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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159430
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 305
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129558
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2017179822の分割
【原出願日】2017-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドの個別流路内に流れ込んだ気泡を確実に排出する。
【解決手段】ノズル45が水平に延びた連結流路43に接続されている。連結流路43の両端部が、それぞれ、上下方向に延びたディセンダ流路42に接続されている。各ディセンダ流路42の上端部に圧力室40が接続されている。一方の圧力室40は絞り流路41を介して供給マニホールド46に接続され、他方の圧力室40は絞り流路41を介して帰還マニホールド47に接続されている。ディセンダ流路42の圧力室40との接続部分を形成する貫通孔42aの径D11が、圧力室40の高さH11よりも小さくなっている。また、貫通孔42aと圧力室40とを上下方向に投影したときに、貫通孔42aは、圧力室40が配置される範囲内に収まっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別流路と、
複数の個別流路に共通の第1マニホールド及び第2マニホールドと、を備え、
各個別流路は、
1つのノズルと、
前記ノズルと所定方向に離れて配置され、前記所定方向と直交する平面に沿って延び、前記第1マニホールドと接続された第1圧力室と、
前記ノズルと所定方向に離れて配置され、前記所定方向と直交する平面に沿って延び、前記第2マニホールドと接続された第2圧力室と、
前記第1圧力室と接続され、前記第1圧力室との接続部分から前記ノズルに向かって、前記所定方向に沿って延びた第1接続流路と、
前記第2圧力室と接続され、前記第2圧力室との接続部分から前記ノズルに向かって、前記所定方向に沿って延びた第2接続流路と、
前記第1接続流路と前記第2接続流路とを連結し、前記ノズルと接続された連結流路と、を有し、
前記連結流路は、前記第1圧力室から前記第2圧力室へ液体の流れを生じさせることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記連結流路が、前記平面と平行に延び、
前記連結流路の前記第1接続流路との接続部分における前記所定方向の長さが、前記第1接続流路の前記連結流路との接続部分の径よりも小さく、
前記連結流路の前記第2接続流路との接続部分における前記所定方向の長さが、前記第2接続流路の前記連結流路との接続部分の径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記連結流路の前記第1接続流路との接続部分は、前記連結流路が延びる方向に投影したときに、前記第1接続流路が配置される範囲内に収まっており、
前記連結流路の前記第2接続流路との接続部分は、前記連結流路が延びる方向に投影したときに、前記第2接続流路が配置される範囲内に収まっていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記連結流路が延びる方向に投影したときに、前記連結流路の前記接続流路との接続部分の縁が、前記接続流路の縁よりも内側の位置していることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記接続流路が前記所定方向に対して傾いて延びていることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の記録ヘッドでは、圧力室が一平面に沿って延び、圧力室の一方の端部にノズル流路が接続されている。ノズル流路は圧力室との接続部分から下方に延び、その下端部においてノズルと接続されている。また、圧力室の他端部は、共通流路と接続されている。また、特許文献1に記載の記録ヘッドでは、隣接する2つのノズル流路の下端部同士が還流路によって接続されている。そして、2つの圧力室に圧力差を設けることで、高圧側の圧力室から、ノズル流路及び還流路を介して、低圧側の圧力室にインクを循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-254196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の記録ヘッドでは、上述したようにインクが循環するときに、ノズルからノズル流路に気泡が入り込むことがある。圧力室、ノズル流路、還流路などに気泡が残っていると、記録ヘッドを駆動させたときのノズルからのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。そのため、入り込んだ気泡を、還流路やノズル流路を介して低圧側の圧力室に流れさせ、さらに、低圧側の圧力室から共通流路に流れ出させる必要がある。このとき、気泡の径が、圧力室の高さに対して十分に小さければ、気泡は、ノズル流路と圧力室との接続部分において引っかかることなく、ノズル流路から圧力室に流れる。また、気泡の径がノズル流路の圧力室との接続部分の径に比べて十分に大きければ、気泡によりノズル流路と圧力室との接続部分が完全に塞がれる。そのため、インクが循環しようとすることでノズル流路と圧力室との間に圧力差が生じ、気泡は、この圧力差によって気泡が変形されつつ、ノズル流路から圧力室に流れる。しかしながら、例えば、気泡の径が、圧力室の高さに対して少しだけ大きい場合には、気泡がノズル流路と圧力室との接続部分に引っかかるが、この接続部分は気泡によって完全には塞がれない。そのため、この場合には、ノズル流路と圧力室との接続部分の気泡に塞がれていない部分をインクが流れ、ノズル流路と圧力室との間に十分な圧力差が生じず、気泡がノズル流路と圧力室との接続部分に引っかかったまま残留してしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、液体が循環しており、且つ、ノズルから入り込んだ気泡を確実に排出することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、複数の個別流路と、複数の個別流路に共通のマニホールドと、を備え、各個別流路は、ノズルと、前記ノズルと所定方向に離れて配置され、前記所定方向と直交する平面に沿って延び、前記マニホールドと接続された圧力室と、前記圧力室と接続され、前記圧力室との接続部分から前記ノズルに向かって、前記所定方向に沿って延びた接続流路と、前記接続流路に接続された、前記接続流路に液体を流れ込ませることによって前記接続流路から前記圧力室に向かう液体の流れを生じさせるための循環用流路と、を有し、前記接続流路の前記圧力室との接続部分の径が、前記圧力室の前記所定方向の長さよりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るプリンタ1の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッド3の平面図である。
図3図2の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】貫通孔42aの径が圧力室40の高さよりも大きい場合の気泡の流れを説明するための図である。
図6】第1実施形態における気泡の流れを説明するための図である。
図7】第2実施形態に係るインクジェットヘッド100の平面図である。
図8】(a)図7のA-A線断面図であり、(a)図7のB-B線断面図である。
図9】変形例1に係るインクジェットヘッド200の、走査方向に沿った断面図である。
図10】変形例2に係るインクジェットヘッド210の走査方向に沿った断面図である。
図11】変形例3に係るインクジェットヘッド220の走査方向に沿った断面図である。
図12】変形例4に係るインクジェットヘッド230の走査方向に沿った断面図である。
図13】変形例5に係るインクジェットヘッド240の走査方向に沿った断面図である。
図14】変形例6に係るインクジェットヘッド250の走査方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0009】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、第1実施形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(本発明の「液体吐出装置」)、プラテン4、及び、搬送ローラ5、6を備えている。
【0010】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11、12に支持され、ガイドレール11、12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0011】
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載され、キャリッジ2とともに走査方向に移動する。また、インクジェットヘッド3は、その下面に形成された複数のノズル45からインクを吐出する。なお、インクジェットヘッド3については後ほど詳細に説明する。
【0012】
プラテン4は、インクジェットヘッド3の下面と対向して配置され、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びている。プラテン4は、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ5、6は、それぞれ、走査方向と直交する搬送方向において、キャリッジ2よりも上流側及び下流側に配置され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0013】
そして、プリンタ1では、搬送ローラ5、6に、記録用紙Pを搬送方向に所定距離ずつ搬送させ、記録用紙Pが搬送される毎に、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド3の複数のノズル45からインクを吐出させることによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0014】
<インクジェットヘッド>
次に、インクジェットヘッド3について詳細に説明する。図2図4に示すように、インクジェットヘッド3は、ノズル45や後述する圧力室40などのインク流路が形成された流路ユニット21と、圧力室40内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータ22と、を備えている。
【0015】
<流路ユニット>
図4に示すように、流路ユニット21は、8枚のプレート31~38が上からこの順に積層されることによって形成されている。流路ユニット21には、複数の圧力室40と、複数の絞り流路41と、複数のディセンダ流路42(本発明の「接続流路)と、複数の連結流路43(本発明の「循環用流路」)と、複数のノズル45と、4つの供給マニホールド46(本発明の「第1マニホールド」)と、3つの帰還マニホールド47(本発明の「第2マニホールド」)とが形成されている。
【0016】
複数の圧力室40は、プレート31(本発明の「第1プレート」)に形成されている。図2図4に示すように、圧力室40は、走査方向を長手方向とする略矩形の平面形状を有している。すなわち、圧力室40は、走査方向及び搬送方向と平行な平面に沿って延びている。また、複数の圧力室40は、搬送方向に配列されることによって圧力室列29を形成している。また、プレート31には、12列の圧力室列29が走査方向に並んでいる。また、圧力室列29間で、圧力室40の搬送方向の位置がずれている。なお、第1実施形態では、複数の圧力室40のうち、後述するように絞り流路41を介して供給マニホールド46と接続される、左から1、4、5、8、9、12番目の圧力室列29を構成する圧力室40が、本発明の「第1圧力室」に相当する。また、後述するように絞り流路41を介して帰還マニホールド47と接続される、左から2、3、6、7、10、11番目の圧力室列29を構成する圧力室40が、本発明の「第2圧力室」に相当する。
【0017】
複数の絞り流路41は、図4に示すように、プレート32、33にまたがって形成されている。絞り流路41は各圧力室40に対して個別に設けられている。左から奇数番目の圧力室列29を構成する圧力室40に対して設けられた絞り流路41は、圧力室40の左端部と接続され、圧力室40との接続部分から左方に延びている。左から偶数番目の圧力室列29を構成する圧力室40に対して設けられた絞り流路41は、圧力室40の右端部と接続され、圧力室40との接続部分から右方に延びている。
【0018】
複数のディセンダ流路42は、プレート32~37に形成された貫通孔42a~42fが上下方向(本発明の「所定方向」)に重なることによって形成されている。ディセンダ流路42は、各圧力室40に対して個別に設けられている。左から奇数番目の圧力室列29を構成する圧力室40に対して設けられたディセンダ流路42は、圧力室40の右端部と接続され、圧力室40との接続部分から下方に延びている。左から偶数番目の圧力室列29を構成する圧力室40に対して設けられたディセンダ流路42は、圧力室40の左端部と接続され、圧力室40との接続部分から下方に延びている。なお、本実施の形態では、複数のディセンダ流路42のうち、左から1、4、5、8、9、12番目の圧力室列29を構成する圧力室40(第1圧力室)に接続されたディセンダ流路42が、本発明の「第1接続流路」に相当し、左から2、3、6、7、10、11番目の圧力室列29を構成する圧力室40(第2圧力室)に接続されたディセンダ流路42が、本発明の「第2接続流路」に相当する。
【0019】
また、ディセンダ流路42を形成する貫通孔42a~42fのうち、プレート32(本発明の「第2プレート」)に形成された貫通孔42aの径D11は、圧力室40の高さH11(本発明の「所定方向の長さ」)よりも小さくなっている。一方、プレート33~37に形成された貫通孔42b~42fの径は、貫通孔42aの径D11よりも大きくなっている。これにより、ディセンダ流路42は、圧力室40との接続部分における径D11が、圧力室40の高さH11よりも小さく、圧力室40との接続部分よりも下方に位置する部分(圧力室40と反対側の部分)において径が広がっている。また、上下方向に投影したときに、貫通孔42aの縁が、圧力室40の縁よりも内側に位置している。これにより、上下方向に投影したときに、貫通孔42aは、圧力室40が配置される範囲内に収まっており、圧力室40からはみ出していない。
【0020】
複数の連結流路43は、プレート37に形成されている。連結流路43は、水平で且つ走査方向及び搬送方向に対して傾いた方向に延びて、隣接する2つの圧力室列29のうち、一方の圧力室列29を構成する圧力室40に接続されたディセンダ流路42を形成する貫通孔42fと、他方の圧力室列29を構成する圧力室40に接続されたディセンダ流路42を形成する貫通孔42fとを接続する。第1実施形態では、プレート37に、上記2つのディセンダ流路42の貫通孔42fとなる部分と、連結流路43となる部分とが一体となった貫通孔が形成されている。また、連結流路43の高さH12は、貫通孔42f(ディセンダ流路42の連結流路43との接続部分)の径D12よりも小さくなっている。また、連結流路43が延びる方向に投影したときに、連結流路43は、貫通孔42fが配置されている範囲内に収まっており、貫通孔42fからはみ出していない。また、第1実施形態では、連結流路43の下端(下側の縁)、及び、ディセンダ流路42の下端(下側の縁)が、いずれもプレート38の上面によって形成されている。これにより、連結流路43が延びる方向に投影したときに、連結流路43の下側の縁と、ディセンダ流路42の下側の縁とが重なっている。
【0021】
そして、以上に説明したインク流路のうち、1つのノズル45と、このノズル45に接続された1つの連結流路43と、この連結流路43に接続された2つのディセンダ流路42と、これら2つのディセンダ流路42に接続された2つの圧力室40と、これら2つの圧力室40と接続された2つの絞り流路41とによって個別流路30が形成されている。
【0022】
複数のノズル45は、プレート38に形成されている。ノズル45は、各連結流路43に対して個別に設けられており、連結流路43の中央部に接続されている。
【0023】
4つの供給マニホールド46は、プレート34、35に形成された貫通孔と、プレート36の上側の部分に形成された凹部とが上下に重なることによって形成されている。4つの供給マニホールド46は、それぞれが搬送方向に延び、走査方向に間隔をあけて並んでいる。そして、4つの供給マニホールド46は、それぞれ、左から1、4、5、8、9、12番目の圧力室列29を構成する圧力室40に接続された絞り流路41の、圧力室40と反対側の端部と接続されている。また、各供給マニホールド46の搬送方向における上流側の端部には、インク供給口48が設けられている。そして、インク供給口48は、図示しないインクタンクに接続されており、インクタンクに貯留されたインクがインク供給口48から供給マニホールド46に供給される。そして、供給マニホールド46においては、搬送方向の上流側から下流側に向かってインクが流れ、個別流路30(絞り流路41)へインクを供給する。
【0024】
3つの帰還マニホールド47は、プレート34、35に形成された貫通孔と、プレート36の上側の部分に形成された凹部とが上下に重なることによって形成されている。3つの帰還マニホールド47は、それぞれが搬送方向に延び、走査方向において、隣接する供給マニホールド46の間に、それぞれ配置されている。そして、3つの帰還マニホールド47は、それぞれ、左から2、3、6、7、10、11番目の圧力室列29を構成する圧力室40に接続された絞り流路41の圧力室40と反対側の端部と接続されている。また、各帰還マニホールド47の搬送方向における上流側の端部には、インク排出口49が設けられている。インク排出口49は、図示しないインクタンクに接続されている。そして、帰還マニホールド47においては、個別流路30(絞り流路41)からインクが流れ込み、搬送方向の下流側から上流側に向かってインクが流れ、インク排出口49からインクが流出する。インク排出口49から流出したインクは、図示しないインクタンクに戻される。すなわち、第1実施形態では、インクジェットヘッド3と図示しないインクタンクとの間でインクが循環する。
【0025】
ここで、インク供給口48とインクタンクとの間の流路の途中、又は、インク排出口49とインクタンクとの間の流路の途中に、図示しないポンプが設けられており、このポンプが駆動されることにより生じるインクの流れによって、上述したようにインクが循環する。
【0026】
また、プレート37には、供給マニホールド46と上下方向に重なり、供給マニホールド46と隔てられたダンパ室51が形成されている。そして、プレート36の下端部によって形成される、供給マニホールド46とダンパ室51とを隔てる隔壁が変形することにより、供給マニホールド46内のインクの圧力変動が抑制される。また、プレート37には、帰還マニホールド47と上下方向に重なり、帰還マニホールド47と隔てられたダンパ室52が形成されている。そして、プレート36の下端部によって形成される、帰還マニホールド47とダンパ室52とを隔てる隔壁が変形することにより、帰還マニホールド47内のインクの圧力変動が抑制される。
【0027】
<圧電アクチュエータ>
図2図4に示すように、圧電アクチュエータ22は、2つの圧電層61、62と、共通電極63と、複数の個別電極64とを有する。圧電層61、62は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなる。圧電層61は、流路ユニット21の上面に配置され、圧電層62は、圧電層61の上面に配置されている。なお、圧電層61は、圧電層62とは異なり、例えば合成樹脂材料等、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0028】
共通電極63は、圧電層61と圧電層62との間に配置され、圧電層61、62のほぼ全域にわたって連続的に延びている。共通電極63はグランド電位に保持されている。複数の個別電極64は、複数の圧力室40に対して個別に設けられている。個別電極64は、走査方向を長手方向とする略矩形の平面形状を有し、対応する圧力室40の中央部と上下方向に重なるように配置されている。また、個別電極64の走査方向におけるディセンダ流路42と反対側の端部は、圧力室40と重ならない位置まで延び、その先端部が、図示しない配線部材との接続を行うための接続端子64aとなっている。複数の個別電極64の接続端子64aは、図示しない配線部材を介して図示しないドライバICに接続されている。そして、複数の個別電極64には、ドライバICにより個別に、グランド電位、及び、所定の駆動電位(例えば20V程度)のうちいずれかの電位が選択的に付与される。また、共通電極63と複数の個別電極64とがこのように配置されるのに対応して、圧電層62の各個別電極64と共通電極63とに挟まれた部分は、それぞれ、厚み方向に分極された活性部となっている。
【0029】
ここで、圧電アクチュエータ22を駆動してノズル45からインクを吐出させる方法について説明する。圧電アクチュエータ22では、ノズル45からインクを吐出させない待機状態において、全ての個別電極64が共通電極63と同じグランド電位に保持されている。あるノズル45からインクを吐出させるときには、そのノズル45に接続された2つの圧力室40に対応する2つの個別電極64の電位をグランド電位から駆動電位に切り換える。
【0030】
すると、上記2つの個別電極64に対応する2つの活性部に、分極方向と平行な電界が発生し、上記2つの活性部が分極方向と直交する水平方向に収縮する。これにより、圧電層61、62の上記2つの圧力室40と上下方向に重なる部分が全体として圧力室40側に凸となるように変形する。その結果、圧力室40の容積が小さくなることで圧力室40内のインクの圧力が上昇し、圧力室40に連通するノズル45からインクが吐出される。また、ノズル45からインクが吐出された後には、上記2つの個別電極64の電位をグランド電位に戻す。これにより、圧電層61、62が変形前の状態に戻る。
【0031】
<気泡の排出>
以上に説明したようなインクジェットヘッド3では、ノズル45から個別流路30内に気泡が流れ込むことがある。流れ込んだ気泡が個別流路30に残っていると、上述したように圧電アクチュエータ22を駆動させたときに、ノズル45から正常にインクを吐出させることができない虞がある。そのため、個別流路30内に流れ込んだ気泡は、例えば、連結流路43、ディセンダ流路42、圧力室40及び絞り流路41を介して帰還マニホールド47に排出させる必要がある。
【0032】
このとき、第1実施形態では、ディセンダ流路42を形成する貫通孔42aの径D11が、圧力室40の高さH11よりも小さくなっていることにより、気泡の径によらず、気泡が圧力室40とディセンダ流路42との接続部分に溜まることなく、ディセンダ流路42から圧力室40に流れる。
【0033】
この点についてより詳細に説明する。第1実施形態と異なり、図5(a)、(b)に示すように、ディセンダ流路42’を形成する、プレート32に形成された貫通孔42a’の径D11’が圧力室40の高さH11以上である場合を考える。この場合、径E1’が圧力室40の高さH11以下の気泡A1’が流れ込んだときには、気泡A1’の径E1’が、貫通孔42a’の径D11’よりも小さいため、気泡A1’は、ディセンダ流路42’及び圧力室40の壁に引っかかることなく、ディセンダ流路42’から圧力室40に流れる。
【0034】
また、図5(a)、(c)に示すように、径E2’が貫通孔42a’の径D11’以上の気泡A2’が流れ込んだときには、気泡A2’が貫通孔42a’に引っかかる。また、このとき、貫通孔42a’は、気泡A2’によって完全に塞がれる。上述したように、第1実施形態では、インクジェットヘッド3と図示しないインクタンクとの間でインクが循環しているため、貫通孔42a’が気泡A2’によって完全に塞がれると、ディセンダ流路42’と圧力室40との間に大きな圧力差が生じ、この圧力差によって、気泡A2’が変形してディセンダ流路42’から圧力室40に流れる。
【0035】
しかしながら、図5(a)、(d)に示すように、径E3’が、圧力室40の高さH11よりも大きく、且つ、貫通孔42a’の径D11’よりも小さい気泡A3’が流れ込んだときには、気泡A3’は、圧力室40の上壁面(圧電層61)に接触するまではディセンダ流路42’から圧力室40に入り込み、この位置で圧力室40に引っかかる。また、この状態では、気泡A3’が貫通孔42a’の一部分のみを塞いでいるだけである。したがって、この場合には、貫通孔42a’の気泡A3’によって塞がれていない部分(図5(d)のハッチングを付した部分)を介して、ディセンダ流路42’から圧力室40にインクが流れる。そのため、ディセンダ流路42’内のインクと圧力室40内のインクとの間に大きな圧力差が生じることがなく、気泡A3’はこの位置で留まってしまう虞がある。
【0036】
これに対して、第1実施形態のように、貫通孔42aの径D11が圧力室40の高さH11よりも小さい場合には、図6(a)、(b)に示すように、径E1が貫通孔42aの径D11以下の気泡A1が流れ込んだ場合には、気泡A1の径E1は、圧力室40の高さH11よりも小さいため、気泡A1は、ディセンダ流路42及び圧力室40の壁に引っかかることなく、ディセンダ流路42から圧力室40に流れる。
【0037】
また、径E2が貫通孔42aの径D11よりも大きい気泡A2が流れ込んだ場合には、気泡A2は、貫通孔42aに引っかかる。また、このとき、気泡A2は、圧力室40の上壁面に接触する位置よりも下側の位置に到達した時点で、貫通孔42aを完全に塞ぐ。上述したように、第1実施形態では、インクジェットヘッド3と図示しないインクタンクとの間でインクが循環しているため、貫通孔42aが気泡A2によって完全に塞がれると、ディセンダ流路42と圧力室40との間に大きな圧力差が生じ、この圧力差によって、気泡A2が変形してディセンダ流路42から圧力室40に流れる。
【0038】
また、第1実施形態では、貫通孔42aと圧力室40とを上下方向に投影したときに、貫通孔42aが圧力室40の範囲内に収まっている。したがって、ディセンダ流路42から圧力室40に気泡が流れようとするときに、気泡が貫通孔42aと圧力室40との境界部分において引っかかりにくく、スムーズに流れる。さらに、第1実施形態では、上下方向に投影したときに、貫通孔42aの縁が圧力室40の縁よりも内側に位置している。これにより、ディセンダ流路42から圧力室40に気泡がより流れやすい。
【0039】
また、第1実施形態では、ディセンダ流路42のうち、貫通孔42aよりも下側の部分(貫通孔42b~42f)の径が、貫通孔42aの径D11よりも大きくなっている。これにより、ディセンダ流路42全体において径がD11である場合と比較して、ディセンダ流路42の流路抵抗が小さくなり、圧電アクチュエータ22を駆動させたときのノズル45からのインクの吐出量を多くすることができる。
【0040】
また、第1実施形態では、圧力室40が形成されるプレート31に接続されるプレート32に、径D11が圧力室40の高さH11よりも小さい貫通孔42aを形成し、プレート32よりも下側のプレートに、貫通孔42aよりも径の大きい貫通孔42b~42fを形成することにより、圧力室40との接続部分における径が圧力室40の高さH11よりも小さく、これよりも下側の部分において径がD11よりも大きいディセンダ流路42を形成することができる。
【0041】
また、第1実施形態では、連結流路43の高さH12が、貫通孔42f(ディセンダ流路42の連結流路43との接続部分)の径D12よりも小さくなっている。これにより、上述の、貫通孔42aの径D11が圧力室40の高さH11よりも小さくなっているのと同様の理由から、気泡の径によらず、気泡が、ディセンダ流路42と連結流路43の接続部分に溜まることなく、連結流路43からディセンダ流路42に流れる。
【0042】
また、第1実施形態では、連結流路43が延びる方向に投影したときに、連結流路43が、貫通孔42fが配置される範囲内に収まっている。したがって、連結流路43からディセンダ流路42に気泡が流れる際に、連結流路43のディセンダ流路42との接続部分に気泡が引っかかりにくい。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。第2実施形態では、インクジェットヘッドの構造が第1実施形態と異なっている。
【0044】
図7図8に示すように、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100は、流路ユニット101と、圧電アクチュエータ102とを備えている。
【0045】
<流路ユニット>
流路ユニット101は、8枚のプレート111~118が上からこの順に積層されることによって形成されている。流路ユニット101には、複数の圧力室120と、複数の絞り流路121と、複数のディセンダ流路122(本発明の「接続流路」)と、複数の循環用流路123と、複数のノズル125と、6つの供給マニホールド126(本発明の「第1マニホールド」)と、6つの帰還マニホールド127(本発明の「第2マニホールド」)とが形成されている。
【0046】
複数の圧力室120は、プレート111(本発明の「第1プレート」)に形成されている。圧力室120は、圧力室40(図2参照)と同様の形状のものである。また、複数の圧力室120は、搬送方向に配列されることによって圧力室列119を形成している。また、プレート111には、6列の圧力室列119が走査方向に並んでいる。また、圧力室列119間で、圧力室120の搬送方向の位置がずれている。
【0047】
複数の絞り流路121は、プレート112、113にまたがって形成されている。絞り流路121は絞り流路41(図2参照)と同様の形状を有するものであり、各圧力室120に対して個別に設けられている。絞り流路121は、圧力室120の左端部と接続され、圧力室120との接続部分から左方に延びている。
【0048】
複数のディセンダ流路122は、プレート112~117に形成された貫通孔122a~122fが上下方向に重なることによって形成されている。ディセンダ流路122は、各圧力室120に対して個別に設けられている。ディセンダ流路122は、圧力室120の右端部と接続され、圧力室120との接続部分から下方に延びている。
【0049】
また、ディセンダ流路122を形成する貫通孔122a~122fのうち、プレート112(本発明の「第2プレート」)に形成された貫通孔122aの径D21は、圧力室120の高さH21よりも小さくなっている。一方、プレート113~117に形成された貫通孔122b~122fの径は、貫通孔122aの径D21よりも大きくなっている。これにより、ディセンダ流路122は、圧力室120との接続部分における径D21が、圧力室120の高さH21よりも小さく、圧力室120との接続部分よりも下方に位置する部分(圧力室120と反対側の部分)において径が広がっている。また、上下方向に投影したときに、貫通孔122aの縁は、圧力室120の縁よりも内側に位置している。これにより、上下方向に投影したときに、貫通孔122aは、圧力室120が配置される範囲内に収まっており、圧力室120からはみ出していない。
【0050】
複数の循環用流路123は、プレート117に形成されている。循環用流路123は、ディセンダ流路122に対して個別に設けられ、ディセンダ流路122を形成する貫通孔122a~122fのうち、プレート117に形成された貫通孔122fの側壁面の左下端部に接続され、ディセンダ流路122(貫通孔122f)との接続部分から左方に延びている。また、循環用流路123の高さH22は、貫通孔122f(ディセンダ流路122の循環用流路123との接続部分)の径D22よりも小さくなっている。また、循環用流路123が延びる走査方向に投影したときに、循環用流路123が、ディセンダ流路122(貫通孔122f)が配置されている範囲内に収まっており、ディセンダ流路122からはみ出していない。また、第2実施形態では、循環用流路123の下端(下側の縁)、及び、ディセンダ流路122の下端(下側の縁)が、いずれもプレート118の上面によって形成されている。これにより、循環用流路123が延びる走査方向に投影したときに、循環用流路123の下側の縁と、ディセンダ流路122の下側の縁とが重なっている。
【0051】
複数のノズル125は、プレート118に形成されている。ノズル125は、ディセンダ流路122に対して個別に設けられており、ディセンダ流路122の下端に接続されている。
【0052】
そして、ノズル125と、ノズル125に接続されたディセンダ流路122と、ディセンダ流路122に接続された循環用流路123及び圧力室120と、圧力室120に接続された絞り流路121とによって、個別流路110が形成されている。また、複数の個別流路110が搬送方向に配列されることによって個別流路列109を形成している。また、流路ユニット101では、6列の個別流路列109が走査方向に並んでいる。
【0053】
6つの供給マニホールド126は、プレート117に形成されている。6つの供給マニホールド126は、それぞれが搬送方向に延び、走査方向に間隔をあけて並んでいる。6つの供給マニホールド126は、6列の個別流路列109に対応しており、各供給マニホールド126は、対応する個別流路列109を構成する複数の個別流路110の循環用流路123と接続されている。また、各供給マニホールド126は、個別流路列109よりも搬送方向の上流側の部分において、走査方向の右側に傾いて延びている。各供給マニホールド126の搬送方向における上流側の端部には、インク供給口128が設けられている。そして、図示しないインクタンクに貯留されたインクが、インク供給口128から供給マニホールド126に供給される。これにより、供給マニホールド126においては、搬送方向の上流側から下流側に向かってインクが流れ、個別流路110(循環用流路123)へインクが供給される。
【0054】
6つの帰還マニホールド127は、プレート114に形成されている。6つの帰還マニホールド127は、それぞれが搬送方向に延び、走査方向に間隔をあけて並んでいる。帰還マニホールド127は、供給マニホールド126よりも上方に位置し、供給マニホールド126と上下方向に重なっている。また、6つの帰還マニホールド127は、6列の個別流路列109に対応しており、各帰還マニホールド127は、対応する個別流路列109を構成する複数の個別流路110の絞り流路121と接続されている。また、各帰還マニホールド127は、個別流路列109よりも搬送方向の上流側の部分において、走査方向の左側に傾いて延びている。また、各帰還マニホールド127の搬送方向における上流側の端部には、インク排出口129が設けられている。インク排出口129には、図示しないインクタンクが接続されている。そして、帰還マニホールド127においては、個別流路110(絞り流路121)からインクが流れ込み、搬送方向の下流側から上流側に向かってインクが流れ、インク排出口129からインクが流出する。インク排出口129から流出したインクは、図示しないインクタンクに戻される。すなわち、第2実施形態では、インクジェットヘッド100と図示しないインクタンクとの間でインクが循環する。
【0055】
ここで、インク供給口128とインクタンクとの間の流路の途中、又は、インク排出口129とインクタンクとの間の流路の途中に、図示しないポンプが設けられており、このポンプが駆動されることにより生じるインクの流れによって、上述したようにインクが循環する。
【0056】
また、流路ユニット101には、プレート115の下側の部分とプレート116の上側の部分にまたがって延び、供給マニホールド126及び帰還マニホールド127と上下方向に重なるダンパ室130が形成されている。そして、プレート116の下端部によって形成される、供給マニホールド126とダンパ室130とを隔てる隔壁が変形することにより、供給マニホールド126内のインクの圧力変動が抑制される。また、プレート115の上端部によって形成される、帰還マニホールド127とダンパ室130とを隔てる隔壁が変形することにより、帰還マニホールド127内のインクの圧力変動が抑制される。
【0057】
<圧電アクチュエータ>
圧電アクチュエータ102は、2つの圧電層141、142と、共通電極143と、複数の個別電極144とを有する。圧電層141、142は、圧電材料からなる。圧電層141は、流路ユニット101の上面に配置され、圧電層142は圧電層141の上面に配置されている。なお、圧電層141は、圧電層61と同様、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0058】
共通電極143は、圧電層141と圧電層142との間に配置され、圧電層141、142の全域にわたって連続的に延びている。共通電極143はグランド電位に保持されている。複数の個別電極144は、複数の圧力室120に対して個別に設けられている。個別電極144は、個別電極64と同様の略矩形の平面形状を有し、対応する圧力室120の中央部と上下方向に重なるように配置されている。複数の個別電極144の接続端子144aは、図示しない配線部材を介して図示しないドライバICに接続されている。そして、複数の個別電極144には、ドライバICにより個別に、グランド電位及び駆動電位のうちいずれかの電位が選択的に付与される。また、共通電極143と複数の個別電極144とがこのように配置されるのに対応して、圧電層142の各個別電極144と共通電極143とに挟まれた部分は、それぞれ、厚み方向に分極された活性部となっている。
【0059】
ここで、圧電アクチュエータ102を駆動してノズル125からインクを吐出させる方法について説明する。圧電アクチュエータ102では、ノズル125からインクを吐出させない待機状態において、全ての個別電極144が共通電極143と同じグランド電位に保持されている。あるノズル125からインクを吐出させるときには、そのノズル125に対応する個別電極144の電位をグランド電位から駆動電位に切り換える。
【0060】
すると、第1実施形態で説明したのと同様に、圧電層141、142の圧力室120と上下方向に重なる部分が全体として圧力室120側に凸となるように変形する。これにより、圧力室120の容積が小さくなることで圧力室120内のインクの圧力が上昇し、圧力室120に連通するノズル125からインクが吐出される。また、ノズル125からインクが吐出された後には、個別電極144の電位をグランド電位に戻す。
【0061】
以上に説明したようなインクジェットヘッド100では、ノズル125から個別流路110内に気泡が流れ込むことがある。流れ込んだ気泡が個別流路110に残っていると、圧電アクチュエータ102を駆動させたときに、ノズル125から正常にインクを吐出させることができない虞がある。そのため、個別流路110内に流れ込んだ気泡は、ディセンダ流路122、圧力室120及び絞り流路121を介して供給マニホールド126に排出させる必要がある。
【0062】
このとき、第2実施形態では、ディセンダ流路122を形成する貫通孔122aの径D21が、圧力室120の高さH21よりも小さくなっていることにより、第1実施形態で説明したのと同様、気泡の径によらず、気泡が圧力室120とディセンダ流路122との接続部分に溜まることなく、ディセンダ流路122から圧力室120に流れる。
【0063】
また、第2実施形態では、上下方向に投影したときに、貫通孔122aが圧力室120の範囲内に収まっている。したがって、ディセンダ流路122から圧力室120に気泡が流れようとするときに、気泡が貫通孔122aと圧力室120との境界部分において引っかかりにくく、スムーズに流れる。さらに、第2実施形態では、上下方向に投影したときに、貫通孔122aの縁が圧力室120の縁よりも内側に位置している。これにより、ディセンダ流路122から圧力室120に気泡がより流れやすい。
【0064】
また、第2実施形態では、ディセンダ流路122のうち、圧力室120との接続部分となる貫通孔122aよりも下側の部分(貫通孔122b~122f)の径は、貫通孔122aの径D21よりも大きくなっている。これにより、ディセンダ流路122全体において径がD21である場合と比較して、ディセンダ流路122の流路抵抗が小さくなり、圧電アクチュエータ102を駆動させたときのノズル125からのインクの吐出量を多くすることができる。
【0065】
また、第2実施形態では、圧力室120が形成されるプレート111に接続されるプレート112に、径D21が圧力室120の高さH21よりも小さい貫通孔122aを形成し、プレート112よりも下側のプレート113~117に、貫通孔122aよりも径が大きい貫通孔122b~122fを形成することにより、圧力室120との接続部分における径D21が圧力室120の高さH21よりも小さく、これよりも下側の部分において径がD21よりも大きいディセンダ流路122を形成することができる。
【0066】
また、第2実施形態では、循環用流路123の高さH22が、貫通孔122f(ディセンダ流路122の循環用流路123との接続部分)の径D22よりも小さくなっている。これにより、貫通孔122aの径D21が圧力室120の高さH21よりも小さくなっているのと同様の理由から、気泡の径によらず、気泡が、ディセンダ流路122と循環用流路123の接続部分に溜まることなく、循環用流路123からディセンダ流路122に流れる。ここで、ノズル125からディセンダ流路122に流れ込んだ気泡が、ディセンダ流路122から循環用流路123に流れ込むことがあるが、これにより、循環用流路123に流れ込んだ気泡が、ディセンダ流路122に戻りやすい。
【0067】
また、第2実施形態では、循環用流路123が延びる走査方向に投影したときに、循環用流路123が、貫通孔122fが配置される範囲内に収まっている。したがって、気泡がディセンダ流路122から循環用流路123に流れ込んだとしても、気泡は、循環用流路123のディセンダ流路122との接続部分に気泡が引っかかりにくく、ディセンダ流路122に戻りやすい。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は以上の例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0069】
圧力室との接続部分の径が圧力室の高さよりも小さく、圧力室との接続部分よりも下方の部分の径が圧力室の高さよりも大きいディセンダ流路は、第1、第2実施形態のように形成することには限られない。
【0070】
図9に示すように、変形例1に係るインクジェットヘッド200は、第1実施形態に係るインクジェットヘッド3(図4参照)において、プレート32をプレート201(本発明の「第2プレート」)に置き換えたものである。プレート201は、プレート32において、貫通孔42aの代わりに、ディセンダ流路202を形成する貫通孔202aが形成されたものである。貫通孔202aのうち上側の略半分である第1孔部分203は、径D31が、圧力室40の高さH11よりも小さくなっている。一方、貫通孔202aのうち下側の略半分である第2孔部分204は、径D32が、圧力室40の高さH11よりも大きくなっている。ここで、貫通孔202aは、例えば、プレート201に対して両面からそれぞれハーフエッチングを行うことによって形成することができる。
【0071】
そして、変形例1の場合でも、ディセンダ流路202の圧力室40との接続部分の径D31を、圧力室40の高さH11よりも小さくし、ディセンダ流路202の圧力室40との接続部分よりも下方に位置する部分の径を、圧力室40との接続部分の径D31よりも大きくすることができる。また、この場合には、プレート201に形成される貫通孔全体の径をD31とする場合よりも、ディセンダ流路202の流路抵抗を小さくして、圧電アクチュエータ22が駆動されて圧力室40内のインクに圧力が付与されたときのノズル45からのインクの吐出量を多くすることができる。また、第2実施形態のインクジェットヘッド100のディセンダ流路についても、変形例1と同様にしてもよい。
【0072】
図10に示すように、変形例2に係るインクジェットヘッド210は、第1実施形態に係るインクジェットヘッド3(図4参照)において、プレート32をプレート211に置き換えたものである。プレート211は、プレート32において、貫通孔42aの代わりに、ディセンダ流路212を形成する貫通孔212aが形成されたものである。貫通孔212aは、上端における径D4が、圧力室40の高さH11よりも小さく、下方に向かうほど(圧力室40から離れるほど)、径が大きくなるようなテーパ状に形成されている。
【0073】
そして、変形例2の場合でも、ディセンダ流路212の圧力室40との接続部分の径D4を、圧力室40の高さH11よりも小さくし、ディセンダ流路212の圧力室40との接続部分よりも下方に位置する部分の径を、圧力室40との接続部分の径D4よりも大きくすることができる。また、この場合には、プレート201に形成される貫通孔全体を径D4とする場合よりも、ディセンダ流路212の流路抵抗を小さくして、圧電アクチュエータ22が駆動されて圧力室40内のインクに圧力が付与されたときのノズル45からのインクの吐出量を多くすることができる。また、第2実施形態のインクジェットヘッド100のディセンダ流路についても、変形例2と同様にしてもよい。
【0074】
また、第1、第2実施形態や、変形例1、2では、ディセンダ流路が、圧力室との接続部分において、径が圧力室の高さよりも小さく、圧力室との接続部分よりも下方に位置する部分全体において、径が圧力室の高さよりも大きくなっていたが、これには限られない。ディセンダ流路の、圧力室との接続部分よりも下方に位置する部分の少なくとも一部において、ディセンダ流路の圧力室との接続部分よりも径が小さくなっていてもよい。さらには、ディセンダ流路全体において、径が圧力室の高さよりも小さくなっていてもよい。
【0075】
また、第1実施形態では、上下方向に投影したときに、ディセンダ流路42(貫通孔42a)の縁が、圧力室40の縁よりも内側に位置していたが、これには限られない。例えば、第1実施形態において、上下方向に投影したときに、ディセンダ流路42の右側の縁が、圧力室40の右側の縁と重なっていてもよい。この場合でも、上下方向に投影したときに、ディセンダ流路42が圧力室40からはみ出している場合と比較すれば、ディセンダ流路42と圧力室40との間に気泡が引っかかりにくい。同様に、第2実施形態において、上下方向に投影したときに、ディセンダ流路122の右側の縁が、圧力室120の右側の縁と重なっていてもよい。
【0076】
また、第1実施形態では、上下方向に投影したときに、ディセンダ流路42の圧力室40との接続部分である貫通孔42aが、圧力室40が配置される範囲内に収まっていたが、これには限られない。
【0077】
図11に示すように、変形例3に係るインクジェットヘッド220は、インクジェットヘッド3(図4参照)において、ディセンダ流路42をディセンダ流路221に置き換えたものである。ディセンダ流路221は、ディセンダ流路42が配置されていた位置から、走査方向の絞り流路41と反対側にずれた位置に配置されている。これにより、インクジェットヘッド220においては、上下方向に投影したときに、貫通孔221aが、圧力室40が配置される範囲から走査方向にはみ出している。
【0078】
変形例3の場合には、ディセンダ流路221内の気泡が、貫通孔221aの圧力室40から走査方向にはみ出した部分に引っかかりやすい。しかしながら、変形例3の場合でも、貫通孔221aの径D11が、圧力室40の高さH11よりも小さいため、引っかかった気泡が留まり続けることはなく、ディセンダ流路221から圧力室40に流れる。また、第2実施形態のインクジェットヘッド100のディセンダ流路についても、変形例3と同様にしてもよい。
【0079】
また、第1実施形態では、連結流路43の高さH12が、貫通孔42fの径D12よりも小さくなっていたが、これには限られない。第1実施形態において、連結流路43の高さH12が、貫通孔42fの径D12以上となっていてもよい。同様に、第2実施形態において、循環用流路123の高さH22が、貫通孔122fの径D22以上となっていてもよい。
【0080】
また、以上の例では、ディセンダ流路が上下方向とほぼ平行に延びていたが、これには限られない。
【0081】
図12に示すように、変形例4に係るインクジェットヘッド230では、ディセンダ流路231が、上側から下側に向かうほど、走査方向においてノズル45に近づくように、上下方向に対して傾いた方向に延びている。例えば、ディセンダ流路231を形成する貫通孔の中心を走査方向にずらすことにより、このような上下方向に対して傾いて延びたディセンダ流路231を形成することができる。そして、この場合には、ディセンダ流路231が上下方向に対して傾いて延びていることにより、ディセンダ流路231から圧力室40に気泡が流れやすい。
【0082】
また、第1実施形態では、ディセンダ流路42の下端(下側の縁)と、連結流路43の下端(下側の縁)とが同じ高さに位置していることにより、連結流路43が延びる方向に投影したときに、ディセンダ流路42の下側の縁と連結流路43の下側の縁とが重なっていたが、これには限られない。
【0083】
図13に示すように、変形例5に係るインクジェットヘッド240は、インクジェットヘッド3において、プレート37とプレート38との間にプレート241が追加された構造となっている。プレート241には、ディセンダ流路242を形成する貫通孔242aが形成されている。また、プレート241には、ノズル45と重なる部分に貫通孔242bが形成され、貫通孔242bを介して連結流路43とノズル45とが連通している。また、プレート241の貫通孔242bの周囲を取り囲む部分241aが、貫通孔242aと貫通孔242bとを隔てている。
【0084】
そして、変形例5でも、第1実施形態と同様、連結流路43の高さH12が、貫通孔42fの径D12よりも小さくなっている。一方で、変形例5では、連結流路43の下端が、ディセンダ流路242の下端よりも上方に位置している。そのため、連結流路43が延びる方向に投影したときに、連結流路の縁が、ディセンダ流路242の縁よりも内側に位置する。これにより、変形例5では、連結流路43からディセンダ流路242へ気泡が流れやすくなる。
【0085】
また、第2実施形態では、ディセンダ流路122の下端(下側の縁)と、循環用流路123の下端(下側の縁)とが同じ高さに位置していることにより、循環用流路123が延びる方向に投影したときに、ディセンダ流路122の下側の縁と循環用流路123の下側の縁とが重なっていたが、これには限られない。
【0086】
図14に示すように、変形例6に係るインクジェットヘッド250は、インクジェットヘッド100において、プレート117とプレート118との間にプレート251が追加された構造となっている。プレート251には、ディセンダ流路252を形成する貫通孔252aが形成されている。そして、変形例6でも、第2実施形態と同様、循環用流路123の高さH22が、貫通孔122fの径D22よりも小さくなっている。一方で、変形例6では、循環用流路123の下端が、ディセンダ流路252の下端よりも上方に位置している。そのため、循環用流路123が延びる方向に投影したときに、循環用流路123の縁が、ディセンダ流路252の縁よりも内側に位置する。これにより、変形例6では、循環用流路123からディセンダ流路252へ気泡が流れやすくなる。
【0087】
また、第1実施形態では、連結流路43が延びる方向に投影したときに、連結流路43全体が、ディセンダ流路42(貫通孔42f)が配置される範囲内に収まっていたが、これには限られない。第1実施形態において、連結流路43が延びる方向に投影したときに、連結流路43のうち、少なくともディセンダ流路42との接続部分が、ディセンダ流路42(貫通孔42f)が配置される範囲内に収まっていれば、ディセンダ流路42と連結流路43との接続部分に気泡を引っかかりにくくすることができる。同様に、第2実施形態において、循環用流路123が延びる走査方向に投影したときに、循環用流路123の少なくともディセンダ流路122との接続部分が、循環用流路123が配置される範囲内に収まっていれば、ディセンダ流路122と循環用流路123との接続部分に気泡を引っかかりにくくすることができる。
【0088】
さらには、第1実施形態において、連結流路43が延びる方向に投影したときに、連結流路43のディセンダ流路42との接続部分が、ディセンダ流路42(貫通孔42f)が配置される範囲からはみ出していてもよい。同様に、第2実施形態において、循環用流路123が延びる走査方向に投影したときに、循環用流路123のディセンダ流路122との接続部分が、ディセンダ流路122(貫通孔122f)が配置される範囲からはみ出していてもよい。
【0089】
また、個別流路にインクを流入させる供給マニホールド、及び、個別流路からインクを流出させる帰還マニホールドの配置は、以上に説明したものには限られない。例えば、第2実施形態において、供給マニホールドが、ディセンダ流路122よりも右側の、帰還マニホールドと上下方向に重ならない位置に配置されてもよい。この場合には、例えば、循環用流路を、ディセンダ流路122の側壁面の右下端部に接続され、ディセンダ流路122との接続部分から右側に延びて供給マニホールドと接続されるように配置すればよい。
【0090】
また、以上では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体を吐出する、インクジェットヘッド以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0091】
3 インクジェットヘッド
30 個別流路
31~33 プレート
40 圧力室
42 ディセンダ流路
42a、42b 貫通孔
43 連結流路
45 ノズル
46 供給マニホールド
47 帰還マニホールド
100 インクジェットヘッド
110 個別流路
111~113 プレート
120 圧力室
122 ディセンダ流路
122a、122b 貫通孔
123 循環用流路
125 ノズル
126 供給マニホールド
127 帰還マニホールド
200 インクジェットヘッド
201 ディセンダ流路
201a 貫通孔
202 第1孔部分
203 第2孔部分
210 インクジェットヘッド
211 ディセンダ流路
211a 貫通孔
220 インクジェットヘッド
221 ディセンダ流路
221a 貫通孔
230 インクジェットヘッド
231 ディセンダ流路
240 インクジェットヘッド
242 ディセンダ流路
250 インクジェットヘッド
252 ディセンダ流路
図1
図2
図3
図4
図5
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図14