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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159654
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】超音波送受波器及び超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20221011BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01F1/66 A
H04R17/00 330G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063985
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】松岡 幸広
(72)【発明者】
【氏名】堀田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅子
【テーマコード(参考)】
2F035
5D019
【Fターム(参考)】
2F035DA05
2F035DA07
2F035DA22
5D019AA26
5D019EE02
5D019FF02
(57)【要約】
【課題】従来より端子ホルダに振動板を容易に組み付け可能な超音波送受波器を提供する。
【解決手段】本開示の超音波送受波器20では、端子ホルダ22に嵌合するキャップ40の前端が振動板47となっているので、端子ホルダ22に振動板47を容易に組み付けることが可能になる。しかも、振動板47がキャップ40の一部を構成することにより、振動板47とリング部41との界面から端子ホルダ22の内部に計測流路12内の液体が入り込むことを防止することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波流量計に使用される超音波送受波器であって、
1対の端子金具が前後に貫通している樹脂製の端子ホルダと、
前記端子ホルダの前面に重ねられ、前記1対の端子金具が当接する1対の電極を後面、又は後面と側面とに有する圧電素子と、
前記端子ホルダに嵌合されるリング部の前端を振動板で閉塞してなり、前記振動板に前記圧電素子が貼着される金属製のキャップと、を備える超音波送受波器。
【請求項2】
前記振動板の厚みは、送受信される超音波の波長の1/10以下であり、前記リング部は、前記振動板よりも厚くなっている請求項1に記載の超音波送受波器。
【請求項3】
前記リング部と前記振動板とは、別体に形成され、蝋付け又は溶接又は接着材により固定されている請求項1又は2に記載の超音波送受波器。
【請求項4】
前記端子ホルダには、
前記圧電素子の外側に嵌合される素子嵌合部と、
前記素子嵌合部より後側で側方に張り出す側方張出部と、が備えられ、
前記リング部には、
前記素子嵌合部の外側に嵌合される第1嵌合部と、
前記側方張出部の外側に嵌合される第3嵌合部と、が備えられている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の超音波送受波器。
【請求項5】
前記端子ホルダの外面には、前記素子嵌合部より後側でかつ、前記側方張出部より前側に設けられてOリングの内側に嵌合されるシール嵌合部が備えられ、
前記リング部には、前記Oリングを挟んで前記シール嵌合部の外側に嵌合される第2嵌合部が備えられている請求項4に記載の超音波送受波器。
【請求項6】
前記シール嵌合部における前記Oリングとの当接面は、前後方向に対してテーパー状に傾斜し、
前記第2嵌合部における前記Oリングとの当接面は、前後方向と平行であり、
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間には、前後方向と直交した前記Oリングとの当接面を有する第1段差部が設けられている請求項5に記載の超音波送受波器。
【請求項7】
前記端子ホルダには、前記側方張出部の後面から後方に突出し、後端面に前記1対の端子金具の後端部が露出している後側突部が備えられ、
前記後側突部の外側に嵌合しかつ前記後側突部より後方に延びる金属製の延長スリーブが設けられている請求項4から6の何れか1の請求項に記載の超音波送受波器。
【請求項8】
前記後側突部には、Oリングの内側に嵌合される後側シール部が設けられ、
前記延長スリーブが前記Oリングに密着する請求項7に記載の超音波送受波器。
【請求項9】
前記延長スリーブには、前端から側方に張り出し、外縁部を前記第3嵌合部の後端に蝋付け、溶接又は接着されている第1フランジ部が設けられている請求項7又は8に記載の超音波送受波器。
【請求項10】
前記リング部には、前記第3嵌合部の後端に設けられ、前記側方張出部に後方から係止するカシメ部が備えられている請求項4から8の何れか1の請求項に記載の超音波送受波器。
【請求項11】
計測流路を内側に有するハウジングと、
前記計測流路の内面に開口する1対の貫通孔と、
前記1対の貫通孔を閉塞し、前記計測流路内を流れる液体を介して超音波を送受波する請求項1から10の何れか1の請求項に記載の1対の超音波送受波器と、を備える超音波流量計。
【請求項12】
各前記超音波送受波器には、前記リング部の後端から側方に張り出し、各前記貫通孔の外側開口縁に重ねて固定される第2フランジ部と、
前記リング部の外側面に設けられ、各前記貫通孔の内側面との間でOリングを押し潰すOリング嵌合部と、とが備えられている請求項11に記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波送受波器及びそれを備えた超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波送受波器として、1対の端子金具を保持している端子ホルダに、圧電素子が貼着された振動板を組み付けてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-159551(段落[0016]、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の超音波送受波器に対し、端子ホルダに振動板を容易に組み付け可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、超音波流量計に使用される超音波送受波器であって、1対の端子金具が前後に貫通している樹脂製の端子ホルダと、前記端子ホルダの前面に重ねられ、前記1対の端子金具が当接する1対の電極を後面、又は後面と側面とに有する圧電素子と、前記端子ホルダに嵌合されるリング部の前端を振動板で閉塞してなり、前記振動板に前記圧電素子が貼着される金属製のキャップと、を備える超音波送受波器である。
【0006】
請求項2の発明は、前記振動板の厚みは、送受信される超音波の波長の1/10以下であり、前記リング部は、前記振動板よりも厚くなっている請求項1に記載の超音波送受波器である。
【0007】
請求項3の発明は、前記リング部と前記振動板とは、別体に形成され、蝋付け又は溶接又は接着剤により固定されている請求項1又は2に記載の超音波送受波器である。
【0008】
請求項4の発明は、前記端子ホルダには、前記圧電素子の外側に嵌合される素子嵌合部と、前記素子嵌合部より後側で側方に張り出す側方張出部と、が備えられ、前記リング部には、前記素子嵌合部の外側に嵌合される第1嵌合部と、前記側方張出部の外側に嵌合される第3嵌合部と、が備えられている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の超音波送受波器である。
【0009】
請求項5の発明は、前記端子ホルダの外面には、前記素子嵌合部より後側でかつ、前記側方張出部より前側に設けられてOリングの内側に嵌合されるシール嵌合部が備えられ、前記リング部には、前記Oリングを挟んで前記シール嵌合部の外側に嵌合される第2嵌合部が備えられている請求項4に記載の超音波送受波器である。
【0010】
請求項6の発明は、前記シール嵌合部における前記Oリングとの当接面は、前後方向に対してテーパー状に傾斜し、前記第2嵌合部における前記Oリングとの当接面は、前後方向と平行であり、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間には、前後方向と直交した前記Oリングとの当接面を有する第1段差部が設けられている請求項5に記載の超音波送受波器である。
【0011】
請求項7の発明は、前記端子ホルダには、前記側方張出部の後面から後方に突出し、後端面に前記1対の端子金具の後端部が露出している後側突部が備えられ、前記後側突部の外側に嵌合しかつ前記後側突部より後方に延びる金属製の延長スリーブが設けられている請求項4から6の何れか1の請求項に記載の超音波送受波器である。
【0012】
請求項8の発明は、前記後側突部には、Oリングの内側に嵌合される後側シール部が設けられ、前記延長スリーブが前記Oリングに密着する請求項7に記載の超音波送受波器である。
【0013】
請求項9の発明は、前記延長スリーブには、前端から側方に張り出し、外縁部を前記第3嵌合部の後端に蝋付け、溶接又は接着されている第1フランジ部が設けられている請求項7又は8に記載の超音波送受波器である。
【0014】
請求項10の発明は、前記リング部には、前記第3嵌合部の後端に設けられ、前記側方張出部に後方から係止するカシメ部が備えられている請求項4から8の何れか1の請求項に記載の超音波送受波器である。
【0015】
請求項11の発明は、計測流路を内側に有するハウジングと、前記計測流路の内面に開口する1対の貫通孔と、前記1対の貫通孔を閉塞し、前記計測流路内を流れる液体を介して超音波を送受波する請求項1から10の何れか1の請求項に記載の1対の超音波送受波器と、を備える超音波流量計である。
【0016】
請求項12の発明は、各前記超音波送受波器には、前記リング部の後端から側方に張り出し、各前記貫通孔の外側開口縁に重ねて固定される第2フランジ部と、前記リング部の外側面に設けられ、各前記貫通孔の内側面との間でOリングを押し潰すOリング嵌合部と、とが備えられている請求項11に記載の超音波流量計である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の超音波送受波器では、端子ホルダに嵌合するキャップの前端が振動板となっているので、端子ホルダに振動板を容易に組み付けることが可能になる。ここで、振動板の厚みは、送受信される超音波の波長の1/10以下が好ましく、リング部は、振動板よりも厚くなっていることが好ましい(請求項2の発明)。
【0018】
また、振動板とリング部とは一体に形成されていてもよいし、請求項3のように、振動板とリング部とは、別体に形成され、蝋付け又は溶接又は接着剤により一体化されてもよい。この構成にすれば、複雑な金属加工が不要となり、安価に製造することができる。
【0019】
さらに、請求項11のように、液体が流れる計測流路に本開示の超音波送受波器を備えた超音波流量計では、振動板がキャップの一部を構成することにより、振動板とリング部との界面から端子ホルダ内部に計測流路内の液体が入り込むことを防止することができる。
【0020】
ここで、リング部と端子ホルダとの嵌合構造として、例えば、請求項4の構成のように、端子ホルダには、圧電素子の外側に嵌合される素子嵌合部と、素子嵌合部より後側で側方に張り出す側方張出部が備えられ、リング部には、素子嵌合部の外側に嵌合される第1嵌合部と、側方張出部の外側に嵌合される第3嵌合部が備えられていてもよい。
【0021】
このとき、請求項5の構成のように、端子ホルダには、素子嵌合部より後側でかつ、側方張出部より前側に設けられてOリングの内側に嵌合されるシール嵌合部が備えられて、リング部には、そのOリングを挟んでシール嵌合部の外側に嵌合される第2嵌合部が備えられている構成とすれば、リング部の端子ホルダに対するシール性を向上させることができる。また、シール嵌合部におけるOリングとの当接面は、請求項6の構成のように、前後方向に対してテーパー状に傾斜する一方、第2嵌合部におけるOリングとの当接面は、前後方向と平行であり、第1嵌合部と第2嵌合部との間には、前後方向と直交したOリングとの当接面を有する第1段差部が設けられた構成でもよい。
【0022】
さらに、請求項10の構成のように、リング部のうち第3嵌合部の後端に、側方張出部に後方から係止するカシメ部が備えられた構成とすれば、リング部と端子ホルダとの嵌合を強固にして端子ホルダの内部のシール性を向上させることができる。
【0023】
また、端子ホルダに、側方張出部の後面から後方に突出し、後端面に1対の端子金具の後端部が露出している後側突部を備え、後側突部の外側に嵌合しかつ後側突部より後方に延びる金属製の延長スリーブを設けておいて(請求項7の構成)、前述のカシメ部の代わりに、延長スリーブの前端から側方に張り出し、外縁部を第3嵌合部の後端に蝋付け、溶接又は接着されている第1フランジ部を設けた構成としても(請求項9の構成)、端子ホルダの内部のシール性を向上させることができる。
【0024】
また、請求項8の構成のように、後側突部に、Oリングの内側に嵌合される後側シール部を設けておいて、延長スリーブがそのOリングに密着する構成とすれば、延長スリーブの端子ホルダに対するシール性を向上させることができる。
【0025】
さらに、請求項12の超音波流量計のように、リング部の外側面に設けられたOリング嵌合部と、ハウジングの貫通孔の内側面との間でOリングが押し潰される構成とすれば、振動板ではなくリング部が貫通孔の内側面との間のシール部分として構成されるので、薄板状の振動板が計測流路内の液体から圧力を受けて変形したとしても、シール性が低下することを抑制できる。しかも、Oリング嵌合部は、超音波送受波器と別部品ではなく、ユニットとして振動板と一体化したリング部に備えられるので超音波流量計の組み立てが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の一実施形態に係る超音波流量計の断面図
図2図1のA-A切断面における分岐管の断面図
図3】超音波送受波器の側断面図
図4】圧電素子の(A)側断面図、(B)後面図
図5】圧電素子が備えられたキャップの側断面図
図6】分岐管に取り付けられた超音波送受波器の拡大側断面図
図7】第2実施形態に係る超音波送受波器の側断面図
図8】第3実施形態に係る超音波送受波器の側断面図
図9】第4実施形態に係る超音波送受波器の側断面図
図10】他の実施形態に係る圧電素子が備えられたキャップの(A)後面図、(B)側断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、図1図6を参照して、本開示の超音波流量計10の一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の超音波流量計10は、計測スリーブ11と、この計測スリーブ11と斜めに交差する分岐管13とを有するハウジング10Aを備え、分岐管13の両端部に1対の超音波送受波器20を備えている。計測スリーブ11は、例えば、配管の途中に取り付けられ、内側の計測流路12には、液体が流れる。
【0028】
分岐管13は、計測流路12に連通して、円筒状をなし、その両端部は、図2に示すように、鉛直方向上方に曲げられて、上端開口を有する1対の受容部14となっている。そして、各受容部14の上端開口に、送受波面が下方を向くように配置された超音波送受波器20が嵌合されている。また、分岐管13には、各超音波送受波器20の下方に、水平方向に対して45度の傾きで保持された反射板80が備えられ、図示しない信号処理回路により1対の超音波送受波器20,20の間で超音波を送受波させると、一方の超音波送受波器20から送波された超音波が、各反射板80で反射されて他方の超音波送受波器20に到達する構成となっている。そして、公知な超音波流量計と同様に、一方の超音波送受波器20から他方の超音波送受波器20までの超音波の伝播時間と、他方の超音波送受波器20から一方の超音波送受波器20までの超音波の伝播時間とに基づき、計測流路12内を流れる液体の流量を計測する。
【0029】
超音波送受波器20は、図3に示すように、圧電素子30と、1対の端子金具21を保持する端子ホルダ22と、キャップ40と、を有している(図3には、一方の端子金具21のみが示されている)。以下、端子金具21が延びる方向を前後方向とし、端子金具21に対して圧電素子30が配置される側を前側とする。
【0030】
圧電素子30は、図4(A)に示すように、第1と第2の電極32,33と、これら電極32,33により挟まれる圧電部31とを有する。圧電部31は、円盤状をなし、電圧が印可されることによって電圧印加方向に伸縮するものであり、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛等で構成される。
【0031】
第1の電極32は、圧電部31の後面31Bの中央部分に配置され、平面視形状は、図4(B)に示すように、円形の一部が切り欠かれた凹状部32Eを有する形状となっている。第2の電極33は、図4(A)に示すように、圧電部31の前面31A全体を覆う前面電極部33Aと、圧電部31の後面31Bの外縁に配置される後面電極部33Cと、圧電部31の側面に配置されて前面電極部33Aと後面電極部33Cとを接続する側面電極部33Bとを有している。なお、後面電極部33Cのうち、第1の電極32の凹状部32Eとの対向面は、図4(B)に示すように、凹状部32Eに沿った円弧面となっている。
【0032】
端子ホルダ22は、樹脂製であって、図3に示すように、前端に、圧電素子30が嵌合する素子嵌合部23を備えている。素子嵌合部23は、圧電素子30の中心軸J1と同心の円筒状をなし、内周面には、前端側に縮径する段差面が備えられて、その段差面に圧電素子30の後面が突き当てられている。
【0033】
また、端子ホルダ22は、素子嵌合部23に嵌合された圧電素子30の後側に、1対の端子金具21が貫通する後部壁22Aを備えている。そして、圧電素子30と後部壁22Aとの間に内部空間22Nが形成されている。1対の端子金具21は、図示しない弾性当接部を備えて、内部空間22N内で、圧電素子30の後面に備えられた第2の電極33の後面電極部33Cと、第1の電極32とに当接している。なお、後部壁22Aのうち1対の端子金具21が貫通する図示しない貫通孔は、例えばポッティング等で閉塞されている。
【0034】
1対の端子金具21の後端部は、後部壁22Aの後面から突出し、リード線21Rに接続されている。リード線21Rは、外側を絶縁性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)の被覆材で覆われて後方に延ばされ、後述する延長スリーブ50の内側に通されて外部へ引き出されて、前述の信号処理回路に接続されている。
【0035】
端子ホルダ22の後端部には、側方に張り出す側方張出部25が備えられている。そして、端子ホルダ22の外側面のうち素子嵌合部23と側方張出部25との間には、後側に向かって徐々に拡径するテーパー形状をなして、Oリング91が嵌合されるシール嵌合部24が備えられている。
【0036】
側方張出部25の後面からは、円筒状の後側突部26が後方に突出し、後部壁22Aから突出する1対の端子金具21の後端部を外側から囲んでいる。なお、後部壁22Aの後面のうち後側突部26の内側と重なる部分は、側方張出部25の後面よりも後方に配置されている。
【0037】
後側突部26の外側面には、後端側を段付き状に縮径する段差面により後側シール部26Dが設けられ、後側シール部26DにはOリング90が嵌合されている。また、側方張出部25の後面には、後側突部26の外周面に沿って環状溝22Mが形成されている。
【0038】
また、後側突部26には、Oリング90を挟んで金属製の延長スリーブ50が外側から嵌合している。延長スリーブ50は、後側突部26より後方に延び、リード線21Rが通される後側は、前側よりも小径となっている。また、延長スリーブ50の前端部には、側方に張り出すフランジ部50Fが設けられていて、側方張出部25の環状溝22Mに嵌合している。
【0039】
なお、延長スリーブ50の内側には、熱硬化樹脂が充填され、硬化することによってリード線21Rが固定されると共に、1対の端子金具21とリード線21Rが超音波送受波器20周辺に付着する水と接触しないようになっている。
【0040】
キャップ40は、導電性を有する材料、例えば、鉄、ステンレス、銅、アルミ等の金属で形成される。キャップ40は、図3に示すように、端子ホルダ22の外側面に嵌合される円筒状のリング部41と、リング部41の前端を閉塞する振動板47とを備えている。
【0041】
振動板47は、円形の薄板状をなし、後面に圧電素子30が固定される。具体的には、振動板47は、圧電素子30の第2の電極33の前面電極部33Aに重ねられる。なお、振動板47は、圧電素子30よりも大きい円形をなしている。
【0042】
図5に示すように、リング部41の内側面には、後端側を段付き状に拡径する複数の段差面により、前端側から順に、第1嵌合部42、第2嵌合部43及び第3嵌合部44が形成されている。そして、図6に示すように、第1嵌合部42は素子嵌合部23の外側面に嵌合され、第3嵌合部44は側方張出部25の外側面に嵌合される。また、第1嵌合部42と第2嵌合部43との間に形成される第1段差部43Dと、第2嵌合部43とは、それぞれOリング91と当接してシール嵌合部24の外側に嵌合される。また、リング部41の後端には、側方張出部25に後方から係止するカシメ部44Tが突出形成されている。
【0043】
また、第1嵌合部42の前端寄り位置には、周方向に沿ってリブ42Rが突出形成され、リブ42Rの前面に、振動板47の後面の周縁部が重ねられている。また、リブ42Rの内側面は、圧電素子30の外周面を包囲している。本実施形態では、振動板47は、溶接によりリブ42Rの前面に固定されているが、蝋付け又は接着剤により固定されてもよい。
【0044】
リング部41の外側面には、前端側から順に、後端側を段付き状に拡径する第2段差面45Dと第3段差面46Dとが形成されている。そして、第2段差面45Dとその前側の外側面とにOリング92が嵌合されて、図6に示すように、分岐管13の受容部14の内側面に嵌合する。また、リング部41のうち第3段差部46Dより後端側が分岐管13の受容部14の上端開口縁に嵌合する。なお、本実施形態の第2段差面45Dとその前側の外側面とが、特許請求の範囲の「Oリング嵌合部」に相当し、リング部41のうち第3段差面46Dより後端側が、特許請求の範囲の「第2フランジ部」に相当し、分岐管13の1対の受容部14が、特許請求の範囲の「1対の貫通孔」に相当する。
【0045】
本実施形態の超音波流量計10の構成に関する説明は以上である。次に、超音波送受波器20及び超音波流量計10の組み立て手順について説明する。
【0046】
まず、リング部41のリブ42Rの前面に、振動板47の後面の周縁部を重ねて溶接し、リング部41と振動板47とを一体化させたキャップ40を形成する。
【0047】
次に、振動板47の後面に、接着剤により、圧電素子30を貼着し、振動板47に圧電素子30の第2の電極33の前面電極部33Aを固定する。
【0048】
それから、リング部41の第2嵌合部43にOリング91を装着し、1対の端子金具21を保持した端子ホルダ22を、キャップ40に対して後方から挿し込んでリング部41と嵌合させる。これにより、端子ホルダ22の前面に振動板47を固定することができる。このとき、1対の端子金具21は、圧電素子30の第1の電極32と、第2の電極33の後面電極部33Cとに電気的に接続される。また、リング部41の後端に設けられたカシメ部44Tが側方張出部25に後方から係止する。
【0049】
さらに、1対の端子金具21に、リード線21Rを接続してはんだ付けを行う。続いて、端子ホルダ22の後側突部26に、後側シール部26DにOリング90を装着した状態で、外側から延長スリーブ50を外側から嵌合させる。このとき、延長スリーブ50のフランジ部50Fは側方張出部25の環状溝22Mに嵌合する。その後、延長スリーブ50内に熱硬化樹脂を充填し、硬化させる。これにより、超音波送受波器20の組み立てが完成する。
【0050】
そして、リング部41の第2段差面45Dとその前側の外側面とにOリング92を装着した状態で、分岐管13の受容部14に嵌合させる。これにより、超音波流量計10の組み立てが完成する。
【0051】
次に、超音波流量計10の作用効果について説明する。本実施形態では、端子ホルダ22に嵌合するキャップ40の前端が振動板47となっているので、端子ホルダ22に振動板47を容易に組み付けることが可能になる。しかも、振動板47がキャップ40の一部を構成することにより、振動板47とリング部41との界面から端子ホルダ22の内部に計測流路12内の液体が入り込むことを防止することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、リング部41と振動板47とは、別体に形成され、溶接により一体化されるので、複雑な金属加工が不要となり、安価に製造することができる。
【0053】
また、リング部41には、Oリング92の内側に嵌合される第2段差部45D及びその前側の外周面が備えられて、分岐管13の受容部14の内側面との間でOリング92を押し潰して嵌合する。このように、振動板47ではなく、リング部41が受容部14の内側面との間のシール部分として構成されるので、薄板状の振動板47が計測流路12内の液体から圧力を受けて変形したとしても、シール性が低下することを抑制できる。
【0054】
しかも、受容部14の内側面との嵌合部分が超音波送受波器20と別部品ではなく、ユニットとして振動板と一体化したリング部に備えられるので超音波流量計10の組み立てが容易となる。
【0055】
また、端子ホルダ22には、Oリング91が嵌合されるシール嵌合部24が備えられて、リング部22には、そのOリング91を挟んでシール嵌合部24の外側に嵌合される第1段差部43Dと第2嵌合部43が備えられているので、リング部41の端子ホルダ22に対するシール性を向上させることができる。しかも、本実施形態では、リング部41の後端に、側方張出部25に後方から係止するカシメ部44Tが備えられているので、リング部41と端子ホルダ22との嵌合を強固にしてリング部41の端子ホルダ22に対するシール性をさらに向上させることができる。
【0056】
さらに、端子ホルダ22の後側突部26に、Oリング90の内側に嵌合される後側シール部26Dが設けられて、延長スリーブ50がそのOリング90に密着するので、延長スリーブ50の端子ホルダ22に対するシール性を向上させることができる。
【0057】
[第2実施形態]
図7には、第2実施形態の超音波送受波器20Vが示されている。以下、この超音波送受波器20Vの構成について、前記第1実施形態と相違する点に関してのみ説明する。本実施形態の超音波送受波器20Vでは、リング部41の後端には、側方張出部25に後方から係止するカシメ部44Tは形成されておらず、その代わりに、延長スリーブ50のフランジ部50Fが、リング部41の後端まで延びて第1フランジ部51を構成し、側方張出部25の後面全体を覆っている。そして、第1フランジ部51の外縁部は、リング部41の後端に蝋付け、溶接又は接着された構成となっている。この構成によれば、キャップ40と延長スリーブ50と第1フランジ部51とで端子ホルダ22の全体を覆うことができるので、端子ホルダ22の内部のシール性を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、端子ホルダ22に、第1実施形態の後側シール部26Dや、シール嵌合部24を備えていない。
【0059】
[第3実施形態]
本実施形態の超音波送受波器20Wは、図8に示されており、前記第1実施形態の超音波送受波器20とは異なり、延長スリーブ50の前端部にフランジ部50Fが設けられておらず、延長スリーブ50の前端部は側方張出部25の後面に突き当てられている。また、側方張出部25の後面には環状溝22Mは形成されていない。なお、延長スリーブ50の前端開口縁は、前端に向かって拡径するテーパ形状をなしている。
【0060】
[第4実施形態]
本実施形態の超音波送受波器20Xは、図9に示されており、前記第2実施形態の超音波送受波器20Vとは異なり、延長スリーブ50と第1フランジ部51Xとが別体に構成され、延長スリーブ50の前端部に第1フランジ部51Xの内縁部が蝋付け、溶接又は接着により一体化された構成となっている。
【0061】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態の超音波送受波器20,20V~20Xでは、リング部41と振動板47とは別体に構成されていたが、一体に形成されていてもよい。
【0062】
(2)前記実施形態の超音波送受波器20,20V~20Xの端子ホルダ22の内部空間22Nに、充填材が充填されていてもよい。
【0063】
(3)前記実施形態の超音波送受波器20,20V~20Xでは、1対の端子金具21は、圧電素子30の後面に配置された第1の電極32と、第2の電極33の後面電極部33Cとにそれぞれ接続されていたが、第2の電極33に後面電極部33Cを備えない構成として、1対の端子金具21は、圧電素子30の後面に配置された第1の電極32と、圧電素子30の側面に配置された第2の電極33の側面電極部33Bとにそれぞれ接続される構成であってもよい。
【0064】
(4)図10(A)に示すように、リング部41Yの後端部の外周縁の一箇所に、外側面に開放する位置決め凹部41Mを設けてもよい。本実施形態のように、位置決め凹部41Mを設けておいて、例えば、位置決め凹部41M側に、圧電素子30の第2の電極33の後面電極部33Cを配置する(図10(B)の状態)こととすれば、キャップ40Yに端子ホルダ22を嵌合させる工程で、1対の端子金具21と圧電素子30の各電極32,33との接続間違いを抑制し、スムーズに組み付け作業を行うことができる。
【0065】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0066】
10 超音波流量計
10A ハウジング
12 計測流路
14 受容部
20 超音波送受波器
21 端子金具
22 端子ホルダ
23 素子嵌合部
24 シール嵌合部
25 側方張出部
26 後側突部
26D 後側シール部
30 圧電素子
32 第1の電極
33 第2の電極
40 キャップ
41 リング部
42 第1嵌合部
43 第2嵌合部
43D 第1段差部
44 第3嵌合部
44T カシメ部
45D 第2段差部(Oリング嵌合部)
46D 第3段差部(第2フランジ部)
47 振動板
50 延長スリーブ
51 第1フランジ部
90,91,92 Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10