(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159363
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】位置決め用の治具、並びに蒸着マスク
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221006BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221006BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123817
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2018149936の分割
【原出願日】2018-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(57)【要約】
【課題】マスク本体と枠体とを位置決めする位置決め用の治具、並びに当該位置決め用の治具を用いてマスク本体と枠体とを接合して構成される蒸着マスクに関して、マスク本体と枠体との接合時における取扱いを容易化する。
【解決手段】マスク本体と枠体とを位置決めする位置決め用の治具である。マスク本体と枠体とを支持する支持ベースと、該支持ベースに設けられる位置決め体とを備える。マスク本体に位置決め体に係合する位置決め部を設ける。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体と枠体とを位置決めする位置決め用の治具であって、
前記マスク本体と前記枠体とを支持する支持ベースと、当該支持ベースに設けられる位置決め体とを備え、
前記マスク本体に前記位置決め体に係合する位置決め部が設けられていることを特徴とする位置決め用の治具。
【請求項2】
前記枠体に前記位置決め体に係合する位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の位置決め用の治具。
【請求項3】
前記マスク本体の上面を押し付ける押さえ枠と、前記支持ベースに対して前記位置決め体を相対移動させる位置調整機構とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の位置決め用の治具。
【請求項4】
前記支持ベース、あるいは前記押さえ枠に透過孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の位置決め用の治具。
【請求項5】
前記マスク本体における前記位置決め部の隣接ピッチは、前記支持ベースにおける前記位置決め体の隣接ピッチよりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の位置決め用の治具。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の位置決め用の治具を用いて、マスク本体と枠体とが接合されて構成されることを特徴とする蒸着マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク本体と枠体とを位置決めする位置決め用の治具、並びに当該位置決め用の治具を用いてマスク本体と枠体とを接合して構成される蒸着マスクに関する。本発明に係る蒸着マスクは、例えば有機EL素子の発光層を形成する際に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
表示装置を有するスマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器において、機器
の軽量化および駆動時間の長時間化を目的として、液晶ディスプレイに替えて、より軽量
で消費電力が小さな有機ELディスプレイの採用が始まっている。有機ELディスプレイ
は、蒸着マスク法により、基板(蒸着対象)上に有機EL素子の発光層(蒸着層)を形成
することで製造される。
【0003】
蒸着マスク法に用いられる蒸着マスクは、例えば本出願人が先に提案した特許文献1、
2に開示されている。特許文献1、2に記載された蒸着マスクは、多数独立の蒸着通孔か
らなる蒸着パターンを備えるマスク本体と、マスク本体に一体的に形成された補強用の枠
体(補強枠)とで構成される。特許文献1に記載の蒸着マスクは、母型上に電鋳法により
マスク本体となる一次電着層を形成する工程と、一次電着層の外周縁に枠体を配設する工
程と、一次電着層と枠体とを接着剤により接着する工程と、枠体表面および一次電着層の
外周縁上に金属層を形成する工程と、母型から一次電着層を剥離する工程とを経て形成さ
れる。特許文献2に記載の蒸着マスクでも、電鋳法により金属層を形成して、当該金属層
によりマスク本体と枠体とを接合している。特許文献3に記載の蒸着マスクでは、レーザ
ーによるスポット溶接によりマスク本体と枠体とを接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-349086号公報
【特許文献2】特開2017-210633号公報
【特許文献3】特開2004-323888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にマスク本体は厚みが例えば10μm前後の薄状板であるため、当該マスク本体
を枠体に接合するまでの間の取扱いには難がある。また、外力や環境変化によりマスク本
体の形状は変化し易い。
【0006】
本発明は、マスク本体と枠体とを位置決めする位置決め用の治具、並びに当該位置決め用の治具を用いてマスク本体と枠体とを接合して構成される蒸着マスクに関して、マスク本体と枠体との接合時における取扱い(位置決め)を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蒸着マスクは、多数独立の蒸着通孔8からなる蒸着パターン7を備えるマ
スク本体2と、マスク本体2に接合される枠体3とで構成される。マスク本体2は、蒸着
パターン7が配置される内側のパターン形成領域5と、パターン形成領域5を囲む外側の
外周領域6とを備える。マスク本体2の外周領域6に、枠体3との接合時に治具30の位
置決め体32に係合する位置決め部9が設けられていることを特徴とする。
【0008】
枠体3に、マスク本体2との接合時に治具30の位置決め体32に係合する位置決め部
14を設けることができる。
【0009】
マスク本体2と枠体3を、レーザー光による溶接部16を介して接合することができる
。
【0010】
マスク本体2の位置決め部9の隣接ピッチを、治具30の位置決め体32の隣接ピッチ
よりも小さく設定することができる。
【0011】
本発明に係る蒸着マスクの製造方法は、マスクベース17を用いてマスク本体2を作製
する工程と、マスク本体2と枠体3を接合する工程とを含む。マスクベース17は、透光
性を有する非導電性材料からなる母型18の表面に、マスク本体2と同じ投影面を有する
導電性のパターンシート19を形成して構成される。マスク本体2を作製する工程は、パ
ターンシート19の表面と、パターンシート19で覆われていない母型18の表面とに、
ネガタイプのフォトレジスト層27を形成する段階と、母型18の裏面側からパターンシ
ート19を介してフォトレジスト層27を露光する段階と、露光後のフォトレジスト層2
7に現像処理を施して、パターンシート19を除く母型18の表面を覆うパターンレジス
ト28を形成する段階と、パターンシート19の表面に、マスク本体2となる電着層を電
鋳により形成する段階と、該電着層をマスクベース17から分離する段階とを含む。マス
ク本体2と枠体3を接合する工程において、両者2・3を支持する治具30の位置決め体
32に、マスク本体2の位置決め部9を係合させることを特徴とする。
【0012】
治具30の位置決め体32に対応して、接合前のマスク本体2と枠体3のそれぞれに位
置決め部9・14を設け、マスク本体2と枠体3を接合する工程において、治具30の位
置決め体32に両位置決め部9・14を係合させることができる。
【0013】
治具30は、マスク本体2および枠体3を支持する支持ベース31を備えており、支持
ベース31は、その上面から突出する位置決め体32と、レーザー光の透過を許す透過孔
33とを備えている。マスク本体2と枠体3を接合する工程が、マスク本体2の位置決め
部9を位置決め体32に係合させて、マスク本体2を支持ベース31の上面に載置する段
階と、枠体3の位置決め部14を位置決め体32に係合させて、枠体3をマスク本体2の
上面に載置する段階と、支持ベース31の下面側から透過孔33を介してレーザー光を照
射して、マスク本体2と枠体3を溶接により接合する段階とを含む形態を採ることができ
る。
【0014】
別の治具30は、マスク本体2および枠体3を支持する支持ベース31と、支持ベース
31との間にマスク本体2および枠体3を挟持する押さえ枠36とを備える。支持ベース
31は、その上面から突出する位置決め体32を備えており、押さえ枠36は、レーザー
光の透過を許す透過孔33を備えている。マスク本体2と枠体3を接合する工程が、枠体
3の位置決め部14を位置決め体32に係合させて、枠体3を支持ベース31の上面に載
置する段階と、マスク本体2の位置決め部9を位置決め体32に係合させて、マスク本体
2を枠体3の上面に載置する段階と、マスク本体2の上面に押さえ枠36を密着させる段
階と、押さえ枠36の上面側から透過孔33を介してレーザー光を照射して、マスク本体
2と枠体3を溶接により接合する段階とを含む形態を採ることができる。
【0015】
マスク本体2と枠体3を支持する支持ベース31に複数の位置決め体32を固定し、マ
スク本体2の位置決め部9の隣接ピッチを、位置決め体32の隣接ピッチよりも小さく設
定することができる。
【0016】
あるいは、マスク本体2と枠体3を支持する支持ベース31に対して、複数の位置決め
体32を相対移動可能に設けることができる。この場合のマスク本体2と枠体3を接合す
る工程は、位置決め体32の隣接ピッチを、マスク本体2の位置決め部9の隣接ピッチに
一致させる段階と、各位置決め部9を各位置決め体32に係合させる段階と、各位置決め
体32を互いに遠ざかる方向に移動させて、マスク本体2に伸長方向のテンションを付与
する段階とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蒸着マスクは、マスク本体2のパターン形成領域5を囲む外周領域6に、
枠体3との接合時に治具30の位置決め体32に係合する位置決め部9を備える。これに
よれば、マスク本体2と枠体3を接合する際に、位置決め部9に位置決め体32を係合さ
せて、治具30に対してマスク本体2を位置決めした状態で、両者2・3を接合すること
ができる。一般的にマスク本体2は枠体3に比べて薄く取扱いに難があるが、枠体3との
接合時にマスク本体2を位置決めする本発明によれば、その取扱いを容易化することがで
き、加えて、外力や環境変化によるマスク本体2の変形を防止することができる。
【0018】
枠体3にもマスク本体2の外周領域6と同様に、治具30の位置決め体32に係合する
位置決め部14を設けることができる。これによれば、マスク本体2と枠体3を互いに正
確に位置決めして、両者2・3を高い位置精度で接合することができる。また、マスク本
体2と枠体3を同じ位置決め体32で位置決めできるので、両者2・3の位置決め構造を
簡素化することができる。
【0019】
マスク本体2と枠体3を、レーザー光による溶接部16を介して接合すると、両者2・
3の接合強度を大きくして、接合後のマスク本体2に歪が生じることを抑制することがで
きる。
【0020】
マスク本体2の位置決め部9の隣接ピッチを、治具30の位置決め体32の隣接ピッチ
よりも小さく設定すると、位置決め部9に位置決め体32を係合させる過程で、マスク本
体2が引き伸ばされるので、マスク本体2に対して伸長方向のテンションを容易に付与す
ることができる。マスク本体2に伸長方向のテンションを付与すると、マスク本体2の歪
を無くした好適な状態で、マスク本体2と枠体3を接合することができる。また、位置決
め体32の隣接ピッチを規定することにより、マスク本体2に対して常に一定の適度なテ
ンションを付与することができる。
【0021】
本発明に係る蒸着マスクの製造方法は、マスク本体2を作製する工程と、マスク本体2
と枠体3を接合する工程とを含み、後者工程では治具30の位置決め体32にマスク本体
2の位置決め部9を係合させて、治具30に対してマスク本体2を位置決めした状態で、
両者2・3を接合する。一般的にマスク本体2は枠体3に比べて薄く取扱いに難があるが
、枠体3との接合時にマスク本体2を位置決めする本発明によれば、その取扱いを容易化
することができ、加えて、外力や環境変化によるマスク本体2の変形を防止することがで
きる。
【0022】
マスク本体2を作製する工程で用いるマスクベース17は、透光性を有する非導電性材
料からなる母型18の表面に、マスク本体2と同じ投影面を有する導電性のパターンシー
ト19を形成して構成される。この工程では、パターンシート19と母型18の表面のフ
ォトレジスト層27に対して、母型18の裏面側から露光する。これによれば、フォトレ
ジスト層27の特に母型18側を確りと硬化させて、母型18に対する現像処理後のパタ
ーンレジスト28の密着性を高めることができ、加えて、母型18の表面側から露光する
場合に必要となるパターンフィルムを省略して、該フィルムを介したフォトレジスト層2
7の表面への塵埃付着の問題を解消することができる。
【0023】
さらに、マスクベース17を用いてマスク本体2を作製する工程は、パターンレジスト
28で覆われていないパターンシート19の表面に電着層(マスク本体2)を形成する段
階と、該電着層をマスクベース17から分離する段階とを含む。パターンシート19は母
型18の表面に強固に密着しており、電着層の分離の際にパターンシート19が母型18
から剥離することは無いため、パターンレジスト28を除去して電着層を分離した後のマ
スクベース17は、フォトレジスト層27を形成する前の最初の状態に戻る。つまりマス
クベース17を繰り返し使用できるので、マスク本体2の作製の度にマスクベース17を
作製する場合に比べて、マスク本体2ひいては蒸着マスク1の生産性を大きく高めること
ができる。
【0024】
接合前のマスク本体2と枠体3のそれぞれに位置決め部9・14を設けて、マスク本体
2と枠体3を接合する工程において、治具30の位置決め体32に両位置決め部9・14
を係合させると、マスク本体2と枠体3を互いに正確に位置決めして、両者2・3を高い
位置精度で接合することができる。また、マスク本体2と枠体3を同じ位置決め体32で
位置決めできるので、両者2・3の位置決め構造を簡素化することができる。
【0025】
マスク本体2と枠体3を接合する工程は、マスク本体2を支持ベース31の上面に載置
する段階と、枠体3をマスク本体2の上面に載置する段階と、支持ベース31の下面側か
ら透過孔33を介してレーザー光を照射して、マスク本体2と枠体3を溶接により接合す
る段階とを含むことができる。マスク本体2と枠体3をレーザー光で溶接すると、両者2
・3の接合強度を大きくして、接合後のマスク本体2に歪が生じることを抑制することが
できる。
【0026】
マスク本体2と枠体3を接合する工程は、枠体3を支持ベース31の上面に載置する段
階と、マスク本体2を枠体3の上面に載置する段階と、マスク本体2の上面に押さえ枠3
6を密着させる段階と、押さえ枠36の上面側から透過孔33を介してレーザー光を照射
して、マスク本体2と枠体3を溶接により接合する段階とを含むことができる。マスク本
体2と枠体3をレーザー光で溶接すると、両者2・3の接合強度を大きくして、接合後の
マスク本体2に歪が生じることを抑制することができる。
【0027】
マスク本体2の位置決め部9の隣接ピッチを、支持ベース31の位置決め体32の隣接
ピッチよりも小さく設定すると、位置決め部9に位置決め体32を係合させる過程で、マ
スク本体2が引き伸ばされるので、マスク本体2に対して伸長方向のテンションを容易に
付与することができる。マスク本体2に伸長方向のテンションを付与すると、マスク本体
2の歪を無くした好適な状態で、マスク本体2と枠体3を接合することができる。また、
位置決め体32を支持ベース31に固定してその隣接ピッチを規定することにより、マス
ク本体2に対して常に一定の適度なテンションを付与することができる。
【0028】
複数の位置決め体32を支持ベース31に対して相対移動可能に設けることができ、こ
の場合のマスク本体2と枠体3を接合する工程は、位置決め体32の隣接ピッチをマスク
本体2の位置決め部9の隣接ピッチに一致させる段階と、各位置決め部9を各位置決め体
32に係合させる段階と、各位置決め体32を互いに遠ざかる方向に移動させて、マスク
本体2に伸長方向のテンションを付与する段階とを含む。各位置決め部9と各位置決め体
32の係合前に隣接ピッチを合わせておくと、係合時にマスク本体2を引き伸ばさなくて
も、両者9・32をスムーズに係合させることができ、マスク本体2の引き伸ばしによる
断裂などの破損のリスクを解消できる。また両者9・32の係合後に、各位置決め体32
を互いに遠ざかる方向に移動させると、マスク本体2に対してより安全にテンションを付
与することができる。マスク本体2に伸長方向のテンションを付与すると、マスク本体2
の歪を無くした好適な状態で、マスク本体2と枠体3を接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施例1に係る蒸着マスクの要部の縦断面図である。
【
図2】実施例1に係る蒸着マスクの全体を示す斜視図である。
【
図3】実施例1に係る蒸着マスクの分解平面図である。
【
図4】実施例1に係るマスクベースを作製する工程を示す説明図である。
【
図5】同マスクベースを用いてマスク本体を作製する工程を示す説明図である。
【
図6】実施例1に係る治具とマスク本体と枠体の斜視図である。
【
図8】実施例1に係るマスク本体と枠体を接合する工程を示す説明図である。
【
図9】実施例2に係る蒸着マスクの全体を示す斜視図である。
【
図10】実施例2に係る蒸着マスクの分解平面図である。
【
図11】実施例2に係る治具とマスク本体と枠体の斜視図である。
【
図12】同治具の位置調整機構の動作を示す説明図である。
【
図13】実施例3に係るマスクベースを作製する工程を示す説明図である。
【
図14】同マスクベースを用いてマスク本体を作製する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施例1)
図1から
図8に、本発明に係る蒸着マスクおよびその製造方法の実施例1
を示す。なお、本実施例の各図における厚みや幅などの寸法は、実際の様子を示したもの
ではなく、それぞれ模式的に示したものである。以下の各実施例の図においても同様であ
る。
【0031】
図1ないし
図3に示すように蒸着マスク1は、薄い矩形板状のマスク本体2と、同本体
2の上面に接合される補強用の枠体3とで構成される。マスク本体2は、その面積の過半
を占める内側のパターン形成領域5と、同領域5を囲む外側の外周領域6とを備える。パ
ターン形成領域5には、複数(本実施例では9個)の蒸着パターン7が間隔を空けてマト
リクス状に配置されている。各蒸着パターン7は多数独立の蒸着通孔8からなり、1個の
蒸着パターン7と1枚の基板(蒸着対象)が1対1で対応している。外周領域6には、枠
体3との接合の際の位置決めに供される複数の位置決め孔(位置決め部)9が形成されて
いる。本実施例では、外周領域6の四隅と各辺部の中央に、合わせて8個の位置決め孔9
を形成した。
【0032】
このマスク本体2は、ニッケル-コバルトからなる電着金属を素材として電鋳法で形成
される。本実施例ではマスク本体2の厚みを8μmに設定した。なおマスク本体2は、そ
の他のニッケル合金や、ニッケル、銅、その他の電着金属を素材として形成することもで
きる。さらにマスク本体2は、二層以上の積層構造であってもよく、具体的には例えば、
光沢めっき層からなる上層と、無光沢めっき層からなる下層とを有するマスク本体2を形
成し、各層の厚み比率を例えば上層:下層=5:7に設定することができる。
【0033】
枠体3は、矩形枠状の外周枠11と、外周枠11内に複数(本実施例では9個)のマス
ク開口12を区画する格子枠13とを備える。枠体3の1個のマスク開口12と、マスク
本体2の1個の蒸着パターン7とが1対1で対応しており、両者2・3の接合状態におい
て、各蒸着パターン7がマスク開口12に臨み、蒸着パターン7を除くマスク本体2の上
面は枠体3で覆われる。外周枠11には、マスク本体2の外周領域6と同様に、複数の位
置決め孔(位置決め部)14が形成されている。本実施例では、外周枠11の四隅と各辺
部の中央に、合わせて8個の位置決め孔14を形成した。なお、枠体3の位置決め孔(位
置決め部)14は、外周枠11のほか格子枠13に形成することができる。同様に、マス
ク本体2の位置決め孔(位置決め部)9も、外周領域6のほか、蒸着パターン7を除くパ
ターン形成領域5に形成することができる。
【0034】
この枠体3は、ニッケル-鉄合金であるインバー材からなる低熱線膨張係数の金属板材
で、マスク本体2よりも十分に肉厚に形成されている。枠体3の厚み寸法は、例えば2~
5mmの範囲内で設定することができる。なお枠体3は、上記のインバー材以外に、ニッ
ケル-鉄-コバルト合金であるスーパーインバー材などで形成してもよい。
【0035】
マスク本体2の外周領域6と、枠体3の外周枠11とは、レーザー光を用いたスポット
溶接により接合されており、これによりマスク本体2と枠体3が一体化されている。詳し
くは、外周領域6および外周枠11の四隅と、各辺部の四等分点位置の合わせて16個所
に、溶接部16が形成されている。各溶接部16は、位置決め孔9・14よりも外周領域
6および外周枠11の内周側、つまり蒸着パターン7のなるべく近くに位置している。マ
スク本体2と枠体3の接合状態において、平面視における両者2・3の外周縁は一致する
。
【0036】
外周領域6および外周枠11の各辺部の四等分点位置に溶接部16を形成するのに代え
て、各辺部の三等分点位置、つまり、格子枠13を構成する縦枠と横枠の延長線上位置に
溶接部16を形成することができる。この場合の溶接部16は合わせて12個となる。溶
接部16の個数は、マスク本体2と枠体3のそれぞれに設けられる位置決め孔(位置決め
部)9・14の個数と同じかそれよりも多いことが望ましい。また本実施例では、枠体3
の外周枠11のみに溶接部16を形成したが、外周枠11に加えて格子枠13にも溶接部
16を形成することがより好ましい。ただし、格子枠13よりも外周枠11の方が、溶接
部16の形成個所を選択するうえでの優先順位は高い。格子枠13に溶接部16を形成す
る場合は、その縦枠と横枠よりも、両枠の交差部に溶接部16を形成する方が効果的であ
る。
【0037】
本実施例に係る蒸着マスク1は、マスクベース17を作製する工程と、マスクベース1
7を用いてマスク本体2を作製する工程と、マスク本体2と枠体3を接合する工程とを経
て製造される。
図4(e)に示すようにマスクベース17は、透光性を有する非導電性材
料からなる母型18の表面に、マスク本体2と同じ投影面を有する導電性のパターンシー
ト19を形成してなるものである。このマスクベース17を得るには、まず
図4(a)に
示すように、後にパターンシート19となる導電性薄膜20を、スパッタリングなどの方
法で母型18の表面に形成する。次いで、
図4(b)に示すように、導電性薄膜20の表
面にネガタイプのフォトレジスト層21を形成し、さらに同層21の上に、ガラスマスク
からなるパターンフィルム22を密着させる。このパターンフィルム22は、マスク本体
2の蒸着通孔8に対応する多数個の非透光部22aと、同本体2の位置決め孔9に対応す
る8個の非透光部22bと、その他の部分を占める透光部22cとを備える。
【0038】
次いで、紫外線ランプ24で紫外線光を照射することにより、パターンフィルム22を
介してフォトレジスト層21を露光する。露光後、フォトレジスト層21からパターンフ
ィルム22を取り外し、フォトレジスト層21の未露光部分を溶解除去(現像)すること
により、
図4(c)に示すように、導電性薄膜20の表面にパターンレジスト25を形成
する。このパターンレジスト25は、パターンフィルム22の透光部22cに対応するレ
ジスト体で構成される。次いで、
図4(d)に示すように、パターンレジスト25で覆わ
れていない導電性薄膜20の露出部分をエッチング除去することにより、パターンレジス
ト25と母型18の間にパターンシート19を形成する。最後にパターンレジスト25を
溶解除去することにより、
図4(e)に示すマスクベース17を得ることができる。
【0039】
母型18の形成素材としては、透明なガラスや合成樹脂(ポリエステル、ポリイミドフ
ィルムなど)を挙げることができ、パターンシート19(導電性薄膜20)の形成素材と
しては、クロム、ニッケル、タングステン、タンタルなどの金属を挙げることができる。
パターンシート19の膜厚は、マスク本体2よりも十分に薄い150~300nm程度が
好ましく、これよりも薄いと導電不良を生じやすく、厚いとコスト高になるばかりか、精
度上問題が生じる。導電性薄膜20を母型18の表面に形成する手段はスパッタリングに
限られず、無電解めっき、蒸着やイオンプレーティングなど、他のめっき手段であっても
よい。
【0040】
マスクベース17を用いてマスク本体2を作製する工程を
図5に示す。まず
図5(a)
に示すように、パターンシート19の表面と、同シート19で覆われていない母型18の
表面とに、ネガタイプのフォトレジスト層27を形成する。このフォトレジスト層27は
作製予定のマスク本体2よりも厚く形成される。ガラスや合成樹脂からなる母型18の表
面には、金属製母型の表面に見られる鬆などが無いため、フォトレジスト層27は母型1
8に対して良好に密着する。
【0041】
次いで、母型18の裏面側から紫外線ランプ24で紫外線光を照射することにより、パ
ターンシート19を介してフォトレジスト層27を露光する。露光後、フォトレジスト層
27の未露光部分(パターンシート19の上側の部分)を溶解除去(現像)することによ
り、
図5(b)に示すように、母型18の表面にパターンレジスト28を形成する。この
パターンレジスト28は、マスク本体2の蒸着通孔8に対応する多数個のレジスト体28
aと、同本体2の位置決め孔9に対応する8個のレジスト体28bとで構成される。本実
施例のように母型18の裏面側から紫外線光を照射すると、フォトレジスト層27の特に
母型18側を確りと硬化させて、レジスト体28aの形状精度すなわち蒸着通孔8の開口
精度を向上できるとともに、母型18に対するパターンレジスト28の密着性を高めるこ
とができる。
【0042】
次いで、
図5(c)に示すように、パターンシート19の表面に電鋳処理(めっき処理
)を施して、パターンレジスト28の高さの範囲内で、電着層すなわちマスク本体2を形
成する。マスク本体2の形成後、必要に応じてマスク本体2の表面に研磨処理を施し、パ
ターンレジスト28を溶解除去すると、蒸着通孔8および位置決め孔9が現れる。最後に
、
図5(d)に示すようにマスク本体2をパターンシート19から分離すると、同本体2
を作製する工程が完了となる。なお、マスク本体2を分離した後のマスクベース17にお
いて、パターンシート19は母型18から剥離することなく強固に密着しており、同ベー
ス17は繰り返し使用することができる。こうして作製されたマスク本体2の両面を比較
すると、パターンシート19(マスクベース17)に密着していたベース面の方が、その
反対側の成長面よりも平面性に優れる。そのため、平面性に優れるマスク本体2のベース
面を、蒸着マスク法における基板(蒸着対象)に対する密着面とし、平面性に劣るマスク
本体2の成長面に枠体3を接合することが好ましい。
【0043】
マスク本体2と枠体3を接合する工程について説明する前に、同工程で用いる治具30
について説明する。
図6において治具30は、水平な矩形板状の支持ベース31を備えて
おり、マスク本体2と枠体3を支持する支持ベース31の上面には、尖頭状の先端部を有
する複数の位置決めピン(位置決め体)32が突設されている。本実施例では、支持ベー
ス31の上面の四隅と各辺部の中央に、合わせて8個の位置決めピン32を設けた。これ
ら位置決めピン32に対応して、マスク本体2と枠体3のそれぞれに、位置決めピン32
と同数の位置決め孔9・14が設けられており、各位置決め孔9・14に各位置決めピン
32を挿入することにより、支持ベース31の平面に合わせて、マスク本体2と枠体3と
支持ベース31の三者を水平方向に位置決めすることができる。
【0044】
枠体3の位置決め孔14の隣接ピッチは、位置決めピン32の隣接ピッチと同一に設定
されるが、マスク本体2の位置決め孔9の隣接ピッチは、位置決めピン32の隣接ピッチ
よりも僅かに小さく設定される。そのため、
図7に示すように、平面視におけるマスク本
体2の各位置決め孔9の中心を結んでできる仮想長方形R2は、位置決めピン32の中心
を結んでできる仮想長方形R1よりも僅かに小さくなる。つまり、2つの仮想長方形R1
・R2の長辺どうしを比較すると、マスク本体2側の仮想長方形R2の方が僅かに短く、
また短辺どうしを比較しても、仮想長方形R2の方が僅かに短い。
【0045】
また支持ベース31には、レーザー光の透過を許す複数の透過孔33が上下方向に貫通
形成されている。本実施例では、支持ベース31の四隅と各辺部の四等分点位置に、合わ
せて16個の透過孔33を形成した。各透過孔33は、位置決めピン32の中心を結んで
できる仮想長方形R1の内側、つまり、位置決めピン32よりも支持ベース31の中央寄
りに位置している。平面視における透過孔33の中心を結んでできる仮想長方形R3は、
位置決めピン32の中心を結んでできる仮想長方形R1より小さく、さらに、マスク本体
2の各位置決め孔9の中心を結んでできる仮想長方形R2よりも小さい。つまり、3つの
仮想長方形R1・R2・R3はR1>R2>R3の関係を満たす。支持ベース31の上面
にマスク本体2が載置されたとき、各透過孔33はマスク本体2の外周領域6に臨む。
【0046】
マスク本体2と枠体3を接合する工程では、まずマスク本体2の各位置決め孔9に各位
置決めピン32を挿入して、支持ベース31の上面にマスク本体2を載置する。上述のよ
うに、位置決め孔9の隣接ピッチは位置決めピン32のそれよりも小さく設定されるが、
その寸法差は僅かであるため、
図8(a)に示すようにマスク本体2を支持ベース31の
上方に配置したとき、各位置決めピン32の先端は平面視において各位置決め孔9の内側
に位置する。従って、支持ベース31の上面に向けてマスク本体2を下降させるだけで、
各位置決めピン32の先端を各位置決め孔9に侵入させることができる。そこから更にマ
スク本体2を下降させると、マスク本体2の全体が各位置決めピン32の先端部のテーパ
ー面に沿って僅かに引き伸ばされる。つまりマスク本体2は、伸長方向のテンションを付
与された状態で支持ベース31の上面に載置される。
【0047】
次いで、
図8(b)に示すように、枠体3の各位置決め孔14に各位置決めピン32を
挿入して、マスク本体2の上面に枠体3を載置する。位置決め孔14と位置決めピン32
の隣接ピッチは同じであるため、位置決めピン32が位置決め孔14に侵入した後も、枠
体3はマスク本体2のように引き伸ばされることなくスムーズに下降する。つまり枠体3
は、テンションを付与されていない状態でマスク本体2の上面に載置される。なお、図面
から明らかなように、尖頭状の上部を除く位置決めピン32の上下寸法(支持ベース31
の上面から突出する部分の上下寸法)は、マスク本体2と枠体3を合わせた厚み寸法より
も大きく設定される。
【0048】
最後に、支持ベース31の下面側から各透過孔33を介してレーザー光を照射して、マ
スク本体2の外周領域6と枠体3の外周枠11の複数個所をスポット溶接する。これによ
り、マスク本体2と枠体3が接合されて、蒸着マスク1が完成する。マスク本体2に伸長
方向のテンションを付与した状態でマスク本体2と枠体3を接合すると、外力や環境変化
によるマスク本体2の変形を防止できるので、マスク本体2の歪を無くした好適な状態で
両者2・3を接合することができる。また、マスク本体2に対して一定の適度なテンショ
ンが付与されていることで、蒸着マスク1の平面性(平坦度)が確保できる。
【0049】
(実施例2)
図9から
図12に、本発明に係る蒸着マスクおよびその製造方法の実施例
2を示す。本実施例では、枠体3を矩形枠状の外周枠のみで構成するとともに、マスク本
体2と枠体3を接合する工程で用いる治具30を、矩形枠状の支持ベース31および押さ
え枠36と、支持ベース31の上面から突出する複数の位置決めピン32と、支持ベース
31に対して各位置決めピン32を相対移動させる位置調整機構37とで構成した。
【0050】
マスク本体2と枠体3を接合する工程において、先の実施例1では支持ベース31の上
面にマスク本体2を載置し、同本体2の上面に枠体3を載置したが、本実施例では支持ベ
ース31の上面に枠体3を載置し、枠体3の上面にマスク本体2を載置し、さらにマスク
本体2の上面に押さえ枠36を密着させて、マスク本体2の周縁部を枠体3の上面に押し
付ける。また実施例1では、レーザー光の透過を許す複数の透過孔33を支持ベース31
に形成したが、本実施例では押さえ枠36に複数の透過孔33を形成し、押さえ枠36の
上面側からレーザー光を照射する。押さえ枠36の各辺部には、等間隔で合わせて28個
の透過孔33が形成されている。
【0051】
平面視において枠体3と押さえ枠36の内外周縁がそれぞれ一致するのに対し、支持ベ
ース31の外周縁は枠体3と押さえ枠36の外周縁よりも一回り大きく形成されており、
また、支持ベース31の内周縁は枠体3と押さえ枠36の内周縁よりも一回り小さく形成
されている。つまり、支持ベース31の各辺部は枠体3と押さえ枠36の各辺部よりも幅
広に形成されており、これにより支持ベース31で枠体3と押さえ枠36を安定的に支持
することができる。
【0052】
支持ベース31の四隅と各辺部の中央には、位置決めピン32の挿通を許す、合わせて
8個のスライド孔39が上下方向に貫通形成されている。平面視において各スライド孔3
9は、支持ベース31の中心に向かう方向を長手方向とする長孔状に形成されており、同
方向における位置決めピン32の相対移動を許容する。押さえ枠36の四隅と各辺部の中
央にも、同方向に伸びる長孔状のスライド孔40が同じ目的で形成されている。枠体3の
各位置決め孔14も、これらのスライド孔39・40と同一方向に伸びる長孔状に形成さ
れている。なお、各位置決め孔14の幅方向(短手方向)の寸法は、位置決めピン32の
外径と略同一に設定されるため、支持ベース31の上面に枠体3を載置したとき、枠体3
が水平方向にズレ動くことはない。
【0053】
8個の位置決めピン32毎に位置調整機構37が設けられており、各ピン32は同機構
37により個別にスライド移動される。
図12(a)において位置調整機構37は、位置
決めピン32の下端に連結されたスライドブロック43と、スライドブロック43に螺合
された調整ねじ44と、調整ねじ44を回転操作する操作部45とを備える。調整ねじ4
4の軸方向はスライド孔39の長手方向に一致しており、操作部45を介して調整ねじ4
4を回転操作することにより、スライドブロック43を位置決めピン32と一体に、支持
ベース31に対してスライド孔39の長手方向に相対移動させることができる。なお位置
調整機構37は、複数または全ての位置決めピン32を同時に移動させるものであっても
よい。位置調整機構37は実施例1の治具30にも適用することができる。
【0054】
枠体3の上面にマスク本体2を載置する際は、前以って位置決め体32の隣接ピッチを
マスク本体2の位置決め部9の隣接ピッチに一致させる。具体的には、
図12(a)に実
線で示すように、各位置決めピン32を支持ベース31の中心寄りに移動させて、平面視
において各位置決めピン32の先端を位置決め孔9の中心に一致させる。これにより、枠
体3の上面に向けてマスク本体2を下降させるだけで、各位置決めピン32の先端を各位
置決め孔9に侵入させることができ、さらに、マスク本体2を枠体3の上面に至るまで抵
抗無くスムーズに下降させることができる。つまりマスク本体2は、テンションを付与さ
れていない状態で枠体3の上面に載置される。
【0055】
マスク本体2の載置後、同図に想像線で示すように、各位置決めピン32を支持ベース
31の中心から離れる方向に移動させると、マスク本体2に伸長方向のテンションを付与
することができる。なお、マスク本体2に対するテンションの付与(各位置決めピン32
の移動)は、
図12(b)に示すようにマスク本体2の上面に押さえ枠36を密着させた
後で行ってもよく、同枠36を密着させる前に行ってもよい。他は実施例1と同じである
ので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じと
する。なお、実施例1のように、枠体3に格子枠13が設けられていても良く、その場合
、該格子枠13に位置決め孔(位置決め部)14や溶接部16を設けることができる。
【0056】
(実施例3)
図13および
図14に、本発明に係る蒸着マスクの製造方法の実施例3を
示す。先の実施例1では、平坦面からなる母型18の表面にパターンシート19を積層し
てマスクベース17を得たが、本実施例では
図13(d)に示すように、母型18の表面
にパターンシート19を埋め込むことで、マスクベース17の表面を凹凸の無い平坦面に
形成する。このマスクベース17を得るには、まず
図13(a)(b)に示すように、母
型18の表面をレーザー光やエッチングなどにより加工して、マスク本体2の投影面に一
致するごく浅い凹部43を形成する。次いで
図13(c)に示すように、凹部43を含む
母型18の表面全面に、導電性薄膜20を形成する。最後に、凹部43を除く母型18の
表面が露出するまで、導電性薄膜20の表面を研磨したり、凹部43内に(のみ)導電性
薄膜20が残存するように導電性薄膜20をエッチングしたりすることにより、
図13(
d)に示すマスクベース17を得ることができる。
【0057】
本実施例に係るマスクベース17を用いてマスク本体2を作製するには、まず
図14(
a)に示すように、マスクベース17の表面全体にネガタイプのフォトレジスト層27を
形成する。次いで、母型18の裏面側から紫外線ランプ24で紫外線光を照射することに
より、パターンシート19を介してフォトレジスト層27を露光する。露光後、フォトレ
ジスト層27の未露光部分(パターンシート19の上側の部分)を溶解除去(現像)する
ことにより、
図14(b)に示すように、母型18の表面にパターンレジスト28を形成
する。このパターンレジスト28は、マスク本体2の蒸着通孔8に対応する多数個のレジ
スト体28aと、同本体2の位置決め孔9に対応する8個のレジスト体28bとで構成さ
れる。
【0058】
次いで、
図14(c)に示すように、パターンシート19の表面に電鋳処理(めっき処
理)を施して、パターンレジスト28の高さの範囲内で、電着層すなわちマスク本体2を
形成する。マスク本体2の形成後、パターンレジスト28を溶解除去すると、蒸着通孔8
および位置決め孔9が現れる。最後に、
図14(d)に示すようにマスク本体2をパター
ンシート19から分離する。なお本実施例でも、マスク本体2を分離した後のマスクベー
ス17において、パターンシート19は母型18から剥離することなく凹部43内に強固
に密着しているため、同ベース17は繰り返し使用することができる。
【0059】
上記以外に、マスク本体2と枠体3を接合する工程は、パターンシート19(マスクベ
ース17)からマスク本体2を分離する前の
図5(c)に示す状態で行うことができる。
具体的には、マスク本体2の上面に枠体3を配設し、母型18の裏面側からレーザー光を
照射して、マスク本体2と枠体3を溶接する。この方法によれば、枠体3を接合してマス
クベース17から剥離した後のマスク本体2に対し、内方へ収縮しようとする応力を作用
させることができるので、治具30を用いたテンションの付与を省略することができる。
なお、この方法を採る場合は、溶接(レーザー光の照射)前に、レーザー光の透過を許す
透過孔を予めパターンシート19に設けておく必要がある。また、マスク本体2と枠体3
の接合面に、互いに係合する凹凸構造を設けることにより、マスク本体2に対して伸長方
向のテンションを付与するとともに、両者2・3を水平方向に位置決めすることができる
。
【符号の説明】
【0060】
1 蒸着マスク
2 マスク本体
3 枠体
5 パターン形成領域
6 外周領域
7 蒸着パターン
8 蒸着通孔
9 位置決め部(位置決め孔)
11 外周枠
14 位置決め部(位置決め孔)
16 溶接部
17 マスクベース
18 母型
19 パターンシート
27 フォトレジスト層
28 パターンレジスト
30 治具
31 支持ベース
32 位置決め体(位置決めピン)
33 透過孔
36 押さえ枠
37 位置調整機構