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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159423
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】移動式浄水装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20221006BHJP
   B01D 61/18 20060101ALI20221006BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20221006BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20221006BHJP
   B01D 61/16 20060101ALI20221006BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/18
B01D61/08
B01D61/58
B01D61/16
B01D65/02 520
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129507
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2018160541の分割
【原出願日】2018-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏好
(72)【発明者】
【氏名】高礒 一成
(57)【要約】
【課題】移動式浄水装置の運転の安定性を確保しやすく、移動式浄水装置を小型化できるようにする。
【解決手段】移動式浄水装置20は、移動装置に搭載可能である。限外濾過膜装置40は、処理水W2を限外濾過膜43に通すことで処理水W2を濾過する。気泡供給装置51は、限外濾過膜43の表面に気泡を供給する。吸引ポンプ53は、限外濾過膜43よりも下流側で処理水W2を吸引する。高圧ポンプ55は、吸引ポンプ53が吸引した処理水W2を加圧する。逆浸透膜装置57は、高圧ポンプ55に加圧された処理水W2を逆浸透膜57aに通すことで処理水W2を濾過する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置に搭載可能な移動式浄水装置であって、
処理水を限外濾過膜に通すことで前記処理水を濾過する限外濾過膜装置と、
前記限外濾過膜の表面に気泡を供給する気泡供給装置と、
前記限外濾過膜よりも下流側で前記処理水を吸引する吸引ポンプと、
前記吸引ポンプが吸引した前記処理水を加圧する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプに加圧された前記処理水を逆浸透膜に通すことで前記処理水を濾過する逆浸透膜装置と、
を備える、
移動式浄水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式浄水装置であって、
前記限外濾過膜装置は、前記移動装置に対して起立可能および倒伏可能に取り付けられる、
移動式浄水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動式浄水装置であって、
前記限外濾過膜装置よりも上流側に設けられる沈殿槽を備え、
前記沈殿槽および前記限外濾過膜装置は、一つの容器内に設けられる、
移動式浄水装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の移動式浄水装置であって、
前記限外濾過膜装置、前記気泡供給装置、前記吸引ポンプ、前記高圧ポンプ、および前記逆浸透膜装置のうち、一部の構成要素は、前記一部の構成要素とは異なる構成要素と別体に構成され、
前記限外濾過膜装置、前記気泡供給装置、前記吸引ポンプ、前記高圧ポンプ、および前記逆浸透膜装置は、前記移動装置に着脱可能に取り付けられる、
移動式浄水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置に搭載可能な移動式浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来の移動式浄水装置が記載されている。同文献に記載の技術では、処理水は、限外濾過膜を用いた濾過器(同文献における「第二濾過器」)、および逆浸透膜を用いた濾過器(同文献における「第三濾過器」)に通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-71567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の技術では、濾過ポンプによって加圧された処理水が、限外濾過膜を用いた濾過器へ送られる(同文献の段落0016を参照)。そのため、限外濾過膜を収容する容器を圧力容器とする必要があり、移動式浄水装置が大型化するおそれがある。また、同文献に記載の技術では、限外濾過膜に不純物が付着しやすく、限外濾過膜が目詰まりしやすい。限外濾過膜が目詰まりした場合、移動式浄水装置の運転を停止させる必要が生じ、移動式浄水装置の運転の安定性を損なうおそれがある。その結果、生産水の生産量を確保できないおそれがある。移動式浄水装置の運転の安定性が不十分な状態で生産水の生産量を確保しようとすると、移動式浄水装置が大型化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、運転の安定性を確保しやすく、小型化できる、移動式浄水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
移動式浄水装置は、移動装置に搭載可能である。移動式浄水装置は、限外濾過膜装置と、気泡供給装置と、吸引ポンプと、高圧ポンプと、逆浸透膜装置と、を備える。前記限外濾過膜装置は、処理水を限外濾過膜に通すことで前記処理水を濾過する。前記気泡供給装置は、前記限外濾過膜の表面に気泡を供給する。前記吸引ポンプは、前記限外濾過膜よりも下流側で前記処理水を吸引する。前記高圧ポンプは、前記吸引ポンプが吸引した前記処理水を加圧する。前記逆浸透膜装置は、前記高圧ポンプに加圧された前記処理水を逆浸透膜に通すことで前記処理水を濾過する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、移動式浄水装置の運転の安定性を確保しやすく、移動式浄水装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】移動式浄水装置20を示すブロック図である。
図2図1に示す移動式浄水装置20および移動装置10を上から見た図である。
図3図2に示す車両11および前処理ユニット30などを横から見た図である。
図4図1に示す前処理ユニット30を示す斜視図である。
図5図3に示す前処理ユニット30を起倒させる起倒装置280などを示す図3相当図である。
図6図3に示す前処理ユニット30を起倒させるジャッキ381などを示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図6を参照して、図2に示す移動装置10および移動式浄水装置20について説明する。
【0010】
移動装置10は、移動式浄水装置20が搭載される装置であり、移動可能である。移動装置10は、地上を走行する装置であり、車両11と、トレーラ13と、を備える。車両11は、自走可能であり、例えばトラックなどであり、例えば小型トラックなどである。トレーラ13は、車両11に牽引される台車である。なお、移動装置10は、車両11およびトレーラ13のいずれか一方のみを備えてもよい。
【0011】
移動式浄水装置20は、移動装置10に搭載可能であり、例えば車載型である。図1に示すように、移動式浄水装置20は、原水W1を浄水し、生産水W3を生産する。移動式浄水装置20で処理される水を処理水W2という。原水W1は、淡水(例えば河川や湖沼の水など)でもよく、海水でもよい。移動式浄水装置20は、淡水を浄水してもよく、海水を淡水化および浄水してもよい。原水W1は、不純物を含む。原水W1に含まれる不純物は、例えば固形物および粘土質の少なくともいずれかなどを含む。移動式浄水装置20は、取水ポンプ21と、前処理ユニット30と、気泡供給装置51と、吸引ポンプ53と、高圧ポンプ55と、逆浸透膜装置57と、活性炭処理部61と、カルサイト処理部63と、を備える。図2に示すように、移動式浄水装置20は、薬注ポンプ65と、排水ポンプ69と、制御装置71と、発電機73と、を備える。
【0012】
取水ポンプ21は、図1に示すように、原水W1を取水するためのポンプである。
【0013】
前処理ユニット30は、逆浸透膜装置57よりも上流側で水処理(逆浸透膜装置57を基準とすれば前処理)を行う装置である。図3に示すように、前処理ユニット30の形状は、長手方向を有する形状であり、図3に示す例では直方体状であり、直方体状でなくてもよい。前処理ユニット30は、起倒式であり、起立状態および倒伏状態になることが可能である。図3では、起立状態の前処理ユニット30を実線で示し、倒伏状態の起立状態の前処理ユニット30を二点鎖線で示した。起立状態および倒伏状態の詳細は後述する。起立状態の前処理ユニット30の長手方向は、上下方向である(前処理ユニット30は縦型である)。さらに詳しくは、起立状態の前処理ユニット30の上下方向の寸法は、前処理ユニット30の水平方向の寸法よりも長い。図4に示すように、前処理ユニット30は、前処理容器31(容器)と、回転支持部33と、沈殿槽35と、フィルタ37(図1参照)と、限外濾過膜装置40と、を備える。
【0014】
前処理容器31(容器、前処理膜容器)は、複数の槽を備え、例えば2つの槽(二重槽)を備える。前処理容器31は、沈殿槽35、および限外濾過膜浸漬槽41を備える。なお、前処理容器31が備える槽の数は、1でもよく、3以上でもよい。例えば、沈殿槽35は設けられなくてもよい。例えば、前処理容器31は、予備の膜エレメント42(後述)を保管する槽などを備えてもよい。
【0015】
回転支持部33は、図3に示すように、移動装置10に対して前処理ユニット30を起立可能および倒伏可能にする部分である。その結果、回転支持部33は、移動装置10に対して限外濾過膜装置40(図1参照)を起立可能および倒伏可能にする。図4に示すように、回転支持部33は、前処理容器31の下部(例えば下端部)に取り付けられる。回転支持部33は、例えばヒンジなどである。以下では、特に断らない限り、図1に示すように、前処理ユニット30が起立状態である場合について説明する。
【0016】
沈殿槽35は、処理水W2中の不純物を沈殿させる。沈殿槽35は、例えば、砂、石、泥、および大型の懸濁物質などを沈殿させる。沈殿槽35は、限外濾過膜装置40に供給するための処理水W2を一旦受けて貯留する槽(受水槽)である。沈殿槽35は、取水ポンプ21よりも下流側に設けられ、限外濾過膜装置40よりも上流側に設けられる。沈殿槽35の上部の処理水W2(上澄み液)が、フィルタ37を介して、限外濾過膜装置40に流入する。取水ポンプ21から沈殿槽35への処理水W2の流入口から、沈殿槽35の上部まで処理水W2が上がる際に、できるだけ時間がかかるように沈殿槽35などが構成されることが好ましい。具体的には例えば、沈殿槽35は、縦型であることが好ましい。また、例えば、取水ポンプ21から沈殿槽35への流入口は、沈殿槽35の下部に配置されてもよく、例えば、沈殿槽35の底部に向けて設けられてもよい。沈殿槽35は、沈殿物排出部35dを備える。沈殿物排出部35dは、沈殿槽35の底部に沈殿した沈殿物を排出するための部分(排出口)である。
【0017】
フィルタ37は、処理水W2を濾過し、処理水W2から不純物を分離する。フィルタ37は、沈殿槽35よりも下流側に設けられ、限外濾過膜装置40よりも上流側に設けられる。フィルタ37は、例えば、限外濾過膜浸漬槽41の上部などに配置される。フィルタ37は、例えば沈殿槽35の上部に浮いていたゴミなどを濾過する。フィルタ37は、植物(例えば枝、葉、草、および藻の少なくともいずれかなど)を捕捉してもよく、泥などを捕捉してもよい。フィルタ37は、例えば、じょうご型などである。フィルタ37は、例えば紙製などである。フィルタ37の孔の大きさは、限外濾過膜43の孔の大きさよりも大きく、例えばミリメートル単位などである。「孔の大きさ」は、フィルタ37が通す(通過、透過する)不純物の大きさとフィルタ37が通さない不純物の大きさとの境界の大きさである(限外濾過膜43および逆浸透膜57aについても同様)。フィルタ37に捕捉された濾過物は、手作業で取られてもよい。フィルタ37に捕捉された濾過物は、例えばフィルタ37と排水口とを接続する管(図示なし)を介して排出されてもよい。
【0018】
限外濾過膜装置40は、限外濾過膜43により処理水W2を濾過する装置である。限外濾過膜装置40は、取水ポンプ21よりも下流側に設けられ、例えば沈殿槽35よりも下流側に設けられ、例えばフィルタ37よりも下流側に設けられる。図4に示すように、限外濾過膜装置40は、限外濾過膜浸漬槽41と、膜エレメント42と、を備える。
【0019】
限外濾過膜浸漬槽41(限外濾過膜容器)は、限外濾過膜43を収容し、限外濾過膜43を処理水W2に浸漬させる槽である。限外濾過膜浸漬槽41は、例えば沈殿槽35と隣り合うように配置される。図1に示すように、限外濾過膜浸漬槽41内の処理水W2よりも上の空間は、大気圧であり、大気開放される。限外濾過膜浸漬槽41は、縦型である。限外濾過膜浸漬槽41は、限外濾過膜濾物排出部41dを備える。限外濾過膜濾物排出部41dは、限外濾過膜装置40により処理水W2から取り除かれた不純物(濾物)を排出するための部分である。
【0020】
膜エレメント42は、図4に示すように、複数本の限外濾過膜43などを備える部材である。膜エレメント42は、例えば複数設けられ、図4に示す例では8枚設けられ、1枚のみ設けられてもよい。膜エレメント42は、限外濾過膜浸漬槽41に収容される。それぞれの膜エレメント42は、限外濾過膜43と、膜支持部45と、を備える。なお、図4では、複数枚の膜エレメント42のうち、図4における右手前側の1枚の膜エレメント42の限外濾過膜43を実線で示し、他の7枚の膜エレメント42については限外濾過膜43の図示を省略し、限外濾過膜43の位置を二点鎖線で示した。
【0021】
限外濾過膜43(UF(Ultrafiltration)膜)は、処理水W2を濾過し、処理水W2から不純物を分離する。図1に示す限外濾過膜43の孔の大きさは、フィルタ37の孔の大きさよりも小さく、逆浸透膜装置57の逆浸透膜57aの孔の大きさよりも大きい。限外濾過膜43は、マイクロメートル単位の不純物を捕捉し、例えばバクテリアなどを捕捉する。限外濾過膜43は、ナノメートル単位の不純物を通し、例えばウイルスなどを通す。限外濾過膜43は、浸漬型である。さらに詳しくは、限外濾過膜43は、大気開放された限外濾過膜浸漬槽41に収容され、処理水W2に浸漬される。図4に示すように、限外濾過膜43は、複数(多数)設けられる。複数の限外濾過膜43のそれぞれは、中空糸膜43aである。中空糸膜43aは、中空の円筒状である。中空糸膜43aは、上下方向に延びる。中空糸膜43aの表面(径方向外側の面)を、表面43oとする。中空糸膜43aよりも径方向内側の空間を、膜内部空間43iとする。処理水W2は、表面43oよりも外側から、中空糸膜43aを通り、膜内部空間43iに流入する。
【0022】
膜支持部45は、限外濾過膜43の上部および下部を支持する。膜支持部45は、下側膜支持部45aと、上側膜支持部45bと、を備える。下側膜支持部45aは、複数の限外濾過膜43のそれぞれの下端部を支持する。上側膜支持部45bは、複数の限外濾過膜43のそれぞれの上端部を支持し、複数の限外濾過膜43を吊り下げる。上側膜支持部45bは、複数の限外濾過膜43のそれぞれの膜内部空間43iを連通させ、例えばパイプなどである。なお、下側膜支持部45aは、複数の限外濾過膜43のそれぞれの膜内部空間43iを連通させてもよく、連通させなくてもよい。上側膜支持部45bは、集合管47に接続される。
【0023】
集合管47は、全ての限外濾過膜43の膜内部空間43iを連通させる管である。集合管47は、複数の膜エレメント42のそれぞれの上側膜支持部45bの内部空間を連通させる。集合管47は、ホース47aと、ヘッダ管47bと、を備える。ホース47aは、複数の膜エレメント42のそれぞれの上側膜支持部45bに接続され、図4に示す例では8本設けられる。ヘッダ管47bは、複数のホース47aのそれぞれに接続される。
【0024】
気泡供給装置51は、限外濾過膜43の表面43oに気泡Bを供給する。気泡供給装置51は、限外濾過膜浸漬槽41内に気泡Bを供給する。気泡供給装置51は、ブロア51aと、気泡吐出部51bと、を備える。ブロア51aは、気体Aを吐出する。気体Aは、例えば空気であり(ブロア51aは例えばエアブロアであり)、空気でなくてもよい。気泡吐出部51bは、ブロア51aから供給された気体Aを、気泡Bとして吐出する。気泡吐出部51bは、限外濾過膜浸漬槽41内の、限外濾過膜43よりも下側に配置され、限外濾過膜43の真下に配置される。気泡吐出部51bは、前処理ユニット30の一部を構成する。気泡吐出部51bは、内部を気体Aが通ることが可能な部材を備え、例えば管(例えばエアーバブリング管)を備える。気泡吐出部51bは、例えば複数の管を備え、図4に示す例では3本の管を備え、管を1本のみ備えてもよい。各管には、管の内部から管の外部へ気体Aを吐出可能な複数の孔が形成される。
【0025】
気泡Bは、気泡吐出部51bから吐出され、限外濾過膜浸漬槽41内の処理水W2中を上昇する。気泡Bは、限外濾過膜43の表面43oを覆うように、処理水W2中を上昇する。気泡Bは、限外濾過膜43に接触し、さらに詳しくは、限外濾過膜43の(中空糸膜43aの)表面43oに接触する。気泡Bは、限外濾過膜43を揺らし、表面43oに付着した不純物を表面43oから剥離させる(スクラビングする)。気泡Bが表面43oから剥離させる不純物は、例えば懸濁物質、固形物、粘土質の泥などである。その結果、限外濾過膜43の表面43oに不純物が付着することが抑制され、限外濾過膜43の目詰まりが抑制される。気泡供給装置51から出た気泡Bが処理水W2の上部に到達するまでに、限外濾過膜43の表面43oへの接触面積をできるだけ広くできることが好ましい。具体的には、限外濾過膜43の(限外濾過膜装置40の)長手方向を上下方向とすることが好ましい。
【0026】
吸引ポンプ53は、図1に示すように、限外濾過膜43よりも下流側で処理水W2を吸引する。吸引ポンプ53は、限外濾過膜43よりも上流側の処理水W2を、限外濾過膜43を介して吸引し、限外濾過膜43を通す。吸引ポンプ53は、図4に示す限外濾過膜43よりも上流側の圧力Poに対して、限外濾過膜43よりも下流側(具体的には膜内部空間43i)の圧力Piを低くする(負圧にする)。吸引ポンプ53は、集合管47のヘッダ管47bに接続される。吸引ポンプ53は、例えばベーンポンプなどである。吸引ポンプ53は、例えば電動でもよく、例えば流体圧(例えば油圧など)により駆動してもよい。
【0027】
高圧ポンプ55は、図1に示すように、吸引ポンプ53よりも下流側に設けられ、吸引ポンプ53に吸い込まれた処理水W2を加圧する。高圧ポンプ55は、逆浸透膜装置57での処理に適した圧力に処理水W2を加圧する。高圧ポンプ55は、例えば容積型ポンプなどであり、例えばプランジャポンプなどである。高圧ポンプ55は、例えば電動でもよく、例えば流体圧(例えば油圧など)により駆動してもよい。
【0028】
逆浸透膜装置57は、逆浸透膜57aにより処理水W2を濾過する装置である。逆浸透膜装置57は、高圧ポンプ55よりも下流側に設けられ、高圧ポンプ55に加圧された処理水W2を逆浸透膜57aに通すことで処理水W2を濾過する。逆浸透膜装置57は、逆浸透膜57a(RO(Reverse Osmosis)膜)と、逆浸透膜濾物排出部57dと、を備える。逆浸透膜57aの孔の大きさは、限外濾過膜43の孔の大きさよりも小さい。逆浸透膜57aは、ナノメートル単位の不純物を捕捉し、例えばウイルスなどを捕捉する。逆浸透膜57aは、ナトリウムイオンおよび塩化物イオンを捕捉可能であり、海水を淡水化できる。逆浸透膜濾物排出部57dは、逆浸透膜57aで捕捉された不純物(濾物)を排出するための部分である。
【0029】
活性炭処理部61は、処理水W2を活性炭に通すことで、処理水W2中のアンモニア成分などを減らし、処理水W2のにおいを抑制する。活性炭処理部61は、逆浸透膜装置57よりも下流側に設けられる。活性炭処理部61は、例えば塔(処理塔、カラム)などである。
【0030】
カルサイト処理部63は、処理水W2にミネラルを加え、例えばカルシウムイオン、カリウムイオン、およびマグネシウムイオンなどを処理水W2に加える。カルサイト処理部63は、逆浸透膜装置57よりも下流側に設けられ、活性炭処理部61よりも下流側に設けられる。
【0031】
薬注ポンプ65(図2参照)は、処理水W2に薬剤を供給(注入)するポンプである。薬注ポンプ65(図2参照)が処理水W2に供給する薬剤には、例えば、スケール防止剤65a、および次亜塩素酸ソーダ65bなどがある。スケール防止剤65aは、逆浸透膜57aに微生物などが付着することを抑制し、逆浸透膜57aを保護するための薬剤である。スケール防止剤65aは、逆浸透膜57aよりも上流側の処理水W2に供給され、例えば高圧ポンプ55よりも上流側の処理水W2に供給され、例えば吸引ポンプ53よりも下流側の処理水W2に供給される。次亜塩素酸ソーダ65bは、処理水W2を滅菌する(できる限り微生物を減らす)ための薬剤である。次亜塩素酸ソーダ65bは、カルサイト処理部63よりも下流側の処理水W2に供給される。なお、上記以外の薬剤が処理水W2に供給されてもよい。例えば、処理水W2のpHを調整するための薬剤などが処理水W2に供給されてもよい。図1に示す例では、次亜塩素酸ソーダ65bが供給された処理水W2は、生産水W3となる。生産水W3は、例えば貯水タンクTなどに貯留されてもよい。なお、図2に示すように、生産水W3の流量を検出する流量計fmが設けられてもよい。
【0032】
排水ポンプ69は、排水を行うためのポンプである。排水ポンプ69は、例えば、図1に示す沈殿物排出部35d、限外濾過膜濾物排出部41d、および逆浸透膜濾物排出部57dなどに接続される。
【0033】
制御装置71(図2参照)は、移動式浄水装置20の構成要素の少なくとも一部を制御する装置(例えば制御盤など)である。制御装置71(図2参照)は、例えばポンプを制御し、具体的には例えば、取水ポンプ21、吸引ポンプ53、高圧ポンプ55、図2に示す薬注ポンプ65、および排水ポンプ69を制御する。発電機73は、機器に電力を供給し、例えばポンプおよび制御装置71などに電力を供給する。
【0034】
(機器の配置例)
移動装置10における、移動式浄水装置20の各構成要素の配置や取り付け方などは、様々に設定できる。例えば、移動式浄水装置20は、複数のモジュール(部品)が組み立てられたもの(部品組み立て式)である。移動式浄水装置20の各構成要素が、複数のモジュールとされることで、移動式浄水装置20の移動装置10への搭載および撤去が容易となる。具体的には例えば、限外濾過膜装置40(図1参照)、気泡供給装置51、吸引ポンプ53、高圧ポンプ55、および逆浸透膜装置57のうち、一部の構成要素は、他の構成要素(上記「一部の構成要素」とは異なる構成要素)と別体に構成される。また、例えば、複数の構成要素が一体的に構成されてもよい。複数の構成要素が一体的に構成される場合、複数の構成要素が、共通のベース部材(ベースプレートなど)に取り付けられてもよく、共通の容器に設けられてもよい。
【0035】
モジュールの具体例は次の通りである。前処理ユニット30と、逆浸透膜装置57と、高圧ポンプ55と、補機部(ブロア51aおよび吸引ポンプ53)と、制御装置71と、は、互いに別体(互いに異なるモジュール)である。また、例えば、ブロア51aと吸引ポンプ53とは、一体的に構成されてもよく(一つのモジュールとされてもよく)、具体的には共通のベース部材に取り付けられてもよい。例えば、図1に示す例では、沈殿槽35と限外濾過膜装置40とは、一体的に構成され(一つのモジュールとされ)、具体的には共通の前処理容器31に設けられる。
【0036】
移動式浄水装置20の構成要素の少なくとも一部(好ましくは全部)は、図2に示す移動装置10に着脱可能である。例えば、前処理ユニット30、ブロア51a、吸引ポンプ53、高圧ポンプ55、および逆浸透膜装置57のそれぞれは、互いに異なるモジュールであり、各モジュールは、移動装置10に着脱可能に取り付けられる。各モジュール間は、ホース、およびホースを接続するためのコネクタによって接続される。上記ホースは、例えば処理水W2(図1参照)が通るホースであり、例えば気体A(図1参照)が通るホースである。
【0037】
移動装置10における、移動式浄水装置20の各構成要素の配置の具体例は、次の通りである。前処理ユニット30、吸引ポンプ53、高圧ポンプ55、逆浸透膜装置57、薬注ポンプ65、および制御装置71は、車両11に搭載される。発電機73は、トレーラ13に搭載される。図1に示す、取水ポンプ21、活性炭処理部61、カルサイト処理部63、および貯水タンクTは、トレーラ13に搭載されてもよく、トレーラ13とは別の台車などに搭載されてもよい。
【0038】
(作動)
移動式浄水装置20は、以下のように作動するように構成される。移動式浄水装置20の使用時には、上記の通り、原水W1を処理し、生産水W3を生産する。移動式浄水装置20の使用時には、移動装置10(図2参照)は、地面に対して移動しない(固定される)。移動式浄水装置20の使用時には、図3に示すように、前処理ユニット30は、起立状態(縦型)となる。このとき、図4に示す複数の限外濾過膜43のそれぞれは(中空糸膜43aは)、上下方向に延びるように配置される。このとき、気泡Bは、気泡吐出部51bから吐出され、限外濾過膜43に沿うように上昇する。その結果、限外濾過膜43の表面43oから不純物が剥離され、限外濾過膜43が洗浄される。
【0039】
図1に示す移動式浄水装置20の不使用時には、図3において二点鎖線で示すように、前処理ユニット30は、倒伏状態となる。上記「移動式浄水装置20の不使用時」には、例えば、図2に示す移動装置10により移動式浄水装置20を移動させる時(移動時、輸送時)などが含まれる。図3に示す前処理ユニット30が倒伏状態のとき、前処理ユニット30の長手方向は、水平方向または略水平方向となる。前処理ユニット30が倒伏状態になることで、前処理ユニット30が起立状態の場合に比べ、前処理ユニット30の重心が下がる。よって、車両11が安定して走行しやすくなる。また、前処理ユニット30が倒伏状態になることで、前処理ユニット30の高さが低くなる(上下方向の寸法が小さくなる)。その結果、図2に示す移動装置10および移動式浄水装置20の、全体としての高さが低くなる。よって、移動式浄水装置20が搭載された移動装置10の格納や搬出が容易になる。例えば、移動式浄水装置20が搭載された移動装置10が、この移動装置10とは別の移動装置に搭載される際に、前処理ユニット30が邪魔になりにくい。例えば、移動装置10の格納庫の高さ方向のスペースが限られていても、移動装置10を格納庫内に円滑に格納しやすくなり、移動装置10を格納庫内から円滑に搬出しやすくなる。上記「別の移動装置」は、例えば航空機(例えばヘリコプターなど)でもよく、例えば船舶でもよく、例えば車両(車両11よりも大きい車両)でもよい。なお、移動式浄水装置20の構成要素のうち、前処理ユニット30以外の構成要素は、倒伏状態の前処理ユニット30よりも低い位置に配置される。
【0040】
例えば、前処理ユニット30が起立状態のときには、移動式浄水装置20が搭載された移動装置10を格納できないような限られたスペース(例えば航空機の格納庫など)があるとする。この場合、前処理ユニット30を倒伏状態にする。すると、移動式浄水装置20が搭載されたままの移動装置10を(移動装置10から移動式浄水装置20が取り外されなくても)、限られたスペースに対して容易に格納および搬出できる。
【0041】
(起倒の例1)
図3に示す前処理ユニット30の起倒の作業(倒伏状態から起立状態にする作業、および起立状態から倒伏状態にする作業)は、例えば次のように行われる。作業者が手作業で前処理ユニット30を起倒させてもよい。この場合、前処理ユニット30に、作業者が手で持つことが可能なハンドル81などが設けられることが好ましい。
【0042】
(起倒の例2)
図5に示すように、前処理ユニット30の起倒には、起倒装置280が用いられてもよい。起倒装置280は、滑車283およびロープ285などを用いて前処理ユニット30を起倒させる装置である。例えば、起倒装置280は、ポール281と、滑車283と、ロープ285と、ウインチ287と、を備える。ポール281は、車両11に立てられ、前処理ユニット30の近傍に配置される。ポール281は、起倒式でもよい。滑車283は、ポール281に回転可能に取り付けられ、例えばポール281の先端部に取り付けられる。ロープ285は、ウインチ287に巻きつけられ、滑車283に掛けられ、前処理ユニット30に取り付けられる。ウインチ287は、ロープ285の巻き取りおよび繰り出しを行う。ウインチ287は、手動(手巻)でもよく、電動でもよく、流体圧(例えば油圧など)により駆動してもよい。例えば、ウインチ287がロープ285を巻き取ることで、倒伏状態の前処理ユニット30が、起立状態になる。例えば、前処理ユニット30が倒れる側に前処理ユニット30に力を作用させながら、ウインチ287がロープ285を繰り出すことで、起立状態の前処理ユニット30が、倒伏状態になる。前処理ユニット30が倒れる側に前処理ユニット30に力を作用させる手段は、人力でもよく、ウインチ287およびロープ285とは別のウインチおよびロープ(図示なし)などの装置でもよく、ジャッキなどの装置でもよい。
【0043】
(起倒の例3)
図6に示すように、前処理ユニット30の起倒には、ジャッキ381(起倒装置)が用いられてもよい。ジャッキ381は、例えば伸縮可能なものなどである。ジャッキ381は、手動でもよく、電動でもよく、流体圧(例えば油圧など)により駆動してもよい。例えば、ジャッキ381が縮むことで、起立状態の前処理ユニット30が、倒伏状態になる。ジャッキ381が伸びることで、倒伏状態の前処理ユニット30が、起立状態になる。
【0044】
(加圧型との比較)
本実施形態では、図1に示す限外濾過膜装置40は、加圧型ではなく、吸引型である。限外濾過膜装置が加圧型である場合(例えば上記の特許文献1などを参照)、次の問題が生じ得る。以下、比較対称の構成要素(例えば加圧型の限外濾過膜装置)に、本実施形態の構成要素と同じ符号を付す。限外濾過膜装置40が加圧型の場合、加圧ポンプが必要になる。この加圧ポンプは、限外濾過膜43の上流側の処理水W2を加圧するポンプであり、限外濾過膜43に処理水W2を押しこむポンプである。加圧型では、図4に示す膜内部空間43i(下流側)の圧力Piよりも、限外濾過膜43の外部(上流側)の圧力Poが高圧である。
【0045】
[加圧型の問題の例1(容器の大型化)]限外濾過膜装置40が加圧型の場合、圧力Poは、大気圧に比べ高い。そのため、限外濾過膜43を収容する容器は、この圧力Poに耐えられる圧力容器(加圧ケーシング)である必要がある。そのため、限外濾過膜43を収容する容器が大型化するおそれがある。その結果、移動式浄水装置20が大型化する。移動式浄水装置20が大型になると、移動装置10(図2参照)を大型(例えば大型トラックなど)にする必要が生じ得る。
【0046】
一方、本実施形態では、限外濾過膜装置40は、吸引型である。さらに詳しくは、限外濾過膜43の下流側が、吸引ポンプ53(図1参照)で吸引される。吸引型では、限外濾過膜43の膜内部空間43i(下流側)の圧力Piよりも、限外濾過膜43の外部(上流側)の圧力Poが高圧であり、この圧力Poは、ほぼ大気圧である。よって、限外濾過膜43を収容する容器を、圧力容器にする必要がない。よって、限外濾過膜43を収容するための容器(具体的には限外濾過膜浸漬槽41)を小型化できる。その結果、移動式浄水装置20(図1参照)を小型化できる。
【0047】
[加圧型の問題の例2(運転の安定性)]限外濾過膜装置40が加圧型の場合、圧力Poが高圧であるため、気泡Bを上昇させて限外濾過膜43を洗浄する、という方法を用いることはできない。そのため、限外濾過膜43に不純物が付着しやすく、限外濾過膜43が目詰まり(ファウリング)しやすい。限外濾過膜43が目詰まりすると、図1に示す移動式浄水装置20の運転を停止する必要があり、移動式浄水装置20の運転の安定性を損なうおそれがある。移動式浄水装置20の運転を停止した場合、運転を停止した時間の分、生産水W3の生産量が減る。
【0048】
一方、本実施形態では、図4に示すように、限外濾過膜43への不純物の付着を、気泡Bによって抑制できる。よって、図1に示す移動式浄水装置20の運転の安定性を確保しやすい。その結果、生産水W3の生産量を確保しやすい。
【0049】
[加圧型の問題の例3(逆洗)]図4に示す限外濾過膜装置40が加圧型の場合、限外濾過膜43に付着した不純物を取り除くために、逆洗が行われる場合がある。この逆洗では、膜内部空間43iから表面43o側に流体(空気や水など)が通される。この逆洗時には、限外濾過膜43の膜内部空間43iの圧力Piは、限外濾過膜43の外部の圧力Poよりも高くなる。[問題の例3-1]この逆洗時には、図1に示す生産水W3の生産が一旦停止される。そのため、移動式浄水装置20は、連続運転できず(間欠運転になり)、移動式浄水装置20の運転の安定性を損なうおそれがある。そのため、生産水W3の生産が一旦停止された時間の分、生産水W3の生産量が減る。生産水W3の生産量を確保するには、移動式浄水装置20を大型化する必要が生じ得る。[問題の例3-2]この逆洗が水で行われる場合は、逆洗用の水を貯留するタンクが必要になる。そのため、移動式浄水装置20が大型化するおそれがある。また、移動式浄水装置20が処理した水が逆洗用の水として利用される場合は、生産水W3の生産量が減る。生産水W3の生産量を確保するには、移動式浄水装置20を大型化する必要が生じ得る。
【0050】
一方、本実施形態では、図4に示すように、限外濾過膜43への不純物の付着を、気泡Bによって抑制できる。よって、限外濾過膜43を逆洗する必要がない、または逆洗の必要性を減らせる。よって、上記の逆洗による問題を解消(または抑制)できる。その結果、図1に示す移動式浄水装置20を小型化できる。
【0051】
[加圧型の問題の例4(ポンプのエネルギー効率)]限外濾過膜装置40が加圧型の場合、限外濾過膜43の上流側に加圧ポンプが設けられる。この加圧ポンプの吐出圧力(出口圧力)は、高圧ポンプ55に作用する。しかし、加圧ポンプから高圧ポンプ55までの間での、限外濾過膜43および配管で、圧力が損失する。
【0052】
一方、本実施形態では、限外濾過膜装置40が吸引型であり、限外濾過膜43の下流側に吸引ポンプ53が設けられる。この吸引ポンプ53の吐出圧力は、高圧ポンプ55に作用する。また、限外濾過膜装置40が加圧型である場合の、加圧ポンプから高圧ポンプ55までの配管に比べ、本実施形態の吸引ポンプ53から高圧ポンプ55までの配管を短くしやすい。よって、吸引ポンプ53から高圧ポンプ55までの間での圧力損失を抑制できる。よって、吸引ポンプ53および高圧ポンプ55の必要動力を少なくできる。よって、移動式浄水装置20のエネルギー効率を高くでき、移動式浄水装置20を小型化できる。
【0053】
また、吸引ポンプ53の吐出圧力は高圧ポンプ55に作用するので、吸引ポンプ53が設けられない場合に比べ、高圧ポンプ55の必要揚程を下げることができる。よって、高圧ポンプ55の必要動力を少なくできる。よって、移動式浄水装置20のエネルギー効率を高くでき、移動式浄水装置20を小型化できる。
【0054】
[加圧型の問題の例5(大型の濾過装置)]上記のように、限外濾過膜装置40が加圧型の場合、限外濾過膜43に不純物が付着しやすい。そこで。限外濾過膜43への不純物の付着を抑制するために、限外濾過膜43よりも上流側に大型の濾過装置を設けることが考えられる。上記「大型の濾過装置」は、例えばフィルタ37よりも大型の装置である。上記「大型の濾過装置」は、例えば、砂濾過により濾過を行う装置、または、濾過筒を回転させることで濾過を行う装置などである。このような大型の濾過装置が用いられる場合、移動式浄水装置20が大型になる。さらに詳しくは、移動式浄水装置20は、大型の濾過装置と、限外濾過膜装置40と、逆浸透膜装置57と、の3つ(3段)の濾過装置を備えることになる。
【0055】
一方、本実施形態では、図4に示すように、限外濾過膜43への不純物の付着を気泡Bで抑制できる。よって、移動式浄水装置20に、上記「大型の濾過装置」を設ける必要がない(または設ける必要性を減らせる)。具体的には例えば、図1に示すように、限外濾過膜装置40と、逆浸透膜装置57と、の2つ(2段)の濾過装置で足りる。仮に、限外濾過膜装置40および逆浸透膜装置57以外に濾過を行う構成要素が設けられるとしても、上記「大型の濾過装置」よりも小型の構成要素(例えばフィルタ37など)で足りる。
【0056】
なお、本実施形態の移動式浄水装置20では、上記の移動式浄水装置20の利点のうち、一部のみが得られてもよい。本実施形態の移動式浄水装置20において、限外濾過膜43が逆洗されてもよい。限外濾過膜43が逆洗される場合でも、加圧型の限外濾過膜装置40に比べ、逆洗の必要時間や必要回数を抑制できる。本実施形態の移動式浄水装置20において、限外濾過膜43よりも上流側に、フィルタ37よりも大きい濾過装置が設けられてもよい。
【0057】
(効果)
図1に示す移動式浄水装置20による効果は次の通りである。
【0058】
(第1の発明の効果)
移動式浄水装置20は、移動装置10(図2参照)に搭載可能である。移動式浄水装置20は、限外濾過膜装置40と、気泡供給装置51と、吸引ポンプ53と、高圧ポンプ55と、逆浸透膜装置57と、を備える。限外濾過膜装置40は、処理水W2を限外濾過膜43に通すことで処理水W2を濾過する。
【0059】
[構成1-1]図4に示すように、気泡供給装置51は、限外濾過膜43の表面43oに気泡Bを供給する。
【0060】
[構成1-2]図1に示すように、吸引ポンプ53は、限外濾過膜43よりも下流側で処理水W2を吸引する。高圧ポンプ55は、吸引ポンプ53が吸引した処理水W2を加圧する。逆浸透膜装置57は、高圧ポンプ55に加圧された処理水W2を逆浸透膜57aに通すことで処理水W2を濾過する。
【0061】
上記[構成1-1]により、図4に示す限外濾過膜43の表面43oに気泡Bが供給されるので、限外濾過膜43の表面43oに、処理水W2中の不純物が付着することを抑制できる(以下、この作用を「気泡Bによる作用」という)。よって、限外濾過膜43の目詰まりを抑制できるので、移動式浄水装置20の運転の安定性を確保しやすい。よって、生産水W3の生産量を確保しやすいので、移動式浄水装置20を小型化できる。
【0062】
上記[構成1-1]により、気泡Bによる作用が得られるので、気泡Bによる作用が得られない場合に比べ、限外濾過膜装置40よりも上流側での水処理を簡素化できる。よって、移動式浄水装置20を小型化できる。
【0063】
上記[構成1-1]により、気泡Bによる作用が得られるので、限外濾過膜43を逆洗する必要性を減らせる。よって、移動式浄水装置20による生産水W3の生産を停止させる必要性を減らせる。よって、移動式浄水装置20の運転の安定性を確保しやすい。その結果、移動式浄水装置20を小型化できる。
【0064】
上記[構成1-2]では、限外濾過膜43に処理水W2を通すための吸引ポンプ53は、限外濾過膜43よりも下流側に設けられる。この吸引ポンプ53の吐出圧は、高圧ポンプ55に作用する。よって、限外濾過膜43よりも上流側に、限外濾過膜43に処理水W2を通すためのポンプ(例えば上記の加圧ポンプ)が設けられる場合に比べ、吸引ポンプ53から高圧ポンプ55までの間での圧力損失を抑制できる。よって、吸引ポンプ53および高圧ポンプ55の必要動力を抑制できる。よって、移動式浄水装置20のエネルギー効率を向上させることができるので、移動式浄水装置20を小型化できる。
【0065】
(第2の発明の効果)
[構成2]図3に示すように、限外濾過膜装置40は、移動装置10に対して起立可能および倒伏可能に取り付けられる。
【0066】
図4に示すように、限外濾過膜装置40の使用時には、上記[構成1-1]のように、限外濾過膜43の表面43oに気泡Bが供給される。このとき、気泡供給装置51から出た気泡Bが処理水W2の上部に到達するまでに、限外濾過膜43の表面43oへの接触面積をできるだけ広くするために、限外濾過膜装置40の長手方向を上下方向とすることが好ましい。一方、図3に示す限外濾過膜装置40の不使用時には、限外濾過膜装置40の長手方向が上下方向であれば、移動装置10の移動や格納などの際に、不利になる場合がある。そこで、限外濾過膜装置40は、移動装置10に対して起立可能および倒伏可能に取り付けられる(上記[構成2])。よって、限外濾過膜装置40の使用時に、限外濾過膜装置40を容易に起立状態にでき、限外濾過膜装置40の不使用時に、限外濾過膜装置40を容易に倒伏状態にできる。
【0067】
限外濾過膜装置40を倒伏状態にできる結果、次の効果が得られてもよい。限外濾過膜装置40を倒伏状態にすることで、限外濾過膜装置40の重心を下げることができ、移動装置10を容易に移動させることができる。限外濾過膜装置40を倒伏状態にすることで、限外濾過膜装置40の高さを下げることができる。よって、図2に示す移動式浄水装置20が搭載されたままの移動装置10を(移動装置10から移動式浄水装置20を取り外さなくても)、格納庫などの限られたスペースに対して容易に格納および搬出できる。
【0068】
(第3の発明の効果)
[構成3-1]図1に示すように、移動式浄水装置20は、限外濾過膜装置40よりも上流側に設けられる沈殿槽35を備える。
【0069】
[構成3-2]沈殿槽35および限外濾過膜装置40は、一つの前処理容器31(容器)内に設けられる。
【0070】
上記[構成3-1]により、沈殿槽35が設けられない場合に比べ、限外濾過膜43に到達する不純物を減らすことができる。よって、限外濾過膜43の目詰まりをより抑制できる。その結果、移動式浄水装置20の運転の安定性をより確保しやすく、その結果、移動式浄水装置20をより小型化できる。さらに、上記[構成3-2]により、沈殿槽35と限外濾過膜装置40とを別々の容器に設ける場合に比べ、移動式浄水装置20を小型化できる。
【0071】
(第4の発明の効果)
[構成4]図2に示す限外濾過膜装置40、気泡供給装置51、吸引ポンプ53、高圧ポンプ55、および逆浸透膜装置57のうち、一部の構成要素は、他の構成要素(上記「一部の構成要素」とは異なる構成要素)と別体に構成される。限外濾過膜装置40、気泡供給装置51、吸引ポンプ53、高圧ポンプ55、および逆浸透膜装置57は、移動装置10に着脱可能に取り付けられる。
【0072】
上記[構成4]により、上記[構成4]を備えない場合に比べ、移動装置10への移動式浄水装置20の搭載および撤去を容易に行える。
【0073】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、移動装置10および移動式浄水装置20の各構成要素の配置や形状などが変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、互いに異なる複数の構成要素として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【0074】
例えば、上記実施形態では、図1に示す沈殿槽35と限外濾過膜装置40とが、一つの前処理ユニット30に設けられたが、沈殿槽35と限外濾過膜装置40とが別々に設けられてもよい。例えば、沈殿槽35は設けられなくてもよい。沈殿槽35が設けられない場合、上記「前処理ユニット30」を「限外濾過膜装置40」に読み替える。
【符号の説明】
【0075】
10 移動装置
20 移動式浄水装置
31 前処理容器(一つの容器)
35 沈殿槽
40 限外濾過膜装置
43 限外濾過膜
51 気泡供給装置
53 吸引ポンプ
55 高圧ポンプ
57 逆浸透膜装置
57a 逆浸透膜
W2 処理水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置に搭載可能な移動式浄水装置であって、
処理水を限外濾過膜に通すことで前記処理水を濾過し、前記移動装置に対して起立可能および倒伏可能に取り付けられた限外濾過膜装置と、
前記移動装置に対して前記限外濾過膜装置を起立および倒伏させる起倒装置と、
前記限外濾過膜の表面に気泡を供給する気泡供給装置と、
前記限外濾過膜よりも下流側で前記処理水を吸引する吸引ポンプと、
前記吸引ポンプが吸引した前記処理水を加圧する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプに加圧された前記処理水を逆浸透膜に通すことで前記処理水を濾過する逆浸透膜装置と、
を備える、
移動式浄水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式浄水装置であって、
前記起倒装置は、
前記限外濾過膜装置に取り付けられるロープと、
前記ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うウインチと、
を備える、
移動式浄水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動式浄水装置であって、
前記起倒装置は、伸縮可能なジャッキを備える、
移動式浄水装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の移動式浄水装置であって、
前記限外濾過膜装置よりも上流側に設けられる沈殿槽を備え、
前記沈殿槽および前記限外濾過膜装置は、一つの容器内に設けられる、
移動式浄水装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の移動式浄水装置であって、
前記限外濾過膜装置、前記気泡供給装置、前記吸引ポンプ、前記高圧ポンプ、および前記逆浸透膜装置のうち、一部の構成要素は、前記一部の構成要素とは異なる構成要素と別体に構成され、
前記限外濾過膜装置、前記気泡供給装置、前記吸引ポンプ、前記高圧ポンプ、および前記逆浸透膜装置は、前記移動装置に着脱可能に取り付けられる、
移動式浄水装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
10 移動装置
20 移動式浄水装置
31 前処理容器(一つの容器)
35 沈殿槽
40 限外濾過膜装置
43 限外濾過膜
51 気泡供給装置
53 吸引ポンプ
55 高圧ポンプ
57 逆浸透膜装置
57a 逆浸透膜
280 起倒装置
285 ロープ
287 ウインチ
381 ジャッキ
W2 処理水