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特開2022-159603固液分級装置、固液分級方法、凝集分離性評価装置、凝集分離性評価方法、凝集分離処理システム、および凝集分離処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159603
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】固液分級装置、固液分級方法、凝集分離性評価装置、凝集分離性評価方法、凝集分離処理システム、および凝集分離処理方法
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/62 20060101AFI20221011BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20221011BHJP
   B01D 21/26 20060101ALI20221011BHJP
   B01D 21/32 20060101ALI20221011BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20221011BHJP
   G01N 15/06 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B03B5/62
B01D21/01 B
B01D21/01 C
B01D21/26
B01D21/32
G01N15/02 F
G01N15/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063886
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早水 庸隆
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
【テーマコード(参考)】
4D071
【Fターム(参考)】
4D071AA54
4D071AB03
4D071AB17
4D071AB62
4D071BA13
4D071BB01
4D071DA20
(57)【要約】
【課題】フロックのような脆弱な粒子であっても粒度分布等の粒子特性分布を測定することができる固液分級装置を提供する。
【解決手段】固体粒子を含む被処理液について固体粒子を粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段として曲がりチャネル10と、分級した固体粒子を曲がりチャネル10から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインとして、第1出口ライン14および第2出口ライン16と、第1出口ライン14における液質を測定する第1液質測定装置18、および第2出口ライン16における液質を測定する第2液質測定装置20と、第1液質測定装置18および第2液質測定装置20により測定された液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算部22と、を備える固液分級装置1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子を含む被処理液について前記固体粒子を粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段と、
前記分級した固体粒子を前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインと、
前記少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定手段と、
前記液質測定手段により測定された前記液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算部と、
を備えることを特徴とする固液分級装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固液分級装置であって、
前記被処理液に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、
前記粒子特性分布に基づいて、凝集分離性を評価するための凝集分離性評価手段と、
をさらに備えることを特徴とする固液分級装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固液分級装置であって、
前記凝集分離性に基づいて、前記凝集剤の添加量を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする固液分級装置。
【請求項4】
曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段を用いて、固体粒子を含む被処理液について前記固体粒子を粒子特性に基づき分級する分級工程と、
前記分級した固体粒子を前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定工程と、
前記液質測定工程により測定された前記液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算工程と、
を含むことを特徴とする固液分級方法。
【請求項5】
請求項4に記載の固液分級方法であって、
前記被処理液に凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、
前記粒子特性分布に基づいて、凝集分離性を評価するための凝集分離性評価工程と、
をさらに含むことを特徴とする固液分級方法。
【請求項6】
請求項5に記載の固液分級方法であって、
前記凝集分離性に基づいて、前記凝集剤の添加量を制御する制御工程をさらに含むことを特徴とする固液分級方法。
【請求項7】
被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段と、前記混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離するための分離手段と、を備える凝集分離処理装置における前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価するための凝集分離性評価装置であって、
前記凝集分離性評価装置は、
前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加手段と、
前記評価用凝集剤を添加した被処理水についてフロックを粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段と、
前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインと、
前記少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定手段と、
前記液質測定手段により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算部と、
を備えることを特徴とする凝集分離性評価装置。
【請求項8】
請求項7に記載の凝集分離性評価装置であって、
前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理装置における凝集分離処理条件を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする凝集分離性評価装置。
【請求項9】
被処理水と凝集剤とを混和する混和工程と、前記混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離する分離工程と、を含む凝集分離処理工程における前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価する凝集分離性評価方法であって、
前記凝集分離性評価方法は、
前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加工程と、
曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段を用いて、前記評価用凝集剤を添加した被処理液についてフロックを粒子特性に基づき分級する分級工程と、
前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定工程と、
前記液質測定工程により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算工程と、
を含むことを特徴とする凝集分離性評価方法。
【請求項10】
請求項9に記載の凝集分離性評価方法であって、
前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理工程における凝集分離処理条件を制御する制御工程をさらに含むことを特徴とする凝集分離性評価方法。
【請求項11】
被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段と、前記混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離するための分離手段と、を備える凝集分離処理装置と、
前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価するための凝集分離性評価手段と、
を備え、
前記凝集分離性評価手段は、
前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加手段と、
前記評価用凝集剤を添加した被処理水についてフロックを粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段と、
前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインと、
前記少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定手段と、
前記液質測定手段により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算部と、
前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理装置における凝集分離処理条件を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする凝集分離処理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の凝集分離処理システムであって、
前記制御手段は、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理装置における前記凝集剤の添加量を制御することを特徴とする凝集分離処理システム。
【請求項13】
被処理水と凝集剤とを混和する混和工程と、前記混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離する分離工程と、を含む凝集分離処理工程と、
前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価する凝集分離性評価工程と、
を含み、
前記凝集分離性評価工程は、
前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加工程と、
曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段を用いて、前記評価用凝集剤を添加した被処理液についてフロックを粒子特性に基づき分級する分級工程と、
前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定工程と、
前記液質測定工程により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算工程と、
前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理工程における凝集分離処理条件を制御する制御工程と、
を含むことを特徴とする凝集分離処理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の凝集分離処理方法であって、
前記制御工程において、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理工程における前記凝集剤の添加量を制御することを特徴とする凝集分離処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子を含む被処理液について固体粒子を分級する固液分級装置、固液分級方法、その固液分級装置または固液分級方法を用いた凝集分離性評価装置、凝集分離性評価方法、凝集分離処理システム、および凝集分離処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に分散する固体の粒子径分布を測定する方法としては、固体が分散する液体にレーザ光を照射し、発せられる回折光、散乱光の強度分布から粒度分布を求める方法等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、水処理において、被処理水中に無機凝集剤や高分子凝集剤等の凝集剤を添加して、懸濁物質等を凝集させてフロックを形成し、固液分離する凝集分離処理が行われる。
【0004】
このようなフロックの粒度分布を求めたい場合、上記のようなレーザ光を用いる方法では、測定中に液体を撹拌するためにフロックのような脆弱な粒子は壊れてしまい、正確な粒度分布を測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-236088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、フロックのような脆弱な粒子であっても粒度分布等の粒子特性分布を測定することができる固液分級装置、固液分級方法、その固液分級装置または固液分級方法を用いた凝集分離性評価装置、凝集分離性評価方法、凝集分離処理システム、および凝集分離処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固体粒子を含む被処理液について前記固体粒子を粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段と、前記分級した固体粒子を前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインと、前記少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定手段と、前記液質測定手段により測定された前記液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算部と、を備える、固液分級装置である。
【0008】
前記固液分級装置において、前記被処理液に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、前記粒子特性分布に基づいて、凝集分離性を評価するための凝集分離性評価手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0009】
前記固液分級装置において、前記凝集分離性に基づいて、前記凝集剤の添加量を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0010】
本発明は、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段を用いて、固体粒子を含む被処理液について前記固体粒子を粒子特性に基づき分級する分級工程と、前記分級した固体粒子を前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定工程と、前記液質測定工程により測定された前記液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算工程と、を含む、固液分級方法である。
【0011】
前記固液分級方法において、前記被処理液に凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、前記粒子特性分布に基づいて、凝集分離性を評価するための凝集分離性評価工程と、をさらに含むことが好ましい。
【0012】
前記固液分級方法において、前記凝集分離性に基づいて、前記凝集剤の添加量を制御する制御工程をさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明は、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段と、前記混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離するための分離手段と、を備える凝集分離処理装置における前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価するための凝集分離性評価装置であって;前記凝集分離性評価装置は、前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加手段と、前記評価用凝集剤を添加した被処理水についてフロックを粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段と、前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインと、前記少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定手段と、前記液質測定手段により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算部と、前記凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理装置における凝集分離処理条件を制御する制御手段と、を備える、凝集分離性評価装置である。
【0014】
前記凝集分離性評価装置において、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理装置における凝集分離処理条件を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0015】
本発明は、被処理水と凝集剤とを混和する混和工程と、前記混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離する分離工程と、を含む凝集分離処理工程における前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価する凝集分離性評価方法であって;前記凝集分離性評価方法は、前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加工程と、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段を用いて、前記評価用凝集剤を添加した被処理液についてフロックを粒子特性に基づき分級する分級工程と、前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定工程と、前記液質測定工程により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算工程と、を含む、凝集分離性評価方法である。
【0016】
前記凝集分離性評価方法において、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理工程における凝集分離処理条件を制御する制御工程をさらに含むことが好ましい。
【0017】
本発明は、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段と、前記混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離するための分離手段と、を備える凝集分離処理装置と;前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価するための凝集分離性評価手段と;を備え、前記凝集分離性評価手段は、前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加手段と、前記評価用凝集剤を添加した被処理水についてフロックを粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段と、前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインと、前記少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定手段と、前記液質測定手段により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算部と、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理装置における凝集分離処理条件を制御する制御手段と、を備える、凝集分離処理システムである。
【0018】
前記凝集分離処理システムにおいて、前記制御手段は、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理装置における前記凝集剤の添加量を制御することが好ましい。
【0019】
本発明は、被処理水と凝集剤とを混和する混和工程と、前記混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程と、前記形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離する分離工程と、を含む凝集分離処理工程と;前記被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価する凝集分離性評価工程と;を含み、前記凝集分離性評価工程は、前記被処理水の一部に評価用凝集剤を添加する評価用凝集剤添加工程と、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段を用いて、前記評価用凝集剤を添加した被処理液についてフロックを粒子特性に基づき分級する分級工程と、前記分級したフロックを前記分級手段から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインにおける液質を測定する液質測定工程と、前記液質測定工程により測定された前記液質に基づいて、前記凝集分離性として粒子特性分布を計算する演算工程と、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理工程における凝集分離処理条件を制御する制御工程と、を含む、凝集分離処理方法である。
【0020】
前記凝集分離処理方法において、前記制御工程において、前記評価した凝集分離性に基づいて、前記凝集分離処理工程における前記凝集剤の添加量を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、フロックのような脆弱な粒子であっても粒度分布等の粒子特性分布を測定することができる固液分級装置、固液分級方法、その固液分級装置または固液分級方法を用いた凝集分離性評価装置、凝集分離性評価方法、凝集分離処理システム、および凝集分離処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る固液分級装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る固液分級装置における曲がりチャネルの流路断面の一例を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る凝集分離性評価装置の一例を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る凝集分離処理システムの一例を示す概略構成図である。
図5】実施例の結果を示す写真である。
図6】実施例の結果を示す図5の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施形態に係る固液分級装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0025】
本実施形態に係る固液分級装置1は、固体粒子を含む被処理液について固体粒子を粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段として、曲がりチャネル10と、分級した固体粒子を曲がりチャネル10から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインとして、第1出口ライン14および第2出口ライン16と、第1出口ライン14における液質を測定する液質測定手段として、第1液質測定装置18、および第2出口ライン16における液質を測定する液質測定手段として、第2液質測定装置20と、第1液質測定装置18および第2液質測定装置20により測定された液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算部22と、を備える。
【0026】
曲がりチャネル10は、例えば、被処理液を流入するための被処理液入口と、流体が流れるための例えば矩形状の1つの流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、第1液を排出するための、流路の例えば内周側から分かれた第1出口と、第2液を排出するための、流路の例えば外周側から分かれた第2出口と、を有する。
【0027】
図1に示す固液分級装置1において、曲がりチャネル10の被処理液入口には、被処理液ライン12が接続されている。曲がりチャネル10の第1出口には、第1出口ライン14が接続され、第2出口には第2出口ライン16が接続されている。第1出口ライン14には、第1液質測定装置18が設置され、第2出口ライン16には、第2液質測定装置20が設置されている。演算部22は、第1液質測定装置18、第2液質測定装置20のそれぞれと電気的接続等によって接続されている。演算部22は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。
【0028】
本実施形態に係る固液分級方法および固液分級装置1の動作について説明する。
【0029】
図1の固液分級装置1において、固体粒子を含む被処理液は、被処理液ライン12を通して、曲がりチャネル10へ送液される。
【0030】
被処理液は、曲がりチャネル10の被処理液入口から渦巻き状チャネルの流路に導入され、流路を流れていくと、固体粒子と液体との密度差と重力と流体力学的作用とにより、流路の例えば内周側の第1液と流路の例えば外周側の第2液とに分離され、固体粒子が粒子径および密度の少なくとも一方等の粒子特性に基づき分級される(分級工程)。第1液は、第1出口ライン14を通して排出され、第2液は、第2出口ライン16を通して排出される。
【0031】
図2に曲がりチャネル10の流路の断面を示すが、固体粒子を含む被処理液が被処理液入口から渦巻き状チャネルに導入されると、矩形状の流路の断面には二次流れ(ディーン渦)が生じる。これは遠心力による外向きの流れと、直進しようとする流れが外壁により強制的に曲げられることによる内向きへの圧力によるものである。
【0032】
固体粒子はこの二次流れ(ディーン渦)の中では内周側に集まるとされるが、固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスによっては、固体粒子が外周側に集まる場合もある。曲がりチャネル10によって発達したディーン渦、固体粒子自身に働く重力、浮力、抗力のバランスによって固体粒子の密度や粒子径によって曲がりチャネル10の特定の箇所に濃縮され、分級される。
【0033】
第1出口ライン14において、第1液質測定装置18により第1液の液質が測定され、第2出口ライン16において、第2液質測定装置20により第2液の液質が測定される(液質測定工程)。液質測定工程おいて第1液質測定装置18により測定された第1液の液質および第2液質測定装置20により測定された第2液の液質に基づいて、演算部22によって粒子特性分布が計算される(演算工程)。
【0034】
分級に寄与するのは、例えば、粒子径および密度の少なくとも一方であり、濃縮された固体粒子を所定の出口から引き抜き、粒子数や濁度等の液質を測定することによって、粒子特性分布を疑似的に算出することができる。
【0035】
少なくとも2つ以上の引き抜き用の出口ラインは、曲がりチャネル10の末端で分岐させて設けてもよいし、1つ以上の引き抜き用の出口ラインを曲がりチャネル10の途中に設けてもよい。曲がりチャネル10の流路から引き抜く箇所によって、引き抜かれた固体粒子の粒子径および密度が変わるため、できるだけ多くの箇所から引き抜いて各液質に基づいて粒子特性分布を計算した方がよく、また、被処理液入口からの距離に差がある位置で、できるだけ多くの箇所から引き抜いて各液質に基づいて粒子特性分布を計算した方がよい。引き抜き用の出口ラインは、3つ以上設けた方がよい。また、各出口ラインに液質測定手段を設置して各液質測定手段によって各出口ラインの液質を測定してもよいし、1つの液質測定手段で2つ以上の出口ラインの液質を測定してもよい。
【0036】
このような方法によって、フロックのような脆弱な粒子であっても粒度分布等の粒子特性分布を測定することができる。従来のレーザ光を用いる方法では、測定中に液体を撹拌するためにフロックのような脆弱な粒子は壊れてしまい、正確な粒度分布を測定することができないが、本実施形態に係る固液分級方法および固液分級装置によれば、フロックのような脆弱な粒子をほとんど壊すことなく分級して、粒度分布等の粒子特性分布を測定することができる。
【0037】
第1液質測定装置18、第2液質測定装置20等の液質測定手段としては、液の液質を測定することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する装置である。第1液質測定装置18、第2液質測定装置20等の液質測定手段は、1つの装置であっても、別個の装置であってもよい。
【0038】
粒子特性としては、粒子径、密度等が挙げられ、計算できる粒子特性分布としては、粒子径分布、粒子の密度分布等が挙げられる。
【0039】
被処理液は、曲がりチャネル10の入口側、例えば被処理液ライン12にポンプを設けて曲がりチャネル10へ送液してもよいし、水頭差を利用して曲がりチャネル10へ送液してもよい。
【0040】
曲がりチャネル10は、曲率を有する壁面を含む流路を有するものであればよく、特に制限はない。曲がりチャネル10は、例えば、曲率を有する壁面を含む1つの流路を有する配管が渦巻き状に形成されたものである。曲がりチャネル10の流路の断面形状は、矩形状、円状、楕円状等が挙げられ、ディーン渦の形成のためには、流路の断面形状が矩形状であることが望ましい。すなわち、曲がりチャネル10は、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む流路を有する。
【0041】
曲がりチャネル10は、固体粒子の分離の目的に応じて決められた所定の曲率、長さ、および幅を有することが好ましい。
【0042】
固体粒子の分離に最適となる曲がりチャネルの仕様は、固体粒子の性状(密度、粒子径等)によって変化するため、流動解析ソフトを用いて決定することが望ましい。流動解析ソフトとしては、例えば、「ANSYS Fluent」(ANSYS社)等が挙げられる。
【0043】
本実施形態に係る固液分級方法および固液分級装置における処理対象は、固体粒子を含む液体であればよく、特に制限はない。例えば、凝集分離処理における固液分離、センチメートルからマイクロメートルサイズの配管やチャネルにおける固体粒子の選択的な分級等において用いることができる。
【0044】
本実施形態に係る固液分級方法および固液分級装置を用いて、凝集分離処理における凝集分離性の評価を行ってもよい。以下にその一例を示す。
【0045】
本発明の実施形態に係る凝集分離性評価装置は、例えば、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段と、混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段と、形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離するための分離手段と、を備える凝集分離処理装置における被処理水の一部を用いて凝集分離性を評価するための装置である。本実施形態に係る凝集分離性評価装置は、例えば、上記固液分級装置を備える。
【0046】
本発明の実施形態に係る凝集分離性評価装置の一例の概略を図3に示す。
【0047】
図3に示す凝集分離性評価装置2は、凝集分離処理装置における被処理水の一部に評価用の凝集剤を添加する評価用凝集剤添加手段として、凝集剤添加配管26と、評価用凝集剤を添加した被処理水についてフロックを粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段として、曲がりチャネル10と、分級したフロックを曲がりチャネル10から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインとして、第1出口ライン14および第2出口ライン16と、第1出口ライン14における液質を測定する液質測定手段として、第1液質測定装置18、および第2出口ライン16における液質を測定する液質測定手段として、第2液質測定装置20と、第1液質測定装置18および第2液質測定装置20により測定された液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算部22と、を備える。凝集分離性評価装置2は、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段としてラインミキサ24をさらに備えてもよい。曲がりチャネル10は、混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段として機能してもよい。なお、本実施形態に係る凝集分離性評価装置は、凝集分離装置としても機能する。
【0048】
凝集分離性評価装置2において、曲がりチャネル10の被処理液入口には、被処理液ライン12が接続されている。被処理液ライン12には凝集剤添加配管26が接続されている。被処理液ライン12における凝集剤添加配管26との接続点の後段側にはラインミキサ24が設置されている。曲がりチャネル10の第1出口には、第1出口ライン14が接続され、第2出口には第2出口ライン16が接続されている。第1出口ライン14には、第1液質測定装置18が設置され、第2出口ライン16には、第2液質測定装置20が設置されている。演算部22は、第1液質測定装置18、第2液質測定装置20のそれぞれと電気的接続等によって接続されている。演算部22は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。
【0049】
本実施形態に係る固液分級方法および固液分級装置1の動作について説明する。
【0050】
凝集分離性評価装置2において、懸濁物質等を含む被処理水は、被処理液ライン12を通して、ラインミキサ24を経由して曲がりチャネル10へ送液される。ここで、被処理液ライン12において、凝集剤添加配管26を通して被処理水に凝集剤が添加され(凝集剤添加工程)、ラインミキサ24において、凝集剤と被処理水とが撹拌されて混和される(混和工程)。凝集剤と被処理水とが混和された混和液は、曲がりチャネル10へ送液される。
【0051】
混和液は、曲がりチャネル10の被処理液入口から渦巻き状チャネルの流路に導入され、流路における流体力学的作用により撹拌が行われ、凝集剤と被処理水との混和、凝集により形成された微細なフロック同士が衝突して、フロックの粒子径が成長する(フロック形成工程)。流路を流れていくと、水とフロックとの密度差と重力と流体力学的作用とにより、流路の例えば内周側の第1液と流路の例えば外周側の第2液とに分離され、固体粒子が粒子径および密度の少なくとも一方等の粒子特性に基づき分級される(分級工程)。第1液は、第1出口ライン14を通して排出され、第2液は、第2出口ライン16を通して排出される(以上が、凝集分離工程)。
【0052】
フロックはこの二次流れ(ディーン渦)の中では内周側に集まるとされるが、フロックの密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスによっては、フロックが外周側に集まる場合もある。曲がりチャネル10によって発達したディーン渦、固体粒子自身に働く重力、浮力、抗力のバランスによってフロックの密度や粒子径によって曲がりチャネル10の特定の箇所に濃縮され、分級される。
【0053】
第1出口ライン14において、第1液質測定装置18により第1液の液質が測定され、第2出口ライン16において、第2液質測定装置20により第2液の液質が測定される(液質測定工程)。液質測定工程おいて第1液質測定装置18により測定された第1液の液質および第2液質測定装置20により測定された第2液の液質に基づいて、演算部22によってフロックの粒子特性分布が計算され(演算工程)、凝集分離性が評価される。
【0054】
被処理水に凝集剤が添加されると、粒子の荷電が中和され、凝集剤の架橋作用によって粒子が大きくなる。ここで、凝集剤の注入量は被処理水の固体粒子のほとんどが十分反応し、粒子が大きくなることが、後段で沈殿処理や浮上処理を行う上で重要である。凝集剤の注入量が不足していると、微細な粒子が残留し、後段の処理不良を招く。そこで、被処理水に凝集剤を添加し、分級してフロックの粒子径分布等の粒子特性分布を得ることによって、沈殿処理や浮上処理がうまくいくかどうかを評価することができる。
【0055】
このような方法によって、フロックのような脆弱な粒子であっても粒度分布等の粒子特性分布を測定することができる。従来のレーザ光を用いる方法では、測定中に液体を撹拌するためにフロックは壊れてしまい、正確な粒度分布を測定することができないが、本実施形態に係る固液分級方法および固液分級装置によれば、フロックをほとんど壊すことなく分級することができるため、粒子特性分布を測定し、凝集性の良否を判断することができる。
【0056】
凝集分離性評価装置2により、高速で凝集分離を行うことができる。この凝集分離性評価装置2を、例えば、凝集、固液分離に最適な凝集剤の添加量等を決定する試験を行うジャーテスタまたはオートジャーテスタとして用いることにより、ジャーテストの高速化が可能となり、フロックの粒子特性分布に基づいて迅速に凝集分離処理の凝集条件等を決定することができる。そのため、被処理水の水質変動があっても、特に被処理水の急激な水質変動があっても、最適な凝集条件を追従させることができるため、処理水質の悪化が抑制される。ジャーテストをインラインで行うことができ、連続的に最適な凝集分離処理条件を決定することができる。
【0057】
凝集分離性評価装置2において、凝集剤と被処理水との混和(混和工程)は、ラインミキサ24を用いて行われているが、ラインミキサ24の代わりに、撹拌羽根等を有する撹拌装置を備える撹拌槽を混和手段として用いてもよいし、フロック形成手段および分級手段と同じ曲がりチャネル10、またはフロック形成手段および分級手段とは別の曲がりチャネルを混和手段として用いてもよい。
【0058】
凝集分離性評価装置2において、フロック形成手段および分級手段は曲がりチャネルであるが、混和手段、フロック形成手段および分級手段が曲がりチャネルであってもよい。すなわち、フロック形成工程および分級工程を、曲がりチャネルを用いて行うが、混和工程、フロック形成工程および分級工程を、曲がりチャネルを用いて行ってもよい。
【0059】
凝集分離性評価装置2において、凝集剤と被処理水とを混和する混和工程に要する時間は、例えば、1秒~60秒程度、好ましくは5秒~30秒程度であり、凝集剤を含む被処理水中にフロックを形成するフロック形成工程に要する時間は、例えば、10秒~10分程度、好ましくは1分~5分程度であり、分級工程に要する時間は、例えば、1秒~5分程度、好ましくは1秒~10秒程度であり、演算工程に要する時間は、例えば、1秒~30秒程度である。したがって、混和工程から演算工程に要する時間は、10秒~3分程度、好ましくは10秒~60秒程度である。
【0060】
曲がりチャネル10における粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスを調整することにより、フロックの形成および分級を行うことができ、さらには、凝集剤と被処理水との混和、フロックの形成および分級を行うことができる。例えば、曲がりチャネル10において、分級に最適な曲率に向けて、小さい曲率から漸近させることによってフロックの形成および分級を連続した曲がりチャネルで行うことができる。流路の断面積を最適な値に向けて漸近させてもよい。狭い流路では流束が高く撹拌がなされ、断面積が分級に最適である流路では分級がなされる。
【0061】
凝集分離性評価装置2において、評価した凝集分離性に基づいて、凝集分離処理条件を制御する制御手段をさらに備え、評価した凝集分離性に基づいて、凝集分離処理工程における凝集分離処理条件を制御してもよい(制御工程)。例えば、評価した凝集分離性に基づいて、凝集剤の添加量を制御してもよい。制御手段として、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される制御装置を設けてもよいし、演算部22が制御手段として機能してもよい。
【0062】
凝集剤としては、無機凝集剤および高分子凝集剤のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0063】
無機凝集剤としては、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝集剤、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系無機凝集剤等が挙げられる。
【0064】
無機凝集剤の添加量は、例えば、1~100mg/Lの範囲である。
【0065】
高分子凝集剤としては、ノニオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤またはカチオン性高分子凝集剤等、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミドプロパンスルフォン酸ナトリウム、キトサン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびポリアミジン等が挙げられる。高分子凝集剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
高分子凝集剤の添加量は、例えば、0.1~2mg/Lの範囲である。
【0067】
混和工程において、必要に応じて、pH調整を行ってもよい(pH調整工程)。pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリである。pHは、例えば、4~11の範囲に調整すればよい。
【0068】
凝集分離処理(混和工程、フロック形成工程、分級工程)における液温度は、特に制限はなく、例えば、15~35℃の範囲である。粘性等によって分離性が変わるため、液温度はできるだけ一定になるように調整することが望ましい。
【0069】
凝集分離性評価装置および凝集分離装置における処理対象である被処理水は、例えば、懸濁物質等を含む水であり、例えば、河川水、工業用水、排水等が挙げられる。
【0070】
本実施形態に係る凝集分離性評価装置および凝集分離装置において、混和工程、フロック形成工程、分離工程を、それぞれ曲がりチャネルを用いて行ってもよい。
【0071】
本実施形態に係る凝集分離性評価装置および凝集分離装置において、被処理水が、実機の凝集分離処理装置の入口水からサンプリングしたものであり、凝集分離性評価装置の凝集分離性の評価結果に基づいて、実機の凝集分離処理装置の凝集条件を制御してもよい。例えば、図3の凝集分離性評価装置2の被処理水が実機の凝集分離処理装置の入口水からサンプリングしたものであり、凝集分離性評価装置2の凝集分離性の評価結果に基づいて、実機の凝集分離処理装置の凝集条件を制御する例を図4に示す。
【0072】
図4の凝集分離処理システム3は、凝集分離処理装置5と、凝集分離性評価装置2と、を備える。凝集分離処理システム3における凝集分離処理装置5は、混和手段として混和槽52と、フロック形成手段としてフロック形成槽54と、分離手段として固液分離装置56と、処理水質測定手段として処理水質測定装置58とを備える。
【0073】
凝集分離性評価装置2は、凝集分離処理装置における被処理水の一部に評価用の凝集剤を添加する評価用凝集剤添加手段として、凝集剤添加配管26と、評価用凝集剤を添加した被処理水についてフロックを粒子特性に基づき分級するための、曲率を有する壁面を含む流路を有する分級手段として、曲がりチャネル10と、分級したフロックを曲がりチャネル10から取り出す少なくとも2つ以上の出口ラインとして、第1出口ライン14および第2出口ライン16と、第1出口ライン14における液質を測定する液質測定手段として、第1液質測定装置18、および第2出口ライン16における液質を測定する液質測定手段として、第2液質測定装置20と、第1液質測定装置18および第2液質測定装置20により測定された液質に基づいて、粒子特性分布を計算する演算部22と、を備える。凝集分離性評価装置2は、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段としてラインミキサ24をさらに備えてもよい。曲がりチャネル10は、混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段として機能してもよい。なお、本実施形態に係る凝集分離性評価装置は、凝集分離装置としても機能してもよい。
【0074】
図4の凝集分離処理システム3において、混和槽52の入口に被処理水配管60が接続されている。混和槽52の出口とフロック形成槽54の入口とは、混和液配管62により接続されている。フロック形成槽54の出口と固液分離装置56の入口とは、凝集液配管64により接続されている。固液分離装置56の出口には、処理水配管66が接続されている。混和槽52には、被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段として、凝集剤添加配管68が接続されている。処理水配管66には、処理水質測定装置58が設置されていてもよい。
【0075】
被処理水配管60から分岐された被処理液ライン12は、曲がりチャネル10の被処理液入口に接続されている。被処理液ライン12には凝集剤添加配管26が接続されている。被処理液ライン12における凝集剤添加配管26との接続点の後段側にはラインミキサ24が設置されている。曲がりチャネル10の第1出口には、第1出口ライン14が接続され、第2出口には第2出口ライン16が接続されている。第1出口ライン14には、第1液質測定装置18が設置され、第2出口ライン16には、第2液質測定装置20が設置されている。演算部22は、第1液質測定装置18、第2液質測定装置20のそれぞれと電気的接続等によって接続されている。演算部22は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。
【0076】
凝集分離処理システム3において、例えば、懸濁物質等を含む被処理水は被処理水配管60を通して混和槽52へ送液され、混和槽52において、被処理水に凝集剤が凝集剤添加配管68を通して添加されて混和される(混和工程)。混和液は、混和液配管62を通してフロック形成槽54へ送液され、フロック形成槽54においてフロックが形成される(フロック形成工程)。凝集液は、凝集液配管64を通して固液分離装置56へ送液され、固液分離装置56において重力による沈降分離、ろ過等により固液分離が行われ、濃縮水と処理水とに分離される(分離工程)。処理水は、処理水配管66を通して排出され、処理水の水質は、処理水質測定装置58により測定されてもよい。
【0077】
一方、被処理水配管60から分岐された懸濁物質等を含む被処理水は、被処理液ライン12を通して、ラインミキサ24を経由して曲がりチャネル10へ送液される。ここで、被処理液ライン12において、凝集剤添加配管26を通して被処理水に評価用凝集剤が添加され(評価用凝集剤添加工程)、ラインミキサ24において、評価用凝集剤と被処理水とが撹拌されて混和される(混和工程)。凝集剤と被処理水とが混和された評価用混和液は、曲がりチャネル10へ送液される。
【0078】
評価用混和液は、曲がりチャネル10の被処理液入口から渦巻き状チャネルの流路に導入され、流路における流体力学的作用により撹拌が行われ、凝集剤と被処理水との混和、凝集により形成された微細なフロック同士が衝突して、フロックの粒子径が成長する(フロック形成工程)。流路を流れていくと、水とフロックとの密度差と重力と流体力学的作用とにより、流路の例えば内周側の第1液と流路の例えば外周側の第2液とに分離され、固体粒子が粒子径および密度の少なくとも一方等の粒子特性に基づき分級される(分級工程)。第1液は、第1出口ライン14を通して排出され、第2液は、第2出口ライン16を通して排出される(以上が、評価用凝集分離工程)。
【0079】
フロックはこの二次流れ(ディーン渦)の中では内周側に集まるとされるが、フロックの密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスによっては、フロックが外周側に集まる場合もある。曲がりチャネル10によって発達したディーン渦、固体粒子自身に働く重力、浮力、抗力のバランスによってフロックの密度や粒子径によって曲がりチャネル10の特定の箇所に濃縮され、分級される。
【0080】
第1出口ライン14において、第1液質測定装置18により第1液の液質が測定され、第2出口ライン16において、第2液質測定装置20により第2液の液質が測定される(液質測定工程)。液質測定工程おいて第1液質測定装置18により測定された第1液の液質および第2液質測定装置20により測定された第2液の液質に基づいて、演算部22によってフロックの粒子特性分布が計算され(演算工程)、凝集分離性が評価される。
【0081】
凝集分離性評価装置2において、評価した凝集分離性に基づいて、例えば制御手段である演算部22によって、凝集分離処理工程における凝集分離処理条件を制御してもよい(制御工程)。例えば、評価した凝集分離性に基づいて、凝集剤の添加量を制御してもよい。例えば、演算部22によって、凝集剤添加配管68に設置された凝集剤添加量調整手段、例えばポンプが制御され、混和槽52において添加される凝集剤の量が制御される。
【0082】
凝集分離処理システム3では、凝集分離性評価装置2により、ジャーテストの高速化が可能となる。また、凝集分離性評価装置2によって評価された凝集分離性に基づいて決定された凝集分離処理の凝集条件により、混和槽52において添加される凝集剤の量が制御されるため、被処理水の水質変動があっても、特に被処理水の急激な水質変動があっても、最適な凝集条件を追従させることができるため、処理水質の悪化が抑制される。ジャーテストをインラインで行うことができ、連続的に最適な凝集分離処理条件を決定することができ、凝集分離処理装置5の凝集分離処理条件を制御することができる。
【実施例0083】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
<実施例1>
図1に示す固液分級装置1を用いて、固体粒子を含む被処理液について、密度は同一であり、粒子径による分級を行った。図5に実験結果の写真を示し、図6にその拡大写真を示す。被処理液として、体積平均粒子径40μm、60μm、100μmの固体粒子(カオリン+ポリ塩化アルミニウム(PAC)相当のシミュレーション)を用いた。
【0085】
図5図6に示す通り、小さい粒子は外側、大きい粒子は内側に集まっていることがわかる。したがって、内側と外側でそれぞれ粒子を引き抜くことで分級が可能である。本実施例では、曲がりチャネルの流路の末端で出口を4分割してそれぞれの分離性能を測定した。ここで、内側から順に出口(1)、出口(2)、出口(3)、出口(4)とし、それぞれの出口から得られた液の濁度を、粒子数をカウントすることにより測定した。表1に実験結果を示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示す通り、それぞれの出口から粒子径の異なる固体粒子を含む液が得られた。
【0088】
このように、フロックのような脆弱な粒子であっても粒度分布等の粒子特性分布を測定することできることがわかった。
【符号の説明】
【0089】
1 固液分級装置、2 凝集分離性評価装置、3 凝集分離処理システム、5 凝集分離処理装置、10 曲がりチャネル、12 被処理液ライン、14 第1出口ライン、16 第2出口ライン、18 第1液質測定装置、20 第2液質測定装置、22 演算部、24 ラインミキサ、26,68 凝集剤添加配管、52 混和槽、54 フロック形成槽、56 固液分離装置、58 処理水質測定装置、60 被処理水配管、62 混和液配管、64 凝集液配管、66 処理水配管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6