(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159413
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ヒト可変領域を保有している抗体を産生するために有用な繁殖可能遺伝子導入動物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221006BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20221006BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20221006BHJP
C12N 5/073 20100101ALI20221006BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221006BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221006BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221006BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20221006BHJP
C12N 5/12 20060101ALI20221006BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/90 Z ZNA
A01K67/027
C12N5/073
C12N5/10
C12N15/12
C07K16/46
C12N5/0781
C12N5/12
A61K39/395 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022128160
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020092295の分割
【原出願日】2012-11-30
(31)【優先権主張番号】13/310,431
(32)【優先日】2011-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1122047.2
(32)【優先日】2011-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】13/416,684
(32)【優先日】2012-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512006066
【氏名又は名称】カイマブ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレン・エー・フリードリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】イー-チャン・リー
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、内在性抗体鎖発現が不活性化されており、ヒト可変領域を保有している抗体を産生するために有用なマウス及びラットなどの繁殖可能非ヒト脊椎動物を提供することである。
【解決手段】前記課題は、内因性重鎖遺伝子が不活性化されており、AMAD6遺伝子の機能性コピーを導入した非ヒト脊椎動物によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であるマウス細胞又は繁殖可能マウスの作製方法であって、
マウスが
(a)染色体12のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(b)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
方法が、
(c)1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを染色体12のDNAに、ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように挿入するステップによって、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む遺伝子導入マウス胚性幹細胞(ES細胞)を構築するステップ、
(d)ステップ(c)と同時に又は別々に、内在性抗体重鎖発現を不活性化するために前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を除去するステップであって、除去がマウスADAM6遺伝子を含むステップ、
(e)ステップ(c)又は(d)と同時に又は別々に、1つ又は複数のADAM6遺伝子をES細胞ゲノムに挿入するステップ、並びに場合により
(f)繁殖可能マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップであって、前記マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、且つ、ADAM6をコードしており、更には、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
のステップを含む方法。
【請求項2】
遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であるマウス細胞又は繁殖可能マウスの作製方法であって、
マウスが
(a)染色体12のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(b)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
方法が、
(c)1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを染色体12のDNAに、ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように挿入するステップによって、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む遺伝子導入マウス胚性幹細胞(ES細胞)を構築するステップ、
(d)ステップ(c)と同時に又は別々に、内在性抗体重鎖発現を不活性化するために前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を除去するステップであって、除去がマウスADAM6遺伝子を含むステップ、
(e)子マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップであって、前記子マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含むステップ
(f)前記マウス由来の第二ES細胞を派生させるステップ及び前記第二ES細胞のゲノムに1つ又は複数のADAM6遺伝子を挿入するステップ、並びに場合により
(g)繁殖可能マウス又はその後代に第二ES細胞を成育させるステップであって、前記マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、且つ、ADAM6をコードしており、更には、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
のステップを含む方法。
【請求項3】
遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能マウスの作製方法であって、
マウスが
(a)染色体12のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(b)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
方法が、
(c)1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを染色体12のDNAに、ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように挿入するステップによって、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む遺伝子導入マウス胚性幹細胞(ES細胞)を構築するステップ、
(d)ステップ(c)と同時に又は別々に、内在性抗体重鎖発現を不活性化するために前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を除去するステップであって、除去がマウスADAM6遺伝子を含むステップ、
(e)子マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップであって、前記子マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含むステップ、並びに
(f)前記子マウス(又は後代)と、そのゲノムが1つ又は複数のADAM6遺伝子を含むさらなるマウスとを用いる繁殖ステップによって、繁殖可能マウス又はその後代を成育させるステップであって、前記繁殖可能なマウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、且つ、ADAM6をコードしており、更には、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
のステップを含む方法。
【請求項4】
繁殖可能マウス(例えば、繁殖可能オスマウス)を産生するためのマウスの製造におけるADAM6遺伝子の使用であって、
マウスが
(a)ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように、染色体12のDNAに挿入された1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入重鎖遺伝子座、並びに
(b)内在性抗体重鎖発現を不活性化するための前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、前記除去がマウスADAM6遺伝子を含む、除去
を含むゲノムを有し、
1つ又は複数のADAM6遺伝子がゲノムに挿入されている、使用。
【請求項5】
繁殖可能マウス(例えば、オスマウス)に成育できる細胞を産生するためのマウス細胞の製造におけるADAM6遺伝子の使用であって、
マウス細胞が
(a)ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように、染色体12のDNAに挿入された1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入重鎖遺伝子座、並びに
(b)内在性抗体重鎖発現を不活性化するための前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、
マウスADAM6遺伝子を含む除去を含むゲノムを有し、
1つ又は複数のADAM6遺伝子がゲノムに挿入されている、使用。
【請求項6】
ADAM6遺伝子が一方又は両方の染色体12に挿入されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項7】
ADAM6遺伝子が、(i)一方若しくは両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座内に、又は(ii)一方若しくは両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座の20Mb以内に挿入されている、請求項6に記載の方法又は使用。
【請求項8】
前記ヒト遺伝子セグメントの挿入及び内在性VDJ DNAの除去が同時に行われるように、前記ヒト遺伝子セグメントを、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を置き換えるように染色体12に挿入し、場合により内在性VDJ領域全体が置き換えられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
最終的な繁殖可能マウスがADAM6a及びADAM6bタンパク質の両方を発現できるようにマウスADAM6a及びADAM6b遺伝子を挿入する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項10】
最終的な繁殖可能マウス又は後代のゲノムが、挿入された各ADAM6遺伝子に関してホモ接合性であり、場合によりゲノムが2コピーを超えるマウスADAM6a及び/又はADAM6b遺伝子を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項11】
各生物がマウスの代わりにラットであり、各前記染色体が染色体12の代わりに染色体6である代替を有する、又は各細胞がマウス細胞の代わりにラット細胞であり、各前記染色体が染色体12の代わりに染色体6である代替を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項12】
遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を有するマウス(場合によりオスマウス)であって、
(i)染色体12上に前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含む、及び
(ii)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている、
ゲノムを有し、
ゲノムの前記染色体12が
(iii)マウス又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されている1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座、
(iv)内在性抗体重鎖発現を不活性化するための前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、前記除去がマウスADAM6遺伝子を含む、除去、
を含み、
ゲノムが
(v)1つ又は複数の発現可能なADAM6遺伝子の挿入
を含むマウス。
【請求項13】
ゲノムが染色体12のそれぞれのコピー上に遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む、請求項12に記載のマウス。
【請求項14】
遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を有するラット(場合によりオスラット)であって、
(i)前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を染色体6上に含み、並びに
(ii)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
ゲノムの前記染色体6が
(iii)ラット又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されている1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座、
(iv)内在性抗体重鎖発現を不活性化するための前記染色体6のラット内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、前記除去がラットADAM6を含む、除去
を含み、並びに
ゲノムが
(v)1つ又は複数の発現可能なADAM6遺伝子の挿入
を含む、ラット。
【請求項15】
ゲノムが染色体6のそれぞれのコピー上に遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む、請求項13に記載のラット。
【請求項16】
挿入される各ADAM6遺伝子が(i)動物がマウスである場合は染色体12上にあり、又は(ii)動物がラットである場合は染色体6上にある、請求項12若しくは13に記載のマウス又は請求項14若しくは15に記載のラット。
【請求項17】
挿入されるADAM6遺伝子が、(i)一方又は両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座内に、又は(ii)一方又は両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座の20Mb以内に挿入される、請求項12から16のいずれか一項に記載のマウス又はラット。
【請求項18】
ヒト遺伝子セグメントが各重鎖遺伝子座中の内在性VDJ領域の全体又は部分を置き換える、請求項12から17のいずれか一項に記載のマウス又はラット。
【請求項19】
挿入された発現可能なマウスADAM6a及びADAM6b遺伝子をゲノムが含む、請求項12から18のいずれか一項に記載のマウス又はラット。
【請求項20】
挿入された発現可能なラットADAM6遺伝子をゲノムが含む、請求項12から19のいずれか一項に記載のマウス又はラット。
【請求項21】
ゲノムが挿入された各ADAM6遺伝子に関してホモ接合性であり、場合によりゲノムがラットADAM6、マウスADAM6a及びマウスADAM6b遺伝子から選択される2コピーを超えるADAM6遺伝子を含む、請求項12から20のいずれか一項に記載のマウス又はラット。
【請求項22】
ゲノムが1つ又は複数の遺伝子導入軽鎖遺伝子座を含み、前記遺伝子導入軽鎖遺伝子座のそれぞれが軽鎖定常領域(例えば、内在性マウス若しくはラットCカッパ定常領域)の上流に作動可能に連結された1つ又は複数のヒト軽鎖V遺伝子セグメント及び1つ又は複数の軽鎖J遺伝子セグメントを含む、請求項12から21のいずれか一項に記載のマウス又はラット。
【請求項23】
ゲノムが外来性ADAM6を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法、使用、マウス又はラット。
【請求項24】
ゲノムが標的化ベクター(例えば、BACベクター)から挿入されるADAM6を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法、使用、マウス又はラット。
【請求項25】
ゲノムが標的化又は無作為挿入によってES細胞又は接合体に挿入されるADAM6エクソンを含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法、使用、マウス又はラット。
【請求項26】
内在性ADAM6がゲノムから除去されている、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法、使用、マウス又はラット。
【請求項27】
(i)ヒト可変領域(場合により抗体遺伝子再構成後)を含む抗体を発現できる1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性抗体発現について不活性化されている、
ゲノムを有する非ヒト脊椎動物(場合によりマウス若しくはラット)又は非ヒト脊椎動物細胞(場合によりマウス又はラット細胞)であって、
(iii)内在性可変領域遺伝子セグメントが、前記非ヒト型の野生型脊椎動物における抗体可変領域遺伝子セグメントを含有しない染色体種(例えば、染色体15)に転座されており、それにより内在性抗体発現が不活性化されている、
非ヒト脊椎動物(場合によりマウス若しくはラット)又は非ヒト脊椎動物細胞(場合によりマウス又はラット細胞)。
【請求項28】
(i)ヒト可変領域(場合により抗体遺伝子再構成後)を含む抗体を発現できる1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性マウス抗体発現について不活性化されている、
ゲノムを有するマウス又はマウス細胞であって、
(iii)複数の内在性マウス可変領域遺伝子セグメントがゲノム中の染色体12から欠如しているが、染色体12以外の1つ又は複数の染色体上の生殖系列配置には(互いに)存在しており(例えば、遺伝子セグメントは染色体15上にある)、それにより内在性マウス抗体発現が不活性化されている
マウス又はマウス細胞。
【請求項29】
(i)ヒト可変領域(場合により抗体遺伝子再構成後)を含む抗体を発現できる1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性ラット抗体発現について不活性化されている、
ゲノムを有するラット又はラット細胞であって、
(iii)複数の内在性ラット可変領域遺伝子セグメントがゲノム中の染色体6から欠如しているが、染色体6以外の1つ又は複数の染色体上の生殖系列配置には(互いに)存在しており(例えば、遺伝子セグメントは染色体15上にある)、それにより内在性ラット抗体発現が不活性化されている
ラット又はラット細胞。
【請求項30】
前記ゲノムが遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座(ヘテロ接合性又はホモ接合性状態にある)を含み、遺伝子座が非ヒト脊椎動物(例えば、マウス若しくはラット)定常領域又はヒト定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結された1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトDH遺伝子セグメントを含み、前記内在性可変領域遺伝子セグメントが内在性
(a)VH、
(b)D、
(c)JH、
(d)VH及びD、
(e)D及びJH並びに
(f)VH、D及びJH
から選択される、請求項27から29のいずれか一項に記載の脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項31】
ゲノムが発現可能な内在性ADAM6遺伝子を含む、請求項27から30のいずれか一項に記載の脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項32】
請求項27から31のいずれか一項に記載のオス脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項33】
非ヒト脊椎動物細胞(場合によりマウス又はラット細胞)の作製方法であって、
(i)ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を非ヒトES細胞ゲノムに挿入するステップ、及び
(ii)前記非ヒト型の野生型脊椎動物における抗体可変領域遺伝子セグメントを含有しない染色体種(例えば染色体15)に内在性可変領域遺伝子セグメントを転座するステップによって、内在性抗体発現を不活性化するステップであって、
それにより、内在性抗体発現が不活性化されている後代細胞を生じさせることができる非ヒト脊椎動物ES細胞が産生され、後代がヒト可変領域を含む抗体を発現できるステップ、並びに
(iii)場合により前記ES細胞を前記後代細胞又は、前記後代細胞を含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)に分化させるステップ
を含む方法。
【請求項34】
ゲノムがヒト染色体14由来の塩基105,400,051から106,368,585を含む挿入されたヒトVDJ領域を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項35】
ゲノムが、Ig重鎖、Igλ及びIgκ遺伝子座でホモ接合性である、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項36】
内在性重鎖Ig遺伝子座の非ヒト脊椎動物VDJ領域並びに内在性ラムダ及びカッパ遺伝子座のVJ領域が不活性化されている、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項37】
ゲノムが
(i)IgH V、D及びJ領域の完全なヒトレパートリーを実質的に含む重鎖導入遺伝子を含む、並びに
(ii)Igκ V及びJ領域の完全なヒトレパートリー並びに/又はIgλ V及びJ領域の完全なヒトレパートリーを実質的に含む、
請求項1から36のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項38】
ゲノムが
(a)それぞれが内在性非ヒト脊椎動物定常領域又はヒト定常領域(例えば、Cmu及び/又はCgamma)の上流に、1つ又は複数のヒト重鎖V遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒト重鎖D遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒト重鎖JH遺伝子セグメントを含む、重鎖遺伝子座、
(b)内在性非ヒト脊椎動物(例えば、内在性マウス若しくはラット)カッパ定常領域の上流に、1つ又は複数のヒトカッパ鎖V遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトカッパ鎖Jκ遺伝子セグメントを含む、カッパ軽鎖遺伝子座(場合によりホモ接合性状態にある)、並びに場合により
(c)ラムダ定常領域の上流に、1つ又は複数のヒトラムダ鎖V遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトラムダ鎖Jλ遺伝子セグメントを含むラムダ軽鎖遺伝子座(場合によりホモ接合性状態にある)、
を含み、並びに
(d)脊椎動物が前記遺伝子座の再構成及び抗原での免疫化後にキメラ抗体を産生できる、
請求項1から37のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項39】
脊椎動物が、129、BALB/c、C57BL/6N、C57/BL/6J、JM8、AB2.1、AB2.2、129S5又は129Svから選択されるマウス遺伝的背景を有するマウスである、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス又は細胞。
【請求項40】
脊椎動物がマウスであり、ゲノムがマウス染色体6の座標70,673,899と70,675,515との間、好適には位置70,674,734に、又は染色体16上のラムダマウス遺伝子座中の対応する位置に標的化されたヒト軽鎖カッパVJの挿入を含む、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス又は細胞。
【請求項41】
ゲノムが、少なくとも1つのヒトJλ領域及び少なくとも1つのヒトCλ領域を含むヒトIgλ遺伝子座の全体又は部分を含むラムダ抗体導入遺伝子を含む、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項42】
ゲノムが、ヒトEλエンハンサーを含むラムダ導入遺伝子及び/又はヒトEκエンハンサーを含むカッパ導入遺伝子を含む、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項43】
ゲノムが、ヒトRPCI-11ライブラリー、RPCI-13ライブラリー、CalTech Aライブラリー、CalTech Bライブラリー、CalTech Cライブラリー又はCalTech Dライブラリーから選択されるライブラリー由来のヒトDNAを(重鎖及び/又は軽鎖遺伝子セグメントの供給源として)含む、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項44】
脊椎動物がマウス、ラット、ウサギ、ラクダ又はサメである、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物又は細胞。
【請求項45】
脊椎動物が、少なくとも1x106の異なる機能性キメラ抗体配列組み合わせの多様性を生成できる、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス又はラット。
【請求項46】
天然で反転されているヒトVH又は偽遺伝子VHがゲノムから取り除かれている、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法、使用、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞。
【請求項47】
(a)請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物(例えば、マウス又はラット)をヒト標的抗原で脊椎動物が抗体を産生するように免疫化するステップ、並びに
(b)脊椎動物から前記抗原に特異的に結合する抗体を単離するステップ及び/又はそのような抗体の少なくとも重鎖及び/又は軽鎖の可変領域をコードしているヌクレオチド配列を単離するステップ、並びに
場合により次に前記抗体の可変領域をヒト定常領域に繋ぐステップ
を含む、抗体又は抗体をコードしているヌクレオチド配列を単離する方法。
【請求項48】
免疫化のために初期及び追加免疫プロトコルが用いられる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
RIMMSプロトコルが免疫化のために用いられる、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(b)の後に前記抗原への結合に対する親和性を改善するために抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列に変異導入するステップを含む、請求項47から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(b)の後に抗体の1つ又は複数の生物物理学的特徴、例えば融解温度、溶液状態、安定性及び発現(例えば、CHO若しくは大腸菌(E coli)において)の1つ又は複数を改善するために抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列に変異導入するステップを含む、請求項47から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
ヒト標的抗原に特異的に結合し、ヒト重鎖可変領域及び定常領域を含む、請求項47から51のいずれか一項に記載の方法によって産生された4-鎖抗体、H2抗体又は抗体断片(例えば、Fab若しくはFab2)あるいは前記抗体又は断片の誘導体。
【請求項53】
請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物から単離された抗体の可変領域を親和性成熟させるステップによって産生される抗体であって、ヒト標的抗原に特異的に結合する抗体。
【請求項54】
請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物から単離された抗体の定常領域に(例えば、Fc機能を除去する又は増強するために)変異導入するステップによって産生される抗体であって、ヒト標的抗原に特異的に結合する抗体。
【請求項55】
治療用又は予防用医薬としての使用のための(例えば、完全にヒト化された形態での)、請求項52、53又は54に記載の抗体。
【請求項56】
請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物での抗原チャレンジへの応答において産生されるポリクローナル抗体。
【請求項57】
治療用又は予防用医薬としての使用のための(例えば、完全にヒト化された形態での)、請求項56に記載の抗体。
【請求項58】
ヒト標的抗原に特異的に結合する、医薬における使用のための、請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物から単離される抗体又はその誘導体若しくは断片。
【請求項59】
医薬における使用のための請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物から単離されるポリクローナル抗体。
【請求項60】
ヒト標的抗原に特異的に結合する、請求項47から51のいずれか一項に記載の方法によって産生される、重鎖又は軽鎖可変鎖から生成されるヒト可変領域(例えば、ドメイン抗体)。
【請求項61】
請求項52から60のいずれか一項に記載の抗体、断片、誘導体又は可変領域をコードしているヌクレオチド配列であって、場合によりベクターの一部であるヌクレオチド配列。
【請求項62】
- 請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物から単離される抗体、又は前記抗体の誘導体を含む、又は請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物から単離されるポリクローナル抗体を含む、及び
- 希釈剤、賦形剤若しくは担体を含み、
- 場合によりIV容器(例えば、及びIVバッグ)、又はIVシリンジに連結されている容器に含まれ、
抗体がヒト標的抗原に特異的に結合する、医薬組成物。
【請求項63】
請求項1から46のいずれか一項に記載の脊椎動物由来の細胞系統(例えば、不死化細胞系統、ES細胞又はiPS細胞系統)、B細胞、融合細胞又は幹細胞。
【請求項64】
BALB/c、JM8、AB2.1又はAB2.2胚性幹細胞である、請求項63に記載の幹細胞。
【請求項65】
脊椎動物がマウスBALB/c、C57BL/6N、C57BL/6J、129S5又は129Sv株である、請求項63又は64に記載の細胞系統、細胞又は融合細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内在性抗体鎖発現が不活性化されており、ヒト可変領域を保有している抗体を産生するために有用なマウス及びラットなどの繁殖可能(fertile)非ヒト脊椎動物にとりわけ関する。
【背景技術】
【0002】
可変領域をコードする1つ又は複数の遺伝子導入(transgenic)抗体遺伝子座を含むマウス及びラットなどの抗体生成非ヒト脊椎動物は、当技術分野において一般に周知であり、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2011004192、US7501552、US6673986、US6130364、WO2009/076464及びUS6586251を例示の方法によって参照する。
【0003】
当技術分野は胚性幹細胞(ES細胞)技術を用いて、遺伝子導入抗体遺伝子座を保有しており、ヒト抗原でのチャレンジ後にヒト又はキメラ抗体がin vivoで生成され得るマウス及びラットなどの非ヒト脊椎動物を提供している。そのような抗体は、それらの重鎖に及び場合によりそれらの軽鎖にもヒト可変領域を有用に保有する。内在性抗体重鎖の同時発現の複雑化を避けるために、そのような脊椎動物のゲノムは、内在性重鎖発現が不活性化されるように典型的には操作される。これを行うための技術は、ヒトVDJ遺伝子セグメントの挿入と同時に又は別のステップで内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去を含む(例えば、WO2009076464及びWO2002066630を参照されたい)。そのような除去は、介在配列と共にVH及びD遺伝子セグメントの除去を伴う。それを行う際に内在性ADAM6遺伝子は除去される。
【0004】
ADAM6遺伝子は、Aディスインテグリン及びメタロプロテアーゼ(ADAM)ファミリーに属するタンパク質をコードする。ADAMファミリーメンバーは、プロドメイン、メタロプロテアーゼ、ディスインテグリン、システインリッチ、上皮増殖因子(EGF)様、膜貫通及び細胞質側末端ドメインなどの保存された複数ドメインを含有する膜貫通糖タンパク質である。ADAMファミリーは、種々の生物学的発達において細胞接着に関与していることが示されている[1~5]。
【0005】
マウスでは、染色体12のIgH遺伝子座中のVHとD遺伝子セグメントとの間(マウスVH5-1とD1-1との遺伝子セグメント間の介在領域中)に位置するADAM6の2つのコピー(ADAM6a、ADAM6b)がある。これら2つの隣接し、イントロンを含まないADAM6遺伝子は、95%のヌクレオチド配列同一性及び90%のアミノ酸同一性を有する。ヒト及びラットでは、ADAM6遺伝子は1つだけある。マウスADAM6の発現パターン分析は、それが精巣で排他的に発現されることを示している[6]。ADAM6転写物はリンパ球において検出され得るが、核に限定されており具体的にはADAM6遺伝子の転写が活性メッセンジャーRNA産生よりもD領域からの転写リードスルーによることを示唆している[7]。
【0006】
成熟ADAM6タンパク質は、アクロソーム及び精子頭部の後方領域に位置する。注目すべきことにADAM6は、マウスにおける受精のために必要な複合体をADAM2及びADAM3と形成する[8]。参考文献[9]は、ADAM6タンパク質がTPST2によって硫酸化された後にADAM3と相互作用するモデルにおけるADAM6に関する(ADAM6の硫酸化は、安定性並びに/又はADAM6及びADAM3が関与する複合体形成のために不可欠であり、それによりADAM6及びADAM3はTpst2-ヌル精子から失われている)。本研究は、Tpst2-欠損マウスが男性不妊症、精子運動異常及び精子-卵膜相互作用における異常可能性を有することを観察している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2011004192
【特許文献2】US7501552
【特許文献3】US6673986
【特許文献4】US6130364
【特許文献5】WO2009/076464
【特許文献6】US6586251
【特許文献7】WO2002066630
【特許文献8】WO2007069666
【特許文献9】WO2008118820
【特許文献10】WO2008124133
【特許文献11】WO2008151058
【特許文献12】WO2009006997
【特許文献13】WO2011027180
【特許文献14】WO1994004678
【特許文献15】WO2004041862
【特許文献16】WO2004041863
【特許文献17】WO2010109165A2
【特許文献18】EP129142
【特許文献19】EP1204740
【特許文献20】US6638768
【特許文献21】US6461818
【特許文献22】WO2011044050
【特許文献23】EP1399559
【特許文献24】US5859301
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Science 24 December 1982: Vol.218 no.4579 1319~1321頁;“Mouse c-myc oncogene is located on chromosome 15 and translocated to chromosome 12 in plasmacytomas";Crews et al
【非特許文献2】Proc Natl Acad Sci 1997年5月27日;94(11):5709~12頁;“The origin and efficient derivation of embryonic stem cells in the mouse";Brook FA & Gardner RL
【非特許文献3】Nature.1993年6月3日;363(6428):446~8頁;Naturally occurring antibodies devoid of light chains;Hamers-Casterman C、Atarhouch T、Muyldermans S、Robinson G、Hamers C、Songa EB、Bendahman N、Hamers R
【非特許文献4】Hybridoma 1997 Aug;16(4):381~9頁;“Rapid development of affinity matured monoclonal antibodies using RIMMS";Kilpatrick et al
【非特許文献5】Proc Natl Acad Sci;2011年10月11日;“Rapid and efficient reprogramming of somatic cells to induced pluripotent stem cells by retinoic acid receptor gamma and liver receptor homolog 1";Wang et al
【非特許文献6】http://bacpac.med.buffalo.edu/11framehmale.htm
【非特許文献7】http://www.tree.caltech.edu/lib_status.html
【非特許文献8】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/clone/library/genomic/16/
【非特許文献9】http://informa.bio.caltech.edu/idx_www_tree.html
【非特許文献10】http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/bac_clones_man.pdf
【非特許文献11】http://www.genebridges.com
【非特許文献12】Nikaido et al、Nature 292:845~848頁(1981)
【非特許文献13】Harlow,E.& Lane,D、1998、5th edition、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press、Plainview、NY
【非特許文献14】Pasqualini and Arap、Proceedings of the National Academy of Sciences(2004)101:257~259頁
【非特許文献15】Sambrook,J and Russell,D.(2001、3'd edition)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Lab.Press、Plainview、NY)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、精子におけるADAM6発現の維持は受精能のために不可欠である。そのためADAM6遺伝子が除去されている遺伝子導入オスマウス及びラットは繁殖可能ではないと考えられる。これは群体の繁殖を妨害し、そのようなマウスの遺伝子導入抗体生成プラットフォームとしての有用性を妨害する。繁殖可能である、改善された非ヒト遺伝子導入抗体生成脊椎動物を提供することは望ましい。
【0010】
参考文献
[1]Primakoff P、Myles DG. The ADAM gene family:surface proteins with adhesion and protease activity. Trends Genet. 2000 Feb;16(2):83~7頁
[2]Evans JP. Fertilin beta and other ADAMs as integrin ligands:insights into cell adhesion and fertilization. Bioessays. 2001 Jul;23(7):628~39頁
[3]Primakoff P、Myles DG. Penetration,adhesion,and fusion in mammalian sperm-egg interaction. Science. 2002年6月21日;296(5576):2183~5頁
[4]Talbot P、Shur BD、Myles DG. Cell adhesion and fertilization:steps in oocyte transport, sperm-zona pellucida interactions, and sperm-egg fusion. Biol Reprod. 2003 Jan;68(1):1~9頁
[5]Huovila AP et.al.、Shedding light on ADAM metalloproteinases. Trends Biochem Sci.2005 Jul;30(7):413~22頁
[6]Choi I, et.al.、Characterization and comparative genomic analysis of intronless Adams with testicular gene expression. Genomics. 2004 Apr;83(4):636~46頁
[7]Featherstone K、Wood AL、Bowen AJ、Corcoran AE. The mouse immunoglobulin heavy chain V-D intergenic sequence contains insulators that may regulate ordered V(D)J recombination. J Biol Chem. 2010 Mar 26;285(13):9327~38頁Epub 2010年1月25日
[8]Han C, et.al.、Comprehensive analysis of reproductive ADAMs:relationship of ADAM4 and ADAM6 with an ADAM complex required for fertilization in mice. Biol Reprod.2009 May;80(5):1001~8頁Epub 2009年1月7日
[9]Marcello et al、Lack of tyrosylprotein sulfotransferase-2 activity results in altered sperm-egg interactions and loss of ADAM3 and ADAM6 in epididymal sperm、J Biol Chem. 2011年4月15日;286(15):13060~70頁Epub 2011年2月21日
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために本発明は、
遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物(例えばマウス)の作製方法であって、
マウスが
(a)染色体12(又は前記脊椎動物についての対応する染色体)のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(b)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
方法が、
(c)1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを染色体12(又は前記脊椎動物についての対応する染色体)のDNAに、ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト内在性重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように挿入するステップによって遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む遺伝子導入マウス胚性幹細胞(ES細胞)を構築するステップ、
(d)ステップ(c)と同時に又は別々に、内在性抗体重鎖発現を不活性化するために前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を除去するステップであって、除去がマウスADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むステップ、
(e)ステップ(c)又は(d)と同時に又は別々に、ADAM6をコードしている1つ又は複数のヌクレオチド配列をES細胞ゲノムに挿入するステップ、並びに
(f)繁殖可能マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップであって、前記マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、且つ、ADAM6をコードしており、更には、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
のステップを含む方法を提供する。
【0012】
第二形態では、本発明は遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物(例えばマウス)の作製方法であって、
マウスが
(a)染色体12(又は前記脊椎動物についての対応する染色体)のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(b)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
方法が、
(c)1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを染色体12のDNAに、ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト内在性重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように挿入するステップによって遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む遺伝子導入マウス胚性幹細胞(ES細胞)を構築するステップ、
(d)ステップ(c)と同時に又は別々に、内在性抗体重鎖発現を不活性化するために前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を除去するステップであって、除去がマウスADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むステップ、
(e)子マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップであって、前記子マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含むステップ
(f)前記マウス由来の第二ES細胞を派生させるステップ及び前記第二ES細胞のゲノムにADAM6をコードしている1つ又は複数のヌクレオチド配列を挿入するステップ、並びに
(g)繁殖可能マウス又はその後代に第二ES細胞を成育させるステップであって、前記マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、且つ、ADAM6をコードしており、更には、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
のステップを含む方法を提供する。
【0013】
第三形態では、本発明は遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物(例えばマウス)の作製方法であって、
マウスが
(a)染色体12(又は前記脊椎動物についての対応する染色体)のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(b)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
方法が、
(c)1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを染色体12のDNAに、ヒト遺伝子セグメントがマウス又はヒト内在性重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように挿入するステップによって遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を含む遺伝子導入マウス胚性幹細胞(ES細胞)を構築するステップ、
(d)ステップ(c)と同時に又は別々に、内在性抗体重鎖発現を不活性化するために前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を除去するステップであって、除去がマウスADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むステップ、
(e)子マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップであって、前記子マウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含むステップ、並びに
(f) 前記子マウス(又は後代)と、そのゲノムが1つ又は複数のADAM6遺伝子を含むさらなるマウスとを用いる繁殖ステップによって、繁殖可能マウス又はその後代を成育させるステップであって、前記繁殖可能なマウス又はその後代のゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、且つ、ADAM6をコードしており、更には、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
のステップを含む方法を含む。
【0014】
第四形態では、本発明は遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物(場合によりオス)を提供し、脊椎動物は
(i)第一染色体のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている、
ゲノムを有し、
ゲノムの各第一染色体が
(iii)マウス又はヒト重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されている1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座
(iv)内在性抗体重鎖発現を不活性化するための前記染色体の内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、前記除去がマウスADAM6を含む、除去、
を含み、
ゲノムは
(v)ADAM6をコードする1つ又は複数の発現可能なヌクレオチド配列の挿入
を含む。
【0015】
それによりADAM6は、野生型繁殖可能非ヒト脊椎動物中の各前記第一染色体に属するが、内在性重鎖発現の不活性化は、同じ染色体上の除去された重鎖遺伝子セグメントと共に位置しているADAM6の除去を含む。例えば先行技術においての通り、内在性重鎖VDJをヒトVDJ遺伝子セグメントで正確に置き換えるための相同組換えの使用は、内在性ADAM6を除去し、それにより受精能に影響を与える。マウスでは、これは染色体12上の内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去が内在性重鎖発現を不活性化するために除去される場合に生じる。ラットでは、これは染色体6上の内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去が内在性重鎖発現を不活性化するために除去される場合に生じる。本発明は、受精能を回復させるためにADAM6を脊椎動物ゲノムに挿入する。
【0016】
第四形態の一態様では、脊椎動物はマウスであり、各第一染色体は染色体12である。
【0017】
次いで第四形態の一態様では、脊椎動物はラットであり、各第一染色体は染色体6である。
【0018】
本発明は、ステップ(a)から(d)をES細胞において実行し、挿入されたADAM6を(ホモ接合性又はヘテロ接合性状態で)コードするヌクレオチド配列及びホモ接合性状態にある前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含むゲノムを有する最終的な非ヒト脊椎動物を発生させるES細胞ゲノム技術を用いることによる遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物、例えばマウス又はラット、の作製方法であって、内在性ADAM6が除去されている方法を提供する。本発明は、この方法によって作製される繁殖可能非ヒト脊椎動物、例えばマウス若しくはラット、又はその繁殖可能オス若しくはメス後代も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】内在性IgH不活性化及び転座によるAdam6の保持についての模式図である。
【
図1b】内在性IgH不活性化及び転座によるAdam6の保持についての模式図である。
【
図2】ヒト遺伝子セグメントでの内在性(マウス)IgH遺伝子座遺伝子セグメントの相同性組換え置換及び付随するAdam6遺伝子の除去についての模式図である。
【
図3】ヒト遺伝子セグメントでの内在性(マウス)IgH遺伝子座遺伝子セグメントのRMGR置換及び付随するAdam6遺伝子の除去についての模式図である。
【
図4】除去ベクターの作出及び標的化についての模式図である。
【
図5】Adam6遺伝子を含有する標的化ベクターの作出についての模式図である。
【
図6】Adam6遺伝子を含有するIgH BACの作出についての模式図である。
【
図7】最終ヒトIGH BACと共にマウスAdam6a及びAdam6bをリコンビナーゼを介したカセット交換(RMCE)によってマウスゲノムに挿入する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物(例えば、マウス)の作製方法を提供する。方法から生じる最終的なマウスは、一実施形態ではオスであり、それにより本発明は、ゲノム操作の結果として不妊である先行技術オス遺伝子導入マウスを改善する。繁殖可能マウスは、メスマウス由来の卵を受精させ得る精子を産生する。受精能は、例えば、胚又は子マウスを産生するように順調に繁殖させるステップによって容易に決定される。別の実施形態では本発明の方法は、最終的なメスマウスを作製する。そのようなメスは、当然のことながらADAM6を保持し、繁殖可能であるオス後代を作出するための繁殖に有用である。
【0021】
本発明の本態様の方法では最終的なマウスは、染色体12のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含むゲノムを有する。野生型マウスにおける重鎖遺伝子座は、染色体12に見出され、下の説明の通り本発明は、同じ染色体上での遺伝子導入遺伝子座の構築を伴う。一例では遺伝子導入遺伝子座は、内在性マウス定常領域(少なくとも、マウスCmu及び/又はCgamma)の上流に挿入されたヒトVDJ遺伝子セグメントを含むキメラ遺伝子座である。ヒト遺伝子セグメントは、本発明において定常領域に作動可能に連結されており、それによりマウスでのB細胞後代への分化後にB細胞は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する重鎖を含むキメラ抗体を発現できる。本発明の任意の形態の代替的態様では、マウス(又は非ヒト)定常領域の代わりに各遺伝子導入重鎖遺伝子座は、ヒト重鎖定常領域、例えばヒトCmu(場合によりヒトCmuを含む、マウス又はヒトSmuと共に)及び/又はヒトガンマの上流に作動可能に連結された前記ヒトVDJ遺伝子セグメントを含む。
【0022】
この目的を達成するために、方法は、ヒト遺伝子セグメントがマウス内在性重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されるように1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを染色体12のDNA中に挿入するステップによって遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を有する遺伝子導入マウス胚性幹細胞(ES細胞)を構築するステップを含む。場合によりヒト遺伝子セグメントは、内在性マウスSmuスイッチ及びCmuの上流に挿入される。これは、目的の抗原での最終的なマウスの免疫化後に、in vivoでのIgMから別の型の抗体(例えばIgG)へのクラス転換のためにマウス内在性調節管理を利用するために有用である。一例では得られたES細胞は、遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してヘテロ接合性である、すなわち遺伝子導入遺伝子座は、細胞中の一方の染色体12に存在する。他方の染色体12は、例えば内在性重鎖遺伝子座を保有でき、及び場合によりこれは(例えば、機能性マーカー(例えば、neo若しくはhprt)の挿入によって又は内在性VDJ領域の全体又は部分などの遺伝子座の全体又は部分の除去によって)不活性化される。ヘテロ接合性ES細胞は、重鎖遺伝子導入遺伝子座に関してヘテロ接合性であるマウスに正当な経過で成育でき、遺伝子導入重鎖遺伝子座のコピーを同様に含有する他のマウスとの繁殖及び交雑を用いて、得られた後代は遺伝子導入重鎖導入遺伝子に関してホモ接合性であるように得られ得る。ADAM6をコードしている1つ又は複数のヌクレオチド配列は、ヘテロ接合性先祖マウスの一方又は両方のゲノムに(例えば、先祖マウスの先祖であるES細胞それぞれへのADAM6の挿入によって、又はその一方がADAM6を保有しており、得られる後代がADAM6を保有している前記先祖マウスの内の1匹であるマウスの繁殖によって)挿入され得る(下にさらに詳細に記載される)。代替的に重鎖導入遺伝子に関してホモ接合性であるが、ADAM6についてヌルである後代マウスは、そのゲノムがADAM6遺伝子を含有するマウスと交雑でき、繁殖を用いて重鎖導入遺伝子に関してホモ接合性でありADAM6遺伝子も含有する(ヘテロ接合性又はホモ接合性状態にある)後代を得ることができる。単なる繁殖を用い
る代わりに、ADAM6をコードしているヌクレオチド配列を重鎖導入遺伝子に関してホモ接合性である後代マウス由来のES細胞に挿入するためにES細胞ゲノム操作を用いることができ、次いでマウスはES細胞(又はその後代)から、最終的なマウスゲノムが重鎖導入遺伝子に関してホモ接合性であり、ADAM6遺伝子も含有するように成育される。動物畜産、交雑、繁殖及びES細胞(例えば、IPS細胞)ゲノム操作の技術は、当技術分野の状況において容易に入手でき、当業者によく知られている。
【0023】
本発明の方法では、ヒト遺伝子セグメントをES細胞ゲノムに挿入するステップと同時に又は別々に、前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分は、内在性抗体重鎖発現を不活性化するために除去される、すなわちES細胞由来の最終的な後代マウスでは、内在性抗体重鎖発現は不活性化される。一実施形態では内在性VDJ除去は、ヒトVDJの挿入と同時に実行される。例えば、マウスVDJ領域全体(又は、ADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むその部分)をヒトVDJ遺伝子セグメントで正確に置き換える技術において相同組換えを用い得る。一方法(例えば、WO2002066630を参照されたい)は、それぞれ1つ又は複数のヒトVH及び/又はD及び/又はJHセグメントを保有している複数の相同組換えベクター(例えば、細菌性人工染色体、BAC)を用いることであり、ベクターは遺伝子導入重鎖遺伝子座の5'端に位置する1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメントに隣接する相同腕を有する。このベクターでは5'相同腕は、内在性重鎖遺伝子座のすぐ5'のマウスゲノム配列に対応する配列であってよい。標準的相同組換えを用いて、これは内在性重鎖遺伝子座の5'位置の内在性マウス遺伝子セグメントを正確に置き換えるようにヒト遺伝子セグメントを挿入する。別のベクターは、遺伝子導入重鎖VDJの3'端に位置する1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメント(及び場合によりマウスJ-Cイントロンの全体又は部分)に隣接する相同腕を含む。このベクターでは、3'相同腕は内在性重鎖Cmu(又は別の下流内在性定常領域)のすぐ5'のマウスゲノム配列に対応する配列であってよく、代替的に3'相同腕は、内在性J-Cイントロンの全体又は部分に対応する配列であってよい。標準的相同組換えを用いて、これは内在性重鎖遺伝子座の3'位置の内在性マウス遺伝子セグメントを正確に置き換えるようにこのベクター由来のヒト遺伝子セグメントを挿入する。一実施形態では複数のBACは重複する相同腕を有し、内在性VDJをヒトVDJ遺伝子セグメントで置き換えるために用いられ得る(例えばWO2009076464を参照されたい)。別の実施形態ではこれらの相同組換え技術の1つ又は複数が、ヒトVDJが内在性VDJ領域のすぐ下流(3')に挿入され(例えば、内在性J-Cmuイントロンに挿入される)、1つ又は複数の続くステップにおいて内在性VDJ(又はADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むその部分)が、例えば標準的部位特異的組換え(例えば、cre/lox)、トランスポゾン(例えば、piggyBacトランスポゾン)又は相同組換え技術を用いて除去される変更と共に一般に用いられ得る。別の実施形態ではヒトVDJは、第一マウスVH遺伝子セグメントの5'(例えば、5'すぐ若しくは5'の100kb以内)に挿入され、1つ又は複数の続くステップでは内在性VDJ(又はADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むその部分)が除去される。
【0024】
本発明の任意の形態、態様又は実施形態の一実施形態では(例えば、本発明の方法及び脊椎動物)、内在性VDJ(又はADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むその部分)は、異なる染色体種への転座によって染色体から除去される。例えば異なる染色体は染色体15である。マウスでの染色体12と15との間の転座は、例えば染色体12上の重鎖遺伝子座と染色体15上のc-mycの間の転座が可能であることが公開された知見から周知であることから望ましい(例えば、Science 24 December 1982: Vol.218 no.4579 1319~1321頁;“Mouse c-myc oncogene is located on chromosome 15 and translocated to chromosome 12 in plasmacytomas";Crews et alを参照されたい)。したがって脊椎動物がマウスである一例では、内在性VDJ(又はその部分)は、染色体15への転座によって染色体12から除去されている。脊椎動物がラットである別の例では、内在性VDJ(又はその部分)は、染色体15への転座によって染色体6から除去されている。したがって、本発明の最終的な繁殖可能マウス又はマウス後代では、内在性重鎖発現は内在性重鎖遺伝子座VDJの少なくとも部分の非野生型染色体(すなわち、染色体12ではない)への転座によって不活性化されている。したがって本発明の最終的な繁殖可能ラット又はラット後代では、内在性重鎖発現は内在性重鎖遺伝子座VDJの少なくとも部分の非野生型染色体(すなわち、染色体6ではない)への転座によって不活性化されている。この場合転座された内在性VDJ(又は部分)は、動物のゲノムに保持されるが、内在性重鎖発現について非機能性にされている。これは、内在性ADAM6遺伝子が不活性化をもたらすように野生型染色体位置から除去されているが、挿入される内在性ADAM6遺伝子が内在性重鎖発現を再活性化することなく機能できる(したがって下流動物に受精能を与える)方法での転座によって、完全に異なる染色体種(すなわち、抗体重鎖遺伝子座を有さないもの)上の他の場所のゲノムに次いで挿入されることから有利である。したがって転座は、得られる動物に受精能を提供するための内在性、野生型ADAM6遺伝子の保持を伴う不活性化を可能にする。これは(それが内在性配列であることから)ADAM6遺伝子を動物のゲノムに合わせ、一実施形態では挿入された各内在性ADAM6遺伝子のその内在性プロモーター(及び、エンハンサーなどの任意の他の調節エレメント)を伴う移行も可能にする。したがって一実施形態では不活性化は、それぞれのプロモーターを含む1つ又は複数のADAM6遺伝子を含む染色体配列(例えば、マウスでは染色体12又はラットでは6の配列)の除去によって実行され、これは重鎖遺伝子座を含まない染色体(例えば、マウスでは染色体12以外の染色体、ラットでは染色体6以外の染色体)への転座によって挿入される。これは、例えば少なくとも最も3'側の内在性VH遺伝子セグメント及び最も5'側の内在性Dセグメントに直接隣接されているDNAの転座によって達成され得る。非ヒト脊椎動物がマウスである一例では、転座されるDNAはマウスVH5-1からD1-1遺伝子セグメント由来のDNAを含む、又はそれからなる。一実施形態では内在性VD領域全体が転座される。別の実施形態ではVDJ領域全体が転座され、いずれの場合にも埋め込まれた内在性ADAM6遺伝子も転座する。
【0025】
マウスを参照して本明細書に記載された全ての技術は、ADAM6が内在性VDJと共に除去されている(例えばADAM6が内在性VDJ領域に埋め込まれている)他の非ヒト脊椎動物にも適用される。例えば技術は、別の遺伝子導入ネズミ種に適用され得る。技術は、遺伝子導入ラットに適用され得る。全体として本開示は、この点を考慮して解釈され、そのため遺伝子導入マウスに関連する考察は他の非ヒト遺伝子導入動物を作製するステップにも等しく適用される。したがって例えば、マウス染色体12が述べられる場合及び遺伝子導入マウスの作製では、本明細書の開示は遺伝子導入ラットの作製の代替として解釈でき、この場合ラット染色体6が対象とされる。
【0026】
全ての場合で、染色体上の内在性VDJ領域中の除去は、好ましくはADAM6をコードしている全てのヌクレオチド配列の除去を含む。したがって脊椎動物がマウスである場合、ADAM6a及びADAM6bが除去される。例えば最も3'側の内在性VH遺伝子セグメント及び最も5'側の内在性Dセグメントによって直接隣接されているDNAは除去される。非ヒト脊椎動物がマウスである一例では、マウスVH5-1からD1-1遺伝子セグメント由来のDNAが除去される。
【0027】
本発明は、ステップ(a)から(d)をES細胞において実行し、挿入されたADAM6を(ホモ接合性又はヘテロ接合性状態で)コードしているヌクレオチド配列及びホモ接合性状態にある前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含むゲノムを有する最終的な非ヒト脊椎動物を発生させるES細胞ゲノム技術を用いることによる遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物、例えばマウス又はラット、の作製方法であって、内在性ADAM6が除去されている方法を提供する。本発明は、この方法によって作製される繁殖可能非ヒト脊椎動物、例えばマウス若しくはラット、又はその繁殖可能オス若しくはメス後代も提供する。
【0028】
一態様では、ヒトVDJを挿入するステップ及び内在性VDJ(又はその部分)を除去するステップと同時又は別々に、方法は、
- ADAM6をコードしている1つ又は複数のヌクレオチド配列をES細胞ゲノムに挿入するステップ、及び
- そのゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、ADAM6をコードしている繁殖可能マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップであって、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
を含む。
【0029】
別の態様では、ヒトVDJを挿入するステップ及び内在性VDJ(又はその部分)を除去するステップの後に、方法は、
- そのゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座の1つ又は複数を含む(例えば、遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である)子マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップ、
- 前記マウスから第二ES細胞を派生させるステップ、及び前記第二ES細胞のゲノムにADAM6をコードしている1つ又は複数のヌクレオチド配列を挿入するステップ、並びに
- そのゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、ADAM6をコードしている繁殖可能マウス又はその後代に第二ES細胞を成育させるステップであって、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
を含む。
【0030】
別の態様では、ヒトVDJを挿入するステップ及び内在性VDJ(又はその部分)を除去するステップの後に、方法は、
- そのゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座を含む(例えば、遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である)子マウス又はその後代にES細胞を成育させるステップ、及び
- 前記子マウス(又は後代)、及びそのゲノムがADAM6をコードしている1つ又は複数のヌクレオチド配列を含むさらなるマウスを用いて繁殖させるステップによって、そのゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、ADAM6をコードしている繁殖可能マウス又はその後代を成育させるステップであって、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分がゲノム中の両方の染色体12から除去されており、場合により前記繁殖可能マウス又は後代がオスであるステップ
を含む。
【0031】
この態様では、場合により前記さらなるマウスはADAM6に関してホモ接合性である、例えばマウスゲノムはホモ接合性状態でADAM6a及びADAM6bを含む。場合により前記マウスは、同じマウス株である。
【0032】
当業者は胚性幹細胞を派生させるための技術を認識している。例えば前記第二ES細胞は、ES細胞生成のための任意の標準的技術を用いて胚(例えば、胚盤胞期)から生成され得る。例えばProc Natl Acad Sci 1997年5月27日; 94(11):5709~12頁;“The origin and efficient derivation of embryonic stem cells in the mouse";Brook FA & Gardner RLを参照し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。胚は、前記子マウス又はその後代胚であってよい。他の標準的ES細胞生成技術は用いられ得る。別の実施形態では第二ES細胞は、前記子マウス又はその後代から派生されるIPS細胞(人工多能性幹細胞)である。IPS技術及び好適な方法についての助言を提供するWO2007069666、WO2008118820、WO2008124133、WO2008151058、WO2009006997及びWO2011027180を参照し、その開示はその全体が本明細書に組み込まれる。一例ではIPS細胞は、子マウス又はその後代マウスの体細胞から標準的方法を用いて直接(すなわち、繁殖の必要なく)生成され得る。
【0033】
ES細胞技術に精通している当業者は、そのゲノムが操作されている遺伝子導入ES細胞からどのように子を成育させるかを容易に理解する。例えば、非ヒト(例えば、マウス)ES細胞(重鎖遺伝子導入遺伝子座を有するES細胞など)は、ドナー胚盤胞(例えば、ES細胞と同じ株の脊椎動物の胚盤胞)に移植される。次いで胚盤胞は、子(胚又は生まれた子)に成育させる養母に移植される。このような方法で、それぞれ改変された各子ES細胞それぞれから複数の子が成育され得る。同胞は、遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である1つ又は複数の得られる後代を提供する交雑を達成するために一緒に飼育され得る。
【0034】
一例では本発明の任意の形態、態様又は実施例によるマウスES細胞、ES細胞は、
(f)ES細胞をドナーマウス胚盤胞又は初期胚(例えば、前桑実胚期)に移行させるステップ、
(g)胚盤胞又は胚を養母マウスに移植するステップ、並びに
(h)繁殖可能であり、そのゲノムが前記遺伝子導入重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であり、ADAM6をコードしている子マウス又はその後代に胚盤胞又は胚を成育させるステップ
によって子又は後代に成育される。
【0035】
本発明の形態の任意の態様では、ADAM6をコードしているヌクレオチド配列の挿入位置は元の染色体(例えば、マウスについて染色体12又はラットについて染色体6)に限定されず、別の染色体への又は元の染色体だが野生型ADAM6遺伝子位置とは離れた位置での挿入が可能である。一例ではADAM6遺伝子は元の染色体に挿入され、例えば遺伝子導入マウスを作製する場合にはADAM6をコードしているヌクレオチド配列は染色体12に挿入され、遺伝子導入ラットを作製する場合にはADAM6をコードしているヌクレオチド配列は染色体6に挿入される。一例ではADAM6をコードしているヌクレオチド配列は、一方又は両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座の20、15、10、5、4、3、2、1又は0.5Mb以内に挿入される。これは、挿入されたADAM6と遺伝子導入重鎖遺伝子座との間の連鎖を最大化し、次の減数分裂及び交雑の際(例えば後代の繁殖の際)の遺伝子の分離を最小化するために有用である。したがって最終的なマウス及びその後代は、本発明の受精能有利点を保持できる一方で、新規動物系統を作出するために有用な続く繁殖及び交雑を可能にする。別の例ではADAM6をコードしているヌクレオチド配列は、一方又は両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座内に(例えばヒトVH遺伝子セグメントの最も3'側とヒトDセグメントの最も5'側との間のDNAに)挿入され、その性質はADAM6を有するための許容的容認を示す。
【0036】
本発明の形態の任意の態様では、1つ又は複数のADAM6(例えば2つの)をコードしているヌクレオチド配列は、ES細胞技術によって及び/又は繁殖によって脊椎動物ゲノムに挿入される。挿入されたADAM6をコードしているヌクレオチド配列は、レシピエント非ヒト脊椎動物と同じ種由来である必要はない。例えば脊椎動物はマウスであり、ラット又は霊長類(例えば、ヒト)ADAM6をコードしているヌクレオチド配列が挿入される。例えば脊椎動物はラットであり、マウス又は霊長類(例えば、ヒト)ADAM6をコードしているヌクレオチド配列が挿入される。
【0037】
一実施形態では脊椎動物はマウスであり、ADAM6をコードしているヌクレオチド配列が一方又は両方の染色体12に挿入されている。例えば、マウスADAM6a及びADAM6b又はラットADAM6が一方又は両方の染色体12に挿入される。例えばマウスADAM6をコードしているヌクレオチド配列は、ヒトVH遺伝子セグメントの最も3'側とヒトDセグメントの最も5'側との間に挿入される。
【0038】
一実施形態では、脊椎動物はラットであり、ADAM6をコードしているヌクレオチド配列が一方又は両方の染色体6に挿入される。例えばマウス又はラットADAM6が一方又は両方の染色体6に挿入される。例えばマウス又はラットADAM6をコードしているヌクレオチド配列が最も3'側のヒトVH遺伝子セグメントと最も5'側のヒトDセグメントとの間に挿入される。
【0039】
本発明の形態の任意の態様では、各ADAM6は発現可能である。例えば挿入されるADAM6ヌクレオチド配列は、発現のためのプロモーター(及び場合によりエンハンサー又は他の制御エレメント)に作動可能に連結されるように挿入される。プロモーターは、非ヒト脊椎動物に内在性であるものであってよく、例えばマウスプロモーター(例えば、野生型マウスでADAM6発現を駆動するもの)、又は外来性(異なる種由来)であってよい。例えば、ゲノムに挿入されるADAM6は、内在性マウスADAM6プロモーターに作動可能に連結されるラットADAM6ヌクレオチド配列である。代替的に、ゲノムに挿入されるADAM6は、内在性ラットADAM6プロモーターに作動可能に連結されたマウスADAM6ヌクレオチド配列である。
【0040】
一実施形態では、配列番号1、2、3及び4(下の配列表を参照されたい)からなる群から選択されるADAM6ヌクレオチド配列が挿入される。
【0041】
本発明の方法の一実施形態ではヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントは、内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分を置き換えるように染色体に挿入され、それによりヒト遺伝子セグメントの挿入及び内在性VDJ DNAの染色体又はゲノムからの除去が同時に生じ、場合により内在性VDJ領域全体が置き換えられる。ヒト遺伝子セグメントの挿入は、正確な置き換えを実行するために例えば相同組換え及び/又は部位特異的組換え(例えば、リコンビナーゼ調節カセット交換)を用いて実施される。ゲノムからの内在性VDJ(詳細には内在性VDJ全体)の除去は、定常領域遺伝子セグメントとの組換えの可能性を完全に除き、したがって確実に内在性重鎖発現を完全に除くために有利である。
【0042】
脊椎動物がマウスである本発明の方法の一例では、マウスADAM6a及びADAM6bをコードしているヌクレオチド配列が、最終的な繁殖可能マウスがADAM6a及びADAM6bタンパク質の両方を発現できるように挿入される。
【0043】
本発明の方法の一例では、最終的な繁殖可能マウス又は後代のゲノムは、挿入されたADAM6をコードしている各ヌクレオチド配列に関してホモ接合性である。場合によりゲノムは、2コピーを超えるマウスADAM6a及び/又はADAM6bをコードしているヌクレオチド配列を含む。場合により代替としてゲノムは、2コピーのADAM6a及び1コピー(ヘテロ接合性)のADAM6b又は1コピーのADAM6a及び2コピーのADAM6bを含む。
【0044】
別の形態では本発明は、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である繁殖可能非ヒト脊椎動物(場合によりオス)であって、脊椎動物が
(i)第一染色体のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている、
ゲノムを有し、
ゲノムの各第一染色体が
(iii)マウス重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されている1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座
(iv)内在性抗体重鎖発現を不活性化するための前記染色体の内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、ADAM6を含む除去、
を含み、
ゲノムが
(v)ADAM6をコードする1つ又は複数の発現可能なヌクレオチド配列の挿入、
を含む繁殖可能非ヒト脊椎動物を提供する。
【0045】
例えば非ヒト脊椎動物は、ネズミである。例えば非ヒト脊椎動物は、マウス又はラットである。
【0046】
一態様では本発明は、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性であるマウス(場合により、オスマウス)などの非ヒト脊椎動物であって、マウスが
(i)染色体12(又は前記脊椎動物に対応する染色体)のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含む、及び
(ii)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている、
ゲノムを有し、
ゲノムの各染色体12が
(iii)重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されている1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座
(iv)内在性抗体重鎖発現を不活性化するため(マウス/B細胞に分化した後)の前記染色体12のマウス内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、マウスADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含む除去(すなわちゲノムには機能性内在性ADAM6遺伝子が残らない)、
を含み、並びに
ゲノムが
(v)ADAM6をコードしている1つ又は複数の発現可能なヌクレオチド配列の挿入
を含む非ヒト脊椎動物を提供する。
【0047】
本発明の動物においてADAM6配列をどのように及びどこに挿入するかの判断は、一般に上に検討されている。
【0048】
定常領域は、例えばマウス定常領域、例えば内在性定常領域である。したがって脊椎動物がマウスである場合、定常領域は、内在性マウス定常領域、例えばマウスCmu及び/又はマウスCgammaであり、場合により内在性マウス又はラットSmuスイッチを有する。
【0049】
別の態様では本発明は、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座に関してホモ接合性である非ヒトラット(場合により、オスラット)であって、ラットが
(i)染色体6のそれぞれのコピー上に各遺伝子導入重鎖遺伝子座を含み、並びに
(ii)内在性抗体重鎖発現について不活性化されている
ゲノムを有し、
ゲノムの各染色体6が
(iii)重鎖定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結されている1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含む遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座、
(iv)内在性抗体重鎖発現(マウス/B細胞に分化した後)を不活性化するための前記染色体6のラット内在性重鎖VDJ領域の全体又は部分の除去であって、ラットADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含む除去(すなわちゲノムには機能性内在性ADAM6遺伝子が残らない)、
を含み、並びに
ゲノムが
(v)ADAM6をコードしている1つ又は複数の発現可能なヌクレオチド配列の挿入
を含む非ヒトラットを提供する。
【0050】
定常領域は、例えばラット定常領域、例えば内在性定常領域である。したがって脊椎動物がラットである場合、定常領域は内在性ラット定常領域、例えばラットCmu及び/又はラットCgammaであり、場合により内在性マウス又はラットSmuスイッチを有する。
【0051】
本発明のホモ接合性マウス又はラットの一例では、挿入されたADAM6をコードしている各ヌクレオチド配列は、(i)動物がマウスである場合は染色体12上に、又は(ii)動物がラットである場合は染色体6上にある。
【0052】
本発明のホモ接合性マウス又はラットの一例では、挿入されたADAM6をコードしているヌクレオチド配列は、(i)一方若しくは両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座内、又は(ii)一方若しくは両方の遺伝子導入重鎖遺伝子座の20Mb以内に挿入される。
【0053】
本発明のホモ接合性マウス又はラットの一例では、ヒト遺伝子セグメントは各重鎖遺伝子座中の内在性VDJ領域の全体又は部分を置き換える。
【0054】
本発明のホモ接合性マウス又はラットの一例では、ゲノムはマウスADAM6a及びADAM6bをコードしている、挿入された発現可能なヌクレオチド配列を含む。
【0055】
本発明のホモ接合性マウス又はラットの一例では、ゲノムはラットADAM6をコードしている、挿入された発現可能なヌクレオチド配列を含む。
【0056】
本発明のホモ接合性マウス又はラットの一例では、ゲノムは挿入されたADAM6をコードしている各ヌクレオチド配列に関してホモ接合性である。場合によりゲノムは、ラットADAM6、マウスADAM6a及びマウスADAM6bをコードしているヌクレオチド配列から選択される2コピーを超えるADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含む。場合によりゲノムは、2コピーのADAM6a及び1コピー(ヘテロ接合性)のADAM6b、又は1コピーのADAM6a及び2コピーのADAM6bを含む。
【0057】
本発明のホモ接合性マウス又はラットの一例では、ゲノムは軽鎖定常領域(例えば、内在性マウス又はラットCカッパ定常領域)の上流に作動可能に連結された1つ又は複数のヒト軽鎖V遺伝子セグメント及び1つ又は複数の軽鎖J遺伝子セグメントをそれぞれ含む1つ又は複数の遺伝子導入軽鎖遺伝子座を含む。
【0058】
転座による内在性抗体鎖発現の不活性化
一形態では本発明は
(i)ヒト可変領域(場合により抗体遺伝子再構成後)を含む抗体を発現できる1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性抗体発現について不活性化されており、
(iii)内在性可変領域遺伝子セグメントが、前記非ヒト型の野生型脊椎動物における抗体可変領域遺伝子セグメントを含有しない染色体種(例えば、染色体15)に転座されており、それにより内在性抗体発現が不活性化されている、
ゲノムを有する非ヒト脊椎動物(場合によりマウス若しくはラット)又は非ヒト脊椎動物細胞(場合によりマウス又はラット細胞)
を提供する。
【0059】
脊椎動物は、本明細書に開示の任意の非ヒト脊椎動物であってよい。遺伝子導入抗体遺伝子座は、本明細書に開示の任意のものであってよい。細胞は、本明細書に開示のES細胞、IPS細胞、B細胞又は任意の他の非ヒト脊椎動物細胞であってよい。
【0060】
一例では内在性可変領域遺伝子セグメントは、本発明の脊椎動物又は細胞が由来する先祖細胞(例えば、ES細胞)での転座によって前記非ヒト型の野生型脊椎動物における抗体可変領域遺伝子セグメントを含有しない染色体種(例えば、染色体15)に転座されている。
【0061】
本発明は、
(i)ヒト可変領域(場合により抗体遺伝子再構成後)を含む抗体を発現できる1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性マウス抗体発現について不活性化されており、
(iii)複数の内在性マウス可変領域遺伝子セグメントがゲノム中の染色体12から欠如しているが、染色体12以外の1つ又は複数の染色体上の生殖系列配置には(互いに)存在しており(例えば、遺伝子セグメントは染色体15上にある)、それにより内在性マウス抗体発現が不活性化されている
ゲノムを有するマウス又はマウス細胞も提供する。
【0062】
さらに本発明は、
(i)ヒト可変領域(場合により抗体遺伝子再構成後)を含む抗体を発現できる1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を含み、及び
(ii)内在性ラット抗体発現について不活性化されており、
(iii)複数の内在性ラット可変領域遺伝子セグメントがゲノム中の染色体6から欠如しているが、染色体6以外の1つ又は複数の染色体上の生殖系列配置には(互いに)存在しており(例えば、遺伝子セグメントは染色体15上にある)、
それにより内在性ラット抗体発現が不活性化されている
ゲノムを有するラット又はラット細胞を提供する。
【0063】
本発明がES細胞などの細胞に関する場合、内在性抗体発現の不活性化は内在性抗体(すなわち、その可変領域が前記非ヒト脊椎動物型(例えば、マウス又はラット抗体)だけであり、ヒト可変領域ではない抗体)を発現するための分化した抗体産生後代細胞又は非ヒト脊椎動物の能力の欠如に関する。したがって本発明では、脊椎動物、マウス、ラットは、ヒト可変領域を含む遺伝子導入抗体だけを発現し、内在性抗体を発現しない(又は実質的に発現しない)。一例では遺伝子導入抗体遺伝子座は、例えば所定の抗原での脊椎動物、マウス又はラットの免疫化後にin vivoで再構成を受ける。再構成後に生物は、前記再構成された遺伝子座から抗体鎖を発現でき、鎖はヒト可変領域を含む抗体を形成する。
【0064】
一実施形態では脊椎動物、マウス、ラット又は細胞ゲノムは、遺伝子導入抗体重鎖遺伝子座を(ヘテロ接合性又はホモ接合性状態で)含み、遺伝子座は非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)定常領域(場合によりCmu及び/又はCgamma)の上流に作動可能に連結された1つ又は複数のヒトVH遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒトD遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトJH遺伝子セグメントを含み、前記内在性可変領域遺伝子セグメントは、内在性
(a)VH
(b)D、
(c)JH、
(d)VH及びD、
(e)D及びJH、並びに
(f)VH、D及びJH
から選択される。
(a)から(f)では、遺伝子セグメント間の介在配列も含まれ得る。
【0065】
本実施形態の一例では、定常領域は内在性定常領域(内在性マウスCmu及び/又は内在性マウスCgammaなどの)例えば内在性Cmu及び/又はCgammaである。
【0066】
一実施形態では、脊椎動物、マウス、ラット又は細胞ゲノムは、発現可能な内在性ADAM6遺伝子又はADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0067】
一実施形態では脊椎動物、マウス、ラット又は細胞はオス脊椎動物、マウス、ラット又は細胞、例えばそのゲノムが内在性ADAM6遺伝子を含むものである。
【0068】
一実施形態では、内在性VDJの実質的に全体(又はADAM6をコードしているヌクレオチド配列を含むその部分)は、異なる染色体種への転座によって染色体から除去される。例えば異なる染色体は染色体15である。マウスでの染色体12と15との間の転座は、例えば染色体12上の重鎖遺伝子座と染色体15上のc-mycの間の転座が可能であることが公開された知見から周知であることから望ましい(例えば、Science 24 December 1982:Vol.218 no.4579 1319~1321頁;“Mouse c-myc oncogene is located on chromosome 15 and translocated to chromosome 12 in plasmacytomas";Crews et alを参照されたい)。したがって脊椎動物がマウスである一例では、内在性VDJ(又はその部分)は染色体15への転座によって染色体12から除去される。脊椎動物がラットである別の例では、内在性VDJ(又はその部分)は染色体15への転座によって染色体6から除去される。したがって本発明の最終的な繁殖可能マウス又は後代では、内在性重鎖発現は内在性重鎖遺伝子座VDJの少なくとも部分の非野生型染色体(すなわち、染色体12ではない)への転座によって不活性化される。したがって本発明の最終的な繁殖可能ラット又は後代では内在性重鎖発現は、内在性重鎖遺伝子座VDJの少なくとも部分の非野生型染色体(すなわち染色体6ではない)への転座によって不活性化される。この場合転座された内在性VDJ(又は部分)は、動物ゲノムに保持されるが、内在性重鎖発現について非機能性にされる。これは、内在性ADAM6遺伝子が不活性化をもたらすように野生型染色体位置から除去されているが、挿入される内在性ADAM6遺伝子が内在性重鎖発現を再活性化することなく機能できる(したがって下流動物に受精能を与える)方法での転座によって、完全に異なる染色体種(すなわち、抗体重鎖遺伝子座を有さないもの)上の他の場所のゲノムに次いで挿入されることから有利である。したがって転座は、得られる動物に受精能を提供するための内在性、野生型ADAM6遺伝子の保持を伴う不活性化を可能にする。これは(それが内在性配列であることから)ADAM6遺伝子を動物のゲノムに合わせ、一実施形態では挿入された各内在性ADAM6遺伝子のその内在性プロモーター(及び、エンハンサーなどの任意の他の調節エレメント)を伴う移行も可能にする。したがって一実施形態では不活性化は、それぞれのプロモーターを含む1つ又は複数のADAM6遺伝子を含む染色体配列(例えば、マウスでは染色体12又はラットでは6の配列)の除去によって実行され、これは重鎖遺伝子座を含まない染色体(例えば、マウスでは染色体12以外の染色体、ラットでは染色体6以外の染色体)への転座によって挿入される。これは、例えば少なくとも最も3'側の内在性VH遺伝子セグメント及び最も5'側の内在性Dセグメントに直接隣接されているDNAを転座することによって達成され得る。非ヒト脊椎動物がマウスである一例では、転座されるDNAはマウスVH5-1からD1-1遺伝子セグメント由来のDNAを含む、又はそれからなる。一実施形態では内在性VD領域全体が転座される。別の実施形態ではVDJ領域全体が転座され、いずれの場合にも埋め込まれた内在性ADAM6遺伝子も転座する。
【0069】
したがって本発明は、
非ヒト脊椎動物細胞(場合によりマウス若しくはラット細胞)又は非ヒト脊椎動物(例えばマウス又はラット)の作製方法であって、
(i)ヒト可変領域遺伝子セグメントを含む1つ又は複数の遺伝子導入抗体遺伝子座を非ヒトES細胞ゲノムに挿入するステップ、及び
(ii)前記非ヒト型の野生型脊椎動物における抗体可変領域遺伝子セグメントを含有しない染色体種(例えば染色体15)に内在性可変領域遺伝子セグメント(例えば、内在性重鎖VDJ領域全体)を転座するステップによって内在性抗体発現を不活性化するステップであって、
それにより、内在性抗体発現が不活性化されている後代細胞(例えば、B細胞又は融合細胞)を生じさせることができる非ヒト脊椎動物ES細胞が産生され、後代がヒト可変領域を含む抗体を発現できるステップ、並びに
(iii)場合により前記ES細胞を前記後代細胞又は、前記後代細胞を含む非ヒト脊椎動物(例えば、マウス又はラット)に分化させるステップ
を含む方法を提供する。
【0070】
一例では生殖系列配置中の介在配列を含む内在性重鎖VDJ領域全体(又は実質的に全体)が転座される。場合により細胞/脊椎動物のゲノムは、この転座に関してホモ接合性である。代替的に又は追加的に、軽鎖VJ領域が転座される、例えば生殖系列配置中の介在配列を含む内在性軽鎖(例えば、カッパ)VJ領域全体(実質的に全体)が転座される
【0071】
本発明の非ヒト脊椎動物は、目的の標的抗原又はエピトープでの免疫化に続く抗体の生成のために有用である。有用なことに生成される抗体は、ヒト重鎖(及び場合により軽鎖)可変領域を有する。重鎖(及び場合により軽鎖)定常領域は非ヒト種(例えば動物に内在性)のものであり、内在性抗体発現及びB細胞発生制御機構の抑制を可能にし、それにより抗体生成を促進する。抗原免疫化に続く単離後に、選択された抗体はヒト投与のための適合性を増大させるために従来技術によって定常領域をヒト定常領域に交換するステップによってフォーマットされ得る。
【0072】
本発明の動物から単離された抗体(又は誘導体抗体)は、それらがヒト重鎖可変領域を含む限り任意のフォーマットであってよい。例えば本発明は、抗体がそれぞれ重鎖2本及び軽鎖2本を含有する4本鎖抗体に適用可能である。代替的に本発明は、ヒトV領域を保有し、CH1及び軽鎖を欠いているH2抗体(重鎖抗体)にも適用可能である(ラクダH2抗体に相当する:例えばNature.1993年6月3日;363(6428):446~8頁;Naturally occurring antibodies devoid of light chains;Hamers-Casterman C、Atarhouch T、Muyldermans S、Robinson G、Hamers C、Songa EB、Bendahman N、Hamers Rを参照されたい)。これらの抗体は、抗原に特異的に結合するように機能し、そのような抗体はラクダ科(例えば、ラマ、ラクダ、アルパカ)の血液中に見出されるものに類似している。ヒトVH対を有するそのような抗体は、治療用及び予防用医薬を提供するために合成的に産生され得る(例えば、WO1994004678、WO2004041862、WO2004041863を参照されたい)。遺伝子導入マウスもそのような重鎖抗体を産生でき、抗体のin vivo産生はマウスの免疫系にヒトVH-VH対形成の選択を可能にし、対形成を適合させるようにマウスによってin vivoで変異が導入されているそのような対形成を時には選択している(WO2010109165A2)。したがって本発明の一実施形態では重鎖導入遺伝子はCH1遺伝子セグメントを欠いており、ゲノムは機能性抗体軽鎖遺伝子座を含まない。代替的に検査抗体は、定常領域及びヒト重鎖可変領域を含む抗体断片、例えばFab又はFab2である。
【0073】
当業者は、例えば初期及び追加免疫プロトコルを用いる、抗原での免疫化のための日常的方法及びプロトコルをよく知っている。好適なプロトコルはRIMMSである(Hybridoma 1997 Aug;16(4):381~9頁;“Rapid development of affinity matured monoclonal antibodies using RIMMS";Kilpatrick et alを参照されたい)。本発明の脊椎動物の免疫化のために好適なヒト標的又はエピトープは、任意の好適な供給源由来であってよく、例えばヒトドナーの血液又は組織試料由来のDNAをクローニングするステップによって得られる。
【0074】
本明細書及び本発明の任意の形態、態様、実施形態又は実施例への適用を含む全体を通じて、用語「内在性」(例えば、内在性定常領域)は、非ヒト脊椎動物又は細胞、エレメント又はその特性(例えば「内在性ADAM6」又は「内在性定常領域」)に関して、エレメントが(外来性定常領域、ADAM6又はその配列がそのような脊椎動物若しくは細胞において通常見出されない他のエレメントとは対照的に)脊椎動物又は非ヒト種若しくは株の細胞において通常見出される種類のエレメントであることを示す。
【0075】
一例では各マウス又はES細胞は、129マウス遺伝的背景を有するものである。一例ではマウス又はES細胞は、AB2.1マウス遺伝的背景を有する。別の例ではマウス又はES細胞は、129、C57BL/6N、C57BL/6J、JM8、AB2.1、AB2.2、129S5又は129Svから選択されるマウス株の遺伝的背景を有する。
【0076】
本発明の脊椎動物から単離される抗体は、次に例えば、医薬品を作製するために標識又は毒素、PEG又は他の成分の付加によって(化学的コンジュゲーションによってなど)誘導体化され得る。誘導体化は、例えば抗体から開発される薬物に追加的機能性を付加することが望ましい場合に有用である。例えばがん適応症に関して、殺細胞を補助する追加的成分を付加することは望ましい場合がある。別の実施形態では、脊椎動物から単離される抗体の可変領域はin vivo又はin vitroで(例えば、ファージディプスレイ、リボソームディプスレイ、酵母ディプスレイなどによって)親和性成熟される。別の実施形態では、脊椎動物から単離される抗体の定常領域はin vivo又はin vitroで(例えば、無作為又は配向性、特異的変異導入によって及びファージディプスレイ、リボソームディプスレイ、酵母ディプスレイなどによる任意での選択によって)成熟される。定常領域は、Fc機能(例えば、ADCC)を除去する又は増強するために変異導入され得る。
【0077】
一実施形態では最終的な脊椎動物のゲノムは、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2011004192、US7501552、US6673986、US6130364、WO2009076464及びUS6586251のいずれかに記載の通りヒトVJ遺伝子セグメントを含む1つ又は複数の軽鎖抗体遺伝子座を含む。一例では最終的な脊椎動物は、
(a)内在性非ヒト脊椎動物(例えば内在性マウス若しくはラット)定常領域(例えば、Cmu及び/又はCgamma)の上流に、1つ又は複数のヒト重鎖V遺伝子セグメント、1つ又は複数のヒト重鎖D遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒト重鎖JH遺伝子セグメントをそれぞれが含む重鎖遺伝子座、
(b)内在性非ヒト脊椎動物(例えば、内在性マウス若しくはラット)カッパ定常領域の上流に1つ又は複数のヒトカッパ鎖V遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトカッパ鎖Jκ遺伝子セグメントを含む、カッパ軽鎖遺伝子座(場合によりホモ接合性状態にある)、並びに場合により
(c)ラムダ定常領域の上流に1つ又は複数のヒトラムダ鎖V遺伝子セグメント及び1つ又は複数のヒトラムダ鎖Jλ遺伝子セグメントを含むラムダ軽鎖遺伝子座(場合によりホモ接合性状態にある)、を含み、並びに
(d)前記遺伝子座の再構成及び抗原での免疫化後にキメラ抗体を産生できる。
【0078】
当技術分野において慣用である通り、IPS細胞を生成するための方法が提供されている。例えばマウス胚線維芽細胞はマウス胚から生成でき、次いでIPS細胞が任意の標準的技術を用いて生成される。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるProc Natl Acad Sci;2011年10月11日;“Rapid and efficient reprogramming of somatic cells to induced pluripotent stem cells by retinoic acid receptor gamma and liver receptor homolog 1";Wang et alを参照する。他の標準的IPS生成技術も用いられ得る。
【0079】
本発明の任意の態様の一実施形態ではIPS細胞が用いられる場合、IPS細胞はマウス胚性線維芽細胞である。
【0080】
ヒトDNA(例えば、重鎖及び/又は軽鎖遺伝子セグメントの供給源として)は、商業的及び学術的ライブラリー(例えば、ヒトDNAを含有する細菌性人工染色体(BAC)ライブラリー)から容易に入手できる。例は、ヒトRPCI-11及び-13ライブラリー(Osoegawa et al、2001下記を参照されたいhttp://bacpac.med.buffalo.edu/11framehmale.htm)並びに「CalTech」ヒトBACライブラリー(CalTech Libraries A、B、C及び/又はD、http://www.tree.caltech.edu/lib_status.html)である。
【0081】
CalTechヒトBACライブラリーD:
参照:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/clone/library/genomic/16/
【0082】
the California Institute of TechnologyのHiroaki Shizuya研究室は、3個の別々のヒトBACライブラリー(Open Biosystemsから入手可能)を開発した。Cal Tech B(CTB)及びCal Tech C(CTC)ライブラリーは併せて15Xのゲノム適用範囲を表す。Cal Tech D(CTD)ライブラリーはヒトゲノムの17X適用範囲を表す。全収集及び個別クローンが入手可能である。ライブラリーの構築についての詳細な情報はhttp://informa.bio.caltech.edu/idx_www_tree.htmlに見出し得る。
【0083】
ライブラリー概要
ライブラリー名称:CalTechヒトBACライブラリーD
ライブラリー略称:CTD
生物:ヒト(Homo sapiens)
【0084】
供給者:Invitrogen、Open Biosystems
ベクター種類:BAC
#クローンClone DB:226,848
#端配列Clone DB:403,688
#挿入配列Clone DB:3,153
#両端が配列決定されているクローン:153,035
【0085】
ライブラリー詳細
【0086】
【0087】
RPCI-11 BACs
参考文献
・ Osoegawa K、Mammoser AG、Wu C、Frengen E、Zeng C、Catanese JJ、de Jong PJ;Genome Res.2001 Mar;11(3):483~96頁;“A bacterial artificial chromosome library for sequencing the complete human genome";
・ Osoegawa,K.、Woon,P.Y.、Zhao,B.、Frengen,E.、Tateno,M.、Catanese,J.J及びde Jong,P.J.(1998);“An Improved Approach for Construction of Bacterial Artificial Chromosome Libraries";Genomics 52、1~8頁;
・ http://bacpac.chori.org/hmale11.htm、(次のBACsを記載する)
【0088】
BAC利用能
RP11 BACは、Invitrogenからの購入によって入手可能である(http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/bac_clones_man.pdfを参照されたい)。
【0089】
BAC又はPACなどのベクターは、in vitroで標準的分子生物学的技術、例えばリコンビニアリングによって操作され得る(http://www.genebridges.com、EP129142及びEP1204740を参照されたい)。例えばリコンビニアリングは、目的のヒトDNAをコードしているヌクレオチド配列が相同腕又は部位特異的組換え部位(例えば、lox、frt若しくはrox)などの1つ又は複数の配列によって隣接されているベクターを作出するために用いられ得る。一実施形態では相同腕は、脊椎動物を生成するために用いられる非ヒト脊椎動物のゲノム由来のDNAのストレッチに相同性又は同一である。この方法で作出されるベクターは、相同組換えを非ヒト脊椎動物ゲノムにヒトDNAを正確に挿入する(例えば、脊椎動物ゲノム中のオルソロガス又は相同性DNAを正確に置き換えるための)方法で実行するために有用である(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるUS6638768を参照されたい)。
【0090】
他の有用なDNA及びゲノム操作技術は、当業者に容易に利用可能であり、US6461818(Baylor College of Medicine)、US6586251(Regeneron)及びWO2011044050(例えば実施例を参照されたい)に記載の技術を含む。
【0091】
そのゲノムが導入遺伝子、例えばヒトV、J及び場合によりD領域を含有する遺伝子導入抗体遺伝子座を含む非ヒト脊椎動物及び脊椎動物細胞を構築するための技術は、当技術分野において十分周知である。例えば、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2011004192、US7501552、US6673986、US6130364、WO2009/076464及びUS6586251を参照する。
【0092】
マウスに関する全てのヌクレオチド座標は、マウスC57BL/6J株についてのNCBI m37、2007年4月、ENSEMBL Release 55.37h由来である。ヒトヌクレオチドは、GRCh37、2009年2月、ENSEMBL Release 55.37由来であり、ラットはRGSC 3.4、2004年12月、ENSEMBL release 55.34w由来である。
【0093】
本発明の脊椎動物の一実施形態では脊椎動物は哺乳動物、例えばげっ歯類である。本発明の脊椎動物の一実施形態では脊椎動物は、マウス、ラット、ウサギ、ラクダ(例えば、ラマ、アルパカ若しくはラクダ)又はサメである。
【0094】
一態様では遺伝子導入抗体遺伝子座は、宿主制御配列又は他の(非ヒト、非宿主)配列の制御下に配置されているヒトV、D及び/又はJコード領域を含む。一態様ではヒトV、D及び/又はJコード領域を参照することは、ヒトイントロン及びエクソンの両方を含み、又は別の態様ではcDNAの形態である場合がある単なるエクソンだけを含みイントロンを含まない。
【0095】
代替的に、非ヒト脊椎動物(例えば、マウス)プロモーター又は、V領域に対するプロモーターなどの他の制御領域を、ヒトIg領域を含有しているBACに挿入するためにリコンビニアリング又は他の組換えDNA技術を用いることができる。次いでリコンビニアリングステップは、ヒトDNAの一部をマウスプロモーター又は他の制御領域の制御下に置く。
【0096】
本発明は、本明細書に記載の細胞又は脊椎動物から生育する又は他にそれに由来する細胞系統(例えば、ES又はIPS細胞系統)にも不死化細胞系統を含んで関する。細胞系統は、抗体産生細胞及び細胞系統を提供するための腫瘍細胞との融合によって不死化され得る、又は直接の細胞不死化によって作製され得る。
【0097】
一態様では本発明の任意の形態の非ヒト脊椎動物は、少なくとも1X106の異なる機能性キメラ抗体配列組み合わせの多様性を生成できる。
【0098】
場合により本発明の任意の形態では、定常領域は脊椎動物に内在性であり、場合により内在性スイッチを含む。一実施形態では定常領域は、Cgamma(Cγ)領域及び/又はSmu(Sμ)スイッチを含む。スイッチ配列は、当技術分野において周知であり、例えばNikaido et al、Nature 292:845~848頁(1981)並びにWO2011004192、US7501552、US6673986、US6130364、WO2009/076464及びUS6586251、例えばUS7501552に開示の配列番号9~24を参照されたい。場合により定常領域は、内在性Sgammaスイッチ及び/又は内在性Smuスイッチを含む。
【0099】
脊椎動物がマウスである任意選択の一態様では、ヒトVDJ領域などのヒト抗体遺伝子DNAの挿入は、マウスゲノムIgH遺伝子座中のJ4エクソンとCμ遺伝子座との間の領域に標的化され、一態様では座標114,667,090と114,665,190との間に、好適には座標114,667,091に挿入される。一態様ではヒト軽鎖カッパVJの挿入は、マウス染色体6座標70,673,899と70,675,515との間、好適には位置70,674,734に又は染色体16上のラムダマウス遺伝子座の対応する位置に標的化される。
【0100】
非ヒト脊椎動物定常領域の上流の可変領域の位置を参照することは、可変及び定常領域が脊椎動物のin vivoにおいてキメラ抗体又は抗体鎖を形成できるようにする2つの抗体部分(可変及び定常)の好適な相対位置があることを意味する。したがって、挿入されるヒト抗体DNA及び宿主定常領域は、抗体又は抗体鎖産生のために相互に作動可能に連結される。
【0101】
一態様では挿入されるヒト抗体DNAは、アイソタイプスイッチを通じて異なる宿主定常領域と共に発現され得る。一態様ではアイソタイプスイッチは、トランススイッチを必要とせず、含まない。関連する宿主定常領域と同じ染色体へのヒト可変領域DNAの挿入は、アイソタイプスイッチを産生するためにトランススイッチが必要ないことを意味する。
【0102】
本発明では、場合により、スイッチ領域などの少なくとも1つの非ヒト脊椎動物エンハンサー又は他の制御配列が、エンハンサー又は他の制御配列の効果が宿主脊椎動物において見られる通り、遺伝子導入動物の全体又は部分において発揮されるように、非ヒト脊椎動物定常領域との機能性配置を維持している。この手法は、サンプリングされるヒト遺伝子座の完全な多様性を可能にし、エンハンサーなどの非ヒト脊椎動物制御配列によって達成される同様の高い発現レベルを可能にするように設計され、B細胞におけるシグナル伝達(例えばスイッチ組換え部位を用いるアイソタイプスイッチ)は、非ヒト脊椎動物配列をやはり用いる。
【0103】
そのようなゲノムを有する非ヒト脊椎動物は、ヒト可変領域及び非ヒト脊椎動物定常領域を有するキメラ抗体を産生するが、これらは、例えばマウス定常領域を対応するヒト定常領域に置き換えるクローニングステップにおいて、容易にヒト化される。
【0104】
一態様では挿入されるヒトIgH VDJ領域は、生殖系列配置においてヒト由来のV、D及びJ領域の全て並びに介在配列を含む。場合により非機能性V及び/又はD及び/又はJ遺伝子セグメントは、取り除かれる。例えば、反転されている又は偽遺伝子であるVHは取り除かれる場合がある。
【0105】
一態様ではヒトIgH VDJ領域の800~1000kbは、非ヒト脊椎動物IgH遺伝子座に挿入され、一態様では940、950又は960kb断片が挿入される。好適にはこれは、ヒト染色体14由来の塩基105,400,051から106,368,585を含む(全ての座標は、ヒトゲノムについてNCBI36、マウス株C57BL/6Jに関するマウスゲノムについてENSEMBL Release 54及びNCBIM37を参照する)。
【0106】
一態様では挿入されるIgHヒト断片は、染色体14由来の塩基105,400,051から106,368,585からなる。一態様では、染色体14由来の塩基105,400,051から106,368,585からなるDNAなどの挿入されたヒト重鎖DNAは、マウス染色体12のマウスJ4領域端とEμ領域の間、好適には座標114,667,091と114,665,190との間、好適には座標114,667,091に挿入される。
【0107】
一態様では挿入されるヒトカッパVJ領域は、生殖系列配置において、ヒト由来のV及びJ領域の全て並びに介在配列を含む。場合により非機能性V及び/又はJ遺伝子セグメントは取り除かれる。
【0108】
好適には、これはヒト染色体2由来の塩基88,940,356から89,857,000、好適にはおよそ917kbを含む。さらなる態様では、軽鎖VJ挿入断片はVセグメント及びJセグメントの近位クラスターだけを含む場合がある。そのような挿入断片は、およそ473kbである。
【0109】
一態様ではヒト染色体2由来の塩基88,940,356から89,857,000のヒトIgK断片などのヒト軽鎖カッパDNAは、好適にはマウス染色体6、座標70,673,899と70,675,515との間、好適には位置70,674,734に挿入される。
【0110】
一態様ではヒトラムダVJ領域は、生殖系列配置において、ヒト由来のV及びJ領域の全て並びに介在配列を含む。好適にはこれは、ヒト染色体2由来のカッパ断片のために選択されたものの類似塩基を含む。場合により非機能性V及び/又はJ遺伝子セグメントは取り除かれる。
【0111】
本明細書に記載の全ての特異的ヒト抗体断片は長さが異なる場合があり、500塩基、1KB、2K、3K、4K、5KB、10KB、20KB、30KB、40KB又は50KB以上など上に定義のものより例えば長い又は短い場合があり、好適にはヒトV(D)J領域の全体又は部分を含む一方で、本明細書に記載の通り好ましくは完全な重鎖領域及び軽鎖領域をコードしているヒト遺伝物質を含むための最終挿入断片に関する必要条件を好適に保持している。
【0112】
一態様では最後に挿入されるヒト抗体配列の3'端、一般に最後のヒトJ配列は、ヒト/非ヒト脊椎動物(例えば、ヒト/マウス又はヒト/ラット)結合領域から2kb未満、好ましくは1KB未満で挿入される。
【0113】
場合によりゲノムは、重鎖遺伝子座並びにIgλ及びIgκ遺伝子座の一方又は両方でホモ接合性である。
【0114】
別の態様ではゲノムは、キメラ抗体鎖及び天然(宿主細胞)抗体鎖をコードしているDNAに関してヘテロ接合性であるなど、軽鎖抗体遺伝子座の1つ又は複数でヘテロ接合性である場合がある。一態様ではゲノムは、本発明の免疫グロブリン導入遺伝子によってコードされている2つの異なる抗体鎖をコードできるDNAに関してヘテロ接合性である場合があり、例えば、2つの異なるキメラ重鎖又は2つの異なるキメラ軽鎖を含んでいる。
【0115】
本発明の任意の形態での一実施形態では脊椎動物のゲノムは、完全な内在性抗体の発現を妨げる又は低減するために改変されている。これを行うための好適な技術の例は、その開示が本明細書に参照により組み込まれるWO2011004192、US7501552、US6673986、US6130364、WO2009/076464、EP1399559及びUS6586251に見出され得る。一実施形態では内在性重鎖免疫グロブリン遺伝子座の非ヒト脊椎動物VDJ領域、及び場合により内在性軽鎖免疫グロブリン遺伝子座(ラムダ及び/又はカッパ遺伝子座)のVJ領域は、不活性化されている。例えば非ヒト脊椎動物VDJ領域の全体又は部分は、哺乳動物の内在性重鎖免疫グロブリン遺伝子座の反転によって不活性化されており、場合により反転された領域の内在性Ig遺伝子座の上流又は下流への移動を伴う。例えば非ヒト脊椎動物VJ領域の全体又は部分は、哺乳動物の内在性カッパ鎖免疫グロブリン遺伝子座における反転によって不活性化されており、場合により反転された領域の内在性Ig遺伝子座の上流又は下流への移動を伴う。例えば非ヒト脊椎動物VJ領域の全体又は部分は、哺乳動物の内在性ラムダ鎖免疫グロブリン遺伝子座における反転によって不活性化されており、場合により反転された領域の内在性Ig遺伝子座の上流又は下流への移動を伴う。一実施形態では内在性重鎖遺伝子座は、内在性カッパ及びラムダ遺伝子座の一方又は両方としてこの方法において不活性化される。
【0116】
追加的に又は代替的に脊椎動物は、成熟宿主B及びTリンパ球の産生を妨げる遺伝的背景、場合によりRAG-1欠損及び/又はRAG-2欠損背景で作製される。RAG-1欠損動物の作製技術に関してUS5859301を参照されたい。
【0117】
本発明の任意の形態での一実施形態ではヒトV、J及び任意選択でのD領域は、ヒトIgH遺伝子座の全体又は部分によって提供され、場合によりIgH遺伝子座の前記全体又は部分は、IgH V、D及びJ領域並びに介在配列の実質的に完全なヒトレパートリーを含む。ヒトIgH遺伝子座の好適な部分は、WO2011004192に開示されている。一実施形態ではヒトIgH部分は、ヒト染色体14(座標はNCBI36由来)由来の塩基105,400,051から106,368,585を含む(又は場合によりそれからなる)。追加的に又は代替的に、場合により脊椎動物がマウスである又は細胞がマウス細胞である場合、ヒトV、J及び任意選択でD領域は、マウス染色体12の座標114,667,091と114,665,190との間、場合により座標114,667,091(マウス株C57BL/6Jに関連するNCBIM37由来の座標)の位置に対応する位置に挿入される。
【0118】
脊椎動物がマウスである場合本発明の脊椎動物又は細胞(系統)の任意の形態の一実施形態では、(i)マウスゲノムの各遺伝子導入重鎖遺伝子座は、マウス又はラットSμスイッチ及び場合によりマウスCμ領域を含む定常領域を含む。例えば定常領域は、マウス(マウス細胞)に内在性の定常領域によって、例えばヒトV(D)J領域配列をマウスゲノム又はマウス細胞ゲノムの内在性定常領域との作動可能な結合に挿入することによって提供される。
【0119】
脊椎動物がラットである場合本発明の脊椎動物又は細胞(系統)の任意の形態の一実施形態では、(i)ラットゲノムの各遺伝子導入重鎖遺伝子座は、マウス又はラットSμスイッチ及び場合によりラットCμ領域を含む定常領域を含む。例えば定常領域は、ラットに内在性の定常領域によって、例えばヒトV(D)J領域配列をラットゲノム又はラット細胞ゲノムの内在性定常領域との作動可能な結合に挿入することによって提供される。
【0120】
本発明の脊椎動物又は細胞(系統)の任意の形態の一実施形態では、ゲノムは少なくとも1つのヒトJλ領域及び少なくとも1つのヒトCλ領域、場合によりCλ6及び/又はCλ7を含むヒトIgλ遺伝子座の全体又は部分を含むラムダ抗体導入遺伝子を含む。場合により導入遺伝子は、複数のヒトJλ領域、場合によりJλ1、Jλ2、Jλ6及びJλ7の2つ以上、場合によりJλ1、Jλ2、Jλ6及びJλ7の全てを含む。ヒトラムダ免疫グロブリン遺伝子座は、J-Cクラスター系列からなる特有の遺伝子構造を有する。この特性を利用するために、任意選択の態様における本発明は、導入遺伝子中の定常領域と作動可能に結合している1つ又は複数のそのようなヒトJ-Cクラスターを使用する(例えば定常領域が非ヒト脊椎動物又は非ヒト脊椎動物細胞(系統)に内在性である場合)。したがって場合により導入遺伝子は、少なくとも1つのヒトJλ-Cλクラスター、場合により少なくともJλ7-Cλ7を含む。そのような導入遺伝子の構築は、導入遺伝子が生殖系列配置にある1つ又は複数のJ-Cクラスターを含むように、有利には、クラスター間の並びに/又はヒト遺伝子座中の隣接するJ領域とC領域との間の介在配列も含むように、ヒトラムダ遺伝子座の全体又は部分を利用可能にすることによって促進される。これは、VJ及び/又はJC組換えを含む場合があり、AID(活性化誘導デアミナーゼ)又はAID相同体によって認識される場合がある介在配列内の任意の制御エレメントを保存する。
【0121】
内在性制御エレメントが非ヒト脊椎動物におけるCSR(クラススイッチ組換え)に関与する場合、これらは導入遺伝子に非ヒト脊椎動物に内在性である定常領域を含むことによって保存され得る。本発明の第一形態では、脊椎動物に内在性である又はその機能性変異体であるAID又はAID相同体を用いることによってこれに対応できる。そのような設計エレメントは、SHM(体細胞過剰変異)及び/又はCSRについての酵素スペクトル(enzymatic spectrum)を最大化するために、及びそれにより抗体多様性についての可能性を最大化するために有利である。
【0122】
場合によりラムダ導入遺伝子は、ヒトEλエンハンサーを含む。場合によりカッパ導入遺伝子は、ヒトEκエンハンサーを含む。場合により重鎖導入遺伝子は、重鎖ヒトエンハンサーを含む。
【0123】
本発明の任意の形態の一実施形態では、各抗体導入遺伝子の定常領域は非ヒト脊椎動物に内在性である、又はそのような定常領域に由来する。例えば脊椎動物はマウスである、又は細胞はマウス細胞であり、定常領域はマウスに内在性である。例えば脊椎動物はラットである、又は細胞はラット細胞であり、定常領域はラットに内在性である。
【0124】
本発明の任意の形態の一実施形態では、各重鎖導入遺伝子は複数のヒトIgH V領域、複数のヒトD領域及び複数のヒトJ領域、場合によりIgH V、D及びJ領域の実質的に完全なヒトレパートリーを含む。
【0125】
本発明の任意の形態の一実施形態では、脊椎動物について、
(i)各重鎖導入遺伝子はIgH V、D及びJ領域の実質的に完全なヒトレパートリーを含み、並びに
(ii)脊椎動物ゲノムはIgκ V及びJ領域の実質的に完全なヒトレパートリー並びに/又はIgλ V及びJ領域の実質的に完全なヒトレパートリーを含む。
【0126】
態様は、本発明の任意の形態による脊椎動物由来のB細胞、融合細胞又は幹細胞、場合により胚性幹細胞又は造血幹細胞を提供する。一実施形態では細胞は、BALB/c、JM8又はAB2.1又はAB2.2胚性幹細胞である(その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2011004192における好適な細胞、具体的にはJM8及びAB2.1細胞の考察を参照されたい)。
【0127】
一態様ではES細胞は、マウスBALB/c、C57BL/6N、C57BL/6J、129S5又は129Sv株由来である。
【0128】
一態様では非ヒト脊椎動物は、げっ歯類、好適にはマウスであり、本発明の細胞(細胞系統)は、げっ歯類細胞又はES細胞、好適にはマウスES細胞である。
【0129】
本発明のES細胞は、繁殖でき、所要の挿入を有するホモ接合性組換えに関して選択され得る子孫を産生するためにES細胞の胚盤胞への注入に続くメスへのキメラ胚盤胞の移植を含む、当技術分野において十分周知の技術を用いて動物を作製するために用いられ得る。一態様では本発明は、ES細胞由来組織及び組織由来宿主胚を含む遺伝子導入動物に関する。一態様では本発明は、VDJ及び/又はVJ領域に関してホモ接合性組換えを有する動物を含む、遺伝的に変更された次世代動物に関する。
【0130】
一態様は、抗体又は前記抗体をコードしているヌクレオチド配列を単離する方法を提供し、方法は
(a)本発明の任意の形態又は態様による脊椎動物を脊椎動物が抗体を産生するようにヒト標的抗原で免疫化するステップ(例えばHarlow,E.& Lane,D、1998、5th edition、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press、Plainview、NY及びPasqualini and Arap、Proceedings of the National Academy of Sciences(2004)101:257~259頁を参照されたい)、及び
(b)前記抗原に特異的に結合する抗体並びに/又は前記抗体の少なくとも重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域をコードしているヌクレオチド配列を脊椎動物から単離するステップ、
を含み、
場合により、前記抗体の可変領域は次にヒト定常領域に繋がれる。そのような結合は、当業者に明らかである従来の組換えDNA及びRNA技術を用いるなどの、当技術分野において容易に利用できる技術によって達成され得る。例えばSambrook,J and Russell,D.(2001、3'd edition)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Lab.Press、Plainview、NY)を参照されたい。
【0131】
好適にはヒトエピトープ又は標的抗原の免疫原量が送達される。本発明は、検査抗体の部分を認識する二次検出薬剤を含んで上に記載の通り産生される検査抗体を検出するステップを含む、ヒトエピトープ又は標的抗原を検出するための方法にも関する。
【0132】
ステップ(b)での抗体の単離は、当業者に容易に明らかである通り従来の抗体選択技術、例えば固体支持体に固定されている抗原に対する抗体のパニングを用いて(場合によりストリンジェンシーを増加させた反復回を伴って)実行され得る。
【0133】
さらなる任意選択ステップとしてステップ(b)後に、抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、前記抗原への結合に対する親和性を改善するために変異導入される。変異導入は、当業者に容易に明らかである通り従来の技術によって、例えばエラープローンPCRによって作製され得る。親和性は、当業者に容易に明らかである通り従来の技術によって、例えば表面プラズモン共鳴(例えばBiacore(商標)を用いる)によって決定され得る。
【0134】
追加的に又は代替的にさらなる任意選択ステップとしてステップ(b)後に、検査抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、抗体の生物物理学的特徴の1つ又は複数、例えば融解温度、溶液状態(単量体若しくは二量体)、安定性及び発現(例えば、CHO若しくは大腸菌(E coli)において)の1つ又は複数を改善するために変異導入される。
【0135】
一態様は、任意選択で医薬での使用のための(例えば患者、例えばヒトにおける医学的状態又は疾患を治療する及び/又は予防するための)本発明の抗体を提供する。
【0136】
一態様は、本発明の抗体をコードしているヌクレオチド配列を提供し、場合によりヌクレオチド配列はベクターの一部である。好適なベクターは、当業者に明らかである、例えば作動可能に結合している1つ又は複数の発現調節エレメントと共にヌクレオチド配列を含む従来の抗体発現ベクターである。
【0137】
一態様は、本発明の抗体及び希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物であって、場合によりIV容器(例えば、IVバッグ)又はIVシリンジに繋がれた容器に含まれる組成物を提供する。
【0138】
一態様は、患者(例えば、ヒト)における疾患又は状態の治療及び/又は予防のための医薬の製造における本発明の抗体の使用を提供する。
【0139】
さらなる態様では本発明は、本発明により産生される又はアッセイされる(キメラ及び完全なヒト化の両方の形態での)ヒト化抗体及び抗体鎖、並びに医薬における前記抗体の使用に関する。本発明は、そのような抗体及び薬学的に許容される担体又は他の賦形剤を含む医薬組成物にも関する。
【0140】
キメラヒト-非ヒト抗体鎖などのヒト配列を含有する抗体鎖は、ヒトタンパク質コード領域領域の存在により本明細書でヒト化されたと見なされる。完全なヒト抗体は、本発明のキメラ抗体鎖をコードしているDNAから出発して標準的技術を用いて産生され得る。
【0141】
モノクローナル及びポリクローナルの両方の抗体の生成のための方法は、当技術分野において十分周知であり、本発明は、本発明の非ヒト-脊椎動物における抗原チャレンジへの応答において産生されるキメラ又は完全なヒト化抗体のポリクローナル及びモノクローナルの両方の抗体に関する。
【0142】
さらなる態様では本発明において生成されるキメラ抗体又は抗体鎖は、定常領域が欠如している重鎖又は軽鎖由来のヒト可変領域などの抗体-様特性又は構造を有する分子を生成するために、好適にはDNAレベルで操作され得る(例えば、ドメイン抗体、又は同じ若しくは異なる種由来の重鎖若しくは軽鎖のいずれか由来の任意の定常領域を有するヒト可変領域、又は天然に存在しない定常領域を含むヒト可変領域、又は任意の他の融合パートナーを伴うヒト可変領域)。本発明は、本発明により同定され、単離され又はアッセイされるキメラ抗体由来の全てのそのようなキメラ抗体誘導体に関する。
【0143】
本明細書に記載の具体的な実施形態は、本発明の限定としてではなく例示の方法によって示されていることは理解される。本発明の原理的特性は、本発明の範囲から逸脱することなく種々の実施形態において使用され得る。当業者は、本明細書に記載の具体的な手順への多数の等価物を単なる日常的研究を用いて認識又は確認できる。そのような等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、特許請求の範囲によって網羅される。本明細書において述べられる全ての刊行物及び特許出願は、本発明が属する技術分野の当業者の技能レベルの指標である。全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が具体的及び個別に参照により組み込まれることが示されたのと同程度に本明細書に参照により組み込まれる。用語「1つ(a)」又は「1つ(an)」の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において用語「含む(comprising)」と併せて用いられる場合、「1つ(one)」を意味する場合があるが、「1つ又は複数の」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上」の意味とも合致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、開示は単なる選択肢及び「及び/又は」を意味する定義を支持するが、選択肢だけ又は選択肢が相互排他的であることが意味されると明確に示されない限り「及び/又は」を意味する。本出願全体を通じて用語「約」は、下の特性に関する固有の誤差の変動を含む値を示して用いられる。
【0144】
本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、用語「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含むの任意の形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有するの任意の形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含むの任意の形態)又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの含有するの任意の形態)は、包括的又は非制限的であり、追加的な、未列挙のエレメント又は方法ステップを排除しない。
【0145】
本明細書において用いられる用語「又はその組み合わせ」は、用語に先行して列挙される項目の全ての順列及び組み合わせを意味する。例えば「A、B、C又はその組み合わせは、A、B、C、AB、AC、BC又はABCの少なくとも1つを、具体的な内容において順序が重要である場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABも含むことが意図される。引き続きこの例について明確に含まれるのは、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど1つ又は複数の項目又は用語の反復を含有する組み合わせである。当業者は、内容から他に明らかでない限り、典型的には任意の組み合わせの項目又は用語の数について制限がないことを理解する。
【0146】
本開示の任意の部分は、内容から他に明らかでない限り、本開示の任意の他の部分と組み合わせて理解され得る。
【0147】
本明細書で開示及び特許請求する全ての組成物及び/又は方法は、本開示を考慮して過度の実験を行うことなく作製及び達成され得る。本発明の組成物及び方法は好ましい実施形態の用語の下で記載されているが、本明細書に記載の組成物及び/又は方法並びにステップ又は方法のステップの連続に、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく変更が適用され得ることは当業者に明らかである。当業者に明らかな全てのそのような類似する置換及び変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であると見なされる。
【0148】
本発明は、次の非限定的例示においてより詳細に記載される。
【0149】
(実施例)
次の実施例は、本発明を実証するために有用である。
内在性遺伝子の不活性化及びADAM6機能の維持
【0150】
(実施例1)
転座
染色体12が遺伝子導入重鎖遺伝子座を持っていることが示されている
図1aを参照する。図では、挿入されるヒトV
H遺伝子セグメントが示されている(しかし、ヒトD及びJ
Hを明確にするために、マウスEmuエンハンサー及び他のJ-Cイントロンエレメント、並びに定常領域も示されておらず、これらはヒトV
H遺伝子セグメントの下流(すなわち、V
Hの左)にある。同様に示されているのは、染色体12上のヒトV
HとマウスVDJ領域との間のloxP部位である(この場合loxPは「着地位置(landing pad)」によって提供される、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、例えばWO2011004192を参照されたい)。着地位置におけるloxP部位と同じ方向にあるloxP部位を保持しているカセットは、染色体12とは異なる染色体のテロメア領域に標的化され、この場合標的化は
図1aに示す通り染色体15に対してである。Creリコンビナーゼ遺伝子を保持しているベクターを細胞に導入する。Creリコンビナーゼ発現の誘導後に、loxP部位とテロメアとの間の領域を交換し、それは内在性マウスV
H、D及びJ
H遺伝子セグメントのそれらのエンハンサー及びC領域からの分離、(
図1b)、並びにそれによる内在性重鎖の不活性化を生じる。この方法では、Adam6a及びAdam6bの上流及び下流ゲノム配列(これら2つの遺伝子と関連する制御エレメントを含む配列)は、未処理のままである。したがって機能性、内在性Adam6遺伝子は、この場合染色体15上に保持されている(
図1b)。
【0151】
(実施例2)
Adam6遺伝子の欠失及び挿入
遺伝子導入抗体生成マウスの生成
遺伝子導入マウスを、内在性マウス重鎖及びカッパ定常領域それぞれの5'に直接作動可能に連結されたヒト抗体重鎖並びにカッパ鎖V、D及びJセグメントを導入するためにES細胞技術及び遺伝子操作を用いて生成する。マウスmuスイッチ並びにmu定常及びガンマ領域を重鎖遺伝子導入遺伝子座に提供し、それにより産生する。内在性、マウス重鎖及びカッパ鎖発現を不活性化し、マウスラムダ鎖発現は典型的には5%以下であり、それにより不活性化は任意選択である。ヒト抗体遺伝子セグメントを当技術分野において周知である相同組換え及び/又はリコンビナーゼを介したカセット交換(RMCE)を用いてマウスES細胞に導入する。ヒトDNAは、当技術分野において周知の通りBAC及びリコンビニアリング技術を用いて操作できる。ヒト抗体遺伝子DNAを含有しているBACは、Invitrogenから入手可能である。好適なES細胞は、129、AB2.1又はAB2.2細胞(Baylor College of Medicineから入手可能)である。
【0152】
次いで遺伝子導入ES細胞を養母マウス(例えば、129又はC57BL/6Nマウス株)由来の胚盤胞に移植する。重鎖及びカッパ鎖系統は、ヒト可変領域を含むホモ接合性遺伝子導入重鎖及びカッパ鎖を保有している抗体生成マウスを提供するために作製及び交雑できる(HKマウス)。
【0153】
同様のプロトコルを用いて、ラムダ鎖系統を作製し、ヒト可変領域を含むホモ接合性遺伝子導入重鎖、ラムダ及びカッパ鎖を保有するHKLマウスを交雑によって作製する。
【0154】
さらなる指針は、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2011004192、US7501552、US6673986、US6130364、WO2009/076464及びUS6586251に開示されている。
【0155】
相同組換えによってヒト重鎖遺伝子セグメントを導入するために、1つ又は複数のBACをリコンビニアリングなどの標準的技術を用いて生成する。ヒトゲノムIGH遺伝子セグメント(V
Hs、Ds及びJ
Hs)、選択マーカー並びに内在性IGH配列に相同性である隣接する2つの組換え腕(5'及び3')を含有している大きなDNA標的化ベクターをBAC改変によって構築する(
図2、h1=ヒト遺伝子セグメントを含有する第一BAC、m1=マウスVDJ領域の相同性領域並びにh1、h2、m2及びm3についてなど)。大きな標的化ベクターを電気穿孔法によってマウスES細胞に導入する。標的化ES細胞を従来法の通り選択マーカーについて薬物又は他のマーカー選別によって選択する。相同組換えによる正確な標的化を定量的又は定性的のいずれかのPCRに基づく方法によってさらに確認する。正確に標的化された遺伝子座は、これら2つの相同組換え腕によって隣接された内在性ゲノムDNAの置き換えをもたらし、内在性遺伝子座のこのセクションをヒトゲノムIGH遺伝子セグメント及び選択マーカーで置き換える。
【0156】
ヒト抗体重鎖遺伝子セグメント(
図3における「h」)も標準的リコンビナーゼ調節ゲノム置換を用いて挿入できる(
図3)。そのような手法では、1つのloxP部位及び変異体loxP部位(lox511など)は、マウスIGH遺伝子座に連続的に標的化される。1つのloxP部位及び変異体loxPの別のコピーに隣接されたヒトゲノムIGH遺伝子セグメント(V
Hs、Ds及びJ
Hs)並びに選択マーカー、を含有する大きなDNA標的化ベクターは、BAC改変によって構築される。大きな標的化ベクターをCre発現ベクターと共にES細胞に共電気穿孔する。正確な標的化を定量的又は定性的のいずれかのPCRに基づく方法によってさらに確認する。正確に標的化され遺伝子座は、これら2つのlox部位によって隣接された内在性抗体遺伝子座ゲノムDNAの置き換えをもたらし、内在性遺伝子座のこのセクション(
図3における「m」)をヒトゲノムIGH遺伝子セグメント及び選択マーカーで置き換える。この工程では、内在性Adam6遺伝子も除去される。
【0157】
これら2つの置き換え工程(相同性組換え又はRMGRによる置き換え)の際に、VH5-1とD1-1遺伝子セグメントとの間の内在性マウスAdam6遺伝子は、除去される。Adam6エクソン(Adam6a-2507bp、Adam6b-2271bp)及びそれらそれぞれの少なくとも5kb上流及び5kb下流配列を含有するゲノムDNAを、実施例3の通りそのようなAdam6欠損マウスのオス受精能を救済するために、ES細胞又は接合体への標的化又は無作為挿入のいずれかによってマウスゲノムに挿入する。
【0158】
(実施例3)
内在性IGH除去後にゲノムにAdam6遺伝子を挿入するための手法
マウスAdam6a(染色体12、座標114777119~114789625)及びAdam6b(染色体12、座標114722756~114735229)ゲノムDNAを細菌性人工染色体(BAC)、RP23-393F3(Invitrogen)から回収する。ES細胞標的化ベクターを次のステップによって生成する。
1. マウスAdam6aとAdam6bとの間の配列をポジティブ選択マーカーカセットによって除去する。
a. Adam6aの約5kb上流に位置する5'腕及びAdam6b遺伝子の約5kb下流に位置する3'腕を、RP23-393F3を鋳型として用いるPCRによって作出する。両方の相同性腕は、200bpから300bpの間であり、欠損ベクターを構築するために次いで2つの相同性腕を2つのAscI部位に隣接されているポジティブ選択マーカーブラストサイジン(Bsd)を含有するpBlueScript II SK(+)に基づくプラスミドにクローン化する(
図4a及び
図4b)。
5'腕
5'-tatgttgatggatttccatatattaaaccatccctgcatccctgggatgaagcctacttggtcatgataga
cgattgttttgatgtgttcttggattcagttagtgagaaatatattgagtatttttacatcgatattcataaggg
aaattggtctgaagttctctttctttgttgggtctttatgtggtttagttatca-3'
3'腕
5'-tgattccaccagaggttcttttatccttgagaagagtttttgctatcctaggttttttgttattccacatgaatttg
cagattgctctttctaattccttgaagaattgagttggaatttgatggggattgcattaaatctgtagattccttttgg
caagacagccatttttacaatgttaatcctgccaatccatgagcatgg-3'
b.マウスAdam6aとAdam6bとの間の配列をBsdカセットをRP23-393F3に対する標的化するステップによって除去する(
図4c)。そのようなリコンビニアリング産物では、Adam6b及びAdam6aそれぞれの配列の約5kb上流配列及び約5kb下流配列は、マウス細胞での発現のそれらの特異的な制御を維持している。
2. マウスAdam6a及びAdam6bを相同組換えによってIGH BACの5'改変ベクターに回収する。
a. Adam6aの約5kb下流に位置する5'相同性腕又はAdam6b遺伝子の約5kb上流に位置する3'相同腕を、RP23-393F3を鋳型として用いるPCRによって作出する(
図5a)。
5'腕
5'-tttatgtactataccatctcagaaagtcaggttagtctcactagcatcgtaaaagctctgtctgggcttttc
catctgctctgctttttgtctctgtgtctaaaaatatataaaccaatgttgtccagccaaaaaaaaaaaattaa
agagcaaaaggaggtaaaatggatacaaattggaaaagaagaaatcaaaatatcactacttgaagatagt
ataatatatttaactgaccacaaaaattccaccagaaaactcctaaacctgataaacaaactcagaaaaatgg
ctagatataaactta-3'
3'腕
5'-acccatagagagaaaacaggtgagttagtgcattaaaggggctgagcagggagttctcatcgctccccagcac
cagaaataagagcctctccggagctgctgggacatggaatgcagatgattcggaccatcagccccacagagacctt
tcccactctggctcagaaagaggcactggaccacagttggagaggagaatcgaaagctgatatctctgtattcactt
agcctgttacccacccatgcacccaagtccaaggtgggagaaacactgagggtctaaacacagccccagagcaac
tgccagtattaaat-3'
b. 2つの相同腕を5'改変ベクター(ベクターはpBR322に基づく)にクローン化する。この5'改変ベクターは、最終ヒトIGH BACのsopC遺伝子(各娘細胞がプラスミドのコピーを得ることを確実にするために必要)、相同腕、loxP、Neoカセット、loxP2272、PGKプロモーター、PB5'LTR及び相同腕:
5'-attcaggcagttaattgttgggttcatgttttacaactaaagaataaattcaggccagatgcagtggat
catcgctataatcacaccactttcagaagcaaaaatgagggaaatcccgtgagacgaggcaatcgaagc
caacctgagcaacataaagagatgctatttctctgaaaaaatattttaaagaataagcaggtgaggggtg
gcgttcccctctacttctagatactcaggaagcaaagatgggaagattatgtgagccaggtgttcaaaatt
acagtgagctttgatcatacaactgttcttcaaactgtgcaacagggtgagagcctgtctctaaaaacaaa
taaaaaagaatcaat-3'
を有する(
図5b)。
c. Adam6a遺伝子の約5kb下流からAdam6b遺伝子の約5kb上流由来のBAC配列を標準的リコンビニアリングによってIGH BACの5'改変ベクターに回収する(
図5c)。
d. 回収後、標的化ベクターをAscI消化及び自己ライゲーションを通じてBsd遺伝子を除くステップによって構築する(
図5d)。
3. 回収されたAdam6a及びAdam6bを5'改変カセット(
図6a)と共に最終IGH BAC(
図6c)を生成するために標準的リコンビニアリングを通じてIGH BAC(
図6b)に標的化する。
【0159】
図7aから
図7cに示し、WO2011004192(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載の通り、最終ヒトIGH BACと共にマウスAdam6a及びAdam6bをリコンビナーゼを介したカセット交換(RMCE)によってマウスゲノムに挿入する。挿入されたAdam6a及びAdam6bは、本発明に示すAdam6欠損表現系を救済できる。
【0160】
(実施例4)
ADAM6遺伝子を含む繁殖可能マウス及び後代
リコンビニアリング及びES細胞ゲノム操作を用いて、内在性マウス可変領域を機能性に置き換えるために、ヒト可変領域遺伝子セグメントのさまざまなレパートリーを内在性IgH遺伝子座中の内在性マウス定常領域の上流に挿入するためにマウスAB2.1胚性幹細胞ゲノムを操作した。内在性VDJ領域をIgH遺伝子座から除去し、それによりADAM6a及びADAM6b遺伝子を遺伝子座から除いた。野生型プロモーターを有する発現可能なマウスADAM6a及びADAM6b遺伝子をマウス染色体12上のIgH遺伝子座の上流に挿入した。IgH導入遺伝子に関してヘテロ接合性であった(すなわち、遺伝子導入IgH遺伝子座の1コピー及び非機能性にされた他のIgH遺伝子座を有するゲノムを有する)後代マウスを成育させた。繁殖可能ヘテロ接合性マウスを得て、ホモ接合性後代を産生するために一緒に繁殖させた。これらの後代は、ADAM6欠損を有するIgH導入遺伝子に関してホモ接合性であり、挿入されたマウスADAM6a及び6b遺伝子についてもホモ接合性であった。さらに本発明者らは、繁殖し、後代を産生できる繁殖可能オス及びメスホモ接合体を得た。要約を下に提供する。
【0161】
3つの異なるホモ接合性系統、IgH1マウス、IgH2マウス及びIgH3マウスを産生した。次の通りこれらのマウスは内在性マウスIgH遺伝子座からのADAM6遺伝子の欠損に関してホモ接合性であり、染色体12上のマウスADAM6a及びADAM6b遺伝子(IgH遺伝子座の上流)の挿入に関してホモ接合性であり、重鎖導入遺伝子に関してホモ接合性であった。
【0162】
IgH1導入遺伝子:
ヒト重鎖遺伝子セグメントVH2-5、VH7-4-1、VH4-4、VH1-3、VH1-2、VH6-1、D1-1、D2-2、D3-9、D3-10、D4-11、D5-12、D6-13、D1-14、D2-15、D3-16、D4-17、D5-18、D6-19、D1-20、D2-21、D3-22、D4-23、D5-24、D6-25、D1-26、D7-27、JH1、JH2、JH3、JH4、JH5及びJH6を含む。
【0163】
IgH2導入遺伝子:
ヒト重鎖遺伝子セグメントVH3-13、VH3-11、VH3-9、VH1-8、VH3-7、VH2-5、VH7-4-1、VH4-4、VH1-3、VH1-2、VH6-1、D1-1、D2-2、D3-9、D3-10、D4-11、D5-12、D6-13、D1-14、D2-15、D3-16、D4-17、D5-18、D6-19、D1-20、D2-21、D3-22、D4-23、D5-24、D6-25、D1-26、D7-27、JH1、JH2、JH3、JH4、JH5及びJH6を含む。
【0164】
IgH3導入遺伝子:
ヒト重鎖遺伝子セグメントVH2-26、VH1-24、VH3-23、VH3-21、VH3-20、VH1-18、VH3-15、VH3-13、VH3-11、VH3-9、VH1-8、VH3-7、VH2-5、VH7-4-1、VH4-4、VH1-3、VH1-2、VH6-1、D1-1、D2-2、D3-9、D3-10、D4-11、D5-12、D6-13、D1-14、D2-15、D3-16、D4-17、D5-18、D6-19、D1-20、D2-21、D3-22、D4-23、D5-24、D6-25、D1-26、D7-27、JH1、JH2、JH3、JH4、JH5及びJH6を含む。
【0165】
マウスが繁殖できるかどうかを評価するために本発明者らは、次の通りホモ接合性オスと繁殖可能メスマウスとの間の種々の検査交雑を設定した。
【0166】
【0167】
したがって本発明者らは、重鎖導入遺伝子及び内在性VDJの欠損に関してヘテロ接合性又はホモ接合性のいずれかである繁殖可能オス及びメスマウスの作製を示すことができた。さらにこれらのマウスは、挿入されたADAM6に関してヘテロ接合性又はホモ接合性のいずれかであった。
【0168】
さらに、検査交雑の産仔数(全ての検査交雑についての平均としてマウス7.7±3.5匹)は、野生型オスを用いる交配(マウス8.1±3.1匹)と有意に変化しない。
【0169】
さらなる実験で本発明者らは、ホモ接合性検査マウスをヒト抗原で免疫化し、特異的免疫応答を観察した。初回-追加及びRIMMS免疫化プロトコルの両方を用いた。本発明者らは、抗原特異的B細胞及び抗体をそのようなマウスから、並びにそのような抗体及びそれらの鎖及び可変領域をコードしている核酸配列を単離した。さらに本発明者らは、そのような抗原特異的B細胞から融合細胞を順調に産生した。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【外国語明細書】