(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159533
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】呼吸器疾患の予防又は治療用生薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/31 20060101AFI20221006BHJP
A61K 36/342 20060101ALI20221006BHJP
A61K 36/535 20060101ALI20221006BHJP
A61K 36/355 20060101ALI20221006BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221006BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20221006BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20221006BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221006BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20221006BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
A61K36/31
A61K36/342
A61K36/535
A61K36/355
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P11/06
A23L33/10
C12N15/09 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131294
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2020549811の分割
【原出願日】2019-03-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0031151
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0150900
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0028959
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518069438
【氏名又は名称】ヘリックスミス カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ミ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ペ、ミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウォン ウー
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドゥー ソク
(57)【要約】
【課題】本発明は、呼吸器疾患の予防又は治療用の生薬組成物に関する。
【解決手段】芥子(Brassicae Semen)抽出物、沙参(Adenophorae Radix)抽出物、忍冬(Lonicerae Folium)抽出物、及び紫蘇子(Perillae Semen)抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を有効成分として含む呼吸器疾患の予防又は治療用の薬剤学的組成物及び呼吸器疾患の予防又は改善用の食品組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効成分として芥子(Brassicae Semen)抽出物、沙参(Adenophorae Radix)抽出物、忍冬(Lonicerae Folium)抽出物、及び紫蘇子(Perillae Semen)抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む、呼吸器疾患の予防又は治療用の薬剤学的組成物。
【請求項2】
前記抽出物は、有機溶媒、水又はこれらの混合溶媒で抽出されたことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項3】
前記有機溶媒は、C1~C6の低級アルコール、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、メチレンクロリド、エーテル、エチルアセテート、及びアセトンからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤学的組成物。
【請求項4】
前記呼吸器疾患は、風邪、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、咽喉頭炎、肺炎、急性又は慢性気管支炎、喘息、及び慢性閉塞性肺疾患からなる群から選ばれる呼吸器疾患であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項5】
芥子(Brassicae Semen)抽出物、沙参(Adenophorae Radix)抽出物、忍冬(Lonicerae Folium)抽出物、及び紫蘇子(Perillae Semen)抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を有効成分として含む、呼吸器疾患の予防又は改善用の食品組成物。
【請求項6】
請求項5の食品組成物を有効成分として含む健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、大韓民国特許出願第10-2018-0031151号(2018年3月16日出願)、大韓民国特許出願第10-2018-0150900号(2018年11月29日出願)、及び大韓民国特許出願第10-2019-0028959号(2019年3月13日出願)に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は本明細書に参照として援用される。
【0002】
本発明は、呼吸器疾患の予防又は治療用生薬組成物に関し、具体的に、芥子(Brassicae Semen)抽出物、沙参(Adenophorae Radix)抽出物、忍冬(Lonicerae Folium)抽出物及び紫蘇子(Perillae Semen)抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を含む呼吸器疾患の予防、治療又は改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸器疾患は、肺及び気道に関連した疾患であり、主に免疫力低下、炎症作用、細菌又はイルスの感染、微小粒子状物質又は喫煙などによる有害粒子の吸込み及び老化などが原因となり得る。呼吸器疾患の代表としては肺炎(pneumonia)、鼻炎、喘息(asthma)及び気管支炎(bronchitis)、結核(tuberculosis)、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease,COPD)などを含む。特に、最近では微小粒子状物質の増加及び喫煙などによる慢性閉塞性肺疾患の患者が増加している趨勢である。慢性閉塞性肺疾患は肺気腫(emphysema)又は慢性気管支炎(chronic bronchitis)とも呼ばれる。
【0004】
かかる呼吸器疾患の治療剤は、主に、抗炎症作用や気道拡張効果をターゲットに開発されている。抗炎症又は気道拡張効果を示す呼吸器疾患治療剤の例には、糖質コルチコイドステロイド薬物(glucocorticoid steroid drug)、ベータ2-アドレナリン受容体効能剤(beta2-adrenergic receptor agonist)、抗ロイコトリエン剤(leukotriene receptor antagonist)及びホスホジエステラーゼ-4抑制剤(phosphodiesterase-4 inhibitor,PDE4 inhibitor)などがある。しかし、これらの既存の呼吸器疾患治療剤は、治療目的が乳児又は小児対象のアレルギー性喘息及び喫煙者対象の慢性閉塞性肺疾患(COPD)に限定されている。また、これらの治療剤は大部分が症状の緩和だけを目的とし、呼吸器疾患の本質的な原因を除去して病気の進行を遅延又は停止させることはできないという限界があった。また、大多数の呼吸器疾患はその原因と症状が複合的であるため、単一成分、単一治療機転を用いた従来の治療剤では適切な治療が不可能な実情である。したがって、より多角的且つ複合的に呼吸器疾患を予防及び治療するための新しい治療剤の開発が切実に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許公開公報第10-2017-0115852号
【特許文献2】大韓民国特許登録公報第10-1569876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上述した従来の呼吸器疾患治療剤の限界点を克服するために新しい治療機転を持つ呼吸器疾患治療剤を開発しようと鋭意研究努力してきた。その結果、本発明者らは芥子(Brassicae Semen)、沙参(Adenophorae Radix)、忍冬(Lonicerae Folium)及び紫蘇子(Perillae Semen)の複合生薬抽出物(混合抽出物)が、肺組織の損傷の他、微小粒子状物質から誘導される炎症及び老化作用も抑制し、優れた抗酸化効能があることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の目的は、有効成分として芥子(Brassicae Semen)抽出物、沙参(Adenophorae Radix)抽出物、忍冬(Lonicerae Folium)抽出物及び紫蘇子(Perillae Semen)抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物;及び薬剤学的に許容される担体を含む、呼吸器疾患の予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、芥子(Brassicae Semen)抽出物、沙参(Adenophorae Radix)抽出物、忍冬(Lonicerae Folium)抽出物及び紫蘇子(Perillae Semen)抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を有効成分として含む呼吸器疾患の予防又は改善用の食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、本発明は、(a)有効成分として芥子(Brassicae Semen)抽出物、沙参(Adenophorae Radix)抽出物、忍冬(Lonicerae Folium)抽出物及び紫蘇子(Perillae Semen)抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む、呼吸器疾患の予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供する。
【0010】
本明細書において前記混合抽出物は、芥子抽出物、沙参抽出物、忍冬抽出物、及び紫蘇子抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物であるので、芥子及び沙参の混合抽出物、芥子及び忍冬の混合抽出物、芥子及び紫蘇子の混合抽出物、沙参及び忍冬の混合抽出物、沙参及び紫蘇子の混合抽出物、忍冬及び紫蘇子の混合抽出物のような2種混合抽出物だけでなく;芥子、沙参、及び忍冬の混合抽出物、芥子、沙参、及び紫蘇子の混合抽出物、芥子、忍冬、及び紫蘇子の混合抽出物、沙参、忍冬、及び紫蘇子の混合抽出物のような3種混合抽出物;及び芥子、沙参、忍冬、及び紫蘇子の4種混合抽出物を含む。
【0011】
本明細書において芥子(Brassicae Semen)は、からし種(mustard seed)とも呼ばれ、セイヨウカラシナ(Brassica juncea Czern.et Cosson)又はその変種(ジュウジバナ科(Cruciferae))のよく熟した種である。東医宝鑑には風毒でむくんだり麻痺したこと、ぶつかったり打たれて鬱血ができたこと、腰が痛く、腎が冷えたこと、心痛を治療すると記載されている。
【0012】
本明細書において沙参(Adenophorae Radix)は、ツリガネニンジン(Adenophora triphylla var.japonica Hara)又は沙参(Adenophora stricta Miq.)(キキョウ科(Campanulaceae))の根である。この薬は、円錐状又は円柱状であり、若干曲がっており、長さ7~27cm、直径8~30mmである根である。外側面は黄白色又は薄い黄褐色であり、凹んだ所には荒い皮が残っていることもある。根の頭部側には、横に深くできたシワが多く、このシワは円環状をしているが、不連続的である。下方には縦縞と縦溝がある。質感は、軽くて疎らであり、折れやすい。折れた面は平坦でなく、黄白色であり、割れ目が多い。この薬はやや臭いがあり、味はやや甘い。
【0013】
本明細書において忍冬(Lonicerae Folium)は、忍冬藤とも呼ばれる。この薬は忍冬蔓(Lonicera japonica Thunberg)(スイカズラ科(Caprifoliaceae))の葉及び蔓性茎である。知られた効能には、清熱解毒、坑菌、抗ウイルス、抗真菌、収斂、利尿、コレステロール吸収抑制などがある。
【0014】
本明細書において紫蘇子(Perillae Semen)は蘇子とも呼ばれる。この薬は、シソ(Perilla frutescens L.Britton var.acuta(Thunb.)Kudo)又はソヨウ(Perilla frutescens Britton var.crispa Decne.)(シソ科(Labiatae))の実である。この薬は、卵円形又は球形に近く、直径0.6~2mmの実である。外側面は灰褐色又は濃い灰褐色であり、若干隆起した網紋がある。下方は若干尖っており、白色点状の実のへたの跡がある。実の皮は薄く、押すと潰れやすい。種の皮は膜質であり、双葉は油に富む。この薬は、ほとんど臭いがないが、噛めば特有な香りがあり、味は渋くてやや辛いと知られている。
【0015】
本発明で用いられる前記芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の抽出物は、購入したり、又は生薬から直接抽出して得ることができる。前記抽出は、各生薬を適切なサイズに切断又は粉砕して行うことができる。
【0016】
本発明の組成物で用いられる前記抽出物を芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の生薬から直接抽出して得る場合には、極性溶媒又は非極性溶媒のような様々な抽出溶媒を用いることができる。
【0017】
極性溶媒として好ましくは、(i)水、(ii)C1~C6の低級アルコール(具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ノルマル-プロパノール、イソ-プロパノール、ノルマル-ブタノール、1-ペンタノール、2-ブトキシエタノール又はエチレングリコール)、(iii)酢酸、(iv)DMFO(dimethyl formamide)及び(v)DMSO(dimethylsulfoxide)を含む。非極性溶媒として好ましくは、アセトン、アセトニトリル、エチルアセテート、メチルアセテート、フルオロアルカン、ペンタン、ヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン、デカン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジイソブチレン、1-ペンテン、1-クロロブタン、1-クロロペンタン、o-キシレン、ジイソプロピルエーテル、2-クロロプロパン、トルエン、1-クロロプロパン、クロロベンゼン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジエチルスルフィド、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アニリン、ジエチルアミン、エーテル、四塩化炭素及びTHF(Tetrahydrofuran)を含む。
【0018】
前記抽出溶媒の量は、抽出しようとする芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の量によって変更可能であるが、具体的には、芥子、沙参、忍冬、紫蘇子又はこれらの混合物の重量の1倍~20倍体積、具体的には5倍~15倍体積、より具体的には5倍~12倍体積又は7倍~12倍体積の抽出溶媒を使用することができる。最も具体的には、芥子、沙参、忍冬、紫蘇子又はこれらの混合物重量の10倍体積の抽出溶媒を使用することができる。
【0019】
本発明の抽出物の抽出温度は特に制限されず、例えば0℃~120℃であり得、具体的には15℃~95℃であり得る。本発明の一態様において本発明の抽出温度は常温である。
【0020】
本発明の抽出物の抽出時間は特に制限されず、例えば1時間~10日であり得、具体的には1時間~144時間、1時間~120時間、1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、1時間~36時間、1時間~24時間、1時間~12時間、1時間~10時間、1時間~6時間であり得る。前記抽出時間は、より具体的には3時間~144時間、3時間~120時間、3時間~96時間、3時間~72時間、3時間~48時間、3時間~36時間、3時間~24時間、3時間~12時間、3時間~10時間、5時間~144時間、5時間~120時間、5時間~96時間、5時間~72時間、5時間~48時間、5時間~36時間、5時間~24時間、5時間~12時間、5時間~10時間、8時間~96時間、8時間~72時間、8時間~48時間、8時間~36時間、8時間~24時間、8時間~12時間、8時間~10時間、12時間~120時間、12時間~96時間、12時間~72時間、12時間~48時間、12時間~36時間、12時間~24時間、24時間~120時間、24時間~96時間、24時間~72時間、24時間~48時間、36時間~96時間、36時間~72時間、36時間~48時間又は48時間~96時間、48時間~84時間、60時間~96時間、60時間~84時間、60時間~72時間であり得、最も具体的には72時間である。
【0021】
本発明の抽出物は、公知の天然物抽出法で抽出することができる。例えば、冷浸抽出、熱水抽出、超音波抽出、還流冷却抽出、加熱抽出法で抽出でき、具体的には冷浸抽出法で抽出でき、1回~10回、より具体的には2回~7回反復抽出できる。
【0022】
本発明の一態様によれば、本発明で用いられる芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の抽出物は、有機溶媒、水、又はこれらの混合溶媒で抽出可能である。前記有機溶媒には、C1~C6の低級アルコール、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、メチレンクロリド、エーテル、エチルアセテート、及びアセトンなどがある。本発明の他の具体的な態様によれば、本発明の前記有機溶媒はエチルアルコールと水との混合溶媒である。
【0023】
前記C1~C6の低級アルコール、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、メチレンクロリド、エーテル、エチルアセテート、及びアセトンなどの有機溶媒の濃度は、1~100%(v/v)、具体的には10~100%(w/w)、20~100%(w/w)、30~100%(w/w)、40~100%(w/w)、50~100%(w/w)、60~100%(w/w)、70~100%(w/w)、80~100%(w/w)であり得、より具体的には10~95%(w/w)、10~80%(w/w)、10~70%(w/w)、10~60%(w/w)、10~50%(w/w)、10~40%(w/w)、10~30%(w/w)、さらに具体的には20~80%(w/w)、20~70%(w/w)、20~60%(w/w)、20~50%(w/w)、20~40%(w/w)、20~30%(w/w)であり得、最も具体的には25%(w/w)であり得るが、これらに制限されない。
【0024】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、本発明の前記芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の抽出物は、上述した水、C1~C6の低級アルコール又はこれらの混合溶媒で抽出したり、或いは抽出及び(減圧)濃縮した後、上述した石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、メチレンクロリド、エーテル、エチルアセテート、アセトンからなる群から選ばれる有機溶媒でさらに抽出又は分画して製造することができる。
【0025】
一方、本発明で用いられる芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の抽出物の混合抽出物は、芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の個別抽出物を互いに混合して製造してもよく、芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子から選ばれる2種以上の生薬混合物に抽出溶媒を処理して製造してもよい。
【0026】
本発明において芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の抽出物は、溶媒によって抽出された粗(crude)抽出物の形態を使用してもよく、高純度に精製して使用してもよい。
【0027】
本明細書で使われる用語‘抽出物’は、上述したように、当業界において粗抽出物(crude extract)で通用される意味であるが、広義的には抽出物をさらに分画(fractionation)した分画物も含む。すなわち、芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の抽出物は、上述した抽出溶媒を用いて得たものの他に、そこに精製過程をさらに適用して得たものも含む。例えば、前記抽出物を一定の分子量カット-オフ値を有する限外濾過膜を通過させて得た分画、様々なクロマトグラフィー(サイズ、電荷、疎水性又は親和性による分離のために作製されたもの)による分離など、さらに施された様々な精製方法によって得られた分画も、本発明の芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の抽出物に含まれる。本発明で用いられる芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子抽出物は、減圧蒸留及び凍結乾燥又は噴霧乾燥などのような追加過程によって粉末状態に製造することができる。
【0028】
本発明の具体的な態様によれば、前記芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子又はこれらの混合物は、洗浄及び乾燥後にそれぞれ一定の重量比で混合した後、混合物重量(g)の1~20倍数体積(ml)の抽出溶媒に投入して15~95℃で1~144時間よく撹拌しつつ抽出する。次に、抽出液を濾過し、50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して粉末状態の複合生薬抽出物(混合抽出物)を得る。
【0029】
本発明の他の態様によれば、芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子、又はこれらの混合物をそれぞれ、各重量(g)の1~20倍数体積(ml)の抽出溶媒に投入した後、15~95℃で1~144時間よく撹拌しつつ抽出する。次に、それぞれの抽出液を濾過して50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して粉末状態の生薬抽出物を得た後、各生薬抽出物を一定の重量比で混合して粉末状態の複合生薬抽出物(混合抽出物)を得る。
【0030】
本発明の特定の態様によれば、芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子を1:1:1:1の重量比で混合した後、重量の10倍数のエタノール水溶液を投入して常温で72時間抽出する。抽出液を50~65℃で減圧濃縮した後、濃縮液を凍結乾燥して芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の複合生薬抽出物を得る。
【0031】
本発明の他の特定の態様によれば、芥子、沙参、及び忍冬を1:1:1の重量比で混合した後、重量の10倍数のエタノール水溶液を投入して常温で72時間抽出する。抽出液を50~65℃で減圧濃縮した後、濃縮液を凍結乾燥して芥子、沙参、及び忍冬の複合生薬抽出物を得る。
【0032】
本発明で用いられる前記芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の4種混合抽出物はそれぞれ芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の生薬抽出物を、1~10:1~10:1~10:1~10、1:1~10:1~10:1~10、1~10:1:1~10:1~10、1~10:1~10:1:1~10、1~10:1~10:1~10:1、1:1:1~10:1~10、1:1~10:1:1~10、1:1~10:1~10:1、1~10:1:1:1~10、1~10:1:1~10:1、1~10:1~10:1:1、1:1:1:1~10、1:1:1~10:1、1:1~10:1:1、又は1~10:1:1:1の混合重量比で含むか、1~5:1~5:1~5:1~5、1:1~5:1~5:1~5、1~5:1:1~5:1~5、1~5:1~5:1:1~5、1~5:1~5:1~5:1、1:1:1~5:1~5、1:1~5:1:1~5、1:1~5:1~5:1、1~5:1:1:1~5、1~5:1:1~5:1、1~5:1~5:1:1、1:1:1:1~5、1:1:1~5:1、1:1~5:1:1、又は1~5:1:1:1の混合重量比で含むか、1~4:1~4:1~4:1~4、1:1~4:1~4:1~4、1~4:1:1~4:1~4、1~4:1~4:1:1~4、1~4:1~4:1~4:1、1:1:1~4:1~4、1:1~4:1:1~4、1:1~4:1~4:1、1~4:1:1:1~4、1~4:1:1~4:1、1~4:1~4:1:1、1:1:1:1~4、1:1:1~4:1、1:1~4:1:1、又は1~4:1:1:1の混合重量比で含むか、1~3:1~3:1~3:1~3、1:1~3:1~3:1~3、1~3:1:1~3:1~3、1~3:1~3:1:1~3、1~3:1~3:1~3:1、1:1:1~3:1~3、1:1~3:1:1~3、1:1~3:1~3:1、1~3:1:1:1~3、1~3:1:1~3:1、1~3:1~3:1:1、1:1:1:1~3、1:1:1~3:1、1:1~3:1:1、1~3:1:1:1、又は1:1:1:1の混合重量比で含むことができる。
【0033】
本発明で用いられる前記芥子、沙参、及び忍冬の3種混合抽出物はそれぞれ芥子、沙参及び忍冬の生薬抽出物を、1~10:1~10:1~10、1:1~10:1~10、1~10:1:1~10、1~10:1~10:1、1:1:1~10、1:1~10:1、又は1~10:1:1の混合重量比で含むか、1~5:1~5:1~5、1:1~5:1~5、1~5:1:1~5、1~5:1~5:1、1:1:1~5、1:1~5:1、又は1~5:1:1の混合重量比で含むか、1~4:1~4:1~4、1:1~4:1~4、1~4:1:1~4、1~4:1~4:1、1:1:1~4、1:1~4:1、1~4:1:1の混合重量比で含むか、1~3:1~3:1~3、1:1~3:1~3、1~3:1:1~3、1~3:1~3:1、1:1:1~3、1:1~3:1、1~3:1:1、又は1:1:1の混合重量比で含むことができる。
【0034】
本発明のより具体的な態様において、前記芥子、沙参、及び忍冬の生薬抽出物の混合重量比は1:1:1、1:1:2、1:1:4、1:2:1、1:4:1、2:1:1、又は4:1:1であり得るが、これに限定されない。
【0035】
本明細書上の用語‘混合重量比’は、抽出工程を行う前の各成分の重量比(w/w)又は各抽出物の重量比(w/w)を表す。
【0036】
前記‘混合重量比’が各抽出物の重量比(w/w)を表す場合には、混合抽出物を製造するために混合される個別抽出物の重量の比で計算される。しかし、前記‘混合重量比’が抽出工程を行う前の各成分の重量比(w/w)を意味する場合には、抽出工程が各成分の混合前に行われるか或いは混合後に行われるかによって別々に計算される。例えば、本発明の複合抽出物が芥子、沙参、及び忍冬の混合物を抽出溶媒で抽出する単一抽出工程によって製造される場合、‘混合重量比’は、前記混合物に含まれた芥子、沙参及び忍冬のそれぞれの単一成分の重量比を表す。また、本発明の複合抽出物が芥子、沙参及び忍冬の単一成分の抽出物をそれぞれ製造した後、2成分の抽出物を混合する方式で製造される場合、‘混合重量比’は、次の計算式によって計算される‘単一成分基準重量’間の重量比を表す。
【0037】
計算式
単一成分基準重量=単一抽出物製造に用いられた単一成分の重量×(最終複合抽出物の製造のために用いられた単一抽出物の重量/製造した単一抽出物の重量)。
【0038】
本明細書に使われている、2数字間に記載された用語‘~’は、当該2数字を含む数値範囲を意味する。
【0039】
本発明の組成物は薬剤学的組成物として製造可能である。
【0040】
本発明の具体的な態様によれば、本発明の組成物は、(a)有効成分として上述した芥子抽出物、沙参抽出物、忍冬抽出物及び紫蘇子抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物である。
【0041】
本明細書で用語“薬剤学的有効量”は、上述した芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の混合抽出物の呼吸器疾患の治療効能又は予防効能を達成するのに十分な量を意味する。本発明は、天然植物材料である芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子から抽出した抽出物を含む組成物であり、過量投与しても人体に副作用がないので、本発明の組成物に含まれた前記抽出物の量的上限は、当業者が適切な範囲内で選択することができる。
【0042】
本明細書で用語“呼吸器疾患”は、風邪、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、咽喉頭炎、肺炎、急性又は慢性気管支炎、喘息、及び慢性閉塞性肺疾患からなる群から選ばれる呼吸器疾患を含むが、これらに制限されない。
【0043】
本明細書で用語“治療”とは、本発明の対象疾患である呼吸器疾患の減少、抑制、鎮静、又は根絶を意味する。本明細書で用語“予防”は、本発明の対象疾患である呼吸器疾患の発病を阻害又は遅延させる全ての行為を意味し、治療的意味を含む。
【0044】
下記の実施例で立証された通り、本発明の芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子からなる群から選ばれる複合生薬抽出物(混合抽出物)の投与は、肺気腫マウスモデルにおいて肺組織の損傷を顕著に減少させる効果を示す。
【0045】
また、本発明の複合生薬抽出物は、微小粒子状物質によって誘導された肺上皮細胞株の老化を顕著に抑制し、テロメアの長さを延長させるテロメラーゼの発現程度を濃度依存的に増加させる。
【0046】
また、本発明の複合生薬抽出物は、LPSを処理したマウス大食細胞株のNO生成、及び抗炎症因子(IL-6、IL-1β、iNOS)の発現を抑制して優れた抗炎症効果を示し、抗酸化因子(HO-1)の発現を増加させて優れた抗酸化効果を示す。
【0047】
また、本発明の複合生薬抽出物は様々な混合比率の条件下で、LPSを処理したマウス大食細胞株における炎症因子(IL-6、IL-1β、iNOS)の発現を抑制して優れた抗炎症効果を示し、抗酸化因子であるHO-1の発現を増加させて優れた抗酸化効果を示す。
【0048】
また、本発明の複合生薬抽出物は、熱水抽出及び様々な濃度の抽出溶媒(エタノール)で抽出したときにも、炎症因子(IL-6、iNOS)の発現を抑制して優れた抗炎症効果を示し、抗酸化因子であるHO-1の発現を増加させて優れた抗酸化効果を示す。
【0049】
しかも、本発明の複合生薬抽出物は単一生薬抽出物と比較して、LPSで誘導した肺炎症マウスモデルの肺組織における炎症因子(IL-6、IL-1β、TNF-α)の発現を顕著に抑制し、単一生薬抽出物に比べて抗炎症効果において相乗効果(synergistic effect)を示す。
【0050】
上記のような実施例の結果は、本発明の複合生薬抽出物を含む組成物を肺炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息のような炎症及び老化による呼吸器疾患の予防、改善又は治療に利用でき、従来の呼吸器疾患治療剤の代替剤として利用可能であることを示す。
【0051】
特に、本発明の芥子、沙参、忍冬、及び紫蘇子の4種混合抽出物はもとより、紫蘇子を除く芥子、沙参、及び忍冬の3種混合抽出物だけでも優れた呼吸器疾患の治療効果を示すという点で特徴的である。
【0052】
本発明の組成物が薬剤学的組成物として製造される場合、本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含むことができる。前記薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などもさらに含むことができる。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0053】
本発明の薬剤学的組成物は経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合には、静脈内投与、皮下投与、血内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、粘膜内投与、硬膜内投与、腹腔内投与、眼球内投与などで投与でき、具体的には経口投与できる。
【0054】
本発明の薬剤学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常の熟練した医師は、所望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方できる。本発明の具体的な態様によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.001~1000mg/kgである。本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、例えば、0.1~1000mg/kg、0.1~900mg/kg、0.1~800mg/kg、0.1~700mg/kg、0.1~600mg/kg、0.1~500mg/kg、0.1~400mg/kg、0.1~300mg/kg、0.1~200mg/kg、0.1~100mg/kg、0.1~50mg/kg、0.1~30mg/kg、0.1~20mg/kg、0.1~10mg/kg、0.1~7mg/kg、0.1~5mg/kgであり得、1~1000mg/kg、1~900mg/kg、1~800mg/kg、1~700mg/kg、1~600mg/kg、1~500mg/kg、1~400mg/kg、1~300mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、1~50mg/kg、1~30mg/kg、1~20mg/kg、1~10mg/kg、1~7mg/kg、1~5mg/kgであり得、より具体的には1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mg/kgであり得る。また、他の態様において、前記本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、例えば、100~900mg/kg、100~800mg/kg、100~700mg/kg、100~600mg/kg、100~500mg/kg、100~400mg/kg、100~300mg/kg、100~200mg/kgであり得、200~900mg/kg、200~800mg/kg、200~700mg/kg、200~600mg/kg、200~500mg/kg、200~400mg/kg、200~300mg/kgであり得、300~900mg/kg、300~800mg/kg、300~700mg/kg、300~600mg/kg、300~500mg/kg、300~400mg/kgであり得、400~900mg/kg、400~800mg/kg、400~700mg/kg、400~600mg/kg、400~500mg/kgであり得、より具体的には100mg/kg、200mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg、600mg/kg、700mg/kg、800mg/kg、900mg/kg、又は1000mg/kgであり得るが、これに限定されない。
【0055】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量の形態で製造してもよく、多回容量容器内に入れて製造してもよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であってもよく、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0056】
本発明の薬剤学的組成物は、呼吸器疾患又は呼吸器疾患関連症状の予防及び治療の効果を有する公知の化合物又は薬剤学的組成物と併用して投与してもよい。
【0057】
本発明の他の態様によれば、本発明は、芥子抽出物、沙参抽出物、忍冬抽出物及び紫蘇子抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を有効成分として含む呼吸器疾患の予防又は改善用の食品組成物を提供する。前記食品組成物は、健康機能食品として利用するか、或いは各種の食品に添加することができる。
【0058】
本明細書において用語“改善”は、本発明の対象疾患である呼吸器疾患の症状を減少させる全ての行為を意味する。
【0059】
本発明はまた、前記食品組成物を含む健康機能食品を提供する。前記健康機能食品は、飲料類、肉類、チョコレート、食品類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤又は健康補助食品類であり得る。
【0060】
前記食品組成物に含まれる本発明の混合抽出物の含有量は、食品の形態、所望の用途などによって適切に調節でき、特に制限はない。例えば、混合抽出物の含有量は全食品重量の0.001~30重量%又は0.01~20重量%であり得、健康飲料組成物の場合、100mlを基準に0.001~15g、0.02~10g、又は0.3~1gであり得るが、これらに制限されない。
【0061】
本発明の芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の混合抽出物を含む組成物が食品組成物として製造される場合、有効成分として前記抽出物の他に、食品製造時に通常添加される成分も含むことができる。前記添加成分は、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリシルヒジンなど)]及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤として製造される場合には、本発明の前記抽出物に加えて、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、杜沖抽出液、ナツメ抽出液、甘草抽出液などをさらに含めることができる。
【0062】
本発明の呼吸器疾患予防又は改善用の食品組成物は、上述した“呼吸器疾患の予防又は治療用の薬剤学的組成物”と同様に有効成分として芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の混合抽出物を含むので、両発明間に共通した事項は、本明細書の過度な重複説明を避けるためにその記載を省略する。
【0063】
また、本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、上述した本発明の芥子抽出物、沙参抽出物、忍冬抽出物及び紫蘇子抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を有効成分として含む薬剤学的組成物を対象(subject)に投与する段階を含む呼吸器疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0064】
また、本発明の他の態様によれば、本発明は、上述した本発明の芥子抽出物、沙参抽出物、忍冬抽出物及び紫蘇子抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を有効成分として含む食品組成物を対象(subject)に投与する段階を含む呼吸器疾患の予防又は改善方法を提供する。
【0065】
本発明の治療方法、又は改善方法の対象疾病である呼吸器疾患は、前記薬剤学的組成物の治療対象疾病である呼吸器疾患と関連して定義した通りである。
【0066】
本明細書で用いられた用語、“投与”又は“投与する”は、本発明の組成物の治療的有効量を呼吸器疾患を有する対象(個体)に直接投与することによって対象の体内に同一量を形成させることを指す。
【0067】
前記組成物の“治療的有効量”は、組成物を投与しようとする対象に治療的又は予防的効果を提供するのに十分な組成物の含有量を意味し、したがって、“予防的有効量”を含む意味である。また、本明細書で用いられた用語、“対象”はヒト、マウス、ラット、ギニアピッグ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ(baboon)及びアカゲザルなどを含む哺乳類である。最も具体的には、本発明の対象はヒトである。
【0068】
本発明の前記呼吸器疾患の予防又は治療方法は、本発明の一態様である呼吸器疾患の予防又は治療用の薬剤学的組成物、又は予防又は改善用の食品組成物を投与する段階を含む方法であり、重複する内容については、本明細書の過度な重複説明を避けるためにその記載を省略する。
【発明の効果】
【0069】
本発明の特徴及び利点を要約すれば次の通りである。
【0070】
(a)本発明は、芥子抽出物、沙参抽出物、忍冬抽出物及び紫蘇子抽出物からなる群から選ばれる2種以上の混合抽出物を含む呼吸器疾患の予防又は治療用の薬剤学的組成物;及び呼吸器疾患の予防又は改善用の食品組成物に関する。
【0071】
(b)本発明の芥子、沙参、忍冬及び紫蘇子の混合抽出物を含む組成物は、呼吸器疾患の予防及び症状を改善する効果があり、肺組織の損傷を回復させることはもとより、微小粒子状物質などの炎症誘発物質によって誘導される炎症及び老化作用を抑制し、抗酸化効果に優れている。特に、本発明の組成物は、テロメアの長さを延長するテロメラーゼの発現を増加させることによって、従来の症状緩和剤とは違い、微小粒子状物質によって誘導される退行性呼吸器疾患を根本的に治療できると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】本発明の製造例1の4種複合生薬抽出物の肺組織損傷抑制効果を確認するために、PPEで誘導した肺気腫マウスモデルの肺組織を顕微鏡で観察した結果及び各肺組織において肺胞の表面積を示す図である。
【
図2】本発明の製造例1の4種複合生薬抽出物の抗老化効能を確認するために、肺上皮細胞株に微小粒子状物質を処理した後、β-ガラクトシダーゼの染色(senescence beta-galactosidase staining)結果を示す図である。
【
図3】本発明の製造例1の4種複合生薬抽出物の抗老化効能を確認するために、肺上皮細胞株の複合生薬抽出物処理濃度別(100μg/ml、200μg/ml)テロメラーゼ発現程度をウェスタンブロットで比較して示す図である。
【
図4】本発明の製造例1の4種複合生薬抽出物の抗炎症効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株のNO(Nitric Oxide)生成程度を複合生薬抽出物の処理濃度別(0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、4mg/ml)に比較して示すグラフである。
【
図5】本発明の製造例2の3種複合生薬抽出物の肺組織損傷抑制効果を確認するために、PPEで誘導した肺気腫マウスモデルの肺組織を顕微鏡で観察した結果及び各肺組織において肺胞の表面積を示す図である。
【
図6A】本発明の製造例2の3種複合生薬抽出物の抗炎症効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において複合生薬抽出物の処理濃度別(0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL)炎症因子(IL-6)の発現程度を示す図である。
【
図6B】本発明の製造例2の3種複合生薬抽出物の抗炎症効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において複合生薬抽出物の処理濃度別(0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL)炎症因子(IL-1β)の発現程度を示す図である。
【
図6C】本発明の製造例2の3種複合生薬抽出物の抗炎症効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において複合生薬抽出物の処理濃度別(0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL)炎症因子(iNOS)の発現程度を示す図である。
【
図7】本発明の製造例2の3種複合生薬抽出物の抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において複合生薬抽出物の処理濃度別(0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL)抗酸化因子(HO-1)の発現程度を示す図である。
【
図8A】本発明の3種複合生薬抽出物の混合比率に従う抗炎症効能及び抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において炎症因子(IL-6)発現程度を示すグラフである。
【
図8B】本発明の3種複合生薬抽出物の混合比率に従う抗炎症効能及び抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において炎症因子(IL-1β)発現程度を示すグラフである。
【
図8C】本発明の3種複合生薬抽出物の混合比率に従う抗炎症効能及び抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において炎症因子(iNOS)発現程度を示すグラフである。
【
図8D】本発明の3種複合生薬抽出物の混合比率に従う抗炎症効能及び抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において抗酸化因子(HO-1)発現程度を示すグラフである。
【
図9A】本発明の複合生薬抽出物の抽出方法(熱水抽出)及び抽出溶媒(エタノール)の濃度に従う抗炎症及び抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において炎症因子(IL-6)の発現量を抽出方法(熱水抽出、0%)及び抽出溶媒(エタノール)の濃度別(25%、50%、70%、90%)に比較して示すグラフである。
【
図9B】本発明の複合生薬抽出物の抽出方法(熱水抽出)及び抽出溶媒(エタノール)の濃度に従う抗炎症及び抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において炎症因子(iNOS)の発現量を抽出方法(熱水抽出、0%)及び抽出溶媒(エタノール)の濃度別(25%、50%、70%、90%)に比較して示すグラフである。
【
図9C】本発明の複合生薬抽出物の抽出方法(熱水抽出)及び抽出溶媒(エタノール)の濃度に従う抗炎症及び抗酸化効能を確認するために、LPSを処理したマウス大食細胞株において抗酸化因子(HO-1)の発現量を抽出方法(熱水抽出、0%)及び抽出溶媒(エタノール)の濃度別(25%、50%、70%、90%)に比較して示すグラフである。
【
図10A】単一及び複合生薬抽出物の肺炎症抑制効能を確認するために、LPSで誘導した肺炎症マウスモデルにおいて単一生薬抽出物(沙参、忍冬、芥子)と複合生薬抽出物処理による炎症因子(IL-1β)の発現量を比較して示すグラフである。
【
図10B】単一及び複合生薬抽出物の肺炎症抑制効能を確認するために、LPSで誘導した肺炎症マウスモデルにおいて単一生薬抽出物(沙参、忍冬、芥子)と複合生薬抽出物処理による炎症因子(IL-6)の発現量を比較して示すグラフである。
【
図10C】単一及び複合生薬抽出物の肺炎症抑制効能を確認するために、LPSで誘導した肺炎症マウスモデルにおいて単一生薬抽出物(沙参、忍冬、芥子)と複合生薬抽出物処理による炎症因子(TNF-α)の発現量を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0074】
実施例
本明細書全体を通じて、特定物質の濃度を表すために使われる“%”は、特に言及がない限り、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%である。
【0075】
製造例
製造例1:4種複合生薬抽出物(混合抽出物)の製造
洗浄及び乾燥した芥子(Brassicae Semen)、沙参(Adenophorae Radix)、忍冬(Lonicerae Folium)、紫蘇子(Perillae Semen)を実験に使用した。前記芥子、沙参、忍冬、紫蘇子の生薬を1:1:1:1の重量比で総60gとなるように混合した後、10倍の25%(v/v)エタノール水溶液を加えて常温で72時間よく撹拌しつつ抽出した。抽出液を濾過し、50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して粉末状態の複合生薬抽出物(混合抽出物)を得た。収率は12~13%であった。
【0076】
製造例2:3種複合生薬抽出物(混合抽出物)の製造
洗浄及び乾燥した芥子(Brassicae Semen)、沙参(Adenophorae Radix)、忍冬(Lonicerae Folium)を実験に使用した。前記芥子、沙参、忍冬の生薬を1:1:1の重量比で総60gとなるように混合した後、10倍の25%(v/v)エタノール水溶液を加えて常温で72時間よく撹拌しつつ抽出した。抽出液を濾過し、50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して粉末状態の複合生薬抽出物(混合抽出物)を得た。収率は約12~14%であった。
【0077】
製造例3:様々な混合比率別3種複合生薬抽出物(混合抽出物)の製造
洗浄及び乾燥した芥子(Brassicae Semen)、沙参(Adenophorae Radix)、忍冬(Lonicerae Folium)を実験に使用した。前記芥子、沙参、忍冬の生薬を表1に記載の重量比(w/w)で総30gとなるように混合した後、10倍の25%(v/v)エタノール水溶液を加えて常温で72時間よく撹拌しつつ抽出した。抽出液を濾過し、50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して総7種類の複合生薬抽出物粉末を得た。それらの収率は表1の通りである。
【0078】
【0079】
製造例4:様々な抽出溶媒(エタノール)濃度別3種複合生薬抽出物(混合抽出物)の製造
洗浄及び乾燥した芥子(Brassicae Semen)、沙参(Adenophorae Radix)、忍冬(Lonicerae Folium)を実験に使用した。前記芥子、沙参、忍冬の生薬を製造例3-1の重量比(w/w)で総30gとなるように混合した後、10倍の25%、50%、70%、90%エタノール水溶液を加えて常温で72時間よく撹拌しつつ抽出した。抽出液を濾過し、50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して総4種類の複合生薬抽出物粉末を得た。それらの収率は表2の通りである。
【0080】
【0081】
製造例5:熱水抽出を用いた複合生薬抽出物(混合抽出物)の製造
洗浄及び乾燥した芥子(Brassicae Semen)、沙参(Adenophorae Radix)、忍冬(Lonicerae Folium)を実験に使用した。前記芥子、沙参、忍冬の生薬を製造例3-1の重量比(w/w)で総30gとなるように混合した後、10倍の蒸留水を加えて90℃の温度で3時間還流抽出した。抽出液を濾過し、50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して複合生薬抽出物粉末を得た。その収率は約15.38%であった。
【0082】
比較例1:単一生薬抽出物の製造
洗浄及び乾燥した芥子(Brassicae Semen)、沙参(Adenophorae Radix)、忍冬(Lonicerae Folium)を実験に使用した。前記芥子、沙参、忍冬の生薬30gに10倍の25%(v/v)エタノール水溶液を加えて常温で72時間よく撹拌しつつ抽出した。抽出液を濾過し、50~65℃で減圧濃縮した後、凍結乾燥して総3種類の単一生薬抽出物粉末を得た。それらの収率は表3の通りである。
【0083】
【0084】
実験例
実験例1:PPEで誘導した肺気腫マウスモデルにおいて4種複合生薬抽出物の肺組織損傷抑制効能
製造例1で準備した本発明の複合生薬抽出物の肺組織損傷抑制効能を確認するために次のような実験を行った。
【0085】
7週齢雄性C57BL/6マウス(ラオンバイオ、大韓民国)を1週間以上馴化飼育した後、(1)正常群、(2)肺気腫誘導及び複合生薬抽出物投与群(実験群)(3)肺気腫誘導及び蒸留水投与群(陰性対照群)に分類した。実験群と陰性対照群の肺気腫を誘導するために、ブタ膵臓エラスターゼ(porcine pancreatic elastase,PPE,Millipore,USA)0.25Uをマウスの気管内に単回点滴投与した。正常群の場合、PBS(phosphate buffered saline)をマウスの気管内に単回点滴投与した。
【0086】
実験群には、蒸留水に溶かした4種複合生薬抽出物を、PPE投与1週前から3週間200mg/kgの容量で1回/1日経口投与した。正常群及び陰性対照群には蒸留水だけを経口投与した。4種複合生薬抽出物又は蒸留水の最終投与後にマウスを二酸化炭素で麻酔して肺組織を摘出した。摘出した肺組織をホルマリンに固定してH&E染色(hematoxylin and eosin staining)を行った。光学顕微鏡(X100)で肺組織を観察して撮影した写真を
図1に示す。
【0087】
図1に示すように、PPEで肺気腫を誘導した結果、陰性対照群の肺胞拡張及び肺組織の損傷は正常群に比べて1.5倍程度有意に増加した。また、本発明の4種複合生薬抽出物を投与した実験群では、肺組織の損傷が肺気腫誘導群(陰性対照群)に比べて抑制された。
【0088】
したがって、本発明の4種複合生薬抽出物は、肺気腫マウスモデルにおいて肺組織の損傷を抑制する効果を示すことが確認できた。
【0089】
実験例2.微小粒子状物質によって誘導された肺上皮細胞株の細胞老化に対する4種複合生薬抽出物の抗老化効能
製造例1で準備した本発明の複合生薬抽出物の抗老化効能を確認するために次のような実験を行った。
【0090】
ヒトの肺上皮細胞株であるNCI-H292細胞(ATCC,USA)を10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum,FBS)を含むRPMI培地(Corning、USA)を用いて37℃、5% CO2培養器で培養した。前記細胞をウェル当たり1×104細胞数で96ウェルプレートに準備し、24時間安定化させた。安定化後、細胞の上澄液を除去し、製造例1の複合生薬抽出物を200μg/mlの濃度で処理した後、1時間培養した。次に、前記細胞に微小粒子状物質(particulate matter 10,PM10)(NIST,USA)50μg/mlをさらに処理した(実験群)。正常群には複合生薬抽出物及び微小粒子状物質の両方とも処理せず、陰性対照群には微小粒子状物質だけを処理した。5日後、前記細胞をホルマリンで固定した後、β-ガラクトシダーゼ染色(senescence beta-galactosidase staining)を用いて細胞の老化程度を確認した。
【0091】
図2に示すように、4種複合生薬抽出物を処理した実験群では、微小粒子状物質処理によって誘発される細胞老化が陰性対照群に比べて顕著に減少した。したがって、本発明の4種複合生薬抽出物は優れた抗老化効果を示すことが分かった。
【0092】
実験例3.4種複合生薬抽出物の肺上皮細胞株に対するテロメラーゼ発現増加効能(抗老化効能)
NCI-H292細胞を1×106細胞数で100ファイ(φ)プレートに準備して安定化させた。24時間後、前記細胞に製造例1の複合生薬抽出物を100μg/ml、200μg/mlの濃度で処理した。24時間後に前記細胞を回収してタンパク質を抽出した後、テロメラーゼの触媒サブユニットであるhTERT(human telomerase reverse transcriptase)の抗体(ab32020,Abcam,USA)を使用してウェスタンブロット実験を行った。
【0093】
図3に示すように、肺上皮細胞株に複合生薬抽出物を100μg/ml、200μg/ml濃度で処理した結果、hTERTの発現が非処理群(対照群)に比べてそれぞれ1.5倍、3.2倍に濃度依存的に増加した。したがって、本発明の4種複合生薬抽出物は優れた抗老化効果を示すことが分かった。
【0094】
実験例4.LPSによって誘導された大食細胞株のNO(Nitric Oxide)生成に対する4種複合生薬抽出物の抑制効能(抗炎症効能)
マウスの大食細胞株であるRaw264.7細胞(ATCC,USA)を、10%のFBSが含まれているRPMI培地(Invitrogen,USA)を用いて、37℃5% CO2培養器で培養した。前記細胞をウェル当たり2.5×105細胞数で24ウェルプレートに準備して安定化させた。24時間後、細胞の上澄液を除去した後、製造例1の4種複合生薬抽出物を前記細胞に0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、4mg/mLの濃度で処理した。1時間後、LPS100ng/mLを前記細胞にさらに処理した。24時間後に細胞の上澄液を回収し、NOの生成変化を測定するためのグリース分析(Griess test)を行い、NaNO2(Sodium Nitrite)の濃度別標準曲線を用いてNOの濃度を算出した(
図4)。
【0095】
図4に示すように、LPSの処理によって大食細胞において炎症因子NOの生成が12μMレベルに増加した(陰性対照群)。LPS処理とともに複合生薬抽出物を0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、4mg/ml濃度で処理した実験群では、NOの濃度がそれぞれ9.1μM、6.5μM、4.1μM、2μMであり、濃度依存的な減少を示した。したがって、本発明の4種複合生薬抽出物は優れた抗炎症効能を示すことが分かった。
【0096】
実験例5:PPEで誘導した肺気腫マウスモデルにおいて3種複合生薬抽出物の肺組織損傷抑制効能
製造例2で準備した本発明の3種複合生薬抽出物(芥子、沙参、及び忍冬)の肺組織損傷抑制効能を確認するために次のような実験を行った。
【0097】
7週齢雄性C57BL/6マウス(ラオンバイオ、大韓民国)を1週間以上馴化飼育した後、(1)正常群、(2-4)肺気腫誘導及び複合生薬抽出物(50mg/kg、100mg/kg、200mg/kg)投与群(実験群)(3)肺気腫誘導及び蒸留水投与群(陰性対照群)に分類した。実験群と陰性対照群の肺気腫を誘導するためにブタ膵臓エラスターゼ(porcine pancreatic elastase,PPE,Millipore,USA)1ユニット(Unit)をマウスの気管内に単回点滴投与した。正常群の場合、PBS(phosphate buffered saline)をマウスの気管内に単回点滴投与した。
【0098】
実験群には、蒸留水に溶かした複合生薬抽出物を、PPE投与1週前から3週間50mg/kg、100mg/kg、200mg/kgの容量で1回/1日経口投与した。正常群及び陰性対照群には蒸留水だけを経口投与した。複合生薬抽出物又は蒸留水の最終投与後にマウスを二酸化炭素で麻酔し、肺組織を摘出した。摘出した肺組織をホルマリンに固定してH&E染色(hematoxylin and eosin staining)を行った。光学顕微鏡(X200)で肺組織を観察して撮影した写真を
図5に示す。
【0099】
図5に示すように、PPEで肺気腫を誘導した結果、陰性対照群の肺胞拡張及び肺組織の損傷は、正常群に比べて1.5倍程度有意に増加した。また、本発明の3種複合生薬抽出物を投与した実験群では肺組織の損傷が肺気腫誘導群(陰性対照群)に比べて濃度依存的に(50mg/kg、100mg/kg、200mg/kg)抑制された。
【0100】
したがって、本発明の3種複合生薬抽出物は肺気腫マウスモデルにおいて肺組織の損傷を抑制する効果を示すことが確認できた。
【0101】
実験例6.LPSによって誘導された大食細胞株において3種複合生薬抽出物の炎症因子発現抑制効能(抗炎症効能)
マウスの大食細胞株であるRaw264.7細胞(ATCC,USA)を、10%のFBSが含まれているRPMI培地(Invitrogen,USA)を用いて、37℃、5%CO2培養器で培養した。前記細胞をウェル当たり2.5×105細胞数で24ウェルプレートに準備して安定化させた。24時間後、細胞の上澄液を除去した後、前記細胞にLPS100ng/mLと製造例2の3種複合生薬抽出物を0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mLの濃度で処理した。24時間後に細胞の上澄液を除去し、細胞からTRIzol(Invitrogen,USA)を用いてRNAを分離した。その後、RT-PCRを行って得たcDNAを用いてIL-6、IL-1β、及びiNOS炎症因子に特異的なプライマーとSYBRグリーンプローブ(Takara,Japan)を用いたqPCRを行った。qPCRから得たRNAの発現変化値は、GAPDH mRNAを標準遺伝子として無処理群に対して相対的な変化量で表示した(
図6)。試験に用いられたマウス遺伝子に対するプライマー配列は、表4に示す。
【0102】
【0103】
図6に示すように、LPSの処理によって大食細胞において炎症因子IL-6、IL-1β、及びiNOSの生成が有意に増加し(陰性対照群)、LPS処理とともに3種複合生薬抽出物を0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml濃度で処理した実験群ではIL-6、IL-1β、iNOSの発現量がいずれも濃度依存的に有意の減少を示した。したがって、本発明の3種複合生薬抽出物は優れた抗炎症効能を示すことが分かった。
【0104】
実験例7.LPSによって誘導された大食細胞株において3種複合生薬抽出物の抗酸化因子発現増加効能(抗酸化効能)
本発明者らは、LPSによって誘導された大食細胞株において、製造例2で製造した本発明の3種複合生薬抽出物が抗酸化因子であるHO-1の発現に及ぼす影響を確認するために、HO-1(heme oxygenase-1)遺伝子に特異的なプライマーとSYBRグリーンプローブ(Takara,Japan)を用いてqPCRを行った点を除けば、実験例6と同じ方法で実験を行った。qPCR結果から得たRNAの発現変化値は、GAPDH mRNAを標準遺伝子として無処理群に対して相対的な変化量で表示した(
図7)。試験に用いられたマウス遺伝子に対するプライマー配列は表5に示す。
【0105】
【0106】
図7に示すように、LPS処理と共に本発明の3種複合生薬抽出物を0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml濃度で処理した実験群では、HO-1の発現量が濃度依存的に有意の増加を示した。したがって、本発明の3種複合生薬抽出物は優れた抗酸化効能を示すことが分かった。
【0107】
実験例8.LPS処理された大食細胞株において混合比率別複合生薬抽出物の炎症因子発現抑制及び抗酸化因子発現増加効能(抗炎症及び抗酸化効能)
LPS(Sigma,US)によって誘導された大食細胞株において、製造例3の比率別3種複合生薬抽出物の抗炎症及び抗酸化効能を確認するために、IL-6、IL-1β、iNOS、HO-1遺伝子に特異的なプライマーとSYBRグリーンプローブ(Takara,Japan)を用いてqPCRを行った。細部実験過程は前記実験例6及び7と同一であり、試験に用いられたマウス遺伝子に対するプライマー配列は前記表4及び表5に示されている。
【0108】
図8A~
図8Cに示すように、LPS処理によって大食細胞株において炎症因子IL-6、IL-1β、iNOS生成が有意に増加し(陰性対照群)、LPS処理と共に製造例3の3種複合生薬抽出物を2mg/ml濃度で処理した実験群では、炎症因子の発現量がいずれも有意の減少を示した。したがって、本発明の複合生薬抽出物は優れた抗炎症効能を示すことが分かった。抗酸化因子のHO-1はLPS処理とともに製造例3の複合生薬抽出物を2mg/ml濃度で処理した実験群において発現量が有意に増加した(
図8D)。したがって、本発明の複合生薬抽出物は優れた抗酸化効能を示すことが分かった。
【0109】
実験例9.LPSによって誘導された大食細胞株において熱水及び抽出溶媒(エタノール)濃度別複合生薬抽出物の抗炎症及び抗酸化効能
LPS(Sigma,US)によって誘導された大食細胞株において、製造例4の抽出溶媒(エタノール)濃度別複合生薬抽出物及び製造例5の熱水複合生薬抽出物の抗炎症及び抗酸化効能を確認するために、IL-6、iNOS、HO-1遺伝子に特異的なプライマーとSYBRグリーンプローブ(Takara,Japan)を用いてqPCRを行った。細部実験過程は実験例6及び7と同一であり、試験に用いられたマウス遺伝子に対するプライマー配列は表4及び表5に示されている。
【0110】
図9A及び
図9Bに示すように、LPS処理によって大食細胞株において炎症因子IL-6及びiNOS生成が有意に増加し(陰性対照群)、LPS処理とともに製造例4及び製造例5の複合生薬抽出物を2mg/ml濃度で処理した実験群では、炎症因子の発現量がいずれも有意の減少を示した。したがって、本発明の複合生薬抽出物は優れた抗炎症効能を示すことが分かった。抗酸化因子HO-1は、LPS処理とともに製造例4及び製造例5の複合生薬抽出物を2mg/ml濃度で処理した実験群において発現量が有意に増加した(
図9C)。したがって、本発明の複合生薬抽出物は優れた抗酸化効能を示すことが分かった。
【0111】
実験例10.LPSで誘導した肺炎症マウスモデルにおいて単一生薬抽出物と複合生薬抽出物の抗炎症効能
3種類の単一及び複合生薬抽出物の肺炎症抑制効能を確認するために次のような実験を行った。7週齢雄性C57BL/6マウス(ラオンバイオ、大韓民国)を1週間以上馴化飼育した後、(1)正常群、(2)LPS誘導及び蒸留水投与群(陰性対照群)、(3)~(5)LPS誘導及び単一生薬抽出物投与群、(6)LPS誘導及び複合生薬抽出物投与群に分類した。
【0112】
(3)~(6)の実験群には蒸留水に溶かした製造例2の3種複合生薬抽出物及び比較例1の3種類の単一生薬抽出物をそれぞれ500mg/kgの容量で5日間1回/1日経口投与し、正常群及び陰性対照群には蒸留水だけを経口投与した。
【0113】
実験群と陰性対照群の急性肺炎症反応誘導は、実験終了24時間前に、50μlのPBS(phosphate buffered saline)に溶かしたLPS(Sigma,US)50μgをマウス気管内に単回点滴投与する方法で行った。正常群の場合、PBS(phosphate buffered saline)をマウスの気管内に単回点滴投与した。
【0114】
生薬抽出物又は蒸留水の最終投与後、マウスを二酸化炭素で犠牲させた後、肺組織を分離してTRIzol(Invitrogen,USA)を用いてRNAを抽出した。その後、RT-PCRを行って得たcDNAを用いて、炎症因子であるIL-1β、IL-6及びTNF-αに特異的なプライマーとSYBRグリーンプローブ(Takara,Japan)を用いたqPCRを行った。qPCRから得たRNAの発現変化値は、GAPDH mRNAを標準遺伝子として無処理群に対して相対的な変化量で表示した。試験に用いられたマウス遺伝子に対するプライマー配列は、表6に示す。
【0115】
【0116】
図10A~
図10Cに示すように、LPS投与によってマウス肺組織において炎症因子IL-1β、IL-6及びTNF-αの生成が有意に増加し(陰性対照群)、LPS投与とともに製造例2の複合生薬抽出物を投与した実験群では炎症因子の発現が減少して優れた抗炎症効能を示すことが分かった。一方、LPSとともに単一生薬抽出物を投与した実験群では炎症因子の有意の減少は見られなかった。このことから、本発明の複合生薬抽出物の抗炎症効能は単一生薬抽出物に比べて相乗効果(synergistic effect)を示し、顕著に優れていることを確認した。
【0117】
【0118】
【0119】
【配列表】