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特開2022-159474分離膜及びそれを含むリチウム-硫黄電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159474
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】分離膜及びそれを含むリチウム-硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20221006BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20221006BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221006BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20221006BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/426
H01M50/46
H01M4/13
H01M4/136
H01M4/137
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130058
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2020517296の分割
【原出願日】2018-10-11
(31)【優先権主張番号】10-2017-0147760
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジウン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スンボ・ヤン
(57)【要約】
【課題】リチウムポリスルフィドによる問題を解消することができるリチウム-硫黄電池用分離膜を提供する。
【解決手段】本発明は、多孔性基材の少なくとも一面を酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子でコーティングした分離膜であって、従来のリチウム-硫黄電池で発生するリチウムポリスルフィドによる問題を解消することができる分離膜及びそれを含むリチウム-硫黄電池に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一面に形成されたコーティング層とを含み、
前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子とを含むことを特徴とするリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項2】
前記酸素含有官能基は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基及びアミド基からなる群より選ばれるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項3】
前記多孔性基材は厚さが3μm~100μmであり、気孔の大きさが0.01μm~10μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項4】
前記多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ナイロン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、及びポリアリレートからなる群より選ばれる1種以上の材質を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項5】
前記リチウムイオン伝導性高分子は、ポリウレタン(polyurethane)、リチウム置換されたナフィオン(lithiated Nafion)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide)、ポリプロピレンオキサイド(Polypropylene oxide)、ポリシロキサン(Polysiloxane)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)からなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項6】
前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子が1:5~1:20の重量比で混合されたことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項7】
前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子が1:10~1:15の重量比で混合されたことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項8】
前記コーティング層は、厚さが100nm~20μmであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項9】
前記コーティング層は、厚さが200nm~10μmであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項10】
前記コーティング層は、厚さが0.4μm~5μmであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項11】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、酸素原子を全体炭素ナノチューブ対比0.5~30%含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項12】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、酸素原子を全体炭素ナノチューブ対比1~20%含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項13】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、酸素原子を全体炭素ナノチューブ対比2~15%含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項14】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、5~100μg/cmでコーティングされることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項15】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、5~40μg/cmでコーティングされることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項16】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、5~20μg/cmでコーティングされることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項17】
前記コーティング層は、リチウム-硫黄電池の正極に対向するように形成されたことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の分離膜を含むことを特徴とする、リチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月8日付け韓国特許出願第10-2017-0147760号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウムポリスルフィドによる問題を解消することができる分離膜及びそれを含むリチウム-硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子製品、電子機器、通信機器などの小型軽量化が急速に進められており、環境問題に関連して、電気自動車の必要性が大きく台頭するに伴い、これらの製品の動力源として用いられる二次電池の性能向上に対する要求も増加する実情である。その中でリチウム二次電池は、高エネルギー密度及び高い標準電極電位のために、高性能電池として相当な脚光を浴びている。
【0004】
特にリチウム-硫黄(Li-S)電池は、S-S結合(Sulfur-sulfur bond)を有する硫黄系物質を正極活物質として用い、リチウム金属を負極活物質として用いる二次電池である。正極活物質の主材料である硫黄は資源が非常に豊富で、毒性がなく、低い原子当たりの重量を有している利点がある。また、リチウム-硫黄電池の理論放電容量は1,675mAh/g-sulfurであり、理論エネルギー密度が2,600Wh/kgで、現在研究されている他の電池システムの理論エネルギー密度(Ni-MH電池:450Wh/kg、 Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)に比べて非常に高いため、現在まで開発されている電池の中で最も有望な電池である。
【0005】
リチウム-硫黄電池の放電反応のうち負極(Anode)では、リチウムの酸化反応が発生し、正極(Cathode)では、硫黄の還元反応が発生する。前記リチウム-硫黄電池は、放電中にリチウムポリスルフィド(Li、x=2~8)が生成され、これは電解質に溶解され、負極に拡散され、様々な副反応を起こすだけでなく、電気化学反応に関与する硫黄の容量を減少させる。また、充電過程中に前記リチウムポリスルフィドは、シャトル反応(shuttle reaction)を起こし、充放電効率を大幅に低下させる。
【0006】
前記問題を解決するために、硫黄を吸着する性質を有する添加剤を添加する方法が提案されたが、これは劣化の問題が発生し、追加的な電池の副反応が新たに発生した。そこで、正極活物質、すなわち硫黄の流出を遅延させるために、金属カルコゲナイドやアルミナなどを添加したり、表面をオキシカーボネートなどでコーティングしたりする方法が提案されたが、これらの方法は、処理中に硫黄が失われたり複雑であるだけでなく、活物質である硫黄を入れることができる量(すなわち、ロード量)が制限される。
【0007】
したがって、リチウム-硫黄電池の常用化のために、リチウムポリスルフィドの問題は最も優先的に解決しなければならない課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2017-0003604号
【特許文献2】大韓民国公開特許第2016-0137486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明では、リチウム-硫黄電池の正極側で発生するリチウムポリスルフィドの問題を解消するために、これと接する分離膜に酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブと、リチウムイオン伝導性高分子とを適用した新しい構造を適用した結果、前記問題を解決し、リチウム-硫黄電池の電池性能を向上させることができることを確認し、本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、リチウムポリスルフィドによる問題を解消することができるリチウム-硫黄電池用分離膜を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、前記分離膜を備えて電池の性能が向上したリチウム-硫黄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一面に形成されたコーティング層とを含み、
前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子とを含むことを特徴とするリチウム-硫黄電池用分離膜を提供する。
【0013】
このとき、前記酸素含有官能基は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基及びアミド基からなる群より選ばれるいずれか1つ以上であることを特徴とする。
【0014】
このとき、前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子が1:5~1:20の重量比で混合されたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記リチウム-硫黄電池用分離膜を含むリチウム-硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る分離膜は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子をともに含み、リチウム-硫黄電池の正極で発生するリチウムポリスルフィドによる問題を解消する。
【0017】
前記分離膜が備えられたリチウム-硫黄電池は、硫黄の容量低下が発生しないため、高容量電池の具現が可能であり、硫黄を高ローディングで安定的に適用可能であるだけでなく、電池のショート、発熱などの問題がないので、電池の安定性が向上する。なお、このようなリチウム-硫黄電池は、電池の充放電効率が高く、寿命特性が改善される利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例によるリチウム-硫黄電池を示す断面図である。
図2】実施例1及び2、比較例1で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電容量を示すグラフである。
図3】実施例1及び2、比較例1で製造されたリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。
図4】実施例1及び比較例2で製造されたリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、リチウム-硫黄電池及びこれに用いる分離膜を提示する。
図1は、リチウム-硫黄電池(10)を示す断面図であり、負極(1)としてリチウム金属を、正極(3)として硫黄を含み、これらの間に分離膜(5)が配置された構造を有する。このとき、電解質(図示せず)は、前記負極(1)と正極(3)との間で分離膜(5)に含浸された形態で存在する。
【0020】
リチウム-硫黄電池(10)の充放電時に、正極ではリチウムポリスルフィドが生成され、これにより、電池(10)の充電容量の減少及びエネルギーの減少が生じ、負極では、リチウムデンドライトの発生により電池寿命の減少とともに電池の短絡、発熱、発火及び爆発などのような安定性の問題が発生する。この問題を解消するために、電極上に新しい組成を添加するか、または追加コーティング層を形成する方法が提案されたが、所望の水準に電池性能の向上効果を得ることができなかった。
【0021】
そこで、本発明では、このような問題を解決するために、新しい構造の分離膜(5)を提示する。
【0022】
具体的に、本発明に係る分離膜(5)は、多孔性基材及びその一面又は両面にコーティング層を形成する。前記コーティング層を多孔性基材の一面に形成する場合、コーティング層は、負極(1)又は正極(3)側のいずれにも位置することができ、本発明では、好ましくは、正極(3)に対向するように形成されていてもよい。
【0023】
分離膜(5)を構成する多孔性基材は、負極(1)と正極(3)を互いに分離又は絶縁させながら、前記負極(1)と正極(3)との間にリチウムイオンの移動を可能にする。このような分離膜(5)は多孔性であり、非導電性又は絶縁性である物質からなってもよい。前記分離膜(5)は、フィルムのような独立した部材であってもよい。
【0024】
具体的には、多孔性基材は、多孔性高分子フィルムを単独で、又はこれらを積層して用いることができ、又は通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記多孔性基材の材質としては、本発明において限定せず、この分野において通常用いる材料が可能である。代表的に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、アラミドのようなポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ナイロン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、及びポリアリレートからなる群より選ばれるいずれか1つ、又は2以上の混合物で形成することができる。
【0026】
前記多孔性基材の厚さは3μm~100μm、又は3μm~30μmであってもよい。多孔性基材の範囲が特に前述した範囲に限定されるものではないが、厚さが前述した下限よりも過度に薄い場合には、機械的物性が低下し、電池の使用中に分離膜(5)が容易に破損することがある。一方、多孔性基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ、0.01μm~10μm及び25%~85%であってもよい。
【0027】
前記多孔性基材の少なくとも一面に形成されるコーティング層は、リチウムポリスルフィドによって引き起こされる問題を解決することができる役割を果たし、このために、官能基が導入された炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子を同時に含む。
【0028】
炭素ナノチューブ(Carbon nanotube、CNT)は、円柱状のナノ構造を有する炭素の同素体で、種々の特異な性質を有しているため、ナノテクノロジー、電気工学、光学及び材料工学などの様々な分野で有用に使われている。
【0029】
特に炭素ナノチューブを二次電池に適用して繰り返される充放電による電池の劣化を非常に効果的に軽減させることができるだけでなく、負極では、電子輸送力が非常に高い金属性炭素ナノチューブを用いて電池の性能を向上させることができる利点がある。
【0030】
本発明では、これをリチウム-硫黄電池に適用し、炭素ナノチューブを酸処理した「酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ」がリチウム-硫黄電池の充放電の過程中に発生するリチウムポリスルフィドを吸着して、シャトル現象を防止することにより、電池の性能を向上させることができることを発見し、本発明を完成した。
【0031】
本発明に係る炭素ナノチューブは、前記酸素含有官能基が炭素ナノチューブの末端基に導入された形態で存在することができる。すなわち、前記炭素ナノチューブの末端基の全部が酸素含有官能基で置換された形態であってもよく、炭素ナノチューブの末端基の一部のみ酸素含有官能基で置換された形態であってもよい。
【0032】
前記炭素ナノチューブの末端基に導入された酸素含有官能基の種類は特に制限されず、本発明では、その例として、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基及びアミド基からなる群より選ばれる1つ以上が挙げられ、好ましくはカルボキシ基、ヒドロキシ基が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0033】
本発明において、前記炭素ナノチューブの種類は特に制限されず、例えば、多層炭素ナノチューブ又は単層炭素ナノチューブであってもよい。
【0034】
本発明において、前記炭素ナノチューブの長さは特に制限されないが、好ましくは、10μm~200μmであってもよい。前記炭素ナノチューブの長さが5μm未満であれば、コーティング層の内部に多孔質構造を成すことが難しいので、リチウムポリスルフィドの吸着特性が著しく低くなり、物質移動が妨害され、容量が低くなり、200μmを超えると、形成される二次粒子のサイズが大きくなり、リチウム-硫黄電池の負極と正極との間で短絡(short circuit)が発生するおそれがある。
【0035】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブの製造のために、反応器で炭素ナノチューブを酸で処理し、25℃~60℃の温度で撹拌しながら反応させることができる。前記酸の種類も特に制限されず、炭素ナノチューブの表面に酸素含有官能基を導入することができるものであればどんなものでも可能であり、例えば、硫酸、硝酸又はこれらの混合物が挙げられ、過マンガン酸カリウムのような酸化剤を用いることもできる。
【0036】
前記酸の含有量は特に制限されないが、好ましくは、炭素ナノチューブ1重量部に対して50重量部~1000重量部であってもよい。前記酸の含有量が50重量部未満であれば、炭素ナノチューブの化学的酸化による切断反応がよく起こらないおそれがあり、1,000重量部を超えると、過度な量の酸混合物により化学的酸化によって切断された炭素ナノチューブの回収が困難になることができる。
【0037】
次に、前記化学的酸化反応により得られた炭素ナノチューブ及び酸の反応混合物に脱イオン水を付加して希釈した後、これを遠心分離することができる。前記遠心分離の条件は特に制限されず、例えば、4,000~10,000rpmの遠心分離速度で10分~30分間行うことができる。
【0038】
次に、前記遠心分離された結果をろ過した後、脱イオン水を用いて洗浄を行うことができる。また、前記洗浄された結果物を90℃~100℃の温度で乾燥させることにより、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブを得ることができる。
【0039】
本発明の一実施例に係る前記方法により製造された酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、下記の反応式1のとおりである。
【化1】
【0040】
本発明では、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブを分離膜(5)のコーティング層に適用し、正極(3)の硫黄と負極(1)のリチウムとの反応により発生するリチウムポリスルフィドを吸着し、このシャトル効果(Shuttle effect)によって発生する負極(1)の表面における副反応、一例として、リチウム金属と反応して界面にLiSの高抵抗層を形成するか、または電極界面に析出されるなどの問題を解消し、電池のクーロン効率(Coulomb efficiency)とサイクル安定性を向上させることができる。
【0041】
なお、前記リチウムポリスルフィドを分離膜(5)のコーティング層に拘束し、リチウムポリスルフィドの負極(1)への拡散移動を抑制し、従来のリチウムポリスルフィドによって発生する硫黄の容量減少(capacity loss)の問題を解決し、大容量の電池具現が可能であり、硫黄を高ローディングしても安全な具現が可能である。なお、リチウムポリスルフィドを拘束することにより、正極(3)の電気化学反応の領域から離脱することを最小化する。
【0042】
また、本発明の一実施例に係る酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、酸素原子を全体炭素ナノチューブ対比0.5~30%含んでもよく、好ましくは1~20%含んでもよく、最も好ましくは2~15%含んでもよい。
【0043】
もし、酸素原子の組成の前記範囲未満である場合には、リチウムポリスルフィドの吸着能力が低下することがあり、前記範囲を超える場合には、これをリチウム-硫黄電池の分離膜に適用したとき、高ローディング電極で電池の性能向上の効果が少ないので、前記範囲内で適切に調節する。
【0044】
前記のような効果を有する酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、リチウムポリスルフィドによる問題を解消したとしても、実際分離膜(5)に適用時、リチウムイオン伝達速度が遅くなる新しい問題が発生した。
【0045】
言い換えれば、液体電解質を用いる場合、分離膜(5)は、前記液体電解質に十分に含浸された(濡れている)形態で存在すれば、リチウムイオンが前記分離膜(5)を通過して正極(3)と負極(1)に移送される。
【0046】
そこで、本発明では、前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブの単独使用により引き起こされる問題を解消するために、リチウムイオン伝導性高分子と混合して用いる。
【0047】
炭素ナノチューブと混合して用いるためには、前記炭素ナノチューブにより得られるリチウムポリスルフィドの吸着に影響を与えることなく、リチウムイオンの拡散経路の確保を容易にするとともに、リチウムイオン伝導度を高めることができる物質を選定しなければならない。
【0048】
本発明の一実施例に係る前記リチウムイオン伝導性高分子は、ポリウレタン(polyurethane)、リチウム置換されたナフィオン(登録商標)(lithiated Nafion)、ポリエチレンオキシド(Polyethylene oxide)、ポリプロピレンオキサイド(Polypropylene oxide)、ポリシロキサン(Polysiloxane)、ポリスチレン(polystyrene)及びポリエチレングリコール(polyethylene glycol)からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。この中でも、本発明において、好ましくはリチウム置換されたナフィオン(Lithiated Nafion)ポリマーを用いることができる。
【0049】
本発明の一実施例によるリチウム置換されたナフィオン(Lithiated Nafion)ポリマーとは、スルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素重合体の共重合体であるNafion(商品名、Du Pont社)にリチウムイオンを含む形態の高分子で、下記のような化学式構造において、スルホン酸基のプロトンの代わりにLiイオンを含む形態を意味する。
【0050】
【化2】
【0051】
このように、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子を混合して用いることにより、リチウムイオンが伝達される経路を容易に確保するだけでなく、これにより、リチウムイオン伝達が容易で、従来の炭素ナノチューブを単独で用いる場合に発生する問題を十分に解消することができる。
【0052】
なお、本発明に係るコーティング層の材料として用いる酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子は、親水性を有し、本発明の炭素ナノチューブは、酸処理工程で炭素ナノチューブに酸素含有官能基を導入することができるので、電解液として親水性溶媒を用いる場合、高い濡れ性(wettability)を有し、リチウムイオンをリチウム金属層側へ効果的に伝達する。これにより、負極へ均一にリチウムイオンを伝達することができる。その結果、リチウムイオンの伝達が効果的に起きるようになり、電池が短絡することなく優れた電池特性を有し、コーティング層の形成にも抵抗が上昇することなく優れた充放電特性を有する。
【0053】
前記効果を十分に確保するために、本発明に係るコーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子の含有量比、コーティング層の厚さを限定する。
【0054】
具体的に、前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ:リチウムイオン伝導性高分子が1:5~1:20の重量比、好ましくは1:10~1:15の重量比で混合する。もし、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブの含有量が少量である場合(又はリチウムイオン伝導性高分子の含有量が過剰な場合)、リチウムポリスルフィドにより引き起こされる問題を十分に解消することができない。逆に、リチウムイオン伝導性高分子の含有量が少量である場合(又は酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブの含有量が過剰な場合)、電解液の透過が困難な問題がある。
【0055】
また、コーティング層の厚さは前記効果を確保しながらも、電池の内部抵抗を上げない範囲を有し、100nm~20μmであってもよい。好ましくは200nm~10μm、更に好ましくは0.4μm~5μmの厚さであってもよい。もし、その厚さが前記範囲未満であればコーティング層としての機能を行うことができず、逆に、前記範囲を超えると安定した界面特性を付与することができるが、初期界面抵抗が高くなり、電池製造時に内部抵抗の増加を招くことがある。
【0056】
前記コーティング層は、すでに述べたように、分離膜(5)の一面又は両面に形成が可能であり、リチウムポリスルフィドの吸着効果を高めるために、正極(3)に対向するように形成することができる。
【0057】
本発明において提示する分離膜(5)の製造方法は、本発明において特に限定せず、通常の技術者によって公知の方法又はこれを変形する様々な方法が使用可能である。
【0058】
一つの方法として、溶媒に酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子を含むコーティング液を製造した後、これを多孔性基材の少なくとも一面にコーティングした後、乾燥する段階を経て行う。
【0059】
また他の方法として、前記コーティング液を基板上にコーティングした後、乾燥してコーティング層を製造し、これを多孔性基材に転写または合紙して分離膜(5)を製造することができる。
【0060】
前記溶媒は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子を十分に分散させることができるものであればどんなものでも可能である。一例として、前記溶媒は水とアルコールの混合溶媒、または1つ若しくはそれ以上の有機溶媒の混合物であってもよく、この場合、前記アルコールは炭素数1~6の低級アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどであってもよい。有機溶媒としては、酢酸、DMFO(dimethyl-formamide)、DMSO(dimethyl sulfoxide)などの極性溶媒、アセトニトリル、エチルアセテート、メチルアセテート、フルオロアルカン、ペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、デカン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジイソブチレン、1-ペンテン、1-クロロブタン、1-クロロペンタン、o-キシレン、ジイソプロピルエーテル、2-クロロプロパン、トルエン、1-クロロプロパン、クロロベンゼン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジエチルスルフィド、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アニリン、ジエチルアミン、エーテル、四塩化炭素、及びTHF(Tetrahydrofuran)などの非極性溶媒を用いることもできる。好ましくは、水又は水と低級アルコールとの混合溶媒を用いることができる。
【0061】
前記溶媒の含有量は、コーティングを容易にすることができる程度の濃度を有する水準で含有してもよく、具体的な含有量は、コーティング方法及び装置によって異なる。一例として、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子のそれぞれを溶液に分散させた後、これを混合してコーティング液を製造することができ、このとき、最終コーティング液の濃度が0.001~30重量%(固形分含有量)の範囲になるように調節した後、コーティングを行う。
【0062】
本発明の一実施例によれば、前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、5~100μg/cmでコーティングされてもよく、好ましくは5~40μg/cmであってもよく、最も好ましくは5~20μg/cmであってもよい。
【0063】
もし、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブのコーティング量が前記範囲未満である場合には、リチウムポリスルフィドの吸着能力が低下することがあり、前記範囲を超える場合には、リチウムイオン伝導度が低くなるか、又は電解液の透過が困難な欠点があるので、前記範囲で適切に選択する。
【0064】
転写などの方法を利用する場合、分離可能な基板、すなわち、ガラス基板又はプラスチック基板であってもよい。このとき、プラスチック基板は、本発明において特に限定せず、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリシラザン、ポリエチレン、ポリカルボシラン、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリルレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチルアクリレート、サイクリックオレフィンコポリマー、ポリエチル(メタ)アクリレート、サイクリックオレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、パーフルオロアルキル高分子などが可能である。
【0065】
必要な場合、コーティングのために製造されたコーティング液は、均一な分散のために超音波を印加することができる。超音波で粉砕する段階を更に含むようになれば、溶液内の酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子の分散性を向上させることができ、より均一な特性を有するコーティング層の製造を可能にする。
【0066】
本段階でのコーティングは特に限定せず、公知のウェットコーティング方式であれば何でも可能である。一例として、ドクターブレード(Doctor blade)などを用いて均一に分散させる方法、ダイカスト(Die casting)、コンマコーティング(Comma casting)、シルクスクリーン(Screen printing)、減圧濾過コーティング(vacuum filtration casting)などの方法などが挙げられる。
【0067】
続いて、コーティング後に溶媒除去のための乾燥工程を行う。前記乾燥工程は、溶媒を十分に除去することができる水準の温度及び時間で行い、その条件は、溶媒の種類によって異なる場合があるので、本発明では特に言及しない。一例として、乾燥は、30~200℃の真空オーブンで行うことができ、乾燥方法としては、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥などの乾燥法を使用することができる。乾燥時間については特に限定されないが、通常、30秒~24時間の範囲で行われる。
【0068】
本発明に係るコーティング液の濃度、またはコーティング回数などを調節して、最終的にコーティングされるコーティング層のコーティング厚さを調節することができる。
【0069】
さらに、本発明に係るコーティング層は、リチウムイオン伝達をより円滑に行うために、リチウム塩を更に含む。
【0070】
リチウム塩としては、本発明において特に限定せず、公知のリチウム-硫黄電池に使用可能なものであればどんなものでも可能である。具体的に、前記リチウム塩としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、LiSCN、LiC(CFSO、(CFSONLi、(FSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルリチウムボレート、リチウムイミドなどを用いることができ、好ましくは(CFSONLiで表されるLiTFSI(Lithium bis(trifluoromethane sulfonyl)imide)、(FSONLiで表されるLiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imideが可能である。
【0071】
このようなイオン伝導性高分子及びリチウム塩は、コーティング層の組成100重量%内から10重量%以下で用いることが好ましい。
【0072】
前述したコーティング層を備えた分離膜(5)は、図1に示したリチウム-硫黄電池に好適に適用可能である。
【0073】
このようなリチウム-硫黄電池は、リチウムポリスルフィドによって引き起こされる問題を解消し、リチウム-硫黄電池の容量低下の問題及び寿命低下の問題を改善し、高容量及び高ローディング電極の具現が可能であるだけでなく、寿命特性を改善し、爆発及び火災の可能性がないため、高い安定性を有するリチウム-硫黄電池として適用が可能である。
【0074】
前記リチウム-硫黄電池において提示する正極、負極及び電解質に関する説明は下記の通りである。
正極は、正極集電体上に正極活物質が積層された形態を有する。
【0075】
正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。
【0076】
正極活物質として、硫黄元素(elemental Sulfur、S)、硫黄系化合物又はこれらの混合物を含んでもよく、これらは硫黄物質単独としては電気伝導性がないため、導電材と複合して適用する。前記硫黄系化合物は具体的に、LiSn(n=1)、有機硫黄化合物又は炭素-硫黄ポリマー((Cn:x=2.5~50、n=2)などであってもよい。
【0077】
前記導電材は、電極活物質の導電性を更に向上させるために用いる。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などを用いることができる。
【0078】
前記正極は、正極活物質と導電材との結合と集電体に対する結合のためにバインダーを更に含むことができる。前記バインダーは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含むことができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン- テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体などを単独又は混合して用いることができるが、必ずこれらに限定されず、当該技術分野においてバインダーとして用いることができるものであればいずれも可能である。
【0079】
前記のような正極は、通常の方法によって製造することができ、具体的には、正極活物質と導電材及びバインダーを有機溶媒または水上で混合して製造した正極活物質層の形成用組成物を集電体上に塗布及び乾燥し、選択的に電極密度の向上のために、集電体に圧縮成形して製造することができる。このとき、前記有機溶媒としては、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発するものを用いることが好ましい。具体的には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコールなどが挙がられる。
【0080】
負極は、負極集電体上に負極活物質が積層された形態を有する。必要な場合、前記負極集電体は省略が可能である。
【0081】
このとき、負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、その形態は、表面に微細な凹凸が形成された/未形成のフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態を用いることができる。
【0082】
リチウム金属層は、リチウム金属又はリチウム合金であってもよい。このとき、リチウム合金は、リチウムと合金化が可能な元素を含み、このとき、その元素としては、Si、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zr、Ba、Ra、Ge、Al、Co又はこれらの合金であってもよい。
【0083】
前記リチウム金属層は、シート又は箔であってもよく、場合によっては集電体上にリチウム金属又はリチウム合金が乾式工程により蒸着又はコーティングされた形態であるか、または粒子上の金属及び合金が湿式工程などにより蒸着又はコーティングされた形態であってもよい。
【0084】
前記リチウム二次電池の電解液はリチウム塩含有電解液で、水系又は非水系電解液であってもよく、好ましくは、有機溶媒電解液とリチウム塩からなる非水系電解質である。その他に、有機固体電解質又は無機固体電解質などが含まれることができるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
非水系有機溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル系、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非フロント性有機溶媒を用いることができる。
【0086】
このとき、非水系溶媒として、本発明の電極と類似するようにエーテル系溶媒を用い、その例としては、テトラヒドロフラン、エチレンオキサイド、1,3-ジオキソラン、3,5-ジメチルイソキサゾール、2,5-ジメチルフラン、フラン、2-メチルフラン、1,4-オキサン、4-メチルジオキソランなどが用いられる。
【0087】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質によく溶解される物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、LiSCN、LiC(CFSO、(CFSONLi、(FSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミドなどを用いることができる。
【0088】
前述したリチウム-硫黄電池(10)の形態は特に制限されず、例えば、ゼリー -ロール型、スタック型、スタック-フォールディング型(スタック-Z-フォールディング型を含む)、又はラミネート-スタック型であってもよく、好ましくは、スタック-フォールディングであってもよい。
【0089】
このような前記正極(3)、分離膜(5)、及び負極(1)が順次積層された電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れた後、ケースの上部に電解液を注入し、キャッププレート及びガスケットで封止して組み立てて、リチウム-硫黄電池(10)を製造する。
【0090】
前記リチウム-硫黄電池(10)は形態によって筒型、角型、コイン型、ポーチ型などに分類することができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これら電池の構造と製造方法はこの分野において広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0091】
本発明に係るリチウム-硫黄電池(10)は高容量と高ローディング電池で、このような特性が要求されるデバイスの電源として用いることができる。前記デバイスの具体的な例としては、電池的モーターにより動力を受けて動くパワーツール(Power tool);電気自動車(Electric vehicle;EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle;HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle;PHEV)などを含む電気自動車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例、比較例及び実験例を記載する。ただし、下記記載は本発明の内容及び効果に関する一例に該当するだけで、本発明の権利範囲及び効果がこれに限定されるものではない。
【0093】
[実施例]
実施例1
(1)分離膜の製造
多孔性基材として、厚さ20μmのポリエチレン(気孔度50%)フィルムを準備した。
【0094】
カルボキシ基が導入された炭素ナノチューブ(炭素ナノチューブ内の酸素原子の含有量は4~5%)水分散液(0.002重量%の濃度)とリチウム置換されたナフィオン(Lithiated Nafion)(Du Pont社)水分散液(0.25mg/mL濃度)を混合した後、超音波を8時間印加してコーティング液を製造した(炭素ナノチューブ:リチウム置換されたナフィオン=1:12.5重量比)。
【0095】
前記多孔性基材上に前記コーティング液を入れた後、減圧濾過し、多孔性基材の正極に対向する面に10μg/cmでコーティング層を形成し、70℃で24時間乾燥して分離膜を製造した。このとき、前記コーティング層は厚さが約3.1±0.5μmと測定された。
【0096】
(2)リチウム-硫黄電池
電気伝導性を有している導電性炭素と硫黄を導電性炭素:硫黄の重量比(wt%)30:70(21g:49g)でボールミル工程により混合し、硫黄-炭素複合体を得た。正極活物質スラリー全体の重量に対し、前記複合体を含む正極活物質70.0g、導電材としてSuper-P 20.0g、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド10.0g及び溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン500gの組成で正極活物質スラリーを製造した後、アルミニウム集電体上にコーティングして正極活性部を製造した。
【0097】
前記正極とともに、負極として約40μmの厚さを有するリチウム箔を用い、電解液として1M濃度のLiN(CFSOが溶解されたジメトキシエタン:ジオキソラン(1:1の体積比)の混合液を用い、前記分離膜を用いてリチウム-硫黄電池を製造した。
【0098】
実施例2
ヒドロキシ基(-OH)が導入された炭素ナノチューブを用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行って、リチウム-硫黄電池を製造した。
【0099】
比較例1
炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子がコーティングされないポリエチレンを分離膜として用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行って、リチウム-硫黄電池を製造した。
【0100】
比較例2
酸素含有官能基が導入されない炭素ナノチューブを用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行って、リチウム-硫黄電池を製造した。
【0101】
実験例1
前記実施例及び比較例で製造されたリチウム-硫黄電池を0.3C/0.5C充電/放電にて条件下で駆動し、初期充放電容量を測定し、リチウム-硫黄電池の容量変化を確認した。
【0102】
図2は、実施例1及び2、比較例1で製造されたリチウム-硫黄電池の初期充放電容量を示すグラフである。図2を参照すると、本発明に基づいてコーティング層を有する実施例1及び2の電池が、これを備えていない比較例1の電池に比べて高い初期放電容量を有することが分かる。
【0103】
図3は、実施例1及び2、比較例1で製造されたリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。図3を参照すると、実施例1及び2の電池の場合、初期充放電に比べて高い容量維持率を示し、容量改善効果が現れ、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子を含まない比較例1の電池に比べて寿命特性が優れていることが分かる。
【0104】
図4は、実施例1及び比較例2で製造されたリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。図4を参照すると、実施例1の電池の場合、初期充放電に比べて高い容量維持率を示し、容量改善効果が現れ、酸素含有官能基を含まない炭素ナノチューブを適用した比較例2の電池に比べて寿命特性が優れていることが分かる。
【0105】
このような結果から、本発明において提示するコーティング層によりリチウム-硫黄電池の駆動時に、リチウムポリスルフィドを吸着し、高い初期充放電容量の特性及び優れた寿命特性を確保することができることが分かる。
【符号の説明】
【0106】
10:リチウム二次電池 1:負極
3:正極 5:分離膜
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一面に形成されたコーティング層とを含み、
前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブとリチウムイオン伝導性高分子とを含み、
前記リチウムイオン伝導性高分子は、リチウム置換されたスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素重合体(ナフィオン)であり、
前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子が1:5~1:20の重量比で混合されたことを特徴とするリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項2】
前記酸素含有官能基は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基及びアミド基からなる群より選ばれるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項3】
前記多孔性基材は厚さが3μm~100μmであり、気孔の大きさが0.01μm~10μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項4】
前記多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ナイロン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、及びポリアリレートからなる群より選ばれる1種以上の材質を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項5】
前記コーティング層は、酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブ及びリチウムイオン伝導性高分子が1:10~1:15の重量比で混合されたことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項6】
前記コーティング層は、厚さが100nm~20μmであることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項7】
前記コーティング層は、厚さが200nm~10μmであることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項8】
前記コーティング層は、厚さが0.4μm~5μmであることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項9】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、5~100μg/cmでコーティングされることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項10】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、5~40μg/cmでコーティングされることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項11】
前記酸素含有官能基を含む炭素ナノチューブは、5~20μg/cmでコーティングされることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項12】
前記コーティング層は、リチウム-硫黄電池の正極に対向するように形成されたことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用分離膜。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の分離膜を含むことを特徴とする、リチウム-硫黄電池。
【外国語明細書】