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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159640
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】電子機器の設置角度可変構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20221011BHJP
   H04M 1/04 20060101ALI20221011BHJP
   F16M 11/10 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H05K5/02 B
H04M1/04 A
F16M11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063949
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 創
【テーマコード(参考)】
4E360
5K023
【Fターム(参考)】
4E360AB09
4E360AB62
4E360AC24
4E360BB26
4E360EC05
4E360EC14
4E360ED04
4E360ED12
4E360ED23
4E360GA02
4E360GA46
4E360GB23
4E360GC14
5K023CC01
5K023KK04
5K023KK10
5K023PP02
5K023PP16
(57)【要約】
【課題】電子機器の製造コストを低く抑えながら、電子機器の設置角度を変える際の段数が増えて設置角度を更に大きくすることが可能な電子機器の設置角度可変構造を提供する。
【解決手段】電話機の底面8aに形成された軸受部12と、軸受部12に回動可能に支持される軸部21を有するスタンド6とを備える。軸受部12は、軸部21の回転方向に所定の間隔をおいて並ぶ第1~第3の嵌合凹部35~37を有している。軸部21は、第1~第3の嵌合凹部35~37に嵌合可能な形状に形成されて回転方向に所定の間隔をおいて並ぶ第1の嵌合片45および第2の嵌合片46を有している。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の底面に形成された軸受部と、
前記軸受部に回動可能に支持される軸部を有し、前記軸部の前記軸受部に対する回転方向の角度が変わることにより前記電子機器の設置角度が変わるスタンドとからなる電子機器の設置角度可変構造であって、
前記軸受部は、前記回転方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の嵌合凹部を有し、
前記軸部は、前記嵌合凹部に嵌合可能な形状に形成されて前記回転方向に所定の間隔をおいて並ぶ第1の嵌合片および第2の嵌合片を有していることを特徴とする電子機器の設置角度可変構造。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器の設置角度可変構造において、
前記第1の嵌合片は、前記第2の嵌合片より前記回転方向において前記設置角度が大きくなる第1の方向に位置し、
前記軸受部は、前記複数の嵌合凹部のうち前記第1の方向の先頭に位置する前記嵌合凹部より前記第1の方向に離間した位置に、前記第1の嵌合片が係合して前記第1の嵌合片の前記回転方向への移動を規制する規制部を有し、
前記複数の嵌合凹部のうち前記回転方向において前記設置角度が小さくなる第2の方向の先頭に位置する前記嵌合凹部に前記第2の嵌合片が嵌合する状態においては、前記規制部に前記第1の嵌合片が係合することを特徴とする電子機器の設置角度可変構造。
【請求項3】
請求項2記載の電子機器の設置角度可変構造において、
前記軸部は、前記軸受部に対して軸線方向に移動可能に形成され、
前記第1の嵌合片と前記第2の嵌合片は、前記軸部が前記軸線方向に移動することにより、前記嵌合凹部または前記規制部により前記回転方向への移動が規制される規制位置と、前記嵌合凹部または前記規制部により規制を受けることなく前記回転方向へ移動可能な非規制位置との間で移動することを特徴とする電子機器の設置角度可変構造。
【請求項4】
請求項3記載の電子機器の設置角度可変構造において、
前記軸受部は、
前記電子機器の前記底面を形成する底壁に前記軸部を前記電子機器の前後方向から挟むように形成された突部と板状部とを有し、
前記突部は、前記底壁に前記底面より後方へ偏って位置する片持ち梁状に形成されているとともに、前記複数の嵌合凹部が前記電子機器の前方に向けて開口するように形成され、
前記板状部は、前記底壁における前記軸部の軸線方向において前記突部と隣り合う位置に、前記突部より前記電子機器の前方に離れて設けられ、
前記規制部は、
前記突部に前記電子機器の前方を指向するように形成された前面と、
前記板状部に前記電子機器の後方を指向するように形成された後面とを用いて形成されていることを特徴とする電子機器の設置角度可変構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機等の電子機器の設置角度をスタンドを用いて変える電子機器の設置角度可変構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電話機等の電子機器を卓上で使用する場合にこれらの電子機器を支持し、設置角度を適切な角度に変更するための構造として、特許文献1や特許文献2に記載された構造が知られている。
特許文献1に記載されている電話機は、筐体を揺動自在に支持するベース部材と、筐体の揺動端側とベース部材との間に介在する支承部材とを備えている。支承部材の一端部は筐体に揺動自在に取付けられ、他端部はベース部材の係合凹部に着脱可能に係合している。係合凹部は、ベース部材の複数の位置にそれぞれ設けられている。特許文献1に示す電話機においては、支承部材が係合する係合凹部を変えることにより、筐体の設置角度が変わるようになる。
【0003】
特許文献2に記載されている電話機は、設置角度を変更するためのスタンドを備えている。スタンドは、電話機の左右方向に延びる軸部を有し、この軸部が電話機の筐体側の軸受部に対して回動することにより、筐体に対する角度が変わるように構成されている。軸受部には、3つの嵌合凹部が形成されている。軸部には、嵌合凹部に嵌合可能な保持爪が1つだけ設けられている。軸部は、軸受部に対して軸線方向に移動可能に構成されており、保持爪が嵌合凹部に嵌合する嵌合形態と、保持爪が嵌合凹部の外に出る非嵌合形態とを採ることができる。
特許文献2に示す電話機においては、スタンドの軸部が非嵌合形態であるときにスタンドを揺動させ、スタンドを所望の角度とした状態で軸部を嵌合形態とすることにより、電話機の設置角度を変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-224986号公報
【特許文献2】特開2018-181994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す電子機器の設置角度可変構造では、ベース部材が必要であるから、部品数が多くなり、電話機の製造コストが高くなってしまうという問題がある。
特許文献2に示す電子機器の設置角度可変構造においては、電話機の設置角度が嵌合凹部の数と同数だけ段階的に変わる。しかし、従来の設置角度ではユーザを満足させることはできず、設置角度を変える際の段数を増やし、更に大きな設置角度で使用することができるようにすることが要請されている。
【0006】
この要請に応えるためには、特許文献2に記載されている設置角度可変構造において、嵌合凹部の数を増やすことが考えられる。嵌合凹部の数が増えると、スタンドの保持片が嵌合できる箇所が増えるため、設置角度を変える際の段数が増える。しかしながら、軸受部に嵌合凹部を追加するためには、軸受部を成型する金型として、単純な2方向抜き金型ではなく、例えばスライドコアを使用するような構造が複雑な金型を使用しなければならない。構造が複雑な金型を使用しなければならない理由は、新たに追加する嵌合凹部の型開き方向の一側部がいわゆるアンダーカットになり、2方向抜き金型では成型できないからである。このような複雑な構造の金型を使用すると、製品の製造コストが著しく高くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、電子機器の製造コストを低く抑えながら、電子機器の設置角度を変える際の段数が増えて設置角度を更に大きくすることが可能な電子機器の設置角度可変構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る電子機器の設置角度可変構造は、電子機器の底面に形成された軸受部と、前記軸受部に回動可能に支持される軸部を有し、前記軸部の前記軸受部に対する回転方向の角度が変わることにより前記電子機器の設置角度が変わるスタンドとからなる電子機器の設置角度可変構造であって、前記軸受部は、前記回転方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の嵌合凹部を有し、前記軸部は、前記嵌合凹部に嵌合可能な形状に形成されて前記回転方向に所定の間隔をおいて並ぶ第1の嵌合片および第2の嵌合片を有しているものである。
【0009】
本発明は、前記電子機器の設置角度可変構造において、前記第1の嵌合片は、前記第2の嵌合片より前記回転方向において前記設置角度が大きくなる第1の方向に位置し、前記軸受部は、前記複数の嵌合凹部のうち前記第1の方向の先頭に位置する前記嵌合凹部より前記第1の方向に離間した位置に、前記第1の嵌合片が係合して前記第1の嵌合片の前記回転方向への移動を規制する規制部を有し、前記複数の嵌合凹部のうち前記回転方向において前記設置角度が小さくなる第2の方向の先頭に位置する前記嵌合凹部に前記第2の嵌合片が嵌合する状態においては、前記規制部に前記第1の嵌合片が係合してもよい。
【0010】
本発明は、前記電子機器の設置角度可変構造において、前記軸部は、前記軸受部に対して軸線方向に移動可能に形成され、前記第1の嵌合片と前記第2の嵌合片は、前記軸部が前記軸線方向に移動することにより、前記嵌合凹部または前記規制部により前記回転方向への移動が規制される規制位置と、前記嵌合凹部または前記規制部により規制を受けることなく前記回転方向へ移動可能な非規制位置との間で移動してもよい。
【0011】
本発明は、前記電子機器の設置角度可変構造において、前記軸受部は、前記電子機器の前記底面を形成する底壁に前記軸部を前記電子機器の前後方向から挟むように形成された突部と板状部とを有し、前記突部は、前記底壁に前記底面より後方へ偏って位置する片持ち梁状に形成されているとともに、前記複数の嵌合凹部が前記電子機器の前方に向けて開口するように形成され、前記板状部は、前記底壁における前記軸部の軸線方向において前記突部と隣り合う位置に、前記突部より前記電子機器の前方に離れて設けられ、前記規制部は、前記突部に前記電子機器の前方を指向するように形成された前面と、前記板状部に前記電子機器の後方を指向するように形成された後面とを用いて形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、軸部の軸受部に対する回転方向において電子機器の設置角度が大きくなる方向を「第1の方向」とし、第1の嵌合片と第2の嵌合片とのうち第1の嵌合片が第2の嵌合片より第1の方向に位置しているとすると、電子機器の設置角度は、第2の嵌合片が嵌合凹部に嵌合することにより、第1の嵌合片のみを使用する場合と較べて大きくなり、電子機器の設置角度を変える際の段数も増える。
【0013】
したがって、本発明によれば、複数の嵌合凹部を単純な2方向抜き金型によって成型したとしても、軸が嵌合凹部に嵌合する回転方向の位置を嵌合凹部の数より多くすることができる。この結果、軸受部を単純な2方向抜き金型で成型できるから電子機器の製造コストを低く抑えることができ、電子機器の設置角度を変える際の段数が増えて設置角度を更に大きくすることが可能な電子機器の設置角度可変構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る設置角度可変構造を備えた電話機の斜視図である。
図2図2は、電話機の裏側を示す斜視図である。
図3図3は、電話機の側面図である。
図4図4は、電話機の裏側を示す斜視図である。
図5図5は、電話機本体とスタンドを示す分解斜視図である。
図6図6は、電話機本体の裏側を示す斜視図である。
図7図7は、軸受部を示す斜視図である。
図8図8は、軸受部の一部を拡大して示す斜視図である。
図9図9は、軸受部と軸部を示す斜視断面図である。
図10図10は、軸受部と軸部を示す斜視図である。
図11図11は、電話機の設置角度が20°であるときの軸受部と軸部の斜視断面図である。
図12図12は、電話機の設置角度が35°であるときの軸受部と軸部の斜視断面図である。
図13図13は、電話機の設置角度が50°であるときの軸受部と軸部の斜視断面図である。
図14図14は、電話機の設置角度が60°であるときの軸受部と軸部の斜視断面図である。
図15図15は、図14の一部を拡大して示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電子機器の設置角度可変構造の一実施の形態を図1図15を参照して詳細に説明する。
図1において符号1で示すものは、本発明でいう電子機器としての電話機である。この電話機1は、壁(図示せず)に掛けて使用したり、卓上で使用することができるものである。
【0016】
電話機1は、複数のプッシュボタン2を有する電話機本体3と、電話機本体3にカールコード4を介して接続されたハンドセット5と、電話機本体3の底面3a(図2参照)に取付けられたスタンド6などを備えている。
電話機本体3は、この電話機1の前方を指向するアッパーケース7と、電話機本体3の底面3aを含むロアーケース8とを組み合わせて形成されている。以下において、電話機1の各部を説明する上で方向を示すにあたっては、電話機1をプッシュボタン2等と向き合うように前方から見たときの方向で説明する。
【0017】
スタンド6は、本発明に係る電子機器の設置角度可変構造11(図2参照)の一部を構成するもので、ロアーケース8に後述する軸受部12を介して揺動可能に取付けられている。設置角度可変構造11は、電話機本体3の底面3aに対するスタンド6の傾斜角度を変えることができるように構成されている。この実施の形態においては、図3に示すように、載置面13に対する電話機1の設置角度αを0°、20°、35°、50°および60°に変えることができるように構成されている。設置角度0°のときのスタンド6を図3中に符号6aで示し、設置角度20°のときのスタンド6を図3中に符号6bで示す。また、設置角度35°のときのスタンド6を符号6c、設置角度50°のときのスタンド6を符号6d、設置角度60°のときのスタンド6を符号6eで示す。
【0018】
電話機1の設置角度が0°の場合は、電話機1が卓上に水平に設置される。また、この場合は、電話機1を図示していない壁に掛けることができる。電話機1を壁に掛ける場合は、スタンド6に設けられている上側壁掛用取付部14(図4参照)と、ロアーケース8に設けられている下側壁掛用取付部15とに、壁側の突起(図示せず)を挿入して係合させる。
【0019】
スタンド6は、その一端が電話機本体3の上下方向(壁掛け時の上下方向であって図3においては左右方向)の中央部において軸受部12に支持され、傾斜角度が0°の状態で他端が電話機本体3の上端部と隣り合うように電話機本体3に取付けられている。このスタンド6の電話機本体3に対する傾斜角度が大きくなるにしたがって、図3中に二点鎖線で示す載置面13に対する電話機1の設置角度αが大きくなる。
【0020】
設置角度可変構造11は、図5に示すようにロアーケース8の底面8aの左右両側に設けられた軸受部12と、これらの軸受部12に回動可能に支持される軸部21を有するスタンド6とによって構成されている。軸部21の軸線方向は、ロアーケース8の左右方向である。軸部21の軸受部12に対する回転方向の角度が変わることにより、スタンド6の底面8aに対する傾斜角度が変わり、電話機1の設置角度が変わる。設置角度が大きくなるときの軸部21の回転方向は、図3中に矢印Aで示す方向であり、設置角度が小さくなるときの軸部21の回転方向は、図3中に矢印Bで示す方向である。以下においては、設置角度が大きくなるときの軸部21の回転方向を単に「第1の方向A」といい、これとは逆に設置角度が小さくなるときの軸部21の回転方向を単に「第2の方向B」という。
【0021】
軸部21は、詳細は後述するが、スタンド6の揺動中心側となる基端部に設けられた一対の腕22,23の先端に設けられている。
軸受部12の近傍であってロアーケース8の左右方向の両端部と中央部とには、底面8aから電話機1の後方に向けて突出する第1~第4の突体24~27が設けられている。これらの第1~第4の突体24~27は、スタンド6の左右方向の移動を規制したり、スタンド6から荷重を受けるためのものである。
【0022】
左右方向の中央部に位置する第2の突体25には、上述した下側壁掛用取付部15が形成されている。この第2の突体25は、図4に示すように、スタンド6の左側の腕22と右側の腕23との間に挿入されるように形成されている。この第2の突体25の近傍には、図5に示すように、ロアーケース8の底面8aから後方に向けて突出する爪片28が設けられている。この爪片28は、図4に示すように、傾斜角度が0°となるときスタンド6をその位置に保持するためのもので、傾斜角度が0°となるスタンド6に掛かるように形成されている。
【0023】
軸受部12は、ロアーケース8の上下方向の中央部であって左側と右側とにそれぞれ設けられている。各々の軸受部12は、図6および図7に示すように、ロアーケース8の底面8aから電話機1の後方に突出した突部31と、底面8aに連なる板状部32とを有している。左側の突部31は第1の突体24と第2の突体25との間に設けられている。右側の突部31は、第2の突体25と第3の突体26との間に設けられている。第1~第3の突体24~26と、左右の突部31は、図6に示すように、ロアーケース8の底壁33の起立部33aによって互いに接続されている。
軸受部12の突部31と板状部32は、ロアーケース8の底面8aを形成する底壁33に一体成型によって形成されているとともに、後述する軸部21を電話機1の前後方向から挟むように形成されている。
【0024】
軸受部12は、ロアーケース8の前方と後方とに離型される2方向抜き金型(図示せず)を使用して成型されている。このため、図7に示すように、板状部32は、突部31を成型する金型によって形成された穴34によって左右方向に分けられており、底壁33における軸部21の軸線方向(左右方向)において突部31と隣り合う位置に、突部31より前方に離れて設けられている。
【0025】
軸受部12の突部31は、底面8aより後方に偏って位置する片持ち梁状に形成されている。詳述すると、突部31は、底面8aから後方に突出した基端部31aから上方に延びている。突部31の前側には、複数の(3つの)嵌合凹部35~37と、摺動凹部38(図6参照)とが形成されている。これらの嵌合凹部35~37は、電話機1の前方(図7においては下方)と左方とに向けて開口する溝状に形成されているとともに、上下方向(軸部21の回転方向)に所定の間隔をおいて並ぶように形成されている。
【0026】
以下においては、複数の嵌合凹部35~37のうち、最もロアーケース8の上側に位置する嵌合凹部を第1の嵌合凹部35といい、第1の嵌合凹部35より下側に隣接する嵌合凹部をロアーケース8の上側から順に第2の嵌合凹部36、第3の嵌合凹部37という。この実施の形態においては、第1~第3の嵌合凹部35~37のうち、第1の嵌合凹部35が上述した第2の方向Bの先頭に位置し、第3の嵌合凹部37が上述した第1の方向Aの先頭に位置している。
摺動凹部38は、図11に示すように、軸部21を後方から支える部分で、図6に示すように上方と前方とに向けて開口する断面円弧状に形成されている。
【0027】
軸受部12の板状部32には、図7に示すように、底壁33の一部を用いて片持ち梁状のばね片41が形成されている。ばね片41は、先端部が板状部32より後方に突出するように形成されており、軸受部12に軸部21が組み付けられた状態で軸部21によって押されて前側に撓み、軸部21を後方に向けて付勢するように構成されている。ばね片41は、図5に示すように、ロアーケース8の左側の端部と右側の端部に設けられている。このため、軸部21は、両端側がばね片41によって後方に向けて押され、中央部側の2箇所が2つの突部31の摺動凹部38に押し付けられる。軸部21がばね片41のばね力で摺動凹部38に押し付けられることにより、スタンド6がロアーケース8に簡単に外れることがないように保持される。
【0028】
図7および図8に示すように、突部31の左側面31bと、突部31より左側に位置する板状部32aとの境界部分には、実質的に第4の嵌合凹部となる規制部42が設けられている。この規制部42は、第1~第3の嵌合凹部35~37のうち第1の方向Aの先頭に位置する第3の嵌合凹部37より第1の方向Aに離間した位置に形成されている。また、規制部42は、突部31の基端部31aに電話機1の前方を指向するように形成された前面43と、板状部32aに電話機1の後方を指向するように形成された後面44とを用いて形成されている。電話機1の前後方向において、前面43と後面44との間には所定の隙間が形成されている。この隙間は、後述する軸部21の第1の嵌合片45(図15参照)が係入可能な広さとなるように形成されている。
【0029】
スタンド6の軸部21は、図5に示すように、概ね円柱状に形成され、スタンド6の左側部と右側部とにそれぞれ設けられている。左側の軸部21は、両端部と、中間部分とがスタンド6の左側の腕22に支持されている。右側の軸部21は、両端部がスタンド6の右側の腕23に支持されている。
軸部21には、上述した第1~第3の嵌合凹部35~37に嵌合可能な形状に形成された第1の嵌合片45と第2の嵌合片46とが設けられている。これらの第1および第2の嵌合片45,46は、軸部21の回転方向の角度、すなわちスタンド6の傾斜角度(電話機1の設置角度)を決めるためのものである。第1および第2の嵌合片45,46の説明は後述する。
【0030】
軸部21は、図9および図10に示すように、軸線方向の両端部がばね片41を含む板状部32に後側から接触するとともに、軸線方向の中央部が摺動凹部38に前側から接触する状態で、軸受部12に回動自在かつ軸線方向へ移動自在に支持されている。なお、軸部21が軸受部12に対して軸線方向に移動自在になるのは、電話機1の設置角度が20°以上になっている場合である。設置角度が0°の場合は、図4に示すように、スタンド6の右側の腕23がロアーケース8の第2の突体25と第4の突体27とによって挟まれているために、軸部21を含めてスタンド6は軸線方向に移動することができない。
【0031】
軸部21が軸受部12に対して軸線方向に移動するときは、スタンド6の傾斜角度を変更するときである。スタンド6の傾斜角度は、第1~第3の嵌合凹部35~37と第1、第2の嵌合片45,46との嵌合状態によって決まる。
第1の嵌合片45と第2の嵌合片46は、図11に示すように、軸部21の軸線方向において同一の位置で軸部21の回転方向に所定の間隔をおいて並ぶように配置され、それぞれ軸部21の径方向の外側に向けて突出している。第1の嵌合片45は、第2の嵌合片46より軸部21の回転方向において所定の方向に位置している。ここでいう所定の方向とは、軸部21が回ることにより電話機1の設置角度が大きくなる、第1の方向Aである。
第1の嵌合片45と第2の嵌合片46との間隔は、図15に示すように、第1の嵌合片45が規制部42に係入するときに第2の嵌合片46が第1の嵌合凹部35に嵌合するような間隔である。
【0032】
軸部21における第1の嵌合片45と第2の嵌合片46の軸線方向の位置は、図4に示すように、電話機1の設置角度が0°のときに軸受部12の突部31より左側に隣接する位置である。このように第1および第2の嵌合片45,46が突部31より左側に隣接することにより、軸部21が軸受部12に対して回転できるようになる。軸部21が軸受部12に対して回転できるような第1、第2の嵌合片45,46の位置を以下においては「非規制位置」といい、第1、第2の嵌合片45,46が第1~第3の嵌合凹部35~37に嵌合して軸部21が回転することができなくなる第1、第2の嵌合片45,46の位置を以下においては「規制位置」という。
【0033】
電話機1の設置角度が0°となるときの位置からスタンド6の傾斜角度を変える場合は、第1、第2の嵌合片45,46が非規制位置にある状態で軸部21を中心にしてスタンド6を所望の角度に起立させる。例えば、設置角度が20°となるようにする場合は、スタンド6を第1の嵌合片45が第1の嵌合凹部35と隣り合うように起立させる。そして、その状態でスタンド6を右方向にスライドさせ、図11に示すように第1の嵌合片45を第1の嵌合凹部35に嵌合させる。このように第1の嵌合片45が第1の嵌合凹部35に嵌合することにより、第1、第2の嵌合片45,46が規制位置に移動し、電話機1の設置角度が20°となる位置にスタンド6が保持される。このとき、詳細には図示してはいないが、スタンド6とロアーケース8の底面8aとの間に、第2の突体25の近傍に設けられている押圧体51(図7参照)と、第4の突体27とが介在するようになり、設置状態にある電話機1が下に向けて押されたときの荷重が押圧体51と第4の突体27とを介してスタンド6に伝達される。
【0034】
電話機1の設置角度を20°から35°に変える場合は、先ず、ロアーケース8に対してスタンド6を左方にスライドさせて第1の嵌合片45を第1の嵌合凹部35から引き出す。すなわち、第1、第2の嵌合片45,46を非規制位置に移動させる。そして、スタンド6を更に起立させ、第1の嵌合片45が第2の嵌合凹部36と隣り合う位置でスタンド6を保持する。その後、図12に示すように、スタンド6を右側にスライドさせ、第1の嵌合片45を第2の嵌合凹部36に嵌合させる。
電話機1の設置角度を35°から50°に変える場合は、上述した操作と同様の操作を行い、第1の嵌合片45を第2の嵌合凹部36から引き出して第3の嵌合凹部37に嵌合させる(図13参照)。
【0035】
設置角度を50°から60°に変える場合も、上述した操作と同様の操作を行う。すなわち、第1の嵌合片45を第3の嵌合凹部37から引き出して非規制位置に移動させ、スタンド6を更に起立させる。このとき、第1の嵌合片45が板状部32aの後面44に当接してそれ以上の軸部21の回転が規制される。そして、この状態でスタンド6を右側にスライドさせる。このようにスタンド6がスライドすると、図14および図15に示すように、第1の嵌合片45が規制部42に係入するとともに、第2の嵌合片46が第1の嵌合凹部35に嵌合する。
【0036】
電話機1の設置角度を小さくするときは、スタンド6を左側にスライドさせて第1、第2の嵌合片45,46を第1~第3の嵌合凹部35~37や規制部42から引き出した状態でスタンド6を所望の角度となるように揺動させ、さらにスタンド6を右側にスライドさせて第1の嵌合片45を第1~第3の嵌合凹部35~37の何れか1つに嵌合させる。また、スタンド6を電話機1の設置角度が0°となる位置に揺動させる場合は、第1、第2の嵌合片45,46が非規制位置に位置している状態でスタンド6を底面8aと平行になるように揺動させる。スタンド6が底面8aと平行になることにより、爪片28によって係止されてその位置に保持される。
【0037】
上述したように構成された電子機器の設置角度可変構造11においては、軸部21の軸受部12に対する回転方向において電子機器の設置角度が大きくなる方向が第1の方向Aであり、第1の嵌合片45と第2の嵌合片46とのうち第1の嵌合片45が第2の嵌合片46より第1の方向Aに位置している。この設置角度可変構造11によれば、第1の嵌合片45が第1~第3の嵌合凹部35~37に嵌合することによって電話機1の設置角度が3段階に変化し、さらに、第2の嵌合片46が第1の嵌合凹部35に嵌合することによって、電話機1の設置角度が合計で4段階に変化する。
このため、電話機1の設置角度は、第1の嵌合片45のみを使用する場合と較べて大きくなり、電話機1の設置角度を変える際の段数も増える。
【0038】
したがって、この実施の形態によれば、複数の嵌合凹部を単純な2方向抜き金型によって成型する構成を採りながら、嵌合片が嵌合凹部に嵌合する回転方向の位置を嵌合凹部の数より多くすることができる。この結果、軸受部を単純な2方向抜き金型で成型できるから電子機器(電話機)の製造コストを低く抑えることができ、電子機器の設置角度を変える際の段数が増えて設置角度を更に大きくすることが可能な電子機器の設置角度可変構造を提供することができる。
【0039】
この実施の形態による第1の嵌合片45は、第2の嵌合片46より軸部21の回転方向において設置角度が大きくなる第1の方向Aに位置している。軸受部12は、第1~第3の嵌合凹部35~37のうち第1の方向Aの先頭に位置する第3の嵌合凹部37より第1の方向Aに離間した位置に、第1の嵌合片45が係合して第1の嵌合片45の回転方向への移動を規制する規制部42を有している。第1~第3の嵌合凹部35~37のうち第2の方向Bの先頭に位置する第1の嵌合凹部35に第2の嵌合片46が嵌合する状態においては、規制部42に第1の嵌合片45が係合する。
このため、この状態においては、スタンド6が第1の嵌合片45の係合部と第2の嵌合片46の嵌合部との2箇所で保持されるため、電話機1に上方から押圧するような力が加わったとしても、その力が第1の嵌合片45と第2の嵌合片46とに分散される。したがって、スタンド6を保持する強度が増し、スタンド6が破損されることを防止することができる。
【0040】
この実施の形態による軸部21は、軸受部12に対して軸線方向に移動可能に形成されている。第1の嵌合片45と第2の嵌合片46は、軸部21が軸線方向に移動することにより、第1~第3の嵌合凹部35~37または規制部42により回転方向への移動が規制される規制位置と、第1~第3の嵌合凹部35~37または規制部42により規制を受けることなく回転方向へ移動可能な非規制位置との間で移動する。
このため、電話機1の設置角度を変えるためにはスタンド6を左右方向へ移動させなければならないから、不用意に電話機1の設置角度が変わってしまうことを防ぐことができる。
【0041】
この実施の形態による軸受部12は、底面8aを形成する底壁33に軸部21を電話機1の前後方向から挟むように形成された突部31と板状部32とを有している。突部31は、底壁33に底面8aより後方へ偏って位置する片持ち梁状に形成されているとともに、第1~第3の嵌合凹部35~37が電話機1の前方に向けて開口するように形成されている。
板状部32は、底壁33における軸部21の軸線方向において突部31と隣り合う位置に、突部31より電話機1の前方に離れて設けられている。
規制部42は、突部31に電話機1の前方を指向するように形成された前面43と、板状部32に電話機1の後方を指向するように形成された後面44とを用いて形成されている。
このため、規制部42を2方向抜き金型で成型することができるから、コストアップを可及的少なく抑えながら規制部42を設けることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…電話機(電子機器)、6…スタンド、8a…底面、11…設置角度可変構造、12…軸受部、21…軸部、31…突部、32…板状部、35…第1の嵌合凹部、36…第2の嵌合凹部、37…第3の嵌合凹部、42…規制部、43…前面、44…後面、45…第1の嵌合片、46…第2の嵌合片。
図1
図2
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図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
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図15