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特開2022-159552iNOS阻害組成物および乳がん治療薬としてのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159552
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】iNOS阻害組成物および乳がん治療薬としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20221006BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K31/198
A61P43/00 111
A61K31/4422
A61K31/337
A61P35/00
A61P35/04
A61K9/127
A61K9/14
A61K9/51
A61K47/24
A61K38/22
A61K38/43
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K48/00
A61K31/56
C12N15/09 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022131687
(22)【出願日】2022-08-22
(62)【分割の表示】P 2020099268の分割
【原出願日】2015-04-08
(31)【優先権主張番号】61/976,956
(32)【優先日】2014-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515104741
【氏名又は名称】ザ・メソジスト・ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー チー ニン チャン
(57)【要約】
【課題】ヒトのがんの1種または複数の症状の処置および/または寛解のための改善された化学療法組成物を提供すること。
【解決手段】カルシウムチャネルアンタゴニストを含む1種または複数の選択される降圧剤と組み合わせた、または1種もしくは複数の従来の化学療法もしくは抗がんレジメンと組み合わせた1種または複数のiNOS経路阻害化合物を用いて、1種または複数の哺乳動物のがんを処置するための方法、特に、ヒトの乳がんを処置するための方法が開示されている。これらの組成物を含む特定の治療用製剤、ならびに難治性、転移性および再燃性がんの処置における、特にヒトトリプルネガティブ乳がんにおける処置抵抗性を管理または反転するためのそれらの使用のための方法も開示されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
関連出願への相互参照
この出願は、2014年4月8日に出願された米国仮特許出願第61/976,956号(係属中;代理人管理番号37182.170)に対する優先権を主張する;この内容は、それへの参照を表現することによってその全体が本明細書に具体的に援用される。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金R01-CA138197の下、政府の支援により為された。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
共同研究契約についての関係者の名称
適用なし。
【0004】
発明の分野
本発明は、全般的に、医学および腫瘍学の分野に関する。特に、本発明は、ヒトのがんの1種または複数の症状の処置および/または寛解のための改善された化学療法組成物を提供する。実例的な実施形態において、iNOS経路の1種または複数のエフェクターの投与を用いる、ヒトの乳がんを処置するための方法が提供される。例示的な実施形態において、例えば、単独で、またはカルシウムチャネルアンタゴニストを含む1種もしくは複数の降圧剤と組み合わせたN-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA;CON;MW248.28)を含むiNOS阻害剤の製剤が、哺乳動物の乳がんの処置のため、特に、従来の化学療法薬に対し抵抗性である疾患の難治性形態であり、その予後が不良である、ヒトにおけるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の処置のための治療用製剤として提供される。
【背景技術】
【0005】
乳がん生物学における著しい進歩にもかかわらず、進行性乳がんの処置における進展は限定的であり、過去数十年間にわたり、処置抵抗性転移性乳がんを有する女性の全生存期間の変化は殆どない。処置抵抗性および現在の治療法の失敗のために、およそ40,000名の転移性乳がんの女性が毎年死亡していることに注目されたい。発癌の古典的モデルは、突然変異の正しい組み合わせを蓄積することによりいかなる細胞も形質転換され得るという、ランダムまたは「確率論的」として説明することができる。代替モデルは、細胞の亜集団またはクローンが、発癌を駆動する自己再生および細胞不均一性に寄与する分化の能力を含む、鍵となる幹様特性を保持するというものである。このような腫瘍内クローン不均一性を支持する実験的証拠は、Dickらによってヒトの白血病において最初に報告された。続いて、これらの概念は、ヒトの乳がんが、CD44/CD24-/low3の細胞表面発現によって特徴付けられる幹様細胞によって駆動されたことを実証するいくつかのグループによって固形腫瘍へと拡張された。固形がんの大規模配列決定解析は、個々の腫瘍内の広範な不均一性のさらなる証拠をもたらした。ENREF13。この腫瘍内不均一性は、処置抵抗性および処置失敗の主要な寄与因子となり得る。異なる亜集団は、腫瘍適合を助長し、ダーウィン淘汰により治療失敗を導き得る不均一なタンパク質機能に関連し得る。したがって、不均一な巨大腫瘍内の幹様特性を有する細胞の亜集団は、腫瘍惹起および再発の原因となることが示された。
【0006】
3グループが最近、独立的に、神経膠芽腫(GBM)、扁平上皮皮膚腫瘍および腸管腺腫における系列追跡実験によって、幹様特性を有する細胞の存在の直接的かつ機能的な証拠をもたらし、がんの階層的性質をさらに実証した。これらの独立的なグループは、巨大腫瘍内の細胞のごく一部が、クローン原性潜在力を有し、この部分が、化学療法に対し本質的に抵抗性であることを確認する。
【0007】
トリプルネガティブ乳がん
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、承認された標的化治療選択肢がない、エストロゲン(ERα)、プロゲステロン(PR)およびヒト上皮増殖因子(HER-2)受容体を欠く侵襲性かつ致死的形態のがんである。多数の進歩にもかかわらず、処置抵抗性および転移は、TNBC患者における主な死亡原因である。従来の処置に対する抵抗性および転移の発生は、腫瘍惹起能力を有する細胞の亜集団から生じ得る。化学療法後の残留腫瘍は、自己再生能力および間葉系特色を呈するCD44/CD24-/low細胞が濃縮されている。これらのがん幹細胞(CSC)は、腫瘍成長の再惹起および転移播種に役立ち得る。よって、従来の化学療法および抗CSC化合物によるコンビナトリアル処置が、腫瘍負荷、再発および遠隔臓器への転移の低下に必要とされるであろう。残念ながら、かかる組み合わせは、診療所における日常的な使用に現在利用できない。
【0008】
現在、TNBCに標的化処置は存在しない。誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、乳腺腫瘍の侵襲性を促進することが判明した。以前の研究は、高い内在性iNOS発現が、不十分なTNBC患者生存率と相関し、これを予測することを実証した。しかし、乳がんの処置において現在までに為された進歩にもかかわらず、臨床医は依然として、その処置、特に、TNBCの処置における使用のための化学療法において活性な新規薬剤の開発の必要がまだ相当にあることに同意する。
【0009】
実際に、依然として、過剰増殖障害、特に、従来の化学療法薬に対し抵抗性となった乳がんの処置において有効な、新たな薬剤の著しく満たされていない医学的な必要がある。
【0010】
乳がん患者における高血圧共存症
高血圧は、乳がんの女性における病的状態を増強する最も一般的な障害の1種である(Sarfatiら、2013年;Gampenriederら、2014年)。化学療法誘導性の高血圧症は、転移性およびTNBCにおける患者死亡率を増加させる共通効果である(Cameronら、2013年;Fanら、2014年)。よって、化学療法投与の有害な高血圧性副作用に対抗することができる1種または複数の降圧薬の同時投与は、患者の健康を改善し、生存を増加させるための重要な考察を表す。
【0011】
本発明は、TNBCを処置するためのin vitroおよびin vivoモデルの両方におけるカルシウムチャネル遮断薬(伝統的な降圧薬として診療所において現在使用されている)の同時投与の相乗効果を実証した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】CAMERON,Dら、Lancet Oncol.(2013年9月)14(10):933~942
【非特許文献2】GAMPENRIEDER,SPら、Anticancer Res.(2014年1月)34(1):227~233
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、哺乳動物のがん、特に転移性またはTNBC等、ヒトの乳がんを処置するための化学療法剤として、単独で、または1種もしくは複数のカルシウムイオンアンタゴニスト(スローチャネル型遮断薬)と組み合わせてiNOS阻害剤の製剤を提供することにより、関連する腫瘍学および製薬分野に固有の上述および他の満たされていない不備に取り組む。本発明は、かかる処置を必要とする患者に予想外の利益を有利にもたらす、新たながん処置モダリティにおいてiNOS阻害化合物を使用し、再度目的化する(repurpose)方法も提供する。
【0014】
全体的および一般的な意味において、本発明はまず、それを必要とする哺乳動物におけるがんの1種または複数の症状を処置および/または寛解するための医薬組成物を提供する。例示的な実施形態において、かかる化学療法製剤は、1)単独で、2)a)カルシウムチャネルアンタゴニスト等、治療有効量の1種もしくは複数の降圧剤;c)1種もしくは複数の従来の化学療法的、治療的、診断的もしくは対症的化合物;b)カルシウムチャネルアンタゴニスト等、治療有効量の1種もしくは複数の降圧剤と組み合わせて、または3)b)由来の降圧剤およびc)由来の1種もしくは複数の従来の化合物と共に、治療有効量の少なくとも第1のiNOS阻害化合物を含む。
【0015】
本発明の実施において、例示的なiNOS阻害化合物は、N-モノメチル-L-アルギニン[L-NMMA]、(N-[[3-(アミノメチル)フェニル]メチル]-エタンイミドアミド)[1400W]、(N-[イミノ(ニトロアミノ)メチル]-L-オルニチンメチルエステル)[L-NAME]ならびにこれらの塩、誘導体および組み合わせを限定することなく含む。
【0016】
同様に、本発明の実施において、例示的なカルシウムチャネルアンタゴニストは、アムロジピン、フェロジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニバルジピン(nivaldipine)、アゼルニジピンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種または複数の降圧剤を限定することなく含む。
【0017】
実例的な実施形態において、本発明者は、1種または複数のiNOS阻害剤および1種または複数のカルシウムチャネルアンタゴニストが同時投与されると、相乗的治療転帰を達成することができることを実証した。かかる一実施形態において、iNOS阻害剤、L-NMMAおよびカルシウムチャネルアンタゴニスト、アムロジピンベシレート(NORVASC(登録商標)、3-エチル-5-メチル(±)-2-[(2-アミノエトキシ)メチル]4-(2-クロロフェニル)-1,4-ジヒドロ-6-メチル-3,5-ピリジンジカルボキシレート、モノベンゼンスルホネート;C2025CIN・CS;MW=567.1)がTNBC細胞株に同時投与されると、特に驚くべき予想外の相乗作用が得られた。
【0018】
任意選択で、本発明の組成物は、1種もしくは複数の追加的な別個のiNOS阻害剤および/または1種もしくは複数の追加的な別個の降圧剤および/または1種もしくは複数の追加的な別個の従来の処置をさらに含むこともできる。
【0019】
ある特定の実施形態において、本発明者は、1種または複数の降圧剤、抗新生物剤、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤もしくは化学療法剤またはこれらのいずれかの組み合わせを限定することなく含む、1種または複数の追加的な活性成分と共に製剤化された1種または複数のiNOS阻害化合物を含む同時治療の製剤を考慮する。
【0020】
例示的な化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ドセタキセル、パクリタキセル、トラスツズマブ、メトトレキセート、エピルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、イクサベピロン(isabepilone)、エリブリン、ラパチニブ、カルムスチン、ナイトロジェンマスタード、サルファマスタード、プラチンテトラニトレート、ビンブラスチン、エトポシド、カンプトテシン、トポイソメラーゼ阻害剤(トポイソメラーゼIおよびII阻害剤を含む)、およびこれらの誘導体、アナログ、塩、活性代謝物または1種もしくは複数の組み合わせ等、抗がん化合物を限定することなく含む。
【0021】
例示的な治療剤は、免疫調節剤、神経活性剤(neuroactive agent)、抗炎症剤、抗高脂血症剤、ホルモン、受容体アゴニストもしくはアンタゴニストまたは抗感染剤、またはタンパク質、ペプチド、抗体、酵素、RNA、DNA、siRNA、mRNA、リボザイム、ホルモン、補助因子、ステロイド、アンチセンス分子から選択される化合物、およびこれらの組み合わせのうち1種または複数を限定することなく含む。
【0022】
同様に、本明細書に開示されている化学療法製剤の投与は、処置を受けている哺乳動物への治療有効量の放射線の投与を限定することなく含む、1種または複数の追加的ながん治療によりさらに増大させることができる。
【0023】
本発明の実施において、開示されている化学療法組成物は、処置レジメンを担当する医療提供者によって必要と判断される通りに、単回投与で、あるいは1または複数週間から1または複数箇月間の期間にわたる複数回投与で動物に全身的に投与することができる。
【0024】
好ましくは、本明細書に開示されているiNOS阻害性抗がん組成物は、哺乳動物宿主細胞、特にヒト宿主細胞への投与に適した、1種または複数の薬学的に許容される担体、バッファー、希釈剤、ビヒクル、賦形剤またはこれらのいずれかの組み合わせをさらに含む。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする動物におけるがんの1種または複数の症状を処置または寛解するための方法を提供する。かかる方法は、全体的および一般的な意味において、動物におけるがんの1種または複数の症状の処置または寛解に十分な時間、本明細書に開示されている化学療法組成物のうち1種または複数の有効量を、それを必要とする動物に投与するステップを少なくとも含む。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物被験体におけるがんの1種または複数の症状を処置または寛解するための方法を提供する。全体的および一般的な意味において、本方法は、被験体におけるがんの1種または複数の症状の処置または寛解に有効な時間、本明細書に開示されている化学療法組成物のうち1種または複数の治療有効量を、それを必要とする哺乳動物被験体に投与するステップを少なくとも含む。
【0027】
ある特定の実施形態において、本発明者は、開示されている化学療法製剤が、例えば、がんが、処置抵抗性トリプルネガティブ乳がんとして診断または同定される状態を含む、がんが、難治性、転移性、再燃性または処置抵抗性がんとして診断または同定される状態において特に有用であると考えている。
【0028】
本発明は、それを必要とする動物におけるがんの1種または複数の症状を処置または寛解する方法も提供する。かかる方法は、一般に、動物におけるがんの1種または複数の症状の処置または寛解に十分な時間、有効量の本明細書に開示されている少なくとも第1の化学療法用iNOS阻害製剤またはそのアナログ、アゴニスト、アンタゴニストもしくは誘導体もしくは塩を単独で、または1種もしくは複数のカルシウムチャネルアンタゴニストと組み合わせて動物に(全身的に、または動物の身体内もしくは周囲の1つもしくは複数の領域もしくは部位に局所的に)投与するステップを少なくとも含む。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、動物におけるがん細胞または腫瘍の成長を阻害するための方法も提供する。本方法は、全体的および一般的な意味において、がん細胞または腫瘍の成長の阻害に有効な量および時間で、それを必要とする動物の身体の1個または複数の細胞または組織に、本明細書に開示されている化学療法用iNOS阻害製剤のうち1種または複数の量を提供するステップを含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、被験体、好ましくは、ヒトにおけるがんを処置するための方法を提供する。全体的および一般的な意味において、本方法は、一般に、本明細書に開示されているiNOS阻害性化学療法製剤のうち1種または複数の治療有効量を単独で、あるいは本明細書に開示されている1種もしくは複数の抗高血圧性カルシウムチャネルアンタゴニスト化合物等、1種もしくは複数のカルシウムチャネルアンタゴニスト、1種もしくは複数の追加の化学療法剤、治療有効量の電離放射線またはこれらのいずれかの組み合わせと組み合わせて、それを必要とする被験体に投与するステップを含む。被験体に同時投与することができる例示的な追加の組成物は、1種または複数の従来の抗がん薬を限定することなく含む。あるいは、本発明の方法は、腫瘍切除等、1種もしくは複数の外科的介入を含むこともできる、または治療的に有効な電離放射線(すなわち、放射線療法)の1種もしくは複数のクールをさらに任意選択で含むことができる。
【0031】
本発明は、哺乳動物におけるがんの1種または複数の症状を処置または寛解する方法も提供する。かかる方法は、一般に、哺乳動物におけるがんの1種または複数の症状の処置または寛解に十分な時間、本明細書に開示されている有効量のiNOS阻害性化学療法製剤を単独で、または1種もしくは複数の降圧薬、特にカルシウムチャネルアンタゴニストと組み合わせて、単独で、または1種もしくは複数の従来の化学療法剤とさらに組み合わせて哺乳動物に投与するステップを含む。
【0032】
本発明は、動物被験体におけるがんの治療における使用のための医薬組成物であって、本明細書に開示されているiNOS阻害性化学療法製剤のうち1種または複数を単独で、または1種もしくは複数のカルシウムチャネルアンタゴニストと組み合わせて含む組成物も提供し、ヒト被験体における悪性乳がんの1種または複数の症状を処置または寛解するためのかかる使用を含むことができる。
【0033】
本発明は、乳がん、肺がん、前立腺がん、線維肉腫、滑膜肉腫、膵臓がんおよび他の形態の疾患を限定することなく含む哺乳動物のがんの1種または複数の形態を有する、有すると疑われる、またはそうであると診断された動物の身体内または周囲の1個または複数の哺乳動物細胞を変更、影響、破壊または殺傷する方法も提供する。かかる方法は、一般に、動物におけるがんの1種または複数の症状の処置および/または寛解に十分な時間、1個または複数の動物細胞に、開示されているiNOS阻害性化学療法組成物のうち1種または複数の治療有効量を単独で、または特にカルシウムチャネルアンタゴニストを含む1種もしくは複数の降圧薬(antihypeprtensive)と組み合わせて提供するステップを含む。
【0034】
本明細書において、かかる細胞、組織、臓器および/または身体内の過剰増殖細胞成長の過程に関与する少なくとも1種の構成成分、経路、酵素またはステップの変更、モジュレート、制御、増加および/または減弱に有効な時間、それを必要とする被験体の1個または複数の細胞、組織および/または臓器に、開示されているiNOS阻害性化学療法組成物のうち1種または複数(one of more)の有効量を単独で、または1種もしくは複数のカルシウムチャネルアンタゴニストと組み合わせて提供することにより、動物の身体内または周囲で成長する過剰増殖細胞の過程に関与する少なくとも1種の構成成分、経路、酵素またはステップを変更、モジュレート、制御、増加および/または減弱する方法も提供される。
【0035】
本明細書において、ヒトの乳がんおよびヒトの治療抵抗性トリプルネガティブ乳がんを限定することなく含む哺乳動物のがんの少なくとも1種の症状を処置および/または寛解する方法がさらに提供される。
【0036】
iNOS阻害化合物およびその製剤
本明細書に記す通り、本発明のiNOS阻害性化学療法製剤は、単一のがん処置モダリティとして用いることができる、あるいは、1種または複数のタンパク質、ペプチド、ポリペプチド(酵素、抗体、抗原、抗原結合性断片等を限定することなく含む);RNA分子(siRNA、iRNA、mRNA、tRNAおよびリボザイム等の触媒RNAその他を限定することなく含む)、DNA分子(オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、遺伝子、コード配列(CDS)、イントロン、エクソン、プラスミド、コスミド、ファージミド、バキュロウイルス、ベクター[ウイルスベクター、ビリオン、ウイルス粒子その他を限定することなく含む]を限定することなく含む);ペプチド核酸、検出剤、画像化剤、造影剤、検出可能ガス、放射性核種その他、および1種または複数の追加の化学療法剤、外科的介入(例えば、腫瘍切除)、放射線療法その他、または罹患患者のための多因子性もしくは多巣性処置プランの一部としてのこれらのいずれかの組み合わせを限定することなく含む、1種または複数の追加の化学療法薬、診断用試薬および/またはその他と組み合わせることができる。
【0037】
本発明の化学療法製剤は、1種または複数のリポソーム、粒子、脂質複合体を限定することなく含む、iNOS阻害性化学療法製剤の送達を助ける、容易にするまたは改善するための1種または複数の追加的な構成成分をさらに任意選択で含むこともでき、1種または複数の結合剤、細胞表面活性薬剤、界面活性剤、脂質複合体、ニオソーム(niosome)、エトソーム(ethosome)、トランスフェロソーム(transferosome)、リン脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴソームまたはこれらのいずれかの組み合わせをさらに任意選択で含むことができ、1種または複数のナノ粒子、マイクロ粒子、ナノカプセル、マイクロカプセル、ナノスフェア、マイクロスフェアまたはこれらのいずれかの組み合わせを含む医薬品製剤内に任意選択で提供することができる。
【0038】
医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはこれらのいずれかの組み合わせと混合することもでき、リポソーム、界面活性剤、ニオソーム、エトソーム、トランスフェロソーム、リン脂質、スフィンゴソーム、ナノ粒子、マイクロ粒子またはこれらのいずれかの組み合わせを含むようにさらに任意選択で製剤化することができる。
【0039】
好ましくは、本明細書に開示されている化学療法製剤は、約4.2~約8.2のpHにおいて少なくとも実質的に安定的となり、より好ましくは、約5~約7.5のpHにおいて実質的に安定的となるであろう。好ましくは、活性成分は、これらが投与される動物の生理的条件において実質的に活性となるであろう。
【0040】
化学療法の方法および使用
本発明の別の重要な態様は、例えば、トリプルネガティブ乳がん等の処置抵抗性乳がんを含む乳がんの1種または複数の形態の症状を処置または寛解するための、開示されているiNOS阻害性化学療法製剤を使用するための方法に関係する。かかる方法は、一般に、罹患哺乳動物における乳がんの処置(あるいはその1種または複数の症状の寛解)に十分な量および時間で、開示されている抗がん組成物のうち1種または複数を哺乳動物(特に、それを必要とするヒト)に投与するステップを含む。
【0041】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている化学療法製剤は、がん処置の必要に応じて、単一の処置モダリティ(単回投与として、あるいは数時間から数日間または数週間の期間にわたり複数回投与で)において動物に提供することができる。あるいは、一部の実施形態において、数週間から数箇月間またはより長い期間、処置を継続すること、または治療の1種もしくは複数の追加的な様式と組み合わせてこれを含むことが望ましい場合がある。他の実施形態において、1種または複数の現存するまたは従来の処置レジメンと組み合わせて治療を提供することが望ましい場合がある。
【0042】
本発明は、がんの1種または複数の症状の治療および/または寛解のための医薬の製造における、開示されている化学療法組成物のうち1種または複数の使用、特に、ヒトの乳がん等、哺乳動物のがんの1種または複数の症状の処置および/または寛解のための医薬の製造における使用も提供する。
【0043】
本発明は、がんの処置、特に、ヒトの処置抵抗性トリプルネガティブ乳がんの処置のための医薬の製造における、開示されているiNOS阻害剤/カルシウムチャネルアンタゴニスト製剤のうち1種または複数の使用も提供する。
【0044】
治療用キット
開示されているiNOS阻害製剤のうち1種または複数および特定のがん処置モダリティにおいてキットを使用するための説明書を含む治療用キットも、本発明の好ましい態様を表す。これらのキットは、1種もしくは複数の追加的な抗がん化合物、1種もしくは複数の診断用試薬または1種もしくは複数の追加的な治療用化合物、医薬品その他をさらに任意選択で含むことができる。
【0045】
本発明のキットは、商品流通のために包装することができ、動物への化学療法組成物(複数可)の送達に適合された1種または複数の送達装置(例えば、シリンジ、注射剤その他)をさらに任意選択で含むことができる。かかるキットは、典型的に、医薬組成物(複数可)を配置し、好ましくは適宜分注することができる少なくとも1個のバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器を含む。第2の医薬品も提供される場合、本キットは、該第2の組成物を配置することができる第2の別個の容器を含有することもできる。あるいは、本明細書に開示されている複数の医薬組成物は、懸濁物または溶液等、単一の混合物において調製することができ、バイアル、フラスコ、シリンジ、カテーテル、カニューレ、ボトルまたは他の適した単一の容器等、単一の容器において包装することができる。
【0046】
本発明のキットは、典型的に、例えば、所望のバイアル(複数可)または他の容器(複数可)を保持して、破損、太陽光への曝露もしくは他の望ましくない因子を最小化もしくは防止する、またはキット内に含まれている組成物(複数可)の即時使用を可能にすることができる射出またはブロー成形されたプラスチック容器等、商品販売のために緊密に閉じ込めたバイアル(複数可)または他の容器(複数可)を含有または保持するように適合された保持機構を含むこともできる。
【0047】
医薬品製剤
ある特定の実施形態において、本発明は、単独での、あるいは診断、予防および/または治療の1種または複数の他のモダリティと組み合わせた、動物の1個または複数の細胞または組織への送達のための薬学的に許容される製剤における1種または複数の化学療法および/または診断用化合物の製剤に関係する。種々の処置レジメンにおいて本明細書に記載されている特定の組成物を使用するための適した投薬および処置レジメンの開発と同様に、薬学的に許容される賦形剤および担体溶液の製剤は、当業者に周知である。
【0048】
ある特定の状況において、動物の身体内または周囲の1個または複数の細胞、組織または臓器に皮下、非経口、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、経口、腹腔内、経皮、外用、経口もしくは経鼻吸入、または直接的注射を限定することなく含む、1種または複数の標準送達装置により適宜製剤化された医薬品ビヒクルにおいて開示されている化学療法組成物を送達することが望ましいであろう。
【0049】
投与方法は、これらのそれぞれの全体がその明確な参照により本明細書に特に組み込まれる、米国特許第5,543,158号、同第5,641,515号および同第5,399,363号に記載されているモダリティを含むこともできる。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、滅菌水において調製することができ、ヒドロキシプロピルセルロース等、1種または複数の界面活性剤と適宜混合することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、油またはこれらの混合物において分散を調製することもできる。貯蔵および使用の通常条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存料を含有する。
【0050】
注射用水溶液の投与のため、限定することなく、必要に応じて溶液を適宜緩衝することができ、液体希釈剤はまず、十分な食塩水またはグルコースにより等張性にする。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、真皮下および/または腹腔内投与に特に適している。これに関して、本発明の組成物は、例えば、無菌水性培地、バッファー、希釈剤等を含む、1種または複数の薬学的に許容されるビヒクルにおいて製剤化することができる。例えば、活性成分(複数可)の所与の投薬量を、特定の容量の等張性溶液(例えば、等張性のNaClベースの溶液)に溶解し、続いて提案される投与部位に注射する、または静脈内注入に適したビヒクルにおいてさらに希釈することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035~1038および1570~1580頁を参照)。投薬量のある程度の変動は、処置されている被験体の状態、処置の範囲および投与部位に応じて必然的に生じるであろうが、にもかかわらず投与責任者は、医学および製薬分野における通常の知識を使用して、個々の被験体に適切な正しい投薬レジメンを決定することができるであろう。
【0051】
無菌注射用組成物は、必要に応じて、上に列挙されている他の成分のうちいくつかと共に、必要とされる量の開示されている組成物を適切な溶媒に取り込み、続いて滅菌濾過することにより調製することができる。一般に、分散物は、基本分散媒および上に列挙されているもの由来の必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに選択された滅菌活性成分(複数可)を取り込むことにより調製することができる。本明細書に開示されている組成物は、中性または塩形態で製剤化することもできる。
【0052】
薬学的に許容される塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基により生成)を含み、これは、限定されないが、塩酸もしくはリン酸等の無機酸または限定されないが、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸その他等の有機酸により生成される。遊離カルボキシル基により生成される塩は、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄(III)等の無機塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインその他等の有機塩基に由来することもできる。製剤化により、溶液は、投薬製剤と適合性の様式で、企図される適用に有効な量で投与されるであろう。製剤は、徐放カプセル、ハイドロゲル、コロイド、粘稠性ゲル、経皮試薬、鼻腔内および吸入製剤その他を含む、注射用溶液、外用調製物、経口製剤等、種々の剤形で容易に投与される。
【0053】
本明細書に開示されている化学療法薬の量、投薬量レジメン、製剤および投与は、本教示の利益を有する当業者の技能範囲内であろう。しかし、治療有効(すなわち、薬学的有効)量の開示されている組成物の投与は、限定されないが、かかる手順を受ける患者に所望の利益をもたらすのに十分な量の送達される薬剤の単一の注射等の、単回投与によって達成することができる可能性がある。あるいは、一部の状況において、選択された個体へのかかる組成物の投与を監督する医師によって決定され得る通り、相対的に短い、またはさらには相対的に延長された期間にわたり、組成物の複数回または逐次投与を与えることが望ましい場合がある。
【0054】
典型的には、本明細書に記載されている組成物のうち1種または複数の製剤は、第1の活性薬剤の少なくとも化学療法において有効な量を含有するであろう。好ましくは、製剤は、少なくとも約0.001%の各活性成分、好ましくは少なくとも約0.01%の活性成分を含有することができるが、活性成分(複数可)のパーセンテージは、当然ながら変動することができ、製剤全体に基づいて約0.01~約90重量%もしくは容量%、または約0.1~約80重量%もしくは容量%、またはより好ましくは約0.2~約60重量%もしくは容量%の量において簡便に存在することができる。当然、各組成物における活性化合物(複数可)の量は、化合物のいずれか所与の単位用量において適した投薬量が得られるような仕方で調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的t1/2、投与経路、製品有効期間および他の薬理学的検討事項等の因子は、かかる医薬品製剤の調製の技術分野の当業者によって考慮され、したがって、種々の投薬量および処置レジメンが望ましくなり得る。
【0055】
本明細書に開示されている化学療法組成物の投与は、例えば、米国特許第5,543,158号、同第5,641,515号、および同第5,399,363号(これらのそれぞれは、その全体がその明確な参照により本明細書に特に組み込まれる)に記載されている、非経口、静脈内、筋肉内またはさらには腹腔内投与を限定することなく含む、いずれか有効な方法によって投与することができる。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロース等、界面活性剤と適宜混合された水において、または他の同様の様式で調製することができる。注射用投与に適合された医薬品形態は、米国特許第5,466,468号(これはその全体が、その明確な参照により本明細書に特に組み込まれる)に記載されているものを限定することなく含む、無菌水溶液または分散、および無菌注射用溶液または分散の即時調製のための無菌粉末を含む。あらゆる事例において、形態は、無菌でなければならず、容易なシリンジ通過性(syringability)が存在する程度まで流動性でなければならない。これは、製造および貯蔵条件下で少なくとも十分に安定的でなければならず、ウイルス、細菌、真菌その他等、微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0056】
担体(複数可)は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールその他またはこれらの組み合わせ)、1種もしくは複数の植物油またはこれらのいずれかの組み合わせを限定することなく含む、溶媒または分散媒であり得るが、追加の薬学的に許容される構成成分が含まれてもよい。
【0057】
本明細書に開示されている医薬品製剤の適切な流動性は、例えば、レシチン等、コーティングの使用により、分散の場合は必要とされる粒子径の維持により、界面活性剤の使用により、またはこれらの技法のいずれかの組み合わせにより維持することができる。微生物の作用の阻害または防止は、1種または複数の抗細菌または抗真菌剤、例えば、限定されないが、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールその他によってもたらすことができる。多くの場合、等張性剤、例えば、限定されないが、1種もしくは複数の糖もしくは塩化ナトリウムまたはこれらのいずれかの組み合わせを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の延長された吸収は、組成物における、吸収を遅延させる薬剤、例えば、限定されないが、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはこれらの組み合わせの使用によりもたらすことができる。
【0058】
全身的投与は、本発明の多くの実施形態において有効であると考えられるが、本明細書に開示されている製剤が、身体における1種または複数の臓器、組織または細胞型への直接的な注射に適しているとも考えられる。開示されている組成物の投与は、関連する医学技術分野の当業者に公知の手段を含む、適した手段を使用して行うことができる。
【0059】
本明細書に開示されている医薬品製剤は、ヒト、またはさらには霊長類または哺乳動物における使用のみに決して限定されない。ある特定の実施形態において、本明細書に開示されている方法および組成物は、鳥類、両生類、爬虫類または他の動物種を使用して用いることができる。しかし、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、好ましくは、種々の診断および/または治療レジメンにおいて、哺乳動物、特にヒトへの投与のために製剤化される。本明細書に開示されている組成物は、選択された家畜、外来または飼育動物、コンパニオンアニマル(ペットその他を含む)、非ヒト霊長類および動物学的またはその他の捕獲標本その他を限定することなく含む、獣医学的投与に許容される製剤において提供することもできる。
本明細書は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
1)化学療法において有効な量の第1のiNOS阻害剤と、
2)治療有効量の、以下:
a)第1の降圧剤、
b)第1の化学療法剤、または
c)a)およびb)の組み合わせと
を含む、医薬組成物。
(項目2)
前記第1のiNOS阻害剤が、N-モノメチル-L-アルギニン[L-NMMA]、(N-[[3-(アミノメチル)フェニル]メチル]-エタンイミドアミド)[1400W]または(N-[イミノ(ニトロアミノ)メチル]-L-オルニチンメチルエステル)[L-NAME]を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目3)
前記第1の降圧剤が、第1のカルシウムチャネルアンタゴニストを含む、項目1または項目2に記載の医薬組成物。
(項目4)
前記第1の降圧剤が、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン(clinidipine)、クレビジピン、ジルチアゼム、エホニジピン、フェンジリン、フェロジピン、ガロパミル、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピン、プラニジピンおよびベラパミルからなる群より選択される第1のカルシウムチャネルアンタゴニストを含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目5)
3)第2の別個のiNOS阻害剤をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目6)
d)免疫調節剤、神経活性剤、抗炎症剤、抗高脂血症剤、ホルモン、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、抗感染剤、タンパク質、ペプチド、抗体、抗原結合性断片、酵素、RNA、DNA、siRNA、mRNA、リボザイム、ホルモン、補助因子、ステロイド、アンチセンス分子、第2の別個の降圧剤、第2の別個の化学療法剤またはこれらのいずれかの組み合わせのうち1種または複数をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目7)
前記第1の化学療法剤が、1種もしくは複数の抗新生物性化合物、1種もしくは複数の細胞傷害性化合物、1種もしくは複数の細胞増殖抑制化合物またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目8)
前記第1の化学療法剤が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ドセタキセル、パクリタキセル、トラスツズマブ、メトトレキセート、エピルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、イクサベピロン(isabepilone)、エリブリン、ラパチニブ、カルムスチン、ナイトロジェンマスタード、サルファマスタード、プラチンテトラニトレート、ビンブラスチン、エトポシド、カンプトテシンおよびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目9)
i)前記第1のiNOS阻害剤が、L-NMMAを含み、ii)前記第1の降圧剤が、アムロジピンを含む、または前記第1の化学療法剤が、ドセタキセルを含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目10)
i)前記第1のiNOS阻害剤が、L-NMMAを含み、ii)前記第1の降圧剤が、アムロジピンを含み、iii)前記第1の化学療法剤が、ドセタキセルを含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目11)
リポソーム、界面活性剤、ニオソーム、エトソーム、トランスフェロソーム、リン脂質、スフィンゴソーム、ナノ粒子、マイクロ粒子またはこれらのいずれかの組み合わせをさらに含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目12)
薬学的に許容される担体、バッファー、希釈剤、ビヒクル、賦形剤またはこれらのいずれかの組み合わせをさらに含む、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目13)
哺乳動物投与のため、好ましくは、ヒト投与のために製剤化されている、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目14)
前記組成物と、それを必要とするヒトへの前記組成物の投与のための少なくとも第1のセットの説明書とを含む治療用キットの一部として適合および構成されている、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目15)
哺乳動物のがんの1種または複数の症状の治療、予防または寛解における使用のための、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目16)
ヒトの乳がん、特に、ヒトの治療抵抗性、転移性またはトリプルネガティブ乳がんの1種または複数の症状の治療、予防または寛解における使用のための、前記項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目17)
治療における使用のための、項目1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目18)
哺乳動物被験体におけるがんの処置における使用のための、項目1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目19)
哺乳動物におけるがんの1種または複数の症状を処置または寛解するための医薬の製造における、項目1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
(項目20)
ヒトの乳がん、特に、難治性、処置抵抗性、再燃性、転移性またはトリプルネガティブ乳がんを処置するための医薬の製造における、項目19に記載の使用。
(項目21)
処置または寛解を必要とする動物におけるがんの1種または複数の症状を処置または寛解する方法であって、前記動物における前記がんの前記1種または複数の症状の処置または寛解に十分な時間、有効量の項目1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記動物に投与するステップを含む、方法。
(項目22)
前記がんが、難治性、転移性、再燃性または処置抵抗性のがんとして診断されるか、あるいは同定される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記がんが、処置抵抗性または転移性のがん、特に、処置抵抗性、トリプルネガティブヒト乳がんとして診断されるか、あるいは同定される、項目21または項目22に記載の方法。
(項目24)
治療有効量の放射線を前記動物に投与するステップをさらに含む、項目21~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記医薬組成物が、単回投与で、あるいは1もしくは複数日間の期間にわたる、1もしくは複数週間の期間にわたる、または1もしくは複数箇月間またはそれより長い期間にわたる一連の複数回投与で、前記動物に全身的に投与される、項目19~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記医薬組成物が、項目1~16のいずれか一項に記載の第2の別個の化学療法剤または第2の別個のiNOS阻害剤をさらに含む、項目19~25のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
本発明の原理の理解を促すために、次に、図面において図解されている実施形態または実施例を参照し、これを説明するために特定の術語が使用される。そうであるにもかかわらず、本発明の範囲の限定がこれにより企図されないことが理解されよう。記載されている実施形態におけるいかなる変更およびさらなる修正、ならびに本明細書に記載されている本発明の原理のいかなるさらなる適用も、本発明が関連する技術分野の当業者が通常思い付くものと考えられる。
【0061】
次の図面は、本明細書の一部を構成し、本発明のある特定の態様を実証するように含まれている。本願は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面(複数可)を備える本特許または特許出願公開のコピーは、依頼および必要料金の支払い後に、特許商標庁(Patent and Trademark Office)によって供給されるであろう。本発明は、同様の参照数字が同様の要素を同定する添付の図面と併せた次の説明を参照することにより、より十分に理解することができる。添付の図面を次に示す。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1A-D】図1A図1B図1C図1D図1Eおよび図1Fは、増強されたNOS2発現が、浸潤性TNBCにおける不十分な患者生存と相関することを図解する。The Cancer Genome Atlas(TCGA)データベースのOncomineがんマイクロアレイ解析(図1Aおよび図1B)。図1A:非TNBCに対して浸潤性TNBCにおけるより高いNOS2 mRNA発現。P=3.85E-5、t検定。図1B:高いNOS2発現は、浸潤性乳癌における5年目の死亡と相関する。P=0.037、t検定。Van de Vijver(n=69;p=0.04)(図1C)およびCurtis(n=260;p=0.01)(図1D)(ウィルコクソン検定)乳房データベースにおけるカプラン・マイヤー生存解析は、高いNOS2発現が、TNBC患者のより悪い全生存期間と相関することを示す。(図1E)iNOSタンパク質発現に関するTNBCヒト試料の免疫組織化学的解析。弱い~中等度(3~4)、中等度~強い(5~6)および強い(7)は、生存のさらなる解析のために確立されたカットオフであった。数個の試料は、腫瘍(T)および間質(S)細胞の両方における発現を示した(元の光学対物レンズ:20×)。NOS2指向性shRNA(shRNA1)または空ベクター(EV)のいずれかをトランスフェクトされたMDA-MB-231細胞を、それぞれiNOS染色の陰性および陽性対照として使用した(元の光学対物レンズ:10×)。対比染色:ヘマトキシリン。図1F:iNOS発現増加は、低iNOS発現と比較して低い患者生存に関連する。TNBCヒト患者試料のカプラン・マイヤー生存解析(n=83)。P=0.05、ログランク検定。
図1E-F】図1A図1B図1C図1D図1Eおよび図1Fは、増強されたNOS2発現が、浸潤性TNBCにおける不十分な患者生存と相関することを図解する。The Cancer Genome Atlas(TCGA)データベースのOncomineがんマイクロアレイ解析(図1Aおよび図1B)。図1A:非TNBCに対して浸潤性TNBCにおけるより高いNOS2 mRNA発現。P=3.85E-5、t検定。図1B:高いNOS2発現は、浸潤性乳癌における5年目の死亡と相関する。P=0.037、t検定。Van de Vijver(n=69;p=0.04)(図1C)およびCurtis(n=260;p=0.01)(図1D)(ウィルコクソン検定)乳房データベースにおけるカプラン・マイヤー生存解析は、高いNOS2発現が、TNBC患者のより悪い全生存期間と相関することを示す。(図1E)iNOSタンパク質発現に関するTNBCヒト試料の免疫組織化学的解析。弱い~中等度(3~4)、中等度~強い(5~6)および強い(7)は、生存のさらなる解析のために確立されたカットオフであった。数個の試料は、腫瘍(T)および間質(S)細胞の両方における発現を示した(元の光学対物レンズ:20×)。NOS2指向性shRNA(shRNA1)または空ベクター(EV)のいずれかをトランスフェクトされたMDA-MB-231細胞を、それぞれiNOS染色の陰性および陽性対照として使用した(元の光学対物レンズ:10×)。対比染色:ヘマトキシリン。図1F:iNOS発現増加は、低iNOS発現と比較して低い患者生存に関連する。TNBCヒト患者試料のカプラン・マイヤー生存解析(n=83)。P=0.05、ログランク検定。
図2A-C】図2A図2B図2C図2D図2Eおよび図2Fは、TNBC細胞株の腫瘍形成能におけるiNOS阻害剤の効果を図解する。1400WおよびL-NMMAで96時間処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株の増殖(図2Aおよび図2B)、一次(図2C)および二次(図2D)マンモスフェアならびに遊走指数(図2Eおよび図2F)。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図2D-F】図2A図2B図2C図2D図2Eおよび図2Fは、TNBC細胞株の腫瘍形成能におけるiNOS阻害剤の効果を図解する。1400WおよびL-NMMAで96時間処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株の増殖(図2Aおよび図2B)、一次(図2C)および二次(図2D)マンモスフェアならびに遊走指数(図2Eおよび図2F)。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図3A-D】図3A図3B図3C図3D図3E図3F図3G図3H図3Iおよび図3Jは、iNOSノックダウンが、HIF1αおよび小胞体(ER)ストレス/TGFβ/AFT4/ATF3クロストークにおける二重の影響によって腫瘍形成能およびEMTを損なうことを示す。空ベクター(shRNA-EV)と比較した、2種の異なるNOS2指向性shRNA(shRNA1、shRNA2)をトランスフェクトされたMDA-MB-231細胞における増殖(図3A)、遊走(図3B)および自己再生能力(一次および二次マンモスフェア)(図3C)。1400W(図3D)およびshRNA媒介性NOS2ノックダウン(図3E)で処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるNOSアイソフォーム(iNOS、eNOS、nNOS)およびEMT転写因子のウエスタンブロット解析。選択的iNOS阻害は、MDA-MB-231およびSUM159細胞における低酸素(HIF1α)、ERストレスマーカー(IRE1α、ATF4)(図3F)、ホスホSmad2/3、Smad2/3および成熟TGFβタンパク質レベル(図3G)を低下させた。図3H:組換えTGFβ1(10ng/mL、24時間)は、MCF10AにおけるPERK/eIF2α/ATF4/ATF3軸を活性化する。図3I:MCF10A細胞における24時間の組換えTGFβ1(10ng/mL)および1400W(4mM)の同時処置によるPERK/eIF2α/ATF4/ATF3軸における効果。96時間のsiRNA媒介性NOS2ノックダウン(siRNA20)MCF10A細胞におけるiNOS、ATF4、ATF3および成熟TGFβタンパク質レベル。図3J:選択的iNOS阻害は、HIF1α、ERストレス(IRE1α/XBP1)、ならびにATF4、ATF3およびTGFβの間のクロストークにおける影響によりEMTおよび腫瘍細胞遊走を損なうと仮定される。結果を空ベクターに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図3E-G】図3A図3B図3C図3D図3E図3F図3G図3H図3Iおよび図3Jは、iNOSノックダウンが、HIF1αおよび小胞体(ER)ストレス/TGFβ/AFT4/ATF3クロストークにおける二重の影響によって腫瘍形成能およびEMTを損なうことを示す。空ベクター(shRNA-EV)と比較した、2種の異なるNOS2指向性shRNA(shRNA1、shRNA2)をトランスフェクトされたMDA-MB-231細胞における増殖(図3A)、遊走(図3B)および自己再生能力(一次および二次マンモスフェア)(図3C)。1400W(図3D)およびshRNA媒介性NOS2ノックダウン(図3E)で処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるNOSアイソフォーム(iNOS、eNOS、nNOS)およびEMT転写因子のウエスタンブロット解析。選択的iNOS阻害は、MDA-MB-231およびSUM159細胞における低酸素(HIF1α)、ERストレスマーカー(IRE1α、ATF4)(図3F)、ホスホSmad2/3、Smad2/3および成熟TGFβタンパク質レベル(図3G)を低下させた。図3H:組換えTGFβ1(10ng/mL、24時間)は、MCF10AにおけるPERK/eIF2α/ATF4/ATF3軸を活性化する。図3I:MCF10A細胞における24時間の組換えTGFβ1(10ng/mL)および1400W(4mM)の同時処置によるPERK/eIF2α/ATF4/ATF3軸における効果。96時間のsiRNA媒介性NOS2ノックダウン(siRNA20)MCF10A細胞におけるiNOS、ATF4、ATF3および成熟TGFβタンパク質レベル。図3J:選択的iNOS阻害は、HIF1α、ERストレス(IRE1α/XBP1)、ならびにATF4、ATF3およびTGFβの間のクロストークにおける影響によりEMTおよび腫瘍細胞遊走を損なうと仮定される。結果を空ベクターに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図3H-J】図3A図3B図3C図3D図3E図3F図3G図3H図3Iおよび図3Jは、iNOSノックダウンが、HIF1αおよび小胞体(ER)ストレス/TGFβ/AFT4/ATF3クロストークにおける二重の影響によって腫瘍形成能およびEMTを損なうことを示す。空ベクター(shRNA-EV)と比較した、2種の異なるNOS2指向性shRNA(shRNA1、shRNA2)をトランスフェクトされたMDA-MB-231細胞における増殖(図3A)、遊走(図3B)および自己再生能力(一次および二次マンモスフェア)(図3C)。1400W(図3D)およびshRNA媒介性NOS2ノックダウン(図3E)で処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるNOSアイソフォーム(iNOS、eNOS、nNOS)およびEMT転写因子のウエスタンブロット解析。選択的iNOS阻害は、MDA-MB-231およびSUM159細胞における低酸素(HIF1α)、ERストレスマーカー(IRE1α、ATF4)(図3F)、ホスホSmad2/3、Smad2/3および成熟TGFβタンパク質レベル(図3G)を低下させた。図3H:組換えTGFβ1(10ng/mL、24時間)は、MCF10AにおけるPERK/eIF2α/ATF4/ATF3軸を活性化する。図3I:MCF10A細胞における24時間の組換えTGFβ1(10ng/mL)および1400W(4mM)の同時処置によるPERK/eIF2α/ATF4/ATF3軸における効果。96時間のsiRNA媒介性NOS2ノックダウン(siRNA20)MCF10A細胞におけるiNOS、ATF4、ATF3および成熟TGFβタンパク質レベル。図3J:選択的iNOS阻害は、HIF1α、ERストレス(IRE1α/XBP1)、ならびにATF4、ATF3およびTGFβの間のクロストークにおける影響によりEMTおよび腫瘍細胞遊走を損なうと仮定される。結果を空ベクターに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図4A-B】図4A図4B図4Cおよび図4Dは、MDA-MB-231異種移植片における腫瘍惹起および肺転移の減少を示す。図4A:L-NAME(80mg/kg、i.p.)の毎日の注射後の、MDA-MB-231乳房異種移植片(n=5/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図4B:腫瘍組織から単離されたがん細胞の一次および二次MSFE。スチューデントのt検定。図4C:限界希釈方法によってアッセイした、腫瘍細胞の腫瘍惹起能力。フィッシャーの直接検定。図4D:ビヒクルおよびL-NAME処置マウスの肺におけるMDA-MB-231 L/G腫瘍細胞のルミネセンス。スチューデントのt検定。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図4C-D】図4A図4B図4Cおよび図4Dは、MDA-MB-231異種移植片における腫瘍惹起および肺転移の減少を示す。図4A:L-NAME(80mg/kg、i.p.)の毎日の注射後の、MDA-MB-231乳房異種移植片(n=5/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図4B:腫瘍組織から単離されたがん細胞の一次および二次MSFE。スチューデントのt検定。図4C:限界希釈方法によってアッセイした、腫瘍細胞の腫瘍惹起能力。フィッシャーの直接検定。図4D:ビヒクルおよびL-NAME処置マウスの肺におけるMDA-MB-231 L/G腫瘍細胞のルミネセンス。スチューデントのt検定。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図5A-C】図5A図5B図5C図5D図5Eおよび図5Fは、MDA-MB-231異種移植片におけるL-NMMAのin vivo効果を図解する。図5A:ビヒクル、L-NMMA、化学療法および組み合わせで処置したMDA-MB-231乳房異種移植片(n=10/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図5B:ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ群におけるKi67染色の実例的な画像。元の光学対物レンズ:10×。対比染色:ヘマトキシリン。図5C:腫瘍異種移植片の細胞増殖は、Ki67陽性細胞として描写される。10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。図5D:ケモ(Chemo)およびコンボ(Combo)群における核切断型カスパーゼ-3染色;10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。図5E:腫瘍組織から単離された乳がん細胞の一次および二次MSFE。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図5F:限界希釈方法によってアッセイした腫瘍細胞の腫瘍惹起能力。フィッシャーの直接検定。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図5D-E】図5A図5B図5C図5D図5Eおよび図5Fは、MDA-MB-231異種移植片におけるL-NMMAのin vivo効果を図解する。図5A:ビヒクル、L-NMMA、化学療法および組み合わせで処置したMDA-MB-231乳房異種移植片(n=10/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図5B:ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ群におけるKi67染色の実例的な画像。元の光学対物レンズ:10×。対比染色:ヘマトキシリン。図5C:腫瘍異種移植片の細胞増殖は、Ki67陽性細胞として描写される。10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。図5D:ケモ(Chemo)およびコンボ(Combo)群における核切断型カスパーゼ-3染色;10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。図5E:腫瘍組織から単離された乳がん細胞の一次および二次MSFE。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図5F:限界希釈方法によってアッセイした腫瘍細胞の腫瘍惹起能力。フィッシャーの直接検定。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図5F図5A図5B図5C図5D図5Eおよび図5Fは、MDA-MB-231異種移植片におけるL-NMMAのin vivo効果を図解する。図5A:ビヒクル、L-NMMA、化学療法および組み合わせで処置したMDA-MB-231乳房異種移植片(n=10/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図5B:ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ群におけるKi67染色の実例的な画像。元の光学対物レンズ:10×。対比染色:ヘマトキシリン。図5C:腫瘍異種移植片の細胞増殖は、Ki67陽性細胞として描写される。10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。図5D:ケモ(Chemo)およびコンボ(Combo)群における核切断型カスパーゼ-3染色;10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。図5E:腫瘍組織から単離された乳がん細胞の一次および二次MSFE。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図5F:限界希釈方法によってアッセイした腫瘍細胞の腫瘍惹起能力。フィッシャーの直接検定。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図6A-C】図6A図6B図6C図6Dおよび図6Eは、TNBCの同所性マウスモデルにおけるL-NMMAの臨床関連用量レジメンを示す。図6A:本研究において提案される1サイクルの用量率を与えたマウス(n=5)の平均収縮期圧。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図6B:1サイクル処置の最後の注射から30分および24時間後のマウスの平均収縮期圧(n=5)。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図6C:ビヒクル、アムロジピン、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したMDA-MB-231乳房異種移植片(n=10/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図6D:ビヒクル、化学療法およびコンボ処置したMDA-MB-231異種移植片を有するマウスのカプラン・マイヤー生存曲線。ウィルコクソン検定。図6E:ビヒクル、アムロジピン、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したSUM159乳房異種移植片の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001。
図6D-E】図6A図6B図6C図6Dおよび図6Eは、TNBCの同所性マウスモデルにおけるL-NMMAの臨床関連用量レジメンを示す。図6A:本研究において提案される1サイクルの用量率を与えたマウス(n=5)の平均収縮期圧。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図6B:1サイクル処置の最後の注射から30分および24時間後のマウスの平均収縮期圧(n=5)。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図6C:ビヒクル、アムロジピン、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したMDA-MB-231乳房異種移植片(n=10/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図6D:ビヒクル、化学療法およびコンボ処置したMDA-MB-231異種移植片を有するマウスのカプラン・マイヤー生存曲線。ウィルコクソン検定。図6E:ビヒクル、アムロジピン、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したSUM159乳房異種移植片の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001。
図7A-B】図7Aおよび図7Bは、iNOS阻害剤で処置したMDA-MB-231細胞におけるマンモスフェアの代表的な画像を示す。1400W、L-NMMA(ビヒクル、1、2、4mM)およびL-NAME(ビヒクル、1、2、5mM)による96時間の処置後の一次(図7A)および二次(図7B)マンモスフェアの実例的な画像。
図8A-B】図8Aおよび図8Bは、iNOS阻害剤で処置したSUM159細胞におけるマンモスフェアの代表的な画像を示す。1400W、L-NMMA(ビヒクル、1、2、4mM)およびL-NAME(ビヒクル、1、2、5mM)による96時間の処置後の一次(図8A)および二次(図8B)マンモスフェアの実例的な画像。
図9A-B】図9A図9B図9C図9Dおよび図9Eは、TNBC細胞株の腫瘍形成能におけるL-NAMEならびにマイクロモル濃度の1400WおよびL-NMMAの効果を示す。L-NAMEで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株の増殖(図9A)、一次(図9B)および二次(図9C)マンモスフェア。MDA-MB-231およびSUM159細胞の遊走指数におけるマイクロモル濃度の1400W(図9D)およびL-NMMA(図9E)の影響。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図9C-D】図9A図9B図9C図9Dおよび図9Eは、TNBC細胞株の腫瘍形成能におけるL-NAMEならびにマイクロモル濃度の1400WおよびL-NMMAの効果を示す。L-NAMEで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株の増殖(図9A)、一次(図9B)および二次(図9C)マンモスフェア。MDA-MB-231およびSUM159細胞の遊走指数におけるマイクロモル濃度の1400W(図9D)およびL-NMMA(図9E)の影響。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図9E図9A図9B図9C図9Dおよび図9Eは、TNBC細胞株の腫瘍形成能におけるL-NAMEならびにマイクロモル濃度の1400WおよびL-NMMAの効果を示す。L-NAMEで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株の増殖(図9A)、一次(図9B)および二次(図9C)マンモスフェア。MDA-MB-231およびSUM159細胞の遊走指数におけるマイクロモル濃度の1400W(図9D)およびL-NMMA(図9E)の影響。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図10A-C】図10A図10B図10C図10D図10E図10Fおよび図10Gは、iNOS阻害剤で処置したTNBC細胞株における遊走、ならびにNOSアイソフォーム、EMT転写因子および低酸素のウエスタンブロットを示す。(図10A)MDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるL-NAMEによる処置後の腫瘍細胞遊走。1400W(図10B)およびL-NMMA(図10C)で処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるNOSアイソフォーム(iNOS、eNOSおよびnNOS)のウエスタンブロット解析。マイクロモル濃度の1400W(図10D)またはL-NMMA(図10E)による処置後のMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるEMTマーカータンパク質レベル。(図10F)L-NAMEで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるNOSアイソフォームおよびEMT転写因子のウエスタンブロット解析。(図10G)1400Wで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるβ-アクチンと比べたHIF1αタンパク質レベルの定量化。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図10D-F】図10A図10B図10C図10D図10E図10Fおよび図10Gは、iNOS阻害剤で処置したTNBC細胞株における遊走、ならびにNOSアイソフォーム、EMT転写因子および低酸素のウエスタンブロットを示す。(図10A)MDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるL-NAMEによる処置後の腫瘍細胞遊走。1400W(図10B)およびL-NMMA(図10C)で処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるNOSアイソフォーム(iNOS、eNOSおよびnNOS)のウエスタンブロット解析。マイクロモル濃度の1400W(図10D)またはL-NMMA(図10E)による処置後のMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるEMTマーカータンパク質レベル。(図10F)L-NAMEで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるNOSアイソフォームおよびEMT転写因子のウエスタンブロット解析。(図10G)1400Wで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるβ-アクチンと比べたHIF1αタンパク質レベルの定量化。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図10G図10A図10B図10C図10D図10E図10Fおよび図10Gは、iNOS阻害剤で処置したTNBC細胞株における遊走、ならびにNOSアイソフォーム、EMT転写因子および低酸素のウエスタンブロットを示す。(図10A)MDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるL-NAMEによる処置後の腫瘍細胞遊走。1400W(図10B)およびL-NMMA(図10C)で処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるNOSアイソフォーム(iNOS、eNOSおよびnNOS)のウエスタンブロット解析。マイクロモル濃度の1400W(図10D)またはL-NMMA(図10E)による処置後のMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるEMTマーカータンパク質レベル。(図10F)L-NAMEで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞株におけるNOSアイソフォームおよびEMT転写因子のウエスタンブロット解析。(図10G)1400Wで処置したMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるβ-アクチンと比べたHIF1αタンパク質レベルの定量化。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図11A-E】図11A図11B図11C図11D図11E図11F図11G図11Hおよび図11Iは、NOS2ノックダウンが、細胞腫瘍形成能、EMT転写因子、スプライシングされたXBP1およびSmad2/3シグナリングを減少させることを示す。ERストレスおよびTGFβの間のクロストーク。空ベクター(shRNA-EV)と比較した、2種の異なるNOS2指向性shRNA(shRNA1、shRNA2)をトランスフェクトされたSUM159細胞の増殖(図11A)、遊走(図11B)ならびに一次および二次マンモスフェア(図11C)。図11D:shRNA媒介NOS2ノックダウンMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるEMT転写因子SnailおよびSlug。図11E:96時間の2種の異なるNOS2指向性siRNA(siRNA18、siRNA20;100nM siRNA)をトランスフェクトされたSUM159細胞において、Zeb1およびTwist1タンパク質レベルの変化が確認された。図11F:1400Wで96時間処置したMDA-MB-231細胞由来のスプライシングされていないXBP1(uXBP1)、スプライシングされたXBP1(sXBP1)およびβ-アクチンRT-PCR cDNAアンプリコン。図11G:タンパク質-タンパク質相互作用解析(STRING 9.1)は、NOS2、TGFβ1およびATF4/ATF3軸の間のリンクを解読した。図11H:iNOS阻害剤1400Wは、組換えTGFβ1(10ng/mL)による72時間の処置下のMDA-MB-231細胞におけるSmad2/3シグナリングを低下させることができる。図11I:ツニカマイシン(Tunicamicyn)(5μM)は、ATF4/ATF3転写因子によるERストレスおよびTGFβの間のクロストークを確認した。結果を空ベクターに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図11F-I】図11A図11B図11C図11D図11E図11F図11G図11Hおよび図11Iは、NOS2ノックダウンが、細胞腫瘍形成能、EMT転写因子、スプライシングされたXBP1およびSmad2/3シグナリングを減少させることを示す。ERストレスおよびTGFβの間のクロストーク。空ベクター(shRNA-EV)と比較した、2種の異なるNOS2指向性shRNA(shRNA1、shRNA2)をトランスフェクトされたSUM159細胞の増殖(図11A)、遊走(図11B)ならびに一次および二次マンモスフェア(図11C)。図11D:shRNA媒介NOS2ノックダウンMDA-MB-231およびSUM159細胞におけるEMT転写因子SnailおよびSlug。図11E:96時間の2種の異なるNOS2指向性siRNA(siRNA18、siRNA20;100nM siRNA)をトランスフェクトされたSUM159細胞において、Zeb1およびTwist1タンパク質レベルの変化が確認された。図11F:1400Wで96時間処置したMDA-MB-231細胞由来のスプライシングされていないXBP1(uXBP1)、スプライシングされたXBP1(sXBP1)およびβ-アクチンRT-PCR cDNAアンプリコン。図11G:タンパク質-タンパク質相互作用解析(STRING 9.1)は、NOS2、TGFβ1およびATF4/ATF3軸の間のリンクを解読した。図11H:iNOS阻害剤1400Wは、組換えTGFβ1(10ng/mL)による72時間の処置下のMDA-MB-231細胞におけるSmad2/3シグナリングを低下させることができる。図11I:ツニカマイシン(5μM)は、ATF4/ATF3転写因子によるERストレスおよびTGFβの間のクロストークを確認した。結果を空ベクターに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図12A-B】図12A図12B図12Cおよび図12Dは、shRNA媒介性NOS2ノックダウン細胞におけるマンモスフェアの代表的な画像および創傷治癒アッセイを示す。2種の異なるNOS2指向性shRNA(shRNA1、shRNA2)または空ベクター(sRNA-EV)をトランスフェクトされたSUM159およびMDA-MB-231細胞における一次および二次マンモスフェア(図12Aおよび図12B)ならびに遊走(創傷治癒アッセイ)(図12Cおよび図12D)の実例的な画像。
図12C-D】図12A図12B図12Cおよび図12Dは、shRNA媒介性NOS2ノックダウン細胞におけるマンモスフェアの代表的な画像および創傷治癒アッセイを示す。2種の異なるNOS2指向性shRNA(shRNA1、shRNA2)または空ベクター(sRNA-EV)をトランスフェクトされたSUM159およびMDA-MB-231細胞における一次および二次マンモスフェア(図12Aおよび図12B)ならびに遊走(創傷治癒アッセイ)(図12Cおよび図12D)の実例的な画像。
図13A-B】図13A図13B図13C図13D図13Eおよび図13Fは、SUM159異種移植片におけるL-NMMAのin vivo効果を示す。図13A:ビヒクル、L-NMMA、化学療法および組み合わせで処置したSUM159乳房異種移植片(n=10/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図13B:ビヒクル、L-NMMA、化学療法(ドセタキセル)および組み合わせ群におけるKi67染色の実例的な画像。元の光学対物レンズ:10×。対比染色:ヘマトキシリン。(図13C)腫瘍異種移植片の細胞増殖は、Ki67陽性細胞として描写される。10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。腫瘍組織から単離された乳がん細胞の一次および二次MSFE(図13Dおよび図13E)。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図13F:限界希釈方法によってアッセイされた腫瘍細胞の腫瘍惹起能力。フィッシャーの直接検定。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図13C-E】図13A図13B図13C図13D図13Eおよび図13Fは、SUM159異種移植片におけるL-NMMAのin vivo効果を示す。図13A:ビヒクル、L-NMMA、化学療法および組み合わせで処置したSUM159乳房異種移植片(n=10/群)の腫瘍体積。二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図13B:ビヒクル、L-NMMA、化学療法(ドセタキセル)および組み合わせ群におけるKi67染色の実例的な画像。元の光学対物レンズ:10×。対比染色:ヘマトキシリン。(図13C)腫瘍異種移植片の細胞増殖は、Ki67陽性細胞として描写される。10個の異なる視野から1,000個の細胞を計数し、パーセンテージを決定した。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。腫瘍組織から単離された乳がん細胞の一次および二次MSFE(図13Dおよび図13E)。一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。図13F:限界希釈方法によってアッセイされた腫瘍細胞の腫瘍惹起能力。フィッシャーの直接検定。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図14A図14A図14B図14C図14D図14Eおよび図14Fは、血漿および腫瘍組織におけるNMMAレベルを示す。L-NMMA処置された異種移植片におけるCD44/CD24-/low集団。ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したマウスのSUM159(図14A)およびMDA-MB-231(図14B)異種移植片腫瘍組織から単離されたCD44/CD24-/low細胞のフローサイトメトリー解析(%親)。図14Cおよび図14D:LC-MS/MSによる、血漿および腫瘍組織(MDA-MB-231およびSUM159異種移植片)におけるメチルアルギニンのレシオメトリック定量化(ratiometric quantification)(スチューデントのt検定)。図14E:iNOSは、L-アルギニンのL-シトルリン+一酸化窒素(NO)への反応を触媒する。シトルリンSUM159異種移植片組織LC-MS/MSのレシオメトリック定量化(スチューデントのt検定)。図14F:L-NMMAおよび1400W(4mM)で0.5、2、6および24時間処置したSUM159細胞における総一酸化窒素産生。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図14B図14A図14B図14C図14D図14Eおよび図14Fは、血漿および腫瘍組織におけるNMMAレベルを示す。L-NMMA処置された異種移植片におけるCD44/CD24-/low集団。ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したマウスのSUM159(図14A)およびMDA-MB-231(図14B)異種移植片腫瘍組織から単離されたCD44/CD24-/low細胞のフローサイトメトリー解析(%親)。図14Cおよび図14D:LC-MS/MSによる、血漿および腫瘍組織(MDA-MB-231およびSUM159異種移植片)におけるメチルアルギニンのレシオメトリック定量化(ratiometric quantification)(スチューデントのt検定)。図14E:iNOSは、L-アルギニンのL-シトルリン+一酸化窒素(NO)への反応を触媒する。シトルリンSUM159異種移植片組織LC-MS/MSのレシオメトリック定量化(スチューデントのt検定)。図14F:L-NMMAおよび1400W(4mM)で0.5、2、6および24時間処置したSUM159細胞における総一酸化窒素産生。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図14C-D】図14A図14B図14C図14D図14Eおよび図14Fは、血漿および腫瘍組織におけるNMMAレベルを示す。L-NMMA処置された異種移植片におけるCD44/CD24-/low集団。ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したマウスのSUM159(図14A)およびMDA-MB-231(図14B)異種移植片腫瘍組織から単離されたCD44/CD24-/low細胞のフローサイトメトリー解析(%親)。図14Cおよび図14D:LC-MS/MSによる、血漿および腫瘍組織(MDA-MB-231およびSUM159異種移植片)におけるメチルアルギニンのレシオメトリック定量化(ratiometric quantification)(スチューデントのt検定)。図14E:iNOSは、L-アルギニンのL-シトルリン+一酸化窒素(NO)への反応を触媒する。シトルリンSUM159異種移植片組織LC-MS/MSのレシオメトリック定量化(スチューデントのt検定)。図14F:L-NMMAおよび1400W(4mM)で0.5、2、6および24時間処置したSUM159細胞における総一酸化窒素産生。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図14E-F】図14A図14B図14C図14D図14Eおよび図14Fは、血漿および腫瘍組織におけるNMMAレベルを示す。L-NMMA処置された異種移植片におけるCD44/CD24-/low集団。ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ(ドセタキセル+L-NMMA)で処置したマウスのSUM159(図14A)およびMDA-MB-231(図14B)異種移植片腫瘍組織から単離されたCD44/CD24-/low細胞のフローサイトメトリー解析(%親)。図14Cおよび図14D:LC-MS/MSによる、血漿および腫瘍組織(MDA-MB-231およびSUM159異種移植片)におけるメチルアルギニンのレシオメトリック定量化(ratiometric quantification)(スチューデントのt検定)。図14E:iNOSは、L-アルギニンのL-シトルリン+一酸化窒素(NO)への反応を触媒する。シトルリンSUM159異種移植片組織LC-MS/MSのレシオメトリック定量化(スチューデントのt検定)。図14F:L-NMMAおよび1400W(4mM)で0.5、2、6および24時間処置したSUM159細胞における総一酸化窒素産生。結果をビヒクルに対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、一元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定。
図15A-F】図15A図15B図15C図15D図15Eおよび図15Fは、MDA-MB-231細胞の増殖におけるカルシウムチャネルアンタゴニストの効果を示す(増殖減少のパーセンテージをバーの上に示す)。
図16A-F】図16A図16B図16C図16D図16Eおよび図16Fは、SUM159細胞の細胞増殖におけるカルシウムチャネルアンタゴニストの効果を示す(増殖減少のパーセンテージをバーの上に示す)。
図17A-B】図17Aおよび図17Bは、トリプルネガティブ乳がんのアムロジピンマウスモデルの抗腫瘍活性を図解する。
図18A-B】図18Aおよび図18Bは、MDA-MB-231およびSUM159細胞の遊走が、「創傷治癒」アッセイによって評価されたことを示す。簡潔に説明すると、6ウェルプレートにおいて、コンフルエンスまで成長培地に3×10個の細胞を蒔いた。単層の細胞を、低血清条件(1%)で72時間および阻害剤の存在下で通常の成長培地において24時間(合計96時間)、1400W(0、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、2、4mM)で処置した。続いて、細胞単層に「創傷」を作製した。0および12時間目に画像を撮影した。ソフトウェアImage Jにより、創傷治癒能力を決定した。3回の独立的実験においてデータを複製した。結果をビヒクルに対して正規化した。
図19A-B】図19Aおよび図19Bは、上皮間葉系(EMT)誘導因子における選択的iNOS阻害の効果が、MDA-MB-231およびSUM159細胞株のウエスタンブロットによって検査されたことを示す。細胞を1400W(0.1、1、10、100μM;1、2、4mM)で96時間処置した。iNOS(N-20)およびTwist1(L-21)(Santa Cruz Biotechnology)、Snail(C15D3)、Slug(C19G7)およびTCF8/Zeb1(D80D3)(Cell Signaling)(1:1000希釈)に対する抗体を用いたウエスタンブロットにより、iNOSおよびEMT誘導因子のタンパク質レベルを決定した。β-アクチン(Cell Signaling;1:2000)をロード対照として使用した。
図20A-B】図20A図20B図20Cおよび図20Dは、MDA-MB-231およびSUM159細胞(3×10)が、雌SCIDベージュマウス(n=10/群)の右の乳腺脂肪パッドに注射されたことを示す。臨床関連用量レジメンは、L-NMMA(1日目に400mg/kg、およびさらに4日間にわたり200mg/kg、経口経管栄養による)および0日目のアムロジピン(10mg/kg、i.p.、毎日、6日間)と組み合わせる12時間前のドセタキセル(20mg/kg、i.p.、0日目)の2サイクルからなった。ドセタキセル単独および生理食塩水(i.p.)+滅菌水(経口経管栄養)を対照として使用した。L-NMMAおよびドセタキセルの組み合わせは、MDA-MB-231およびSUM159異種移植片における腫瘍成長を減少させることができた(図20Aおよび図20D)。アムロジピン(Amlopidine)は、L-NMMA誘導性の血圧増加を防止した(図20B)。この用量レジメンは、MDA-MB-231異種移植片におけるドセタキセル単独と比較して生存も改善した(図20C)。****p<0.0001、***p<0.001。
図20C-D】図20A図20B図20Cおよび図20Dは、MDA-MB-231およびSUM159細胞(3×10)が、雌SCIDベージュマウス(n=10/群)の右の乳腺脂肪パッドに注射されたことを示す。臨床関連用量レジメンは、L-NMMA(1日目に400mg/kg、およびさらに4日間にわたり200mg/kg、経口経管栄養による)および0日目のアムロジピン(10mg/kg、i.p.、毎日、6日間)と組み合わせる12時間前のドセタキセル(20mg/kg、i.p.、0日目)の2サイクルからなった。ドセタキセル単独および生理食塩水(i.p.)+滅菌水(経口経管栄養)を対照として使用した。L-NMMAおよびドセタキセルの組み合わせは、MDA-MB-231およびSUM159異種移植片における腫瘍成長を減少させることができた(図20Aおよび図20D)。アムロジピン(Amlopidine)は、L-NMMA誘導性の血圧増加を防止した(図20B)。この用量レジメンは、MDA-MB-231異種移植片におけるドセタキセル単独と比較して生存も改善した(図20C)。****p<0.0001、***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0063】
配列の簡単な説明:
配列番号1は、本発明の一態様に従った使用のための、例示的なDNAオリゴヌクレオチドフォワードプライマーである。
【0064】
配列番号2は、本発明の一態様に従った使用のための、例示的なDNAオリゴヌクレオチドリバースプライマーである。
【0065】
配列番号3は、本発明の一態様に従った使用のための、例示的なDNAオリゴヌクレオチドフォワードプライマーである。
【0066】
配列番号4は、本発明の一態様に従った使用のための、例示的なDNAオリゴヌクレオチドリバースプライマーである。
【0067】
実例的な実施形態の説明
本発明の実例的な実施形態を後述する。明確さのために、本明細書に実際の実施の全ての特色を記載している訳ではない。いずれかのかかる実際の実施形態の開発において、実施毎に変動するシステム関連およびビジネス関連の制約によるコンプライアンス等、開発者の特異的な目標を達成するための多数の実施特異的決定を為さなければならないことが当然ながら認められよう。さらに、かかる開発努力は、複雑かつ時間がかかり得るが、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な試みであることが認められよう。
【0068】
本発明者と共同研究者らは、幹様特性を有する乳がん細胞が、従来の治療法に対して本質的に抵抗性であったことを実証する最初のグループの1つであった。これらの初期の観察以来、他のグループは、従来の化学療法および放射線療法に対するこれらの細胞の抵抗性を確立することによりこの見解を確認した。これらおよび他の研究も、幹様細胞集団の増加が、より悪い予後に関連するという本発明者らの知見を支持した。これらの知見は、基礎臨床的意味を有する。がん治療薬の現在の開発は、大部分は、動物モデルまたは臨床治験において巨大腫瘍退縮を引き起こす能力を有する薬剤の同定に基づくが、活発に循環するまたは完全に分化した細胞を殺傷することにより腫瘍退縮を誘発する薬物に対する排他的な着目は、治療抵抗性細胞の決定的な集団を温存する可能性がある。これらの観察結果は最近、乳がんへと拡張され、本発明者は、巨大原発性腫瘍内の化学療法抵抗性細胞の亜集団が、一連の異なる適合性機構により転移する傾向を有することを示した。
【0069】
本発明者は、患者乳がん生検材料からの腫瘍原性シグネチャーも同定し、その後、この遺伝子セットから処置抵抗性の新規標的を同定するための機能的アプローチを使用した。腫瘍原性シグネチャーにおける477種の遺伝子のshRNAノックダウンを使用して、ハイスループットマンモスフェア形成効率(MSFE)スクリーニングを行った。このアプローチは、2種の標的タンパク質、RPL39およびMLF2を同定した。RPL39は、精子形成およびタンパク質翻訳において提案された役割を有する、X染色体(XQ24)上に位置する60Sリボソーム複合体の構成成分として以前に認識された。MLF2は、第12染色体上に位置し、染色体異常および細胞性防御応答に関与し得る。がんにおけるRPL39の役割についてほとんど知られていないが、MLF2に関してはさらに限られた知識しか利用できない。Ser144、152および238ならびに体細胞突然変異(Phe80Cys)におけるMLF2の一連のアミノ酸修飾は、結腸直腸がんに関連付けられた。注目すべきことに、RPL39およびMLF2過剰発現は、細胞遊走、増殖およびマンモスフェア形成を増加させ、がんにおけるこれら2種の遺伝子の潜在的に重要な機能を示唆する。RPL39およびMLF2の機構の包括的な理解は、新規がん標的としてのこれら2種の遺伝子の確認に著しく必須である。The Cancer Genome Atlas(TCGA)データベースを使用したRPL39およびMLF2の相互排他性解析により、RPL39およびMLF2は、排他的に同時に生じる(p<0.00001)ことが見いだされ、両遺伝子に共有される機構的経路を示唆する。マイクロアレイ解析を使用して、「シルデナフィル(バイアグラ)の細胞性効果」、すなわち、一酸化窒素(NO)シグナリングを、RPL39およびMLF2の両方を関連付けた主要経路として同定した。次に、RPL39およびMLF2の過剰発現によりiNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)タンパク質を誘導し、RPL39およびMLF2のsiRNA(低分子干渉リボ核酸)サイレンシングによりiNOSタンパク質レベルを低下させることにより、NOシグナリングの役割を確認した。文献において、乳がん生物学におけるNOSシグナリングの役割は、広範に研究されていない。現在までの報告は、高いNO濃度が、がん細胞に対し細胞傷害性である一方、より低いNO濃度が、腫瘍成長を増強し得ることを示唆する。
【0070】
処置抵抗性および肺転移における役割を果たす、2種の新規がん遺伝子(RPL39およびMLF2)が以前に同定された。NOシグナリングの上方調節が、両遺伝子に共通の機構的経路であることが示された。LNMMAによるNOシグナリングの阻害は、ヒトTNBC細胞株における処置抵抗性細胞の数および肺転移を縮小することが示された。
【0071】
医薬品製剤
本発明の医薬品製剤は、ヒト患者への投与のために特に製剤化される、1種または複数の賦形剤、バッファーまたは希釈剤をさらに含むことができる。組成物は、1種または複数のマイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノスフェアまたはナノ粒子をさらに任意選択で含むことができ、がん、特に乳がんのための処置を受けるヒトの1個または複数の細胞、組織、臓器または身体への投与のために製剤化することができる。
【0072】
薬学的に許容される賦形剤および担体溶液の製剤は、例えば、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、腫瘍内および筋肉内投与経路を限定することなく含む、種々の処置レジメンにおいて本明細書に記載されている特定の組成物を使用するための適した投薬および処置レジメンの開発と同様に、当業者に周知である。
【0073】
典型的には、本発明のiNOS阻害性化学療法製剤は、少なくとも約0.1%の活性化合物またはそれ超を含有するように製剤化することができるが、活性成分(複数可)のパーセンテージは、当然ながら変動し得、便宜的に、製剤全体の重量または容量の約1または2%~約70%または80%またはそれ超の間であり得る。当然、各診断または治療に有用な組成物における活性化合物(複数可)の量は、診断または治療剤の適した投薬量が、本明細書に開示されている化学療法製剤のいずれか所与の単位用量で得られるような仕方で調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品有効期間および他の薬理学的検討事項等の因子は、かかる医薬品製剤を調製する技術分野の当業者によって考慮され、したがって、種々の投薬量および処置レジメンが望ましくなり得る。
【0074】
用いられている組成物の特定の量および開示されているiNOS阻害性化学療法製剤を用いる組成物の特定の投与時間または投薬量レジメンは、本教示の利益を有する当業者の技能範囲内であろう。しかし、開示されている製剤の診断または治療有効量の投与は、かかる処置を受ける患者に所望の化学療法利益をもたらすのに有効な時間、本製剤の1または複数の用量の投与によって達成することができる可能性がある。かかる投薬レジメンは、特定の状態または患者、がんの程度等に応じて、化学療法薬の投与を監督する医師によって決定され得る。
【0075】
典型的には、開示されている組成物における活性成分の製剤は、所与の患者の特定の治療レジメンの有効量を含有するであろう。好ましくは、製剤は、少なくとも約0.1%の各活性成分を含有することができるが、活性成分(複数可)のパーセンテージは、当然ながら変動し得、製剤全体に基づいて、約0.5~約80重量%もしくは容量%または約1~約70重量%もしくは容量%またはより好ましくは、約2~約50重量%もしくは容量%の量で便宜的に存在することができる。当然、活性化合物(複数可)の量は、適した投薬量が化合物のいずれか所与の単位用量で得られるような仕方で調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的t1/2、投与経路、製品有効期間および他の薬理学的検討事項等の因子は、かかる医薬品製剤を調製する技術分野の当業者によって考慮され、したがって、種々の投薬量および処置レジメンが望ましくなり得る。
【0076】
医薬の調製のための組成物
本発明の別の重要な態様は、脊椎動物の哺乳動物等、動物における様々な疾患、機能不全または欠乏の症状を処置または寛解するための医薬の調製において開示されている組成物(およびこれらを含む製剤)を使用するための方法に関係する。開示されている組成物の使用は、ヒトにおける1種または複数種類のがんの化学療法処置、特に、ヒトの女性におけるTNBCの処置において特に考慮される。
【0077】
かかる使用は、一般に、罹患した哺乳動物におけるがんの1種または複数の症状の処置、緩和または寛解に十分な量および時間での、それを必要とする哺乳動物への、開示されているiNOS阻害性化学療法組成物のうち1種または複数の投与を含む。
【0078】
開示されている化学療法剤のうち1種または複数を含む医薬品製剤も、本発明の一部、特に、哺乳動物の乳がんの1種または複数の症状の治療または寛解における使用のため、特に、ヒトの女性におけるTNBCの1種または複数の症状の治療または寛解における使用のための少なくとも第1の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む組成物を形成する。
【0079】
化学療法薬およびその製剤
一酸化窒素(NO)は、濃度依存性腫瘍促進および抗腫瘍効果を有する、がん細胞および腫瘍内で多面的効果を示す生物活性分子である。NOは、3種の異なる一酸化窒素合成酵素(NOS)アイソフォームによって産生される:ニューロン性(nNOS/NOS1)、誘導性(iNOS/NOS2)および内皮(eNOS/NOS3)。iNOS発現の増加が、乳がんならびに肺、結腸、メラノーマおよび神経膠芽腫等の他の異なるがんにおいて見出された。以前の報告は、乳がん患者における高いiNOS発現、侵襲性および予後不良の間の相関を実証した。iNOS発現の増加は、最近、インターロイキン-8(IL-8)、CD44、c-Myc(7)の誘導による、また、部分的に転写因子Ets-1の活性化による、基底様(basal-like)エストロゲン受容体陰性乳がん患者における生存低下の予後因子として仮定された。本発明において、内在性iNOS発現の増強が、CSC自己再生特性および腫瘍細胞遊走のモジュレーションにより腫瘍再燃および転移を促進することにより、不十分な患者生存を駆動することが仮定された。従来の化学療法と組み合わせて、内在性iNOSの阻害が、残留TNBC細胞の侵襲性および間葉系特色および遠隔臓器への転移の数を低下させ、これにより、TNBC患者の生存を改善することがさらに仮定された。
【0080】
次の実施例において、選択的iNOS阻害剤1400W(N-[[3-(アミノメチル)フェニル]メチル]-エタンイミドアミド)、ならびに2種の汎NOS阻害剤、L-NMMA(N-モノメチル-L-アルギニン)およびL-NAME(N-[イミノ(ニトロアミノ)メチル]-L-オルニチンメチルエステル)を含む、異なる小分子阻害剤によるiNOSの阻害が実証された。L-NMMAは、心原性ショックに関して数百名の患者において広範に研究されており、このことは、広範な臨床前検査の必要がなく、そのヒト臨床治験への即時変換を容易にする。
【0081】
アムロジピン
アムロジピンは、血管平滑筋および心筋へのカルシウムイオンの膜貫通流入を阻害するジヒドロピリジンカルシウムアンタゴニストである。実験データは、アムロジピンが、ジヒドロピリジンおよび非ジヒドロピリジン結合部位の両方に結合することを示唆する。心筋および血管平滑筋の収縮過程は、特異的イオンチャネルを通ったこれらの細胞への細胞外カルシウムイオンの移動に依存する。アムロジピンは、選択的に細胞膜を横切るカルシウムイオン流入を阻害し、血管におけるより優れた効果が、治療用量でインタクトな動物において見られた。血清カルシウム濃度は、アムロジピンによって影響されない。生理的pH範囲内で、アムロジピンは、イオン化化合物(pKa=8.6)であり、それとカルシウムチャネル受容体との動態学的相互作用は、効果の漸進的な発生をもたらす、受容体結合部位との漸進的な会合および解離速度によって特徴付けられる。
【0082】
アムロジピンは、血管平滑筋に直接的に作用して、末梢血管抵抗性の低下および血圧の低下を引き起こす、末梢動脈血管拡張薬である。アムロジピンが狭心症を軽減する正確な機構は、十分に描写されていないが、次のものを含むと考えられる:
【0083】
労作性狭心症:労作性狭心症患者において、アムロジピンは、心臓が働きかける総末梢抵抗性(後負荷)を低下させ、いずれか所与の運動レベルにおける心筋仕事量、よって、心筋酸素要求量を低下させる。
【0084】
血管攣縮性狭心症:アムロジピンは、実験動物モデルおよびin vitroのヒト冠血管において、カルシウム、カリウムエピネフリン、セロトニンおよびトロンボキサンA2アナログに応答して、冠動脈および細動脈において狭窄を遮断し血流を回復することが実証された。この冠攣縮阻害は、血管攣縮性(プリンツメタル型または異型)狭心症におけるアムロジピンの有効性の原因となる。
【0085】
例示的な定義
本発明に従って、ポリヌクレオチド、核酸セグメント、核酸配列その他として、人の手によって全体的にまたは部分的に天然供給源から得られる、化学合成される、修飾される、または他の仕方で調製もしくは合成される、DNA(ゲノムまたはゲノム外DNAが挙げられ、これらに限定されない)、遺伝子、ペプチド核酸(PNA)、RNA(rRNA、mRNAおよびtRNAが挙げられるがこれらに限定されない)、ヌクレオシドおよび適した核酸セグメントが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
他に規定がなければ、本明細書に使用されているあらゆる技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の実施または検査において、本明細書に記載されているものと同様のまたは等価ないかなる方法および組成物を使用してもよいが、好ましい方法および組成物が本明細書に記載されている。本発明の目的のため、明確さおよび参照の容易さのために次の用語が下に定義されている:
【0087】
長年にわたる特許法の慣習に従って、単語「a」および「an」は、特許請求の範囲を含む本願において使用される場合、「1または複数」を表す。
【0088】
用語「約」および「およそ」は、本明細書において、互換的であり、一般に、所与の数の前後の数の範囲および列挙されている数の範囲内のあらゆる数を指すものと理解されたい(例えば、「約5~15」は、他に断りがなければ「約5~約15」を意味する)。さらに、本明細書におけるあらゆる数値範囲は、範囲内の全整数のそれぞれを含むものと理解されたい。
【0089】
「生体適合性」は、生細胞に曝露されたときに、細胞の生存周期(living cycle)の変化、細胞の増殖速度の変化または細胞傷害性効果等、細胞において望ましくない効果を引き起こすことなく、細胞の適切な細胞活性を支持するであろう材料を指す。
【0090】
本明細書において、用語「バッファー」は、バッファーを含む溶液または組成物に酸またはアルカリが添加された際のpHのゆらぎに抵抗する、1種または複数の組成物またはその水溶液を含む。pH変化に対するこの抵抗性は、かかる溶液の緩衝特性によるものであり、該組成物に含まれる1種または複数の特異的化合物の機能であり得る。よって、緩衝活性を示す溶液または他の組成物は、バッファーまたはバッファー溶液と称される。バッファーは、一般に、溶液または組成物のpHを維持する無制限の能力を持つ訳ではなく;むしろ、典型的には、ある一定範囲内のpH、例えば、約5~7のpHを維持することができる。
【0091】
本明細書において、用語「担体」は、関連する動物への投与に薬学的に許容される、または適用できる場合は、治療もしくは診断目的に許容される、いずれかの溶媒(複数可)、分散媒、コーティング(複数可)、希釈剤(複数可)、バッファー(複数可)、等張性剤(isotonic agent)(複数可)、溶液(複数可)、懸濁物(複数可)、コロイド(複数可)、不活性物質(inert)(複数可)その他またはこれらの組み合わせを含むことが企図される。
【0092】
用語「有効量」は、本明細書において、疾患もしくは状態を処置もしくは寛解することができる、または他の仕方で企図される治療効果を生じることができる量を指す。
【0093】
用語「例えば(for exampleまたはe.g.)」は、本明細書において、単なる例として、限定を企図することなく使用され、本明細書において明確に列挙されている項目のみを言うものと解釈するべきではない。
【0094】
本明細書において、語句「処置を必要とする」は、患者が処置を必要とする(または1種もしくは複数の仕方で処置から利益を得る)という、医師または獣医師等、介護者によって下される判断を指す。かかる判断は、介護者の専門知識の分野における種々の因子に基づいて下すことができ、患者が、本明細書に表記されているもの等、1種または複数の化合物または医薬組成物によって処置できる疾患状態の結果として病気であるという知識を含むことができる。
【0095】
本明細書において、用語「キット」は、少なくとも1セットの本発明の試薬、構成成分または薬学的に製剤化された組成物を含む、携帯式自己完結型封入物の変種を説明するために使用することができる。任意選択で、かかるキットは、例えば、研究室または臨床適用における、封入組成物の1または複数セットの使用説明書を含むことができる。
【0096】
用語「天然に存在する」は、本明細書において、物体に適用される場合、物体が天然において見出され得るという事実を指す。例えば、天然における供給源から単離することができ、研究室において人の手で意図的に修飾されていない、生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。本明細書において、古典的遺伝学に従って選択的に繁殖されてきた可能性がある研究室の齧歯類系統は、天然に存在する動物とみなされる。
【0097】
本明細書において、用語「核酸」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有)、およびプリンもしくはピリミジン塩基のN-グリコシドまたは修飾プリンもしくはピリミジン塩基(脱塩基部位を含む)である他のいずれかの種類のポリヌクレオチドのうち1または複数種類を含む。用語「核酸」は、本明細書において、典型的には、サブユニット間のホスホジエステル結合によって、場合によっては、ホスホロチオエート、メチルホスホネートその他によって共有結合した、リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドのポリマーも含む。「核酸」は、一本および二本鎖DNAならびに一本および二本鎖RNAを含む。例示的な核酸は、gDNA;hnRNA;mRNA;rRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、核小体低分子RNA(snORNA)、核内低分子RNA(snRNA)および小分子(small temporal)RNA(stRNA)その他ならびにこれらのいずれかの組み合わせを限定することなく含む。
【0098】
本明細書において、用語「患者」(「レシピエント」、「宿主」または「被験体」とも互換的に称される)は、本明細書で述べられている血管アクセス装置のうち1種または複数のためのレシピエントとして機能することができるいずれかの宿主を指す。ある特定の態様において、レシピエントは、いずれかの動物種(好ましくは、人類等の哺乳動物種)を表すことが企図される脊椎動物となるであろう。ある特定の実施形態において、「患者」は、飼育された家畜、群集性(herding)または移動性の動物または鳥類、エキゾチックまたは動物学的標本およびコンパニオンアニマル、ペット、および獣医学専門家のケア下のいずれかの動物を限定することなく含む、ヒトおよび非ヒト霊長類、鳥類、爬虫類、両生類、ウシ、イヌ、ヤギ、キャビン(cavine)、カラス、エピン(epine)、ウマ、ネコ、ヤギ、ウサギ(lapine)、ウサギ(leporine)、オオカミ、マウス、ヒツジ、ブタ、ラシン(racine)、キツネその他が挙げられるがこれらに限定されない、いずれかの動物宿主を指す。
【0099】
語句「薬学的に許容される」は、ヒトに投与されたときに、特に、ヒトの眼に投与されたときに、アレルギー性または同様の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の調製は、本技術分野で十分に理解されている。典型的には、かかる組成物は、液体の溶液または懸濁物のいずれかとして、注射剤として調製される。あるいは、これらは、注射前の液体中の溶液または懸濁物に適した固体形態で調製することができる。
【0100】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いかなる望まれない毒物学的効果も付与しない塩を指す。かかる塩の例として、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸その他により生成される酸付加塩;および有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ(pamoic)(エンボン(embonic))酸、アルギン酸、ナフトエ酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等により生成される塩;亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムその他等、多価金属カチオンを有する塩;N,N’-ジベンジルエチレンジアミンまたはエチレンジアミンから生成される有機カチオンにより生成される塩;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0101】
本明細書において、用語「ポリペプチド」は、単数の「ポリペプチド」および複数の「ポリペプチド」を包含することが企図され、2個またはそれを超えるアミノ酸のいずれかの鎖(単数または複数)を含む。よって、本明細書において、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」、「アミノ酸鎖」および「連続するアミノ酸配列」が挙げられるがこれらに限定されない用語は全て、「ポリペプチド」の定義内に包含され、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりにまたはそれと互換的に使用することができる。この用語は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、誘導体化、タンパク質分解切断、翻訳後プロセシングまたは1個もしくは複数の天然に存在しないアミノ酸の包含による修飾が挙げられるがこれらに限定されない、1種または複数の翻訳後修飾を受けたポリペプチドをさらに含む。従来の命名法が、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド構造の技術分野に存在する。例えば、1文字および3文字略語が、アミノ酸を記載するために広く用いられている:アラニン(A;Ala)、アルギニン(R;Arg)、アスパラギン(N;Asn)、アスパラギン酸(D;Asp)、システイン(C;Cys)、グルタミン(Q;Gln)、グルタミン酸(E;Glu)、グリシン(G;Gly)、ヒスチジン(H;His)、イソロイシン(I;Ile)、ロイシン(L;Leu)、メチオニン(M;Met)、フェニルアラニン(F;Phe)、プロリン(P;Pro)、セリン(S;Ser)、スレオニン(T;Thr)、トリプトファン(W;Trp)、チロシン(Y;Tyr)、バリン(V;Val)およびリシン(K;Lys)。本明細書に記載されているアミノ酸残基は、「L」異性体型であることが好ましい。しかし、ポリペプチドの所望の特性が保持されるのであれば、「D」異性体型の残基を、任意のL-アミノ酸残基の代わりに使用することができる。
【0102】
本明細書において、用語「防止する」、「防止すること」、「防止」、「抑制する」、「抑制すること」および「抑制」は、本明細書において、疾患状態のいずれかの症状、側面または特徴を防止するための、疾患状態の臨床症状の発生に先立つ、単独での、または医薬組成物に含有された化合物の投与を指す。かかる防止および抑制は、医学的に有用であるとみなされるために絶対的である必要はない。
【0103】
「タンパク質」は、「ペプチド」および「ポリペプチド」と互換的に本明細書において使用されており、合成的に、組換えにより、またはin vitroで産生されたペプチドおよびポリペプチドの両方、ならびに核酸配列が宿主動物またはヒト被験体に投与された後にin vivoで発現されたペプチドおよびポリペプチドを含む。用語「ポリペプチド」は、好ましくは、約2~約20アミノ酸残基の長さの短いペプチド、約10~約100アミノ酸残基の長さのオリゴペプチドおよび約100アミノ酸残基またはそれを超える長さを含むより長いポリペプチドの長さを含む、いずれかのアミノ酸鎖の長さを指すことが企図される。さらに、この用語は、酵素、すなわち、少なくとも1個のアミノ酸ポリマーを含む機能的生体分子を含むことも企図される。本発明のポリペプチドおよびタンパク質は、翻訳後修飾されるまたはされたポリペプチドおよびタンパク質も含み、骨格アミノ酸鎖に付加されたいずれかの糖または他の誘導体(複数可)またはコンジュゲート(複数可)を含む。
【0104】
「精製された」は、本明細書において、多くの他の化合物または実体から分離されたことを意味する。化合物または実体は、部分的に精製されても、実質的に精製されても、または純粋であってもよい。化合物または実体は、実質的にあらゆる他の化合物または実体から除去された場合に、すなわち、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99%を超えて純粋である場合に、純粋であるとみなされる。部分的にまたは実質的に精製された化合物または実体は、これが天然に見出される材料、例えば、細胞タンパク質および/または核酸等の細胞材料の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%から除去され得る。
【0105】
用語「被験体」は、本明細書において、本発明に係る組成物による処置を提供することができる、霊長類等の哺乳動物を含む生物を説明する。開示されている処置方法から利益を得ることができる哺乳動物種として、類人猿;チンパンジー;オランウータン;ヒト;サル;イヌおよびネコ等、飼育動物;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギおよびニワトリ等、家畜;ならびにマウス、ラット、モルモットおよびハムスター等、他の動物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0106】
本明細書において、構成成分の量に関連した用語「実質的に含まない」または「本質的に含まない」は、好ましくは、約10重量パーセント未満、好ましくは約5重量パーセント未満、より好ましくは約1重量パーセント未満の化合物を含有する組成物を指す。好ましい実施形態において、これらの用語は、約0.5重量パーセント未満、約0.1重量パーセント未満または約0.01重量パーセント未満を指す。
【0107】
本明細書において、用語「プラスミド」または「ベクター」は、遺伝物質(すなわち、核酸)で構成された遺伝的構築物を指す。典型的には、プラスミドまたはベクターは、細菌宿主細胞、例えば、Escherichia coliにおいて機能的である複製起点と、プラスミドを含んでいる細菌宿主細胞を検出するための選択可能マーカーとを含有する。本発明のプラスミドおよびベクターは、適した発現細胞において挿入されたコード配列が転写および翻訳され得るように配置された、本明細書に記載されている1種または複数の遺伝的エレメントを含むことができる。加えて、プラスミドまたはベクターは、1種または複数の天然および/または人工供給源から得られるまたはこれに由来するセグメントを含む、1種または複数の核酸セグメント、遺伝子、プロモーター、エンハンサー、アクチベーター、多重クローニング領域またはこれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0108】
用語「本質的に配列番号Xに表記されている配列」は、該配列が、配列番号Xの一部に実質的に対応し、配列番号Xのヌクレオチド(またはアミノ酸)と同一ではなく、またその生物学的な機能上の等価物でもないヌクレオチド(またはポリペプチド配列の場合はアミノ酸)を比較的少数有することを意味する。用語「生物学的な機能上の等価物」は、本技術分野で十分に理解されており、本明細書において詳細にさらに定義されている。したがって、本明細書に提供されるヌクレオチド配列のうち1種または複数と同一または機能的に等価であるヌクレオチドの約85%~約90%;またはより好ましくは約91%~約95%;またはさらにより好ましくは約96%~約99%を有する配列が、本発明の実施において有用であると特に考えられる。
【0109】
本発明に適した標準ハイブリダイゼーション条件は、例えば、50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSC、25mMリン酸ナトリウム、0.1%SDSおよび100μg/mlの変性サケ精子DNAにおける42℃で16時間のハイブリダイゼーションに続く、所望の量のバックグラウンドシグナルを除去するための60℃の0.1×SSC、0.1%SDS溶液による1時間の逐次的洗浄を含む。本発明のためのより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、例えば、35%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSC、25mMリン酸ナトリウム、0.1%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNAまたはE.coli DNAにおける42℃で16時間のハイブリダイゼーションに続く、55℃の0.8×SSC、0.1%SDSによる逐次的洗浄を含む。当業者であれば、条件を容易に調整して、所望のレベルのストリンジェンシーを得ることができることを認識するであろう。
【0110】
当然、本発明は、本明細書において特に表記されている特異的ヌクレオチド配列のうち少なくとも1種または複数と相補的、本質的に相補的および/または実質的に相補的である核酸セグメントも包含する。「相補的」である核酸配列は、標準ワトソン・クリックの相補性の法則に従って塩基対形成することができる核酸配列である。本明細書において、用語「相補的な配列」は、上に表記されている同じヌクレオチド比較によって評価することができる、または直ぐ上に記載されている条件等、比較的ストリンジェントな条件下で本明細書に開示されている特異的核酸セグメントのうち1種もしくは複数とハイブリダイズすることができると定義される、実質的に相補的である核酸配列を意味する。
【0111】
上述の通り、本発明のプローブおよびプライマーは、いかなる長さのものであってもよい。例えば、第1の残基は1、第2の残基は2などのように、配列に数値を割り当てることにより、所与の配列内に含有されるあらゆるプローブまたはプライマーを定義するアルゴリズムを提案することができる:
n~n+y(式中、nは、1から配列の最後の数までの整数であり、yは、プローブまたはプライマーの長さマイナス1であり、n+yは、配列の最後の数を超えない)。よって、25塩基対のプローブまたはプライマー(すなわち、「25-mer」)に関して、プローブまたはプライマーのコレクションは、配列の長さ全体にわたる、塩基1~25、塩基2~26、塩基3~27、塩基4~28等に対応する。同様に、35塩基対プローブまたはプライマー(すなわち、「35-mer」)に関して、例示的なプライマーまたはプローブ配列は、配列の長さ全体にわたる、塩基1~35、塩基2~36、塩基3~37、塩基4~38等に対応する配列を限定することなく含む。同様に、40-merに関して、かかるプローブまたはプライマーは、第1の塩基対~bp40、配列の第2のbp~bp41、第3のbp~bp42等のヌクレオチドに対応し得る一方、50-merに関して、かかるプローブまたはプライマーは、bp1~bp50、bp2~bp51、bp3~bp52、bp4~bp53等へと拡張するヌクレオチド配列に対応し得る。「処置すること」または「の処置」は、本明細書において、被験体へのいずれかの種類の医学的または外科的管理の提供を指す。処置することとして、被験体への治療剤を含む組成物の投与を挙げることができるがこれに限定されない。「処置すること」は、疾患、障害もしくは状態または疾患、障害もしくは状態の1種もしくは複数の症状もしくは症状発現の治癒、反転、軽減、その重症度の低下、その進行の阻害またはその見込みの低下等の目的のための、被験体への本発明の化合物または組成物のいずれかの投与または適用を含む。ある特定の態様において、本発明の組成物は、予防的に、すなわち、状態のいずれかの症状または症状発現の発症前に投与することもでき、かかる予防が保証されている。典型的には、このような場合、被験体は、その後にかかる疾患または障害を発症する傾向の指標となる、家族歴、診療記録または1種もしくは複数の診断もしくは予後検査の完了のいずれかの結果として、かかる疾患または障害を発症する「リスクがある」と診断された被験体であろう。
【0112】
用語「治療的に実用的な期間」は、活性薬剤が治療的に有効となるために必要な期間を意味する。用語「治療的に有効」は、症状の重症度および/または頻度の低下、症状および/または根底にある原因の排除、症状および/またはその根底にある原因の出現の防止、ならびに損傷の改善または矯正を指す。
【0113】
「治療剤」は、被験体の標的化部位において所望の生物学的効果を生じることができる、いずれかの生理的または薬理学的活性物質であり得る。治療剤は、天然に存在するまたは合成もしくは組換え方法によって産生される、またはこれらのいずれかの組み合わせであり得る、化学療法剤、免疫抑制剤、サイトカイン、細胞傷害剤、核酸分解化合物(nucleolytic compound)、放射性同位元素、受容体およびプロドラッグ活性化酵素であり得る。ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンおよびビンクリスチン)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンおよびダウノルビシン)、RNA転写阻害剤(例えば、アクチノマイシン-D)および微小管安定化薬(例えば、パクリタキセル)等、古典的多剤抵抗性によって影響される薬物は、治療剤として特定の有用性を有することができる。サイトカインを治療剤として使用することもできる。かかるサイトカインの例は、リンホカイン、モノカインおよび伝統的ポリペプチドホルモンである。がん化学療法剤は、好ましい治療剤であり得る。抗がん剤および他の治療剤のより詳細な説明に関しては、当業者であれば、Physician’s Desk ReferenceおよびGoodman and Gilman’s「Pharmacological
Basis of Therapeutics」第10版、Hardmanら編、2001年が挙げられるがこれに限定されない、いくつもの指示マニュアルを参照する。
【0114】
「転写調節エレメント」は、単独で、または1種もしくは複数の他の核酸配列と組み合わせて転写を活性化するポリヌクレオチド配列を指す。転写調節エレメントは、例えば、1種もしくは複数のプロモーター、1種もしくは複数の応答エレメント、1種もしくは複数の負の調節エレメントおよび/または1種もしくは複数のエンハンサーを含むことができる。
【0115】
本明細書において、「転写因子認識部位」および「転写因子結合部位」は、しばしば直接的なタンパク質-DNA結合の形態を採る、1種または複数の転写因子の配列特異的相互作用のための部位であると同定されるポリヌクレオチド配列(複数可)または配列モチーフ(複数可)を指す。典型的には、転写因子結合部位は、DNAフットプリンティング、ゲル移動度シフトアッセイその他によって同定することができ、および/または公知のコンセンサス配列モチーフに基づいてもしくは当業者に公知の他の方法によって予測することができる。
【0116】
「転写単位」は、少なくとも第1のシス作用性プロモーター配列に作動可能に連結され、任意選択で、構造遺伝子配列の効率的な転写に必要な1種または複数の他のシス作用性核酸配列に作動可能に連結された少なくとも第1の構造遺伝子と、プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントの制御下において作動可能に配置された構造遺伝子配列の適切な組織特異的および発生的転写に必要とされ得る、少なくとも第1の遠位調節エレメントと、効率的な転写および翻訳に必要ないずれか追加的なシス配列(例えば、ポリアデニル化部位(複数可)、mRNA安定性制御配列(複数可))等とを含むポリヌクレオチド配列を指す。
【0117】
用語「実質的に相補的」は、アミノ酸または核酸配列のいずれかを定義するために使用される場合、特定の対象配列、例えば、オリゴヌクレオチド配列が、選択された配列の全体または一部と実質的に相補的であり、よって、該選択された配列をコードするmRNAの一部に特異的に結合するであろうことを意味する。したがって、典型的に、配列は、mRNA「標的」配列と高度に相補的となり、配列の相補的な部分を通して約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9または約10塩基など以下のミスマッチを有するであろう。多くの場合、配列が、正確なマッチになること、すなわち、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する配列と完全に相補的となること、したがって、相補的ストレッチに沿ってミスマッチがないことが望ましくなり得る。したがって、高度に相補的な配列は、典型的に、mRNAの標的配列領域に極めて特異的に結合し、したがって、標的mRNA配列のポリペプチド産物への翻訳の低下および/またはさらには阻害において高度に効率的となるであろう。
【0118】
実質的に相補的な核酸配列は、該核酸が特異的に結合する対応する核酸標的配列に対し約80パーセントを超えて相補的(または「%正確なマッチ」)、より好ましくは、該核酸が特異的に結合する対応する標的配列に対し約85パーセントを超えて相補的となるであろう。ある特定の態様において、上述の通り、本発明の実施における使用のために、さらにより実質的に相補的な核酸配列を有することが望ましくなり、かかる事例において、核酸配列は、該核酸が特異的に結合する対応する標的配列に対し約90パーセントを超えて相補的となり、ある特定の実施形態において、該核酸が特異的に結合する対応する標的配列に対し約95パーセントを超えて相補的であり得、さらには最大で、設計された核酸が特異的に結合する標的配列の全体または一部に対し約96%、約97%、約98%、約99%さらには約100%を含む正確なマッチで相補的であり得る。
【0119】
開示されている核酸配列のいずれかのパーセント類似性またはパーセント相補性は、例えば、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手できるGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を使用して配列情報を比較することにより決定することができる。GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunsch(1970年)のアライメント方法を利用する。簡潔に説明すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち短い方における記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の総数で割った、同様である整列された記号の数として類似性を定義する。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメータは、次のものを含む:(1)ヌクレオチドのための単項比較マトリクス(同一性に対し1、非同一性に対し0の値を含有)ならびにGribskovおよびBurgess(1986年)の重み付き比較マトリクス、(2)ギャップ毎に3.0のペナルティおよび各ギャップにおける記号毎に追加的な0.10ペナルティ;ならびに(3)末端ギャップに対しペナルティなし。
【0120】
本明細書において、用語「形質転換された細胞」は、該細胞への1種または複数の外来性ポリヌクレオチドの導入によってその核酸相補体が変更された宿主細胞を意味することが企図される。
【0121】
本明細書において、用語「形質転換」は、宿主細胞またはプロトプラストへと外来性ポリヌクレオチド配列(例えば、ウイルスベクター、プラスミドまたは組換えDNAもしくはRNA分子)を導入する過程を一般に説明することが企図され、該外来性ポリヌクレオチドは、少なくとも第1の染色体に取り込まれる、または形質転換された宿主細胞内で自律的複製ができる。トランスフェクション、エレクトロポレーションおよび「ネイキッド」核酸取り込みは全て、1種または複数のポリヌクレオチドによる宿主細胞の形質転換に使用される技法の例を表す。
【0122】
本明細書において、用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、疾患状態のいずれかの症状、側面または特徴を低下または排除するための、疾患状態の臨床症状の発生後の、1種または複数の化合物(単独で、または1種もしくは複数の医薬組成物に含有されて)の投与を指す。かかる処置は、医学的に有用であるとみなされるために絶対的である必要はない。したがって、用語「処置」、「処置する」、「処置された」または「処置すること」は、その発症が、患者を苦しめる前であれ後であれ、その1種または複数の症状の治療、または疾患の程度もしくは重症度の寛解もしくは低下を指すことができる。
【0123】
ある特定の実施形態において、ハイブリダイゼーションアッセイにおける所与の標的配列の存在の決定において標識されたポリヌクレオチドプローブを用いる場合等、適切な検出可能マーカー(すなわち、「標識」)と組み合わせて、本発明の1種または複数の核酸セグメントを用いることが有利となるであろう。適したアッセイにおいて検出することができる、アビジン/ビオチン等、蛍光、放射性、酵素または他のリガンドを限定することなく含む、オリゴヌクレオチドプローブを標識するための、多種多様な適切な指標化合物および組成物が本技術分野で公知である。特定の実施形態において、放射性または他の環境に望ましくない試薬の代わりに、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼ等、1種または複数の蛍光標識または酵素タグを用いることもできる。酵素タグの場合、ヒトの眼に見える試料を検出するための方法、または1種もしくは複数の相補的もしくは実質的に相補的な核酸配列を含有する試料との特異的ハイブリダイゼーションを同定するためのシンチグラフィー、蛍光定量法、分光光度法その他等の分析方法を提供するために用いることができる、比色分析的、色素形成的または蛍光発生的指標基質が公知である。2種またはそれを超える標識プローブが同時にまたは逐次的に検出されるいわゆる「マルチプレックス化」アッセイの場合、第1のオリゴヌクレオチドプローブを、第1の検出特性またはパラメータ(例えば、発光および/または励起スペクトル最大)を有する第1の標識で標識することが望ましい場合があり、これはまた、第2のオリゴヌクレオチドプローブを、第1の標識とは異なる(すなわち、別々のまたは識別可能な)第2の検出特性またはパラメータを有する第2の標識で標識した。特に、遺伝的増幅/検出プロトコールの文脈におけるマルチプレックス化アッセイの使用は、分子遺伝学技術分野の当業者に周知である。
【0124】
全体を通して使用されているセクション表題は、単なる構成上の目的のものであり、記載されている主題を限定するものと解釈するべきではない。特許、特許出願、論文、本および専門書が挙げられるがこれらに限定されない、本願に引用されているあらゆる文書または文書の一部は、あらゆる目的のため、それらの全体が参照により、これにより明確に本明細書に組み込まれる。組み込まれた文献および同様の資料のうち1種または複数が、本願における用語の定義とは矛盾する様式でその用語を定義する場合、本願を優先する。
【実施例0125】
次の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。当業者であれば、次の実施例において開示されている技法が、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技法を表し、よって、その実施に好ましい様式を構成すると考えることができることを認めるべきである。しかし、当業者であれば、本開示を踏まえて、多くの変更が、開示されている特異的な実施形態において行われてもよく、依然として、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、類似または同様の結果を得ることができることを認めるべきである。
【0126】
(実施例1)
TNBCに対する有効な標的化治療としてのiNOS阻害
【0127】
上に記す通り、TNBCは、有効な標的化治療がない、乳がんの侵襲性形態である。iNOSは、腫瘍の侵襲性を増加させることにより、乳がん患者における不十分な生存に関連する。内在性iNOSの阻害が、上皮間葉転換(EMT)誘導因子のモジュレーションにより腫瘍惹起および転移を低下させることにより、TNBCの侵襲性を減少させることが仮定された。
【0128】
本実施例は、TNBCの標的化治療としてのiNOS阻害剤の使用について記載する。83種のヒトTNBC組織においてiNOSタンパク質レベルを決定したところ、臨床転帰と相関した。iNOS阻害後に、増殖、マンモスフェア形成効率、遊走、EMT転写因子をin vitroで評価した。内在性iNOS標的化を、TNBCマウスモデルにおける潜在的な治療として評価した。
【0129】
遺伝子発現および免疫組織化学的解析により、高い内在性iNOS発現は、TNBC患者におけるより悪い予後に関連した。選択的iNOS(1400W)および汎NOS(L-NMMAおよびL-NAME)阻害剤は、EMT転写因子(Snail、Slug、Twist1およびZeb1)の阻害と共に、in vitroでの細胞増殖、CSC自己再生および細胞遊走を縮小した。HIF1α、小胞体ストレス(IRE1α/XBP1)ならびにATF4/ATF3およびTGFβの間のクロストークの障害が観察された。iNOS阻害は、腫瘍成長を有意に低下させ、細胞増殖を減少させ、肺転移の数ならびに腫瘍惹起および自己再生能力を低下させた。TNBCにおける腫瘍成長の減少および生存率の増強におけるL-NMMAの成功に基づき、本発明者は、抗がん治療薬としての、全般にiNOS阻害剤および特に汎NOS阻害剤L-NMMA(これは心原性ショックのために既に広範に調査されている)に再度目的化することにより、有効な標的化治療レジメンを提案する。
【0130】
材料と方法
【0131】
Oncomine遺伝子発現データ解析。The Cancer Genome Atlas(TCGA)データベース(n=593)のOncomineがんマイクロアレイデータベース解析により、ヒトのトリプルネガティブ乳がんにおけるNOS2 mRNA発現の相対レベルを調査した。2種の異なる遺伝子発現データセットの患者生存解析を得た。
【0132】
細胞培養。それぞれアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)およびAsterandから、間葉系様トリプルネガティブ乳がん細胞株、MDA-MB-231およびSUM159を購入した。他に指定がなければ、1400W(0.1、1、10、100μM;1、2、4mM)、L-NMMA(0.1、1、10、100μM;1、2、4mM)またはL-NAME(0.1、1、10、100μM;1、2、5mM)のいずれかで96時間、細胞を毎日処置した。マンモスフェア形成効率(MSFE)、細胞増殖および遊走アッセイについて詳細に後述する。
【0133】
免疫組織化学的検査。ヒト患者、MDA-MB-231およびSUM159同所性腫瘍組織のパラフィン包埋切片を、抗iNOS(1:50希釈)または抗Ki67(1:100希釈)抗体のいずれかと共にインキュベートした。スライドをヘマトキシリンで対比染色した。追加的な情報は、下に含まれている。
【0134】
動物研究。標準研究室条件(22℃;12時間/12時間の明/暗サイクルならびに食物および水に対する自由な利用)下に、雌SCIDベージュマウス(4~5週齢)を収容した。施設および連邦政府承認の実験動物の管理と使用(Animal Care and Use)に関する指針を使用して、全動物手順および実験プロトコールを実行した。詳細な情報について後述する。
【0135】
統計解析。データは、平均±SEMとして示す。0.05未満のp値を有意であるとみなした。
【0136】
試薬。N-[[3-(アミノメチル)フェニル]メチル]-エタンイミドアミド(1400W)およびN-[イミノ(ニトロアミノ)メチル]-L-オルニチンメチルエステル(L-NAME)をCayman Chemicalから購入した。チルアルギニン(tilarginine)(N-モノメチル-L-アルギニン)(L-NMMA)は、Enzo Life Sciences製であり、Arginox Pharmaceuticalsのご厚意によって供給された。ツニカマイシンおよび組換えヒトTGF-β1(CHO細胞由来)は、それぞれAbcamおよびPeprotechから得た。抗iNOS(N-20)、抗eNOS(C-20)、抗nNOS(R-20)、抗Twist1(L-21)、抗Twist1(2C1a)、抗ATF3(C-19)および抗CREB-2(C-20)(ATF4)抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Inc.製であった。抗体、抗Snail(C15D3)、抗Slug(C19G7)、抗TCF8/Zeb1(D80D3)、抗PERK(C33E10)、抗TGFβ、抗ホスホSmad2(Ser465/467)/Smad3(Ser423/425)(D6G10)、抗Smad2/3、抗IRE1α(14C10)、抗ホスホPERK(Thr980)(16F8)、抗PERK(C33E10)、抗ホスホeIF2α(Ser51)(119A11)、抗eIF2α、抗β-アクチン(13E5)、抗ウサギおよび抗マウスIgG(HRPに連結)は、Cell Signaling Technology Inc.から得た。抗HIF1α(EP1215Y)はAbcam製であった。免疫組織化学的検査に関して、抗Ki67(SP6)はAbcam製であり、抗iNOS(K13-A)はNovus Biologicalsから購入し、抗切断型カスパーゼ-3(Asp175)はCell Signaling製であった。XBP1およびβ-アクチンのPCRプライマーは、Invitrogen製であった。マウス抗ヒトCD24-FITC(クローンML5)およびマウス抗ヒトCD44-APC(クローンG44-26)は、BD Biosciences製であった。抗マウスMHCクラスI(H-2Kd)-PE(クローンSF1-1.1.1)は、eBioscience製であった。
【0137】
細胞培養およびマンモスフェア形成効率アッセイ。間葉系様トリプルネガティブ乳がん細胞株、MDA-MB-231およびSUM159(それぞれアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関およびAsterandから購入)は、それらのEMTマーカー高発現、転移特性、CD44+/CD24-細胞のパーセンテージ(MDA-MB-231:ほぼ80~90%;SUM159:ほぼ40~50%)およびiNOSタンパク質レベルに基づき選択された。10%ウシ胎仔血清(Thermo Scientific)および1%抗生物質-抗真菌薬(Gibco)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco)において細胞を成長させた。iNOS阻害剤(1400W、L-NMMAおよびL-NAME)のストック溶液を1×PBSにおいて作製した。細胞への添加に先立ち、細胞培養培地において阻害剤をさらに希釈した。他に指定がなければ、1400W(0.1、1、10、100μM;1、2、4mM)、L-NMMA(0.1、1、10、100μM;1、2、4mM)またはL-NAME(0.1、1、10、100μM;1、2、5mM)のいずれかにより96時間、細胞を毎日処置した。マンモスフェア形成効率(MSFE)アッセイのため、2,000(SUM159)および5,000(MDA-MB-231)個の細胞/ウェルを、0.5%メチルセルロース(MethoCult H4100、StemCell Technologies)ならびに10%MammoCult増殖サプリメント、4μg/mLヘパリンおよび0.48μg/mLヒドロコルチゾン(StemCell Technologies)を補充したMammoCult基本培地において培養した。1、2および4mM(1400WおよびL-NMMA)または1、2および5mM L-NAMEのいずれかによる96時間の処置後に、一次マンモスフェア(MS)を、コロニーカウンター(GelCount、Oxford Optronicx)を使用してスキャンおよび計数した。マンモスフェア数を細胞数で割ることにより、一次MSFEを評価した。一次MSのトリプシン処置後に、処置なしで、0.5%メチルセルロースおよびマンモスフェア培地(上述の通り)において単一細胞を成長させた。二次MSをスキャン、計数し、二次MSFEを評価した。肺転移のマウスモデルのため、MDA-MB-231細胞を、ルシフェラーゼ/GFPに基づく二重レポータープラスミドでトランスフェクトし、安定的クローン(MDA-MB-231 L/G)を1mg/mLブラストサイジン(InvivoGen)により選択した。
【0138】
細胞増殖アッセイ。細胞増殖におけるiNOS阻害の効果をWST-1方法によりアッセイした。簡潔に説明すると、500(SUM159)および1,000(MDA-MB-231)個の細胞/ウェルを96ウェルプレートに蒔き、1、2および4mM(1400WおよびL-NMMA)または1、2および5mM L-NAMEのいずれかで96時間処置した。予め混合したWST-1試薬(Clontech)を添加することにより、増殖速度を決定した。37℃で3時間のインキュベーション後に、450nmの吸光度を読み取った(参照波長690nm)。
【0139】
細胞遊走能力。「創傷治癒アッセイ」により細胞遊走を決定した。簡潔に説明すると、3×10個の細胞/ウェルを、コンフルエンスになるまで6ウェルプレートにおいて成長させた。単層における細胞を、飢餓条件下(1%血清)で72時間、異なる濃度の1400W、L-NMMAおよびL-NAMEで処置した。細胞増殖における影響を回避するために、低血清培地を、阻害剤の存在下の通常の成長培地によって24時間にわたり交換した(合計96時間)。続いて、100μLピペットチップを用いて細胞単層に「創傷」を作製した。画像を0時間目に撮影し、細胞に創傷を12時間治癒させた。ソフトウェアImage Jにより創傷治癒能力を決定した。データを3回の独立的実験において複製した。
【0140】
レンチウイルス媒介性shRNAノックダウン。GIPZ NOS2レンチウイルスshRNAクローン(shRNA1-V3LHS_360691;shRNA2-V2LHS_111769)およびGIPZレンチウイルス空ベクターshRNA対照をThermo Scientificから購入した。MDA-MB-231およびSUM159細胞を、レンチウイルス粒子およびポリブレン(6μg/mL)(Sigma-Aldrich)で48時間処置した。shRNAを有する細胞クローンを、ピューロマイシン(2μg/mL)(Sigma-Aldrich)により1週間選択した。次に、細胞を収集し、増殖、マンモスフェア、創傷治癒およびウエスタンブロットアッセイのために蒔いた。
【0141】
siRNA媒介性NOS2ノックダウン。SUM159およびMDA-MB-231細胞に、スクランブルsiRNA、siRNA18(s9618)またはsiRNA20(s9620)(Silencer Select、Ambion)を96時間トランスフェクトした。簡潔に説明すると、血清、抗生物質/抗真菌薬不含DMEM培地において、6ウェルプレート(100,000細胞/ウェル)において成長させた細胞に、リポフェクタミンRNAiMAX(Invitrogen)にパッケージしたNOS2 siRNAまたはスクランブルsiRNA(100nM)を6時間トランスフェクトした。完全DMEM培地を添加し、細胞を96時間成長させた。
【0142】
SUM159細胞における一酸化窒素産生。フェノールレッドおよび血清不含DMEM培地においてL-NMMAまたは1400Wで細胞を24時間処置した。製造者の説明書に従った硝酸塩/亜硝酸塩蛍光定量的アッセイキット(Cayman Chemical)による硝酸塩+亜硝酸塩(総一酸化窒素)産生のため、細胞培養上清のアリコートを0、0.5、2、6および24時間目に採取した。
【0143】
ウエスタンブロット。iNOS阻害剤ありまたはなしで、6ウェルプレートにおいて2.5×10細胞/ウェルの密度で細胞を96時間培養した。1×溶解バッファー(Cell Signaling Technology,Inc.)および1×プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific)に細胞を再懸濁した。β-メルカプトエタノール(Sigma Aldrich)を含有する4×LDSサンプルバッファー(Thermo Scientific)において試料(30μgタンパク質)を煮沸し、4~20%ポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)におけるSDS-PAGE電気泳動に供した。タンパク質をニトロセルロース膜(Bio-Rad)に転写し、1×Tris緩衝食塩水(TBS)中5%脱脂粉乳と共に1時間インキュベートして非特異的結合を回避した。膜を一次抗体(1:1,000希釈;抗β-アクチン、1:2,000希釈)と共に一晩4℃でインキュベートした。洗浄および適切な二次抗体(1:2,000希釈)との1時間のインキュベーション後に、膜を洗浄し、高感度化学発光基質と共にインキュベートした。オートラジオグラフィーフィルム(Denville Scientific,Inc.)にタンパク質バンドを現像した。
【0144】
スプライシングされたXBP1のRT-PCR解析。製造者の説明書に従って、RNeasy microキット(Qiagen)を用いてMDA-MB-231およびSUM159細胞から全RNAを抽出し、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad)を用いてcDNAを合成した。2.5U/μL Taq DNAポリメラーゼ(ネイティブ、5U/μL)、0.2mM dNTP、1.5mM MgCl(50mM)および0.5μMの各プライマーを用いて、PCR増幅(50ng cDNA)を行った。プライマーは:
XBP1-フォワード 5’-GGGTCCAAGTTGTCCAGAATGC-3’(配列番号1)
XBP1-リバース 5’-TTACGAGAGAAAACTCATGGC-3’(配列番号2)
β-アクチン-フォワード 5’-CTGGAACGGTGAAGGTGACA-3’(配列番号3)
β-アクチン-リバース 5’-AAGGGACTTCCTGTAACAATGCA-3’(配列番号4)であった。
PCR条件は、1サイクルの95℃5分間、25サイクルの30秒間95℃、1分間50℃および1分間68℃、続いて1サイクルの68℃5分間であった。2%アガロースにおいてcDNAアンプリコンを分離した。
【0145】
免疫組織化学的検査。ヒト患者、MDA-MB-231およびSUM159同所性腫瘍組織のパラフィン包埋切片を、Tris-HClバッファー(pH=9.0)を使用した抗原修復(antigen retrieval)に付し、過酸化水素を使用して5分間ブロッキングした。次に、ヒト患者試料および異種移植片腫瘍を、抗iNOS(1:50希釈)、抗Ki67(1:100希釈)および抗切断型カスパーゼ-3(1:50)抗体と共に1時間室温でインキュベートした。ペルオキシダーゼに基づくEnVisionキット(Dako)により試料を発色させ、陰性対照と比較して、偽陽性を排除した。スライドをヘマトキシリンで対比染色した。iNOSスコア方法:強度(0~3):陰性、弱い、中等度、強い;分布(0~4):<10%、10~30%、>30~50%、>50~80%、>80%。総スコアは、4群に分けることができる:陰性(0~1)、弱い(2~3)、中等度(4~5)および強い(6~7)。NOS2指向性shRNA(shRNA1)または空ベクター(EV)のいずれかをトランスフェクトしたMDA-MB-231細胞を、それぞれiNOS染色の陰性および陽性対照として使用した。
【0146】
動物研究。雌SCIDベージュマウス(4~5週齢)(Harlan Laboratories)を、標準研究室条件(22℃;12時間/12時間明/暗サイクルならびに食物および水に対する自由な利用)下に収容した。MDA-MB-231またはSUM159細胞(3×10)のいずれかを右の乳腺脂肪パッドに注射した。腫瘍が、150~200mmに達したら、マウスを次の通りに異なる群にランダム化した(n=10/群):1)ビヒクル(生理食塩水、i.p.)、2)L-NMMA(80mg/kgまたは200mg/kgのいずれか、i.p.、毎日)、3)ドセタキセル(20mg/kg)、4)コンボ(L-NMMAおよびドセタキセル)。
【0147】
肺転移防止研究のため、MDA-MB-231 L/G細胞を上述の通り植え込んだ。マウスをランダム化し、細胞注射の48時間後に処置を開始した(n=5/群):1)ビヒクル(生理食塩水、i.p.)、2)L-NAME(80mg/kg、i.p.、毎日を35日間)。ルシフェリンの以前の注射、肺を取り出し、冷DMEM+10%FBS+1%抗生物質/抗真菌薬において洗浄した。次に、50μMルシフェリンを含有する冷DMEM培地において肺を10分間インキュベートした。このプロトコールは、肺摘出およびルシフェリンへの曝露の間の時間経過を回避する。IVIS-200 in vivoイメージングシステム(Perkin Elmer,Inc.)により、蛍光がん細胞を検出した。
【0148】
臨床関連用量レジメンは、L-NMMA(1日目に400mg/kg、およびさらに4日間にわたり200mg/kg、経口経管栄養による)および0日目のアムロジピン(10mg/kg、i.p.、毎日を6日間)と組み合わせる12時間前の、ドセタキセル(20mg/kg、i.p.、0日目)の2サイクルからなった。ドセタキセル単独および生理食塩水(i.p.)+滅菌水(経口経管栄養)を対照として使用した。
【0149】
それぞれMSFEおよび限界希釈アッセイにより、腫瘍組織から単離された単一細胞において、自己再生および腫瘍惹起能力を決定した。簡潔に説明すると、乳腺腫瘍組織を刻み、DMEM:F12培地において100U/mLのコラゲナーゼ3型(Worthington)および0.8U/mLのディスパーゼ(Gibco)により37℃で45分間消化した。上述の通り単離された単一細胞においてMSFEをアッセイした。SCIDベージュマウス(n=12/群)の乳腺脂肪パッドにおける腫瘍組織由来の5×10または2×10個の単離された細胞のいずれかを注射して、限界希釈アッセイ(LDA)を行った。公表されている方法を使用して、CD44/CD24-/low細胞集団のフローサイトメトリー解析をアッセイした。
【0150】
液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)による代謝物プロファイリング。動物研究(L-NMMA毎日投与)由来のMDA-MB-231およびSUM159異種移植片組織ならびに血漿試料を以前に記載されたとおりに(2)調製した。L-NMMA(200mg/kg)を、雌SCIDベージュマウス(n=5)に経管栄養によって経口投与した。L-NMMA投与の前(ベースライン、0時間)および後(0.5、2、12、24時間)に、血液を採取した。代謝物プロファイリングに使用したLC-MS/MSプラットフォームについては、以前に記載されている。メチルアルギニン(L-NMMA)およびシトルリンのレシオメトリック定量化は、血漿および腫瘍組織におけるイオン存在量レベルとして決定した。
【0151】
血圧測定。15匹の雌SCIDベージュマウスの血圧(BP)を3日間測定し(基礎BP)、その後、次の通りの1サイクルの臨床関連用量レジメン(n=5/群)で処置した:アムロジピン(10mg/kg、i.p.)6日間(0日目に開始)、L-NMMA(200mg/kg、経管栄養)5日間(1日目に開始)および組み合わせ(L-NMMA+アムロジピン)。コンピュータ化テールカフ(tail cuff)モニター(BP-2000 Series II、Visitech)を使用して、サイクル処置の最後の連続した3日間の、20回の血圧測定のうち最後の10回の平均を平均することにより、平均毎日血圧を決定した。
【0152】
統計解析。GraphPad(商標)Prismソフトウェア(GraphPad Sofware,Inc.)を使用して全データを解析した。データは、平均±SEMとして示す。2群間の統計的有意性は、両側スチューデントのt検定により解析した。3を超える群による実験は、一元配置ANOVA(分散分析)と、続くボンフェローニの事後検定により解析した。腫瘍体積の統計解析は、二元配置ANOVAおよびボンフェローニの事後検定によって評価した。フィッシャーの直接検定を使用して、限界希釈アッセイにおける有意差を決定した。生存割合は、カプラン・マイヤー方法を使用して評価し、ウィルコクソンまたはログランク検定のいずれかによりさらに解析した。増殖、MSFE、遊走指数およびKi67染色は、ビヒクル群(100%)に対して正規化する。0.05未満のp値は、有意であるとみなした。
【0153】
結果
【0154】
増強されたiNOS発現は、浸潤性TNBCにおける不十分な患者生存と相関する。iNOSは、異なるがん型における転移のメディエーターであると説明されてきた。上昇したiNOS発現は、ERα陰性乳がん患者における不十分な生存に関連付けられてきた。本発明者は、TNBCにおける増強されたiNOS発現が、不十分な患者生存および転移と相関すると仮定した。
【0155】
乳がんにおけるNOS2(iNOS mRNA発現)発現のOncomineがんマイクロアレイデータベース解析を行った。The Cancer Genome Atlas(TCGA)データベースの解析は、NOS2 mRNA発現が、非TNBC(n=250)に対して浸潤性TNBC患者試料(n=46)において有意により高いことを示した(倍数変化1.425、p=3.85×10-5、スチューデントのt検定)(図1A)。患者生存解析は、浸潤性乳管癌患者(n=79)におけるNOS2発現増加および5年目のより悪い生存の間の相関を実証した(倍数変化1.275、p=0.037、スチューデントのt検定)。これらのうち、46種の試料がTNBCであった(n=37、高NOS2発現;n=9、低iNOS発現)(図1B)。本発明者および同僚らは、NOS2発現が、TNBC患者の2種の追加的なデータベースにおいてより悪い生存と相関するか否かさらに試験した。Van de Vijver(n=69試料)およびCurtis(n=260試料)データベースの解析は、高いNOS2発現が、TNBC患者における生存に関連することを確認した(図1Cおよび図1D)。
【0156】
次に、本発明者および同僚らは、83種の外科的に切除されたTNBC原発性乳がん試料における免疫組織化学的検査によってiNOSタンパク質発現を試験し、公知の患者転帰と発現を相関させた。iNOSは、主に細胞質性であるが、一部の細胞は、細胞質および核局在の両方を示した(図1E)。全体的なスコアは、iNOSレベルが、14種の試料(16.9%)において弱い~中等度(スコア3~4)であり(図1E図3および図4)、50種の試料(60.2%)において中等度~強い(スコア5~6)であり(図1E)、19種の標本(22.9%)において強い(スコア7)であったことを示した(図1E)。この層別化を使用して、カプラン・マイヤー解析を使用してiNOS発現および患者生存の相関を解析した。mRNAマイニング解析(mRNA mining analysis)(図1Cおよび図1D)と一貫して、本発明者は、増強されたiNOSタンパク質レベルが、低いiNOS発現と比較して(p=0.05、カイ二乗検定)、より悪い患者生存に関連することを確認した(図1F)。これらの結果は、浸潤性TNBCにおけるmRNAおよびタンパク質発現によるiNOS増加が、不十分な患者生存に関連することを実証する。
【0157】
iNOSの阻害は、TNBC細胞の腫瘍形成能を減少させる。本発明者および同僚らは、選択的iNOS阻害剤、1400Wならびに汎NOS阻害剤、L-NMMAおよびL-NAMEによる96時間の処置後に、SUM159およびMDA-MB-231細胞株の増殖におけるiNOS阻害の効果を評価した(図2A)。高濃度の1400W(1、2および4mM)は、両細胞株における増殖を有意に減少させることができた(図2A)。L-NAMEによる処置後に、同様の結果が観察された(図9A)。最高濃度(4mM)のL-NMMAは、両細胞株において抗増殖活性を示した(図2B)。
【0158】
処置に対する抵抗性および転移は、腫瘍成長の再惹起および転移播種に役立ち得る、不均一原発性がん内のがん幹細胞(CSC)の亜集団から生じ得る。そこで、本発明者および同僚らは、マンモスフェア形成効率(MSFE)アッセイを使用することにより、がん幹細胞自己再生におけるiNOS阻害の効果を調査した。iNOS阻害は、両細胞株において一次マンモスフェア(MS)のMSFEを減少させた(図2C)。L-NAMEに対して同様の効果が見出された(図9B)。本発明者は、検査した全阻害剤に対して、両細胞株における二次MSFE低下を同定した(図2D図9C)。知見は、浸潤性TNBCにおける増強されたiNOS発現を示すため(図1A)、本発明者は、創傷治癒アッセイを使用して、細胞遊走におけるiNOSの役割をさらに調査した。1400Wによる選択的iNOS阻害は、ミリモル濃度範囲(図2E)およびマイクロモル濃度範囲(図9D)で、両細胞株の遊走において著しい用量依存性減少を引き起こした。L-NMMAで処置された細胞は、遊走能力の低下を示した(図2F)。マイクロモル濃度範囲のより低い濃度は、一貫せず、有効性が低かった(図9E)。L-NAMEに対して同様の結果が見出された(図10A)。shRNA媒介性iNOS(NOS2)ノックダウンMDA-MB-231(図3A図3Bおよび図3C)およびSUM159細胞(図11A図11Bおよび図11C)において、これらの結果をさらに確認した。まとめると、結果は、基礎レベルのiNOSが、TNBC細胞株のCSC自己再生および遊走特性において主要な役割を有し、増殖においてより不明確な効果があることを示す。
【0159】
内在性iNOSの抑制は、HIF1αおよび小胞体(ER)ストレス/TGFβ/AFT4/ATF3クロストークを損なうことにより、EMTおよび細胞遊走を損なうことができる。極性化上皮細胞の間葉系細胞への分化転換(EMT)は、腫瘍浸潤および転移中に誘起される。次に、本発明者は、ウエスタンブロットにより、間葉系様TNBC MDA-MB-231およびSUM159細胞において、EMT誘導性転写因子におけるiNOS阻害の影響を考慮した。本発明者はまず、選択的または汎阻害のいずれかの後の、NOSアイソフォーム(iNOS、eNOSおよびnNOS)における影響を試験した(図3D図10B図10Cおよび図10F)。この知見は、1400Wによる選択的iNOS遮断が、両細胞株において、ミリモル濃度(図3D)およびマイクロモル濃度(図10D)で、EMT転写因子Snail、SlugおよびTwist1のタンパク質レベルの低下を引き起こすことを明らかにした。Zeb1タンパク質レベルは、ミリモル濃度で減少した(図3D)。一貫性は低いが、汎NOS阻害剤に対して同様の結果が見出された(図10Eおよび図10F)。shRNAによるiNOSノックダウンは、Zeb1およびTwist1タンパク質レベルの減少と相関した(図3E)。SnailおよびSlugは、SUM159においてのみ遮断された(図11D);本発明者は、2週間のクローン選択の後に、MDA-MB-231において同様の結果を見出した。Zeb1およびTwist1の減少は、SUM159細胞における一過性iNOSノックダウンにより確認された(図11E)。全体的に見て、これらのデータは、選択的iNOS阻害が、TNBC細胞株の遊走を効率的に減少させることを示唆し、これは、EMT転写因子の減少と一貫して相関している。
【0160】
異なる経路が、EMT誘導および腫瘍細胞転移の原因となり、それらのうち、一酸化窒素は、HIF1αおよび小胞体(ER)ストレスの共通分母である。この知見は、選択的iNOS阻害が、両細胞株における低酸素(HIF1α)(図3F図10G)ならびにERストレスマーカーIRE1α/スプライシングされたXBP1(図3F図11F)およびATF4の用量依存性減少をもたらしたことを示す(スプライシングされたXBP1は、SUM159細胞において検出されなかった。データ図示せず)(図3F)。機能的タンパク質-タンパク質相互作用(STRING 9.1)解析は、iNOSおよびTGFβ1の間のリンクを明らかにした(図11G)。研究は、1400Wが、未決定の機構により、組換えTGFβ1(10ng/mL、72時間)の非存在(図3G)および存在下(図11H)で、TGFβシグナリング(ホスホSmad2/3、Smad2/3および成熟TGFβ)を阻害することができることを確認した。追加的なタンパク質-タンパク質相互作用解析は、ともにTGFβと相互作用する転写因子を活性化するATF4およびATF3の間の相互作用を示した(図11G)。実験は、ATF4/ATF3によるERストレスおよびTGFβの間のクロストークを確認した(図11I);同様に、組換えTGFβ1(10ng/mL、24時間)は、PERK/eIF2α/ATF4/ATF3軸を誘導した(図3H)。結果は、iNOS阻害剤1400W(4mM)および組換えTGFβ1の24時間の同時処置が、PERK/eIF2α経路とは独立して、TGFβ1によるATF4およびATF3タンパク質レベルの刺激を阻害することができることを示した。siRNA媒介性iNOS(NOS2)ノックダウン細胞において、この結果をさらに確認した(図3I)。全体的に見て、これらのデータは、iNOS阻害が、ERストレス(IRE1α/XBP1)ならびにATF4、ATF3およびTGFβの間のクロストークを損なうことにより、EMTおよび腫瘍細胞遊走を損ない得ることを実証した。
【0161】
iNOS阻害は、腫瘍成長、腫瘍惹起能力を低下させ、トリプルネガティブ乳がんのマウスモデルにおいて肺転移を防止する。このin vitroデータに基づき、本発明者は次に、iNOS阻害が、肺転移のマウスモデルにおける乳腺腫瘍細胞の腫瘍惹起および転移を防止できるか否かを調査した。80mg/kg L-NAMEの毎日のi.p.注射を、MDA-MB-231異種移植片を有するマウスに35日間与えた。L-NAMEは、腫瘍成長(p=0.001)(図4A)および一次MSのMSFE(図4B)を有意に低下させた。二次MSFEも縮小したが、ビヒクル群と比較して有意ではなかった(図4B)。その上、腫瘍組織から単離された単一細胞(5×10または1×10細胞)を右の乳腺脂肪パッドに注射することにより、限界希釈アッセイ(LDA)によりCSCの腫瘍惹起能力を評価した。ビヒクル群の全動物(n=5)が、腫瘍を発生した一方、L-NAMEによる処置は、5×10細胞により1.5週目に3/5腫瘍を生じた。L-NAME処置群(0/5腫瘍)と比較して、1×10細胞による2.5週目のビヒクル群において同じ結果が観察された(p<0.05、フィッシャーの直接検定)(図4D)。
【0162】
次に、本発明者は、iNOS阻害が、TNBC異種移植片モデルにおいて肺への転移を抑制できるか否かを試験した。ルシフェラーゼ/GFPに基づくMDA-MB-231(MDA-MB-231 L/G)異種移植片マウスモデルは、患者における肺への転移過程を模倣する。この肺転移モデルにおいて、細胞は、植え込みのほぼ35日後に原発性腫瘍から肺へと転移する。MDA-MB-231 L/G細胞を、SCIDマウスの右の乳腺脂肪パッドに注射し、80mg/kg L-NAMEを35日間毎日与えた。ルシフェリン存在下での肺のex vivoイメージングは、L-NAME群と比較してビヒクル群においてより高い蛍光を示した(図4C)。これらの結果は、毎日のL-NAMEによるiNOS阻害が、TNBCマウスモデルにおける肺への転移を防止することもできることを示唆した。
【0163】
これらの結果を将来の臨床治験へと変換するために、汎NOS阻害剤、L-NMMAを追加の集中的研究のために選択した。L-NMMAは、心原性ショックに関して以前に調査され、その適応症のために数千名の患者に投与されたが、本発明は、抗がん適応症に対するこの化合物の最初に報告された再度目的化を提供し、抗がん治療薬として有効となり得る前臨床用量を示唆するこれらの結果より前から存在するデータは殆どない。
【0164】
この問題を解くために、80mg/kg L-NMMAの毎日の注射をまず、SUM159異種移植片を有するマウスに、単独で、またはドセタキセル(20mg/kg)と組み合わせて与えた。10日後に、群間に差次的効果は観察されず、毎日の用量を200mg/kgまで増加させた。単独で、またはドセタキセルと組み合わせて投与されるL-NMMAによって、腫瘍成長は効率的に遮断された(図13A)。本発明者は、免疫組織化学的検査により、これらの結果を腫瘍細胞増殖と相関させた(Ki67)。L-NMMAおよび組み合わせ群と比較して、ビヒクルおよび化学療法群においてより高い増殖速度(図13Bおよび図13C)が観察された。本発明者は次に、MSFEアッセイにより、CSC自己再生における影響を解析した。ドセタキセルは、乳腺腫瘍組織から単離された単一腫瘍細胞の一次および二次MSFEの劇的な増加を示した。この増分は、L-NMMA(組み合わせ群)の添加により効率的に遮断された(図13D)。フローサイトメトリー解析は、化学療法後にCD44/CD24-/low集団の僅かな増加を示した(図14A)。LDAは、ビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせ群が、5×10細胞による7週目にそれぞれ12/12、4/12、12/12、6/12腫瘍を示すことを示した。9週目に、2×10細胞による異なる群として腫瘍惹起能力の有意な低下が観察され、それぞれビヒクル、L-NMMA、ドセタキセルおよび組み合わせにおいて7/12、0/12、3/12、0/12腫瘍を生じた(p<0.05、フィッシャーの直接検定)(図14E)。
【0165】
次に、単独で、またはドセタキセルと組み合わせて、異なるTNBCマウスモデルにおいてL-NMMAの役割を調査した。ドセタキセル(20mg/kg、0および21日目)および200mg/kg L-NMMA(毎日)を、MDA-MB-231異種移植片を有するマウスに31日間与えた。第一に、ビヒクルと比較してL-NMMA群において、腫瘍成長低下が見出されたが、ドセタキセルおよび組み合わせ群の間に変化はなかった(図5A)。これらの結果は、免疫組織化学的検査によって見られる、L-NMMAおよび組み合わせ群におけるより低い増殖速度とさらに相関していた(図5Bおよび図5C)。その上、ドセタキセル処置異種移植片におけるより高いアポトーシスレベルが見出された;これらの結果は、組み合わせ群と比べて高い増殖速度を相殺することができる(図5D)。ビヒクルおよび化学療法単独群と比較して、L-NMMAおよび組み合わせの両方で一次MSが少なかった。L-NMMA処置は、二次MSを低下させることができたが、組み合わせ群に対し変化は観察されなかった(図5E)。フローサイトメトリー解析は、CD44/CD24-/low集団の変化を示さなかった(図14B)。LDAは、ビヒクル処置およびドセタキセル処置群が、それぞれ12/12および8/12腫瘍を示し、5×10細胞により5週目にL-NMMA処置(1/12)および組み合わせ処置(4/12)異種移植片において有意な減少があったことを示した。6週間後に、ビヒクルおよびドセタキセル群(それぞれ6/12および8/12)と比較したL-NMMAおよび組み合わせ群(それぞれ3/12および5/12)の両方の減少が観察された(p<0.05、フィッシャーの直接検定)(図5F)。調査は、L-NMMA血漿レベルが、急速に排除される(図14C)一方、処置完了の24時間後に、これは腫瘍組織において蓄積し(図14D)、iNOSによるL-アルギニンのL-シトルリンおよびNOへの変換を阻害する(図14E)ことを実証する。この阻害は、SUM159細胞において見られる、総NO産生の減少を導いた(図14F)。全体的に見て、これらの結果は、L-NMMAによるin vivo iNOS阻害が、肺転移の有意な低下と共に、CSCの腫瘍成長、細胞増殖および腫瘍惹起能力を減少させたことを実証する。
【0166】
潜在的な臨床適用によるL-NMMAおよびドセタキセルの効率的用量レジメン。臨床的には、L-NMMAは、構成的eNOSの阻害により、急性血圧(BP)上昇を引き起こす。そこで、2種の異なるTNBCマウスモデル(MDA-MB-231およびSUM159異種移植片)における2サイクルの、降圧薬(本実施例ではアムロジピン)と共にiNOS阻害剤(この場合はL-NMMA)の減弱された持続時間を有するレジメンについて記載する。2週間毎に20mg/kgの標準ドセタキセルを投与した。5日間、200mg/kgで、化学療法の24時間後にL-NMMAを与え、この投薬量は以前の臨床報告に匹敵する。カルシウムチャネル遮断薬アムロジピン(10mg/kg、毎日6日間、i.p.)を使用して、血圧増分を打ち消した。経口L-NMMAは、マウスにおける基礎レベル(120mmHg)と比較して、平均収縮期圧(147mmHg)を有意に増加させ、この上昇は、アムロジピン(10mg/kg)によって効率的に反転された(図6A)。このBP上昇は、一過性のものであり、L-NMMAの最後の注射の24時間後に消失した(図6B)。
【0167】
L-NMMAおよびドセタキセルの組み合わせは、MDA-MB-231同所性モデルにおける腫瘍成長を減少させることができた(図6C)。この用量レジメンは、ドセタキセル処置群と比較して生存も改善した(p=0.0001、ウィルコクソン検定)(図6D)。SUM159異種移植片において同様の結果が見出された(図6E)。全体的に見て、データは、本明細書に提案される用量レジメンが、腫瘍成長の低下において有効であり、より優れた生存をもたらすことを示す。プロトコールの少なくとも一部のためにiNOS阻害剤の投与を降圧薬と組み合わせることにより、一過的に増大するBPにおけるiNOS阻害剤の厄介な有害副作用を最小化および/または回避することができる。
【0168】
iNOS阻害剤治療とドセタキセル等の1種または複数の従来の化学療法薬とのさらなる組み合わせは、追加の相乗的処置利益をもたらし、難治性、転移性およびTNBC患者における処置抵抗性を克服するための新たな戦略を表す。
【0169】
本明細書に述べられている通り、TNBCは、有効な標的化治療を欠く、極めて侵襲性かつ致死的形態のがんである。TNBC患者は、転移および腫瘍再燃のより高いリスクを示す。iNOSレベルは、基底様エストロゲン受容体陰性乳がん患者におけるより悪い生存を予測し、がん幹細胞(CSC)をモジュレートすることにより腫瘍の侵襲性および細胞の転移性傾向を増加させることが示唆された。本発明は、iNOS経路の阻害が、細胞増殖、CSC自己再生および/または細胞遊走に影響することにより、TNBC細胞の腫瘍形成能を減少させることができることを実証する最初の報告である。本願に示すin vivo研究は、TNBC等、難治性がん患者を含むがん患者のための新規標的化治療としての、L-NMMA等、数種類の例示的な小分子iNOS阻害剤の有効性を実証し、これらの結果のヒトの臨床治験への即時変換の必要性を提供する。
【0170】
これらの例は、NOS2が、浸潤性TNBCにおいて共通して増加し、浸潤性乳癌患者の不十分な生存に関連することを実証した。83種のヒトTNBC患者試料における免疫組織化学的検査による高いiNOSタンパク質レベルも、患者転帰悪化と相関し、これが、ERα陰性および浸潤性乳癌における初期報告と一貫することを実証した追加的なデータを示した。Van de VijverおよびCurtisデータベースならびにヒトTNBC患者試料のカプラン・マイヤー解析は、高いiNOS発現が、TNBC患者における不十分な全生存期間に関連したことを強く示す。これらの観察結果は、iNOS発現増加が、がん患者のある特定のサブセットにおける予後不良を予測し得ることも確立する。
【0171】
iNOS発現は、乳がん細胞の腫瘍グレードおよび侵襲性の増加と相関している。本発明は、TNBC細胞のCSC自己再生、腫瘍惹起および遊走能力におけるiNOSの効果について記載する。iNOS阻害剤の抗腫瘍活性は、類表皮癌、経口、神経膠芽腫および乳がんにおいて以前に報告されており、in vitroおよびin vivoの知見と一貫する。iNOS発現増加は、神経膠芽腫細胞における腫瘍惹起を促進することにより、従来の処置に対する抵抗性に寄与するものと説明されてきた。その上、iNOSは、ERα陰性乳がんにおけるCD44およびc-Mycをモジュレートすることにより、CSC自己再生に影響し得る。本発明者は、初めて、iNOS阻害が、TNBCのin vitroおよびin vivoモデルの両方においてCSC自己再生および腫瘍惹起を減少させることを実証した。
【0172】
一酸化窒素は、内在性レベルに応じて転移性事象の促進または阻害のいずれかを行うことができる。転移におけるNOS阻害剤の役割は、以前に研究されているが、その根底にある機構は依然として不明である。初期研究は、汎NOS阻害剤L-NAMEが、マウス乳がんモデル(EMT-6細胞)における腫瘍成長および肺転移を減少させることができることを実証した。同様に、L-NAMEは、2種の転移性乳房細胞株(C3L5およびC10)の浸潤および遊走潜在力を阻害した。転移性ヒト腺癌HRT-18細胞を用いた別の研究において、浸潤性は、500μMの選択的iNOS阻害剤1400Wによる毎日の処置により実質的に減少した。さらに最近では、1400Wは、口腔の腺様嚢胞癌のマウスモデルにおける自発的肺転移を著しく阻害することが示された。
【0173】
本実施例は、iNOS阻害が、TNBCのin vivoモデルにおける細胞遊走および肺転移を減少させたことを実証した。NOおよびiNOSが、IL-8およびCXCケモカイン受容体4を誘導することにより、初期転移を導き得ることが示唆された。CSCは、細胞遊走および転移の増加をもたらす間葉系特色を呈する。iNOS阻害は、CSC自己再生および腫瘍惹起を減少させ、したがって、この経路に対する阻害剤が、腫瘍細胞のさらに間葉系様の表現型への移行を反転し得ることを示す。細胞遊走における効果と一貫して、選択的iNOS阻害およびNOS2ノックダウンは、検査した全TNBC細胞株においてEMTを駆動する転写因子を減少させた。
【0174】
EMT転写因子の減少における内在性iNOS阻害の効果の機構をより十分に理解するために、iNOS選択的阻害剤、1400Wの影響を解析した。EMTは、TGFβ、Wnt/β-カテニン、Notch、Hedgehogおよび複数の増殖因子のような、異なるシグナル伝達経路によって促進され得る。EMT転写因子(Snail、Slug、Twist1またはZeb1)は、c-Myc、Ets、HIF1αまたはNFκBのような、多様な中間エフェクターによって活性化される。その上、ERストレスは、PERK、XBP1またはGrp78の活性化による、甲状腺、肺胞上皮およびヒト腎近位尿細管細胞におけるEMTに関連付けられてきた。興味深いことに、これらの共通点のないシグナリングネットワークの中で、iNOSは、HIF1αおよびERストレスの間の共通分母である。内在性iNOS由来NO産生の阻害は、結腸癌細胞におけるHIF1α安定化およびタンパク質レベルを低下させることができた。とりわけ転写因子Twist1、Snail、Slug、Zeb1は、HIF1αによって直接的または間接的に影響される。
【0175】
その上、低酸素は、ERストレスおよび小胞体ストレス応答(unfolded protein response)(UPR)を誘導し、これは最近、低酸素条件下でのPERK/ATF4/LAMP3アームの活性化により、乳がん細胞における遊走およびスフェア形成に関連付けられてきた。結果は、iNOS阻害が、ERストレスATF4/ATF3軸を介したTGFβシグナリングの障害と相関することを示唆する。TGFβが、頭蓋冠骨芽細胞における分化を抑制するようにATF4タンパク質レベルを刺激することが公知である。PERK/eIF2α軸を介したERストレス等、ある特定の条件が、ATF4を活性化することができ、これが続いて、ATF3転写を誘導する一方、ATF3それ自体は、Twist-1と協同してTGFβ、マンモスフェア形成およびEMTを増強させる活性化転写因子である。
【0176】
これらの結果の臨床実施への変換は、この新たな知見における次のステップを表す。L-NMMAは、循環性ショックのいくつかの臨床治験において広範に研究されてきた汎NOS阻害剤である。心原性ショック治験において、L-NMMAは、安全であり、一過性の可逆的高血圧症以外に有害事象がほとんどないことが判明した。正常血圧患者において、L-NMMAは、インターロイキン-2の注入に先立ち、転移性腎細胞癌患者に投与された。3および6mg/kgの用量は、臨床的に明らかな副作用を誘導せず、BPは未変化のままであった。12mg/kgの用量レベルにおいて、患者は、いかなる臨床症状もなく、最大25mmHgの収縮期BPの増加を経験し、これはL-NMMA注入の停止の際に急速に正常化した。臨床適用性を有する安全かつ有効なレジメンを決定することは、これらの前臨床研究の主要な課題であった。本研究における用量率は、敗血症性ショック患者における以前の臨床治験に基づき、修正しつつ選択された。これらの結果は、腫瘍成長が、アムロジピンと共に与えた、化学療法後の5日間のL-NMMAの減弱されたレジメンによって制限され得ることを実証した。L-NMMAのランダム化プラセボ対照二重盲検研究が、最大14日間まで、敗血症性ショック患者において以前に報告された。従ったレジメンは、2.5mg/kg/hrの初期用量からなり、続いて異なる速度(0.5、1、2.5、5、7.5、10、15および20mg/kg/hr)に調整された。抗がん治療薬としてのL-NMMAの使用のための現在の投薬レジメンは、敗血症性ショックに関する文献において以前に報告されたものよりもはるかに低い。
【0177】
結論として、本実施例は、TNBC患者における内在性iNOS発現増強および不十分な生存の間の相関に関する新たな証拠を提供する。iNOS阻害剤による標的化治療は、腫瘍細胞増殖のみならず、CSC自己再生および遊走も阻害し、腫瘍成長、腫瘍惹起および肺転移数を低下させることが実証された。転移性事象の阻害は、HIF1α、ERストレス(IRE1α/スプライシングされたXBP1)およびTGFβ/ATF4/ATF3軸の阻害による、EMT転写因子の低下によるものである可能性がある。これらの結果から、本明細書に記載されている化合物を使用して、腫瘍成長を減少させ、in vivoの生存率を増強する標的化治療レジメンが定義され、TNBC患者におけるこの経路を標的化する臨床治験の重要性を確立する。
【0178】
(実施例2)
カルシウムチャネルアンタゴニストの効果
材料と方法
【0179】
in vitroの細胞増殖アッセイ。間葉系様TNBC細胞株、MDA-MB-231およびSUM159を、10%ウシ胎仔血清および1%抗生物質-抗真菌薬を補充したDMEMにおいて成長させた。様々なカルシウムチャネルアンタゴニスト(アムロジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、フェロジピン、イスラジピン、ジルチアゼム、ベラパミル、ラシジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、エホニジピン、レルカニジピン、プラニジピン、マニジピン)のストック溶液をDMSOにおいて調製した。WST-1方法により細胞増殖における効果をアッセイした。簡潔に説明すると、1,000(SUM159)および2,000(MDA-MB-231)個の細胞/ウェルを96ウェルプレートに蒔き、異なる濃度(0、1、5および10μM)のカルシウムチャネルアンタゴニストで72時間処置した。予め混合したWST-1試薬を添加することにより、増殖速度を決定した。37℃で3時間のインキュベーション後に、450nmの吸光度を読み取った(参照波長690nm)。ビヒクル(100%)に対して結果を正規化した。アンタゴニストは、増殖が≧30%減少した場合、活性があるとみなした。
【0180】
動物研究。雌SCIDベージュマウス(4~5週齢)を標準研究室条件(22℃;12時間/12時間の明/暗サイクルならびに食物および水に対する自由な利用)下に収容した。MDA-MB-231またはSUM159細胞(3×10)のいずれかを右の乳腺脂肪パッドに注射した。腫瘍が、150~200mmに達したら、マウスを次の通りの異なる群にランダム化した(n=5/群):1)ビヒクル(生理食塩水、i.p.)、2)アムロジピン(10mg/kg、i.p.)、0および14日目に2サイクル(6日間毎日、各サイクル)。あらゆる動物手順および実験プロトコールは、施設および連邦政府の実験動物の使用と管理に関する指針を十分に厳守することをもって承認された。
【0181】
結果
【0182】
in vitroの細胞増殖。2種の異なるTNBC細胞株(MDA-MB-231およびSUM159)において、数種類のカルシウムチャネルアンタゴニストの抗増殖有効性を実証した。結果は、MDA-MB-231(図15A図15B図15C図15D図15Eおよび図15F)およびSUM159(図16A図16B図16C図16D図16Eおよび図16F)の両方において、アムロジピン、フェロジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニバルジピンおよびアゼルニジピンによる処置後に、増殖の用量依存性減少を示した。これらの図面において、増殖減少のパーセンテージは、バーの上に示す。
【0183】
動物研究。TNBCのin vivoモデルから得られたデータは、アムロジピン(10mg/kg)の投与が、MDA-MB-231およびSUM159同所性腫瘍の成長を制限することができることを示した(それぞれ図17Aおよび図17B)。in vitro結果から同定された最も有効なアンタゴニスト(アムロジピン、フェロジピン、ラシジピン、ニバルジピンおよびアゼルニジピン)を、TNBCの適した動物モデル(例えば、MDA-MB-231およびSUM159を含む)におけるin vivo抗腫瘍活性に関して検査することもできる。ほぼ20mg/kg i.p.の用量を有効範囲内であるとみなした。
【0184】
参考文献:
次の参考文献は、本明細書に表記されているものを補足する例示的な手順上のまたは他の詳細を提供する程度まで、これらの全体が参照により本明細書に特に組み込まれる:
【表1-1】


【表1-2】


【表1-3】


【表1-4】


【表1-5】


【表1-6】


【表1-7】


【表1-8】


【表1-9】
【0185】
本明細書に記載されている実施例および実施形態が、単なる説明目的のものであり、それを踏まえた様々な修正または変更が、当業者に示唆され、本願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきであることを理解されたい。本明細書に引用されているあらゆる参考文献(刊行物、特許出願および特許を含む)は、各参考文献が、参照により組み込まれることが個々にかつ特に示され、本明細書にその全体が表記されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において他に断りがなければ、該範囲内に収まる別々の値のそれぞれを個々に指す簡単な方法として役立つことが単に企図されており、別々の値のそれぞれは、本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれている。
【0186】
要素(単数または複数)を参照した、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含有する(containing)」等の用語を使用した、本発明のいずれかの態様または実施形態の本明細書における記載は、他に断りがなければ、または文脈と明らかに矛盾しなければ、該特定の要素(単数または複数)「からなる」、「から本質的になる」または「を実質的に含む」本発明の同様の態様または実施形態のための支持を提供することが企図される(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載されている組成物は、他に断りがなければ、または文脈と明らかに矛盾しなければ、該要素からなる組成物も記載すると理解されたい)。
【0187】
本明細書に開示および請求されている組成物および方法は全て、本開示を踏まえて過度な実験法を用いることなく、作製および実行することができる。実例的な実施形態の観点から本発明の組成物および方法を本明細書に記載してきたが、当業者には、本発明の精神、範囲および概念から逸脱することなく、組成物、方法および/または方法のステップもしくはステップの順番に変種を適用してよいことが明らかであろう。より詳細には、化学的および/または生理的に関連するある特定の化合物を、依然として同じまたは同様の結果を達成しながら、本明細書に記載されている化合物のうち1種または複数に置き換えてよいことが明らかであろう。関連技術分野の当業者の1名または複数にとって明らかな、あらゆるかかる置き換えおよび/または修正は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念内であるとみなされる。
図1A-D】
図1E-F】
図2A-C】
図2D-F】
図3A-D】
図3E-G】
図3H-J】
図4A-B】
図4C-D】
図5A-C】
図5D-E】
図5F
図6A-C】
図6D-E】
図7A-B】
図8A-B】
図9A-B】
図9C-D】
図9E
図10A-C】
図10D-F】
図10G
図11A-E】
図11F-I】
図12A-B】
図12C-D】
図13A-B】
図13C-E】
図14A
図14B
図14C-D】
図14E-F】
図15A-F】
図16A-F】
図17A-B】
図18A-B】
図19A-B】
図20A-B】
図20C-D】
【配列表】
2022159552000001.app
【外国語明細書】