す。
図4】本実施形態における制御システムを示すブロック図。
図5】フラッシングの実行に係る制御処理を示すフローチャート。
図6】充填継続時間とフラッシング係数の関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に沿って、実施形態の構成について説明する。図1は本実施形態に係るインクジェット記録装置を示す概略図である。インクジェット記録装置100は、ロールシートRSを給送するシート給送部110と、給送されたロールシートRSを搬送するシート搬送部120とを備える。また、インクジェット記録装置100は、ケーブル300を介して接続されたホストコンピュータPCから受信したデータに基づいて、ロールシートRSに画像を記録するシート画像記録部130を備える。
【0010】
シート給送部110は、ロールモータ111と、ロールシートRSが設置されるロールシャフト112と、ロールモータ111の回転軸111a及びロールシャフト112を連結する給送ベルト113とを有する。シート給送部110では、ロールモータ111が矢印方向Aに回転することにより、ロールモータ111の駆動力が給送ベルト113を介してロールシャフト112に伝達され、ロールシートRSが矢印方向Bに回転し、ロールシートRSが給送される。
【0011】
シート搬送部120は、シート給送部110から給送されたロールシートRSを搬送方向Cの下流に配置されるプラテンガラス123に案内する従動ローラ対121と、搬送方向Cにおいて従動ローラ対121の下流に配置されるシートセンサ124とを有する。従動ローラ対121は、従動ローラ121aと、従動ローラ121aより小さく、従動ローラ121aに圧接する圧接ローラ121bと、従動ローラ121aの回転角度を検出するエンコーダ122とを有している。従動ローラ121aは、搬送方向Cに搬送されるロールシートRSに従動し、軸線が同軸上になるように一体的に設けられているエンコーダ122と共に矢印方向Dに回転する。シートセンサ124は、従動ローラ対121から搬送方向Cに搬送されるロールシートRSのラベル毎の先端辺を検出する。
【0012】
また、シート搬送部120は、プラテンガラス123上において画像が記録されたロールシートRSを装置本体101の外に搬送する搬送ローラ対125を有する。搬送ローラ対125は、搬送モータ126の駆動力によって駆動回転する搬送ローラ125aと、搬送ローラ125aに圧接し、搬送ローラ125aに対して従動回転する圧接ローラ125bとを有する。搬送ローラ125aは、搬送モータ126の回転軸126aとの間に駆動ベルト127が巻き掛けられており、搬送モータ126が矢印方向Eに回転することにより駆動力が伝達されて矢印方向Fに回転し、ロールシートRSを搬送方向Cに搬送する。搬送ローラ対125は、シート給送部110における駆動力とのバランスにより、ロールシートRSが弛まないように張力を与えつつロールシートRSを搬送する。
【0013】
シート画像記録部130は、シート搬送部120によりプラテンガラス123上に搬送されるロールシートRSにインクを吐出して画像を記録する記録ヘッド140Bk~140Yを有する。記録ヘッド140Bk~140Yは、昇降可能に装置本体101に支持されており、ロールシートRSに対してフルカラー記録を行うためにブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のそれぞれに対応する。記録ヘッド140Bk~140Yは、搬送方向Cの上流から下流に順に配置されており、ロールシートRSの搬送に同期させて各色インクを重ねるように吐出させることにより画像記録を行う。
【0014】
また、シート画像記録部130は、記録ヘッド140Bk~140Yにインクを供給するインクタンク131Bk~131Yを有する。なお、記録ヘッド140Bk~140Yは、それぞれ略同様の構成であるため、以降の説明おいて記録ヘッド140と統一して記載する。また、インクタンク131Bk~131Yは、それぞれ略同様の構成であるため、以降の説明おいてインクタンク131と統一して記載する。
【0015】
シート画像記録部130は、記録ヘッド140からの画像記録を目的としないインクの予備吐出を受けるキャップ132を有する。キャップ132は、上下方向においてプラテンガラス123と記録ヘッド140との間に配置され、搬送方向Cと平行に移動可能に装置本体101に支持されている。キャップ132は、予備吐出時に記録ヘッド140の下方に位置し、画像記録時に記録ヘッド140の下方から離れる。
【0016】
記録ヘッド140は図2に示すように、内部にインクIが格納されるインク室Rを形成する外装部材142を有する。外装部材142の上部には、インク室Rに連通する幅10mm程度の開口部143が形成され、開口部143を覆うようにフィルター部材144が設置されている。フィルター部材144は、SUS製のメッシュにより形成され、金属繊維を織り込んだ構造となっている。これにより、記録ヘッド140は、記録ヘッド140の外からインク室R内にゴミが侵入することを防ぐ。
【0017】
フィルター部材144の下面には、インクIを保持可能にインク保持部材145が圧接されている。記録ヘッド140は、フィルター部材144においてインクタンク131に接続されており、フィルター部材144及びインク保持部材145を介してインクタンク131からインク室RにインクIが供給される。
【0018】
また、外装部材142の上部には、開口部143とは別にインク室Rに連通する開口部146と、開口部146を覆うフィルター147とが設けられている。開口部146は、外部の流路である不図示の移送部に接続可能に形成されており、インク室RにインクI等の液体及び気体を流入及び流出させることが可能に構成されている。
【0019】
記録ヘッド140は図3(a)に示すように、外装部材142の下部に接続され、インク室RからインクIが充填される充填部150と、充填部150と一体的に形成され、充填部150のインクIをロールシートRSに吐出する吐出口150aとを有する。図3(a)は、図2におけるHH´断面図を示す。さらに、記録ヘッド140は、熱エネルギーを発生させて充填部150のインクIを吐出口150aから吐出させる吐出動作を行う発熱素子であるヒータ155を複数有する。充填部150は、ベースプレート151と、ベースプレート151に積層接着される基板であり、ヒータ155が設置されるヒータ基板152と、ヒータ基板152との間にインクIが充填される充填空間Jを形成する天板153とを有する。
【0020】
天板153は、シリコーン系封止剤160によって外装部材142に接着されており、図3(b)に示すようにインク室Rと充填空間Jとを連通させる開口部153aを有する。図3(b)は、図3(a)において矢印方向Kから視た開口部153aを示す図である。充填部150では、インク室Rから開口部153aを介して流入したインクIが充填空間Jに充填されて充填状態となる。インク室Rから充填空間Jへの流路は、外装部材142、シリコーン系封止剤160及び開口部153aによって構成される。すなわち、記録ヘッド140は、インクIがシリコーン系封止剤160に接するように構成されている。
【0021】
また、充填部150には図3(c)に示すように、ヒータ基板152と、天板153と、ヒータ基板152及び天板153の間に配置され、インクIを案内する複数の案内壁154とによって画素ごとにノズルが形成されている。図3(c)は図3(a)における領域Lの拡大図を示す。それらのノズル先端は吐出口150aとして構成される。充填部150には、各ノズルにおいてヒータ155が配置されており、各ヒータ155において吐出動作が行われることにより、吐出口150aから画素ごとにインクIが吐出される。
【0022】
図4は、本実施形態の制御システムを示すブロック図である。インクジェット記録装置100は、インクジェット記録装置100全体を制御する制御部であるCPU200と各部を制御するプログラムを記憶するROM202と、データを一時的に記憶するRAM204とを有する。CPU200には、ホストコンピュータPCとの間で記録データや各種通信制御の実行指令等のやり取りを行うインターフェースコントローラ201と、画像記録する画像データが保存されるイメージメモリ203とが接続されている。CPU200は、ホストコンピュータPCから受信した実行指令の解析結果に基づいて作成する画像データの各色のイメージデータをイメージメモリ203において展開する。CPU200には、書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM205が接続されている。EEPROM205には、記録ヘッド140Bk~140Y間の離隔距離及びロールシートRSへの画像記録位置等の各種情報と共に、各種制御処理時の実行時刻及び実行条件等の各種更新情報が書き換え可能に保持される。
【0023】
また、CPU200には、A/Dコンバータ206を介して、記録ヘッド140を制御する記録ヘッド制御回路207と、インクジェット記録装置100周辺の雰囲気温度及び湿度を検出する温湿度センサ208とが接続されている。記録ヘッド制御回路207には、記録ヘッド140Bk~140Yと、記録ヘッド140Bk~140Y内部におけるインクIの温度を検出するヘッド温度センサ141とが接続されている。CPU200は、ヘッド温度センサ141により検出された温度に基づいてヒータ155の吐出動作を制御する。
【0024】
CPU200には、入出路回路209を介して、シートセンサ124及びエンコーダ122が接続されている。さらに、CPU200には、入出力ポート210を介して、各モータを制御するモータ駆動部211が接続されている。モータ駆動部211には、ロールモータ111及び搬送モータ126と共に、記録ヘッド140を昇降させるヘッドモータ212が接続されている。CPU200は、各モータの駆動とヒータ155による吐出動作とを同期させることにより、ロールシートRSに画像を記録する画像記録処理を実行する。
【0025】
また、モータ駆動部211には、キャップ132を搬送方向Cと平行な方向に移動させるキャッピングモータ213と、キャップ132に接続された不図示のポンプを駆動させるポンプモータ214とが接続されている。CPU200は、ポンプモータ214を駆動させ、吐出口150aを介して充填部150のインクIを吸引し、充填部150のインクIを入れ替えることにより、記録ヘッド140の吐出機能を回復させる入替回復処理である吸引回復処理を実行可能である。
【0026】
また、インクジェット記録装置100では、インクIがシリコーン系封止剤160に接していることにより、Si成分が充填部150のインクIに徐々に溶出し、充填部150におけるインクIのSi成分濃度が上昇する。CPU200は、吸引回復処理を実行することにより、Si成分を含む無機不純物の濃度が上昇したインクIを充填部150から排出することが可能である。
【0027】
ところで、インクジェット記録装置100では、吐出動作において熱エネルギーを発生することによりインクIの焦げがヒータ155に堆積し、吐出動作の妨げとなる。CPU200は、画像記録処理時より大きな熱エネルギーを用いた吐出動作によって、堆積した焦げをヒータ155から剥離して充填部150から排出し、吐出性能を回復する吐出回復処理であるフラッシングを実行可能である。
【0028】
また、インクジェット記録装置100では、無機不純物の濃度が上昇することにより、インクIの焦げがヒータ155に堆積し易くなる。従って、インクIの焦げは、充填部150にインクIが充填された充填状態の継続時間である充填継続時間が長くなるにつれて堆積し易くなる。本実施形態において、CPU200は、最後に吸引回復処理を実行してから経過した時間を充填継続時間として計測し、吸引回復処理を実行した場合に充填継続時間をリセットする。CPU200は、充填継続時間によって決定されるフラッシング係数αと、最後に吸引回復処理を実行してから画像記録処理の吐出動作が実行された累計吐出回数とに応じてフラッシングの実行を決定する。
【0029】
<フラッシングの実行に係る制御処理の詳細>
続いて、フラッシングの実行に係る制御処理の詳細について図5を参照しながら説明する。図5は、CPU200がホストコンピュータPCから画像形成開始のコマンドを含む画像形成ジョブを受信することにより開始する制御処理であり、フラッシングの実行に係る制御処理を示すフローチャートである。CPU200は、最後の画像記録処理後から現在までに吸引回復処理を実行したか否かを判定する(S101)。ステップS101において、吸引回復処理を実行していないと判定した場合に(No)、CPU200は、フラッシング係数αを更新してから24時間経過したか否かを判定する(S102)。
【0030】
ステップS102において24時間経過したと判定した場合(Yes)、又はステップS101において吸引回復処理を実行したと判定した場合に(Yes)、CPU200は、EEPROM205から充填継続時間を取得する(S103)。そして、CPU200は、EEPROM205に記憶されるフラッシング係数αを更新する(S104)。
【0031】
ステップS104において、CPU200は、充填継続時間と図6に示される充填継続時間及びフラッシング係数αの対応表に基づいてフラッシング係数αを更新する。充填継続時間が所定時間である15日以内である第1時間である場合に、CPU200はフラッシング係数αを第1値である1.0に設定する。充填継続時間が15日を越えるが30日以内である第2時間である場合に、CPU200はフラッシング係数αを第2値である1.5に設定する。また、CPU200は、充填継続時間が30日を越えるが60日以内である第3時間である場合にフラッシング係数αを2.0に設定し、充填継続時間が61日以上の第4時間である場合にフラッシング係数αを3.0に設定する。
【0032】
ステップS104の実行後、又はステップS102において24時間経過していないと判定した場合に(No)、CPU200は、画像記録処理前に吐出口150aの吐出状態を確保するための回復動作として、予備吐出を行う(S105)。CPU200は、全ノズルにおいて、吐出動作を同じ吐出回数行う。
【0033】
ステップS105を実行した後に、CPU200は、画像記録処理を実行する(S106)。ステップS106を実行した後に、CPU200は、ノズルごとに今回の画像記録処理によって吐出した吐出回数dを、画像形成ジョブに含まれる画像データから算出する(S107)。
【0034】
ステップS107の実行後に、CPU200は、各ノズルにおいて吐出回数dとフラッシング係数αとの積から求められるフラッシングカウントfを算出する(S108)。ステップS108の実行後に、CPU200は、各ノズルに設けられたフラッシングカウントfの累積値Ftに、フラッシングカウントfを加算する(S109)。
【0035】
ステップS109の実行後に、CPU200は、いずれかのノズルにおいて累積値Ftが第1閾値である閾値5000000回に達したか否かを判定する(S110)。ステップS110において、累積値Ftが閾値に達していないと判定した場合に(No)、CPU200は、フラッシングの実行に係る制御処理を終了する。
【0036】
ステップS110において、累積値Ftが閾値に達したと判定した場合に(Yes)、フラッシングを実行する(S111)。ステップS111の実行後に、CPU200は、全てのノズルにおいて累積値Ftを0にリセットし(S112)、フラッシングの実行に係る制御処理を終了する。
【0037】
このように、本実施形態のインクジェット記録装置100では、充填継続時間及び累計吐出回数によって定まる累積値Ftに応じてフラッシングの実行タイミングを決定する。従って、インクジェット記録装置100では、充填継続時間が短く、焦げが堆積しにくい場合にフラッシングを実行する頻度が低下する。一方、充填継続時間が長く、焦げが堆積し易い場合に、インクジェット記録装置100では、フラッシングの実行頻度が増加する。これにより、インクジェット記録装置100は、フラッシングを適切に実行することができ、焦げによる吐出機能の低下を防ぐと共にヒータ155の負担が増加することを防ぐことができる。
【0038】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、累計吐出回数が4000000回であり、累計吐出回数のうち第1時間において吐出動作が行われた第1吐出回数が4000000回である場合に、フラッシングを実行しない。しかしながら、第1吐出回数が2000000回であり、第2時間において吐出動作が行われた第2吐出回数が2000000回である場合に、CPU200は、フラッシングを実行する。すなわち、CPU200は、第1吐出回数が2000000回である場合に第2時間におけるフラッシング実行の契機である第2閾値を第1閾値より小さい4000000回に設定する。そして、CPU200は、第2時間において累計吐出回数が第2閾値に達した場合にフラッシングを実行する。これにより、インクジェット記録装置100は、充填継続時間が長くなるにつれてフラッシングの実行頻度が小さくなるので、焦げが堆積する早さに対してフラッシングの実行頻度が足りなくなることを防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、第1吐出回数及び第1値の積と第2吐出回数及び第2値の積との合計が第1閾値である5000000回に達した場合にフラッシングを実行する。これにより、インクジェット記録装置100は、簡単な計算によってフラッシングの実行頻度を細かく調整することができる。
【0040】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、吸引回復処理により、充填部150のインクIにおける無機不純物の濃度を低下させて焦げを堆積しにくくする。これにより、インクジェット記録装置100は、フラッシングの実行頻度を下げ、ヒータ155の負担を低減することができる。
【0041】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、充填継続時間を吸引回復処理の実行時にリセットし、最後に吸引回復処理を実行してから経過した時間を充填継続時間として計測する。これにより、インクジェット記録装置100は、フラッシングの実行頻度を容易に補正することができる。
【0042】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、最後にフラッシング係数αを更新してから24時間経過するまで、フラッシング係数αを新たに更新しない。本実施形態において、充填部150のインクIにおける無機不純物の濃度は、24時間では大きく変化しない。従って、インクジェット記録装置100では、フラッシングの実行頻度が焦げの堆積スピードに対して足りなくなることを防ぎつつ、フラッシング係数αを記録するEEPROM205の負担を軽減することができる。
【0043】
なお、本実施形態において、インクジェット記録装置100は、充填継続時間に応じて、吐出回数を補正して累積値Ftに累積し、累積値Ftが5000000回に達した場合にフラッシングを実行するように構成されているが、これに限らない。インクジェット記録装置100は、フラッシングを実行する累計吐出回数の閾値が充填継続時間に応じて変更するように構成されていてもよい。インクジェット記録装置100は、第1時間において累計吐出回数が第1閾値に達した場合、又は第2時間において累計吐出回数が第1閾値より小さい第2閾値に達した場合にフラッシングを実行するように構成されていれば、本実施形態に限らない。
【0044】
また、インクジェット記録装置100は、充填継続時間に基づいて、フラッシング係数αを決定するように構成されているが、これに限らず、充填継続時間と共にインクの種類に応じてフラッシング係数αを決定するように構成されていてもよい。インクジェット記録装置100は、インクの種類に応じて第1閾値及び第2閾値を変更するように構成されていれば、本実施形態に限らない。
【0045】
また、本実施形態において、インクジェット記録装置100は、吸引回復処理を実行した場合に、充填継続時間をリセットするように構成されているが、これに限らない。インクジェット記録装置100は、単位時間内に充填部150内のインクIをすべて排出し得る吐出回数以上吐出動作を実行した場合に、充填継続時間をリセットするように構成されていてもよい。例えば、インクジェット記録装置100は、24時間以内の累計吐出回数が全てのノズルにおいて、3000回以上である場合に、充填継続時間をリセットするように構成されていてもよい。また、インクジェット記録装置100では、充填継続時間をリセットする契機となる吐出回数を3000回に限らず、充填部150の構造に応じて変更してもよい。
【0046】
インクジェット記録装置100は、画像記録処理及び予備吐出において行われた吐出動作の累計吐出回数が24時間以内において3000回以上である場合に充填継続時間をリセットするように構成されていてもよい。また、インクジェット記録装置100は、予備吐出において行われた吐出動作の累計吐出回数が24時間以内において3000回以上である場合に充填継続時間をリセットするように構成されていてもよい。
【0047】
画像記録処理ではノズルごとに吐出回数が異なるが、予備吐出では全てのノズルにおいて吐出回数が同じである。従って、充填継続時間のリセットが画像記録処理及び予備吐出における吐出動作の累計吐出回数に基づく場合に、インクジェット記録装置100では、ノズルごとの無機不純物濃度を考慮することができるが、フラッシングの実行判定が複雑となる。一方、予備吐出のみの累計吐出回数に基づいて充填継続時間をリセットする場合に、インクジェット記録装置100は、フラッシングの実行判定が簡単となるために、好ましい。
【0048】
また、インクジェット記録装置100は、吐出動作を行わなかった放置時間が所定の時間に達した場合に、ステップS105の予備吐出において充填部150のインクIを全て排出し得る吐出回数の吐出動作を行うように構成されていてもよい。インクジェット記録装置100は、この場合に充填継続時間をリセットするように構成されていてもよい。すなわち、インクジェット記録装置100は、充填部150のインクIを排出して入れ替えることにより吐出性能を回復させる入替回復処理を実行した場合に充填継続時間をリセットするように構成されていれば、本実施形態に限らない。
【符号の説明】
【0049】
100:インクジェット記録装置、140:記録ヘッド、150:充填部、150a:吐出口、155:発熱素子(ヒータ)、200:制御部(CPU)
図1
図2
図3
図4
図5
図6