(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159656
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】アンテナ基板
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20221011BHJP
H01Q 19/28 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q19/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063987
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100167232
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 みな
(72)【発明者】
【氏名】杉本 康宏
(72)【発明者】
【氏名】森 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】加賀 敦史
(72)【発明者】
【氏名】市川 順一
(72)【発明者】
【氏名】井場 政宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宗之
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
【テーマコード(参考)】
5J020
5J045
【Fターム(参考)】
5J020AA00
5J020BC13
5J020CA01
5J020CA05
5J020DA02
5J045AA05
5J045DA10
5J045EA08
5J045FA09
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】中空構造を有するアンテナ基板においてアンテナ特性を高める。
【解決手段】アンテナ基板は、誘電体層と誘電体層の上面に設けられる素子とを備える積層単位を複数積層して成り、最も下方に配置される素子は給電素子であり、給電素子以外の素子は無給電素子であり、給電素子を備える積層単位を少なくとも含む第1積層単位は、該第1積層単位が備える誘電体層と、該第1積層単位の上方に隣接する第2積層単位の誘電体層との間に、平面視したときの外周形状および内周形状が正方形である中間誘電体層を備え、中間誘電体層の厚さと第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、中間誘電体層の厚さとの比は、1.1:0.2~1.05の範囲内であること、および、中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:2.2~8.7の範囲内であること、のうちの少なくとも一方を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ基板であって、
誘電体により形成された平板状の誘電体層と、
前記誘電体層の上面に設けられて導電性材料により形成される素子と、
を備える積層単位を、前記誘電体層と前記素子との積層方向に、複数積層して成り、
複数の前記積層単位の各々が備える前記素子のうちの、最も下方に配置される素子は給電素子であり、前記給電素子以外の素子は、前記給電素子と電磁的に結合される無給電素子であり、
複数の前記積層単位のうちの、前記給電素子を備える積層単位を少なくとも含む第1積層単位は、該第1積層単位が備える誘電体層と、該第1積層単位の上方に隣接して配置される積層単位である第2積層単位が備える前記誘電体層との間に、前記誘電体により形成されて、平面視したときの外周形状および内周形状が正方形である枠状に形成され、平面視で枠内に前記素子を収容するように配置された中間誘電体層を備え、
前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、1.1:0.2~1.05の範囲内であること、および、
前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:2.2~8.7の範囲内であること、
のうちの少なくとも一方を満たすことを特徴とする
アンテナ基板。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ基板であって、
前記誘電体は、比誘電率が5.8~6.2であり、
前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:2.2~4.0の範囲内であることを特徴とする
アンテナ基板。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ基板であって、
前記誘電体は、ポリテトラフルオロエチレンであり、
前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、1.9:1.6~1.8の範囲内であることを特徴とする
アンテナ基板。
【請求項4】
請求項1または3に記載のアンテナ基板であって、
前記誘電体は、ポリテトラフルオロエチレンであり、
前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:3.6~8.7の範囲内であることを特徴とする
アンテナ基板。
【請求項5】
請求項1に記載のアンテナ基板であって、
前記誘電体は、液晶ポリマであり、
前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、1.5:1.0~1.4の範囲内であることを特徴とする
アンテナ基板。
【請求項6】
請求項1または5に記載のアンテナ基板であって、
前記誘電体は、液晶ポリマであり、
前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:3.0~7.6の範囲内であることを特徴とする
アンテナ基板。
【請求項7】
アンテナ基板であって、
誘電体により形成された平板状の誘電体層と、
前記誘電体層の上面に設けられて導電性材料により形成される素子と、
を備える積層単位を、前記誘電体層と前記素子との積層方向に、複数積層して成り、
複数の前記積層単位の各々が備える前記素子のうちの、最も下方に配置される素子は給電素子であり、他の素子は、前記給電素子と電磁的に結合される無給電素子であり、
複数の前記積層単位のうちの、前記給電素子を備える積層単位を少なくとも含む第1積層単位は、該第1積層単位が備える誘電体層と、該第1積層単位の上方に隣接して配置される積層単位である第2積層単位が備える前記誘電体層との間に、前記誘電体により形成されて、平面視したときの外周形状および内周形状が正方形である枠状に形成され、平面視で枠内に前記素子を収容するように配置された中間誘電体層を備え、
下記の条件(1)(2)のうちの少なくとも一方を満たすことを特徴とする
アンテナ基板。
(1)前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、前記外周の一辺の長さと、前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層における前記内周の一辺の長さと、を含む条件を用いて、前記中間誘電体層の厚さを変更して電磁界シミュレータを用いて前記アンテナ基板の利得を算出したときに、前記アンテナ基板が送受信する信号の周波数帯の中央値における利得が、前記中央値において最も高い値から、該最も高い値よりも1dBi低い値までの範囲となるときの前記中間誘電体層の厚さの範囲から算出される数値範囲内で設定されている。
(2)前記中間誘電体層を平面視したときの前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、前記外周の一辺の長さと、前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さと、を含む条件を用いて、前記内周の一辺の長さを変更して電磁界シミュレータによって前記アンテナ基板の利得を算出したときに、前記信号の周波数帯の中央値における利得が、前記中央値において最も高い値から、該最も高い値よりも1dBi低い値までの範囲となるときの前記内周の一辺の長さの範囲から算出される数値範囲内で設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の誘電体層と複数の導体層とが交互に積層されたアンテナ基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたアンテナ基板では、アンテナ基板の内部において、導体層上に中空構造を設けることにより、誘電損失が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにアンテナ基板に中空構造を設ける場合には、誘電損失の低減が可能になるものの、中空構造に係る寸法によっては十分なアンテナ特性が得られない可能性があることを、本願発明者らは見出した。中空構造を有するアンテナ基板において、アンテナ特性を高める技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、アンテナ基板が提供される。このアンテナ基板は、誘電体により形成された平板状の誘電体層と、前記誘電体層の上面に設けられて導電性材料により形成される素子と、を備える積層単位を、前記誘電体層と前記素子との積層方向に、複数積層して成り、複数の前記積層単位の各々が備える前記素子のうちの、最も下方に配置される素子は給電素子であり、前記給電素子以外の素子は、前記給電素子と電磁的に結合される無給電素子であり、複数の前記積層単位のうちの、前記給電素子を備える積層単位を少なくとも含む第1積層単位は、該第1積層単位が備える誘電体層と、該第1積層単位の上方に隣接して配置される積層単位である第2積層単位が備える前記誘電体層との間に、前記誘電体により形成されて、平面視したときの外周形状および内周形状が正方形である枠状に形成され、平面視で枠内に前記素子を収容するように配置された中間誘電体層を備え、前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、1.1:0.2~1.05の範囲内であること、および、前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:2.2~8.7の範囲内であること、のうちの少なくとも一方を満たす。
この形態のアンテナ基板によれば、「中間誘電体層の厚さと第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、中間誘電体層の厚さとの比は、1.1:0.2~1.05の範囲内であること」および、「中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:2.2~8.7の範囲内であること」という2つの数値範囲に係る条件のうちの少なくとも一方を満たすことにより、利得を高めてアンテナ特性を向上させることができる。
(2)上記形態のアンテナ基板において、前記誘電体は、比誘電率が5.8~6.2であり、前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:2.2~4.0の範囲内であることとしてもよい。このような構成とすれば、比誘電率が5.8~6.2である誘電体を備えるアンテナ基板において、利得を高めてアンテナ特性を向上させることができる。
(3)上記形態のアンテナ基板において、前記誘電体は、ポリテトラフルオロエチレンであり、前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、1.9:1.6~1.8の範囲内であることとしてもよい。このような構成とすれば、ポリテトラフルオロエチレンを誘電体として備えるアンテナ基板において、利得を高めてアンテナ特性を向上させることができる。
(4)上記形態のアンテナ基板において、前記誘電体は、ポリテトラフルオロエチレンであり、前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:3.6~8.7の範囲内であることとしてもよい。このような構成とすれば、ポリテトラフルオロエチレンを誘電体として備えるアンテナ基板において、利得を高めてアンテナ特性を向上させることができる。
(5)上記形態のアンテナ基板において、前記誘電体は、液晶ポリマであり、前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、1.5:1.0~1.4の範囲内であることとしてもよい。このような構成とすれば、液晶ポリマを誘電体として備えるアンテナ基板において、利得を高めてアンテナ特性を向上させることができる。
(6)上記形態のアンテナ基板において、前記誘電体は、液晶ポリマであり、前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:3.0~7.6の範囲内であることとしてもよい。このような構成とすれば、液晶ポリマを誘電体として備えるアンテナ基板において、利得を高めてアンテナ特性を向上させることができる。
(7)本開示の他の一形態によれば、アンテナ基板が提供される。このアンテナ基板は、誘電体により形成された平板状の誘電体層と、前記誘電体層の上面に設けられて導電性材料により形成される素子と、を備える積層単位を、前記誘電体層と前記素子との積層方向に、複数積層して成り、複数の前記積層単位の各々が備える前記素子のうちの、最も下方に配置される素子は給電素子であり、他の素子は、前記給電素子と電磁的に結合される無給電素子であり、複数の前記積層単位のうちの、前記給電素子を備える積層単位を少なくとも含む第1積層単位は、該第1積層単位が備える誘電体層と、該第1積層単位の上方に隣接して配置される積層単位である第2積層単位が備える前記誘電体層との間に、前記誘電体により形成されて、平面視したときの外周形状および内周形状が正方形である枠状に形成され、平面視で枠内に前記素子を収容するように配置された中間誘電体層を備え、下記の条件(1)(2)のうちの少なくとも一方を満たす。
(1)前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さとの比は、前記外周の一辺の長さと、前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層における前記内周の一辺の長さと、を含む条件を用いて、前記中間誘電体層の厚さを変更して電磁界シミュレータを用いて前記アンテナ基板の利得を算出したときに、前記アンテナ基板が送受信する信号の周波数帯の中央値における利得が、前記中央値において最も高い値から、該最も高い値よりも1dBi低い値までの範囲となるときの前記中間誘電体層の厚さの範囲から算出される数値範囲内で設定されている。
(2)前記中間誘電体層を平面視したときの前記中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、前記外周の一辺の長さと、前記中間誘電体層の厚さと前記第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、前記中間誘電体層の厚さと、を含む条件を用いて、前記内周の一辺の長さを変更して電磁界シミュレータによって前記アンテナ基板の利得を算出したときに、前記信号の周波数帯の中央値における利得が、前記中央値において最も高い値から、該最も高い値よりも1dBi低い値までの範囲となるときの前記内周の一辺の長さの範囲から算出される数値範囲内で設定されている。
この形態のアンテナ基板によれば、アンテナ基板が備える誘電体の種類、あるいは、アンテナ基板が送受信する信号の周波数帯にかかわらず、アンテナ基板の利得を高めてアンテナ特性を向上させることができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、アンテナ基板の製造方法や、アンテナ基板の設計方法などの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態のアンテナ基板の概略構成を模式的に表す断面図。
【
図3】電磁界シミュレータによってアンテナ基板の利得を算出した例を示す説明図。
【
図4】電磁界シミュレータによってアンテナ基板の利得を算出した例を示す説明図。
【
図5】電磁界シミュレータによってアンテナ基板の利得を算出した例を示す説明図。
【
図6】電磁界シミュレータによってアンテナ基板の利得を算出した例を示す説明図。
【
図7】電磁界シミュレータによってアンテナ基板の利得を算出した例を示す説明図。
【
図8】電磁界シミュレータによってアンテナ基板の利得を算出した例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
(A-1)アンテナ基板の構成:
図1は、第1実施形態のアンテナ基板10の概略構成を模式的に表す断面図である。また、
図2は、アンテナ基板10の外観を模式的に表す平面図である。
図2には、
図1の断面の位置を、I-I断面として示している。
図1および
図2には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸を示している。各図に示されるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ同じ向きを表す。本願明細書においては、Z軸は鉛直方向を示し、「積層方向」とも呼ぶ。X軸およびY軸は水平方向を示している。また、上記した鉛直方向および水平方向は、アンテナ基板10の構成の説明のために便宜的に特定したものであり、アンテナ基板10を設置する方向とは一致しなくてもよい。なお、
図1および
図2は、各部の配置を模式的に表しており、各部の寸法の比率を正確に表すものではない。
【0008】
本実施形態のアンテナ基板10は、例えば、携帯端末および基地局等の通信分野、工場、オフィス、医療、インフラ、プラント、交通等、第5世代移動通信システム(5G:5th Generation Mobile Communication System)の利活用分野において、用いることができる。具体的には、本実施形態のアンテナ基板10は、28GHz帯の周波数バンドn257(26.5~29.5GHz)に対応するアンテナ基板とすることができる。
【0009】
本実施形態のアンテナ基板10は、誘電体により形成された平板状の第1誘電体層30、第2誘電体層32a,32b,32c、および第3誘電体層34を備える。アンテナ基板10は、さらに、誘電体により枠状に形成された第1中間誘電体層40、および第2中間誘電体層42a,42bを備える。アンテナ基板10は、さらに、給電素子20と、無給電素子22a,22b,22cと、接地導体層23と、給電回路50と、を備える。
図1および
図2では、アンテナ基板10の積層方向に延びる中心軸を、軸線Oとして示している。
【0010】
第3誘電体層34、第1誘電体層30、および第2誘電体層32a,32b,32cは、この順で下方から上方へと(+Z方向に)配置されている。第1中間誘電体層40は、第1誘電体層30と第2誘電体層32aとの間で積層されている。第2中間誘電体層42aは、第2誘電体層32aと第2誘電体層32bとの間で積層されている。同様に、第2中間誘電体層42bは、第2誘電体層32bと第2誘電体層32cとの間で積層されている。本実施形態では、第2誘電体層32a,32b,32cは、同じ厚さに形成されている。また、第1中間誘電体層40、および第2中間誘電体層42a,42bは、同じ厚さに形成されている。
【0011】
本実施形態のアンテナ基板10は、
図2に示すように、平面視したときの外周形状が矩形となっている。具体的には、第1誘電体層30、第2誘電体層32a,32b,32c、第3誘電体層34、第1中間誘電体層40、および第2中間誘電体層42a,42bは、平面視したときの外周形状が互いに重なって一致する正方形状となっている。なお、本願明細書において、「正方形」とは、縦横長さが同じである他、長辺の長さと短辺の長さとの差が、長辺の長さの10%以内である物を含むものとする。
【0012】
第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bは、既述したように枠状に形成されており、平面視したときの内周形状は、正方形状であって、積層方向に一致する形成となっている。
図1および
図2では、第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bの内周面を、それぞれ、内周面40I,42aI,42bIとして示しており、
図2では、内周面40I,42aI,42bIの位置を破線で示している。第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bを平面視したときの内周形状の重心は、軸線Oに一致する。なお、以下の説明では、第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bを区別しない場合には、単に「中間誘電体層」とも呼ぶ。
【0013】
本実施形態では、第1誘電体層30、第2誘電体層32a,32b,32c、第3誘電体層34、および中間誘電体層40,42a,42bは、同種の誘電体により形成されている。これらの誘電体層を構成する誘電体としては、例えば、比誘電率が2.0~10.0の範囲の誘電体を用いることができる。具体的には、例えば、比誘電率が2.1であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、誘電率が3.1である液晶ポリマ(LCP)を用いることができる。なお、本願明細書では、誘電体の比誘電率は、1GHzにおける比誘電率を指すものとする。
【0014】
給電素子20は、第1中間誘電体層40の内周面40Iが形成する空間内において、すなわち、平面視で枠状に形成される第1誘電体層40の枠内に収容されるように、第1誘電体層30の上面(+Z方向側の面)上に設けられている。無給電素子22aは、第2中間誘電体層42aの内周面42aIが形成する空間内において、すなわち、平面視で枠状に形成される第2誘電体層42aの枠内に収容されるように、第2誘電体層32aの上面上に設けられている。無給電素子22bは、第2中間誘電体層42bの内周面42bIが形成する空間内において、すなわち、平面視で枠状に形成される第2誘電体層42bの枠内に収容されるように、第2誘電体層32bの上面上に設けられている。無給電素子22cは、第2誘電体層32cの上面上に設けられている。給電素子20および無給電素子22a,22b、22cは、平面視したときの外周形状が正方形であり、平面視したときに互いに重なるように配置されている。本実施形態では、平面視したときの給電素子20および無給電素子22a,22b、22cの重心は、軸線Oに一致する。なお、給電素子20および無給電素子22a,22b、22cは、平面視円形状に形成することも可能である。
【0015】
給電素子20は、給電回路50から給電される。無給電素子22a,22b、22cは、電力供給を受けることなく、給電素子20がアンテナ素子として機能する際に、電磁的に給電素子20と結合して、アンテナ基板10の上面に電波を放射する。これらの給電素子20および無給電素子22a,22b、22cは、導電性材料、例えば、銅やアルミニウムを含む金属材料により形成されている。給電素子20は、第1誘電体層30に接することなく第1中間誘電体層40の内周面40Iが形成する空間内に露出する表面の少なくとも一部が、誘電体により被覆されることとしてもよい。このようにすれば、被膜の厚さにより、共振周波数や利得などのアンテナ特性を微調整可能になると共に、給電素子20を物理的に保護することができる。
【0016】
本実施形態では、誘電体層と導電性の素子とを含み、Z軸方向に繰り返し積層される構造を、「積層単位」と呼ぶ。具体的には、第1誘電体層30と給電素子20と第1中間誘電体層40とを備える構造を、積層単位70と呼び、第2誘電体層32aと無給電素子22aと第2中間誘電体層42aとを備える構造を、積層単位71と呼び、第2誘電体層32bと無給電素子22bと第2中間誘電体層42bとを備える構造を、積層単位72と呼び、第2誘電体層32cと無給電素子22cとを備える構造を、積層単位73と呼ぶ。
【0017】
接地導体層23は、第1誘電体層30の下面(-Z方向側の面)上に形成されている。接地導体層23は、例えば、銅やアルミニウムを含む金属製の金属薄板により構成されて、給電素子20から放射される電波を反射する。接地導体層23の下面には、第3誘電体層34が積層されており、第3誘電体層34の下面には、給電素子20に給電する給電回路50が接着されている。
【0018】
給電回路50は、積層された3つの誘電体である回路側誘電体46,47,48を備えている。回路側誘電体46~48のそれぞれには、厚み方向であるZ軸に沿って貫通するビア62,64,66が形成されている。このような給電回路50と給電素子20とを接続するために、アンテナ基板10には、第1誘電体層30、接地導体層23、および第3誘電体層34を貫通して、図示しない導線部が設けられている。
【0019】
アンテナ基板10は、さらに、
図2に示すように、アンテナ基板10を積層方向に貫通する連通孔15を有していてもよい。連通孔15は、第2誘電体層32a,32b,32cの各々において、給電素子20および無給電素子22a,22b,22cのいずれとも重ならない位置に設けられた貫通孔により形成されている。連通孔15は、第1中間誘電体層40の内周面40Iが形成する空間および第2中間誘電体層42a,42bの内周面42aI,42bIが形成する空間と、アンテナ基板10の外部と、を連通させる。ただし、連通孔15は必須ではなく、連通孔15を設けないこととしてもよい。
【0020】
(A-2)アンテナ基板の製造方法:
以下では、アンテナ基板10の製造方法の一例として、誘電体セラミックスを構成材料とするアンテナ基板10の製造方法の概略を説明する。アンテナ基板10を製造する際には、まず、ドクターブレード法により形成された低温焼成用の複数枚のグリーンシートを準備する。準備されるグリーンシートの厚さや大きさは、最終的に得られるアンテナ基板10が備える各誘電体層における望ましい厚さや大きさに応じて、適宜設定すればよい。
【0021】
その後、準備した複数枚のグリーンシートに対して、打抜き加工やレーザ加工によりホールを形成する。例えば、第1中間誘電体層40、および第2中間誘電体層42a,42bとなるグリーンシートに対しては、既述した枠状の内周に対応する位置にホールを形成する。ここで、第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bとなるグリーンシートにおいては、後述する焼成工程の後に得られるアンテナ基板10の第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bにおいて、後述する「誘電体層の一辺の長さと中空部分の一辺の長さとの比」が、後述する数値範囲を満たすように、形成する矩形のホールの大きさを定めればよい。また、第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42b、並びに、第1誘電体層30および第2誘電体層32a~32cとなるグリーンシートにおいては、後述する焼成工程の後に得られるアンテナ基板10において、後述する「誘電体層の厚さの合計と中空部分の厚さとの比」が、後述する数値範囲を満たすように、各グリーンシートの厚さを設定すればよい。
【0022】
回路側誘電体46,47,48となるグリーンシートに対しては、ビア62,64,66に対応する位置にホールを形成する。ビア62,64,66等に対応するホールには、導電体ペーストがスクリーン印刷等により充填されて、ビアが形成される。そして、特定のグリーンシート上に、給電素子20あるいは無給電素子22a,22b,22c等となる導体層が、導電体ペーストをスクリーン印刷することにより形成される。導体層が形成された複数のグリーンシートを特定の順序で積層し、加熱および加圧することにより、積層体が得られる。得られた積層体を脱脂および焼成することで、アンテナ基板10が得られる。
【0023】
(A-3)中空部分の寸法比率について:
本実施形態のアンテナ基板10は、第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bの内周面40I,42aI,42bIが形成する空間の、アンテナ基板10における寸法比率により、アンテナ基板10の利得を向上させている。第1中間誘電体層40および第2中間誘電体層42a,42bは同じ形状であり、以下に説明する寸法比率は、すべての積層単位において成立する。
【0024】
本実施形態では、枠状に形成された中間誘電体層(第1中間誘電体層40または第2中間誘電体層42a,42b)を備える積層単位の各々を、「第1積層単位」とも呼ぶ。そして、第1積層単位の上方(+Z軸側)に隣接して配置される積層単位を、「第2積層単位」とも呼ぶ。積層単位70を第1積層単位とする場合には、積層単位71が第2積層単位となり、積層単位71を第1積層単位とする場合には、積層単位72が第2積層単位となり、積層単位72を第1積層単位とする場合には、積層単位73が第2積層単位となる。また、第1積層単位の中間誘電体層の内周面が形成する空間、すなわち、第1積層単位を積層単位70とする場合には、内周面40Iと、第1誘電体層30と、第2積層単位が備える第2誘電体層32aと、によって区画される空間を、「空間部分」とも呼ぶ。
【0025】
本実施形態のアンテナ基板10のように誘電体層を積層して成るアンテナ基板においては、一般に、誘電体の比誘電率と、アンテナ基板の使用周波数(アンテナ基板が送受信する信号の周波数)とにより、誘電体層の一辺の長さや厚さが定まる。例えば、本実施形態のアンテナ基板10が、28GHz帯のバンドn257を使用帯域とする場合には、26.5~29.5GHzの周波数と、誘電体の比誘電率とにより、誘電体層の一辺の長さや厚さが定まる。このようにして定まる誘電体層の一辺の長さや厚さは、例えば、給電素子20および無給電素子22a,22b,22cの大きさや、アンテナ基板10が備える積層単位の数や、給電素子20の表面における誘電体の被覆層の有無などにより微調整され得るが、大きく変更されることはない。
【0026】
本実施形態で規定する中空部分の寸法比率の一つは、中間誘電体層の厚さと第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計(以下、「誘電体層の厚さの合計」とも呼ぶ)と、中間誘電体層の厚さとの比である。
図1において、誘電体層の厚さの合計は、厚さT
1として示しており、中間誘電体層の厚さは、厚さT
2として示しており、「誘電体層の厚さの合計と中間誘電体層の厚さとの比」は、「T
1:T
2」である。このような寸法比率は、「誘電体層の厚さの合計と中空部分の厚さとの比」とも呼ぶ。
【0027】
また、本実施形態で規定する中空部分の寸法比率の他の一つは、中間誘電体層を平面視したときの中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比である。
図2において、上記外周の一辺の長さは、長さL
1として示しており、上記内周の一辺の長さは、長さL
2として示しており、「中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比」は、「L
1:L
2」である。このような寸法比率は、「誘電体層の一辺の長さと中空部分の一辺の長さとの比」とも呼ぶ。
【0028】
本実施形態のアンテナ基板10は、「中間誘電体層の厚さと第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計と、中間誘電体層の厚さとの比は、1.1:0.2~1.05の範囲内であること」および、「中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比は、8.8:2.2~8.7の範囲内であること」のうちの少なくとも一方を満たす。以下では、上記数値範囲について、さらに詳しく説明する。
【0029】
(A-3-1)誘電体層の厚さの合計と中空部分の厚さとの比について:
以下では、「中間誘電体層の厚さと第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計T1と、中間誘電体層の厚さT2との比が、1.1:0.2~1.05の範囲内である」アンテナ基板10について説明する。
【0030】
<態様1>
図3は、中間誘電体層の厚さT
2を変更して電磁界シミュレータによってアンテナ基板10の利得を算出したときの結果の一例を示す説明図である。
図3は、28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)用のアンテナ基板であって、誘電体層を構成する誘電体として、比誘電率が6.0である誘電体セラミックスを用いたアンテナ基板10の解析結果を示す。ここでは、中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1は8.8mmに設定されており、誘電体層の厚さの合計T
1は1.1mmに設定されており、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2は2.6mmに設定されている。中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1および誘電体層の厚さの合計T
1は、アンテナ基板10が送受信する信号の周波数と、誘電体の比誘電率とに応じて定まる値である。
【0031】
図3に示す解析結果において、中間誘電体層の厚さT
2は、0.1mmから1.1mmまで、0.1mm刻みで11段階に変更している。電磁界シミュレータとしては、電磁界解析ソフトウェアAnsys HFSS(アンシス・ジャパン株式会社製)を用いた。上記電磁界シミュレータに、誘電体の形状および寸法に係る情報(上記した中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1、誘電体層の厚さの合計T
1、および中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2)と共に、給電素子20および無給電素子22a~22cの一辺の長さ(ここでは、2.0mm)、第1誘電体層30の厚さ(ここでは、0.4mm)、アンテナ基板10に使用されている金属の種類(導電率、導体損失)、誘電体の種類(誘電率、誘電損失)、電力の条件を入力し、中間誘電体層の厚さT
2を上記の11段階で変更して電磁界シミュレータによる解析を行い、28GHz帯における利得の変化を求めた。なお、中間誘電体層の厚さT
2を上記のように11段階で変更して中で、中間誘電体層の厚さT
2が1.1mmである場合とは、中間誘電体層の厚さT
2と誘電体層の厚さの合計T
1とが等しくなる(第2積層単位の誘電体層の厚さが0になる)仮想的な状態を表す。
図3において、横軸は周波数を表し、縦軸は利得を表す。
【0032】
28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)の周波数の中央値は28.0GHzであり、
図3に示すように、この周波数の中央値において利得が最も高くなるのは、中間誘電体層の厚さT
2が0.7mmのときであった。
図3では、中央値の周波数28.0GHzにおける利得の最も高い値(以下、最大利得とも呼ぶ)である、中間誘電体層の厚さT
2が0.7mmのときの利得の値よりも1dBi低い値を、「-1dBi」として白抜き矢印で示している。利得を表す
図3の縦軸は、最大利得を0としたときの相対値を表している。
【0033】
図3に示すように、中間誘電体層の厚さT
2が、周波数28.0GHzにおいて最大利得となるときの中間誘電体層の厚さT
2である0.7mmとの差が大きいほど、周波数28.0GHzにおける利得の大きさが小さくなる傾向がある。そして、
図3に示すように、中間誘電体層の厚さT
2を上記した11段階に変更した結果のうち、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの中間誘電体層の厚さT
2の範囲は、0.2mm~1.0mmとなる。さらに、中間誘電体層の厚さT
2が1.1mmであるという仮想的な条件であっても、アンテナ基板10の利得は、最大利得よりも1dBi低い基準値に近い、比較的高い値となった。このような
図3の結果より、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの中間誘電体層の厚さT
2の範囲は、0.2mm~1.05mmと考えられる。このときの「誘電体層の厚さの合計T
1と中間誘電体層の厚さT
2との比」は、「1.1:0.2~1.05」となる。
図3に示す結果より、比誘電率が6.0である誘電体セラミックスを誘電体として用いる場合には、誘電体層の厚さの合計と中間誘電体層の厚さとの比が、1.1:0.2~1.05の範囲内であるアンテナ基板10は、高い利得を実現できることが理解される。
【0034】
<態様2>
図4は、上記態様1とは異なる誘電体を用い、中間誘電体層の厚さT
2を変更して電磁界シミュレータによってアンテナ基板10の利得を算出したときの結果の他の例を示す説明図である。
図4は、28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)用のアンテナ基板であって、誘電体層を構成する誘電体として、比誘電率が2.1であるポリテトラフルオロエチレンを用いたアンテナ基板10の解析結果を示す。ここでは、中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1は8.8mmに設定されており、誘電体層の厚さの合計T
1は1.9mmに設定されており、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2は4.4mmに設定されている。
【0035】
中間誘電体層の厚さT
2は、1.5mmから1.8mmまで、0.1mm刻みで4段階に変更している。電磁界シミュレータとしては、電磁界解析ソフトウェアAnsys HFSS(アンシス・ジャパン株式会社製)を用いた。上記電磁界シミュレータに、誘電体の形状および寸法に係る情報(上記した中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1、誘電体層の厚さの合計T
1、および中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2)と共に、給電素子20および無給電素子22a~22cの一辺の長さ(ここでは、3.4mm)、第1誘電体層30の厚さ(ここでは、0.7mm)、アンテナ基板10に使用されている金属の種類(導電率、導体損失)、誘電体の種類(誘電率、誘電損失)、電力の条件を入力し、中間誘電体層の厚さT
2を上記の4段階で変更して電磁界シミュレータによる解析を行い、28GHz帯における利得の変化を求めた。
図4において、横軸は周波数を表し、縦軸は利得を表す。
【0036】
28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)の周波数の中央値は28.0GHzであり、
図4に示すように、この周波数の中央値において利得が最も高くなるのは、中間誘電体層の厚さT
2が1.8mmのときであった。なお、
図7では、中間誘電体層の厚さT
2が1.8mmを超える場合については示していないが、中間誘電体層の厚さT
2が1.8mmを超えると、第2積層単位の誘電体層の厚さ(T
1-T
2)が薄くなることにより強度が不十分になる可能性があるため、中間誘電体層の厚さT
2の最大値を1.8mmとしている。そのため、上記周波数の中央値における最大利得は、中間誘電体層の厚さT
2が1.8mmのときであると特定している。
図4では、中央値の周波数28.0GHzにおける最大利得である、中間誘電体層の厚さT
2が1.8mmのときの利得の値よりも1dBi低い値を、「-1dBi」として白抜き矢印で示している。利得を表す
図4の縦軸は、最大利得を0としたときの相対値を表している。
【0037】
図4に示すように、中間誘電体層の厚さT
2が、周波数28.0GHzにおいて最大利得となるときの中間誘電体層の厚さT
2である1.8mmとの差が大きいほど、周波数28.0GHzにおける利得の大きさが小さくなる傾向がある。そして、
図4に示すように、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの中間誘電体層の厚さT
2の範囲は、1.6mm~1.8mmとなる。そのため、このときの「誘電体層の厚さの合計T
1と中間誘電体層の厚さT
2との比」は、「1.9:1.6~1.8」となる。このように、比誘電率が2.1であるポリテトラフルオロエチレンを誘電体として用いる場合には、「誘電体層の厚さの合計T
1と中間誘電体層の厚さT
2との比」が、「1.1:0.2~1.05」の範囲内でも、特に、「1.9:1.6~1.8」すなわち「1.1:0.93~1.04」の範囲内であるアンテナ基板10は、特に高い利得を実現できることが理解される。
【0038】
<態様3>
図5は、上記態様1および態様2とは異なる誘電体を用い、中間誘電体層の厚さT
2を変更して電磁界シミュレータによってアンテナ基板10の利得を算出したときの結果のさらに他の例を示す説明図である。
図5は、28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)用のアンテナ基板であって、誘電体層を構成する誘電体として、比誘電率が3.1である液晶ポリマ(LCP)を用いたアンテナ基板10の解析結果を示す。ここでは、中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1は8.8mmに設定されており、誘電体層の厚さの合計T
1は1.5mmに設定されており、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2は3.6mmに設定されている。
【0039】
中間誘電体層の厚さT
2は、0.9mmから1.4mmまで、0.1mm刻みで6段階に変更している。電磁界シミュレータとしては、電磁界解析ソフトウェアAnsys HFSS(アンシス・ジャパン株式会社製)を用いた。上記電磁界シミュレータに、誘電体の形状および寸法に係る情報(上記した中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1、誘電体層の厚さの合計T
1、および中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2)と共に、給電素子20および無給電素子22a~22cの一辺の長さ(ここでは、2.8mm)、第1誘電体層30の厚さ(ここでは、0.56mm)、アンテナ基板10に使用されている金属の種類(導電率、導体損失)、誘電体の種類(誘電率、誘電損失)、電力の条件を入力し、中間誘電体層の厚さT
2を上記の6段階で変更して電磁界シミュレータによる解析を行い、28GHz帯における利得の変化を求めた。
図5において、横軸は周波数を表し、縦軸は利得を表す。
【0040】
28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)の中央値は28.0GHzであり、
図5に示すように、この周波数の中央値において利得が最も高くなるのは、中間誘電体層の厚さT
2が1.4mmのときであった。なお、
図5では、中間誘電体層の厚さT
2が1.4mmを超える場合については示していないが、中間誘電体層の厚さT
2が1.4mmを超えると、第2積層単位の誘電体層の厚さ(T
1-T
2)が薄くなることにより強度が不十分になる可能性があるため、中間誘電体層の厚さT
2の最大値を1.4mmとしている。そのため、上記周波数の中央値における最大利得は、中間誘電体層の厚さT
2が1.4mmのときであると特定している。
図5では、中央値の周波数28.0GHzにおける最大利得である、中間誘電体層の厚さT
2が1.4mmのときの利得の値よりも1dBi低い値を、「-1dBi値として白抜き矢印で示している。利得を表す
図5の縦軸は、最大利得を0としたときの相対値を表している。
【0041】
図5に示すように、中間誘電体層の厚さT
2が、周波数28.0GHzにおいて最大利得となるときの中間誘電体層の厚さT
2である1.4mmとの差が大きいほど、周波数28.0GHzにおける利得の大きさが小さくなる傾向がある。そして、
図5に示すように、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの中間誘電体層の厚さT
2の範囲は、1.0mm~1.4mmとなる。そのため、このときの「誘電体層の厚さの合計T
1と中間誘電体層の厚さT
2との比」は、「1.5:1.0~1.4」となる。このように、比誘電率が3.1である液晶ポリマを誘電体として用いる場合には、「誘電体層の厚さの合計T
1と中間誘電体層の厚さT
2との比」が、「1.1:0.2~1.05」の範囲内でも、特に、「1.5:1.0~1.4」すなわち「1.1:0.73~1.027」の範囲内であるアンテナ基板10は、特に高い利得を実現できることが理解される。
【0042】
(A-3-2)誘電体層の一辺の長さと中空部分の一辺の長さとの比について:
以下では、「中間誘電体層における外周の一辺の長さと内周の一辺の長さとの比が、8.8:2.2~8.7の範囲内である」アンテナ基板10について説明する。
【0043】
<態様4>
図6は、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を変更して電磁界シミュレータによってアンテナ基板10の利得を算出したときの結果の一例を示す説明図である。
図6は、28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)用のアンテナ基板であって、誘電体層を構成する誘電体として、比誘電率が6.0である誘電体セラミックスを用いたアンテナ基板10の解析結果を示す。ここでは、中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1は8.8mmに設定されており、誘電体層の厚さの合計T
1は1.1mmに設定されており、中間誘電体層の厚さT
2は0.7mmに設定されている。
【0044】
中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2は、2.0mm、2.2mm、3.2mm、3.4mm、3.6mm、4.0mm、4.2mmの7段階に変更している。電磁界シミュレータとしては、電磁界解析ソフトウェアAnsys HFSS(アンシス・ジャパン株式会社製)を用いた。上記電磁界シミュレータに、誘電体の形状および寸法に係る情報(上記した中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1、誘電体層の厚さの合計T
1、および中間誘電体層の厚さT
2)と共に、給電素子20および無給電素子22a~22cの一辺の長さ(ここでは、2.0mm)、第1誘電体層30の厚さ(ここでは、0.4mm)、アンテナ基板10に使用されている金属の種類(導電率、導体損失)、誘電体の種類(誘電率、誘電損失)、電力の条件を入力し、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を上記の7段階で変更して電磁界シミュレータによる解析を行い、28GHz帯における利得の変化を求めた。
図6において、横軸は周波数を表し、縦軸は利得を表す。
【0045】
28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)の中央値は28.0GHzであり、
図6に示すように、この周波数の中央値において利得が最も高くなるのは、内周の一辺の長さL
2が3.4mmのときであった。
図6では、中央値の周波数28.0GHzにおける最大利得である、内周の一辺の長さL
2が3.4mmのときの利得の値よりも1dBi低い値を、「-1dBi」として白抜き矢印で示している。利得を表す
図6の縦軸は、最大利得を0としたときの相対値を表している。
【0046】
図6に示すように、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2が、周波数28.0GHzにおいて最大利得となるときの内周の一辺の長さL
2である3.4mmとの差が大きいほど、周波数28.0GHzにおける利得の大きさが小さくなる傾向がある。そして、
図6に示すように、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を上記した7段階に変更した結果のうち、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの内周の一辺の長さL
2の範囲は、2.2mm~4.0mmとなる。このときの「中間電体層の外周の一辺の長さL
1と内周の一辺の長さL
2との比」は、「8.8:2.2~4.0」となる。
図6に示す結果より、比誘電率が6.0である誘電体セラミックスを誘電体として用いる場合には、「中間誘電体層における外周の一辺の長さL
1と内周の一辺の長さL
2との比」が、「8.8:2.2~8.7」の範囲内でも、特に、「8.8:2.2~4.0」の範囲内であるアンテナ基板10は、特に高い利得を実現できることが理解される。
【0047】
<態様5>
図7は、上記態様4とは異なる誘電体を用い、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を変更して電磁界シミュレータによってアンテナ基板10の利得を算出したときの結果の例を示す説明図である。
図7は、28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)用のアンテナ基板であって、誘電体層を構成する誘電体として、比誘電率が2.1であるポリテトラフルオロエチレンを用いたアンテナ基板10の解析結果を示す。ここでは、中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1は8.8mmに設定されており、誘電体層の厚さの合計T
1は1.9mmに設定されており、中間誘電体層の厚さT
2は1.8mmに設定されている。
【0048】
中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2は、3.4mm、3.6mm、4.2mm、4.4mm、4.6mm、8.6mm、8.8mmの7段階に変更している。電磁界シミュレータとしては、電磁界解析ソフトウェアAnsys HFSS(アンシス・ジャパン株式会社製)を用いた。上記電磁界シミュレータに、誘電体の形状および寸法に係る情報(上記した中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1、誘電体層の厚さの合計T
1、および中間誘電体層の厚さT
2)と共に、給電素子20および無給電素子22a~22cの一辺の長さ(ここでは、3.4mm)、第1誘電体層30の厚さ(ここでは、0.7mm)、アンテナ基板10に使用されている金属の種類(導電率、導体損失)、誘電体の種類(誘電率、誘電損失)、電力の条件を入力し、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を上記の7段階で変更して電磁界シミュレータによる解析を行い、28GHz帯における利得の変化を求めた。なお、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を上記のように7段階で変更して中で、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2が8.8mmである場合とは、中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1と内周の一辺の長さL
2とが等しくなる(中間誘電体層全体が中空部分である)仮想的な状態を表す。
図7において、横軸は周波数を表し、縦軸は利得を表す。
【0049】
28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)の周波数の中央値は28.0GHzであり、
図7に示すように、この周波数の中央値において利得が最も高くなるのは、内周の一辺の長さL
2が4.4mmのときであった。
図7では、中央値の周波数28.0GHzにおける最大利得である、内周の一辺の長さL
2が4.4mmのときの利得の値よりも1dBi低い値を、「-1dBi」として白抜き矢印で示している。利得を表す
図7の縦軸は、最大利得を0としたときの相対値を表している。
【0050】
図7に示すように、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2が、周波数28.0GHzにおいて最大利得となるときの内周の一辺の長さL
2である4.4mmとの差が大きいほど、周波数28.0GHzにおける利得の大きさが小さくなる傾向がある。そして、
図7に示すように、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を上記した7段階に変更した結果のうち、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの内周の一辺の長さL
2の範囲は、3.6mm~8.6mmとなる。また、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2が8.8mmであるという仮想的な条件であっても、アンテナ基板10の利得は、最大利得よりも1dBi低い基準値に近い、比較的高い値となった。このような
図7の結果より、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2の範囲は、3.6mm~8.7mmと考えられる。このときの「中間電体層の外周の一辺の長さL
1と内周の一辺の長さL
2との比」は、「8.8:3.6~8.7」となる。
図7に示す結果より、比誘電率が2.1であるポリテトラフルオロエチレンを誘電体として用いる場合には、「中間誘電体層における外周の一辺の長さL
1と内周の一辺の長さL
2との比」が、「8.8:2.2~8.7」の範囲内でも、特に、「8.8:3.6~8.7」の範囲内であるアンテナ基板10は、特に高い利得を実現できることが理解される。
【0051】
<態様6>
図8は、上記態様4および態様5とは異なる誘電体を用い、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を変更して電磁界シミュレータによってアンテナ基板10の利得を算出したときの結果のさらに他の例を示す説明図である。
図8は、28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)用のアンテナ基板であって、誘電体層を構成する誘電体として、比誘電率が3.1である液晶ポリマ(LCP)を用いたアンテナ基板10の解析結果を示す。ここでは、中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1は8.8mmに設定されており、誘電体層の厚さの合計T
1は1.5mmに設定されており、中間誘電体層の厚さT
2は1.4mmに設定されている。
【0052】
中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2は、2.8mm、3.0mm、5.6mm、5.8mm、6.0mm、7.4mm、7.6mmの7段階に変更している。電磁界シミュレータとしては、電磁界解析ソフトウェアAnsys HFSS(アンシス・ジャパン株式会社製)を用いた。上記電磁界シミュレータに、誘電体の形状および寸法に係る情報(上記した中間誘電体層の外周の一辺の長さL
1、誘電体層の厚さの合計T
1、および中間誘電体層の厚さT
2)と共に、給電素子20および無給電素子22a~22cの一辺の長さ(ここでは、2.8mm)、第1誘電体層30の厚さ(ここでは、0.56mm)、アンテナ基板10に使用されている金属の種類(導電率、導体損失)、誘電体の種類(誘電率、誘電損失)、電力の条件を入力し、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2を上記の7段階で変更して電磁界シミュレータによる解析を行い、28GHz帯における利得の変化を求めた。
図8において、横軸は周波数を表し、縦軸は利得を表す。
【0053】
28GHz帯のバンドn257(26.5~29.5GHz)の中央値は28.0GHzであり、
図8に示すように、この周波数の中央値において利得が最も高くなるのは、内周の一辺の長さL
2が6.0mmのときであった。
図8では、中央値の周波数28.0GHzにおける最大利得である、内周の一辺の長さL
2が6.0mmのときの利得の値よりも1dBi低い値を、「-1dBi」として白抜き矢印で示している。利得を表す
図8の縦軸は、最大利得を0としたときの相対値を表している。
【0054】
図8に示すように、中間誘電体層の内周の一辺の長さL
2が、周波数28.0GHzにおいて最大利得となるときの内周の一辺の長さL
2である6.0mmとの差が大きいほど、周波数28.0GHzにおける利得の大きさが小さくなる傾向がある。そして、
図8に示すように、周波数の中央値28.0GHzにおけるアンテナ基板10の利得が、最大利得から、当該最大利得よりも1dBi低い値までの範囲となるときの内周の一辺の長さL
2の範囲は、3.0mm~7.6mmとなる。このときの「中間電体層の外周の一辺の長さL
1と内周の一辺の長さL
2との比」は、「8.8:3.0~7.6」となる。
図8に示す結果より、比誘電率が3.1である液晶ポリマを誘電体として用いる場合には、「中間誘電体層における外周の一辺の長さL
1と内周の一辺の長さL
2との比」が、「8.8:2.2~8.7」の範囲内でも、特に、「8.8:3.0~7.6」の範囲内であるアンテナ基板10は、特に高い利得を実現できることが理解される。
【0055】
以上のように構成された本実施形態のアンテナ基板10によれば、「中間誘電体層の厚さと第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計T1と、中間誘電体層の厚さT2との比は、1.1:0.2~1.05の範囲内であること」および、「中間誘電体層における外周の一辺の長さL1と内周の一辺の長さL2との比は、8.8:2.2~8.7の範囲内であること」という2つの数値範囲に係る条件のうちの少なくとも一方を満たすことにより、使用周波数帯において高い利得を示すことができ、アンテナ特性を向上させることができる。より高い利得を得るためには、上記した2つの条件の双方を満たすことが望ましい。共振周波数や利得などのアンテナ特性は、例えば、給電素子20を被覆する被膜の有無や、給電素子20を含む素子の大きさ(一辺の長さ)等により微調整可能であるが、このような微調整を行っても、上記した2つの条件のうちの少なくとも一方を満たすことにより、高い利得を確保する同様の効果が得られる。
【0056】
アンテナ基板10において、例えば、誘電体として比誘電率が6.0である誘電体セラミックスを用いる場合には、「誘電体層の厚さの合計T1と、中間誘電体層の厚さT2との比が、1.1:0.2~1.05の範囲内であること」および「中間誘電体層の一辺の長さL1と内周の一辺の長さL2との比が、8.8:2.2~4.0の範囲内であること」のうちの少なくとも一方を満たすことで、より高い利得を実現して、アンテナ特性を向上させることができる。また、例えば、誘電体として比誘電率が2.1であるポリテトラフルオロエチレンを用いる場合には、「誘電体層の厚さの合計T1と、中間誘電体層の厚さT2との比が、1.9:1.6~1.8の範囲内であること」および「中間誘電体層の一辺の長さL1と内周の一辺の長さL2との比が、8.8;3.6~8.7の範囲内であること」のうちの少なくとも一方を満たすことで、より高い利得を実現して、アンテナ特性を向上させることができる。また、例えば、誘電体として比誘電率が3.1である液晶ポリマ(LCP)を用いる場合には、「誘電体層の厚さの合計T1と、中間誘電体層の厚さT2との比が、1.5:1.0~1.4の範囲内であること」および「中間誘電体層の一辺の長さL1と内周の一辺の長さL2との比が、8.8:3.0~7.6の範囲内であること」のうちの少なくとも一方を満たすことで、より高い利得を実現して、アンテナ特性を向上させることができる。
【0057】
アンテナ基板10が、上記した数値範囲に係る条件を満たすならば、アンテナ基板10が実際に送受信する信号の周波数が、既述した周波数帯の周波数の中央値から外れた値であっても、使用周波数帯内においては、中央値の周波数における利得に近い、極めて高い利得が得られると考えられる。
【0058】
B.他の実施形態:
上記した実施形態では、無給電素子を備える積層単位を3つ積層することとしたが、異なる構成としてもよい。給電素子20を備える積層単位70に積層する無給電素子を備える積層単位の数は、1以上の任意の数とすることができる。
【0059】
また、上記した実施形態では、無給電素子22a,22bが形成された第2誘電体層32a,32b上には、それぞれ、枠状に形成された第2中間誘電体層42a,42bを配置したが、異なる構成としてもよい。例えば、少なくとも一部の無給電素子上に、枠状の中間誘電体層に代えて、中空部分を形成しない中実の板状誘電体が積層されていてもよい。給電素子20を備える積層単位70を含む1以上の積層単位が、第1積層単位として、「中間誘電体層の厚さと第2積層単位の誘電体層の厚さとの合計T1と、中間誘電体層の厚さT2との比」に既述した数値範囲と「中間誘電体層における外周の一辺の長さL1と内周の一辺の長さL2との比」に係る数値範囲とのうちの少なくとも一方を満たすことで、利得を向上させる同様の効果が得られる。
【0060】
図1および
図2では、単一のアンテナ基板10を示したが、複数のアンテナ基板10を一列に並べて配置する、あるいは、2次元的に配置するアレイアンテナであってもよい。
【0061】
実施形態では、誘電率が、6.0、2.1、および3.1の誘電体を備えるアンテナ基板10について例示し、また、実施形態のアンテナ基板10は、28GHz帯用のアンテナ基板としたが、異なる構成としてもよい。アンテナ基板が備える誘電体の種類、あるいは、アンテナ基板が送受信する信号の周波数帯が異なっている場合であっても、アンテナ基板が、以下の条件(1)(2)のうちの少なくとも一方を満たすことにより、アンテナ利得を高める同様の効果が得られる。
【0062】
すなわち、条件(1)は、アンテナ基板において、「(1)誘電体層の厚さの合計T1と中間誘電体層の厚さT2との比は、外周の一辺の長さL1と、誘電体層の厚さの合計T1と、中間誘電体層の内周の一辺の長さL2と、を含む条件を用いて、中間誘電体層の厚さT2を変更して電磁界シミュレータを用いてアンテナ基板10の利得を算出したときに、アンテナ基板10が送受信する信号の周波数帯の中央値における利得が、上記中央値において最も高い値から、当該最も高い値よりも1dBi低い値までの範囲となるときの中間誘電体層の厚さT2の範囲から算出される数値範囲内で設定されている」ことである。
【0063】
電磁界シミュレータを用いた解析では、既述した各条件を入力しつつ中間誘電体層の厚さT2を変更することにより、周波数帯の中央値の周波数において、利得が「最大利得」から「-1dBi値」までの範囲となるときの、「T1:T2」の範囲を、一義的に求めることができる。そのため、アンテナ基板10において、上記(1)の条件を満たしていれば、信号の周波数帯全体で、最適利得に近い高い利得が得られるといえる。なお、「誘電体層の厚さの合計T1と中間誘電体層の厚さT2との比」に係る条件(1)では、周波数帯の中央値の周波数における最大利得との差の基準を1dBiに設定しているが、基準を0.9dBiとした条件を満たすことがより望ましく、基準を0.8dBiとした条件を満たすことがさらに望ましい。このような基準を満たすアンテナ基板10とすれば、周波数帯に含まれる周波数の広い範囲において、利得をより高めることができる。
【0064】
また、条件(2)は、アンテナ基板において、「(2)中間誘電体層の外周の一辺の長さL1と内周の一辺の長さL2との比は、中間誘電体層の外周の一辺の長さL1と、誘電体層の厚さの合計T1と、中間誘電体層の厚さT2と、を含む条件を用いて、中間誘電体層の内周の一辺の長さL2を変更して電磁界シミュレータによってアンテナ基板10の利得を算出したときに、アンテナ基板10が送受信する信号の周波数帯の中央値における利得が、上記中央値において最も高い値から、当該最も高い値よりも1dBi低い値までの範囲となるときの内周の一辺の長さL2の範囲から算出される数値範囲内で設定されている」ことである。
【0065】
電磁界シミュレータを用いた解析では、既述した各条件を入力しつつ中間誘電体層の内周の一辺の長さL2を変更することにより、周波数帯の中央値の周波数において、利得が「最大利得」から「-1dBi値」までの範囲となるときの、「L1:L2」の範囲を、一義的に求めることができる。そのため、アンテナ基板10において、上記(2)の条件を満たしていれば、信号の周波数帯全体で、最適利得に近い高い利得が得られるといえる。なお、「中間誘電体層の外周の一辺の長さL1と内周の一辺の長さL2との比」に係る条件(2)では、周波数帯の中央値の周波数における最大利得との差の基準を1dBiに設定しているが、基準を0.9dBiとした条件を満たすことがより望ましく、基準を0.8dBiとした条件を満たすことがさらに望ましい。このような基準を満たすアンテナ基板10とすれば、周波数帯に含まれる周波数の広い範囲において、利得をより高めることができる。
【0066】
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…アンテナ基板
15…連通孔
20…給電素子
22a~22c…無給電素子
23…接地導体層
30…第1誘電体層
32a~32c…第2誘電体層
34…第3誘電体層
40…第1中間誘電体層
40I…内周面
42a,42b…第2中間誘電体層
42aI,42bI…内周面
46…回路側誘電体
50…給電回路
62…ビア
70~73…積層単位
O…軸線