(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159403
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】医療デバイス用の潤滑性挿入具および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20221006BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20221006BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20221006BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20221006BHJP
A61L 29/14 20060101ALI20221006BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61M25/01
A61M25/00 650
A61M25/10 510
A61L29/04 100
A61L29/14 300
A61L29/08
【審査請求】有
【請求項の数】49
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125691
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019514309の分割
【原出願日】2017-09-14
(31)【優先権主張番号】62/395,610
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/464,520
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506112683
【氏名又は名称】サーモディクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】トロック,エイミー
(72)【発明者】
【氏名】サットン,グレッグ エス.
(72)【発明者】
【氏名】スラガー,ジョラム
(57)【要約】
【課題】本開示は、医療デバイス(バルーンカテーテルなど)を体内に進入させることを容易にし、バルーン挿入、安全性および薬物送達を有利にしうる、挿入具および物品を提供する。
【解決手段】上記挿入具は、(i)バルーンカテーテルのバルーン部分を収容する管状部分と、(ii)当該管状部分の壁にある1つ以上の分離マージン、または、管状壁にある1つ以上の分割部と、を備えている。上記挿入具はまた、(i)第2長手方向半分から延在しており、長手軸に対して斜交している部分を有している近位ツマミ、または、(ii)凹面を有している中実の物体の形態であり、上記管状部分の第2長手方向半分の外表面に固定されている近位ツマミ、をも備えている。あるいは、その代わりに、上記挿入具はまた、上記管状部分の第1長手方向半分および第2長手方向半分からそれぞれ延在している、第1ツマミおよび第2ツマミを備えている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルのバルーン部分が、止血弁を経由して患者の体内へと進入することを容易にするように構成されている挿入具であって、上記挿入具は、
長手軸に沿った近位端および遠位端と、
上記遠位端から近位方向に延在しており、長さが上記バルーン部分の長さ以上である管状部分であって、上記管状部分は、
壁;
バルーンカテーテルのバルーン部分を収容できる内径;および、
上記管状部分の第1長手方向半分の壁にある分離マージンであって、(i)上記第1半分にある壁の構造上の弱所、または(ii)上記第1半分にある壁の分割部(split)を表している、分離マージン;
を有している、管状部分と、
上記近位端にあるツマミであって、
(a)上記管状部分の第2長手方向半分から延在しており、上記長手軸に対する角度が斜めになっている部分を有しているツマミ;または、
(b)凹面を有している中実の物体の形態であり、上記管状部分の上記第2長手方向半分の外表面に取付けられているツマミ;
のいずれかである、ツマミと、
を備えている、挿入具。
【請求項2】
上記(a)および/または(b)を満たしている、請求項1に記載の挿入具:
(a)上記遠位端は、テーパ形状もしくは傾斜形状、フレア形状、またはこれらの組み合わせである;
(b)上記管状部分の上記近位端は、テーパ形状もしくは傾斜形状、フレア形状、またはこれらの組み合わせである。
【請求項3】
上記管状部分の上記近位端はテーパ形状であり、上記第2半分がテーパ状になっている、請求項1または2に記載の挿入具。
【請求項4】
上記ツマミは、上記第2半分のテーパ部分から延在している、請求項3に記載の挿入具。
【請求項5】
上記ツマミは、上記長手軸に対して斜交する複数の角度を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項6】
上記ツマミは、上記長手軸に対して湾曲した構造である、請求項1~5のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項7】
上記ツマミは、軸に沿った幅および長さを有しており、
上記管状部材の長手軸は、上記ツマミの幅の軸に対して垂直である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項8】
上記管状部分は、外周を有しており、
上記ツマミの幅は、(i)上記外周の10%以上であるか、または(ii)上記外周の10%~100%である、
請求項7に記載の挿入具。
【請求項9】
上記ツマミの長さは、当該ツマミの幅よりも大きい、請求項7に記載の挿入具。
【請求項10】
上記分離マージンは、上記管状部材の壁にある裂目(fissure)を有しており、
上記裂目の深さは、上記壁の厚さの10%以上である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項11】
上記裂目は、V字型である、請求項10に記載の挿入具。
【請求項12】
上記分離マージンは、上記壁に分割部を有しており、
上記管状部材の上記第1半分において、第1長手部と第2長手部とが重なっている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項13】
下記の寸法のうち1つ以上を満たす、請求項1~12のいずれか1項に記載の挿入具:
(i)上記管状部分の長さが、約10mm~約300mm、約10mm~約100mm、約50mm~約150mm、もしくは約150mm~約300mm;
(ii)上記管状部分の外周が、約1.1mm~約32mm、約2.5mm~約15mm、もしくは約3mm~6mm;
(iii)上記管状部分の外径が、約0.35mm~約10mm、約1.5mm~約5mm、もしくは約1.6mm~約3mm;
(iv)上記管状部分の内径が、約0.25mm~約5mm、約1mm~約4mm、約1.2mm~約3mm、もしくは約1.25mm~約2.75mm;
(v)上記管状部分の壁の厚さが、約0.05mm~約2.5mm、約0.05mm~約0.5mm、約0.05mm~約0.25mm、約0.05mm~約0.20mm、約0.05mm~約0.15mm、約0.10mm~約0.25mm、もしくは約0.15mm~約1.5mm;および/または、
(vi)裂目の深さが、約0.025mm~約1mm、約0.05mm~約0.25mm、もしくは約0.05mm~約0.15mm。
【請求項14】
フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン(HDPEおよびLDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;テフロン)、PEBAX、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ならびにポリエステル、からなる群より選択される材料を含んでいる、請求項1~13のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項15】
上記管状部材は、外表面および内表面を有しており、
上記外表面および内表面は、それぞれ独立に(または両方とも)、低摩擦材料と関連することができる、
請求項1~14のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項16】
上記低摩擦材料は、親水性コーティングまたはフッ素ポリマー製スリーブである、請求項15に記載の挿入具。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の挿入具と、
バルーンカテーテルと、
を備えている、バルーンカテーテル挿入システムであって、
上記バルーンカテーテルのバルーン部分は、任意構成で、上記バルーンカテーテルの上記管状部分内の一部に装填されている、
システム。
【請求項18】
上記バルーン部分は、折り畳まれた状態のバルーンを備えていると共に、折り畳まれたバルーンの直径を有しており、
上記折り畳まれたバルーンの直径は、上記管状部材の内径よりも大きいか、内径と等しいか、または内径よりも小さい、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
上記折り畳まれたバルーンの直径は、上記管状部材の内径よりも大きく、
上記管状部材の壁の厚さは、0.075mm未満、0.06mm未満、もしくは0.05mm未満、または、約0.025mm~約0.06mm、もしくは約0.025mm~約0.05mmであり、
上記管状部材に導入される際には、上記管状部材は、当該折り畳まれたバルーンを収容するように変形する、
請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
上記折り畳まれたバルーンの直径は、上記管状部材の内径未満であり、
上記直径は、上記管状部材の内径の、約80%~約99%、約86%~約99%、約90%~約99%、約94%~約99%、または約96%~約99%である、
請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
上記挿入具の外表面、上記バルーンカテーテルのカテーテルシャフトの外表面、またはその両方は、1つ以上の着色剤または造影剤の標識を有しており、
上記標識により、上記バルーンカテーテルまたは上記挿入具の位置決めを容易にする、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
(i)ある長さを有するバルーン部分を備えているバルーンカテーテルと、
(ii)止血弁と、
(iii)挿入具と、
を備えている、バルーンカテーテル挿入システムであって、
上記挿入具は、上記バルーンカテーテルのバルーン部分が、上記止血弁を経由して患者の体内へ進入することを容易にする挿入具であって、
長手軸に沿った近位端および遠位端と、
上記遠位端から近位方向に延在しており、長さが上記バルーン部分の長さ以上である管状部分であって、上記管状部分は、
壁;
バルーンカテーテルのバルーン部分を収容できる内径;および、
上記管状部分の第1長手方向半分の壁にある分離マージンであって、(i)上記第1半分にある壁の構造上の弱所、または(ii)上記第1半分にある壁の分割部(split)を表している、分離マージン;
を有している、管状部分と、
上記近位端にあるツマミであって、
(a)上記管状部分の第2長手方向半分から延在しており、上記長手軸に対する角度が斜めになっている部分を有しているツマミ;または、
(b)凹面を有している中実の物体の形態であり、上記管状部分の上記第2長手方向半分の外表面に固定されているツマミ;
のいずれかである、ツマミと、
を備えている、バルーンカテーテル挿入システム。
【請求項23】
請求項1~16のいずれか1項に記載の挿入具、または、請求項18~21のいずれか1項に記載のシステムを備えている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
上記バルーンカテーテルは、上記バルーンの表面に治療剤を有している、上記請求項22または23に記載のシステム。
【請求項25】
上記バルーンカテーテルは、上記バルーンの表面に重合性コーティングを有している、請求項22~24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
下記(i)および/または(ii)を満たす、請求項24または25に記載のシステム:(i)上記治療剤は、ラパマイシンを含んでいる;
(ii)上記重合性コーティングは、ヒドロゲルを含んでいる。
【請求項27】
上記管状部材は、停止部材を備えており、
上記停止部材は、上記管状部材の外表面から半径方向外側に延在しており、
上記停止部材は、上記止血弁の近位端の一部と接触して、上記挿入具が上記止血弁を通じてさらに遠位方向に移動することを阻止できる、
請求項22~26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
患者の体内にバルーンカテーテルを挿入する方法であって、上記方法は、
(a)(i)ある長さを有するバルーン部分および当該バルーン部分に近接しているカテーテルシャフトを備えているバルーンカテーテル、ならびに、(ii)当該バルーンカテーテルを患者の体内に進入させるための挿入具、を提供するステップと、
(b)上記挿入具の遠位端を、止血弁の中に挿入するステップと、
(c)上記挿入具の管状部分およびその中にあるバルーンカテーテルを、上記止血弁を通じて、上記患者の体内へと前進させるステップと、
(d)上記止血弁から上記挿入具の管状部分を引き抜き、上記管状部分のうち少なくとも近位部を、上記カテーテルシャフトの周辺に位置させるステップと、
(e)上記挿入具を上記バルーンカテーテルに対して移動させ、分離マージンを分離させて、上記挿入具を上記カテーテルシャフトから離れて移動できるようにするステップと、
を含み、
上記挿入具は、
長手軸に沿った近位端および遠位端と、
上記遠位端から近位方向に延在しており、長さが上記バルーン部分の長さ以上である管状部分であって、上記管状部分は、
壁;
バルーンカテーテルのバルーン部分を収容できる内径;および、
上記管状部分の第1長手方向半分の壁にある分離マージンであって、(i)上記第1半分にある壁の構造上の弱所、または(ii)上記第1半分にある壁の分割部(split)を表している、分離マージン;
を有している、管状部分と、
上記近位端にあるツマミであって、
(1)上記管状部分の第2長手方向半分から延在しており、上記長手軸に対する角度が斜めになっている部分を有しているツマミ;または、
(2)凹面を有している中実の物体の形態であり、上記管状部分の上記第2長手方向半分の外表面に固定されているツマミ;
のいずれかである、ツマミと、
を備えている、方法。
【請求項29】
請求項1~16のいずれか1項に記載の挿入具、または、請求項18~27のいずれか1項に記載のシステムを使用するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(e)における移動には、上記ツマミに対して外向きの力を加えるステップが含まれ、
その結果、上記カテーテルシャフトの外表面から、上記管状部材の内径の上記第1半分の内径に向かう力が発生する、
請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(e)における外向きの力により、上記壁の構造上の弱所である上記分離マージンに沿って、上記管状部材の壁が破壊される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(e)における外向きの力により、上記壁にある上記分割部が外方向に拡張し、
上記管状部材の上記第1半分にある第1長手部が、上記管状部材の上記第1半分にある第2長手部から分離する、
請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(e)において、ユーザはツマミを2本の指で挟み、当該ツマミをカテーテルシャフトから引き抜く、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
血管形成術の処置と共に用いられる、28~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
バルーンカテーテルのバルーン部分が、止血弁を経由して患者の体内へ進入することを容易にするように構成されている挿入具であって、上記挿入具は、
長手軸に沿った近位端および遠位端と、
上記遠位端から近位方向に延在しており、長さが上記バルーン部分の長さ以上である管状部分であって、上記管状部分は、
壁;
バルーンカテーテルのバルーン部分を収容できる内径;
上記管状部分の壁にある第1分離マージンおよび第2分離マージンであって、当該管状部分の壁の構造上の弱所または当該壁にある分割部を表し、上記管状部分の第1長手方向半分および第2長手方向半分を規定している、第1分離マージンおよび第2分離マージン;
を有している、管状部分と、
上記管状部分の上記第1長手方向半分から延在している第1ツマミ、および、上記管状部分の上記第2長手方向半分から延在している第2ツマミと、
を備えている、挿入具。
【請求項36】
上記第1ツマミおよび上記第2ツマミは、上記長手軸に対して湾曲した構造である、請求項35のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項37】
上記第1分離マージンおよび上記第2分離マージンは、上記管状部材の壁にある裂目を有しており、
上記裂目の深さは、上記壁の厚さの10%以上である、
請求項35または36に記載の挿入具。
【請求項38】
上記裂目は、V字型である、請求項37に記載の挿入具。
【請求項39】
下記の寸法のうち1つ以上を満たす、請求項35~38のいずれか1項に記載の挿入具:
(i)上記管状部分の長さが、約10mm~約300mm、約10mm~約100mm、約50mm~約150mm、もしくは約150mm~約300mm;
(ii)上記管状部分の外周が、約1.1mm~約32mm、約2.5mm~約15mm、もしくは約3mm~6mm;
(iii)上記管状部分の外径が、約0.35mm~約10mm、約1.5mm~約5mm、もしくは約1.6mm~約3mm;
(iv)上記管状部分の内径が、約0.25mm~約5mm、約1mm~約4mm、約1.2mm~約3mm、もしくは約1.25mm~約2.75mm;
(v)上記管状部分の壁の厚さが、約0.05mm~約2.5mm、約0.05mm~約0.5mm、約0.05mm~約0.25mm、約0.05mm~約0.20mm、約0.05mm~約0.15mm、約0.10mm~約0.25mm、もしくは約0.15mm~約1.5mm;および/または、
(vi)裂目の深さが、約0.025mm~約1mm、約0.05mm~約0.25mm、もしくは約0.05mm~約0.15mm。
【請求項40】
フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン(HDPEおよびLDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;テフロン)、PEBAX、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ならびにポリエステル、からなる群より選択される材料を含んでいる、請求項35~39のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項41】
上記管状部材は、外表面および内表面を有しており、
上記外表面および内表面は、それぞれ独立に(または両方とも)、低摩擦材料と関連することができる、
請求項35~40のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項42】
上記低摩擦材料は、親水性コーティングまたはフッ素ポリマー製スリーブである、請求項41に記載の挿入具。
【請求項43】
請求項35~42のいずれか1項に記載の挿入具と、
バルーンカテーテルと、
を備えている、バルーンカテーテル挿入システムであって、
上記バルーンカテーテルのバルーン部分は、任意構成で、上記バルーンカテーテルの上記管状部分内の一部に装填されている、
システム。
【請求項44】
上記バルーン部分は、折り畳まれた状態のバルーンを備えていると共に、折り畳まれたバルーンの直径を有しており、
上記折り畳まれたバルーンの直径は、上記管状部材の内径よりも大きいか、内径と等しいか、または内径よりも小さい、
請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
上記折り畳まれたバルーンの直径は、上記管状部材の内径よりも大きく、
上記管状部材の壁の厚さは、0.075mm未満、0.06mm未満、もしくは0.05mm未満、または、約0.025mm~約0.06mm、もしくは約0.025mm~約0.05mmであり、
上記管状部材に導入される際には、上記管状部材は、当該折り畳まれたバルーンを収容するように変形する、
請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
上記折り畳まれたバルーンの直径は、上記管状部材の内径未満であり、
上記直径は、上記管状部材の内径の、約80%~約99%、約86%~約99%、約90%~約99%、約94%~約99%、または約96%~約99%である、
請求項18に記載のシステム。
【請求項47】
上記挿入具の外表面、上記バルーンカテーテルのカテーテルシャフトの外表面、またはその両方は、1つ以上の着色剤または造影剤の標識を有しており、
上記標識により、上記バルーンカテーテルまたは上記挿入具の位置決めを容易にする、請求項43に記載のシステム。
【請求項48】
(i)請求項35~42のいずれか1項に記載の挿入具と、(ii)止血弁と、を備えている、バルーンカテーテル挿入システム;
あるいは、
(i)上記挿入具と、(ii)請求項35~42のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルと、(iii)止血弁と、を備えている、バルーンカテーテル挿入システム。
【請求項49】
患者の体内にバルーンカテーテルを挿入する方法であって、
請求項35~42のいずれか1項に記載の挿入具を使用するステップ;または、
請求項43~48のいずれか1項に記載のシステムを使用するステップ;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本通常特許出願は、本願と所有者を共有する米国仮出願第62/395,610号(2016年9月16日出願、発明の名称"LUBRICIOUS INSERTION TOOLS FOR MEDICAL DEVICES AND METHODS FOR USING")、および、本願と所有者を共有する米国仮出願第62/464,520号(2017年2月28日出願、発明の名称"LUBRICIOUS INSERTION TOOLS FOR MEDICAL DEVICES AND METHODS FOR USING")の権利を主張するものである。上記米国仮出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本開示は、身体の脈管系内への医療デバイスの挿入を容易にする、挿入具に関する。
【背景技術】
【0003】
アテローム症は、身体の動脈を冒す疾患であり、多くの場合は冠状動脈を冒す。この疾患が脚の動脈(膝より上または下の動脈)で発生すると、通常は、末梢動脈疾患(PAD)と呼ばれる。アテローム症が発症すると、コレステロール含量の増加および瘢痕組織の増加によって特徴付けられる動脈壁の変化が見られる。その後、動脈硬化プラークが蓄積して動脈壁を厚くし、一般的には、動脈の縮小または狭窄を引き起こす病変が形成される。その結果として、血流が減少する。これらの後期段階では、カルシウムがプラーク中に存在している場合がある。
【0004】
一般的には、プラークの所見を有する患者を治療することが望ましい。なぜならば、プラークが血流を妨げるか否かにかかわらず、プラークの存在は、冠状動脈イベントにつながる破裂のリスクを孕んでいるためである。破裂したプラークは、局所的な血塊の形成を活性化させる場合があり、この血塊は血流を遮断しうる。これが冠状動脈において発生すると、心筋梗塞を引き起こす。これが末梢血管で発生すると、重度の痛みを引き起こすことがある。また、複数の血管で発生すると、重大な四肢虚血につながる場合がある。
【発明の概要】
【0005】
脈管系内に導入される医療デバイス用の挿入具であって、動脈性疾患(動脈硬化プラークなど)の処置に使用できる挿入具について、本明細書では説明する。上記挿入具は、埋入可能または挿入可能な医療デバイスを保存し配置する際に、当該デバイスを格納し保護するために使用できる。上記挿入具はまた、医療デバイス(バルーンカテーテルなど)の挿入を保護し、挿入を容易にするためにも使用できる。上記挿入具は、止血弁を通じて患者のカテーテル管腔内へと、バルーンカテーテルを挿入することを容易にしてもよい。また、上記挿入具は、バルーンを装填している間、当該バルーンのバルーン部材表面を保護することができる。上記挿入具は、体内への挿入時において、デバイスのコンタミネーションを防止することができ、および/または、バルーンカテーテルのコーティングの損傷を最低限に(または防止)することができる。
【0006】
本開示の挿入具はまた、医療従事者と、人体に挿入される医療デバイス上に施された薬物コーティングとの接触の防止に使用できる。さらに、上記挿入具はまた、湿気に敏感な薬物コーティングを保護し、哺乳動物の体内に挿入するよりも前に、当該薬物コーティングと流体とが偶発的に接触することを防止することもできる。
【0007】
上記挿入具は、医療処置に使用されるキットまたはシステムの一部であってもよい。このようなキットまたはシステムも、本発明の実施形態である。例えば、上記キットは、以下の構成要素の1つ以上を含んでいてもよい:1つ以上の送達カテーテル、バルーン処置デバイス、膨脹型カテーテル、ガイドワイヤ、止血弁、またはこれらの組み合わせ。
【0008】
一実施形態において、本発明は、バルーンカテーテルのバルーン部分が止血弁を経由して患者の体内へと進入することを容易にするように構成されている、挿入具を提供する。上記挿入具は、以下を備えている:長手軸に沿った近位端および遠位端;上記遠位端から近位方向に延在しており、長さが上記バルーン部分の長さ以上である管状部分;ならびに、上記近位端にあるツマミ。上記管状部分は、壁;バルーンカテーテルのバルーン部分を収容できる内径;上記管状部分の第1長手方向半分の壁にある分離マージンであって、(i)当該第1半分の壁の構造上の弱所を表すか、または、(ii)当該第1半分の壁にある分割部を表す、分離マージン;を備えている。上記近位端にあるツマミは、(a)上記管状部分の第2長手方向半分から延在しており、上記長手軸に対する角度が斜めになっている部分を有しているツマミであるか、または、(b)凹面を有している中実の物体の形態であり、上記管状部分の上記第2長手方向半分の外表面に固定されているツマミである。
【0009】
本発明はまた、バルーンカテーテル挿入システムを提供する。このシステムは、(i)ある長さを有するバルーン部分を備えているバルーンカテーテルと、(ii)止血弁と、(iii)挿入具であって、バルーンカテーテルのバルーン部分が止血弁を経由して患者の体内へと進入することを容易にする挿入具(本明細書に記載の通り)と、を備えている。
【0010】
本発明はまた、患者の体内にバルーンカテーテルを挿入する方法も提供する。上記方法は、(a)(i)ある長さを有するバルーン部分および当該バルーン部分に近接しているカテーテルシャフトを備えているバルーンカテーテル、ならびに、(ii)当該バルーンカテーテルを患者の体内に容易に進入させるための挿入具(本明細書に記載の通り)、を提供するステップと、(b)上記挿入具の遠位端を、止血弁の中に挿入するステップと、(c)上記挿入具の管状部分およびその中にあるバルーンカテーテルを、上記止血弁を通じて、上記患者の体内へと前進させるステップと、(d)上記止血弁から上記挿入具の管状部分を引き抜き、上記管状部分のうち少なくとも近位部を、上記カテーテルシャフトの周辺に位置させるステップと、(e)上記挿入具を上記バルーンカテーテルに対して移動させ、分離マージンを分離させて、上記挿入具を上記カテーテルシャフトから離れて移動できるようにするステップと、を含む。
【0011】
他の実施形態において、本発明は、バルーンカテーテルのバルーン部分が止血弁を経由して患者の体内へ進入することを容易にするように構成されている、挿入具を提供する。上記挿入具は、長手軸に沿った近位端および遠位端と;上記遠位端から近位方向に延在しており、長さが上記バルーン部分の長さ以上である管状部分と; 上記管状部分の上記第1長手方向半分から延在している第1ツマミ、および、上記管状部分の上記第2長手方向半分から延在している第2ツマミと;を備えている。上記管状部分は、壁と;バルーンカテーテルのバルーン部分を収容できる内径と;上記管状部分の壁にある第1分離マージンおよび第2分離マージンであって、当該管状部分の壁の構造上の弱所または当該壁にある分割部を表し、上記管状部分の第1長手方向半分および第2長手方向半分を規定している、第1分離マージンおよび第2分離マージンと;を有している。本発明はまた、前述の挿入具を備えているバルーンカテーテル挿入システムも提供する。さらに、本発明は、患者の体内にバルーンカテーテルを挿入する方法であって、前述の挿入具または当該挿入具を備えているシステムを使用する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る挿入具の図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る挿入具の一部を、遠位端から見た図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る挿入具の断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る挿入具の遠位端の図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の一実施形態に係る挿入具の遠位端の図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示の一実施形態に係る挿入具の遠位端の一部の断面図である。
【
図6A】
図6A~Dは、挿入具の実施形態の近位端の図である。
【
図7】
図7は、挿入具の実施形態の近位端または遠位端の図である。
【
図8】
図8は、挿入具の実施形態の近位端または遠位端の図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態に係る挿入具の一部を、遠位端から見た図である。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態に係る挿入具の一部を、近位端から見た図である。
【
図11】
図11は、本開示の一実施形態に係る挿入具の一部を、近位端から見た図である。
【
図12】
図12は、本開示の一実施形態に係る挿入具の斜視図である。
【
図13】
図13は、本開示の一実施形態に係る挿入具の遠位端の図である。
【
図14】
図14は、本開示の一実施形態に係るバルーンカテーテルの一部の図である。
【
図15】
図15は、バルーンカテーテルの遠位端の図である。折り畳まれた状態にあるバルーン部分を示している。
【
図16】
図16は、バルーンカテーテルの遠位端の図である。折り畳まれた状態にあるバルーン部分と、種々の挿入具に装填されているバルーン部分と、が示されている。
【
図17】
図17は、挿入具内にあるバルーンカテーテルの一部の図である。
【
図18】
図18は、挿入具内にあるバルーンカテーテルの一部と、止血弁内にある挿入具の一部とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、網羅的であることを意図するものではないし、本発明を以下の詳細な説明に開示されている厳密な形態に限定することを意図するものでもない。むしろ、下記の実施形態は、本発明の原理および実施を、他の当業者が認識し理解できるように選択され、説明されている。
【0014】
本明細書中で言及されている全ての刊行物および特許は、参照により組み込まれる。本明細書において記載されている刊行物および特許は、その開示のみを目的として提供されている。本明細書のいずれの記載も、本発明者らが、任意の刊行物および/または特許(本明細書に引用されている任意の刊行物および/または特許を含む)に先行する権利を有していないことの自白として解されるべきではない。
【0015】
本明細書においては、「近位」および「遠位」なる用語を使用して、バルーンカテーテル挿入具または関連するシステム構成要素(バルーンカテーテルまたは止血弁など)の、特定の特徴点の位置を定義する。近位端(ユーザ端)とは、ユーザ側にある(すなわち、身体の外側にある)システムの特徴点の位置を表す。遠位端(治療端)とは、ユーザ端から離れている(すなわち、治療部位側にある)システムの特徴点の位置を表す。「近位部」とは、遠位端により近い部分(遠位部)よりも、近位端により近い部分を表す。「内表面」(管腔内表面)とは、中空状の物体の管腔内にある、物体の表面を表す。一方、「外表面」とは、中空状の物体の外側の表面(管腔外表面)を表す。同様に、中空の物体の内表面によって「内径」が規定でき、外表面によって「外径」が規定できる。このとき、外径と内径との差によって、「壁の厚さ」が規定できる(挿入具の壁の厚さなど)。挿入具の特徴点の配置は、挿入具の「長手軸」と関連付けて説明することもできる。長手軸とは、挿入具の近位端および遠位端にある点を含み、挿入具の壁に沿って平行に延びる線である。
【0016】
図1を参照する。一実施形態において、本開示は、近位端114および遠位端116を有する管状部分112を備えている、バルーンカテーテル挿入具100を提供する。管状部分112は、管状部分112の壁に平行な長手軸を有している(挿入具の各部を、長手軸に対する関係と絡めて説明することがある)。管状部分の長さ(すなわち、近位端114と遠位端116との距離)は、バルーンカテーテルのバルーン部分の長さを収容できる長さであってもよい。挿入具は、種々の形状および寸法のバルーンカテーテルを収容し、挿入を容易にするために使用できる。例えば、管状部分の長さは、約10mm以上であってもよい(約10mm~約300mmなど。他の例としては、約10mm~約100mm、約50mm~約150mm、および約150mm~約300mmが挙げられる)。
【0017】
図2は、遠位端116から見た挿入具の管状部分を示している。末端から見たときに円形であるように、管状部分を描いている。しかし、この形状は、バルーンカテーテルのバルーン部分を収容するのに適しており、止血弁を通した進入を容易にするような、任意の形状であってよい(例えば、長円形または多角形)。
【0018】
図2はまた、管状部分の外表面130および内表面132も示している。外表面上の互いに対向する2点間の距離(管状部分の中央を通る)は、外径(OD)を表している。内表面上の互いに対向する2点間の距離(管状部分の中央を通る)は、内径(ID)を表している。例示的な実施形態において、管状部分の外径は、約0.35mm~約10mm、約1.5mm~約5mm、または約1.6mm~約3mmであってもよい。例示的な実施形態において管状部分の外周は、約1.1mm~約32mm、約2.5mm~約15mm、または約3mm~6mmであってもよい。例示的な実施形態において、管状部分の内径は、0.25mm~5mm、約1mm~約4mm、約1.2mm~約3mm、または約1.25mm~約2.75mmであってもよい。管状部分の管腔は、断面積によって定義しすることもできる。断面積は、例えば、約0.05mm
2~約20mm
2、または約0.75mm
2~約12.5mm
2であってもよい。
【0019】
管状部材の壁の厚さは、外径と内径との差を2で割ることによって定義できる。壁の厚さは、壁の周囲に沿って均一であってもよいし、不均一であってもよい。例示的な実施形態において、管状部分の壁の厚さは、約0.025mm以上、約0.05mm以上、約0.075mm以上、または約0.10mm以上であってもよい(約0.05mm~約2.5mm、約0.05mm~約0.5mm、約0.05mm~約0.25mm、約0.05mm~約0.20mm、約0.05mm~約0.15mm、約0.10mm~約0.25mm、または約0.15mm~約1.5mmなど)。
【0020】
本開示の態様を説明する目的で、
図2を参照する。管状部分は、第1長手方向半分141(上側の半円として示されている)および第2長手方向半分143(下側の半円として示されている)を有するものとして説明されうる。第1長手方向半分および第2長手方向半分は、管状部分の全長にわたって、近位端と遠位端との間に延在していることが理解される。少なくとも第1長手方向半分141は、挿入具に力が加わったときに破壊されうる、分離マージンを有していてもよい(例えば、本明細書に記載するように、挿入具のツマミに力を加えたときに)。
【0021】
一態様において、分離マージンは、第1長手方向半分141の壁にある、溝(groove)150の形態であってもよい(例えば、裂目(fissure)、割目(crevice)、切込み線、くぼみ)。溝150は、任意の所望の形状であってよい(V字型、U字型、長方形、正方形など)。
図2では、第1長手方向半分141の外壁にある、V字型の溝150が描かれている。
【0022】
管状部分の壁における深さに関連して、溝を説明することができる。例えば、いくつかの実施形態において、溝の深さは、当該溝が存在する壁の厚さの約10%以上であってもよい。いくつかの実施形態において、溝の深さは、壁の厚さの約10%~約75%であってもよいし、壁の厚さの約20%~約60%であってもよい。溝の深さは、例えば、約0.025mm~約1mm、約0.05mm~約0.25mm、または約0.05mm~約0.15mmである。例えば、壁の厚さが約0.5mmである場合、溝の深さは約0.05mm~約0.375mmであってよい。あるいは、壁の厚さが約0.075mmである場合、溝の深さは約0.025mm~約0.070mmであってよい。望ましい溝の深さは、壁の厚さ、管状部分の製造に使われている材料、溝の形状、またはこれらの組み合わせによって決定されうる。
【0023】
他の態様において、分離マージンは、管状部分の壁にある構造上の弱所である。この弱所は、管状部分材料の違いに起因するものでありうる。あるいは、この弱所は、分離マージンの材料と管状部材の他の部分の材料とを比較した際の、物性の違いに起因するものでもありうる(例えば、分子配向)。このような弱所は、製法によって管状部材に導入することができる(押出製法など)。押出製法では、管状部材の製造に用いられるポリマー組成物を延伸することによって、分離マージンに沿って構造上の弱所を形成させることができる。延伸は、押出前に行ってもよいし、押出中に行ってもよいし、押出後に行ってもよいし、またはこれらの組み合わせであってもよい。延伸によって、ポリマー分子を、分離マージンに沿って同軸上に配列させることができる。これによって、ポリマー分子の配向に対して垂直方向に力が加わった際に、分離マージンは管状部材の弱所となりうる。
【0024】
分離マージンは、第1長手方向半分141に沿って連続していてもよいし(すなわち、管状部分の近位端から遠位端に及んでいてもよいし)、不連続であってもよい。分離マージンが第1長手方向半分141に沿って不連続であるならば、分離マージンは、溝のない中断箇所をほとんど有さないことが好ましい。このようにすれば、管状部材を、第1長手方向半分141の中で分割することができる。さらに、分離マージンは、第1長手方向半分141において直線状に分布していてもよいし、全長にわたって直線状でなくてもよい(例えば、分離マージンは、1つ以上の曲線、角度などを有していてもよい)。
【0025】
第1長手方向半分141に沿った分離マージンに加えて、管状部分は、任意構成で、1つ以上のさらなる溝を有していてもよい。このさらなる溝は、第1長手方向半分141にあってもよいし、第2長手方向半分143にあってもよいし、両方にあってもよい。管状部材が1つ以上の他の溝(例えば、第2の溝、第3の溝など)を有している場合、この溝は、分離マージンとして機能してもよいし、機能しなくてもよい。例えば、管状部分は、第2長手方向半分143にある溝152を有していてもよい(第1長手方向半分141にある溝150の反対側に位置しているものなど)。
【0026】
管状部材に力を加えたとき、溝150が破壊され、第1長手方向半分141に分割部を生じさせてもよい(例えば、バルーンカテーテルシャフトと、溝150に隣接している管状部材の内表面との間の力によって)。しかし、この力によっては、溝152に隣接している管状壁は、全く破壊されなくてもよい(そのような溝が存在するならば)。それゆえ、第2長手方向半分143は、カテーテルシャフトから挿入具を除去する際に、無傷のままであってもよい。管状部材中に、互いに対向するように1組の溝を形成することによって、管状部材を容易に製造することができる。
【0027】
図3を参照する。挿入具の実施形態には、管状部分の近位端および/または遠位端が真っ直ぐなものと、管状部分の近位端および/または遠位端が真っ直ぐでないものと、が含まれる。管状部材212の遠位端216が真っ直ぐ(平坦)である、挿入具200。管状部材212の末端214は、テーパ状の末端として描かれている(管状部分のテーパは、第1長手方向半分241から第2長手方向半分243に及んでいる)。真っ直ぐでない構造の例としては、テーパ構造およびフレア構造が挙げられる。挿入具がテーパ構造の末端316を有している実施形態が、
図4に描かれている。この構造は、管状物品の遠位端をある角度で切断することによって形成できる。末端がテーパ構造かつフレア構造の末端416である例が、
図5Aに示されている。同図は、挿入具の末端部の上面図であり、第1長手方向半分441および分離マージン452が示され、末端416はフレア状に広がっている。このフレアにより、管状部分の末端が広くなる。このことは、点425aおよび点425bの間の幅が、末端416に隣接している管状部分の幅(外径)よりも広いことに反映されている。
【0028】
フレア状の近位端開口部を備えている挿入具ならば、バルーンを末端から容易に挿入することができる。また、上記構成は、バルーンの表面から治療剤が除去されることを、最小限にとどめるか、または防止することができる(そうでない場合、摩擦力により除去されてしまうおそれがある)。遠位端開口部をフレア状にすることにより、薬物を掻き落としてしまうことなく、バルーン上で挿入具を前進させることができる。
【0029】
本開示の実施形態には、管状部分の壁がテーパ状になっているものも含まれる。例えば、
図5Bを参照。同図は、管状部分455の断面の一部を示す図であり、壁460は末端がテーパ状になっている。
【0030】
本開示の実施形態には、管状部材の近位端にツマミを備えている挿入具も含まれる。このツマミは、管状部分の第2長手方向半分から延在する部分を有している。また、ツマミ部分は、管状部分の長手軸に対して、ある角度で斜交している。管状部分の第2長手方向半分から延在する部分を有しており、長手軸に対して斜交しているツマミの例は、
図1(120)、
図3(220)、
図6A(320)、
図6B(420)、
図6C(520)、
図6D(620)、および
図7(720)に示されている。
【0031】
実施形態において、ツマミは湾曲形状であってもよい(挿入具の近位端部分の側面図である
図1、3、6Aおよび6Bに示されているように)。
図6Aを参照する。321は、管状部材の長手軸(破線LA)に対して斜交しているツマミの部分を表している(破線SAは斜交軸を表す)。湾曲形状のツマミに関しては、当該ツマミの複数の部分が、管状部材の長手軸に対して斜交しうることが理解されよう。
【0032】
湾曲ツマミは、種々の方法により説明できる(例えば、ツマミの湾曲部分の長さによって)。この長さは、例えば、
図3においては点225から点227で表されうる。また、
図6Aにおいては、点325から点327で表されうる。さらに、
図6Bにおいては、点425から点427で表されうる。ツマミの長さは、例えば、約5mm~約100mm、または約20mm~約40mmである。
【0033】
湾曲の程度によって、湾曲ツマミを説明することもできる(度(°)で表現する)。例えば、
図3におけるツマミの湾曲は約360°である。また、
図6Aにおけるツマミの湾曲は約270°である。さらに、
図6Bにおけるツマミの湾曲は約180°である。湾曲は、例えば、約15°~約540°または約30°~約360°であり、好ましくは約45°~約270°である。
【0034】
半径によって湾曲ツマミを説明することもできる。例えば、
図6Aにおいて、ツマミの半径は線328で表されている。湾曲ツマミの半径は、当該ツマミの全長にわたって同じであってもよいし、変化してもよい。いくつかの実施形態において、ツマミの半径は減少しうる。この減少幅は、例えば、最初の半径の約50%以下であってもよいし、最初の半径の約25%以下であってもよい(最初の半径とは、例えば、点235における半径または点235に隣接する地点における半径である)。湾曲ツマミの半径は、例えば、約1mm~約20mm、または約3mm~約10mmである。
【0035】
図6C、6Dに描かれている本開示の実施形態において、挿入具の長手方向断面などから見たときに、ツマミは1つ以上の非湾曲部(例えば、直線部)を有していてもよい。このことは、ツマミ部分520、620として表されている。
【0036】
本開示の実施形態には、管状部分の第2長手方向半分から延在する第2部分を、ツマミが有しているものも含まれる。ここで、第2ツマミ部分は、管状部分の長手軸に対して平行である。
図7は、第1部分720および第2部分730を有しているツマミを描いている。第1部分720(すなわち、湾曲部分)は、管状部分の長手軸に対して、ある角度で斜交している。第2部分730(すなわち、平坦部分)は、管状部分の長手軸に対して平行である。したがって、第2部分730は、管状部材の長手軸に対して垂直な幅方向軸(例えば、破線714)と、管状部材の長手軸に平行な長手方向軸と、を有している。一方、第1部分720は、管状部材の長手軸に対して垂直な幅方向軸と、管状部材の長手軸に対して斜交している長手方向軸と、を有している。
【0037】
さらに、管状部分の近位端に直接隣接しているツマミの態様を説明することができる。例えば、ツマミは、湾曲した遠位部725を有していてもよい(この遠位部は、管状部分の近位端の第2長手方向半分の湾曲部から延在している)。ツマミが近位方向に伸びるにつれて、湾曲形状を(幅方向に)平坦にすることができる。また、ツマミが近位方向に伸びるにつれて、当該ツマミの幅を、管状部材の近位端に隣接している部分の狭い幅から、より広くすることができる。したがって、遠位側から近位側に向けて、ツマミの幅を増加させることができる。例示的な実施形態において、ツマミの幅は、約0.5mm~約30mm、または約2mm~約3.5mmである。管状部材の近位端において、第1長手方向半分に切欠き735を設けてもよい。
【0038】
図8は、第1部分750および第2部分760を有しているをツマミ示す、他の実施形態の図である。第1部分750(すなわち、湾曲部分)は、管状部分の長手軸に対して、ある角度で斜交していてもよい。第2部分760(すなわち、平坦部分)は、管状部分の長手軸に対して平行であってもよい。
図8はまた、管状部分の近位端764と第2部分760(すなわち、平坦部分)との間に、テーパ状の遷移部分765を設けてもよいことを示している。
【0039】
管状部分の第2長手方向半分から延在しており、当該管状部分の長手軸に対してある角度で斜交しうる部分を有しているツマミは、管状部材の真っ直ぐな末端を加工することによって形成できる。例えば、以下の工程によってツマミを形成することができる。(a)近位端および遠位端が真っ直ぐなチューブを用意する。(b)チューブの長手軸を通り、当該長手軸に対して垂直である、部分的な切れ目を入れる。切れ目を入れる距離は、チューブを通る距離の半分以上とする。(c)チューブの近位端と切れ目との間に、第2の切断を施す。この切断は、切れ目の底部と交わる角度にて行う。これによって、チューブの上半分に楔形の切断部が形成される。切断部の近位端を、少なくとも部分的に平坦にする(例えば、熱成形によって)。
【0040】
他の実施形態において、挿入具は、管状部分の第1半分の壁にある分割部を有していてもよい。この実施形態においては、挿入プロセスの間、上記の構成を有する管状部材の内径の中にバルーンカテーテルを保持することができる。挿入具によって止血弁を通じたバルーンカテーテルの挿入を容易にした後、管状部分を近位方向に移動させて、管状部分がバルーンカテーテルシャフトの一部を囲むようにさせることができる。次に、ツマミに力を加えて、管状部分の内径から飛び出すカテーテルシャフトの動きに対して、管状部分の第1半分を開かせることができる。具体的には、ツマミに加えられた力によって、分割部の両側の管状部分の壁を分離させることができる。これによって、長手方向の間隙が生じ、カテーテルシャフトはその中を移動できる。
【0041】
管状部分の第1半分841の壁に分割部を有している挿入具の例示的な実施形態を、
図9に示す。同図は、遠位端から見た管状部分の断面である。壁の第1半分にある分割部によって、第1縁部802および第2縁部804が生じうる。これらの縁部は、管状部分の全長にわたって延在している。第1縁部802と隣接している外壁上の点は、管状部材の第1半分の内壁上の点805と接触していてもよい。したがって、近位端から見たときに、第1半分は、壁の内側重なり806と、壁の外側重なり808と、を有していてもよい。
【0042】
第1縁部802と点805との間の円周方向の距離は、選択したバルーンカテーテルを収容するのに充分な大きさの内径を形成するものであってよい。これらの実施形態において、管状部分の外径は、例えば、約0.45mm~約10mm、または約1.5mm~約5mmでありうる。また、管状部分の内径は、0.25mm~5mm、または約1mm~約4mmでありうる。壁の外側重なり808(縁部804と点805との間)の寸法/長さは、例えば、挿入具の他の部分との関係で説明することができる。例えば、804~805の長さは、802~805の円周より短くてもよい。あるいは、上記の長さは、上記の円周の約5%~約半分であってもよい(802~805の約5%~50%)。
【0043】
壁の外側重なり808の内表面(つまり、縁部804の隣接部)と、壁の内側重なり806の外表面における隣接点811との間に、間隙809を設けてもよい。間隙809の距離は、壁の厚さの数分の1から、壁の厚さの数倍まででありうる。この距離は、例えば、約0mm(間隙なし)~約0.5mmである。
【0044】
図10は、管状部分の第1半分の壁にある分割部と、近位端にあるツマミ920と、を有している挿入具900の、近位部の斜視図である。このツマミ920は、凹面を有している中実の物体の形態であり、管状部分の第2長手方向半分の外表面に取付けられている(例えば、固定または固着されている)ツマミ920である。壁の内側重なり906および壁の外側重なり908が、管状部分の第1半分に見える。管状部分の近位端からツマミ925の遠位端までの距離(つまり、取付け長さ923)は、約5mm~約25mmでありうる。ツマミ920は、2つ以上の近位延長部を有していてよい(例えば、近位延長部927a、927b)。近位延長部は、比較的平坦な形状をしていてもよい。延長部は、ツマミの中央付近からツマミの近位端にかけて(すなわち、長手方向)、幅が狭まっていてもよい。さらに、延長部の厚さ(すなわち、半径方向)は、ツマミの中央付近の厚さの方がツマミの近位端の厚さよりも大きくてもよい。
【0045】
図11は、凹面を有している中実の物体であり、管状部分の第2長手方向半分の外表面に固定されうるツマミ970の、実施形態を示す断面である(近位端から見ている)。ツマミ970の凹面975が示されている。凹面975は、半円形であってもよい。この半円形の内径は、管状部分の近位端の第2半分の外径に対応している。管状部分の近位端の第2半分の外径を、適切な取付け材料または取付け部材(接着剤など)を介して、ツマミ970の凹面975に取付けることができる。
【0046】
図11はまた、近位端から見たときに、ツマミ970の外表面980が湾曲していてもよいことを示している(例えば、部分的に円形であってもよい)。度(°)で定義される所望の距離だけ、外表面を延在させることができる。この距離は、例えば面981と面983の間で測定したときに、約45°~約300°、または約180°~約270°などである。面981と面983との間の開口O(または間隙)も、定義できる。開口Oは、約60°~約315°、または約90°~約180°でありうる。中実の物体であるツマミ(例えば、920、970)は、内表面と外表面との間(例えば、凹面975と外表面980との間)の厚さによっても定義できる。この厚さは、例えば、約0.5mm~約5mm、または約1mm~約2mmである。製造の一態様においては、凹面975と管状部分の第2長手方向半分(すなわち、壁に分割部を有している第1長手方向半分の反対側)の外表面との間に、接着剤を塗布する。このことによって、中実の物体であるツマミ970を管状部分に取付ける。
【0047】
図12を参照する。他の実施形態に係る挿入具は、当該挿入具の近位端に、2つの湾曲ツマミを備えている。挿入具1000は、管状部分1012の遠位端1016が真っ直ぐ(平坦)であるものとして示されている。しかしその代わりに、遠位端はテーパ状であってもよい(本開示の他の実施形態の挿入具における、テーパ状構造など)。管状部分1012は、遠位端1016から点1041まで、所定の距離(L1)だけ延在していてもよい(点1041において、ツマミ1020、1030が始まる)。点1041は、管状部材にある分割部に位置していてもよい。点1041において、管状部材の半分が第1ツマミ1020を形成してもよく、管状部材のもう半分が第2ツマミ1030を形成してもよい。同図に示されているように、ツマミ1020、1030は、湾曲していてもよい。ツマミ1020、1030は、それぞれ、近位端1027、1037にて終了していてもよい。
【0048】
ツマミ1020、1030は、任意の曲線経路に従いうる(円形の経路、楕円形の経路など)。ツマミ1020、1030は、湾曲の程度によっても説明することができる(度(°)で表現される)。例えば
図12において、ツマミ1020、1030の湾曲は約90°である。ツマミは、例えば、約45°~約270°、または約45°~約180°である。湾曲ツマミ1020、1030は、半径によっても説明することができる。例えば、ツマミ1020の半径は、線1028で表される。ツマミ1020の半径は、ツマミ1030の半径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。湾曲ツマミの半径は、当該ツマミの全長にわたって同じでもよいし、変化してもよい。本実施形態において、湾曲ツマミの半径は、例えば、約5mm~約35mm、または約10mm~約30mmである。
【0049】
挿入具1000は、管状部分1012と、ツマミ1020および1030の一方または両方の、長さに関連して説明することもできる。実施形態において、管状部分1012の長さL1は、ツマミ1020および1030の一方または両方の長さL2よりも長い。好ましくは、管状部分1012の長さL1は、ツマミ1020および1030の一方または両方の長さL2よりも、2倍以上または3倍以上長い。管状部分1012の長さL1は、例えば、約25mm~約150mm、または約75mm~約125mmである。
【0050】
図13に係る構造を有している管状部分を利用して、
図12の挿入具1000を製造することができる。
図13の管状部分は、
図2のものと類似しているか、同じである(遠位端から見たときの管状部分を描いている)。管状部分は、半円形の半分である第1長手方向半分1141(左)と、半円形の半分である第2長手方向半分1143(右)と、を有していてもよい。第1長手方向半分および第2長手方向半分は、近位端と遠位端との間において、管状部分1012の全長にわたって延在していることが理解されよう。第1長手方向半分および第2長手方向半分は、第1分離マージン1150(例えば、V字型の溝)および第2分離マージン1152(例えば、他のV字型の溝)によって規定される。ツマミ1020、1030は、第1長手方向半分1141および第2長手方向半分1143の延長部として形成される。これらの延長部は、点1041において分割され、管状部分1012の中心軸から離れる角度を成すように構成されている(例えば、図示されているような湾曲構造として)。
図13はまた、管状部分の外表面1130および内表面1132をも示している。
【0051】
挿入具のいくつかの実施形態において、第1分離マージン1150および第2分離マージン1152は、管状部分1012にある構造上の弱所であってもよい。この弱所は、管状部分の材料の違いを表していてもよいし、分離マージンにおける材料の物性の違い(例えば、分子配向)を表していてもよい。いくつかの実施形態においては、製法によって管状部材に弱所を導入することができる。非限定的な例としては、押出製法によって、管状部分における構造上の弱所を意図的に導入することができる。押出製法では、管状部材の製造に用いられるポリマー組成物を延伸することによって、分離マージンに沿った構造上の弱所を導入することができる。延伸は、押出前に行ってもよいし、押出中に行ってもよいし、押出後に行ってもよいし、またはこれらの組み合わせであってもよい。延伸によって、ポリマー分子を、分離マージンに沿って同軸上に配列させることができる。これによって、ポリマー分子の配向に対して垂直方向に力が加わった際に、分離マージンは管状部材の弱所となりうる。また、この分離マージンによって、点1041において自然に分割される。
【0052】
挿入具1000に力が加わると、第1長手方向半分1141と第2長手方向半分1143とが分離することができる。例えば、ユーザは、ツマミ1020、1030を外側に、管状部分1012の中心軸から離れるように引っ張ることができる。そうすると今度は、第1分離マージン1150および第2分離マージン1152に沿って、管状部分1012が破壊されうる。
【0053】
図12の実施形態には、全長、外径、内径または壁の厚さに関して本明細書に記載されている、任意の寸法が含まれうる。上記実施形態には、本明細書に記載の任意のチューブ構造が含まれうる(遠位端の構造など)。上記実施形態は、本明細書に記載の任意の材料から形成されてよく、また任意の製法で形成されてよい。上記実施形態は、本明細書に記載の(または本技術分野で公知の)任意のバルーンカテーテルまたは止血弁と併せて使用することができる。
【0054】
押出、3Dプリンティング、射出成形、圧縮成形、微粒子浸出(particulate leaching)、溶媒キャスティング(solvent casting)、熱成形または切断などの技術によって、管状部分および/またはツマミを形成することができる。製造技術を組み合わせて用いてもよい。挿入具の特徴点(分離マージン、ツマミなど)は、押出や成形などの間に形成してもよいし、その後に形成してもよい。挿入具の一部または全部を製造するときに用いうる材料の例としては、ポリマー系材料が挙げられる。ポリマー系材料とは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン(HDPEおよびLDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;テフロン(登録商標))、ポリウレタン、PEBAX、ポリエステルアミド、ポリイミド、ポリエステルおよびポリアミド(ナイロン)などである。
【0055】
挿入具の一部(管状部分など)を製造するときに用いる材料自体が、透明で紫外線を透過するものであってもよい。種々の脂肪族高分子(ハロゲン化脂肪族高分子も含む)は、紫外線をよく透過させることができる。いくつかの実施形態においては、挿入具の管状部材の内表面(内径)に、コーティング組成物を塗布してもよい(本明細書に記載の紫外線活性化架橋剤など)。そして、管状部材に紫外線を照射し、架橋剤を活性化させて、耐久性コーティングを形成させてもよい(紫外線は管状部材の材料を透過する)。
【0056】
挿入具とバルーンカテーテル挿入システムの他の部分(バルーンカテーテルおよび/または止血弁など)とを、視覚的または検出可能に区別できるように、挿入具の一部または全部を製造してもよい。バルーンカテーテル挿入システムの部品を、同じような材料から製造してもよい。この場合、システムの部品を共に用いたときに、システムの部品の1つ以上に検出用の材料を用いなければ、当該部品の一部が互いに区別しにくくなるおそれがある。検出用の材料は、例えば、着色剤、光を反射する材料(例えば、挿入具の不透明度を上げる)、放射線不透過性の材料、常磁性材料、気相の材料または放射性同位体材料でありうる。
【0057】
例えば、挿入具および/またはバルーンカテーテルの全長うち、1つ以上の部分に着色剤または造影剤を与えてもよい。着色剤または造影剤によって、患者に対するバルーンカテーテルの挿入の進捗を、容易にモニタリングすることができる。着色剤または造影剤によって、臨床家に対する視覚的な手掛かりが与えられうる。この手掛かりは、挿入具の部分とバルーンカテーテルの部分との間の、空間的な関係を示すものである。デバイスの部分を視覚的に決定できると、挿入プロセスが改善されうる。
【0058】
着色剤または造影剤は、挿入具および/またはバルーンカテーテルの製造に使われているポリマー材料の表面に用いてもよいし、材料中に含ませてもよい。挿入具および/またはバルーンカテーテルの表面に任意構成で塗布される、潤滑性のコーティング材料(ヒドロゲルポリマーコーティングなど)の中に、着色剤を含ませてもよい。
【0059】
着色剤の例としては、FD&CレーキおよびD&Cレーキ、二酸化チタン、炭酸マグネシウム、タルク、焼成シリカ、酸化鉄、チャンネルブラック、不溶性染料、天然着色料(リボフラビン、カルミン40、クルクミンおよびアナトーなど)、連邦医薬品局により摂取が許可されている染料、またはこれらの任意の組み合わせ、が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。錠剤、食品、菓子製造、農業用種子などのコーティングに用いられるコーティング分散液の調製に使用される着色剤も、本開示の物品に関連して使用することができる。
【0060】
挿入具、バルーンカテーテル、または挿入具およびカテーテルと組み合わせて使用しうる他の任意の部品の1箇所以上に、着色剤または造影剤を存在させてもよい。これによって、カテーテルを体内に容易に進入させられる。例えば、
図17を参照。同図では、バルーン部分1523が、挿入具の管状部分1512の内部に位置した状態で示されている。第1カテーテル標識1536および第2カテーテル標識1533は、カテーテル本体1522の長さ方向に沿った点に位置しており、挿入プロセスの間、ユーザに視認されうる。カテーテル本体に沿った標識は、それ自体はユーザが見ることのできない場合があるカテーテルの部分(例えば、バルーン部分1523上の点)と、位置的に対応していてもよい。例えば、第2カテーテル標識1533と挿入具の近位端1514との距離は、バルーンカテーテル1525の遠位側の先端と挿入具の遠位端1516との距離と、対応していてもよい。挿入具の近位端1514に対する第2カテーテル標識1533の位置をモニタリングすることによって、挿入プロセスの間、遠位側の先端1525がいつ遠位端1516から飛び出したかを、ユーザは理解することができる。同様に、第1カテーテル標識1536と遠位端1516(または第2カテーテル標識1533)との距離によって、バルーンカテーテルの挿入中に、バルーン部分の遠位端1526の位置を、ユーザは理解することができる。
【0061】
図18を参照する。挿入具の管状部材1612の外表面に、標識を設けてもよい。この標識は、挿入具1612が通過している止血弁1603の位置に対する、挿入具の遠位端(不図示)の位置決めを理解するのに役立ちうる。例えば、使用中に、止血弁1603を通過している挿入具1612が、標識1624にまで到達する。このことが、挿入具の遠位端が止血弁の遠位端に到達したことを示してもよい。これに引き続いて、バルーンカテーテルの本体1622を前進させて、患者の体内へとバルーンカテーテルを移動させることができる。
【0062】
挿入具の標識の代わりに(または挿入具の標識に加えて)、挿入具の管状部材は、当該管状部材の表面から半径方向外側に延在している、停止部材(不図示)を備えていてもよい。停止部材が止血弁の近位端1605の部分に到達することによって、挿入具が止血弁を通ってさらに遠位方向に移動することが、効果的に防止される。停止部材は、管状部材の外表面から隆起している円周状のリップまたは隆起の形態であってもよいし、止血弁の近位部に接触することができる他の任意の構造であってもよい。挿入具の製造に利用される押出製法の一部として、停止部材を形成してもよい。あるいは、管状部材が形成された後に、管状部材に停止部材を付け加えてもよい(例えば、管状部材の外表面の所望の位置に、プラスチック製リングを接着することによって)。
【0063】
本開示の実施形態において、任意の挿入具/物品の任意の部分(または、本開示のカテーテルの任意の部分)は、コーティングを施されていてもよい(親水性の潤滑コーティングなど)。例えば、親水性ポリマー系のコーティングを、挿入具/物品の部分(または、カテーテルの任意の部分)に適用することができる。これにより、潤滑性を与え、望ましい物質の損失を抑制する(例えば、バルーンの表面からの治療剤の損失)。他の実施形態において、任意の挿入具/物品の任意の部分(または、本開示のカテーテルの任意の部分)は、低摩擦物品と関連していてもよい(テフロン(登録商標)製スリーブなど)。いくつかの実施形態において、挿入具の管状部材の内径の全部または一部は、親水性コーティングで被覆されているか、潤滑性の低摩擦スリーブで裏打ちされている(例えば、PTFEおよびPTFEライナー)。いくつかの実施形態において、バルーンカテーテルの外表面の全部または一部は、親水性コーティングで被覆されているか、潤滑性の低摩擦スリーブで被覆されている。潤滑性の低摩擦コーティングを与える他の材料としては、シリコーン油、パーフルオロ化油およびワックスが挙げられる(任意構成で共有結合を有しており、これにより、さらに摩擦が低減される)。
【0064】
親水性ベースコーティングを形成するためのポリマー材料として有用な親水性ポリマーの一群として、合成親水性ポリマーが挙げられる。生体安定性の合成親水性ポリマー(すなわち、in vivoにおいて感知できるほどに分解しない合成親水性ポリマー)は、任意の適切なモノマーから調製できる(アクリルモノマー、ビニルモノマー、エーテルモノマー、またはこれらのモノマーのいずれか1種類以上の組み合わせなど)。アクリルモノマーとしては、例えば、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド(DMA)、およびこれらの誘導体および/または混合物が挙げられる。ビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、およびこれらのいずれかの誘導体が挙げられる。エーテルモノマーとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびこれらのいずれかの誘導体が挙げられる。これらの単量体から形成されうるポリマーの例としては、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、およびポリ(HEMA)が挙げられる。メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体およびビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミド共重合体が挙げられる。ホモポリマーおよび/または共重合体の混合物を使用してもよい。
【0065】
いくつかのアクリルアミド系ポリマーの例が、米国特許第7,807,750号(Taton et al.)の実施例2に記載されている(ポリ(N,Nジメチルアクリルアミド-コ-アミノプロピルメタクリルアミド)、およびポリ(アクリルアミド-コ-N,Nジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)など)。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本開示において利用できる他の親水性ポリマーには、光反応性基を有しているアクリルアミドポリマーの誘導体がある。このような親水性ポリマーの代表例の一つに、N-[3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミド(式I)とN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド(式II)との共重合体がある。この共重合によって、ポリ(N-3-アミノプロピル)メタクリルアミド-コ-N-[3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミド(式III)ポリマーが合成される。このポリマーの調製方法は、米国特許公開第2007/0032882号(Lodhi et al.)の実施例1に開示されている。その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
【0068】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、ビニルピロリドンポリマーであってもよいし、ビニルピロリドン/(メタ)アクリルアミド共重合体であってもよい(ポリ(ビニルピロリドン-コ-メタクリルアミド)など)。PVP共重合体を使用する場合、当該PVP共重合体は、(i)ビニルピロリドンと、(ii)アクリルアミドモノマーの群から選択されるモノマーと、の共重合体でありうる。アクリルアミドモノマーの例としては、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体の例としては、アルキル(メタ)アクリルアミド(ジメチルアクリルアミドなど)、およびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(アミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなど)が挙げられる。例えば、ポリ(ビニルピロリドン-コ-N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)は、米国特許第7,807,750号(Taton et al.)の実施例2に記載されている。
【0069】
一実施形態において、上述のポリマーおよび共重合体は、1つ以上の光により活性化されうる基によって誘導体化されている。生体安定性の親水性ポリマーのペンダント基でありうる光反応性基の例としては、アリールケトンが挙げられる(アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、キノン、およびアントロン様複素環など)。本明細書において、アリールケトンとしては、具体的にはジアリールケトンを挙げられる。本明細書におけるポリマーによって、活性化されうる光反応性のペンダント基を有している、親水性ポリマーを提供することができる。この光反応性基は、拡張可能な構造および折り畳み可能な構造に適用できる。つまり、この光反応性基を活性化させるのに充分な化学線で処理して、標的(拡張可能な構造および折り畳み可能な構造の材料など)との間に共有結合を形成させることができる。光反応性の親水性ポリマーを使用することによって、可撓性ヒドロゲルマトリクスの耐久性コーティングが提供されうる。このマトリクスは、拡張可能な構造および折り畳み可能な構造の材料と共有結合した親水性ポリマー物質を含んでいる。
【0070】
光反応性のペンダント基を有している親水性ポリマーを使用して、可撓性ヒドロゲルコーティングを調製することができる。光反応性基を有する親水性ポリマーを調製する方法は、当該分野で公知である。例えば、光反応性PVPの調製方法は、米国特許第5,414,075号(Swan et al.)に記載されている(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。親水性の光反応性ポリアクリルアミドポリマー(「光反応性PA」ことポリ(アクリルアミド-コ-N-(3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル)メタシルアミド)およびその誘導体など)を使用して、本開示の例示的な実施形態における物品上に、親水性ベースコーティングを形成することができる。光反応性ポリアクリルアミドの調製方法は、米国特許第6,007,833号(Chudzik et al.)に記載されている(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0071】
親水性ベースコーティングの他の実施形態として、さらなる反応性部分を有している光反応性ポリアクリルアミドポリマーの誘導体が挙げられる。反応性部分のいくつかの例としては、N-オキシスクシンイミドおよびグリシジルメタクリレートが挙げられる。さらなる反応性部分を有している光反応性ポリアクリルアミド誘導体の代表例としては、ポリ(アクリルアミド-コ-マレイン酸-6-アミノカプロン酸-N-オキシスクシンイミド-コ-N-(3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル)メタクリルアミド)、およびポリ(アクリルアミド-コ-(3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル)メタクリルアミド)-コ-グリシジルメタクリル酸が挙げられる。さらなる反応性部分を有している光反応性ポリアクリルアミドポリマーは、米国特許第6,465,178号(Chappa et al.)、第6,762,019号(Swan et al.)および第7,309,593号(Ofstead et al.)に記載されている。これらの開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0072】
例示的な親水性ベースコーティングの他の実施形態(さらなる反応性部分を有している光反応性ポリアクリルアミドポリマーの誘導体など)が、米国特許第6,514,734号(Clapper et al.)に開示されている。その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
さらに他の実施形態において、親水性ベースコーティングは、荷電部分を有している光反応性ポリアクリルアミドポリマーの誘導体を含んでいてもよい。荷電部分は、正の荷電種と、負の荷電種との両方を含んでいる。荷電種の例としては、スルホナート、ホスファートおよび第四級アミン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例においては、負の荷電種であるN-アセチル化ポリ(アクリルアミド-コ-ナトリウム-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホナート-コ-N-(3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル)メタクリルアミド)-コ-メトキシポリ(エチレングリコール)モノメタクリレートが含まれている。親水性ベースコーティングに含まれていてもよい他の負の荷電種は、米国特許第4,973,493号(Guire et al.)に記載されている。その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。正の荷電種としては、ポリ(アクリルアミド-コ-N-(3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル)メタクリルアミド)-コ-(3-(メタクリロイルアミノ)プロピル)トリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。親水性ベースコーティングに含まれていてもよい他の正の荷電種は、米国特許第5,858,653号(Duran et al.)に記載されている。その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
他の一実施形態において、上述のポリマーおよび共重合体は、1つ以上の重合性基で誘導体化されている。重合性のペンダント基を有しているポリマーは、一般にマクロマーと称される。重合性基は、ポリマー鎖の末端部分(末端)に存在していてもよいし、ポリマーの全長にわたって存在していてもよい。一実施形態において、重合性基は、ポリマーの全長にわたってランダムに位置している。
【0075】
例示的な親水性ポリマーコーティングは、ポリマーグラフト技術を用いて調製することができる。ポリマーグラフト技術としては、例えば、非重合性のグラフト化剤およびモノマーを基材表面に塗布した後、上記グラフト化剤を適宜活性化させることによって(限定されないが、UV照射など)、基材表面上で当該モノマーを重合させることが挙げられる。親水性ポリマー製の表面を作製するグラフト方法は、米国特許第7,348,055号、第7,736,689号および第8,039,524号(すべてChappa et al.)に例示されている。それらの全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
あるいは、コーティング組成物は、米国特許第7,807,750号(Taton et al.)に記載されているような、熱反応性ポリマー(例えば、熱反応性の過酸化物ペンダント基を有している親水性ポリマー)を含んでいてもよい。例示的な実施形態においては、熱反応性ポリマーを含んでいるコーティング組成物を管状部材の内表面(内径)に塗布し、加熱して、活性化されたペンダント基を管状部材の材料と化学反応させ、ポリマーを結合させる。
【0077】
任意構成で、本開示の物品のコーティングは、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤は、コーティング中のポリマーの会合や、コーティングされた表面へのポリマーの結合を促進することができる。具体的な架橋剤の選択は、コーティング組成物の成分に依存しうる。
【0078】
好適な架橋剤は、組成物中のポリマーと反応することができる、2つ以上の活性化可能な基を有していてもよい。好適な活性化可能な基としては、本明細書中に記載のアリールケトンのような、光反応性基が挙げられる(アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、キノン、およびアントロン様複素環など)。光反応性基を含む架橋剤は、「光架橋剤」または「光活性化可能な架橋剤」と称されることがある。光活性化可能な架橋剤は、イオン性であり、水性組成物中で良好な溶解性を示してもよい。したがって、いくつかの実施形態においては、イオン性の光活性化可能な架橋剤の1種類以上を使用して、コーティングを形成させることができる。イオン性架橋剤としては、酸性基またはそれらの塩が挙げられる(例えば、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、およびそれらの塩などから選択される)。例示的な対イオンとしては、アルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウム、プロトン化アミンなどが挙げられる。
【0079】
イオン性の光活性化可能な架橋剤の例としては、4,5-ビス(4-ベンゾイルフェニル-メチレンオキシ)ベンゼン-1,3-ジスルホン酸または塩、2,5-ビス(4-ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン-1,4-ジスルホン酸または塩、2,5-ビス(4-ベンゾイルメチレンオキシ)ベンゼン-1-スルホン酸または塩、N,N-ビス[2-(4-ベンゾイルベンジルオキシ)エチル-2-アミノエタンスルホン酸または塩などが挙げられる。米国特許第6,077,698号(Swan et al.)、第6,278,018号(Swan)、第6,603,040号(Swan)および第7,138,541号(Swan)を参照。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
イオン性の光活性化可能な架橋剤の他の例としては、エチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)ジブロミド、およびヘキサメチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)ジブロミドなどが挙げられる。米国特許第5,714,360号(Swan et al.)を参照。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
さらに他の実施形態においては、光活性化可能な架橋基を有している、制限された複数の官能基を有する試薬を使用することができる。これらの制限された複数の官能基を有する試薬のいくつかの例としては、ペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエーテル)およびペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンゾエートエステル)が挙げられる。米国特許第5,414,075号(Swan et al.)および第5,637,460号(Swan et al.)を参照。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
さらなる架橋剤としては、式「Photo1-LG-Photo2」を有している架橋剤が挙げられる。上記式中、Photo1およびPhoto2は、独立に、1つ以上の光反応性基を表す。LGは、1個以上のケイ素原子または1個以上のリン原子を有している、リンカー基を表す。このとき、分解性のリンカー剤は、光反応性基とリンカー基との間の共有結合の1つ以上を有している。上記光反応性基とリンカー基との間の1つ以上の共有結合には、1個以上のヘテロ原子が介在している。米国特許第8,889,760号(Kurdyumov et al.)を参照。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。さらなる架橋剤としては、コア分子を有している架橋剤が挙げられる。この架橋剤においては、1つ以上の分解性リンカーを介して、1つ以上の荷電性基および1つ以上の光反応性基がコア分子に共有結合している。米国公開特許第2011/0144373号(Swan et al.)を参照。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
いくつかの実施形態において、第1架橋剤および/または第2架橋剤の分子量は、約1500kDa未満でありうる。いくつかの実施形態において、架橋剤の分子量は、約1200未満、約1100未満、約1000未満、約900未満、約800未満、約700未満、約600未満、約500未満、または約400未満でありうる。
【0084】
いくつかの実施形態において、第1架橋剤および第2架橋剤の1つ以上は、式「Photo1-LG-Photo2」を有するリンカー剤を含んでいる。上記式中、Photo1およびPhoto2は、独立に、1つ以上の光反応性基を表す。LGは、1個以上のケイ素原子または1個以上のリン原子を有しているリンカー基を表す。光反応性基およびリンカー基の1つ以上の間には、共有結合が存在する。上記光反応性基とリンカー基の1つ以上との間の共有結合には、1個以上ヘテロ原子が介在している。
【0085】
いくつかの実施形態において、第1架橋剤および第2架橋剤のうち少なくとも1つは、以下の式(a)~(d)から選択される式で表されるリンカー剤を含んでいる。
【0086】
【0087】
式中、R1、R2、R8およびR9は、任意の置換基であり、
R3、R4、R6およびR7は、アルキル、アリール、またはそれらの組み合わせであり、
R5は、任意の置換基であり、
各Xは、独立に、O、N、Se、Sもしくはアルキル、またはそれらの組み合わせである;
【0088】
【0089】
式中、R1およびR5は、任意の置換基であり、
R2およびR4は、OH以外の任意の置換基であってもよく、
R3は、アルキル、アリール、またはそれらの組み合わせでありってもよく、
Xは、独立に、O、N、Se、Sもしくはアルキレン、またはそれらの組み合わせである;
【0090】
【0091】
式中、R1、R2、R4およびR5は、任意の置換基であり、
R3は、任意の置換基であり、
R6およびR7は、アルキル、アリール、またはそれらの組合せであり、
各Xは、独立に、O、N、Se、S、アルキレン、またはそれらの組合せでありうる;および、
【0092】
【0093】
特定の実施形態において、架橋剤は、ビス(4-ベンゾイルフェニル)ホスファートでありうる。
【0094】
いくつかの実施形態において、光活性化可能な架橋剤は、イオン性であり、水性組成物中で良好な溶解性を示しうる(第1コーティング組成物および/または第2コーティング組成物など)。したがって、いくつかの実施形態においては、イオン性の光活性化可能な架橋剤の1種類以上を使用して、コーティングを形成させる。ある場合において、イオン性の光活性化可能な架橋剤は、第2コーティング層内のポリマーを架橋することができる。これによっても、コーティングの耐久性を改善することができる。
【0095】
任意の適切なイオン性の光活性化可能な架橋剤を使用することができる。いくつかの実施形態において、イオン性の光活性化可能な架橋剤は、式I「X1-Y-X2」で表される化合物である。上記式中、Yはラジカルであり、酸性基、塩基性基、または酸性基もしくは塩基性基の塩の1個以上を有している。X1およびX2は、それぞれ独立に、潜在的な光反応性基を有しているラジカルである。この光反応性基は、本明細書に記載の光反応性基と同じものであってもよい。スペーサーは、潜在的な光反応性基とともに、X1またはX2の一部であってもよい。いくつかの実施形態において、潜在的な光反応性基は、アリールケトンまたはキノンを有している。
【0096】
式I中のラジカルYによって、イオン性の光活性化可能な架橋剤に対して、所望の水溶性が与えられる。室温、最適pHにおいて、水溶性は約0.05mg/mL以上である。いくつかの実施形態において、溶解度は、約0.1~約10mg/mLまたは約1~約5mg/mLである。
【0097】
式Iのいくつかの実施形態において、Yは、1つ以上の酸性基またはその塩を有しているラジカルである。このような光活性化可能な架橋剤は、コーティング組成物のpHによっては、アニオン性でありうる。好適な酸性基の例としては、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸などが挙げられる。これらの基の好適な塩の例としては、スルホン酸塩、カルボン酸塩、およびリン酸塩が挙げられる。いくつかの実施形態において、イオン性架橋剤は、スルホン酸またはスルホン酸塩基を有している。好適な対イオンとしては、アルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウム、プロトン化アミンなどが挙げられる。
【0098】
例えば、式Iの化合物は、スルホン酸またはスルホン酸塩基を有しているラジカルYを含んでいてもよい。X1およびX2は、光反応性基(アリールケトンなど)を有していてもよい。このような化合物としては、4,5-ビス(4-ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン-1,3-ジスルホン酸または塩、2,5-ビス(4-ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン-1,4-ジスルホン酸または塩、2,5-ビス(4-ベンゾイルメチレンオキシ)ベンゼン-1-スルホン酸または塩、N,N-ビス[2-(4-ベンゾイルベンジルオキシ)エチル]-2-アミノエタンスルホン酸または塩などが挙げられる。米国特許第6,278,018号(Swan)を参照。塩の対イオンは、例えば、アンモニウム、またはアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、またはリチウムなど)でありうる。
【0099】
式Iの他の実施形態において、Yは、塩基性基またはその塩を有しているラジカルでありうる。このようなラジカルYとしては、例えば、アンモニウム基、ホスホニウム基、またはスルホニウム基が挙げられる。この基は、コーティング組成物のpHによって、中性であってもよいし、正に荷電していてもよい。いくつかの実施形態において、ラジカルYは、アンモニウム基を有している。好適な対イオンとしては、例えば、カルボン酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、およびリン酸塩が挙げられる。例えば、式Iの化合物は、アンモニウム基を有しているラジカルYを含んでいてもよい。X1およびX2は、アリールケトンを有する光反応性基を有していてもよい。このような光活性化可能な架橋剤としては、エチレンビス(4-ベンゾイルベンジルメチルアンモニウム)塩、ヘキサメチレンビス(4-ベンゾイルベンジルメチルアンモニウム)塩、1,4-ビス(4-ベンゾイルベンジル)-1,4-ジメチルピペラジンジウム塩、ビス(4-ベンゾイルベンジル)ヘキサメチレンテトラミンジウム塩、ビス[2-(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニオ)エチル]-4-ベンゾイルベンジルメチルアンモニウム塩、4,4-ビス(4-ベンゾイルベンジル)モルホリニウム塩、エチレンビス[(2-(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニオ)エチル)-4-ベンゾイルベンジルメチルアンモニウム]塩、および1,1,4,4-テトラキス(4-ベンゾイルベンジル)ピペラジンジウム塩が挙げられる。米国特許第5,714,360号(Swan et al.)を参照。対イオンは、通常は、カルボン酸塩イオンまたはハロゲン化物である。一実施形態において、ハロゲン化物は臭化物である。
【0100】
他の実施形態において、イオン性の光活性化可能な架橋剤は、下記式で表される化合物でありうる。
【0101】
【0102】
上記式中、X1は、第1光反応性基を有しており、
X2は、第2光反応性基を有しており、
Yは、コア分子を含んでおり、
Zは、1つ以上の荷電基を有しており、
D1は、第1分解性リンカーを有しており、
D2は、第2分解性リンカーを有している。
【0103】
さらなる分解性の光活性化可能なイオン性架橋剤の例は、米国特許出願公開第2011/0144373号(Swan et al., "Water Soluble Degradable Crosslinker")に記載されている。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
いくつかの態様においては、非イオン性の光活性化可能な架橋剤を使用することができる。一実施形態において、非イオン性の光活性化可能な架橋剤は、式「XR1R2R3R4」で表される。上記式中、Xは、化学骨格である。R1、R2、R3およびR4は、潜在的光反応性基を有しているラジカルである。例示的な非イオン性架橋剤は、例えば、米国特許第5,414,075号および第5,637,460号(Swan et al., "Restrained Multifunctional Reagent for Surface Modification")に記載されている。第1光反応性基および第2光反応性基、ならびにそれぞれのスペーサーは、化学的に同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0105】
他の実施形態においては、非イオン性の光活性化可能な架橋剤を、式「PG2-LE2-X-LE1-PG1」によって表すことができる。
【0106】
上記式中、PG1およびPG2は、独立に、1つ以上の光反応性基を有しており、
上記光反応性基は、例えば、アリールケトン光反応性基(例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、アントロン様複素環、それらの置換誘導体、またはそれらの組み合わせなどのアリールケトンなどであるが、これらに限定されない)であり、
LE1およびLE2は、独立に、リンカー要素であり(例えば、尿素、カルバマート、またはそれらの組み合わせを有している部分が挙げられる)、
Xは、重合性または非重合性のいずれかでありうるコア分子を表し、
上記コア分子としては、炭化水素が挙げられ(ただし、これには限定されない)、
上記炭化水素の例としては、直鎖、分岐、環状もしくはそれらの組み合わせである炭化水素;芳香族、非芳香族もしくはそれらの組み合わせである炭化水素;単環、多環、炭素環、複素環もしくはそれらの組み合わせである炭化水素;ベンゼンもしくはその誘導体である炭化水素;または、これらの組み合わせである炭化水素、が挙げられる。
【0107】
他の非イオン性架橋剤は、例えば、米国特許公開第2012/0149934号(Kurdyumov, "Photocrosslinker")に記載されている。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
非イオン性の光活性化可能な架橋剤のさらなる実施形態としては、例えば、米国特許公開第2013/0143056号(Swan et al., "Photo-Vinyl Linking Agents")に記載されているものが挙げられる。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的な架橋剤としては、一般式「R1-X-R2」で表される、非イオン性の光活性化可能な架橋剤が挙げられる。上記式中、R1は、ビニル基を有しているラジカルである。Xは、約1~約20個の炭素原子を有しているラジカルである。R2は、光反応性基を有しているラジカルである。
【0109】
1種類または任意の組合せの光活性化可能な架橋剤を、コーティングの形成に使用することができる。いくつかの実施形態において、非イオン性架橋剤の1種類以上(ペンタエリトリトールのテトラキス(4-ベンゾイルベンジルエーテル)など)を、イオン性架橋剤の1種類以上と併せて使用することができる。例えば、非イオン性の光活性化可能な架橋剤の1種類以上を、カチオン性の光活性化可能な架橋剤の1種類以上(エチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)塩など)と併せて使用することができる。あるいは、非イオン性の光活性化可能な架橋剤の1種類以上を、アニオン性の光活性化可能な架橋剤の1種類以上(例えば、4,5-ビス(4-ベンゾイル-フェニルメチレンオキシ)ベンゼン-1,3-ジスルホン酸または塩など)と併せて使用することができる。他の例においては、非イオン性架橋剤の1種類以上を、カチオン性架橋剤の1種類以上およびアニオン性架橋剤の1種類以上と併せて使用することができる。さらに他の実施例においては、カチオン性架橋剤の1種類以上を、アニオン性架橋剤の1種類以上と併せて使用し、非イオン性架橋剤は使用しなくてもよい。
【0110】
架橋剤の例としては、ジナトリウム4,5-ビス[(4-ベンゾイルベンジル)オキシ]-1,3-ベンゼンジスルホナート(DBDS)がある。この試薬は、以下のように調製することができる。まず、THFおよび水酸化ナトリウム中にて、4,5-ジヒドロキシルベンジル-1,3-ジスルホナート(CHBDS)と4-ブロモメチルベンゾフェノン(BMBP)とを組み合わせる。次に、混合物を還流・冷却した後、精製・再結晶する(このことは、米国特許第5,714,360号にも記載されている。上記文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0111】
さらなる架橋剤としては、米国特許第8,487,137号(Guire et al.)および米国特許第7,772,393号(Guire et al.)に記載されている架橋剤が挙げられる。これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、ホウ素含有リンカー剤を含んでいてもよい。ホウ素含有リンカー剤としては、米国特許第9,410,044号(Kurdyumov)に開示されているホウ素含有リンカー剤が挙げられるが、これに限定されない(この内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、リンカー剤は、ボラート基、ボラジン基、またはボロナート基を有していてもよく、上記のリンカー剤を含んでいるコーティングおよびデバイスならびに関連する方法を含んでいてもよい。一実施形態において、リンカー剤は、構造(I)を有する化合物を含んでいる。
【0113】
【0114】
上記式中、R1は、光反応性基を有しているラジカルであり、
R2は、OHおよびラジカルから選択され、当該ラジカルは、光反応性基、アルキル基およびアリール基を有しており、
R3は、OHおよびラジカルから選択され、当該ラジカルは、光反応性基を有している。
【0115】
いくつかの実施形態において、結合B-R1、結合B-R2、および結合B-R3は、独立に選択され、ヘテロ原子が介在していてもよい(O、N、S、またはそれらの混合物など)。
【0116】
本明細書の実施形態で使用するためのさらなる試薬としては、スチルベン系の反応性化合物が挙げられる。このような化合物としては、米国特許第8,487,137号(Kurdyumov et al., "Stilbene-Based Reactive Compounds, Polymeric Matrices Formed Therefrom, and Articles Visualizable by Fluorescence")に開示されている化合物が挙げられるが、これらに限定されない。その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
さらなるの光反応剤、架橋剤、親水性コーティング、および関連する試薬は、米国特許第8,513,320号(Rooijmans et al.)、第8,809,411号(Rooijmans)、および第2010/0198168号(Rooijmans)に開示されている。これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
天然ポリマーを使用使用して、親水性ベースコーティングを形成させてもよい。天然ポリマーとしては、多糖類(例えば、ポリデキストラン、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロース)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸)、ポリペプチド(例えば、コラーゲン、アルブミン、およびアビジンなどの可溶性タンパク質)、ならびに、これらの天然ポリマーの組み合わせが挙げられる。天然ポリマーと合成ポリマーとの組合せも、使用することができる。
【0119】
いくつかの例においては、結合層を使用して、親水性ベース層を形成させてもよい。さらに他の例においては、親水性ベース層に結合層を追加してもよい。結合層は、親水性ベース層と基材との接着性を増大させるように作用しうる。他の実施形態において、結合層は、親水性ベース層と疎水性活性剤との接着性を増大させるように作用しうる。結合層の例としては、シラン、ブタジエン、ポリウレタンおよびパリレンが挙げられるが、これらに限定されない。シラン結合層は、米国特許公開第2012/0148852号(Jelle et al.)に記載されている。その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
例示的な実施形態において、親水性ベース層は、タンニン酸、ポリドーパミン、または他のカテコール含有物質を含んでいてもよい。
【0121】
バルーンカテーテルを備えているシステムにおいて、挿入具を使用することができる。バルーンカテーテルは、一般的に、動脈の疾患を治療するための血管形成術に使用される。バルーン血管形成術は、一般的に、閉塞した管腔内流路の拡張または再開通に関わる。バルーンカテーテルの構造は、当該技術分野において周知であり、様々な文献に記載されている(米国特許第4,195,637号、第5,041,089号、第5,087,246号、第5,318,587号、第5,382,234号、第5,571,089号、第5,776,101号、第5,807,331号、第5,882,336号、第6,394,995号、第6,517,515号、第6,623,504号、第6,896,842号、第7,163,523号および第8,951,545号など)。
図14を参照する。バルーンカテーテル(各部は縮尺通りに描かれていない)は、一般的に、4つの部分を備えている。すなわち、バルーン1212、カテーテルシャフト1210、ガイドワイヤ(不図示)、およびマニホールド1214である。膨張可能なバルーン1212は、通常、可撓性のカテーテルシャフト2010の遠位部に取り付けられている。カテーテルシャフト2010は、1つ以上の開口部1213を有していてもよい。開口部1213があることにより、バルーンの膨張が可能となる(液体などにより)。カテーテルシャフトは、遠位先端1211に向けて、遠位方向に少しの長さだけ延長させることができる。カテーテルシャフトの近位端には、通常、マニホールド1214が存在する。マニホールド1214は、患者の外部に留まるように構成されており、ガイドワイヤポート1217および膨張用流体ポート1216を備えている。マニホールドの端部においては、ガイドワイヤを使用したカテーテルの配置が容易になりうる。ガイドワイヤは小さく、操作可能であり、挿入具および止血弁を通じたバルーンカテーテルの体内への移動を容易にすることができる。いくつかの構成において、バルーンおよびカテーテルは、ガイドワイヤに固定されており、ガイドワイヤとともに移動することができる。他の構成において、バルーンおよびカテーテルは、ガイドワイヤに固定されておらず、それぞれが移動することができる。
【0122】
カテーテル本体は、通常は可撓性であるので、被験者に導入されたときに、動脈系を通じて移動させることができる。カテーテルは、膨張ポート2014のすぐ遠位端側に、剛性がより高い部分1215を有していてもよい。真っ直ぐな構造であるとき(すなわち、カテーテル本体が直線経路に沿って真っ直ぐになっているとき)、カテーテルは、軸「カテーテル軸(CA)」を有しうる。バルーンカテーテルの長さ(L1)は、様々であってよい。標準的なバルーンカテーテルの長さは、約50cm~約150cmである。
【0123】
バルーンカテーテルのバルーン部分は、様々な長さ(L2)であってよい。患者の診断および治療される動脈領域の寸法に基づいて、特定の長さを使用することができる。バルーンの長さは、例えば、約20mm~約300mm、約25mm~約250mm、または約30mm~約160mmである。「短めの」長さは、約20mm~約60mm、または約30mm~約50mmである。「長めの」長さは、約80mm~約300mm、または約100mm~約250mmである。
【0124】
バルーンカテーテルのバルーンは、様々な直径であってもよい。患者の診断および治療部位における動脈の相対的な直径に基づいて、特定の直径を使用することができる。バルーン直径は膨張状態で測定される。直径は、例えば、約0.5mm~約12mm、または約1mm~約8mm、または約2mm~約7mmである。バルーンの直径は、例えば、約0.5mm、約1.0mm、約1.5mm、約2.0mm、約2.5mm、約3.0mm、約3.5mm、約4.0mm、約4.5mm、約5.0mm、約5.5mm、約6.0mm、約6.5mm、約7.0mm、約7.5mm、約8.0mm、約8.5mm、約9.0mm、約9.5mm、約10.0mm、約10.5mm、約11.0mm、約11.5、および約12.0mmである。
【0125】
バルーン部分の遠位端からの断面図を示す、
図15を参照する。膨張前のバルーンは、標的部位へ送達するために、折り畳まれて圧縮された構造を取ることができる。バルーンは、カテーテル本体1301の周囲に沿って折り畳むことができる。これによって、バルーンカテーテルの半径方向のプロファイルが小さくなり、挿入具を通じた体内への移動が容易になる。バルーンの折り畳み工程には、(i)バルーン材料の「アーム」1302を作製する工程と、(ii)と、これらのアームを内側に(カテーテル軸に向かって)折り畳んで、バルーン材料を圧縮する工程と、を含んでよい。バルーンおよび折り畳み工程に応じて、しぼんで折り畳まれた状態のバルーンは、2つ以上のアームを備えていてよい(例えば、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、11本、または12本の折り畳みアーム)。
【0126】
折り畳まれた状態において、バルーン部分は、「最大断面プロファイル」を有しうる。「最大断面プロファイル」とは、マニホールドの遠位端1215(
図14)から、カテーテルの遠位端(先端)1211(
図14)までの間における、最大の直径である。最大断面プロファイルは、例えば、折り畳まれたバルーン部分の、1つ以上の点、連続した部分、ほとんどの部分、または全長において生じる場合がある。最大断面プロファイルはまた、バルーンがカテーテルシャフトに接触している(例えば、結合されているか、または接着されている)点において、生じる場合がある(
図17の点1524および1526を参照)。
【0127】
一実施形態において、
図15に示すように、折り畳まれたバルーンの最大断面プロファイルは、長さL
3である。例えば、長さL
3は、折り畳まれたバルーンの直径でありうる。この直径は、折り畳まれたバルーンアームの遠位端1305の外表面と、半径方向に対向している折り畳まれたバルーンアームの遠位端1307の外表面との間である。いくつかの実施形態において、最大断面プロファイルは、約2.20mm以下、約2.15mm以下、約2.10mm以下、約2.05mm以下、約2.00mm以下、約1.95mm以下、約1.90mm以下、または約1.85mmである。いくつかの実施形態において、最大断面プロファイルは、約1.60mm~約2.20mm、約1.65mm~約2.10mm、または約1.70mm~約2.00mm、または約1.75mm~約1.90mmである。いくつかの実施形態において、最大断面プロファイルは、約1.70mm~約2.00mm、または約1.75mm~約1.90mmであり、かつ、バルーンの長さは、約100mm以下(例えば、約20mm~約100mm)、または約60mm以下(例えば、約20mm~約100mm)である。
【0128】
図16a~
図16gは、折り畳まれたバルーンカテーテルを挿入具内へ装填する際の、種々の実施形態を示している。これらの図は、バルーン部分および挿入具の遠位端からの断面図を反映している。
図16aは、最大断面プロファイルが「L
4」である、折り畳まれたバルーン部分である。L
4は、例えば、約1.70mm~約2.00mm、または約1.75mm~約1.90mmである。
図16bは、内径L
5が、折り畳まれたバルーンの最大断面プロファイルL
4以下の長さである挿入具の断面図である。場合によっては、L
5はL
4未満である。例えば、L
5は、長さL
4の約90%~約99%、または約95%~約99%である。これらの実施形態においては、折り畳まれたバルーンの外表面が挿入具の内壁に力を及ぼす。これによって、挿入具が半径方向に拡張したり(例えば、壁が変形する)、折り畳まれたバルーンがさらに圧縮したり、またはその両方を引き起こしたりしうる。例えば、
図16eは、折り畳まれたバルーンが装填されている挿入具(
図16bのもの)を示している。このバルーンは、挿入具の直径を、半径方向に拡張させる。L
5がL
4以下である場合、挿入具の壁1401は、比較的薄くてもよい。壁の厚さは、例えば、約0.075mm未満、0.06mm未満、または0.05mm未満(約0.025mm~約0.06mm、または約0.025mm~約0.05mmなど)である。
【0129】
図16cは、内径L
6が、少なくとも折り畳まれたバルーンの最大断面プロファイルL
4であるか、またはL
4よりも僅かに大きい挿入具の断面図である。これらの実施形態において、折り畳まれたバルーンは、挿入具の内径に納まっている。挿入具の内壁と折り畳まれたバルーンの外表面との間の空間は、最小限であるか、または全く隙間がない状態である。このことは、血液の逆流を最小限にする(または防止する)ことができるため、バルーンカテーテルの挿入時に有益でありうる。また、血液の逆流を最小限にできることにより、処置の安全性が改善され、望ましいバルーン特性を維持することができる(例えば、薬物被膜バルーンを使用する場合には、薬物の損失を最小化すること、および/または、バルーンコーティングの水和を防止することによって)。L
6がL
4以上である場合、挿入具の壁1403は、より厚くなりうる。壁の厚さは、例えば、約0.025mm超、または約0.05mm超(例えば、約0.05mm~約0.20mm)である。
【0130】
図16dは、内径L
7が、折り畳まれたバルーンの最大断面プロファイルL
4よりも大きい挿入具の断面図である。これらの実施形態において、折り畳まれたバルーンは、挿入具の内径に納まっている。挿入具の内壁と折り畳まれたバルーンの外表面との間には、ある程度の隙間1405が存在する。この構成は、挿入具内でのバルーンカテーテルのバルーン部分の移動を容易にする。ただし、好ましくは、血液の逆流を最小限にするように、隙間が制限されている。いくつかの好適な実施形態において、折り畳まれたバルーンの最大断面プロファイルは、挿入具の内径の、約80%以上、約82%以上、約84%以上、約86%以上、約88%以上、約90%以上、約92%以上、約94%以上、約96%以上、または挿入具の内径の約98%以上である(例えば、挿入具の内径の、約80%~約99%、約82%~約99%、約84%~約99%、約86%~約99%、約88%~約99%、約90%~約99%、約92%~約99%、約94%~約99%、約96%~約99%、または約98%~約99%)。
【0131】
本開示の方法においては、以下の工程を含む方法によって、バルーンカテーテルを患者の体内に挿入することができる。まず、(i)カテーテルシャフトおよびある長さを有するバルーン部分を備えているバルーンカテーテルと、(ii)バルーンカテーテルを患者の体内に進入させるための挿入具を用意する。この挿入具は、本開示の一つであり、長手軸に沿った近位端および遠位端と;バルーン部分の長さ以上の長さがあり、遠位端から近位方向に延在している管状部分と;近位端にあるツマミと;を備えている。上記管状部分は、壁と;バルーンカテーテルのバルーン部分を収容できる内径と;構造上の弱所を表しているか、または第1半分の壁にある分割部を表している、管状部分の第1長手方向半分の壁にある分離マージンと;を備えている。上記ツマミは、(1)管状部分の第2長手方向半分から延在しており、長手軸に対して斜交している部分を有するツマミであるか、または、(2)凹面を有している中実の物体の形態であり、管状部分の第2長手方向半分の外表面に固定されているツマミであるか、のいずれかである。
【0132】
次に、内部にバルーンを格納がされている挿入具の遠位端を、止血弁の中に挿入する。その後、挿入具の管状部分およびその中にあるバルーンカテーテルを、止血弁を通じて、患者の体内へと前進させる。
【0133】
挿入具の近位端の一部は、挿入中、止血弁の近位側に留まっていてもよい。止血弁を通じて挿入具を部分的に前進させることによって、バルーンカテーテルの膨張可能部分が、挿入具を通じて、体内へと完全に前進することができる。
【0134】
次に、止血弁から挿入具の管状部分を引き抜き、管状部分のうち少なくとも近位部を、バルーン部分より近位側にあるカテーテルシャフトの周辺に位置させる。次に、挿入具をバルーンカテーテルに対して移動させ、分離マージンを分離させて、挿入具をカテーテルシャフトから離れて移動できるようにする。
【0135】
あるいは、挿入具は、バルーンカテーテルの膨張可能部分の近位側に配置されている。このとき、膨張可能部分は、分離保護シースによって保護されたままである。その後、シースを取り外してから、折り畳まれた膨張可能部分の上で挿入具を前進させることができる。その後、止血弁を通じて、バルーンを内部へと挿入することができる。
【0136】
挿入具を取り外すために、挿入具のツマミに、例えば、外向きの力または近位方向の力を加えてもよい。これにより分離マージンが分離し、挿入具はカテーテルシャフトから離れて移動できるようになる。その代わりに、挿入具の管状部分を、カテーテルシャフト全体にわたって、近位ハブまで引き抜くこともできる。近位ハブは、楔として機能し、分離マージンを分離させることができる。その結果、挿入具は、カテーテルシャフトから離れて移動できるようになる。その代わりに、ユーザは、挿入具をバルーンカテーテルの近位部まで移動させることができる(バルーンカテーテルの近位部のODは、管状部分のIDよりも大きい)。カテーテルの近位部までは、楔として機能し、分割部に沿って挿入具を開裂させることができる。
【0137】
プラーク領域の処置について、より詳細に説明する。バルーンカテーテルのバルーン部分は、挿入具内に挿入され、拡張していない状態にて止血弁を通って前進することができる。挿入具のフレア状の開口部は、バルーン部分上のコーティングの損失を防止しうる。プラーク治療のための位置にガイドワイヤを移動させた後、止血弁を通じてバルーン部分を移動させる。次に、バルーンがプラーク治療のための部位に到達するまで、バルーン部分を備えているカテーテルをガイドワイヤ上に送り込む。その後、プラーク部位でバルーンを膨張させて、処置することができる。また、マニホールドは、シャフト内への流体の導入を制御して、バルーンを拡張させることができる。
【0138】
バルーンは、通常、流体を用いて膨張させる。この流体は、膨張ポートを通じて注入される。バルーン内へ流体を移送し導入する機構は、カテーテルの具体的な設計に応じて異なる。このような機構は、本技術分野において周知である。
【0139】
いくつかの実施形態においては、バルーンカテーテルのバルーン部分の表面に、生理活性物質が関連付けられている。生理活性物質は、バルーン部分から放出可能に関連付けられていてもよい。あるいは、生理活性物質は、当該生理活性物質を体組織に供与するような様式で、バルーン部分から放出不可能に関連付けられていてもよい。いくつかの実施形態において、バルーン部分はコーティングを有している(本明細書に記載の親水性コーティングまたはヒドロゲルコーティングなど)。このコーティングは、生理活性物質の放出を調節できる。例えば、生理活性物質は、バルーンの表面にコーティングされているポリマー材料中に存在しており、当該材料中から放出可能でありうる。また、薬物または薬物含有層の上に重合性コーティングを塗布して、生理活性物質の放出を調節するトップコートとして機能させてもよい。
【0140】
生理活性物質の例としては、抗生物質、抗炎症剤、増殖阻害剤、免疫調節剤、有糸分裂阻害剤および麻酔剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
バルーン部分から放出されたり、バルーン部分に存在していたりしてもよい生理活性物質の例としては、以下が挙げられる。:シロリムス(ラパマイシン)、ラパマイシンの類似体(ラパログ)、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、リダホロリムス、パクリタキセル、タキサン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ポシド、テニポシド、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミドおよびその類似体、メルファラン、クロラムブシル、エチレンイミンおよびメチルメラミン、アルキルスルホナート-ブスルファン、ニトロソウレア、カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン、トラゼン-ダカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2-クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド、エストロゲン、ヘパリン、合成ヘパリン塩、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、ブレフェルジン、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6U-メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、アスピリン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ジクロフェナク、ケトロラク、イブプロフェンおよび誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンタトラゾン、ナブメトン、オーラノフィン、金チオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム、シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンギオテンシン受容体遮断薬、一酸化窒素ドナー、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびこれらの組み合わせ、細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、ならびに成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤。
【0142】
生理活性物質の他の例示的な実施形態としては、プラーク浸透性ペプチド(She et al., J. Contr. Rel. 238:212-220に報告されているものなど)、治療用抗体、アテローム症を標的とするsiRNAまたはマイクロRNA(miRNA;例えば、Feinberg et al.,
Circ Res. 118:703-20 (2016))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
生理活性物質の他の例示的な実施形態としては、高血圧(HTN)治療用の生理活性物質(グアネチジンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
特定の実施形態において、生理活性物質は、パクリタキセル、シロリムス(ラパマイシン)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0145】
いくつかの実施形態において、生理活性物質は、バルーン部分に関連付けられており、微粒子内に存在しているか、または微粒子の形態である。この微粒子は、バルーン部分に関連付けられている。第2管が拡張されると、バルーン表面から、微粒子が放出または解離されうる。コーティングの例としては、親水性ポリマーを含んでいるコーティング、および分解性ポリマーを含んでいるコーティングが挙げられる。バルーン部分からの放出の後、微粒子は組織と関連付けられ、生理活性物質を放出できるようになる。
【0146】
一実施形態において、プラーク治療部分は、可撓性ヒドロゲルコーティングと、バルーンコーティング関連付けられている微粒子と、を含んでいる。微粒子は、非均質的にコーティングに関連付けられていてもよい。例えば、微粒子は、(a)可撓性ヒドロゲルコーティングの表面付近において関連付けられていてもよいし、(b)主に可撓性ヒドロゲルコーティング/表面付近において関連付けられていてもよいし、(c)可撓性ヒドロゲルコーティング中に均質に分布して関連付けられていてもよい。可視化した場合、可撓性ヒドロゲルコーティングにわずかに埋め込まれた微粒子は、コーティング表面に付着しているように見える場合がある。生理活性物質(例えば、パクリタキセル)を含む微粒子を含を含んでいるバルーンコーティングの例は、米国特許第8,951,545号および第9,669,192号に記載されている。
【0147】
一実施形態において、バルーンは、可撓性ヒドロゲルコーティングを備えており、その上に、生理活性物質および添加剤を含んでいるコーティングを備えている。添加剤は、放出剤(または、治療組織への薬物の移送を促進する薬剤)として機能しうる。添加剤は、ポリカチオンであってもよい。
【0148】
微粒子は、生理活性物質を含む粒子成分でありうる。また、微粒子は、バルーン部分の表面から放出できる。微粒子は、コーティング材料を介して表面に関連付けられ、その後バルーンの膨張時に解離するのに充分な大きさおよび形状を有する、任意の三次元粒子でありうる(例えば、約100nm~約10μm;球状もしくは実質的に球状、非球状、または不定形状(棒状、繊維状、小片状、または針状形状など))。
【0149】
微粒子は、生理活性物質を組み込んでいるおよび/または被覆している、生体適合性材料を含んでいてもよい。これらの生体適合性材料は、生分解性ポリマー(PLA、PLGAなど)、(半)固体脂質、バイオシリカなどでありうる。
【0150】
1種類以上の生理活性物質のみから形成される微粒子も、バルーンの表面と関連付けられ、in vivoにおいて、標的組織に対して放出されうる。換言すると、微粒子は、実質的に1種類以上の生理活性物質から形成されていてもよいし、完全に1種類以上の生理活性物質から形成されていてもよい。このとき、微粒子からの生理活性物質の放出を制御しうる添加剤物質は、必要とされない。完全に生理活性物質からなる(または、ほぼ完全に生理活性物質からなる)微粒子を、本明細書では、「純粋な」微粒子と呼ぶことがある(例えば、微量の1種類以上の他の成分を含んでいてもよい)。
【0151】
生理活性物質は、非晶質形態、結晶形態、またはそれらの任意の混合物でありうる。
【0152】
例えば、パクリタキセル微粒子の調製は、米国特許第6,610,317号に記載されている。同一出願人による米国特許出願第14/280,054号(2014/0343491;Slager)および米国特許出願第14/303,309号(2015/0017219;Slager et al.)は、種々の溶媒および/または加工技術を用いて、所望の形状および寸法のマクロライド粒子を調製する方法を記載している。