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特開2022-159462電線導体、被覆電線、ワイヤーハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159462
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】電線導体、被覆電線、ワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/08 20060101AFI20221006BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221006BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01B5/08
H01B7/00 301
H01B7/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129845
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2021044453の分割
【原出願日】2017-11-08
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/012924
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016218236
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017022905
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 勇人
(72)【発明者】
【氏名】大塚 保之
(72)【発明者】
【氏名】田口 欣司
(72)【発明者】
【氏名】丹治 亮
(57)【要約】
【課題】柔軟性と省スペース性を両立することができる電線導体、およびそのような電線導体を備えた被覆電線ならびにワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】複数の素線1を撚り合わせた撚線よりなり、撚線の軸線方向に交差する断面が、扁平形状よりなる扁平部を有する電線導体10とする。扁平部の断面において、素線に占められていない空隙の割合である空隙率を、17%以上とする。また、そのような電線導体10と、電線導体10の外周を被覆する絶縁体と、を有する被覆電線とする。さらに、そのような被覆電線を含んでなるワイヤーハーネスとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線を撚り合わせた撚線よりなり、
前記撚線の軸線方向に交差する断面が、扁平形状よりなる扁平部を有し、
前記扁平部の断面において、前記素線を2本以上収容可能な連続した空隙を有することを特徴とする電線導体。
【請求項2】
前記空隙の面積は、前記扁平部の断面において、前記電線導体の最外周部を除いた内側の領域に対して評価されることを特徴とする請求項1に記載の電線導体。
【請求項3】
前記扁平部の断面において、前記素線を3本以上収容可能な連続した空隙を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電線導体。
【請求項4】
前記電線導体の幅が、高さの3倍以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の電線導体。
【請求項5】
前記扁平部の断面における前記素線の円形からの変形率が、前記扁平部の外周に面する部位において、10%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電線導体。
【請求項6】
前記撚線を構成する素線が、50本以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電線導体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電線導体と、
前記電線導体の外周を被覆する絶縁体と、を有することを特徴とする被覆電線。
【請求項8】
請求項7に記載の被覆電線を含んでなることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項9】
請求項7に記載の被覆電線を複数含み、該複数の被覆電線は、前記電線導体の前記扁平形状の幅方向、および該幅方向に交差する高さ方向の少なくとも一方に沿って、配列されており、
前記複数の被覆電線の間に介在する放熱シート、および前記複数の被覆電線に共通に接触する放熱シートの少なくとも一方を有することを特徴とする請求項8に記載のワイヤーハーネス。
【請求項10】
請求項7に記載の被覆電線を複数含み、前記複数の被覆電線は、少なくとも前記高さ方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項9に記載のワイヤーハーネス。
【請求項11】
前記高さ方向に沿って配列された前記複数の被覆電線の間に、放熱材よりなる介在シートが介在されており、さらに、複数の前記介在シートを相互に連結して、放熱材よりなる連結材が設けられていることを特徴とする請求項10に記載のワイヤーハーネス。
【請求項12】
前記ワイヤーハーネスは、第一の被覆電線と第二の被覆電線とを含み、
前記第一の被覆電線は、前記電線導体がアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる請求項7に記載の被覆電線であり、
前記第二の被覆電線は、電線導体が、銅または銅合金よりなり、前記第一の被覆電線の電線導体よりも扁平度が低く、かつ導体断面積が小さいことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載のワイヤーハーネス。
【請求項13】
前記第二の被覆電線の導体断面積は、0.13mm以下であることを特徴とする請求項12に記載のワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線導体、被覆電線、ワイヤーハーネスに関し、さらに詳しくは、撚線よりなる電線導体、およびそのような電線導体の外周に絶縁体を有する被覆電線、またそのような被覆電線を含んだワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
扁平状の導体を用いて構成したフラットケーブルが公知である。フラットケーブルを用いることで、断面略円形の導体を備えた一般的な電線を用いる場合と比較して、配策の際に占めるスペースを小さくすることができる。
【0003】
従来一般のフラットケーブルにおいては、特許文献1等に記載されるように、導体として、平角導体がしばしば用いられる。平角導体は、金属の単線を断面四角形に成形したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-130739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平角導体は、扁平な断面の高さ(厚さ)方向に沿った方向には、比較的高い柔軟性を有し、折り曲げを行いやすい。しかし、扁平な断面の幅方向に沿った方向には、柔軟性が低く、硬いため、折り曲げを行いにくい。このように、平角導体を有するフラットケーブルは、特定の方向に折り曲げにくく、配策の際の作業性が低くなってしまう。
【0006】
本発明の課題は、柔軟性と省スペース性を両立することができる電線導体、およびそのような電線導体を備えた被覆電線ならびにワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明にかかる電線導体は、複数の素線を撚り合わせた撚線よりなり、前記撚線の軸線方向に交差する断面が、扁平形状よりなる扁平部を有し、前記扁平部の断面において、前記素線に占められていない空隙の割合である空隙率が、17%以上である、というものである。
【0008】
ここで、前記空隙率が、40%以下であるとよい。
【0009】
前記扁平部の断面における前記素線の円形からの変形率が、前記扁平部の外周に面する部位において、前記扁平部の中央部よりも小さいとよい。また、素線の円形からの変形率が、前記扁平部の外周に面する部位において、前記扁平部の中央部の50%以下であるとよい。そして、前記扁平部の断面における前記素線の円形からの変形率が、前記扁平部の外周に面する部位において、10%以下であるとよい。
【0010】
前記電線導体は、前記扁平部の断面において、前記素線を2本以上収容可能な連続した空隙を有するとよい。
【0011】
前記扁平部の断面が、前記扁平形状の幅方向に沿って、相互に平行な対辺を有するとよい。この場合に、前記扁平部の断面における前記素線の円形からの変形率が、前記扁平部の前記相互に平行な対辺の端部において、前記扁平部の中央部よりも小さいとよい。
【0012】
前記扁平部の前記扁平形状の幅方向の長さが、前記幅方向に交差する高さ方向の長さの3倍以上であるとよい。
【0013】
前記扁平部の断面は、四角形であるとよい。また、前記扁平部の断面が、長方形であるとよい。
【0014】
前記電線導体は、前記扁平部と、前記扁平部よりも扁平度の低い低扁平部と、を軸線方向に連続して有するとよい。
【0015】
前記撚線を構成する素線が、50本以上であるとよい。
【0016】
前記撚線は、銅または銅合金よりなり、100mm以上の導体断面積を有するか、あるいは、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなり、130mm以上の導体断面積を有するとよい。
【0017】
前記電線導体は、前記扁平部において、前記撚線が、相互に対向する第一方向および第二方向と、該第一方向および第二方向と交差して相互に対向する第三方向および第四方向とから、圧延されているとよい。
【0018】
本発明にかかる被覆電線は、上記のような電線導体と、前記電線導体の外周を被覆する絶縁体と、を有するものである。
【0019】
本発明にかかるワイヤーハーネスは、上記のような被覆電線を含んでなるものである。
【0020】
ここで、ワイヤーハーネスは、上記のような被覆電線を複数含み、該複数の被覆電線は、前記電線導体の前記幅方向、および該幅方向に交差する高さ方向の少なくとも一方に沿って、配列されているとよい。この場合に、前記ワイヤーハーネスは、前記複数の被覆電線の間に介在する放熱シート、および前記複数の被覆電線に共通に接触する放熱シートの少なくとも一方を有するとよい。また、前記複数の被覆電線は、少なくとも前記高さ方向に沿って配列されているとよい。この場合に、前記高さ方向に沿って配列された前記複数の被覆電線の間に、放熱材よりなる介在シートが介在されており、さらに、複数の前記介在シートを相互に連結して、放熱材よりなる連結材が設けられているとよい。
【0021】
前記ワイヤーハーネスは、柱状部材の外周に沿って配置されるとよい。あるいは、前記ワイヤーハーネスは、長手方向に沿って開口を有する中空の管状部材の中空部内に収容されるとよい。
【0022】
またあるいは、前記ワイヤーハーネスは、自動車の床下に配置され、電源幹線を構成するとよい。あるいは、前記ワイヤーハーネスは、自動車の天井または床を構成するとよい。これら場合に、前記ワイヤーハーネスは、上記のような被覆電線を複数含み、該複数の被覆電線は、少なくとも前記電線導体の幅方向に沿って配列され、該幅方向に交差する高さ方向の寸法が揃っており、前記自動車の内装材と吸音材との間に、前記幅方向を前記内装材および吸音材の面に沿わせて配置されるとよい。
【0023】
前記ワイヤーハーネスは、第一の被覆電線と第二の被覆電線とを含み、前記第一の被覆電線は、前記電線導体がアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる上記のような被覆電線であり、前記第二の被覆電線は、電線導体が、銅または銅合金よりなり、前記第一の被覆電線の電線導体よりも扁平度が低く、かつ導体断面積が小さいものであるとよい。この場合、前記第二の被覆電線の導体断面積は、0.13mm以下であるとよい。
【発明の効果】
【0024】
上記発明にかかる電線導体は、単線ではなく、撚線よりなっているため、高い柔軟性を有している。そして、扁平形状の断面を有する扁平部を備えていることにより、断面略円形の一般的な電線導体に比べて、電線として配策する際に要するスペースを削減することができる。また、導体断面積を大きくする際に、扁平形状の幅方向を広げれば、高さ方向の寸法を小さく抑えることができるので、省スペース性を維持したまま、大断面積化が可能となる。
【0025】
そして、上記発明にかかる電線導体は、17%以上の空隙率を有していることにより、断面が扁平になっていても、特に高い柔軟性を保ちやすい。その結果、特に高い配策の自由度を有する電線導体となる。
【0026】
ここで、空隙率が、40%以下である場合には、扁平部を十分に扁平な形状に形成しやすい。また形成された扁平形状を維持やすい。よって、電線導体の省スペース性を効果的に高めることができる。
【0027】
扁平部の断面における素線の円形からの変形率が、扁平部の外周に面する部位において、扁平部の中央部よりも小さい場合には、撚線を断面扁平に成形するために、撚線の外周部に位置する素線が集中的に変形され、変形による大きな負荷を受けることが防止される。また、素線の変形によって、鋭い突起等の凹凸構造が電線導体の外周部に形成されることが防止される。
【0028】
素線の円形からの変形率が、扁平部の外周に面する部位において、扁平部の中央部の50%以下である場合には、上記のような、撚線の外周部への変形と負荷の集中、また電線導体の表面における凹凸構造の形成を防止する効果が、特に高く得られる。
【0029】
扁平部の断面における素線の円形からの変形率が、扁平部の外周に面する部位において、10%以下である場合にも、上記のような、電線導体の外周部への変形と負荷の集中、また電線導体の表面における凹凸構造の形成を防止する効果が、特に高く得られる。
【0030】
電線導体が、扁平部の断面において、素線を2本以上収容可能な連続した空隙を有する場合には、そのような空隙への素線の移動を利用して、電線導体が柔軟に曲がることができるので、電線導体の柔軟性を高く保つ効果に、特に優れる。
【0031】
扁平部の断面が、扁平形状の幅方向に沿って、相互に平行な対辺を有する場合には、配策した電線の高さ(厚さ)方向外側に、大きなスペースを確保しやすく、高い省スペース性を実現することができる。特に、複数の電線を重ねて配策する際に、無駄なスペースを生じにくい。
【0032】
この場合に、扁平部の断面における素線の円形からの変形率が、扁平部の相互に平行な対辺の端部において、扁平部の中央部よりも小さい場合には、電線導体の端部への変形と負荷の集中を防止することができる。また、鋭い突起等の凹凸構造は、電線導体の外周部の中でも、相互に平行な対辺の端部に形成されやすい傾向があるが、その端部における素線の変形率が小さく抑えられることで、端部における鋭い突起等の凹凸構造の形成を、効果的に防止することができる。
【0033】
また、扁平部の扁平形状の幅方向の長さが、幅方向に交差する高さ方向の長さの3倍以上である場合には、電線導体において、柔軟性の確保と、幅方向に対する高さ方向の寸法の小ささによる、高さ方向への高い省スペース性とを、両立することができる。
【0034】
また、扁平部の断面が、四角形である場合には、複数の電線を並べた際や重ねた際に、電線相互間に生じる無駄なスペースを小さくし、電線を高密度に集積することが可能となる。
【0035】
さらに、扁平部の断面が、長方形である場合には、複数の電線を並べた際や重ねた際に、電線相互間に生じる無駄なスペースを特に小さくすることができ、省スペース性にとりわけ優れたものとなる。
【0036】
電線導体が、扁平部と、扁平部よりも扁平度の低い低扁平部と、を軸線方向に連続して有する場合には、接合等によらずに、電線導体の軸線方向に沿って、扁平度の異なる部位を1本の電線導体中に設けることができ、扁平度の異なる各部の特性を、同時に利用することができる。例えば、電線導体の中央部に扁平部を設け、その両端に、断面略円形の低扁平部を設けることで、中央部における省スペース性と、端部における端子等の部材の取り付けにおける利便性とを両立することができる。
【0037】
撚線を構成する素線が、50本以上である場合には、各素線を大きく変形させなくても、素線の相対配置の変更によって、大きな空隙を素線間に残しながら、撚線を断面扁平に成形しやすい。よって、電線導体において、省スペース性と柔軟性を両立しやすい。
【0038】
撚線が、銅または銅合金よりなり、100mm以上の導体断面積を有するか、あるいは、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなり、130mm以上の導体断面積を有する場合には、断面扁平形状をとることによる省スペース性と柔軟性の両立の効果を、特に有効に利用することができる。100mm以上や130mm以上のように大断面積の電線導体においては、断面略円形である場合には、その径の大きさのために、大きな配策スペースを要するとともに、曲げに対する反発力が大きくなる。しかし、このような大断面積の電線導体においても、断面を扁平形状とすることで、省スペース化が達成できるとともに、特に高さ方向への曲げにおいて、高い柔軟性を得ることができる。
【0039】
そして、扁平部において、撚線が、相互に対向する第一方向および第二方向と、該第一方向および第二方向と交差して相互に対向する第三方向および第四方向とから、圧延されている場合には、電線導体が、断面四角形に近いものとなりやすく、省スペース性に優れた電線導体となる。
【0040】
本発明にかかる被覆電線は、上記のような電線導体を有するため、電線導体の撚線構造による柔軟性と扁平形状による省スペース性を両立することができる。よって、複数本の被覆電線を並べたり重ねたりして配策する場合をはじめ、高い自由度をもって、かつスペースを削減しながら、配策を行うことができる。
【0041】
本発明にかかるワイヤーハーネスは、上記のような扁平形状の電線導体を有する被覆電線を含んでなるため、柔軟性と省スペース性に優れ、自動車内等、限られた空間において、配線材として好適に利用することができる。
【0042】
ここで、ワイヤーハーネスが、上記のような被覆電線を複数含み、該複数の被覆電線が、電線導体の幅方向、および該幅方向に交差する高さ方向の少なくとも一方に沿って、配列されている場合には、それら複数の被覆電線の間の空隙を小さく抑えてワイヤーハーネスを構成することができるので、特に高い省スペース性を達成することができる。
【0043】
この場合に、ワイヤーハーネスが、複数の被覆電線の間に介在する放熱シート、および複数の被覆電線に共通に接触する放熱シートの少なくとも一方を有する構成によれば、複数の被覆電線を、その扁平形状による省スペース性を利用して、相互に近接させて高密度に配置しても、通電時の発熱による影響を小さく抑えることができる。
【0044】
また、複数の被覆電線が、少なくとも高さ方向に沿って配列されている場合には、被覆電線の高さ方向への配列を利用して、細長い隙間等、様々な狭い空間を、被覆電線の配策に有効に活用することができる。
【0045】
この場合に、高さ方向に沿って配列された複数の被覆電線の間に、放熱材よりなる介在シートが介在されており、さらに、複数の介在シートを相互に連結して、放熱材よりなる連結材が設けられている場合には、複数の被覆電線が、扁平な広い面同士を対向させて、相互に隣接することになり、通電時に発生する熱を被覆電線の配列体の外部に発散させるのが難しくなりやすいが、介在シートを設けることで、通電時に発生する熱を効果的に外部に発散させやすくなる。さらに、複数の介在シートを連結する連結材を設けることで、熱を一層効果的に発散させることができる。
【0046】
ワイヤーハーネスが、柱状部材の外周に沿って配置される場合、あるいは、ワイヤーハーネスが、長手方向に沿って開口を有する中空の管状部材の中空部内に収容される場合には、自動車の車体等を構成する柱状部材や管状部材を、ワイヤーハーネスの支持に利用し、ワイヤーハーネスの配策スペースを効果的に削減することができる。
【0047】
また、ワイヤーハーネスが、自動車の床下に配置され、電源幹線を構成する場合には、従来一般の銅板を用いた電源幹線と比較して、生産性を高めることができるとともに、エンジン振動等による疲労破壊の発生を抑制することができる。
【0048】
あるいは、ワイヤーハーネスが、自動車の天井または床を構成する場合には、自動車内において、特に無駄なく空間を活用して配策経路を確保することができるとともに、大電流を流す場合にも、高い放熱性を達成することができる。また、被覆電線の配置に応じて、様々な形状の天井面や床面を構成することが可能となる。
【0049】
これらの場合に、ワイヤーハーネスが、上記のような被覆電線を複数含み、該複数の被覆電線が、少なくとも電線導体の幅方向に沿って配列され、該幅方向に交差する高さ方向の寸法が揃っており、自動車の内装材と吸音材との間に、幅方向を内装材および吸音材の面に沿わせて配置される構成によれば、内装材と吸音材の間の距離を小さく抑えながら、内装材と吸音材の間の空間を、ワイヤーハーネスの配策に有効に利用することができる。この際、複数の被覆電線の高さが揃っていることで、被覆電線による凹凸構造が、内装材の表面形状や吸音材の吸音性能に影響を与えにくくなる。
【0050】
そして、ワイヤーハーネスが、第一の被覆電線と第二の被覆電線とを含み、第一の被覆電線が、電線導体がアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる上記のような被覆電線であり、第二の被覆電線が、電線導体が、銅または銅合金よりなり、第一の被覆電線の電線導体よりも扁平度が低く、かつ導体断面積が小さいものである場合には、アルミニウムやアルミニウム合金の導電率の低さにより、大面積化しがちな第一の被覆電線に対する省スペース化と、第二の被覆電線における銅や銅合金が有する高導電率等の特性の利用とを、両立することができる。
【0051】
この場合に、第二の被覆電線の導体断面積が、0.13mm以下であれば、ワイヤーハーネス全体として、高い省スペース性を確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施形態にかかる電線導体を示す斜視図である。
図2】上記電線導体の断面図である。
図3】原料撚線の圧延を説明する断面図である。
図4】電線導体の種々の断面形状を示す図であり、(a)~(d)はそれぞれ異なる形態を示している。(b)~(d)では素線は省略している。
図5】本発明の一実施形態にかかるワイヤーハーネスにおける被覆電線の配列の例を示す断面図である。(a)は、被覆電線を幅方向に配列する場合、(b)は被覆電線を高さ方向に配列する場合を示している。
図6】被覆電線を幅方向に配列する場合の別の形態を示す断面図である。
図7】ワイヤーハーネスの配策構造の例を示す図であり、(a)は円柱状部材、(b)は断面コの字の管状部材を利用した配策構造を示している。
図8】被覆電線の断面を撮影した写真であり、(a)は圧延前の原料撚線、(b)は圧縮率の低い試料1、(b)は圧縮率の高い試料2を示している。
図9】被覆電線の昇温に関するシミュレーションの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態にかかる電線導体および被覆電線、そしてワイヤーハーネスについて詳細に説明する。本発明の一実施形態にかかる電線導体の外周を絶縁体で被覆したものが、本発明の一実施形態にかかる被覆電線に当たる。そして、本発明の一実施形態にかかる被覆電線を含む複数の被覆電線を集積したものが、本発明の一実施形態にかかるワイヤーハーネスに当たる。
【0054】
[電線導体]
図1に、本発明の一実施形態にかかる電線導体10の外観を斜視図にて示す。また、図2に、電線導体10の軸線方向(長手方向)に垂直に交差する断面を示す。
【0055】
(1)電線導体の断面形状
電線導体10は、複数の素線1を相互に撚り合わせた撚線として構成されている。そして、電線導体10は、軸線方向に沿った少なくとも一部において、扁平な外形を有している。つまり、電線導体10の軸線方向に垂直に交差する断面が扁平形状となった扁平部を有している。本実施形態においては、電線導体10の軸線方向全域が、そのような扁平部となっている。
【0056】
ここで、電線導体10の断面が扁平形状を有しているとは、断面を構成する辺と平行に断面を横切り、断面全体を範囲に含む直線のうち、最長の直線の長さである幅Wが、その直線に直交し、断面全体を範囲に含む直線の長さである高さHよりも、大きい状態を指す。図2に示す本実施形態にかかる電線導体10の断面、および図4に示す各形態の電線導体の断面において、幅Wが高さHよりも大きくなっている。
【0057】
電線導体10の断面は扁平形状を有していれば、どのような具体的形状よりなってもよいが、本実施形態においては、電線導体10の断面は、扁平形状の幅Wの方向(幅方向x)に沿って、相互に平行な対辺11,12を有している。つまり、電線導体10の断面を構成する外側の素線1に外接させて、幅方向xに平行に2本の直線11,12を引くことができる。なお、本明細書において、電線導体10の形状に関して、平行、垂直等、線や面の関係を示す概念には、概ね±15°程度の角度のずれや、角部が面取りされたR形状等、幾何的な概念からの誤差を含むものとする。また、辺や直線、平面等の概念には、幾何的な直線や平面から概ね15°程度の角度を有する曲線や曲面も含むものとする。
【0058】
本実施形態において、電線導体10の断面は、長方形よりなっている。図においては、分かりやすいように、電線導体10を構成する素線1の本数を少なくして示している。
【0059】
本実施形態にかかる電線導体10は、断面が扁平形状を有していることにより、同じ導体断面積を有する断面略円形の電線導体よりも、被覆電線等の形で配策した際に、配策に必要なスペースを小さくすることができる。つまり、ある電線の周囲に、他の電線や別の部材を配置することができないスペースを小さくすることができる。特に、高さ方向yに沿って電線が占めるスペースを小さくすることができ、省スペース化を達成しやすい。その結果、高さ方向上下(±y方向)の電線の外側のスペースに、他の電線や別の部材を配置しやすくなる。例えば、配策面に沿わせるようにして電線を配策する際に、電線の扁平面、つまり幅方向xに平行な面を配策面に沿わせるようにすれば、電線の上方(電線を挟んで配策面に対向する方向)に、スペースを確保しやすい。さらに、電線導体10の導体断面積を大きくしたい場合にも、高さHを小さくしたまま、幅Wを大きくすることで、高さ方向yにおける省スペース性を維持することができる。
【0060】
中でも、電線導体10が、断面において、幅方向xに平行な対辺11,12を有している場合に、配策した電線の高さ方向上下(±y方向)に、広いスペースを確保することができ、省スペース性に優れる。特に、1本の電線の上方に他の電線を重ねるようにして複数の電線を集積する際に、高さ方向yに沿って複数の電線の間に生じる隙間を小さくすることができる。なお、複数の電線を集積するとは、複数の電線を絶縁材料等で一体にまとめた形態とする場合、および、独立した複数の電線を近接させて配置する場合の両方を含むものである。
【0061】
さらに、電線導体10が長方形の断面を有する場合に、電線導体10の上下(±y方向)および側方(±x方向)に、広いスペースを確保することができ、省スペース性を一層高めることができる。特に、1本の電線の上方に他の電線を重ねるようにして、また、1本の電線の側方に他の電線を並べるようにして、複数の電線を集積する際に、高さ方向yおよび幅方向xに沿って複数の電線の間に生じる隙間を、小さくすることができる。
【0062】
上記のように、本実施形態にかかる電線導体10は、複数の素線1が撚り合わせられた撚線よりなっており、その撚線が、扁平な外形を有している。そのため、電線導体10は、各方向に、高い柔軟性を有している。特許文献1に示されるような平角導体は、扁平形状の高さ方向にはある程度の柔軟性を示すものの、幅方向の柔軟性は低く、幅方向には硬くて曲げにくい。これに対し、撚線よりなる本実施形態にかかる電線導体10は、高さ方向yのみならず、幅方向xにも高い柔軟性を有しており、曲げやすくなっている。
【0063】
このように、本実施形態にかかる電線導体10は、柔軟性による配策の自由度と、省スペース性を両立するものとなっている。例えば、自動車において、近年の高機能化により、設置される電線や部品の数が増加している。また、電気自動車等において、大電流化が進み、電線径も太くなっている。よって、個々の電線を配策可能なスペースが減少してきている。しかし、本実施形態にかかる電線導体10を用いれば、省スペース性と柔軟性を利用することで、小さなスペースを有効に利用して、電線の配策を行うことができる。多数の電線を集積させる場合や、導体断面積の大きい電線を用いる場合に、特にその効果が大きくなる。
【0064】
ここまで説明した本実施形態においては、電線導体10は、長方形の断面を有していた。しかし、上記のように、電線導体10の断面は、扁平形状であれば、どのような形状を有していてもよい。図4(b)~(d)に、断面形状の別の例を示す。なお、これらの図では、素線1を省略し、断面の外形、つまり電線導体全体の断面を近似する外接図形だけを示している。図4(b)は、小判形(長方形の両端に半円を有する形状)の断面を示している。そして、上記のような長方形以外の四角形の断面として、図4(c)は台形の断面、図4(d)は平行四辺形の断面を示している。電線導体10が四角形の断面を有することで、高さ方向yおよび幅方向xに、多数の電線導体10を小さな隙間で並べることができ、多数の電線を集積する際の省スペース性に優れる。この効果は、上記のように、断面形状が長方形である場合に特に顕著となる。
【0065】
(2)電線導体の断面における空隙
さらに、本実施形態にかかる電線導体10は、扁平部の断面において、17%以上の空隙率を有している。電線導体10の断面における空隙率は、電線導体10の軸線方向に垂直に交差する断面において、電線導体10全体が占める面積、つまり電線導体10全体としての外郭に囲まれた領域の面積のうち、素線1に占められていない空隙の面積の割合として定義される。
【0066】
電線導体10は、上記のように、その扁平形状の効果によって、高さ方向yおよび幅方向xにも高い柔軟性を有しており、曲げやすくなっている。電線導体10の断面において、17%以上のように、十分な空隙が確保されていることで、電線導体10を高さ方向yや幅方向xに沿って曲げる際に、電線導体10内における空隙を利用した素線1の移動により、電線導体10がさらに無理なく曲がりやすくなり、電線導体10の柔軟性を高めやすい。柔軟性をさらに高める観点から、空隙率は、20%以上、また25%以上であると、さらに好ましい。
【0067】
空隙率の上限は、特に定められないが、圧延等によって電線導体10を扁平形状に成形しやすくし、また形成した扁平形状を維持しやすくする観点等から、40%以下であることが好ましい。35%以下であると、さらに好ましい。
【0068】
電線導体10の断面においては、各素線1の間の領域に、小さな空隙が形成されている。上記で定義した空隙率は、それら小さな空隙の合計の面積が、電線導体10の断面において占める面積の割合であり、それら空隙の合計の面積が、電線導体10の断面において所定以上の割合を占めることで、電線導体10の柔軟性が高められるが、それに加えて、各素線1の間の領域に形成された空隙のそれぞれの面積の大きさも、電線導体10の柔軟性の向上に寄与する。つまり、電線導体10の断面に、微小な空隙が万遍なく散在するよりも、ある程度の大きさを有する空隙が、連続した領域として存在していることが、電線導体10の柔軟性の向上に有効である。具体的には、電線導体10の断面に、素線1を2本以上、さらには3本以上収容可能な連続した空隙を有することが好ましい。素線1がそのような大きな空隙に移動することにより、電線の柔軟な曲げが補助されるからである。ここで、空隙に収容可能かどうかを判定する素線1としては、着目する空隙を取り囲んでいる素線1、あるいは、電線導体10を構成する任意の素線1と同じ断面積を有する断面円形の素線を想定して用いればよい。例えば、図4(a)において、符号vにて表示する空隙が、素線2本以上を収容可能となっている。
【0069】
なお、電線導体10および空隙の面積は、電線導体10またはその外周に絶縁体21を設けた被覆電線20について、切断または研磨等を行って得た断面に対して、写真撮影等を行って、実測することで評価できる。この際、切断等の操作によって空隙の形状や面積が変化しないように、適宜、透明樹脂等に電線導体10や被覆電線20を包埋してから切断等の操作を行ってもよい。また、電線導体10および空隙の面積は、電線導体10の断面全体に対して評価してもよいし、電線導体10の最外周部における凹凸構造等による影響を排除するため、素線1の本数が、例えば50本以上等、十分に多い場合には、電線導体10の最外周部を除いた内側の領域に対して、電線導体10および空隙の面積を評価し、断面全体における評価に代えてもよい。
【0070】
(3)各素線の断面形状
本実施形態にかかる電線導体10において、電線導体10全体の外形として、断面が扁平形状になっていれば、電線導体10を構成する各素線1の断面形状はどのようなものであってもよい。一般的な金属素線は、略円形の断面を有しており、本実施形態においても、そのような素線1を適用することができる。しかし、複数の素線1の少なくとも一部が、扁平形状等、円形から逸脱した断面を有していてもよい。後述するように、原料撚線10’を圧延して扁平形状にする際に、素線1を構成する材料等によっては、少なくとも一部の素線1が扁平形状に変形する場合がある。
【0071】
本実施形態にかかる電線導体10においては、軸線方向に垂直に交差する断面の中で、電線導体10の外周に面する外周部において、外周部の内側に位置する中央部よりも、素線1の変形率が小さくなっている。図1,2に、そのような素線1の変形率の分布を模式的に示している。
【0072】
ここで、素線1の変形率は、ある素線1が円形からどれだけ逸脱した断面を有しているかを示す指標である。実際に電線導体10に含まれる、ある素線1について、断面を横切る最長の直線の長さを長径Aとし、その素線1の断面積と同じ面積を有する円の直径を円直径Rとすると、素線1の変形率Dを、以下のように表すことができる。
D=(A-R)/R×100% (1)
円直径Rは、実際の素線1の断面積を計測して算出してもよいし、圧延等による変形を受ける前の素線1の径が分かっている場合や、同一の電線導体10に、素線1が変形されていない部位(後に低扁平部として説明する)が共存する場合には、それら変形を受けていない素線1の径を円直径Rとして採用してもよい。また、外周部の素線1として、電線導体10の最外周に配置された素線1のみを採用し、中央部の素線1として、導体の中心に配置された素線1のみを採用してもよいが、素線1の変形におけるばらつき等の影響を低減する観点から、ある程度の面積にわたる領域に含まれる複数の素線1に対する平均値として、変形率を見積もることが好ましい。例えば、電線導体10の幅Wの10~30%程度の長さにわたる辺を有する四角形やそのような長さの直径を有する円に囲まれた領域を、電線導体10の最外周または中心を含んで設定し、それらの領域をそれぞれ、外周部および中央部として採用すればよい。
【0073】
本実施形態にかかる電線導体10は、扁平な断面形状を有しているが、断面において、電線導体10の上下方向(±y方向)の外周部に位置する素線1を扁平に変形させれば、中央部の素線1を変形させるよりも効率的に、扁平な断面形状を形成することができる。しかし、そのように外周部の素線1を集中的に変形させると、外周部の素線1に負荷が集中し、素線1の物性が、電線導体10の外周部とその内側の領域とで大きく異なることになる。また、電線導体10の外周部の素線1、特に電線導体10の最外周に位置する素線1の形状は、電線導体10全体の輪郭形状を規定するものとなり、それらの素線1が大きく変形していると、電線導体10の表面形状に不要な凹凸構造をもたらす可能性がある。そのような凹凸構造としては、原料撚線10’の扁平形状への加工時に形成されうる鋭い突起(バリ)を挙げることができる。バリはとりわけ、電線導体10の幅方向端部(±x方向)に形成されやすい。
【0074】
そこで、電線導体10において、外周部の素線1の変形率が、中央部の素線1の変形率よりも小さくなるようにしておけば、そのように、外周部の素線1に変形による負荷が集中することや、電線導体10の外周に不要な凹凸構造が形成されることを、避けられるようになる。本実施形態にかかる電線導体10においては、上記のように、17%以上の空隙率が確保されており、素線1の間の空隙を利用して、素線1が多様な相対配置を取りうるため、各素線1の形状自体を大きく変形させなくても、素線1の相対配置を利用して、電線導体10の断面を、所望の扁平形状に成形することができる。
【0075】
電線導体10の外周部に位置する素線1への変形と負荷の集中や、電線導体10の表面における不要な凹凸構造の形成を効果的に避ける観点から、中央部の素線1の変形率に対する外周部の素線1の変形率の比(外周変形率比;外周部変形率/中央部変形率×100%)は、70%以下、さらには50%以下、25%以下であることが好ましい。また、外周部の素線1の変形率の値は、10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。外周部の素線1の変形率は、小さいほど好ましく、下限は特に設けられない。
【0076】
中央部の素線1の変形率は、特に限定されるものではないが、過度の変形による素線1への負荷の印加を避ける観点から、50%以下、さらには30%以下であることが好ましい。一方、外周部における素線1の変形を小さく抑えながら、電線導体10の断面の扁平形状への成形を効果的に達成する観点から、中央部の変形率は、10%以上、さらには20%以上であることが好ましい。
【0077】
電線導体10の断面が、幅方向xに平行な対辺11,12を有する場合、なかでも長方形よりなる場合には、断面の幅方向端部、つまり相互に平行な対辺11,12の両端部において、素線1の変形率を特に小さく抑えることが好ましい。電線導体10の断面をそれらの形状に成形する際に、幅方向xに沿った平行な対辺11,12や、直角に近い角構造を作製する目的で、幅方向端部の変形率が高くなりやすいからである。また、端部においては、原料撚線10’の圧縮等により、電線導体10を成形するための加工を行う際に、鋭いバリが形成されやすい。これらの現象を避ける観点から、電線導体10の断面において、外周部の中でも、特に端部の素線1の変形率が、中央部の素線1の変形率の70%以下、さらには50%以下、25%以下となるようにすることが好ましい。そして、端部の素線1の変形率の値が、10%以下、さらには5%以下となるようにすることが好ましい。また、外周部の中でも、端部と、端部を除いた部位、つまり幅方向xに沿った対辺11,12の中途部に相当する辺部とで、素線1の変形率を比較した際に、端部の変形率が、辺部の変形率よりも小さいことが好ましい。つまり、素線1の変形率が小さい方から、端部、辺部、中央部の順になっていることが好ましい。
【0078】
電線導体10において、素線1の本数が多いほど、外周部の素線1の変形率を中央部よりも小さく抑えながら、17%以上のような高い空隙率を維持し、かつ断面を扁平形状に成形しやすい。例えば、素線1の本数が50本以上であれば、素線1の相互配置の多様性により、そのような状態を達成しやすい。一方、素線1の本数が50本未満であれば、外部の素線1を中央部の素線1と同程度、あるいはそれよりも大きな変形率で変形させることになっても、電線導体10の柔軟性を十分に得る観点から、17%以上の空隙率を確保することが好ましい。
【0079】
(4)電線導体の材料および導体断面積
電線導体10を構成する素線1は、金属材料をはじめとし、いかなる導電性材料よりなってもよい。素線1を構成する代表的な材料として、銅および銅合金、そしてアルミニウムおよびアルミニウム合金を挙げることができる。これらの金属材料は、撚線を構成して圧延し、扁平形状とする加工が行いやすく、またその扁平形状を維持しやすいという点において、本実施形態にかかる電線導体10を構成するのに好適である。電線導体10を構成する素線1としては、全て同じ材料よりなるものを用いても、異なる材料よりなる複数種の素線1を混合して用いてもよい。
【0080】
電線導体10の導体断面積は、所望される導電率等に応じて任意に選択すればよい。しかし、導体断面積が大きいほど、圧延等によって扁平形状を形成しやすく、また、一旦形成した扁平形状を強固に維持しやすい。これらの観点から、好適な導体断面積として、電線導体10を構成する素線1が銅または銅合金よりなる場合に、16mm以上、また、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる場合に、40mm以上を例示することができる。
【0081】
さらに、導体断面積が100mm以上のように大きな領域では、電線導体の断面が略円形であると、断面の円の直径が大きくなることにより、配策に大きなスペースが必要となるとともに、曲げを加える際の反発力が大きくなり、配策に十分な柔軟性を確保することが難しくなる。しかし、断面が扁平形状を有する電線導体10とすることで、導体断面積が同じ断面略円形の電線導体よりも、高さHを小さくすることができる。これにより、電線導体10が高さ方向yに占める空間を削減できるとともに、電線導体10を高さ方向yに沿った方向に曲げる際の反発力が小さくなり、配策に必要な柔軟性を確保しやすくなる。導体断面積の大きな電線導体10を断面扁平形状とすることにより、電線導体10の放熱性が上がるという効果も得られる。これら柔軟性確保等の効果を有効に利用する観点から、電線導体10が銅または銅合金よりなる場合には、導体断面積が100mm以上であることが好ましい。電線導体10がアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる場合には、導体断面積がさらに130mm以上であることが好ましい。このように導体断面積が大きい電線導体10は、例えば、高出力の電気自動車における電源供給線等としての用途が見込まれるものであり、自動車内の限られた空間に配策する必要性から、扁平な断面形状を有する電線導体10の省スペース性や柔軟性が有用となる。特に、車両の軽量化の観点から、導体断面積の大きい電線導体10を、アルミニウムまたはアルミニウム合金より構成することが有効であるが、アルミニウムやアルミニウム合金は、銅や銅合金よりも導電率が低いため、必要な導電性を確保する観点から、130mm以上のように、特に導体断面積の大きい電線導体10が必要となる。
【0082】
また、電線導体10を構成する各素線1の好適な外径として、0.3~1.0mmを例示することができる。電線導体10を構成する素線1の本数は、電線導体10の導体断面積と、用いる素線1の外径とによって定まる。しかし、素線1の本数が多いほど、素線1が多様な相対配置をとることができるので、17%以上のような大きな空隙率を確保しながら、さらには電線導体10の外周部における素線1の変形率を小さく抑えながら、電線導体10を断面扁平形状に成形することが行いやすくなる。この観点から、素線1の本数は、50本以上、さらには100本以上、500本以上であることが好ましい。
【0083】
(5)電線導体の縦横比
電線導体10の断面において、扁平形状の縦横比(H:W)は、所望される省スペース性等を考慮して適宜選択すればよいが、1:2~1:8程度を例示することができる。この範囲であれば、撚線を無理なく扁平形状に成形することができるとともに、高い省スペース性を確保することができる。また、電線導体10を自動車内の配線に用いる場合等において、高さHを3mm以下とする形態を、好ましいものとして例示することができる。
【0084】
後述するように、断面略円形の一般的な撚線よりなる原料撚線10’を圧延して、断面扁平な電線導体10を形成する際に、圧延に伴って、素線1の間の空隙が小さくなりやすく、特に、電線導体10の扁平形状の縦横比が大きいほど(高さHに比べて幅Wが大きいほど)、空隙率が小さくなりやすい。しかし、例えば、縦横比(H:W)が1:3以上、つまり、電線導体10の幅Wが、高さHの3倍以上である場合に、上記のように、17%以上の空隙率を確保しておけば、電線導体10において、高い省スペース性と柔軟性を両立しやすい。
【0085】
また、電線導体10を断面扁平形状とすることで、断面略円形の場合よりも、表面積増大の効果により、電線導体10の放熱性を高めることができる。その結果、同じ電流を流しても、電線導体10の断面が扁平形状である場合の方が、断面円形である場合よりも、電線導体10の温度上昇が小さくて済むことになる。換言すると、温度上昇の上限値が定められている場合に、電線導体10の断面が扁平形状である場合の方が、略円形である場合よりも、小さい導体断面積で、その上限値の範囲内に温度上昇を抑えながら、同じ電流量を流すことができる。放熱性向上の効果は、電線導体10の縦横比が大きいほど、高くなる。例えば、後の実施例に示すように、縦横比を1:3以上とすれば、断面略円形の電線導体10の約90%の導体断面積としても、通電時の昇温を同程度に抑えることが可能となる。さらには、縦横比を1:5以上とすることが好ましい。
【0086】
(6)その他の形態
ここまでは、電線導体10の軸線方向全域が、扁平形状の断面を有する扁平部よりなる構成を扱ってきた。しかし、扁平部は、電線導体10の軸線方向の一部の領域のみを占めていてもよい。つまり、電線導体10の軸線方向に沿って相互に隣接して、扁平部と、扁平部よりも扁平度の低い(W/Hの値が小さい)低扁平部とが設けられる形態を例示することができる。扁平部と低扁平部の間では、全ての素線1が一体に連続しており、電線導体10全体としての断面形状が異なっている。低扁平部としては、扁平度が実質的に1である断面略円形の構成を例示することができる。扁平部と低扁平部を、1本の電線導体10の中に、連続して設けることで、接合等によらずに、各部位によってもたらされる特性を併せて備えた電線導体10を得ることができる。
【0087】
低扁平部においては、圧延等による電線導体10の扁平化の程度が低いことに対応して、扁平部よりも素線1の変形率が小さくなっていることが好ましい。特に、扁平度が実質的に1である断面略円形の低扁平部においては、素線1の断面も略円形であることが好ましい。
【0088】
扁平部と低扁平部は、電線導体10の軸線方向に沿って、どのような順序で配置されてもよいが、扁平部が軸線方向中央部に設けられ、その両端に断面略円形等の低扁平部が設けられる形態を、好適なものとして例示することができる。この場合に、狭小な空間への配策に扁平部を利用するとともに、両端の低扁平部に、端子等、他の部材を取り付けることが考えられる。すると、扁平部の省スペース性および柔軟性と、低扁平部の円形またはそれに近い断面形状による他部材取り付けの利便性を、ともに利用することができる。さらに、扁平部において、扁平度の異なる複数の部位が、相互に隣接して設けられてもよい。
【0089】
[電線導体の製造方法]
本実施形態にかかる電線導体10は、図3に示すように、複数の素線1を断面略円形に撚り合わせた原料撚線10’を、圧延することで、形成することができる。この際、原料撚線10’の軸線方向に垂直な、相互に対向する第一方向と第二方向から、力F1,F2を印加し、原料撚線10’を圧縮することで、力F1,F2の印加方向を高さ方向yとする扁平な電線導体10を得ることができる。
【0090】
さらに、第一方向および第二方向からの力F1,F2に加え、第一方向および第二方向と交差して相互に対向する第三方向および第四方向から、力F3,F4を原料撚線10’に印加することで、得られる電線導体10を断面四角形に成形しやすくなる。特に、力F1,F2に垂直な方向から、力F3,F4を印加することで、得られる電線導体10を断面長方形に成形しやすい。これらの場合において、力F1,F2を力F3,F4よりも大きくしておくことで、扁平度の高い(W/Hの値が大きい)電線導体10を得ることができる。また、力F1,F2と力F3,F4は同時に印加してもよいが、最初に力F1,F2を印加した後、再度それらと同じ方向から力F1’,F2’を印加するとともに、同時に力F3,F4を印加することで、扁平度が高く、かつ断面四角形(特に長方形)によく成形された電線導体10を得ることができる。電線導体10の軸線方向に沿って、扁平度を変化させる場合は、軸線方向に沿った圧延の途中で、印加する力を変更すればよい。
【0091】
原料撚線10’への力の印加は、例えば、ローラを対向して設けておき、それらローラの間に原料撚線10’を通すことで行えばよい。ローラを用いて、原料撚線10’をローラの回転方向に沿って押し出すように圧延することで、例えば、ダイスを用いて引き抜きによって原料撚線10’を圧縮する場合や、プレス機を用いて原料撚線10’を押し潰すように圧縮する場合と比較して、原料撚線10’に、大きな負荷を印加せずに、原料撚線10’全体の外形を、扁平形状に変形させやすい。また、ローラに接触する原料撚線10’の外周部に荷重を集中させるのではなく、原料撚線10’全体に、均一性高く、荷重を印加しやすい。それらの結果、ローラを用いて原料撚線10’を圧延することで、ダイスやプレス機を用いる場合よりも、得られる断面扁平の電線導体10において、素線1の間に空隙を確保しやすい。また、電線導体10の外周部に位置する素線1をはじめとする各素線1の変形率を、小さく抑えやすい。空隙率や各素線1の変形率は、圧延時に印加する力(F1,F2,F3,F4,F1’,F2’)の大きさや、ローラの原料撚線10’に接触する部分の形状によって、調整することができる。
【0092】
ローラを用いて、素線1の変形率を小さく抑えながら原料撚線10’全体を扁平形状に成形することで、得られた電線導体10において、素線1の変形に伴う物性変化を小さく抑えることができる。よって、加工歪みや加工硬化の影響を除去するための熱処理等は、圧延後の電線導体10において、特に必要でない場合が多い。
【0093】
[被覆電線]
上述したとおり、本発明の一実施形態にかかる被覆電線20は、上記のような本発明の一実施形態にかかる電線導体10と、電線導体10の外周を被覆する絶縁体21とを有している(図5等参照)。
【0094】
絶縁体21を含む被覆電線20全体の外形は、電線導体10の外形を反映したものとなり、電線導体10が扁平な形状を有していることにより、被覆電線20も扁平な形状となる。また、電線導体10が各方向に高い柔軟性を有していることにより、被覆電線20も、各方向に高い柔軟性を有する。
【0095】
絶縁体21の材料は特に限定されるものではなく、種々の高分子材料より構成することができる。また、高分子材料には、適宜、充填剤や添加剤を含有させることができる。ただし、電線導体10の高い柔軟性を損なうことがないように、絶縁体21の材料および厚さは、絶縁体21の柔軟性が電線導体10の柔軟性よりも高くなるように選定することが好ましい。また、絶縁体21の厚さは、電線導体10の扁平形状が被覆電線20全体の形状として十分反映され、被覆電線20全体の断面が扁平形状を有するように選定することが好ましい。
【0096】
絶縁体21は、電線導体10の全周を一体的に取り囲む形態とすることができる。この場合に、絶縁体21となる高分子材料を、押し出し等によって電線導体10の全周に成形することで、絶縁体21を設けることができる。あるいは、シート状の絶縁体21が、電線導体10の高さ方向上下(±y方向)から電線導体10を挟み込む形態とすることができる。この場合には、2枚のシート状に成形した高分子材料を電線導体10の上下に配置し、適宜、融着や接着等により、シート間を接合すればよい。
【0097】
被覆電線20は、単一の電線導体10の外周を絶縁体21で被覆した単線の状態で使用しても、複数の被覆電線を集積し、さらに必要に応じて、被覆材等を用いて複数の被覆電線を一体的にまとめたワイヤーハーネスの形態で使用してもよい。ワイヤーハーネスの形態で使用する場合について、次に説明する。
【0098】
[ワイヤーハーネス]
本発明の一実施形態にかかるワイヤーハーネスは、複数の被覆電線を集積したものよりなっており、それら複数の被覆電線の少なくとも一部が、上記のような扁平な電線導体10を有する本発明の実施形態にかかる被覆電線20よりなる。ワイヤーハーネスは、上記のような扁平な電線導体10を有する被覆電線20のみを用いて構成しても、そのような被覆電線20と、断面略円形の一般的な電線導体を有する被覆電線等、他種の被覆電線を併用して構成してもよい。また、扁平な電線導体10を有する被覆電線20を複数用いてワイヤーハーネスを構成する場合に、それら複数の被覆電線20を構成する電線導体10や絶縁体21の材質や形状、寸法等は、相互に同じであっても、異なっていてもよい。ワイヤーハーネスにおいて、集積した複数の被覆電線は、必要に応じて、絶縁材料等を用いて一体にまとめてもよい。
【0099】
(1)ワイヤーハーネスにおける被覆電線の配置
扁平な電線導体10を有する被覆電線20を複数用いてワイヤーハーネスを構成する際に、それら複数の被覆電線20をどのような位置関係で配置してもよいが、図5(a)のように、扁平な電線導体10の幅方向x(横方向)に並べる形態や、図5(b)のように、高さ方向yに重ねる形態、あるいは、幅方向xに複数の被覆電線20を並べたものを高さ方向yに複数重ねたマトリクス状の形態(図7(b)参照)を例示することができる。つまり、幅方向xと高さ方向yの少なくとも一方に沿って、複数の被覆電線20を配列する形態を例示することができる。このように、扁平な電線導体10を備えた複数の被覆電線20を整然と配列することで、ワイヤーハーネスを構成する被覆電線20の間の空隙を小さくすることができ、特に省スペース性に優れたワイヤーハーネスとなる。
【0100】
なかでも、複数の被覆電線20を、扁平な電線導体10の幅方向xに並べて配置する場合には、電線導体10の扁平形状によって高さ方向yに沿ってもたらされる省スペース性を有効に利用して、ワイヤーハーネスを構成し、配策に用いることができる。例えば、高さの限られた空間にワイヤーハーネスを配策する場合や、ワイヤーハーネスの上下方向に別の部材を配置する場合等に、省スペース性を有効に利用することができる。また、各被覆電線20の放熱性を確保しやすい。
【0101】
一方、複数の被覆電線20を、扁平な電線導体10の高さ方向yに並べて配置する場合、つまり、高さ方向yに沿って積層する場合には、電線導体10の扁平形状によって、幅方向xの寸法(幅W)が広くなっていても、ワイヤーハーネス全体としての幅方向xの寸法を小さく抑えながら、ワイヤーハーネスを構成し、配策に用いることができる。その結果、高さ方向に長細い空間等を活用して、配策を行うことができる。
【0102】
ワイヤーハーネスにおいて、配列した各被覆電線20に接触させて、放熱シートを設けておくことで、扁平形状を利用して被覆電線20を多数近接させて配列した場合にも、各被覆電線20の放熱性を確保しやすくなる。ここで、放熱シートは、被覆電線20よりも高い放熱性を有する放熱材よりなる、シート状(板状を含む)の部材であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなるシート体または板材を例示することができる。放熱シートの配置としては、ワイヤーハーネスを構成する複数の被覆電線20の間に介在させて設ける形態や、複数の被覆電線20に共通に接触させて設ける形態を例示することができる。
【0103】
図5(a)のように、複数の被覆電線20を幅方向xに並べて配置する場合には、各被覆電線20の幅方向xに沿った面(扁平面)に接触させて、共通の放熱シート31を配置することが好ましい。電線導体10の扁平形状によって大面積となった扁平面を、放熱シート31の一方側の面に接触させることで、被覆電線20の放熱性を効果的に高めることができる。そして、複数の被覆電線20に対して共通の放熱シート31を配置することで、放熱シート31を含むワイヤーハーネスの構成を簡素にすることができる。図示した形態では、各被覆電線20が幅方向xに沿って相互に接触していないが、接触する場合には、隣接する被覆電線20の間にも、放熱シートが介在されることが好ましい。
【0104】
図5(b)のように、複数の被覆電線20を高さ方向yに並べて配置する場合には、各被覆電線20の間に介在させて、放熱シートを、介在シート32として設けることが好ましい。介在シート32は、各被覆電線20の幅方向xに沿った扁平面に接触することになる。電線導体10が扁平形状を有することにより、扁平面の面積が大きくなっており、その大面積の扁平面を相互に近接または接触させて複数の被覆電線20を配置した配列体においては、通電時に発生する熱を外部に逃がすことが難しくなる場合があるが、介在シート32を被覆電線20の間に設けることで、熱の発散を促進することができる。
【0105】
さらに、各被覆電線20の間に設けられた複数の介在シート32は、放熱材よりなる連結材33によって、相互に連結されていることが好ましい。連結材33を設けることで、介在シート32のみを設ける場合よりも、各被覆電線20の放熱性を高めることができる。連結材33は、介在シート32を介した被覆電線20の放熱の目的に特化した部材として設けても、別の目的で設けられた部材を連結材33として兼用してもよい。例えば、自動車の車体を構成する柱状の部材を連結材33として利用することで、その部材を、車体の構造材としての役割と、介在シート32を介して被覆電線20の放熱を補助する連結材33としての役割、さらには、複数の被覆電線20よりなるワイヤーハーネスを取り付けるための支持材としての役割に、兼用することができる。
【0106】
後の実施例に示すとおり、図5(a)の場合のように、被覆電線20の幅方向xに沿った扁平面に接触させて、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる放熱シート31を設ける場合に、被覆電線20の軸線方向に垂直に交差する断面における放熱シート31の断面積は、被覆電線1本あたり、被覆電線20を構成する電線導体10の導体断面積の1.5倍以上、さらには4倍以上であることが好ましい。そうすれば、被覆電線20の放熱性を、効果的に高めることができる。
【0107】
(2)自動車への配策
上記のように、扁平な電線導体10を有する被覆電線20を含むワイヤーハーネスを、例えば、自動車用の配線材として用いることで、優れた省スペース性を有効に利用することができる。そのようなワイヤーハーネスを、例えば、車両の床やフレーム等に沿わせて配策することで、床下やフレーム周辺の限られたスペースを、有効に配策に利用することができる。この際、電線導体10の幅方向xが床面やフレーム材の面に略平行になるようにワイヤーハーネスを沿わせることで、特に優れた省スペース性が得られる。
【0108】
従来一般のワイヤーハーネスは、略円形の断面を有する被覆電線を束にして構成されており、ワイヤーハーネス全体としてかさ高くなるため、自動車内でその配策スペースを確保しようとすれば、居住空間(乗員が滞在できる空間)が狭くなってしまう場合がある。しかし、上記のように、扁平な電線導体10を有する被覆電線20を含んだワイヤーハーネスを用いて、ワイヤーハーネスの配策に要する空間を小さく抑えることで、居住空間を広く確保することが可能となる。
【0109】
本実施形態にかかるワイヤーハーネスは、自動車において、どのような用途の配線材として用いられてもよいが、好適な用途として、床下に配置する電源幹線としての用途を例示することができる。従来一般の自動車用電源幹線は、銅板を並べたものに絶縁シートを貼り付けて構成されていたが、大型の銅板を連続成形するのは困難であり、生産性が悪かった。また、金属の連続体よりなるため、自動車のエンジン振動などの影響で材料の疲労破壊につながる可能性があった。これに対し、本実施形態のワイヤーハーネスを用いて電源幹線を構成すれば、電線導体10を構成する素線1の成形、素線1の撚り合わせ、撚り合わせて得た原料撚線10’の扁平形状への成形のいずれもが、長尺状の材料の各部に対して連続して実施しうる工程であり、高い生産性を達成することができる。また、電線導体10は細い素線1の集合よりなるため、電線導体10全体として、屈曲や振動に対して高い耐性を有する。よって、エンジン振動等による疲労破壊が起きにくい。
【0110】
また、本実施形態にかかるワイヤーハーネスを、自動車の床下等に沿わせて配策する形態のみならず、床や天井そのものを本実施形態にかかるワイヤーハーネスで形成する形態を挙げることができる。自動車においては、エンジン等の部品と干渉しないようにワイヤーハーネスを配策する必要があるが、そのような配策経路は限定されている。特に、ハイブリッド車や電気自動車のように大電流を必要とする自動車では、導体断面積の大きい電線を配策することが必要となり、そのような大断面積の電線導体を含むワイヤーハーネスを配策できる経路は限られている。しかし、床や天井を本実施形態にかかるワイヤーハーネスで構成することで、無駄なく空間を活用して配策経路を確保するとともに、居住空間も広く確保することができ、省スペース性と大電流化に伴う要請とを両立することが可能となる。また、大電流用の被覆電線においては、電線導体の発熱によって絶縁体が劣化しやすいが、ワイヤーハーネスを床や天井として配置することで、放熱性を確保しやすくなる。その結果、それほど耐熱性の高くない安価な絶縁体21を用いて被覆電線20を構成したとしても、絶縁体21の劣化が問題となりにくくなる。さらに、扁平な電線導体10を備えた被覆電線20は、扁平な面を有しており、ワイヤーハーネスを構成する際に、被覆電線20を様々に配置することで、その扁平な面の組み合わせにより、任意の面形状を有する床や天井を構成することができる。なお、本実施形態にかかるワイヤーハーネスを用いて床や天井を構成する場合に、適宜、ワイヤーハーネスの外側に被覆材を設けることで、ワイヤーハーネスを天井面や床面に直接露出させないようにすることができる。
【0111】
さらに、本実施形態にかかるワイヤーハーネスを自動車の天井や床に配置する際に、図6に示すように、ワイヤーハーネスを構成する複数の被覆電線20について、導体断面積が個々に異なっていても、高さHを揃えておくことが好ましい。このようにすることで、ワイヤーハーネスの高さ方向上下の面を、平面的に構成することができ、天井や床の面に沿わせて配策した際に、高さ方向において、高い省スペース性を得ることができる。また、ワイヤーハーネスの高さ方向の凹凸構造が、自動車の内装における意匠性や、隣接する部材の機能に、影響を与えにくくなる。ここで、被覆電線20の高さHが揃っているとは、被覆電線20の個体間の高さHの差が、平均の高さの10%以内に収まっている状態を指すものとする。
【0112】
そのように、被覆電線20の高さHを揃えたワイヤーハーネスは、例えば、図6に示すように、自動車の床や天井を構成する内装材51と、内装材51の外側(居住空間と反対側)に隣接して設けられる吸音材52との間に、幅方向xに沿った扁平面を内装材51および吸音材52の面に沿わせて、配置することが好適である。すると、内装材51と吸音材52の間の狭い空間を、ワイヤーハーネスの配策に有効に活用することができる。被覆電線20の高さHが揃っていることで、内装材51と吸音材52の間の距離を不要に広げることなく、ワイヤーハーネスを配置することができる。また、ワイヤーハーネスの高さ方向の凹凸構造が、内装材51の表面の凹凸構造として現れ、内装材51の表面の意匠性を低下させる事態を、防止することができる。さらに、不揃いに高さHの大きい被覆電線20が吸音材52の面を圧迫し、吸音性の不均一化等、吸音材52の性能に影響を与える事態も、防止することができる。ワイヤーハーネスを間に配置することができる内装材51と吸音材52の組としては、フロアカーペットとサイレンサの組を例示することができる。
【0113】
さらに、本実施形態にかかるワイヤーハーネスは、自動車の車体を構成する各種部材を支持材として用いて、自動車に配策することができる。例えば、図7(a)に示すように、車体を構成する柱状部材41の外周に沿わせて、ワイヤーハーネスを配置することができる。この際、ワイヤーハーネスを構成する各被覆電線20の幅方向xに沿った面を、柱状部材41の外周面の沿わせるようにして、ワイヤーハーネスを配置すればよい。あるいは、図7(b)に示すように、長手方向に交差して略U字形や略コの字形等の断面を備えた長尺状の部材、つまり長手方向に沿って開口42aを有する中空の管状部材42の中空部42bの中に、ワイヤーハーネスを配置すればよい。この際、ワイヤーハーネスは、開口42aや中空部42bの形状に合わせて、複数の被覆電線20を、幅方向xおよび/または高さ方向yに複数配列したものであるとよい。上記のように、配列した被覆電線20の間には、適宜放熱シートを配置してもよい。これらの柱状部材41や管状部材42としては、例えば、自動車のインスツルメントパネルの前方に配置されるリンフォースメントとして用いられる部材を例示することができる。
【0114】
(3)他の電線との併用
上記のように、本発明の実施形態にかかるワイヤーハーネスは、本発明の実施形態にかかる扁平な電線導体10を有する被覆電線20と、他種の被覆電線とを、併用して構成することができる。本発明の実施形態にかかる被覆電線20および他種の被覆電線の具体的な構成材料および形状、寸法等は、どのような組み合わせとしてもよい。その中で、本発明の実施形態にかかる被覆電線20(第一の被覆電線)として、アルミニウムまたはアルミニウム合金(アルミ系材料)よりなる扁平な電線導体10を備えたものを用い、他種の被覆電線(第二の被覆電線)として、銅または銅合金(銅系材料)よりなり、断面略円形等、第一の被覆電線20の電線導体10よりも扁平度の低い電線導体を備えたものを用いる形態を例示することができる。この場合に、第一の被覆電線20の導体断面積よりも、第二の被覆電線の導体断面積の方が小さいことが好ましい。
【0115】
アルミ系材料は、自動車全体の軽量化のために、自動車用電線導体の材料として銅系材料の代わりに使用されるようになってきているが、上にも記載したように、アルミ系材料を用いる場合の方が銅系材料を用いる場合よりも、材料としての導電率が低いことから、電線導体の導体断面積が大きくなりがちである。そのようなアルミ系材料よりなる電線導体を従来一般の断面円形の導体として構成し、ワイヤーハーネスに用いるとすれば、電線導体の大径化により、ワイヤーハーネスの配策に要する空間が大きくなってしまうが、扁平形状の電線導体10とすることで、大きな導体断面積を確保しながらも、配策に要する空間を削減することが可能となる。一方、銅系材料を用いた電線導体であっても、導体断面積の小さい細径線であれば、自動車の軽量化において大きな妨げとならない。また、ワイヤーハーネスの配策に要する空間を大きくするのにも寄与しにくい。そこで、アルミ系材料の扁平な電線導体10を有する第一の被覆電線20に、それよりも導体断面積の小さい銅系材料よりなる断面略円形の電線導体を有する第二の被覆電線を組み合わせて用いることで、省スペース性を確保しながら、高い導電率等、銅系材料の優れた特性を、ワイヤーハーネスの一部位の特性として利用することが可能となる。第二の被覆電線を構成する電線導体としては、導体断面積が0.13mmあるいはそれより小さい、銅合金細線を例示することができる。このような銅合金細線は、信号線として好適に用いることができる。第二の被覆電線をこのように細いものとすることで、第一の被覆電線20として扁平な電線導体10を有するものを用いることによる省スペース化の効果を、有効に利用することができる。
【実施例0116】
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0117】
[電線導体の断面の状態]
断面扁平形状に成形した電線導体の断面に対して、空隙の状態や素線の変形状態を確認した。
【0118】
(試験方法)
外径0.32mmのアルミニウム合金線を741本撚り合わせ、導体断面積60mmの断面略円形の原料撚線を作製した。
【0119】
上記原料撚線に対して、ローラを用いた圧延を行い、断面略長方形の電線導体を作製した。ローラによる圧延は、図3に示したように、最初に上下方向から力F1,F2を印加した後、再度それらと同じ方向から力F1’,F2’を印加するとともに、同時に幅方向両側から、力F3,F4を印加することによって行った。この際、印加する力の大きさを異ならせることで、圧縮率(断面積の減少率)の小さい試料1と、圧延率の大きい試料2とを作製した。その後、各電線導体の外周に、PVCよりなる厚さ1.5mmの絶縁体を被覆した。
【0120】
試料1、試料2のそれぞれを、エポキシ樹脂に埋め込み、軸線方向に交差する断面を研磨し、断面試料を作製した。そして、得られた断面試料に対して、写真撮影を行った。
【0121】
撮影した断面の写真に対して、画像解析を行い、空隙率を評価した。この際、電線導体全体の断面積(A0)を、電線導体の最外周に位置する素線の輪郭をつないだ外郭線の内側の領域の面積として見積もるとともに、空隙の面積(A1)を、その領域の中で、素線に占められていない領域の面積として見積もり、空隙率を算出した(A1/A0×100%)。
【0122】
さらに、画像解析によって、素線の変形率を評価した。この際、素線の変形率は、上記式(1)のとおりに見積もった。円直径Rとしては、圧縮前の原料撚線の外径である0.32mmを採用した。また、素線の変形率は、図8(b),(c)中に正方形の領域R1として示した外周部(端部)と、同じく正方形の領域R2として示した中央部に含まれる素線に対して見積もり、各領域における変形率の平均値を算出した。さらに、中央部の変形率に対する外周部の変形率の比として、外周変形率比を算出した(外周部変形率/中央部変形率×100%)。
【0123】
(試験結果)
図8に、被覆電線の断面に対して撮影した写真を示す。(a)は、圧縮前の原料撚線、(b)は低圧縮率の試料1、(c)は高圧縮率の試料2に対応している。また、下の表1に、試料1および試料2について画像解析によって得られた、空隙率および変形率の値をまとめる。
【0124】
【表1】
【0125】
図8(b),(c)の試料1と試料2の断面写真を比較すると、試料1においては、素線の間に比較的大きな空隙が残っているのに対し、試料2においては、素線が密に充填された状態となっている。また、試料1では、各素線の断面が、図8(a)の圧延前の略円形の形状から、大きくは変形していないのに対し、試料2では、円形から大きく変形している素線が多く見られる。特に、電線導体の幅方向端部に着目すると、試料1では、端部が滑らかに成形されているのに対し、試料2では、円で囲んで示したように、鋭いバリが発生してしまっている。
【0126】
写真で見られるこれらの傾向は、表1の画像解析結果に、一層明確に表れている。まず、電線導体断面の空隙率については、試料1で30%、試料2で16%となっており、試料1の方で、試料2の約2倍になっている。さらに、試料1においては、図8(b)中に矢印で示す箇所のように、素線を2本分以上収容できる連続した空隙が、多数存在するのに対し、図8(c)の試料2には、そのような大きな連続した空隙はほとんど見られない。
【0127】
次に、素線の変形率に関して、電線導体の中央部の変形率は、試料1と試料2で同じになっている。しかし、外周部の変形率は、試料1と試料2で大きく異なっている。試料1では、外周部の変形率が中央部の変形率よりも小さく、中央部の値の18%にまで抑えられている。これに対し、試料2では、外周部の変形率が、中央部の変形率と同じになっている。
【0128】
以上の結果より、原料撚線を圧延する際の圧縮率を小さく抑えることで、大きな空隙率を有し、外周部の素線の変形率が中央部よりも小さくなった状態で、断面扁平形状の電線導体を得られることが確認された。
【0129】
[被覆電線の柔軟性]
電線導体の断面形状による被覆電線の柔軟性への影響を確認した。
【0130】
(試験方法)
上記の「電線導体の断面の状態」の試験と同様に、アルミニウム合金よりなる断面円形および断面扁平形状の電線導体を作製した。さらに、上記と同様に絶縁被覆を設け、被覆電線を作製した。電線導体の導体断面積は、35mmと130mmの2とおりとした。また、断面扁平形状における縦横比は、導体断面積35mmの場合には1:3、導体断面積130mmの場合には1:4とした。
【0131】
それぞれ作製した被覆電線に対して、反発力の測定により、柔軟性を評価した。反発力の測定は、3点曲げの方法で行った。つまり、長さ100mmの被覆電線の両端を把持し、中央部に曲げを加えた際の反発力を、ロードセルで計測した。
【0132】
(試験結果)
下の表2に、各被覆電線に対して得られた反発力の測定結果を示す。
【0133】
【表2】
【0134】
表2によると、いずれの導体断面積においても、断面形状を円形から扁平形状とすることで、反発力が低下している。つまり、柔軟性が高くなっている。130mmのように導体断面積が大きい場合でも、扁平化により、柔軟性を向上させることができている。いずれの導体断面積においても、扁平化によって反発力が90%以下に低減されているが、導体断面積が大きい場合の方が、同程度の柔軟性の向上を達成するために、扁平形状の縦横比を大きくする(幅を大きくする)必要がある。
【0135】
[被覆電線の放熱性]
被覆電線の放熱性と、電線導体の形状および放熱シートの有無との関係を、コンピュータシミュレーションによって確認した。
【0136】
(試験方法)
有限要素法による熱伝導解析を用いたコンピュータシミュレーションにより、被覆電線に通電した際の昇温の程度を見積もった。具体的には、断面が円形、縦横比1:3の扁平形状、縦横比1:5の扁平形状の3とおりの銅よりなる電線導体の外周に、PVCよりなる厚さ1.6mmの絶縁被覆を形成した被覆電線を試料として想定した。導体断面積は、断面円形の場合については134.5mmとし、断面扁平形状の場合については、その値を基本として、3とおりに変化させた。そして、各試料に対して、400Aの電流を流して定常状態に達した際の温度上昇を、シミュレーションによって見積もった。周囲の環境の温度は、40℃とした。
【0137】
また、縦横比が1:5の扁平形状の電線導体を有する被覆電線に対して、放熱シートを設けた場合についても、同様に温度上昇を見積もった。放熱シートとしては、厚さが5mm、幅が30mmと60mmの2通りの、アルミニウム板を用いた。被覆電線の幅方向xの中心を、放熱シートの幅方向の中心に合わせて、被覆電線の幅方向xに沿った扁平面を、放熱シートの片側の面に密着させて配置した。
【0138】
(試験結果)
各試料に対してシミュレーションで得られた温度上昇値を、導体断面積の関数として、図9に示す。図9では、近似曲線も合わせて示している。
【0139】
図9によると、電線導体が断面円形の場合よりも、断面扁平形状の場合の方が、温度上昇が低く抑えられている。すなわち、放熱性が高められている。なかでも、扁平形状の縦横比を大きくするほど(幅を大きくするほど)、放熱性が高められている。その結果、温度上昇の上限を所定の温度値に設定した場合に、電線導体を断面扁平形状とし、さらに縦横比を大きくすることで、電線導体の導体断面積を小さくしても、その上限の範囲内に温度上昇を抑えることが可能となる。例えば、温度上昇の上限値を40℃とした場合に、導体断面積の下限値が、断面が円形の場合には約135mm、縦横比1:3の扁平形状の場合には約125mm、縦横比1:5の扁平形状の場合には約120mmとなっている。
【0140】
さらに、断面扁平形状の電線導体を有する被覆電線に放熱シートを設けると、放熱性が一層高くなっている。なかでも、放熱シートの断面積が大きいほど、放熱性が高くなっている。つまり、温度上昇の上限を所定の温度値に設定した場合に、大断面積の放熱シートを用いることで、電線導体の導体断面積を小さくしても、その上限の範囲内に温度上昇を抑えることが可能となる。例えば、温度上昇の上限値を40℃とした場合に、放熱シートの幅が30mmの場合には、導体断面積の下限値が、約95mmとなっている。この時、放熱シートの断面積は、導体断面積の約1.6倍である。一方、放熱シートの幅が60mmの場合には、導体断面積の下限値が、67mmとなっている。この時、放熱シートの断面積は、導体断面積の約4.5倍である。
【0141】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0142】
また、上記では、電線導体が、所定以上の空隙率を有する形態について説明したが、電線導体がそのような空隙率を有していない構成、つまり、複数の素線を撚り合わせた撚線よりなり、前記撚線の軸線方向に交差する断面が、扁平形状よりなる扁平部を有することを特徴とする電線導体とすることも考えられる。さらに、そのような構成をとる場合でも、断面形状の扁平化によって、断面形状が略円形である場合よりも、柔軟性を向上させ、省スペース性と両立することが可能である。さらに、そのような場合においても、上記で説明した空隙率以外の電線導体に関する各構成、つまり、変形率等、各素線の断面形状、電線導体の材料および導体断面積、電線導体の縦横比、扁平部と低扁平部の共存等の構成を、好適に適用することができる。また、上記で説明した被覆電線およびワイヤーハーネスに関する構成も、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 素線
10 電線導体
10’ 原料撚線
20 被覆電線
21 絶縁体
H 高さ
W 幅
x 幅方向
y 高さ方向
31 放熱シート
32 介在シート(放熱シート)
33 連結材
41 柱状部材
42 管状部材
51 内装材
52 吸音材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9