(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159475
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】医学的治療における使用のための3-β-ヒドロキシ-5-α-プレグナン-20-オン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/57 20060101AFI20221006BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20221006BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20221006BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20221006BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K31/57
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/30
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130080
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2019540059の分割
【原出願日】2018-02-09
(31)【優先権主張番号】1750125-5
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】1751222-9
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】519196690
【氏名又は名称】アサリナ ファーマ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベックストローム,トルブジョルン
(57)【要約】
【課題】医学的治療における使用のための3-β-ヒドロキシ-5-α-プレグナン-20-オンに関する。
【解決手段】本発明は、トゥーレット症状群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の治療における使用のためのステロイド化合物3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンに加えて、前記障害を治療する方法、ならびに前記障害の治療における使用のための医薬組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の治療における使用のための、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン。
【請求項2】
トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の治療において有用な医薬品の調製における、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの使用。
【請求項3】
薬学的有効量の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンをそれを必要とする患者へ投与することを含む、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害を治療、予防、または緩和する方法。
【請求項4】
前記障害がトゥレット症候群である、請求項1に記載の使用のための3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン。
【請求項5】
前記障害が強迫性障害である、請求項1に記載の使用のための3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン。
【請求項6】
前記障害がギャンブル障害である、請求項1に記載の使用のための3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン。
【請求項7】
前記使用がトゥレット症候群の治療のためのものである、請求項2に記載の使用。
【請求項8】
前記使用が強迫性障害の治療のためのものである、請求項2に記載の使用。
【請求項9】
前記使用がギャンブル障害の治療のためのものである、請求項2に記載の使用。
【請求項10】
前記障害がトゥレット症候群である、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記障害が強迫性障害である、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記障害がギャンブル障害である、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)(シタロプラム、エシタロプラム(ecitalopram)、フルオキセチン、セルトラリンおよびフルボキサミンを包含する);5α-レデュカーゼ(reducase)ブロッカー(フィナステライドまたはデュタステライド包含する);定型および非定型神経弛緩薬(リスペルドン(risperdone)、ジプラシドン、ハロペリドール、ピモジドおよびフルフェナジンを包含する);降圧剤(クロニジン、グアンファシン、三環系抗鬱薬、クロミプラミンおよびオピオイドアンタゴニストを包含する)から選択される、少なくとも1つの活性化合物と組み合わせた、請求項1、4および6のいずれか一項に記載の使用のための、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン。
【請求項14】
セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)(シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリンおよびフルボキサミンを包含する);5α-レデュカーゼブロッカー(フィナステライドまたはデュタステライド包含する);定型および非定型神経弛緩薬(リスペルドン、ジプラシドン、ハロペリドール、ピモジドおよびフルフェナジンを包含する);降圧剤(クロニジン、グアンファシン、三環系抗鬱薬、クロミプラミンおよびオピオイドアンタゴニストを包含する)から選択される、少なくとも1つの活性化合物と組み合わせた、請求項2、7、8および9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)(シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリンおよびフルボキサミンを包含する);5α-レデュカーゼブロッカー(フィナステライドまたはデュタステライド包含する);定型および非定型神経弛緩薬(リスペルドン、ジプラシドン、ハロペリドール、ピモジドおよびフルフェナジンを包含する);降圧剤(クロニジン、グアンファシン、三環系抗鬱薬、クロミプラミンおよびオピオイドアンタゴニストを包含する)から選択される、少なくとも1つの活性化合物と組み合わせた、請求項3、10、11および12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1、4、5、6および13のいずれか一項に記載の使用のための、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈物質と一緒に、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トゥレット症候群(Tourette’s syndrome)、強迫性障害および/またはギャンブル障害の治療における使用のためのステロイド化合物3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンに加えて、前記障害を治療する方法、ならびに前記障害の治療における使用のための医薬組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
トゥレット症候群(Tourette’s syndrome)またはトゥレット症候群(Tourette syndrome)(TS)は、複数の不随意運動(運動チック)および1つまたは複数の声(音声)チックの有る、再発する運動チックおよび音声チックによって特徴づけられる神経発生障害である。それは、世界中の小児の最大1パーセントに影響し、その約3分の1は成体期への症状の継続を経験する。TSの病因は、神経伝達物質(中でもγ-アミノ酪酸(GABA)、ドーパミンおよびグルタメート)のシグナリングにおける調節異常(それは皮質-線条体-視床-皮質回路(CST)における興奮/抑制の不均衡を導く)を反映すると考えられる。GABAA経路はCSTの複数の層中でドーパミンシグナリングと相互作用し、ドーパミンおよびGABAの両方が抑制性であるので、これは、TSの病因であると考えられる脱抑制を引き起こし得る。ドーパミンは線条体中でGABAを放出させることが公知である。これらの欠乏の原因は、複合遺伝子×環境×性別の相互作用を反映する。視床中で高度に発現されるGABAA受容体サブタイプは、α4、β、δサブタイプである。このサブタイプは、GABAA受容体調節ステロイド(例えばアロプレグナノロン)に高度に感受性があることが公知である。障害は、4:1の比で男性においてより多く見られる。チックが、CST連結における興奮/抑制の不均衡に起因する、基底核中の異所性焦点の活性化の表現型の相関現象であることを示唆する証拠がある。顕著なことに、ストレスステロイドの高い産生を伴う心理社会的ストレスへの曝露がTS病因の症状の重要なエンハンサーとして強調され、ストレス関連の神経活性ステロイドの関与が示される。特に、男性および女性の両方において存在するアンドロゲン代謝物質(アンドロスタン)およびプロゲステロン代謝物質(プレグナン)は、TS患者における悪化したチックで臨床的に観察される。
【0003】
強迫性障害(OCD)とは、ある人が物事を反復してチェックする必要性を感じるか、ある特定の「儀式」を遂行するか、またはある特定の思考を反復して有する、精神障害である。OCDの有る人は、思考または行為のいずれかを短時間でしか制御することができない。よく見られる行為としては、手を洗浄すること、物事を数えること、およびドアがロックされているかどうかを見るためにチェックすることが挙げられる。行為が頻繁に起こるので、人の日々の人生はネガティブな影響を受ける。大部分の成人は、行動に意味がないことを分かっている。病態は、チック、不安障害、および自殺のリスクの増加と関連する。OCDは遺伝的要素を包含する。リスクファクターとしては、ストレス誘導事象、児童虐待歴、または感染性疾患が挙げられる。
【0004】
治療は、カウンセリング(認知行動療法(CBT)等)および時には医薬物(典型的には選択的セロトニン再吸収阻害物質(SSRI))を包含する。しかしながら、症状は適切な治療経過の後でさえ中等度のレベルで存続し、完全に症状の無い期間は稀である。治療無しでは、病態は多くの場合数十年間続く。ある年の間のOCD率はおよそ1.2%であり、疾患は世界中で起こる。OCDは、人生のある時点で人々のおよそ2.3%に影響を与えるものである。半数の人は20歳前に症状を発症し、男性および女性はほぼ同等に影響を受ける。
【0005】
機能的神経イメージング研究は、OCDの病態生理に特異的な前頭皮質-皮質下脳回路に沿った異常な機能が関与するという強い証拠を提供して、OCDの神経生物学のより高い理解を導いた。OCDの病因の機構についての現在認められている推測は、皮質-線条体-視床-皮質回路(CST)において(特に眼窩前頭皮質(OFC)、前帯状皮質(ACC)、線条体、視神経床、および回路の他の部分において)存在する機能不全がOCDの病因について重要であると主張するものである。視床中で高度に発現されるGABAA受容体サブタイプは、α4、β、δサブタイプである。このサブタイプは、GABAA受容体調節ステロイド(例えばアロプレグナノロン)に高度に感受性があることが公知である。症状は、神経伝達物質(中でもγ-アミノ酪酸(GABA)、ドーパミンおよびグルタメート)のシグナリングにおける調節異常(それは皮質-線条体-視床-皮質回路(CST)における興奮/抑制の不均衡を導く)を反映すると考えられる。GABAA経路はCSTの複数の層中でドーパミンシグナリングと相互作用し、ドーパミンおよびGABAの両方が抑制性であるので、これは、病因であると考えられる脱抑制を引き起こし得る。GABA-A受容体調節ステロイドは、次いで、セロトニンおよびドーパミン(OCDの病態生理学に関与する神経伝達物質)に影響を及ぼすGABA作動性経路を調節することが報告されている。研究から、神経ステロイドは、双方向性に強迫行動を調節することができ、OCDの管理における有効な標的となり得ることが指摘される。
【0006】
ギャンブル障害(GD)(以前は病的ギャンブルと称された)は、OCDに類似する障害であるが、DSM-5における乱用障害「薬物関連障害および嗜癖性障害群」との類似性も共有する。ギャンブル障害、問題ギャンブル、ギャンブル中毒または強迫的ギャンブルは、有害なネガティブな帰結があるかまたは止めることを要望するにもかかわらず、継続的にギャンブルしてしまう衝動のことである。問題ギャンブルは、ギャンブラーの行動によってではなく、ギャンブラーまたは他人に危害が経験されるかどうかによって、多くの場合定義される。ギャンブラーがある特定の基準を満たせば、重症の問題ギャンブルは臨床的なギャンブル障害と診断され得る。ギャンブル障害は、社会的費用および家庭費用の両方と関連するよくみられる障害である。罹患者が薬物中毒を有するものと多くの類似性を示すので、DSM-5は、嗜癖性障害として病態を再分類した。「ギャンブル中毒」という用語は、リカバリー運動において長く使用されてきた。病的ギャンブルは、American Psychiatric Associationによって中毒ではなくむしろ衝動調節障害と長く判断された。DSM-5は、それ以来「ギャンブル障害」として病的ギャンブルを分類し直し、衝動調節障害ではなく薬物関連障害および嗜癖性障害群に障害をリストした。これは中毒に似ている障害の総合的症状のためである。ギャンブラーに影響を及ぼしいくつかのタイプの中毒を引き起こし得る、環境因子および遺伝的因子の両方がある。しかしながら、最も有効であると判断される具体的な治療はなく、U.S.Food and Drug Administration(FDA)によって承認されたギャンブル障害の治療のための医薬物はない。米国において、2008年において、病的ギャンブラーのパーセンテージは0.6パーセントであり、問題ギャンブラーのパーセンテージは2.3パーセントであった。
【0007】
衝動は嗜癖行動への確立された前兆であり、GDはより高い衝動と関連する。中毒および衝動におけるGABA作動性調節異常の証拠もある。健康なボランティア(HV)に比較したGDにおけるGABAA受容体利用可能性は、GD個体の右側海馬において、HVと比較して、有意により高いGABAA受容体利用可能性を示す。GDにおける「切迫した衝動」とGD群における扁桃体中のGABAA受容体利用可能性の正の関連があるが、対照群においてはない。これらの結果は、ギャンブル障害におけるGABA作動性調節異常を示し、治療のための可能性のある標的である。
【0008】
ヒト脳における主要な抑制性神経伝達物質として、衝動におけるGABA作動性機能の役割は、その関与を支持する前臨床証拠が増加しており、注目を集めている。例えば、ラットの前頭前皮質におけるGABAアゴニストおよびGABAアンタゴニストは、反応時間課題における衝動的応答をそれぞれ増加および低減した。より高いGABAA受容体利用可能性(それは増加したGABAA受容体発現のためだろう)は、GDの有る個体の海馬において見出される。加えて、GABAA受容体結合能力は、衝動に正に関連する。GABA調節薬物(ベンゾジアゼピン等)による薬理学的挑戦からの証拠は、GABA作動性神経伝達の増加が衝動と関連することを示唆する。GABAA受容体の正の調節物質(アロプレグナノロン)は、両方の性別の齧歯動物において、危険をいとわない攻撃的な行動を増加させることが示された。
【0009】
GABAA受容体調節ステロイドは、性ホルモンおよびストレスホルモンのプレグネノロン、プロゲステロン、デオキシコルチコステロン、コルチゾンおよびコルチゾールの代謝物質(プレグナノロンとして公知)に加えて、テストステロン、アンドロスタンジオンおよびデヒドロエピアンドロステロンの代謝物質(アンドロスタンとして公知)であり、すべては様々な研究の主題であり、哺乳動物における神経のシグナル系におけるそれらの役割は少なくとも部分的に解明されている。本出願中で対象となるCNSの症状および障害を誘導する有害なステロイドはすべて、3α-ヒドロキシ基、Δ4-プレグネンステロイド体または5αプレグナンステロイド体もしく5βプレグナンステロイド体、および17、20または21位にケトン基またはヒドロキシ基を含むという点で、構造類似性を有する。
【0010】
3α-ヒドロキシ-5α/β-プレグナン/Δ4-プレグネン-20-オン/オールまたは3α-ヒドロキシ-5α/β-アンドロスタン/Δ4-アンドロステン-17-オン/オールを含むステロイドは、GABAA受容体の重要な特異的促進物質であることが示された。それらはGABAA受容体へ結合し、GABAA受容体開口継続時間を長くする点からGABAの効果を促進することによって作用する。受容体は脳の異なる領域に所在する複数のサブタイプであり、異なるCNSの障害および症状に関連する。加えて、他のものがシナプスの外側(シナプス外)に所在しているが、いくつかの受容体はシナプスの内部(シナプス内)に局在化する。GABAA受容体調節ステロイドは、それ自体によって生理的濃度においてシナプス外GABAA受容体単独を開口(持続性抑制)できるが、シナプス内受容体を開口(一過性抑制)できない。これらの2つのタイプの効果は異なる機構およびGABAA受容体上の結合部位に依存し、加えて効果は受容体のサブユニット構成に依存する。受容体サブタイプα4、β、δは、3α-ヒドロキシ-5α/β-プレグナン-20-オン/オールおよび3α-ヒドロキシ-5α/β-アンドロスタン-17-オン/オールの持続性効果および一過性効果の両方が有るシナプス外サブタイプである。両方の結合部位に作用するかまたは機構のうちの1つをのみ抑制する特異的なGABAA調節ステロイドアンタゴニストは、現在、当業者の中で公知ではない。3α-ヒドロキシ-5α/β-プレグナン-20-オン/オールまたは3α-ヒドロキシ-5α/β-アンドロスタン-17-オン/オールの効果は、ベンゾジアゼピンおよびバルビツレートの両方の効果に類似し、すなわち、それらはすべてGABAA受容体の正の調節物質である。しかしながら、前記ステロイド化合物はこれらの両方の化合物のものとは別の結合部位を有する。
【0011】
TS、OCDおよびGDにおける行動症状の重症度は、心理社会的ストレスによって悪化する。臨床観察から、TS患者におけるチックがタンパク同化アンドロゲンによって悪化することが示された。女性において、GABAA受容体調節プレグナンステロイドが高い場合に、チックは黄体期の間の増加する。ホルモンアンドロゲン受容体ブロッカーのフルタミドによる治療は、運動チック重症度の非常に緩やかな(7%)寛解をもたらしたが、有意な効果は音声チックに対して観察されず、ホルモン受容体経由のホルモン効果があまり重要でないことを示唆する。このことは、ストレスステロイドおよび性ステロイド(プレグナンおよびアンドロスタン)による効果が古典的ホルモン受容体経由で媒介されないことを示唆する。ストレスステロイドホルモンおよび性ステロイドホルモンが代謝されて、GABAA受容体の正の調節物質である3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイドを形成する。3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイドの合成は脳において起こり、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン神経ステロイドおよび3α-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン神経ステロイドの合成を触媒する1つの重要な律速酵素は、5-αレダクターゼである。5-αレダクターゼ酵素がブロックされるならば、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン神経ステロイドおよび3α-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン神経ステロイドは形成されない。5-αレダクターゼブロッカーのフィナステライドを使用する予備的研究は、12~18週間の期間にわたってチック(tick)の低減を示した。
【0012】
Prince and Simmons(Neuropharmacology,vol.32,no.1,pp.59-63,1993)は、オスラット全脳の膜画分に依存するモデルを使用した。全脳ホモジネートのこのサブ画分において、この著者らは、ステロイド効果およびGABAA受容体立体配座の変化についてのモデルとしてベンゾジアゼピン(3H-フルニトラゼパム)の結合を使用した。この試験から、GABAA受容体のアロステリック調節の指標であることが示唆された。これは非常に一般的な分析方法であり、サブユニット構成に依存する特異性、シナプス内もしくはシナプス外の効果または異なるGABAA調節ステロイドを考慮しない。しかしながら、フルニトラゼパム(FNZ)結合における変化とGABA刺激でのクロライドフローにおける変化との間の関係性は不明であり、結合における変化は、GABA受容体を介するクロライドフローにおける変化の証明としても、GABAA受容体機能における変化の証明としても見なすことができない。FNZ結合と神経興奮性における変化との間の関係性の存在はさらに明瞭ではなく、かかる結論は、FNZ結合単独についての結果から引き出すことができない。FNZ結合特性における変化または結合特性におけるかかる変化の非存在は、神経活性またはGABAA媒介性クロライドフローにおける変化または変化の非存在を示唆しない。
【0013】
GABAA受容体が、複数の手法において組み合わせられ得る複数のサブユニットを含有することも公知である。興味深いことには、ある特定の組み合わせは、ステロイド認識部位を欠損する。痙攣性物質TBPS(t-ブチルビシクロ-ホスホロチオネート)の結合に対するステロイドの効果が、異なる脳領域中で異なることも公知である。さらに、TBPSの結合がメスラットにおける発情サイクルにより変動し、効果変化は性ステロイドホルモン産生に関連することが指摘されることが公知である。
【0014】
U.S.5,232,917およびU.S.5,939,545は、多くの3α-ヒドロキシステロイドを開示する。これらの開示は、GABAA受容体のアゴニスト性調節を扱う。換言すれば、両方の本開示は、3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイドのベンゾジアゼピン様効果に注目する。GABAA受容体の正の調節物質であるすべてのステロイドは、3α-ヒドロキシ構造の共通の特色を有する。3β-ヒドロキシ構造のみを備えたステロイドは、GABAA受容体の正の調節効果を保持することは今までに示されていない。有効なGABAA受容体調節効果が指摘されるすべての事例において、ステロイドは3α-ヒドロキシ基を有する。
【0015】
WO99/45931はGABAA調節ステロイドアンタゴニスト(すなわち3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン)を開示するが、異なる受容体サブタイプ(例えばα4、β、δサブタイプ)における効果に言及せず、シナプス内受容体またはシナプス外受容体における一過性または持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイド活性に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果を記載しない。
【0016】
3α-ヒドロキシ-5α/β-プレグナン-20-オンに対抗する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンのGABAA調節ステロイドアンタゴニスト効果は、Wang et al.(Wang M.D.,Backstrom T.and Landgren S.(2000)Acta Physiol Scand 169,333-341)によって、最初に開示された。その開示において、3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイドの2つに対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの用量依存性アンタゴニスト効果が示された。この文書は、アンドロゲン性のGABAA受容体調節ステロイドによって引き起こされた障害に対抗する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性、およびα4、β、δの活性化されたGABAA受容体での抑制物質として3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性を言及せず、シナプス内受容体またはシナプス外受容体における一過性または持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイド活性に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果を開示しない。
【0017】
WO03/059357は、CNSの障害の治療における、ある特定のプレグナンステロイドの使用を開示する。この文書は、アンドロゲン性のGABAA受容体調節ステロイドによって引き起こされた障害に対抗する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性、およびα4、β、δの活性化されたGABAA受容体での抑制物質として3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性を言及せず、シナプス内受容体またはシナプス外受容体における一過性または持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイド活性に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果を開示しない。
【0018】
3βステロイドは、Wang et al.(The Journal of Neuroscience,May 1,2002,22(9):3366-3375)によって開示されるようにGABAの自身の効果に対する効果も有し得る。この開示において、GABAA受容体の最大の刺激がGABAにより行われる場合に、ある特定の3β-ヒドロキシプレグナンステロイドは、GABAの自身の効果を抑制できることが示される。しかしある特定の3β-ヒドロキシステロイドが、GABAゲートのクロライドフラックスに対するGABAステロイド効果を主に抑制すること、および、他のステロイドもGABAの自身の効果を抑制することは、見出されたり理解されなかった。この文書は、アンドロゲン性のGABAA受容体調節ステロイドによって引き起こされた障害に対抗する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性、およびα4、β、δの活性化されたGABAA受容体での抑制物質として3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性を言及せず、シナプス内受容体またはシナプス外受容体における一過性または持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイド活性に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果を提供しない。
【0019】
WO2008/063128は、CNS障害の治療における、ある特定のプレグナンステロイドの使用を開示する。WO2008/063128は、アンドロゲン性のGABAA受容体調節ステロイドによって引き起こされた障害に対抗する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性、およびα4、β、δの活性化されたGABAA受容体での抑制物質として3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを使用する可能性を言及せず、シナプス内受容体またはシナプス外受容体における一過性または持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイド活性に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果を提供しない。
【0020】
GABAA受容体に対する3α-ヒドロキシ-アンドロスタン/プレグナン作用の特異的なアンタゴニスト(それは、α4、β、δサブタイプに対する活性およびGABAそれ自体に対する低い抑制効果を有する)を見出すことは、難題のままである。加えて、医薬使用のために生理学的に安全かつ好適であり、その上適切な時間間隔で生理学的に許容される用量で適用可能な化合物を見出すこは、難題のままである。
【0021】
本発明の1つの目的は、したがって、3α-ヒドロキシ-アンドロスタン/アンドロステン-ステロイドおよび3α-ヒドロキシ-プレグナン/プレグネン-ステロイドの両方に対抗して活性があり、シナプス内受容体またはシナプス外受容体における一過性および/または持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイド活性に対して(および特にα4、β、δサブタイプ対して)効果を有する、GABAA受容体調節ステロイドアンタゴニズムについてのかかる特異的なブロッカーを同定すること、ならびにTS、OCDおよび/またはGDの治療、緩和または予防のために利用可能な新規の医薬品および方法を作製することである。
【0022】
さらなる目的、関連する解決策、およびそれらの利点は、概要、実施例および請求項に従う。
【発明の概要】
【0023】
GABAA受容体が開口し、大量のクロライドが細胞の中へ流れる場合、脳における神経活性は減少する。移動しているクロライドの量とGABAA受容体活性薬物の臨床効果との間に、関係があることも公知である。異なるサブユニット構成を備えたGABAA受容体が3α-ヒドロキシ-Δ4-5,5α/β-ステロイドに対して異なって反応することも公知であるが、異なる受容体サブタイプ(例えばα4、β、δ受容体サブタイプ)に対して、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンがどのように作用するのか、または、シナプス内受容体もしくはシナプス外受容体における一過性もしくは持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイド活性に対して、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、何の効果を有するのか、または、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが3α-ヒドロキシ,5α-アンドロスタン/アンドロステンステロイドをアンタゴナイズできるかどうか、についての予備的知識はない。
【0024】
3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、3β位において水素原子供与体をヒドロキシ基の形態で保持し、これは、意外にもGABAA受容体サブタイプα1、β、γでの3α-ヒドロキシ-プレグナン/プレグネン-ステロイド作用の有効なブロッカーとして機能するが、α4、β、δサブタイプに対して異なって作用し、GABAA受容体の正の調節物質である3α-ヒドロキシ-アンドロスタン/アンドロステン-ステロイドの作用をアンタゴナイズすることができる。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンはしたがって、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害ならびに他の関連するアンドロゲン/プレグネン誘導性CNS障害の予防および/または治療のための治療用物質としての有用性を有する。
【0025】
本発明の一態様は、α4、β、δGABAA受容体サブタイプに対する3α-ヒドロキシ-プレグナン-ステロイド作用およびGABAA受容体に対して活性のあるアンドロゲン代謝物質に対する作用に対抗するブロッキング物質としての上記の化合物の治療用使用である。加えて、これらの物質は、トゥレット症候群、強迫性障害および/もしくはギャンブル障害または関連するステロイド誘導性CNS障害の治療のための医薬品の製造について、ならびに添付の請求項に記載の治療の方法における使用について、本明細書で示唆される。
【0026】
本発明の1つの態様は、シナプス内受容体またはシナプス外受容体における、一過性および持続性の3α-ヒドロキシ-5α/β-プレグナン/プレグネン-ステロイド活性または3α-ヒドロキシ-5α/β-アンドロスタン/アンドロステン-ステロイド活性に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの有する効果に関連する。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンはしたがって、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害ならびに他の関連するアンドロゲン/プレグネン誘導性CNS障害の予防および/または治療のための治療用物質としての有用性を有する。
【0027】
化合物は、単独でもしくはプロドラッグとして、ならびに/またはCNSに対する効果を促進および調節するために製剤および他の組成物と組み合わせて、使用され得る。本発明の範囲内の組成物は、本発明の化合物が意図された目的を達成するのに有効な量で含有される、すべての組成物を包含する。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン化合物は、3α-ヒドロキシ-アンドロスタン/プレグナン作用の有効なブロッカーとして意外な機能を保持するが、α4、β、δGABAA受容体サブタイプに対しては、GABAそれ自体に対抗する最小の活性があることを、本発明者は同定した。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンはしたがって、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の予防および/または治療のための治療用物質としての有用性を有する。
【0028】
本発明がさらに記載される前に、本発明の範囲は添付の請求項およびその等価物によってのみ限定されるので、本明細書において用いられる用語は特定の実施形態のみを記述する目的のために使用され、限定するとは意図されないことを理解すべきである。
【0029】
特に、本明細書および添付の請求項において使用される時、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示物も包含することが指摘される。
【0030】
「ブロッキング」という用語は、本事例において、3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイドがGABAA受容体に対して作用することが防止される効果を定義することを意図する。「ブロッキング」は、「調節」もしくは「抑制」または類似する用語(それは、作用が依然として生じている、より少ない程度またはより遅い速度であることを示唆する)によって意味されるもののとは全く異なる効果であることが理解される。
【0031】
「医薬組成物」という用語はその最も幅広い意味で使用され、少なくとも1つの活性のある物質、および随意の担体、アジュバント、構成物などを含有するすべての医薬適用可能な組成物を網羅する。「医薬組成物」という用語は、誘導体またはプロドラッグ(薬学的に許容される塩、硫酸塩およびエステル等)の形態で活性のある物質を含む組成物も網羅する。異なる投与経路のための医薬組成物の製造は、生薬化学の当業者の能力内である。
【0032】
「UC1010」という語句は、化合物3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを表わす。
【0033】
「投与」および「投与モード」という用語に加えて「投与経路」も、それらの最も幅広い意味で使用される。本発明の医薬組成物は、局部的、局所的、または全身的な投与モードが治療される病態について最も適切かどうかに大きく依存して、多くの手法で投与され得る。これらの異なる投与モードは、例えば局所的(例えば皮膚上)、局部的(眼用および様々な粘膜へのもの(例えば鼻、口腔、膣、および直腸の送達等)を包含する)、口腔、非経口、肺(上気道および下気道を包含する)である。
【0034】
かかる組成物および製剤の調製は、医薬および製剤の技術分野における当業者に一般的に公知であり、本発明の組成物の製剤へ適用され得る。
【0035】
本発明は3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンに関し、これには、GABAA受容体サブタイプα4、β、δに対する3α-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-オール/オンおよび3α-ヒドロキシ-Δ4-5-アンドロステン-17-オール/オンの効果に対する、3α-ヒドロキシ-5α/β-プレグナン-20-オン/オール(3α-ヒドロキシ-Δ4-5-プレグネン-20-オン/オール)の驚くべきブロッキング効果があり、それによって、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害ならびに他の3α-ヒドロキシ-Δ4-5,/5α/β-ステロイド誘導性CNS障害に対して意外な治療有効性を発揮する。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、GABA受容体シグナリングの正の調節物質へのアンタゴニストとして、α4、β、δGABAA受容体サブタイプに対する効果を有するという意外な所見から、本発明は生じる。
【0036】
「ステロイド関連性」または「ステロイド誘導性」という用語は、ステロイドが中枢神経系に対して作用する3つの可能な機構:a)直接的作用、b)耐性誘導、およびc)離脱効果を網羅することを意味する。本発明者は、医薬的に好適なおよび実際に適用可能な用量における3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、インビトロのHEK-293細胞において発現されたヒトGABAA受容体に対する3α-ヒドロキシ-プレグナンステロイドおよび3α-ヒドロキシ-アンドロスタンステロイドの両方の作用をブロックでき、したがって3α-ヒドロキシ-プレグナンステロイドおよび3α-ヒドロキシ-アンドロスタンステロイドの負の効果の発生をブロックすることを、意外にも確認した。加えて、本発明者は、医薬的に好適なおよび実際に適用可能な用量における3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、インビトロのHEK-293細胞において発現されたヒトα4、β、δGABAA受容体サブタイプに対する3α-ヒドロキシ-プレグナンステロイドおよび3α-ヒドロキシ-アンドロスタンステロイドの作用をブロックでき、したがって皮質-線条体-視床-皮質回路に関連するCNS領域(主要なGABAA受容体サブタイプがトゥレット症候群、強迫性障害およびギャンブル障害の病因に関与する)における負の効果の発生をブロックすることを、意外にもを示した。3α-ヒドロキシ-Δ4-5,5α/β-ステロイド(特定のアンドロスタンステロイド)の作用によるトゥレット症候群、強迫性障害およびギャンブル障害における作用メカニズム、とGABAA受容体のα4、β、δサブタイプに対する作用メカニズムの両方、ならびに薬理学的な許容可能な投薬量におけるGABAA受容体サブタイプ(α1およびα4を包含する)の一過性および持続性の調節に対する効果に、取り組んだ。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】受容体α1、β2、γ2が正常かつ良好な応答を有するならば、GABAが濃度依存的に電流応答を増加させたことを示す。
【
図2】THDOCがGABA媒介性電流応答を濃度依存的に促進したことを示す。
【
図3】アンドロスタンジオールが、α1、β2、γ2のヒトGABA
A受容体サブタイプで30μMのGABAに媒介された電流応答を促進したことを示す。
【
図4】THDOCが、α4、β3、δのヒトGABA
A受容体サブタイプで3μMのGABAに媒介された電流を濃度依存的に促進したことを示す。
【
図5】アンドロスタンジオールが、α4、β3、δのヒトGABA
A受容体サブタイプで3μMのGABAに媒介された電流応答を促進したことを示す。
【
図6】3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンがTHDOC効果をアンタゴナイズしたことを示す。
【0038】
本発明の一態様において、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の治療における使用のための、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが提供される。
【0039】
この態様の一実施形態において、前記障害はトゥレット症候群である。
【0040】
この態様の一実施形態において、前記障害は強迫性障害である。
【0041】
この態様の一実施形態において、前記障害はギャンブル障害である。
【0042】
この態様の一実施形態において、前記3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)(シタロプラム、エシタロプラム(ecitalopram)、フルオキセチン、セルトラリンおよびフルボキサミンを包含する);5α-レデュカーゼ(reducase)ブロッカー(フィナステライドまたはデュタステライド包含する);定型および非定型神経弛緩薬(リスペルドン(risperdone)、ジプラシドン、ハロペリドール、ピモジドおよびフルフェナジンを包含する);降圧剤(クロニジン、グアンファシン、三環系抗鬱薬、クロミプラミンおよびオピオイドアンタゴニストを包含する)から選択される、少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて、提供される。
【0043】
この態様の一実施形態において、前記使用のための、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈物質と一緒に、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを含む医薬組成物が提供される。
【0044】
本発明の一態様において、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の治療において有用な医薬品の調製における、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの使用が提供される。
【0045】
この態様の一実施形態において、前記使用はトゥレット症候群の治療のためのものである。
【0046】
この態様の一実施形態において、前記使用は強迫性障害の治療のためのものである。
【0047】
この態様の一実施形態において、前記使用はギャンブル障害の治療のためのものである。
【0048】
この態様の一実施形態において、前記3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの使用が、セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)(シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリンおよびフルボキサミンを包含する);5α-レデュカーゼブロッカー(フィナステライドまたはデュタステライド包含する);定型および非定型神経弛緩薬(リスペルドン、ジプラシドン、ハロペリドール、ピモジドおよびフルフェナジンを包含する);降圧剤(クロニジン、グアンファシン、三環系抗鬱薬、クロミプラミンおよびオピオイドアンタゴニストを包含する)から選択される、少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて、提供される。
【0049】
本発明の一態様において、薬学的有効量の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンをそれを必要とする患者へ投与することを含む、トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害を治療、予防または緩和する方法が提供される。
【0050】
この態様の一実施形態において、前記障害はトゥレット症候群である。
【0051】
この態様の一実施形態において、前記障害は強迫性障害である。
【0052】
この態様の一実施形態において、前記障害はギャンブル障害である。
【0053】
この態様の一実施形態において、前記3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)(シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリンおよびフルボキサミンを包含する);5α-レデュカーゼブロッカー(フィナステライドまたはデュタステライド包含する);定型および非定型神経弛緩薬(リスペルドン、ジプラシドン、ハロペリドール、ピモジドおよびフルフェナジンを包含する);降圧剤(クロニジン、グアンファシン、三環系抗鬱薬、クロミプラミンおよびオピオイドアンタゴニストを包含する)から選択される、少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて、提供される。
【0054】
本発明は、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが前記患者へ投与される方法に従って、上記のヒト患者におけるトゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害を治療、予防、または緩和するための方法を扱う。好適な投与経路は、例えば以下の:静脈内投与、鼻腔投与、口腔投与、膣内投与、直腸投与、皮下投与、経皮投与および経口投与である。クリーム、ゲルおよび軟膏として製剤化された物質を使用するか、または除放性の粘着性医薬パッチの形態における、経皮投与は、投与の別の可能な形態である。これらまたは他の投与経路のうちの任意のものにおいて、組成物の製剤化は、正常な薬理学的手順に従って適合または調整され、通常使用され当業者に周知の好適なアジュバントおよびベヒクルと一緒に、選択された経路に好適な化学的形態において有効な医薬品を含む。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンに好適であるが限定的でない製剤化は、WO2011/087441中で提供される。
【0055】
GABAA受容体に対する3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイドの作用によって引き起こされる症状および病態の例は、トゥレット症候群、強迫性障害およびギャンブル障害、チックの頻度および提示タイプである。
【0056】
ストレスでの3α-ヒドロキシ-5α/β-ステロイドへの長い時間(数日)の曝露によって引き起こされる、トゥレットの症状(チック)の増悪は、本発明に従って、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを患者へ投与することによって予防、緩和または治療され得る。
【0057】
トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の有る女性を悩ます問題に取り組む本発明の1つの態様は、月経周期にリンクする、チックタイプの問題の頻度の増加および/または変化、ならびに3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンがヒト患者へ投与される方法に従う前記患者における治療のための方法である。
【0058】
一般に、本発明は、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの単独での、またはセロトニン再取込み阻害剤(SSRI)(シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリンおよびフルボキサミンを包含する);5α-レデュカーゼブロッカー(フィナステライドまたはデュタステライド包含する);定型および非定型神経弛緩薬(リスペルドン、ジプラシドン、ハロペリドール、ピモジドおよびフルフェナジンを包含する);降圧剤(クロニジン、グアンファシン、三環系抗鬱薬、クロミプラミンおよびオピオイドアンタゴニストを包含する)等の他の医薬品と組み合わせた使用であって、本明細書において記載される3α-ヒドロキシ-Δ4-5,5α/β-ステロイド関連性または誘導性の障害のうちの任意の1つ、ならびに特に以下の障害:トゥレット症候群、強迫性障害およびギャンブル障害のうちの1つまたはいくつかのものの治療または予防のための医薬品の製造のための、前記使用を網羅する。
【0059】
本発明は、以下の非限定実施例において記載されるだろう。
【実施例0060】
実施例1。
ヒトα1、β、γGABAA受容体サブタイプおよびα4、β、δGABAA受容体サブタイプに対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンのGABAA受容体効果の試験のためのアッセイ。
【0061】
目的:1)GABAの非存在および存在下におけるGABAA受容体機能および
2)GABAA受容体正の調節ステロイド(テトラヒドロデオキシコルチコステロン(THDOC)および3α-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-オール(3α-OH-アジオール))の非存在および存在下において、Dynaflow(商標)系による、HEK-293細胞に対する、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果を調査すること。これらの試験において、プロトコールを、シナプス間隙における生理学的条件に類似するように至適化させた。
【0062】
細胞培養:HEK-293細胞(ヒトα1、β、γGABAA受容体サブタイプおよびα4、β、δGABAA受容体サブタイプにより恒久的にトランスフェクションした)を、3×104/25cm2の密度でcellbind培養フラスコ中に播種した。トランスフェクションした細胞を播種の3日後にパッチクランプ実験のために使用した。細胞をパッチクランプ実験のために使用する場合に、細胞を、酸素バブリングした細胞外(EC)溶液により2回洗浄した(以下を参照)。次いで約5mLのECを添加し、細胞を約15分間インキュベーター中で維持した。15分後に、細胞はフラスコの底から剥がれ、パスツールピペットにより数回を注意深く吸収することによって分離した。
【0063】
Resolve chipを備えたDynaflow(商標)システムをパッチクランプ実験のために使用した。HEK-293細胞からの電気生理学的記録を、パッチクランプ技法、およびアプリケーションシステムとしてResolve chipsを備えたDynaflow(商標)システム(Dynaflow Pro II Platform Zeiss Axiovert 25; Cellectricon AB、スウェーデン)を使用して、電圧クランプ条件下で遂行した。
【0064】
パッチピペットを硼珪酸ガラスから牽引し、好適な細胞内液(IC)(pHを7.2に調整した)により充填し、槽溶液(細胞外、EC)(pHを7.4に調整した)中で浸漬した場合に、抵抗2~5MΩへ研磨した。Axopatch 200B amplifier(Digidata 1322A(Axon instruments、Foster city、米国))を使用して、記録を行った。データをpCLAMPソフトウェアを使用して取得し、10kHzでサンプリングし、2~10kHzでフィルタリングし、Clampfitにより分析した(バージョン9.0、両方ともAxon instruments、Foster city、米国から)。ピペットと細胞膜との間で、20MΩよりも高い直列抵抗は許容されなかった。直列抵抗補正は使用しなかった。直列抵抗の安定性を、実験の間の容量性過渡現象の時間経過から反復してモニターした。ECとICとの間で測定される液間電位差を、提示されるすべてのデータ中で減算した。実験をすべて室温(21~23℃)で遂行した。
【0065】
ステロイドおよびGABA:GABAを、室温における約40分間超音波によってEC溶液中で10mMの濃度へ溶解した。すべてのステロイドをDMSO中で6mMの濃度へ溶解した。DMSO濃度は、すべての最終溶液(洗浄溶液(EC)およびGABA単独の溶液を包含する)中で0.1%であった。最終溶液は、チップのウェルの中へ添加した溶液であった。
【0066】
電気生理学:液間電位差を補正した後に、-17mVの一定の保持電位をすべての実験中で使用した。生理学的条件において、HEK-293は、-40mVでの静止電位および細胞内部での低濃度のクロライドイオンを有していた。-17mVの保持電位および低クロライドイオン濃度の細胞内液の使用によって、受容体が活性化された場合に、クロライドイオンは細胞の中へ流れる。
【0067】
プロトコール
GABA適用:Dynaflow機器の使用によって、ほとんど生理学的条件の間にトランスフェクションしたHEK-293を研究することは可能であった。Dynaflowシステムは、時間で40ミリ秒程から数分間までの間の溶液の適用を可能にした。生理学的に、シナプス間隙中で、GABAは約2ミリ秒間でmM範囲で放出された。これらの実験において、GABA±ステロイドを40ミリ秒間適用する。ほとんどすべての細胞において、第1のGABA適用が第2のGABA適用よりも小さな応答を与えたことが見出された。第2のGABA適用と第3のGABA適用との間の応答における違いはなかった。したがって、第1のGABA適用を常に2回反復し、第2の応答を分析において使用した。
【0068】
ウォッシュアウト:GABAは水中でかなり可溶性であり、受容体からウォッシュアウトすることが容易である。ウォッシュアウト時間を、もっぱらGABAによる適用1分後にセットした。一方ステロイドは水に溶解することが難しく、受容体からウォッシュアウトすることも難しかった。この実験において、THDOCおよび3α-OH-アジオールを正のGABAA受容体調節ステロイドとして使用した。2分間のウォッシュアウト時間により、蓄積効果および脱感作効果によって示されないように、200nMのTHDOCおよび3α-OH-アジオールは完全にウォッシュアウトされた。
【0069】
インキュベーション:ステロイドの効果を観察し安定的な結果を達成するために、GABAの適用の前に、受容体上でステロイドをインキュベーションしなければならなかったことが見出された。異なるインキュベーション時間を研究して、安定的な結果を実現し、ウォッシュアウト時間を最小限にするための至適の時間を達成する。20秒間のインキュベーション時間が、2分間のウォッシュアウト時間について至適の時間であることが示された。
【0070】
実施例2。
生物学的評価。ヒトα1、β、γGABAA受容体サブタイプおよびα4、β、δGABAA受容体サブタイプにより恒久的にトランスフェクションされ、これらのGABAA受容体を発現するHEK-293細胞。
【0071】
機能的ヒトGABAA受容体を恒久的に発現する細胞株を、以下のステップにおいて作製した。開始コドンの直前に導入されたKozac配列を含む、GABAA受容体サブユニットのα1、β2およびγ2L、またはα4、β3およびδを、ジェネティシン、ハイグロマイシンBおよびゼオシン抵抗性を含有する哺乳動物発現ベクターの中へ、それぞれサブクローン化した。安定的に3つのGABAA受容体サブユニットを発現するHEK-293細胞株を、サブユニットのトランスフェクションによってひとつずつ産生した。トランスフェクションに続いて、適切な抗生物質による選択、サブユニット特異的抗体の使用による細胞分離、および単一細胞のコロニーの産生を行った。産生した細胞株を、3つのGABAA受容体サブユニットについての免疫細胞化学により分析し、続いて、GABAA受容体についてGABA、THDOCおよび3α-OH-アジオールへの正常かつ良好な反応性を示す好適な細胞株を選択した。EC75をTHDOCおよびアンドロスタンジオールについて計算し、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果を研究する場合にGABAの促進物質として使用した。
【0072】
HEK-293細胞において恒久的に発現されたヒトGABA
A受容体サブタイプα1、β2、γ2におけるGABAの試験からの結果を、
図1および
図2中で提示する。
図1は、受容体α1、β2、γ2が正常かつ良好な応答を有していたならば、GABA(1~1000μM)が濃度依存的に電流応答を増加させたことを示す。
図2は、THDOC(30~1000nM)がGABA媒介性電流応答を濃度依存的に促進したことを示す。対照=30μMのGABAを、0(ゼロ)へセットした。図は、受容体α1、β2、γ2が正常で良好な応答を有していたことを示す。
【0073】
表1:THDOC単独は、α4、β3、δ受容体で、GABAの非存在下における電流応答を有意に誘導した。
【表1】
【0074】
図3は、アンドロスタンジオール(0.3~100μM)が、α1、β2、γ2のヒトGABA
A受容体サブタイプで、30μMのGABAに媒介された電流応答を促進したことを示す。
図3における結果は、意外にも、アンドロスタンジオールがα1、β2、γ2サブユニット受容体に対するGABAの効果の促進においてTHDOC(
図2)よりも実質的に強力ではなかった(48倍)ことを示す。
【0075】
表2。α1、β2、γ2受容体での、GABAの非存在下におけるアンドロスタンジオール(8~100μM)誘導性電流応答。
【表2】
【0076】
HEK-293細胞で恒久的に発現されるヒトGABA-A受容体サブタイプα4、β3、δにおけるGABAの試験。
組み換えヒトα4、β3、δGABAA受容体は、GABAへの予想される正常な濃度応答曲線を示した(データ不掲載)。さらに、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンのGABA媒介性電流応答は、α4、β3、δGABAA受容体サブタイプで、GABA単独に対して有意な効果がなかった(データ不掲載)。
【0077】
図4は、THDOC(0.01~0.3μM)が、α4、β3、δGABA
A受容体で3μMのGABAに媒介された電流を濃度依存的に促進したことを示す。
【0078】
図5は、アンドロスタンジオール(0.03~10μM)が、α4、β3、δ受容体で3μMのGABAに媒介された電流応答を促進したことを示す。α4、β3、δサブユニット構成におけるアンドロスタンジオールの効力がα1、β2、γ2サブユニットにおけるよりも10倍高かったので、結果は意外である(
図3:0.38μM対3.4μM)。
【0079】
実施例3。
GABAA受容体サブタイプα1、β2、γ2およびGABAA受容体サブタイプα4、β、δへの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの適用による実験。
【0080】
GABAA受容体サブタイプα1、β2、γ2への適用による実験は、(a)定常状態(一過性効果)でのGABA+3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-21-オン(THDOC)適用の効果に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの抑制効果、および(b)THDOC誘導性の持続性効果(ベースラインシフト)に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン効果を示した。GABA無しのステロイド効果(定常状態およびステロイド誘導性ベースラインシフト(THDOCおよびGABA無し)、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン自身の効果。
【0081】
a)30μMのGABA+200nMのTHDOCの存在下において、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの単回用量は、-22.3±5.3%(p<0.001、n=6)までTHDOC促進性効果をアンタゴナイズした。別の濃度依存実験において、濃度区間0.1~1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを、200nMのTHDOCおよび30μMのGABAの存在下において試験した。
図6は、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンが、最大-21±4.6%(p<0.001;n=10)(それは1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンで到達した)で、THDOC効果をアンタゴナイズしたことを示す。
【0082】
b)30μMのGABAの存在下において1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの調節作用は正であったが、GABA単独に比較して有意な効果を示さなかった(+10.3±7.8%、NS、n=9、データ不掲載)。
【0083】
表3。受容体α1、β2、γ2での結果の要約。
【表3】
【0084】
表4は、GABAA受容体サブタイプα4、β、δへの以下の適用を示す。a)GABA適用(定常状態);b)定常状態でのGABAA受容体サブタイプα4、β、δへの、GABA+3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-21-オン(THDOC)適用の効果に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの抑制効果;c)THDOC誘導性ベースラインシフトに対する効果(GABA無しのステロイド効果)。THDOC誘導性ベースラインシフト(THDOCおよびGABA無しの)を、上記の表1中で示す。
【0085】
表4。α4、β3、δ受容体での、THDOC±3μMのGABAに対する、および3μMのGABAに対する、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果。
【表4】
【0086】
表5は、GABAA受容体サブタイプα1、β2、γ2Lへの以下の適用を示す。a)定常状態(一過性効果)でのGABA+3α-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-オール(3α-OH-アジオール)適用の効果に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの抑制効果;b)3α-OH-アジオール誘導性の持続性効果(ベースラインシフト)に対する効果;c)GABA無しのアンドロスタンジオール効果を、表2中で示す。
【0087】
表5。α1、β2、γ2での、8μMのアンドロスタンジオール±30μMのGABAに対する1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果。
【表5】
【0088】
30μMのGABA単独の存在下において、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの最大の調節作用は有意ではなかった(10.3±7.8%、NS、n=9)。このことは、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンがGABAそれ自体の効果を有していなかったことを示し、したがって、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンおよびGABA単独によるさらなる研究を行わなかった。
【0089】
表6は、GABAA受容体サブタイプα4、β、δへの以下の適用を示す。a)3α-OH-アジオール誘導性のベースラインシフトに対する効果;b)定常状態でのGABAA受容体サブタイプα4、β、δへの、GABA+3α-OH-アジオール適用の効果に対する3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの抑制効果;c)GABA無しのアンドロスタンジオール効果を、表7中で以下に示す。
【0090】
表6。α4、β、δ3での、3μMのGABA、アンドロスタンジオール+3μMのGABA、およびTHDOC±3μMのGABAに対する1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの効果。
【表6】
【0091】
表7。3μMおよび10μMのアンドロスタンジオールは、α4、β3、δ受容体でのGABAの非存在下における電流応答を有意に誘導する。
【表7】
【0092】
アンドロスタンジオール(3μMおよび10μM)は、GABAの非存在下において、ベースライン(EC溶液での電流応答)に比較して、電流応答に対する有意であるがわずかな効果があった(表7)。アンドロスタンジオール誘導性電流応答は非常に低かったので、ベースラインシフトに対する1μM UC1010の効果を、研究することは可能ではなかった。
【0093】
最終的に、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンはそれ自体で、EC溶液での電流応答に比較して(0.1±0.3pA;N=10)、α4、β3、δGABAA受容体自体での効果を有していなかった(-0.4±0.3pA(N=11、NS))。
【0094】
仮説の実施例1。
トゥレット症候群、強迫性障害および/またはギャンブル障害の治療の生物学的効果を測定および確認できる複数の手法がある。1つの非限定実施例は、少なくともトゥレット症候群に関連して、Nordstrom & Burton 2002(Nordstrom,E.J.& Burton,F.H.A transgenic model of comorbid Tourette’s syndrome and obsessive-compulsive disorder circuitry.Mol.Psychiatry 7,617-625,524(2002))中で記載される遺伝子導入マウスモデルである。簡潔には、以下のように、実験を実行する。
【0095】
動物
ヘテロ接合のD1CT-7突然変異(約3か月齢)のオスBalb/cマウスは、およそ20~30gの体重である。動物をJackson Labs(Bar Harbor,ME)で購入し、到着時に遺伝子型を決定する。動物は、食物および水を自由に摂取させて群でケージ中に収容する。典型的には部屋を22℃で、午前8時~午後8時の12時間:12時間の明/暗サイクルで維持する。動物を午後12時~4時の間の明サイクルの間に試験して、任意の可能性のある概日の効果を最小限にする。
【0096】
処理
処理は、無作為化プロトコールにおいて、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン(例えばMCTオイル中の懸濁物としてであるがこれらに限定されない)またはプラセボ(ベヒクル、例えばMCTオイル)の毎日の皮下注射である。
【0097】
行動学的研究
チック様所見を、Nordstrom and Burton(2002)に従って処理へ盲検化した訓練済の観察者によってスコアリングする。チック様所見は、頭および/または体の急速な(<1秒)の攣縮として定義される。
【0098】
統計解析
ノンパラメトリック統計を使用するだろう。有意性閾値は0.05でセットされ得る。
【0099】
3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン処理後の血液サンプルの収集
行動学的研究に参加しない動物の別のセットに、、毎日3日間適切な濃度の3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンを皮下に与え、血液サンプルを、3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンの血漿中濃度の決定のために異なるタイムポイント(2、4および8時間等)で採取する。
【0100】
結論
3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、GABAAステロイド調節物質アンタゴニストとして活性があり、したがって、トゥレット症候群、強迫性障害およびギャンブル障害の有る患者の視床中に所在する主要な受容体サブタイプにおいて、GABAA受容体調節ステロイドが誘導する促進をブロックすることができるので、本発明は、このように意外にもトゥレット症候群、強迫性障害およびギャンブル障害の可能な治療を提供する。
【0101】
1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、アンドロスタンジオールおよびTHDOCの両方へのアンタゴニストとして作用した。3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、α1、β2、γ2GABAA受容体サブタイプおよびα4、β3、δGABAA受容体サブタイプの両方での、THDOCおよびアンドロスタンジオールに促進されたGABA媒介性効果を有意に低減した。さらに、1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンは、α4、β3、δGABAA受容体サブタイプでのGABAに対する効果無しに、THDOCに促進されたGABA媒介性電流応答を有意に低減した。1μMの3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン単独は、α4、β3、δGABAA受容体サブタイプで効果がなかった。
【0102】
アンドロスタンジオールは、α1、β2、γ2GABAA受容体サブタイプおよびα4、β3、δGABAA受容体サブタイプの両方での、GABA媒介性電流応答を促進した。しかしながら、EC50およびEmaxはサブタイプ間で異なっていた。α1、β2、γ2受容体での、アンドロスタンジオールのEC50は、α4、β3、δでの0.38μMに比較して、3.4μMであった。さらに、α1、β2、γ2でのEmaxは、α4、β3、δでのEmax=142%に比較して、281%であった。このことは、アンドロスタンジオールは、α4、β3、δ受容体に比較して、α1、β2、γ2受容体で、より有効であったが強力ではなかったことを提供する。
【0103】
THDOCは、α4、β3、δGABAA受容体でのGABA媒介性電流応答を促進し、そこで、EC50は47MおよびEmaxは297%であった。このことは、THDOCは、アンドロスタンジオールに比較して、α4、β3、δGABAA受容体で、より有効かつより強力であったことを提供する。