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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159661
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】電池ユニット冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6567 20140101AFI20221011BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221011BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221011BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20221011BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221011BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221011BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20221011BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20221011BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221011BHJP
【FI】
H01M10/6567
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M50/204 401H
H01M50/249
B60K11/06
B60K11/04 Z
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064002
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉原 久未
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
(72)【発明者】
【氏名】富岡 沙絵子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 嵩
(72)【発明者】
【氏名】梶本 貴紀
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC22
3D235AA02
3D235BB19
3D235BB36
3D235CC15
3D235DD02
3D235DD33
3D235EE63
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH07
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】ウォッシャ液の消費を防ぎながら、車両およびエンジンの状況に左右されることなく電池を冷却することができる電池ユニット冷却システムを提供する。
【解決手段】電池ユニット冷却システムは、電池ユニット14を備える。電池ユニット14は、筐体141を有する。筐体141は、電池140を収容する電池収容部141aを有する。電池収容部141aには、吸気路142が接続されている。電池ユニット冷却システムのウォッシャ液供給ユニットは、貯留チャンバー150dを含むウォッシャ液の循環路を有する。第3ドア159を閉じた状態でウォッシャ液を貯留チャンバー150dから排出することで、ラビリンス通路部158を通して電池収容部141a内の空気が貯留チャンバー150dへと吸引される。この際の空気の流れにより、電池収容部141a内の電池140が冷却される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームに配設される電池ユニットと、
前記車両のウィンドにウォッシャ液を噴射可能なウォッシャ液供給ユニットと、
前記ウォッシャ液供給ユニットを制御する制御部と、
を備え、
前記電池ユニットは、
電池と、
前記電池を収容する電池収容部を有する筐体と、
前記電池収容部に接続され、当該電池収容部に前記エンジンルームの外からの空気を導入するための吸気路と、
を有し、
前記ウォッシャ液供給ユニットは、
前記ウォッシャ液の循環路と、
前記循環路内で前記ウォッシャ液を循環させるポンプと、
を有し、
前記循環路は、
前記ウォッシャ液を貯留可能な貯留チャンバーと、
前記貯留チャンバーへの前記ウォッシャ液の取入部と、
前記貯留チャンバーからの前記ウォッシャ液の排出部と、
を含み、
前記ウォッシャ液供給ユニットは、前記電池収容部と前記貯留チャンバーとの間の空気の流通を許容する通気路をさらに有し、
前記貯留チャンバーは、前記排出部を閉じた状態で前記取入部から前記ウォッシャ液を受け入れて前記ウォッシャ液を貯留する貯留状態と、前記取入部を閉じた状態で前記排出部から前記ウォッシャ液を排出することにより当該貯留チャンバー内を負圧状態として、前記通気部を通じて前記電池収容部内の空気を吸引する吸引状態と、を切り替え可能に構成されており、
前記制御部は、前記車両の停車中において、前記ポンプの作動制御と、前記取入部および前記排出部の開閉制御を実行することにより、前記貯留チャンバーにおいて前記貯留状態と前記吸引状態との切り替えを実行する、
電池ユニット冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記循環路は、前記貯留チャンバーの鉛直方向の下方に配された、前記排出部を通して前記貯留チャンバーから排出された前記ウォッシャ液を受け入れる導出チャンバーをさらに含む、
電池ユニット冷却システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記導出チャンバーは、鉛直方向の上部に空気の導出が可能なエア抜き部を有する、
電池ユニット冷却システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記貯留チャンバーは、前記電池ユニットの前記筐体と一体に設けられている、
電池ユニット冷却システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記ウォッシャ液供給ユニットの前記通気路は、ラビリンス構造により形成されている、
電池ユニット冷却システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記循環路は、
前記取入部に設けられた、開閉可能な取入部ドアと、
前記排出部に設けられた、開閉可能な排出部ドアと、
をさらに含み、
前記制御部は、前記取入部ドアの開閉制御をもって前記取入部の開閉制御を実行し、前記排出部ドアの開閉制御をもって前記排出部の開閉制御を実行する、
電池ユニット冷却システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記電池ユニットは、
前記電池収容部と前記車両の走行時に負圧状態となる箇所に接続され、当該負圧状態の形成による前記電池収容部から前記筐体の外部に空気を導出するための排気路と、
前記吸気路に設けられた吸気口ドアと、
前記排気路に設けられた排気口ドアと、
をさらに有し、
前記制御部は、前記吸気口ドアの開閉および前記排気口ドアの開閉も制御するものであって、前記車両の走行中において、前記吸気口ドアおよび前記排気口ドアを開いた状態とし、且つ、前記取入部ドアおよび前記排出部ドアを閉じた状態とする、
電池ユニット冷却システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記ウォッシャ液供給ユニットは、
前記循環路における前記ポンプよりも上流側の箇所に接続された、前記ウォッシャ液を予め貯留するタンクと、
前記循環路における前記ポンプよりも下流側の箇所に接続された、前記ウォッシャ液を前記ウィンドに噴射する噴射ノズルと、
前記循環路における前記タンクの接合箇所に設けられ、前記ウォッシャ液の流路を、前記タンクから前記ポンプへの流路と、前記貯留チャンバーから前記ポンプへの流路とを切り替える第1バルブと、
前記循環路における前記噴射ノズルの接合箇所に設けられ、前記ウォッシャ液の流路を、前記ポンプから前記噴射ノズルへの流路と、前記ポンプから前記貯留チャンバーへの流路とを切り替える第2バルブと、
をさらに有する、
電池ユニット冷却システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の電池ユニット冷却システムにおいて、
前記電池は、非水電解質電池である、
電池ユニット冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ユニット冷却システムに関し、特に、車両のエンジンルームに搭載される電池ユニット冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電池としては、従来から鉛電池が用いられてきたが、近年では、エネルギー密度が鉛電池に比べて高いリチウムイオン電池等の非水電解質電池へと置き換えが検討されている。非水電解質電池は、上記のようにエネルギー密度が鉛電池よりも高いため、小型・軽量化を図ることができる。このため、鉛電池を非水電解質電池へと置き換えることにより、車両全体の小型・軽量化を図ることができるとともに、車両設計の自由度を高くすることもできる。
【0003】
ところで、車両においては、鉛電池はエンジンルームに搭載されていた。このため、鉛電池を非水電解質電池へと置き換えるにあたっても、搭載場所をエンジンルームとすることが車両設計という観点から好適である。
【0004】
ここで、電池は電気化学反応により電力を生成するため、温度管理が重要となる。特に、非水電解質電池に対する温度管理は、従来の鉛電池に比べてより重要となる。例えば、高温環境下に非水電解質電池が置かれた場合には、性能の低下や寿命の劣化という問題を生じ易い。このため、従来の鉛電池では、走行風やラジエータファンの風などで冷却を行っていたが、非水電解質電池への置き換えにあたり電池の冷却手段は、より重要な課題となる。このような問題に対して、エンジンルームに搭載される電池の冷却手段が種々検討されている(特許文献1,2)。
【0005】
特許文献1には、リチウムイオン電池が収容された筐体の内外で冷媒が循環するヒートパイプサイクルを構成した装置が開示されている。特許文献1に開示の装置では、車両の停止時等に筐体内の温度が所定温度を超えた場合に、ヒートパイプにおける筐体外の部分にウォッシャ液を噴射して冷媒の温度を効率的に低下させるように構成されている。
【0006】
特許文献2には、電池が収容された筐体に空気導入管と空気導出管とが接続された構成が開示されている。空気導入管は、外気を導入可能な箇所まで延伸形成され、空気導出管は、エンジンに空気を送るためのエアダクトに接続されている。エンジンが駆動している状態において、空気導出管におけるエアダクトへの接続箇所には負圧が発生し、これにより空気導入管から筐体内を介してエアダクトへと空気の流れが形成され、電池が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016―105365号公報
【特許文献2】特開2003―178814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示の構成では、次のような問題を生じることが考えられる。
【0009】
上記特許文献1に開示の構成では、電池が収容された筐体内の温度が所定温度を超えた場合に、ヒートパイプにウォッシャ液を噴射して冷媒の温度を低下させる構成となっているので、ウォッシャ液を大量に消費してしまうことが懸念される。
【0010】
また、上記特許文献2に開示の構成では、吸気負圧による空気の流れを用いて電池を冷却する構成となっているので、アイドルストップ時などには電池の冷却が行えないことが問題となる。
【0011】
なお、電池を冷却するための専用のファンを設けることも考えられるが、この場合には、エンジンルーム内にファンを設置するための領域を確保することが必要となり鉛電池を非水電解質電池へと置き換えることによる小型化のメリットが相殺されてしまう。また、専用のファンを設けることによるコストの上昇を招くことにもなる。
【0012】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、ウォッシャ液の消費を防ぎながら、車両およびエンジンの状況に左右されることなく電池を冷却することができる電池ユニット冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る電池ユニット冷却システムは、電池ユニットと、ウォッシャ液供給ユニットと、制御部と、を備える。前記電池ユニットは、車両のエンジンルームに配設される。前記ウォッシャ液供給ユニットは、前記車両のウィンドにウォッシャ液を噴射可能である。前記制御部は、前記ウォッシャ液供給ユニットを制御する。
【0014】
前記電池ユニットは、電池と、筐体と、吸気路と、を有する。前記筐体は、前記電池を収容する電池収容部を有する。前記吸気路は、前記電池収容部に接続され、当該電池収容部に前記エンジンルームの外からの空気を導入するための通路である。
【0015】
前記ウォッシャ液供給ユニットは、循環路と、ポンプと、を有する。前記循環路は、前記ウォッシャ液が循環する経路である。前記ポンプは、前記循環路内で前記ウォッシャ液を循環させる。
【0016】
前記循環路は、貯留チャンバーと、取入部と、排出部と、通気路と、を含む。前記貯留チャンバーは、前記ウォッシャ液を貯留可能である。前記取入部は、前記貯留チャンバーへ前記ウォッシャ液を取り入れるための部位である。前記排出部は、前記貯留チャンバーから前記ウォッシャ液を排出するための部位である。
【0017】
前記ウォッシャ液供給ユニットは、前記電池収容部と前記貯留チャンバーとの間の空気の流通を許容する通気路をさらに有する。
【0018】
前記貯留チャンバーは、前記排出部を閉じた状態で前記取入部から前記ウォッシャ液を受け入れて前記ウォッシャ液を貯留する貯留状態と、前記取入部を閉じた状態で前記排出部から前記ウォッシャ液を排出することにより当該貯留チャンバー内を負圧状態として、前記通気部を通じて前記電池収容部内の空気を吸引する吸引状態と、を切り替え可能に構成されている。
【0019】
前記制御部は、前記車両の停車中において、前記ポンプの作動制御と、前記取入部および前記排出部の開閉制御を実行することにより、前記貯留チャンバーにおいて前記貯留状態と前記吸引状態との切り替えを実行する。
【0020】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、ウォッシャ液の循環路が、通気路を通じて電池収容部と空気の流通が許容された貯留チャンバーを有する。貯留チャンバーは、貯留状態と吸引状態とを切り替え可能に構成されている。そして、制御部は、車両の停車中に、貯留チャンバーの貯留状態と吸引状態との切り替え制御を実行する。よって、上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、車両が停車し、アイドルストップ中であったとしても、電池収容部から貯留チャンバーへと空気の吸引がなされることで形成される空気の流れにより電池を冷却することができる。
【0021】
また、上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、電池の冷却に際して、ウォッシャ液は循環路中を循環するだけであって、外部に廃棄されることはないので、上記特許文献1に開示の技術のように電池冷却のためにウォッシャ液を消費してしまうようなことがない。
【0022】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記循環路は、前記貯留チャンバーの鉛直方向の下方に配された、前記排出部を通して前記貯留チャンバーから排出された前記ウォッシャ液を受け入れる導出チャンバーをさらに含む、とすることも可能である。
【0023】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、貯留チャンバーの鉛直方向の下方に導出チャンバーを有し、貯留チャンバーに貯留されたウォッシャ液を導出チャンバーに排出できるように構成されている。このため、上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、貯留チャンバーから導出チャンバーへのウォッシャ液の排出に際して、別途にポンプなどのデバイスを設けなくても自重落下(自然落下)を利用してウォッシャ液を排出することができる。よって、上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、システム構成を簡易にすることで製造コストの上昇を抑え、システム構成のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記導出チャンバーは、鉛直方向の上部に空気の導出が可能なエア抜き部を有する、とすることも可能である。
【0025】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、導出チャンバーの鉛直方向上部にエア抜き部が設けられている。このため、貯留チャンバーから導出チャンバーにウォッシャ液を排出させる際に導出チャンバー内の残留空気がウォッシャ液の受け入れの抵抗になるのを抑制することができる。また、上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、導出チャンバーに排出されたウォッシャ液が空気を抱き込むのも抑制することができる。このため、導出チャンバーから排出されたウォッシャ液が循環路を経由してウィンドシールドに噴射される際の空気の混入を防ぐことができる。
【0026】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記貯留チャンバーは、前記電池ユニットの前記筐体と一体に設けられている、とすることも可能である。
【0027】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、貯留チャンバーが電池ユニットの筐体と一体に設けられている。このため、上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、貯留チャンバーを筐体と別体で設ける場合に比べて、システム構成をコンパクト化することができる。
【0028】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記ウォッシャ液供給ユニットの前記通気路は、ラビリンス構造により形成されている、とすることも可能である。
【0029】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、通気路がラビリンス構造により形成されている。このため、貯留チャンバーが貯留状態である場合においても、貯留チャンバー内のウォッシャ液が電池収容部へと漏れ出すような事態を抑制することができる。これより、電池収容部に収容された電池に水溶性のウォッシャ液が付着するのを抑制することができ、高い安全性を確保することができる。
【0030】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記循環路は、前記取入部に設けられた、開閉可能な取入部ドアと、前記排出部に設けられた、開閉可能な排出部ドアと、
をさらに含み、前記制御部は、前記取入部ドアの開閉制御をもって前記取入部の開閉制御を実行し、前記排出部ドアの開閉制御をもって前記排出部の開閉制御を実行する、とすることも可能である。
【0031】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、取入部ドアおよび排出部ドアの開閉制御を制御部が実行する。このため、制御部が取入部ドアおよび排出部ドアの開閉制御とポンプの駆動制御とを実行することで、貯留チャンバーにおける貯留状態と吸引状態との切り替えが可能であり、車両の停車中においても電池の冷却が可能である。
【0032】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記電池ユニットは、前記電池収容部と前記車両の走行時に負圧状態となる箇所に接続され、当該負圧状態の形成による前記電池収容部から前記筐体の外部に空気を導出するための排気路と、前記吸気路に設けられた吸気口ドアと、前記排気路に設けられた排気口ドアと、をさらに有し、前記制御部は、前記吸気口ドアの開閉および前記排気口ドアの開閉も制御するものであって、前記車両の走行中において、前記吸気口ドアおよび前記排気口ドアを開いた状態とし、且つ、前記取入部ドアおよび前記排出部ドアを閉じた状態とする、とすることも可能である。
【0033】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、車両の走行中に負圧状態となる箇所に一端が接続された排気路を有する。そして、吸気路には、吸気口ドアが設けられ、排気路には排気口ドアが設けられており、車両の走行時(走行速度が所定速度を超える状態)には、吸気口ドアおよび排気口ドアを開いた状態とし、且つ、取入部ドアおよび排出部ドアを閉じた状態とする。これにより、車両の走行中には、走行負圧を利用して電池を冷却することができる。
【0034】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記ウォッシャ液供給ユニットは、前記循環路における前記ポンプよりも上流側の箇所に接続された、前記ウォッシャ液を予め貯留するタンクと、前記循環路における前記ポンプよりも下流側の箇所に接続された、前記ウォッシャ液を前記ウィンドに噴射する噴射ノズルと、前記循環路における前記タンクの接合箇所に設けられ、前記ウォッシャ液の流路を、前記タンクから前記ポンプへの流路と、前記貯留チャンバーから前記ポンプへの流路とを切り替える第1バルブと、前記循環路における前記噴射ノズルの接合箇所に設けられ、前記ウォッシャ液の流路を、前記ポンプから前記噴射ノズルへの流路と、前記ポンプから前記貯留チャンバーへの流路とを切り替える第2バルブと、をさらに有する、とすることも可能である。
【0035】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、ウォッシャ液の循環路にタンクと噴射ノズルとが接続され、それぞれの接続箇所に第1バルブおよび第2バルブが設けられている。このため、上記態様に係る電池ユニット冷却システムは、車両における既存のウォッシャ液供給ユニットを利用して電池の冷却を行うことができ、エンジンルーム内での占有スペースを小さく抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0036】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムにおいて、前記電池は、非水電解質電池である、とすることも可能である。
【0037】
上記態様に係る電池ユニット冷却システムでは、電池として非水電解質電池を採用する。非水電解質電池は、高温となった場合に性能の低下や寿命の劣化といった問題を生じやすいが、上記のように車両の走行/停止状態やエンジンの駆動/停止状態に左右されることなく電池の冷却が可能であり、電池の性能の低下や寿命の劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
上記の各態様に係る電池ユニット冷却システムでは、ウォッシャ液の消費を防ぎながら、車両およびエンジンの状況に左右されることなく電池を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態に係る電池ユニット冷却システムが適用された車両の一部構成を示す模式図である。
図2】電池ユニット冷却システムにおけるウォッシャ液供給ユニットの構成を示す模式図である。
図3】電池ユニットの構成およびウォッシャ液供給ユニットの一部構成を示す断面図である。
図4】電池ユニット冷却システムにおける制御に係る構成を示すブロック図である。
図5】コントローラが実行する電池ユニットの冷却方法を示すフローチャートである。
図6】車両が走行中である場合の冷却状態を示す断面図である。
図7】貯留チャンバーにウォッシャ液を取り入れた状態を示す断面図である。
図8】ウォッシャ液を貯留チャンバーから導出チャンバーに排出された状態を示す断面図である。
図9】変形例に係る電池ユニット冷却システムが適用された車両の一部構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0041】
以下の説明で用いる図において、「Up」は鉛直上方、「Lo」は鉛直下方、「Fr」は車両前方、「Re」は車両後方をそれぞれ示す。
【0042】
[実施形態]
1.車両1のエンジンルーム1a
本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13が適用される車両1のエンジンルーム1a内の構成について、図1を用いて説明する。
【0043】
図1に示すように、車両1は、前部にエンジン10が搭載されたエンジンルーム1aと、エンジンルーム1aに対してダッシュパネル1cを挟んだ後方に設けられた車室1bとを有する。エンジンルーム1aの下部は、アンダーカバー1dで覆われている。
【0044】
エンジンルーム1aには、エンジン10の他に、ラジエータ11と、ファン12と、電池ユニット冷却システム13とが搭載されている。ラジエータ11およびファン12は、エンジン10の前方に配置されており、エンジン10の冷却液を冷却するための装置である。
【0045】
電池ユニット冷却システム13は、電池140と、電池140を収容する筐体141と、筐体141に接続された吸気路142および排気路143とを有する。吸気路142は、ダッシュパネル1cを挿通して車室1bの空気を筐体141内に取り込むことができるようになっている。排気路143は、車両1の外方に接続されており、車両走行中に筐体141内の空気を車両1の外方に排出できるようになっている。
【0046】
2.電池ユニット冷却システム13の構成
電池ユニット冷却システム13の構成について、図2および図3を用いて説明する。
【0047】
図2に示すように、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13は、電池ユニット14とウォッシャ液供給ユニット15とを備える。電池ユニット14の詳細構造については後述するが、上記のように筐体141には、車両1の走行中において、車室1b内の空気が吸気路142を通り取り込まれ(矢印A7)、取り込まれた空気は電池140を冷却した後に排気路143を通り車両1の外方に排出される(矢印A8)。
【0048】
なお、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、電池140として非水電解質電池(例えば、リチウムイオン二次電池)が採用されている。
【0049】
ウォッシャ液供給ユニット15は、循環路150と、タンク151と、噴射ノズル153と、ポンプ155と、供給路152,154と、バルブ156,157とを有する。ウォッシャ液供給ユニット15では、タンク151に貯留されたウォッシャ液を、必要に応じて噴射ノズル153から車両1のフロントウィンドシールに噴射することができる(矢印A1~A3)。
【0050】
循環路150は、その一部が電池ユニット14の筐体141内を経由するように設けられている。換言すると、循環路150の一部構成は、電池ユニット14の筐体141と一体に形成されている。循環路150では、ポンプ155の駆動により、ウォッシャ液が循環できるようになっている(矢印A2,A4~A6)。
【0051】
バルブ156は、タンク151に接続された供給路152と循環路150との接続箇所に設けられており、供給路152と循環路150との間のウォッシャ液の経路を切替できる切替バルブである。具体的に、バルブ156は、供給路152と循環路150の第1区間(バルブ156とバルブ157との間の区間)150aとが接続される第1経路と、循環路150の第1区間150aと第3区間(電池ユニット14の筐体141とバルブ156との間の区間)150cとが接続される第2経路とを択一的に切り替える切替バルブである。なお、以下では、バルブ156を「第1バルブ156」と記載する。
【0052】
バルブ157は、循環路150におけるウォッシャ液の流れ方向の第1バルブ156よりも下流側の、噴射ノズル153が接続された供給路154と循環路150との接続箇所に設けられており、供給路154と循環路150との間のウォッシャ液の経路を切替できる切替バルブである。具体的に、バルブ157は、第1区間150aと供給路154とが接続される第1経路と、供給路154と循環路150の第2区間(バルブ157と電池ユニット14の筐体141との間の区間)150bとが接続される第2経路とを択一的に切り替える切替バルブである。なお、以下では、バルブ157を「第2バルブ157」と記載する。
【0053】
ポンプ155は、循環路150における第1区間150aに設けられている。
【0054】
図3に示すように、循環路150は、貯留チャンバー150dと、導出チャンバー150gと、取入部150eと、排出部150fと、導出部150hと、エア抜き部150iとをさらに有する。導出チャンバー150gは、貯留チャンバー150dの鉛直下方に配設されている。
【0055】
貯留チャンバー150dは、取入部150eを通してウォッシャ液を取り入れることができ(矢印B1)、取り入れたウォッシャ液を貯留することができる(貯留状態)。取入部150eには、第3ドア(取入部ドア)159が設けられている。第3ドア159が開いた状態の場合にはウォッシャ液を貯留チャンバー150dに取り入れることができ、第3ドア159が閉じた状態の場合には貯留チャンバー150dへのウォッシャ液の取り入れが停止される。
【0056】
貯留チャンバー150dの鉛直下部には、導出チャンバー150gとの接続部分である排出部150fが設けられている。そして、排出部150fには、第5ドア(排出部ドア)161が設けられている。第5ドア161が閉じた状態の場合には貯留チャンバー150dにウォッシャ液を貯留することができ(貯留状態)、貯留チャンバー150dにウォッシャ液が貯留された状態で第5ドア161を開くとウォッシャ液が自重落下(自然落下)により導出チャンバー150gへと導出される(矢印B3)。
【0057】
導出チャンバー150gは、第5ドア161が開かれると貯留チャンバー150dから排出されたウォッシャ液が流入する部屋である。導出チャンバー150gには、鉛直方向の下部に導出部150hが設けられ、鉛直方向の上部にエア抜き部150iが設けられている。導出部150hは、導出チャンバー150gと、循環路150における筐体141の外部との接続部分である。導出部150hには、第4ドア160が設けられている。貯留チャンバー150dから排出されたウォッシャ液が導出チャンバー150gに貯留されている場合に、第4ドア160を開くことによりウォッシャ液が導出チャンバー150gから外方へと排出される(矢印B2)。
【0058】
エア抜き部150iは、第5ドア161を開いてウォッシャ液を貯留チャンバー150dから導出チャンバー150gへと排出させた場合に(矢印B3)、導出チャンバー150g内の残留空気を外方に排出するための通路である。これにより、導出チャンバー150gへのウォッシャ液の排出に際しての抵抗を低く抑え、また、ウォッシャ液への空気の噛み込みが抑制される。
【0059】
電池ユニット14における筐体141は、電池収容部141aを有する。電池収容部141aは、電池140が収容される部屋である。電池収容部141aには、吸気路142および排気路143が接続されている。電池収容部141aと吸気路142との接続部分には第11ドア(吸気口ドア)144が設けられ、電池収容部141aと排気路143との接続部分には第2ドア(排気口ドア)145が設けられている。第1ドア144が開いた状態の場合には、矢印B4で示すように、車室1b内の空気を電池収容部141a内に取り込むことが可能となる。また、第2ドア145が開いた状態の場合には、矢印B5で示すように、電池収容部141a内の空気を車両1の外方に排気することが可能となる。
【0060】
電池収容部141aと貯留チャンバー150dとは、隣接して配置されている。そして、電池収容部141aと貯留チャンバー150dとの間は、ラビリンス通路部158で接続されている。ラビリンス通路部158は、入り組んだ複数の壁によりラビリンス構造をもって形成された通路であり、空気の流通は許容されるが、貯留チャンバー150dから電池収容部141aへのウォッシャ液の移動が抑制されるように構成されている。
【0061】
3.電池ユニット冷却システム13における制御に係る構成
電池ユニット冷却システム13における制御に係る構成について、図4を用いて説明する。
【0062】
電池ユニット冷却システム13は、エンジンルーム温度検出部171と、車室内温度検出部172と、ユニット筐体温度検出部173と、車速検出部174と、ウォッシャ液注入流量検出部175と、ウォッシャ液排出流量検出部176とを有する。
【0063】
エンジンルーム温度検出部171は、エンジンルーム1aにおける電池ユニット14の筐体141が配された部分の近傍に配設されており、当該配設部分の温度Teを検出する温度センサーである。車室内温度検出部172は、車室1b内における吸気路142の接続部分の近傍に配設されており、当該配設部分の温度Tcを検出する温度センサーである。ユニット筐体内温度検出部173は、電池ユニット14の筐体141内における電池収容部141aに配設されており、電池140の温度Tbを検出する温度センサーである。
【0064】
車速検出部174は、車両1の走行速度Vvを検出するための速度センサーである。ウォッシャ液注入流量検出部175は、貯留チャンバー150dの取入部150eに配設されており、貯留チャンバー150dに取り入れられるウォッシャ液の注入流量VLinを検出するフローセンサーである。ウォッシャ液排出流量検出部176は、貯留チャンバー150dの排出部150fに配設されており、貯留チャンバー150dから導出チャンバー150gに排出されるウォッシャ液の排出流量VLoutを検出するフローセンサーである。
【0065】
また、電池ユニット冷却システム13は、コントローラ(制御部)170と、第1ドアアクチュエータ146と、第2ドアアクチュエータ147と、第3ドアアクチュエータ162と、第4ドアアクチュエータ163と、第5ドアアクチュエータ164とを有する。第1ドアアクチュエータ146は、第1ドア144の開閉を行うアクチュエータである。第2ドアアクチュエータ147は、第2ドア145の開閉を行うアクチュエータである。第3ドアアクチュエータ162は、第3ドア159の開閉を行うアクチュエータである。第4ドアアクチュエータ163は、第4ドア160の開閉を行うアクチュエータである。第5ドアアクチュエータ164は、第5ドア161の開閉を行うアクチュエータである。
【0066】
コントローラ170は、各検出部171~176、各アクチュエータ146,147,162~164、ポンプ155、および各バルブ156,157のそれぞれと信号接続されている。コントローラ170は、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有し構成されている。コントローラ170は、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、各検出部171~176からの検出情報を基に、各アクチュエータ146,147,162~164、ポンプ155、および各バルブ156,157のそれぞれの制御を実行する。
【0067】
4.コントローラ170が実行する制御
先ず、コントローラ170は、各検出部171~176からの情報取得を行う。コントローラ170の情報取得は、車両1がキーオン状態の間は継続的に実行される。そして、コントローラ170は、第1バルブ156および第2バルブ157がともに第1経路となるように設定する(ステップS1)。即ち、コントローラ170は、循環路150の第1区間150aと供給路152および供給路154とが接続されるようにバルブ156,157を設定する。これにより、循環路150のウォッシャ液は、タンク151から噴射ノズル153までを結ぶ経路だけが接続された状態となり、運転者の指令に基づくポンプ155の駆動により噴射ノズル153からフロントウィンドシールドに対してウォッシャ液が噴射可能な状態となる。
【0068】
次に、コントローラ170は、第1ドア144および第2ドア145が開いた状態、第3ドア159および第4ドア160および第5ドア161が閉じた状態となるように、各アクチュエータ146,147,162~164に指令を出す(ステップS2)。
【0069】
図6に示すように、コントローラ170がステップS2を実行した段階では、ドア144、145,159~161を上記の状態とすることで、電池収容部141aには吸気路142から車室1b内の空気が取り込まれ(矢印C1)、電池収容部141a内を流通した後(矢印C2)、排気路143から車両1の外方へと空気が排出される(矢印C3)。これは、走行負圧が排気路143の外方端部に発生することによるものである。
【0070】
なお、当該段階においては、第3ドア159は閉じた状態となっているので、ウォッシャ液は貯留チャンバー150dには取り入れられていない。また、導出チャンバー150gには、所定量のウォッシャ液FLwが貯留されている。
【0071】
図5に戻って、コントローラ170は、エンジンルーム1aの温度Teが60℃以上であるかの判断と(ステップS3)、車室1b内の温度Tcが電池140の温度Tb以下であるかの判断と(ステップS4)、車両1の走行速度Vvが所定速度Vth以下であるかの判断と(ステップS5)を実行する。コントローラ170は、ステップS3からステップS5の判断において、何れかが“NO”であると判断した場合には制御をリターンする。
【0072】
なお、ステップS5の判断は、車両1が実質的に停車しているか否かの判断である。よって、所定速度Vthは、例えば5km/hとすることができる。
【0073】
コントローラ170は、ステップS3からステップS5の判断において、全てが“YES”であると判断した場合には、第1バルブ156および第2バルブ157がともに第2経路となるように設定する(ステップS6)。即ち、コントローラ170は、循環路150の第1区間150aと第2区間150bおよび第3区間150cとが接続されるようにバルブ156,157を設定する。これにより、循環路150では、貯留チャンバー150dおよび導出チャンバー150gを含むウォッシャ液の循環路150が開通する。
【0074】
次に、コントローラ170は、第1ドア144および第5ドア161が閉じた状態、第2ドア145および第3ドア159および第4ドア160が開いた状態となるように、各アクチュエータ146,147,162~164に指令を出し(ステップS7)、ポンプ155を駆動する(ステップS8)。コントローラ170は、ウォッシャ液流入流量検出部175により検出される注入流量VLinが予め設定された流量VLthに達するまで(ステップS9:NO)、ポンプ155の駆動を維持する。そして、コントローラ170は、ウォッシャ液流入流量検出部175により検出される注入流量VLinが予め設定された流量VLthに達すると(ステップS9:YES)、ポンプ155の駆動を停止する(ステップS10)。
【0075】
図7に示すように、コントローラ170がステップS6からステップS10までを実行することにより、貯留チャンバー150dには所定量VLthのウォッシャ液FLwが取り入れられ(矢印D1)、導出チャンバー150gからは所定量だけ残してウォッシャ液FLwが排出される(矢印D2)。なお、貯留チャンバー150dに注入するウォッシャ液FLwの上記所定量VLthは、ウォッシャ液FLwが電池収容部141aに漏れ出さない量に予め設定されている。また、導出チャンバー150gに残すウォッシャ液FLwの上記所定量は、導出部150hから循環路150の第3区間150cに空気が入り込まないように予め設定されている。
【0076】
導出チャンバー150gからのウォッシャ液FLwの排出に際しては、エア抜き部150iから導出チャンバー150g内に空気が流入する。これにより、導出チャンバー150gからのウォッシャ液FLwの排出が低抵抗の状態でなされる。
【0077】
図5に戻って、コントローラ170は、ポンプ155の駆動を停止した後に、第1ドア144を開いた状態とし、第2ドア145および第3ドア159および第4ドア160を閉じた状態となるように、アクチュエータ146,147,162、163に指令を出す(ステップS11)。その後、コントローラ170は、第5ドア161が開いた状態となるように、アクチュエータ164に指令を出す(ステップS12)。
【0078】
図8に示すように、コントローラ170がステップS11を実行した後にステップS12を実行することにより、貯留チャンバー150dに貯留されていたウォッシャ液FLwは自重落下(自然落下)により導出チャンバー150gへと移動する(矢印E1)。このとき、導出チャンバー150gに残留していた空気は、エア抜き部150iを通り外方へ排出される(矢印E2)。
【0079】
また、第3ドア159は閉じた状態とされているので、ウォッシャ液FLwが排出された貯留チャンバー150d内は、負圧状態となる。このため、貯留チャンバー150dと電池収容部141aとを接続しているラビリンス通路部158を通り、電池収容部141a内の空気が吸引される(矢印E3~E6)。換言すると、コントローラ170がステップS11を実行した後にステップS12を実行することにより、貯留チャンバー150dは吸引状態となる。これにより、車両1が停止している状態においても、電池収容部141aに収容された電池140が冷却される。
【0080】
図5に戻って、コントローラ170は、ウォッシャ液排出流量検出部176により検出される排出流量VLoutが予め設定された流量VLthに達するのを待って(ステップS13:YES)、制御をリターンする。
【0081】
5.効果
本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、ウォッシャ液の循環路150が、ラビリンス通路部(通気路)158を通じて電池収容部141aと空気の流通が許容された貯留チャンバー150dを有する。貯留チャンバー150dは、貯留状態(図7で示した状態)と吸引状態(図8で示した状態)とを切り替え可能に構成されている。そして、コントローラ(制御部)170は、車両1の停車中に、貯留チャンバー150dの貯留状態と吸引状態との切り替え制御を実行する。よって、電池ユニット冷却システム13では、車両1が停車し、エンジン10がアイドルストップ中であったとしても、電池収容部141aから貯留チャンバー150dへと空気の吸引がなされることで形成される空気の流れにより電池140を冷却することができる。
【0082】
また、電池ユニット冷却システム13では、電池140の冷却に際して、ウォッシャ液は循環路150中を循環するだけであって、外部に廃棄されることはないので、上記特許文献1に開示の技術のように電池冷却のためにウォッシャ液を消費してしまうようなことがない。
【0083】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、貯留チャンバー150dの鉛直方向の下方に導出チャンバー150gを有し、貯留チャンバー150dに貯留されたウォッシャ液を導出チャンバー150gに排出できるように構成されている。このため、電池ユニット冷却システム13では、貯留チャンバー150dから導出チャンバー150gへのウォッシャ液の排出に際して、別途にポンプなどのデバイスを設けなくても自重落下(自然落下)を利用してウォッシャ液を排出することができる。よって、電池ユニット冷却システム13では、システム構成を簡易にすることで製造コストの上昇を抑え、システム構成のコンパクト化を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、導出チャンバー150gの鉛直方向上部にエア抜き部150iが設けられている。このため、貯留チャンバー150dから導出チャンバー150gにウォッシャ液を排出させる際に導出チャンバー150g内の残留空気がウォッシャ液の受け入れの抵抗になるのを抑制することができる。また、電池ユニット冷却システム13では、導出チャンバー150gに排出されたウォッシャ液が空気を抱き込むのも抑制することができる。このため、導出チャンバー150gから区間150cに導出されたウォッシャ液がウィンドシールドに噴射される際の空気の混入を防ぐことができる。
【0085】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、貯留チャンバー150dが電池ユニット14の筐体141と一体に設けられている。このため、電池ユニット冷却システム13では、貯留チャンバー150dを筐体141と別体で設ける場合に比べて、システム構成をコンパクト化することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、貯留チャンバー150dと電池収容部141aとの間がラビリンス構造により形成されたラビリンス通路部158で接続されている。このため、貯留チャンバー150dにウォッシャ液が貯留された状態(貯留状態)である場合においても、貯留チャンバー150d内のウォッシャ液が電池収容部141aへと漏れ出すような事態を抑制することができる。これより、電池収容部141aに収容された電池140に水溶性のウォッシャ液が付着するのを抑制することができ、高い安全性を確保することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システムでは、第3ドア(取入部ドア)159および第5ドア(排出部ドア)161の開閉制御をコントローラ(制御部)170が実行する。このため、コントローラ170が第3ドア159および第5ドア161の開閉制御とポンプ155の駆動制御とを実行することで、貯留チャンバー150dにおける貯留状態と吸引状態との切り替えが可能であり、車両1の停車中においても電池140の冷却が可能である。
【0088】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、車両1の走行中に負圧状態となる箇所(本実施形態では、エンジンルーム1aの外部)に一端が接続された排気路143を有する。そして、吸気路142には、第1ドア(吸気口ドア)144が設けられ、排気路143には第2ドア(排気口ドア)145が設けられており、車両1の走行時(走行速度Vvが所定速度Vthを超える状態)には、第1ドア144および第2口ドア145を開いた状態とし、且つ、第3ドア159および第5ドア161を閉じた状態とする。これにより、車両1の走行中には、走行負圧を利用して電池140を冷却することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、ウォッシャ液の循環路150にタンク151と噴射ノズル153とが接続され、それぞれの接続箇所に第1バルブ156および第2バルブ157が設けられている。このため、電池ユニット冷却システム13は、車両1における既存のウォッシャ液供給ユニットを利用して電池140の冷却を行うことができ、エンジンルーム1a内での占有スペースを小さく抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0090】
また、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、電池140として非水電解質電池を採用する。非水電解質電池は、高温となった場合に性能の低下や寿命の劣化といった問題を生じやすいが、上記のように車両1の走行/停止状態やエンジン10の駆動/停止状態に左右されることなく電池140の冷却が可能であり、電池140の性能の低下や寿命の劣化を抑制することができる。
【0091】
以上のように、本実施形態に係る電池ユニット冷却システム13では、ウォッシャ液FLwの消費を防ぎながら、車両1およびエンジン10の状況に左右されることなく電池140を冷却することができる。
【0092】
[変形例]
変形例に係る電池ユニット冷却システム23の構成について、図9を用いて説明する。なお、本変形例に係る電池ユニット冷却システム23では、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13に対して、吸気路242および排気路243の接続先が異なるのみであるので、以下では相違点を主に説明する。
【0093】
図9に示すように、本変形例に係る電池ユニット冷却システム23は、吸気路242がエンジンルーム1aの前方部分まで延びている。そして、吸気路242には、車両1の前方からの空気を取り込むことができるようになっている。
【0094】
また、排気路243は、エンジン10のインテークマニホールドに接続されるエアダクト17に接続されている。吸気路243は、エアダクト17における空気の流れの下流側部分、具体的にはエアーフィルター18の直前の部分に接続されている。
【0095】
本変形例に係る電池ユニット冷却システム23では、エンジン10が駆動している状態では、図6を用いて説明した状態で電池140の冷却がなされる。即ち、エンジン10の駆動中においては、排気路243が接続されたエアダクト17は負圧状態となる。このため、吸気路242から電池ユニット14の電池収容部141aに外気が取り込まれ、電池10を冷却して排気路243からエアダクト17へと空気が流れる。
【0096】
ただし、外気温が所定温度(例えば、60℃)を超えるような場合には、吸気路242を介して導入した空気で電池140を冷却することは困難であるので、図7および図8を用いて説明したような、ウォッシャ液FLwの循環を用いた電池140の冷却を行う。
【0097】
本変形例に係る電池ユニット冷却システム23でも、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13と同様の効果を奏することができる。
【0098】
[その他の変形例]
上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13および上記変形例に係る電池ユニット冷却システム23では、ウォッシャ液供給ユニット15の循環路150中において、導出部150hに第4ドア160を設けることとしたが、本発明では、必ずしも導出部150hにドアを設ける必要はない。導出チャンバー150gに対する導出部150hを設ける位置を鉛直方向の下部にすることで、循環路150の第3区間150cに還流されるウォッシャ液FLwに空気が抱き込まれるのを防ぐことが可能である。
【0099】
また、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13および上記変形例に係る電池ユニット冷却システム23では、ウォッシャ液供給ユニット15の循環路150において、貯留チャンバー150dの鉛直方向の下方に導出チャンバー150gを設けることとしたが、本発明では、必ずしも貯留チャンバー150dの鉛直方向の下方に導出チャンバー150gを設ける必要はない。例えば、貯留チャンバーの水平方向に隣接する位置に導出チャンバーを設けることもできる。この場合には、貯留チャンバーから導出チャンバーにウォッシャ液を排出するのにポンプなどを設ければよい。
【0100】
また、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13および上記変形例に係る電池ユニット冷却システム23では、貯留チャンバー150dを電池ユニット14の筐体141と一体に設けることとしたが、本発明では、貯留チャンバーを電池ユニットの筐体と別体に設けるようにすることも可能である。
【0101】
また、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13の構成と、上記変形例に係る電池ユニット冷却システム23の構成とを組み合わせることも可能である。具体的には、電池ユニットの筐体に対して、複数の吸気路と複数の排気路とを接続することも可能である。これにより、車両の走行状態やエンジンの駆動状態に応じて電池を冷却するための空気の流通形態を適宜に選択することが可能となる。
【0102】
また、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13および上記変形例に係る電池ユニット冷却システム23では、電池収容部141aと貯留チャンバー150dとの接続部分(通気部)をラビリンス通路部158で形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。貯留チャンバーに取り入れられたウォッシャ液が電池に付着しなければ、種々の構造を採用することができる。
【0103】
また、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13および上記変形例に係る電池ユニット冷却システム23が適用される車両1では、前部にエンジンルーム1aが設けられた形態を一例として採用したが、本発明は、後部にエンジンルームを有することとしてもよい。
【0104】
また、上記実施形態に係る電池ユニット冷却システム13および上記変形例に係る電池ユニット冷却システム23では、電池140の一例として非水電解質二次電池を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、鉛電池や全固体二次電池などを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 車両
1a エンジンルーム
1b 車室
13 電池ユニット冷却システム
14 電池ユニット
15 ウォッシャ液供給ユニット
140 電池
141 筐体
141a 電池収容部
144,145,159~161 ドア
150 循環路
150d 貯留チャンバー
150e 取入部
150f 排出部
150g 導出チャンバー
150h 導出部
150i エア抜き部
151 タンク
155 ポンプ
156,157 バルブ
158 ラビリンス通路部(通気部)
170 コントローラ(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9