(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159597
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】パラジウムの回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 11/00 20060101AFI20221011BHJP
C22B 3/24 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/24 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063878
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】521143103
【氏名又は名称】株式会社ディーピーエス
(71)【出願人】
【識別番号】000130732
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(71)【出願人】
【識別番号】391053582
【氏名又は名称】キザイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】白 鴻志
(72)【発明者】
【氏名】小畠 稔永
(72)【発明者】
【氏名】橋田 岳之
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA41
4K001BA21
4K001DB35
4K001JA03
4K001JA10
(57)【要約】
【課題】パラジウム含有液から選択的かつ効率的にパラジウムを回収することができるパラジウムの回収方法を提供する。
【解決手段】パラジウムの回収方法は、パラジウム含有液L1を酸化させた後、金属吸着剤13A,13Bに接触させることで、パラジウムを金属吸着剤13A,13Bに吸着させる。この回収方法により、パラジウム含有液L1から選択的かつ効率的にパラジウムを回収することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム含有液を酸化させた後、吸着剤に接触させることで、パラジウムを前記吸着剤に吸着させる、
ことを特徴とするパラジウムの回収方法。
【請求項2】
電気分解で発生させた活性酸素を利用して、前記パラジウム含有液を酸化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウムの回収方法。
【請求項3】
前記パラジウム含有液が貯留され、流路に連なった第一貯留部及び酸化剤が貯留され、前記流路に連なった第二貯留部を用い、
前記第一貯留部から前記パラジウム含有液を、前記第二貯留部から前記酸化剤を、それぞれ前記流路に流入させ、前記流路の内部で混合させることで、前記パラジウム含有液を酸化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウムの回収方法。
【請求項4】
前記酸化剤が、過酸化物またはペルオキシド構造を有する物質、またはオクソ酸塩、ハロゲンおよびハロゲン化水素、硝酸および関連化合物の水溶液、酸素類水溶液および、これらを混合した水溶液である、
ことを特徴とする請求項3に記載のパラジウムの回収方法。
【請求項5】
前記酸化剤が、前記パラジウム含有液の重量の1/10から1/10000の量で混合させる、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のパラジウムの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジウム含有液から効率的にパラジウムを回収するパラジウムの回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂やセラミックスなどの非導電性の素材に対しめっきを施す場合、触媒金属であるパラジウムを素材の表面に吸着させ、触媒作用を利用して無電解めっき処理が行われる。この無電解めっき処理では、エッチングされた素材の表面に、パラジウムコロイド粒子を接触させることで、パラジウムを吸着させ、その後、吸着させたパラジウムを活性化させる。この工程において、パラジウムコロイド粒子を接触させた素材表面を水洗する。水洗水や水洗後の廃液には、パラジウムコロイド粒子が残存している。
【0003】
パラジウムは高価な金属であるため、水洗水や廃液の中からパラジウムを回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示されたパラジウムの回収方法は、スズパラジウムイオンを含有する塩酸酸性溶液のpHを高めることにより、スズの水酸化物と共にパラジウムを沈殿させて塩酸酸性溶液から分離することで、パラジウムを回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパラジウムの回収方法は、パラジウムコロイド粒子の濃度が比較的高い溶液に対し使用することで、沈殿及び分離することが可能である。しかし、上記の水洗水や廃液のようなパラジウムコロイド粒子の濃度が低い溶液に使用する場合は、コストに見合わない。
【0006】
また、沈殿及び分離させる回収方法以外にも、イオン交換樹脂に吸着させて回収する方法、多孔質体に吸着させて回収する方法、キレート樹脂に吸着させて回収する方法も開示されている。しかし、これらの方法は、パラジウムを選択的に回収することが困難であったり、抽出効率が低く効率性が低かったり、コストに見合わないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、パラジウム含有液から選択的かつ効率的にパラジウムを回収することができるパラジウムの回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパラジウムの回収方法は、パラジウム含有液を酸化させた後、吸着剤に接触させることで、パラジウムを吸着剤に吸着させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るパラジウムの回収方法は、電気分解で発生させた活性酸素を利用して、パラジウム含有液を酸化させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るパラジウムの回収方法は、パラジウム含有液が貯留され、流路に連なった第一貯留部及び酸化剤が貯留され、流路に連なった第二貯留部を用い、第一貯留部からパラジウム含有液を、第二貯留部から酸化剤を、それぞれ流路に流入させ、流路の内部で混合させることで、パラジウム含有液を酸化させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るパラジウムの回収方法は、酸化剤が過酸化物またはペルオキシド構造を有する物質、またはオクソ酸塩、ハロゲンおよびハロゲン化水素、硝酸および関連化合物の水溶液、酸素類溶液および、これらを任意の割合で混合した水溶液であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るパラジウムの回収方法は、酸化剤がパラジウム含有液の重量の1/10から1/10000の量で混合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るパラジウムの回収方法は、パラジウム含有液を酸化させた後、吸着剤に接触させることで、パラジウムを吸着剤に吸着させる。パラジウム含有液は、例えば、スズパラジウムコロイド液であり、このスズパラジウムコロイド溶液を酸化することで、パラジウムを溶離させ、吸着剤に選択的に吸着させる。このパラジウムの回収方法は、比較的濃度の低い溶液にも適用することができ、パラジウムを効率的に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るパラジウムの回収方法に使用されるパラジウム回収装置(酸化剤混合型)を模式的に示した図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るパラジウムの回収方法に使用される他のパラジウム回収装置(酸化剤混合型)を模式的に示した図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るパラジウムの回収方法に使用されるパラジウム回収装置(電気分解型)を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係るパラジウムの回収方法について、
図1から
図3を参照し説明する。本実施形態のパラジウムの回収方法は、パラジウム含有液中の物質を酸化させた後、酸化させた後の液体を所定の吸着剤に接触させることで、吸着剤にパラジウムを吸着させる。
【0016】
本実施形態では、パラジウム含有液中の物質を酸化させる方法として、パラジウム含有液を酸化剤と混合する方法、及びパラジウム含有液を電気分解する方法について説明する。
【0017】
[酸化剤との混合]
本実施形態に係るパラジウムの回収方法には、
図1に示すように、パラジウム回収装置1を使用する。パラジウム回収装置1は、パラジウム含有液L1が貯留されたパラジウム含有液貯留槽(第一貯留部)10と、酸化剤L2が貯留された酸化剤貯留槽(第二貯留部)11と、一端側でパラジウム含有液貯留槽10及び酸化剤貯留槽11と連なった流路12と、流路12の他端側に接続される吸着剤カラムユニット13と、廃液流路14とを備えている。
【0018】
パラジウム含有液L1は、パラジウムが含有されている液体であり、パラジウムの濃度は限定されないが、本実施形態では、パラジウム濃度が希薄な液体(~数十ppm)を対象とする。パラジウム濃度が希薄な液体として、例えば、プリント基板や樹脂の装飾メッキの製造工程において、水洗液中に排出される希薄スズパラジウムコロイド液を使用する。なお、スズパラジウムコロイド液とは、パラジウムを核として、スズイオンが会合しているコロイドが分散されている溶液である。
【0019】
酸化剤には、過酸化物またはペルオキシド構造を持つ物質またはオクソ酸塩水溶液、ハロゲンおよびハロゲン化水素溶液、硝酸および関連化合物の水溶液、酸素類溶液および、これらを任意の割合で混合した水溶液を使用し、例えば、過酸化水素水、ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液、ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液、アンモニウム溶液、ペルオキシ一硫酸カリウム(オキソン酸カリウム)水溶液、ヨウ素溶液、臭素溶液、塩化水素溶液、ヨウ化水素溶液、臭化水素溶液、過塩素酸類溶液、塩素酸類溶液、亜塩素酸類溶液、次亜塩素酸類溶液、硝酸、硝酸塩溶液、亜硝酸、亜硝酸塩溶液、オゾン水、またはこれらを任意の割合で混合した水溶液を使用することができる。
【0020】
吸着剤カラムユニット13は、吸着剤を備え、この吸着剤には、例えば、チオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤、アミノ基を有する化合物が修飾された金属吸着剤を使用することができる。本実施形態では、アミノ基を有する化合物が修飾された金属吸着剤13Aとチオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤13Bを使用する。金属吸着剤13Aと金属吸着剤13Bは、直列に接続されている。
アミノ基を有する化合物が修飾された金属吸着剤13Aには、例えば、Prоpyl-N-diethylenetriamine Trimethylsilyl(株式会社DPS社製)、Prоpyl-N-ethylenediamine Trimethylsilyl(株式会社DPS社製)、チオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤13Bには、例えば、Mercaptоprоpyl Trimethylsilyl(株式会社DPS社製)を使用することができる。
【0021】
吸着剤カラムユニット13中の吸着剤は、上記に示した種類や組み合せに限定されず、チオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤13Bのみを使用したり、複数の金属吸着剤を組み合せて使用したりすることもできる。なお、Prоpyl-N-diethylenetriamine、Prоpyl-N-ethylenediamineの吸着剤は、リサイクル可能であり、再生利用できる点でメリットがある。
【0022】
次に、本実施形態に係るパラジウムの回収方法について説明する。
【0023】
パラジウム含有液貯留槽10から、水洗液中に排出される希薄スズパラジウムコロイド液(パラジウム含有液L1)を、酸化剤貯留槽11から、過酸化水素水(酸化剤L2)をそれぞれ流路12に流入させ、流路12内で混合させる。この際、流路12に対する希薄スズパラジウムコロイド液の流入速度は10L/hrから150L/hr、流路12に対する過酸化水素水の流入速度は10ml/hrから1500ml/hrとする。
なお、希薄スズパラジウムコロイド液に対して混合する過酸化水素水の量は、1/10から1/10000とすることが好ましい。
【0024】
混合された混合液は、流路12内で酸化されることで、コロイドが破壊され、パラジウムからスズが分離される。その後、酸化された混合液を、吸着剤カラムユニット13に通液させる。具体的には、まず、アミノ基を有する化合物が修飾された金属吸着剤13Aが設けられているカラム内を通液させた後、チオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤13Bが設けられているカラム内を通液させる。通液させた後の混合液は、廃液流路14に流入させ、廃液として処理する。
【0025】
本実施形態に係るパラジウムの回収方法は、パラジウム回収装置2を使用することもできる。パラジウム回収装置2は、
図2に示すように、混合液貯留槽(第三貯留部)15を備えている。パラジウム回収装置2において、パラジウム回収装置1と同じ構成には同符号を付し、説明は省略する。
【0026】
パラジウム回収装置2において、流路12の一端側は、パラジウム含有液貯留槽10及び酸化剤貯留槽11と連通され、流路12の他端側は、混合液貯留槽15に連通されている。そして、吸着剤カラムユニット13は、流路16を介して、混合液貯留槽15と連結されている。なお、混合液貯留槽15には、混合液を攪拌するために、攪拌部材を設けることもできる。
【0027】
パラジウム回収装置2では、パラジウム含有液貯留槽10から流入される希薄スズパラジウムコロイド液L1と、酸化剤貯留槽11から流入される過酸化水素水L2を流路12内で混合させた後、混合液を混合液貯留槽15の内部に流入させる。そして、混合液貯留槽15の内で混合液を所定時間静置または攪拌した後、流路16を介して、吸着剤カラムユニット13に通液させる。通液させた後の混合液は、廃液流路14に流入させ、廃液として処理する。
【0028】
[実施例1]
装飾メッキに使用された水洗水である希薄スズパラジウムコロイド液(カタリスト液)500mLに、過酸化水素(30%)300μLを添加し、0.6mL/minでフローさせた後、アミノ基を有する化合物が修飾された金属吸着剤、またはチオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤に通液させた。評価は、各吸着剤に通液させる入口における金属パラジウム濃度と、各吸着剤から排出される出口における金属パラジウム濃度から、各吸着剤に吸着されたパラジウムの量を測定した。
なお、比較として、過酸化水素水を未添加の希薄スズパラジウムコロイド液(以下、未添加希薄スズパラジウムコロイド液とも記す)の入口、出口の金属パラジウムの濃度を測定した。
【0029】
過酸化水素を添加した希薄スズパラジウムコロイド液では、各吸着剤の入口の濃度は約4ppmであるのに対し、各吸着剤の出口の濃度はほぼ0ppmであった。なお、薄茶褐色である希薄スズパラジウムコロイド液に過酸化水素水を添加することで、透明に変化した。このことから、過酸化水素水の添加により、希薄スズパラジウムコロイド溶液中のコロイドが破壊されているといえる。
一方、未添加希薄スズパラジウムコロイド液においては、吸着剤の入口の濃度は約4ppmであるのに対し、アミノ基を有する化合物が修飾された金属吸着剤の出口の濃度は約0.80から2.40ppmであり、チオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤の出口の濃度は約3.80ppmから3.90ppmであった。
【0030】
[実施例2]
水洗水として使用した希薄スズパラジウムコロイド液(カタリスト液)100mLに、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素5%以上)1mLを添加し、0.6mL/minでフローさせた後、アミノ基を有する化合物が修飾された金属吸着剤、チオール基を有する化合物が修飾された金属吸着剤に通液させた。実施例1と同様の評価を行った。
【0031】
次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加した希薄スズパラジウムコロイド液では、吸着剤の入口の濃度は約4ppmであるのに対し、アミノ基が修飾された金属吸着剤の出口の濃度は約0.20から0.75ppmであり、チオール基が修飾された金属吸着剤の出口の濃度は約0.20ppmから0.50ppmであった。
【0032】
これらの結果から、未添加希薄スズパラジウムコロイド液と比較し、過酸化水素水を添加した希薄スズパラジウムコロイド液や次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加した希薄スズパラジウムコロイド液をフローさせて、吸着剤に通液させることで、吸着剤にパラジウムが選択的に吸着することが判った。
【0033】
本実施形態に係るパラジウムの回収方法の作用効果について説明する。
【0034】
本実施形態に係るパラジウムの回収方法は、希薄スズパラジウムコロイド液L1と過酸化水素L2を流路12内で混合させることで、希薄スズパラジウムコロイド液L1中のパラジウムからスズが分離される。そして、その状態で吸着剤カラムユニット13に通液させ、溶離したパラジウムが吸着剤に選択的に吸着される。したがって、希薄スズパラジウムコロイド液の中から、効率的かつ選択的にパラジウムを回収することができる。
【0035】
本実施形態に係るパラジウムの回収方法は、過酸化水素水(酸化剤)L2を希薄スズパラジウムコロイド液L1の重量の1/10から1/10000の割合で混合させることで、パラジウムからのスズの分離を促進し、効率的にパラジウムを回収することができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係るパラジウムの回収方法は、流路12内で希薄スズパラジウムコロイド液L1と過酸化水素水L2とを混合した後に、混合液を混合液貯留槽15に貯留させ、所定時間静置させた後、吸着剤カラムユニット13に通液し、パラジウムを回収することもできる。また、必要であれば、混合液貯留槽15内で、攪拌部材により、混合液を所定時間攪拌してもよい。
【0037】
[電気分解]
次に、パラジウム回収装置3を用いたパラジウムの回収方法について説明する。パラジウム回収装置3は、
図3に示すように、白金メッキ付チタン棒を電極とする電気分解装置20を備えている。パラジウム回収装置3において、パラジウム回収装置1と同じ構成には同符号を付し、説明は省略する。
【0038】
パラジウム回収装置3において、まず、電気分解装置20によって、希薄スズパラジウムコロイド液L1を所定時間電気分解処理することで、活性酸素が発生する。希薄スズパラジウムコロイド溶液中のスズパラジウムコロイドは、この活性酸素により酸化される。電気分解処理を行った希薄スズパラジウムコロイド液を、通路12を介して、カラムユニット13に通液させる。通液させた後の溶液は、廃液流路14に流入させ、廃液として処理する。
なお、電気分解処理後の希薄スズパラジウムコロイド液に酸化剤(過酸化水素水)L2を添加し、吸着剤カラムユニット13に通液させてもよい。また、電気分解により発生する活性酸素を含む溶液を希薄スズパラジウムコロイド溶液に加えることで、希薄スズパラジウムコロイド溶液を酸化してもよい。
【0039】
[実施例3]
水洗水として使用した希薄スズパラジウムコロイド液(カタリスト液)100mLを6分間、電気分解処理を行った。電気分解処理後の希薄スズパラジウムコロイド液80mLを0.6mL/minでフローさせ、アミノ基が修飾された金属吸着剤、チオール基が修飾された金属吸着剤に通液させた。実施例1及び2と同様の評価を行った。
【0040】
電気分解処理後の希薄スズパラジウムコロイド液は、吸着剤の入口の濃度は約4ppmであるのに対し、アミノ基が修飾された金属吸着剤の出口の濃度は約0.60から1.00ppmであり、チオール基が修飾された金属吸着剤の出口の濃度は約0ppmから0.50ppmであった。
【0041】
この結果から、電気分解処理後の希薄スズパラジウムコロイド液をフローさせて、各吸着剤に通液させることで、各吸着剤にパラジウムが選択的に吸着することが判った。
【0042】
電気分解処理を利用したパラジウムの回収方法は、電気分解処理により、希薄パラジウムコロイド液を酸化させることにより、希薄スズパラジウムコロイド液L1中のパラジウムからスズが分離され、溶離したパラジウムが吸着剤に選択的に吸着される。したがって、希薄スズパラジウムコロイド液の中から、効率的かつ選択的にパラジウムを回収することができる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、パラジウム含有液L1中のコロイド安定化剤等の影響があるときは、コロイドが壊れにくくなっているため、酸化剤L2の量を適宜調整する。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3 パラジウム回収装置
10 パラジウム含有液貯留槽(第一貯留部)
11 酸化剤貯留槽(第二貯留部)
12 流路
13 吸着剤カラムユニット
13A,13B 金属吸着剤
14 廃液流路
15 混合液貯留槽(第三貯留部)
16 流路
20 電気分解装置
L1 パラジウム含有液
L2 酸化剤