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特開2022-159673端子および電線を含む組付体およびコネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159673
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】端子および電線を含む組付体およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20221011BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R13/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064017
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】實藤 雄介
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC02
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF08
5E087FF13
5E087KK03
5E087LL03
5E087LL12
5E087MM05
5E087RR12
5E087RR15
5E087RR26
5E087RR47
(57)【要約】
【課題】細径の電線が端子に接続されるとしても、電線が接続された状態の端子をキャビティに挿入してハウジングに組み付ける際に、電線座屈防止を安定して図ること。
【解決手段】本発明の組付体2は、電線3が接続されている状態でハウジング10のキャビティ11に挿入される端子20と、端子20から後方に延びる電線3と、端子20に圧着される被圧着部としての第1部分41を含み、端子20から後方へ電線3に沿って所定範囲に亘り延びるサポート4とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続されている状態でハウジングのキャビティに挿入される端子と、
前記端子から後方に延びる前記電線と、
前記端子に圧着される被圧着部を含み、前記端子から後方へ前記電線に沿って所定範囲に亘り延びるサポートと、を備える、組付体。
【請求項2】
前記端子は、端子本体と、前記電線が接合される接合部と、を含み、
前記サポートは、前記接合部に前記電線と共に圧着されている、
請求項1に記載の組付体。
【請求項3】
前記サポートの少なくとも一部は、筒状または略筒状に形成されて前記電線の外周に配置される、
請求項1または2に記載の組付体。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記端子を係止するランスを含み、
前記サポートは、前記端子が前記キャビティに挿入される挿入方向の剛性が前記被圧着部よりも高い高剛性部を含み、
前記サポートは、前記端子により押される前記ランスによる後向きへの反挿入力に対して前記端子を支持する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の組付体。
【請求項5】
前記被圧着部および前記高剛性部は、射出成形により一体に形成されている、
請求項4に記載の組付体。
【請求項6】
前記被圧着部および前記高剛性部は、異なる材料から二色成形により形成されている、
請求項5に記載の組付体。
【請求項7】
前記被圧着部は、前記端子が前記キャビティに挿入される挿入方向に弾性変形可能な弾性体であり、筒状または略筒状に形成されて前記電線の外周に配置される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の組付体。
【請求項8】
前記被圧着部の外周部には、前記キャビティの内側を封止する弾性片が形成されている、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組付体。
【請求項9】
前記被圧着部は、前記高剛性部よりも薄肉に形成されている、
請求項5に記載の組付体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組付体と、
前記ハウジングと、を備える、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子および電線を含む組付体、および当該組付体を備える電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電線が接続されている端子をキャビティに挿入してハウジングに組み付けるとき、例えば、以下のようにして組み付ける。端子から延びている電線を自動機または手で把持し、前向きの挿入力を電線に加える。端子により押されたランスが撓み、端子が所定位置に配置されると、端子がハウジングに組み付けられる。
【0003】
特許文献1は、ランスによる後向きの挿入抵抗により細径の電線が座屈してしまうことを避けるため、電線被覆の周りに光硬化性樹脂による高剛性層を形成することを開示する。特許文献1の記載によると、光硬化性樹脂は、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤、および各種添加剤から構成される。また、添加剤として、硬化後に電線に要求される座屈強度に応じて所定の剛性が得られるような材料が選定される。
【0004】
上記の高剛性層を形成する際には、電線を成形型に配置し、液体状の光硬化性樹脂を成形型内に注入したならば、成形型内の光硬化性樹脂に紫外線を照射する。紫外線の照射により硬化した樹脂は、電線被覆に固着する。高剛性層は、電線と端子とが圧着されたときの端子の後端に当接する位置または接近して隣接する位置から、自動機等により電線が把持される位置までの連続した範囲に亘り電線に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-026536号公報
【特許文献2】特開2019-145209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体状の光硬化性樹脂からなる高剛性層を電線の所定の位置に所定の厚さで安定して形成することは難しい。光硬化性樹脂の材料を適切に選定したとしても、高剛性層が形成される範囲や膜厚がばらつき易いので、必ずしも細径の電線の座屈を防止することはできない。高剛性層の形成範囲が端子後端の位置に対して後方へずれたり、高剛性層が不均一な厚さで形成されたりすると、電線の座屈が発生するおそれがある。
【0007】
細線の電線の座屈を避けるため、圧着前に、電線をハウジングのキャビティに後方から通しておき、キャビティを前方へ貫通している電線に端子を圧着した後、端子を後方へ移動させてハウジングに組み付けることが考えられるが、工程が複雑となる。
また、特許文献2は、複数の端子と、端子部品の相対的スライドにより複数の端子のそれぞれに接続される電線とを含むモジュールをなし、モジュール単位で部材への組付けを行っているが、構造および工程が複雑である上、電線単体の座屈対策はできない。
その他、細径電線の座屈の回避に有効な先行技術は見当たらない。
【0008】
コネクタの構造および組立工程を簡素化するためには、予め端子に電線を接続しておき、電線が接続されている状態の端子をキャビティに通してハウジングに組み付けることが好ましい。
本発明は、剛性の低い細径の電線が端子に接続されるとしても、電線が接続された状態の端子をキャビティに挿入してハウジングに組み付ける際に、電線座屈防止を安定して図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の組付体は、電線が接続されている状態でハウジングのキャビティに挿入される端子と、端子から後方に延びる電線と、端子に圧着される被圧着部を含み、端子から後方へ電線に沿って所定範囲に亘り延びるサポートと、を備える。
【0010】
本発明の組付体において、端子は、端子本体と、電線が接合される接合部と、を含み、サポートは、接合部に電線と共に圧着されていることが好ましい。
【0011】
本発明の組付体において、サポートの少なくとも一部は、筒状または略筒状に形成されて電線の外周に配置されることが好ましい。
【0012】
本発明の組付体において、ハウジングは、端子を係止するランスを含み、サポートは、端子がキャビティに挿入される挿入方向の剛性が被圧着部よりも高い高剛性部を含み、サポートは、端子により押されるランスによる後向きへの反挿入力に対して端子を支持することが好ましい。
【0013】
本発明の組付体において、被圧着部および高剛性部は、射出成形により一体に形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の組付体において、被圧着部および高剛性部は、異なる材料から二色成形により形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明の組付体において、被圧着部は、端子がキャビティに挿入される挿入方向に弾性変形可能な弾性体であり、筒状または略筒状に形成されて電線の外周に配置されることが好ましい。
【0016】
本発明の組付体において、被圧着部の外周部には、キャビティの内側を封止する弾性片が形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の組付体において、被圧着部は、高剛性部よりも薄肉に形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明のコネクタは、上述の組付体と、ハウジングと、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明の組付体によれば、反挿入力に対して、電線ではなくサポートにより端子を支持することができるので、電線の座屈強度にかかわらず、電線を座屈させることなく、電線が接続されている状態の端子をキャビティに後方から挿入してハウジングに組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るコネクタのハウジングと、端子および電線を含む組付体とを示す斜視図である。
図2図1に示す組付体がハウジングの正規の位置に収容された状態におけるII-II矢視断面図である。
図3】(a)は、電線に通されているサポートを示す斜視図である。(b)は、(a)に示すサポートと、電線と、端子とが圧着されている状態を示す斜視図である。端子は、図2のIII矢視による向きから示されている。
図4】(a)は、図3(b)に示す組付体の縦断面図である。(b)は、(a)の部分拡大図である。
図5】(a)は、キャビティに端子を挿入する過程を示す縦断面図である。(b)は、比較例を示す図である。
図6】(a)および(b)は、第1変形例を示す縦断面図である。
図7】(a)は、第2変形例を示す斜視図である。(b)は、第2変形例のサポート単体を示す図である。
図8】(a)~(d)は、第3変形例を示す図である。(b)は、(a)のVIIIb矢視図である。
図9】(a)は、第4変形例を示す図である。(b)および(c)は、第5変形例を示す図である。
図10】(a)および(b)は、第6変形例を示す図である。(c)は、第7変形例を示す図である。
図11】第8変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
〔実施形態〕
図1に示すコネクタ1は、ハウジング10と、ハウジング10のキャビティ11に収容される組付体2とを備えている。ハウジング10に形成されている複数のキャビティ11にそれぞれ組付体2が収容される。図1には、キャビティ11に1つの組付体2が途中まで挿入された状態が示されている。
【0022】
ハウジング10は、絶縁性樹脂材料から射出成形により形成されており、図示しない相手コネクタのハウジングと嵌合する。
コネクタ1において、相手のハウジングと嵌合され、端子20が相手の端子と接続される側が「前」であり、ハウジング10から電線3が引き出される側が「後」であるものとする。
【0023】
ハウジング10に適宜に配列されているキャビティ11のそれぞれには、端子20を係止するランス12が形成されている。ランス12は、ハウジング10の前側で、キャビティ11をなす壁13から内側に突出し、片持ち梁状に前方に向けて延びている。
ハウジング10の後端の挿入口11Bから、電線3が接続されている状態の端子20がキャビティ11に挿入される。端子20がキャビティ11に挿入される方向(前後方向)を挿入方向D1と称する。
【0024】
図1および図2に示すように、組付体2は、端子20と、端子20に接続される電線3と、端子20に圧着されるサポート4とを備えている。
電線3は、芯線31および被覆32を備えている。
【0025】
端子20は、図示しない相手端子に電気的に接続される端子本体21と、端子本体21から後方に連なり、電線3に圧着により接合される接合部22とを備えている。端子20は、アルミニウム合金等の金属材料からなる板材の打ち抜き加工および曲げ加工により一体に形成されている。
【0026】
図3(b)および図4(a)には、図2における下側からの向きで端子20が示されている。端子本体21は、概ね角筒状に形成され、ハウジング10の前端の開口11Aに挿入されるタブ状やピン状の図示しない相手端子を受容する。端子本体21には、相手端子に押圧される接触部211と、端子20の前端に位置し、ランス12に係止される係止部212と、ハウジング10に係止され、端子20を挿入方向D1において位置決めする突起213とを備えている。
【0027】
接合部22は、図3(b)に示すように、被覆32から露出させた状態の芯線31に圧着される芯線バレル221と、芯線バレル221よりも後方に位置し、被覆32により芯線31が覆われている部分に圧着される被覆バレル222とを含んでいる。後述するように、被覆バレル222は、被覆32の外周に配置されるサポート4にも圧着される。
芯線バレル221および被覆バレル222に圧着された電線3は、端子20の後端(被覆バレル222の後端222B)から後方へ延びている。
なお、図2図4等に示す断面においては、芯線バレル221および電線3が模式的に示されている。また、これらの図における端子20および電線3のそれぞれの断面には同一のハッチングが付されている。
【0028】
電線3が接続されている端子20をハウジング10に組み付けるときに、自動機や手により、図5(b)に示すように電線3に前向きへの挿入力F1が付与されるとするならば、端子20により前方へ押されたランス12の弾性力F2によって端子20が後方へ押し戻される力(反挿入力F3)が電線3に作用する。反挿入力F3が電線3の座屈荷重を超え、電線3が座屈したならば、最早、挿入力F1を付与しても電線3により端子20を前方へ押すことはできないので、端子20をハウジング10に組み込むことができない。
本実施形態は、反挿入力F3により電線3が座屈するのを避けるため、図5(a)に示すように、電線3に代わりサポート4により、端子20に挿入力F1を伝達するとともに反挿入力F3を受け、反挿入力F3に対して端子20を支持する。
【0029】
サポート4は、被圧着部(41)を含み、端子20から後方へ電線3に沿って所定の範囲に亘り延びている。本実施形態のサポート4は、前側に配置される被圧着部としての第1部分41と、少なくとも挿入方向D1の剛性が第1部分41よりも高い高剛性部としての第2部分42とを備えている。
【0030】
サポート4は、適宜な成形方法により、特に射出成形により一体に形成されている。より具体的には、第1部分41および第2部分42は、異なる材料を用いる射出成形である二色成形により形成されている。これに限らず、別部材として成形された第1部分41と第2部分42とを適宜な接合方法により、例えば接着により接合することができる。
【0031】
本実施形態では、第1部分41および第2部分42のいずれも筒状に形成されており、それぞれは円環状の横断面を呈する。第1部分41および第2部分42の同一の軸線の位置を貫通する孔43には、被覆32の所定範囲が通されている。
【0032】
第1部分41および第2部分42のいずれも、必ずしも筒状である必要はない。但し、サポート4の少なくとも一部が、電線3の外周を包囲する筒状に形成されていると、キャビティ11に挿入される端子20が筒状の部分によりガイドされるので好ましい。
【0033】
第1部分41は、第1部分41の外周に配置される被覆バレル222により、電線3の被覆32と共に圧着される。そのため、第1部分41は、被覆バレル222の前端222Aから後端222Bまでの少なくとも一部に亘る領域を有している。第1部分41は、前端222Aから後端222Bまでに亘る領域を有していることが好ましい。
【0034】
第1部分41は、被覆32とキャビティ11の内壁との間の空間の径方向の略全体に亘り配置されている。但し、第1部分41が被覆バレル222により圧着されている状態で組付体2をキャビティ11に挿入できるように、第1部分41および被覆バレル222と、キャビティ11の内壁との間のクリアランスは残される。
【0035】
第1部分41は、第2部分42と比べると、図示しない自動機の圧着機構、あるいは圧着工具等を用いる典型的な方法により、被覆バレル222に容易かつ確実に圧着可能な程度に剛性が低い。
また、第1部分41は、電線3の外周に配置される筒体であって、少なくとも挿入方向D1に弾性変形可能な弾性体であることが好ましい。
【0036】
第1部分41の材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等、市場から入手可能な適宜なゴム系材料を用いることができる。
【0037】
例えば図3(a)に示すように、電線3の末端側からサポート4の孔43に電線3を通すことで、サポート4を被覆32の外周に配置する。このとき、サポート4の前端4A(第1部分41の前端)は、被覆32の前端と同じ位置またはその前後の近傍に配置されており、芯線バレル221に隣接している。サポート4に電線3を通す工程は、自動機または手作業により行うことができる。
【0038】
サポート4に電線3を通した後に、電線3の末端において芯線31から被覆32を剥がしてもよいし、サポート4に電線3を通す前に被覆32が剥がされていてもよい。
いずれにしても、第1部分41および被覆32から露出している芯線31を芯線バレル221に配置するとともに、被覆32および第1部分41を被覆バレル222に配置し、芯線バレル221および被覆バレル222にそれぞれ荷重を印加して圧着を行う。こうして得られた組付体2がキャビティ11に後方から挿入される。
【0039】
第2部分42は、第1部分41の後端41Bから後方へ連なり、キャビティ11の挿入口11Bからハウジング10の外側に露出している。
第2部分42は、反挿入力F3を受けるのに足りる剛性を有している。そして、第2部分42は、端子20に圧着されている第1部分41を介して端子20を前方へ押すことができる。このとき弾性体である第1部分41において、被覆バレル222により拘束されていない区間、つまり、被覆バレル222の後端222Bから第1部分41の後端41Bまでに亘る区間は、第2部分42により前方へ押されることで、キャビティ11の壁の内側に拘束されつつ軸線方向に弾性変形する。そして、第1部分41の弾性力により、反挿入力F3と同様に端子20が後方へ押し戻されつつも、第1部分41の弾性変形量以上の変位量で第1部分41が第2部分42により前方へ押されることで、第1部分41は前方へ変位する。第1部分41の前方への変位により、第1部分41に圧着されている端子20は、キャビティ11に設定されている軸線に対して平行に前方へと移動する。このとき、端子20の変位に追従して電線3も前方へ変位する。
【0040】
第1部分41の剛性が反挿入力F3に対して十分でないとしても、サポート4の少なくとも第2部分42により反挿入力F3を受けて端子20を支持しつつ、端子20を図2に示す正規の位置まで移動させてハウジング10に装着することができる。
【0041】
第2部分42の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂、あるいは、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
【0042】
反挿入力F3に足りる剛性は、第2部分42の材料選定により第2部分42に与えられる他、例えば、第2部分42の外周部に、軸線方向に沿った突条を周方向に等間隔に形成するといった形状変更によっても第2部分42に与えることができる。
【0043】
端子20をハウジング10に装着するとき、自動機のチャック等の保持機構、あるいは手により、サポート4における後側が保持される。保持機構等を前方へ移動させることで、サポート4には、軸線の方向である挿入方向D1への挿入力F1が付与される。
端子本体21の係止部212がランス12を壁13に近接する向きに撓ませながら自由端12Aを前方へ乗り越えるときに、ランス12の弾性力F2による反挿入力F3は最も大きい。このときの反挿入力F3をも受けることのできる剛性がサポート4には与えられている。電線3に挿入力F1が付与されない限り、電線3には、端子20の装着過程において反挿入力F3が加えられないので、座屈強度にかかわらず、電線3は座屈しない。
【0044】
なお、サポート4の後端4Bから後方に延びている電線3に挿入力F1が付与されることで、電線3に座屈荷重を超えた反挿入力F3が加えられたとするならば、サポート4により電線3が包囲されている電線3の区間では電線3が座屈しないとしても、サポート4から後方に露出した範囲において電線3は座屈する。
【0045】
装着過程に亘り継続して自動機や手によりサポート4に挿入力F1を付与することができるように、サポート4の軸線方向の長さが適宜に設定されている。特に、係止部212がランス12を乗り越える時は、保持機構等によりサポート4が保持されている位置(保持位置)がハウジング10の後端10Bよりも後方に露出しているとよい。但し、ハウジング10の後端10Bよりも保持位置が前方に位置しているとしても、挿入口11Bに治具を挿入し、その治具によりサポート4の後端4Bを前方へ押すことにより、第2部分42に挿入力F1を付与することができる。
【0046】
また、保持機構等により保持される第2部分42の後端部42Bは、保持機構等により保持に適した形状が与えられていることが好ましい。本実施形態において後端部42Bはキャビティ11には挿入されないため、後端部42Bの外径は、それよりも前方の部分の外径およびキャビティ11の内径と比べて大きい。第2部分42の形状は、この限りではなく、第2部分42の外径が、前端から後端までに亘り一定であってもよい。
【0047】
以上で説明したように、サポート4を備える組付体2によれば、一般的な径の電線と比べて座屈強度が低い細径の電線3が用いられる場合を含め、電線3の座屈強度にかかわらず、反挿入力F3に対して端子20がサポート4により支持されるので、電線3を座屈させることなく、電線3が接続されている端子20をハウジング10のキャビティ11に後方から挿入してハウジング10に組み付けることができる。
【0048】
本実施形態によれば、電線3が圧着されている状態の端子20を後方からキャビティ11に通してハウジング10に組み付けることができるので、例えば、圧着前に、電線3をキャビティ11に後方から通し、ハウジング10の前端よりも前方で電線3に端子20を圧着した後、端子20を後方へ戻してハウジング10に組み付ける、といった複雑な工程に対して工程が簡素である。つまり、サポート4に電線3を通した後、第1部分41と電線3と端子20とを圧着することで組付体2が得られたならば、サポート4に挿入力F1を付与しながら組付体2をキャビティ11に挿入することで、端子20をハウジング10に組み付ければよい。
また、本実施形態によれば、特許文献2のように複数の端子が集約されたモジュールの単位でハウジング等への組み付けを行う場合とは異なり、電線3単体での座屈対策を提供することができる。
【0049】
仮に、特許文献1のように電線3の表面に液状の樹脂を硬化させてなる被膜を形成することで、被膜を含めた電線3の座屈強度を高めて電線3の座屈を防止しようとするならば、被膜の形成される範囲や膜厚の制御が難しいため、必ずしも細径の電線3の座屈を防止することはできない。
本実施形態によれば、射出成形による成形体であって電線3と共に端子20に圧着されるサポート4を使用し、電線3ではなくサポート4により端子20を押すことで電線3の座屈を確実に防止する。射出成形により、第1部分41および第2部分42からなるサポート4を寸法形状の精度良く容易に製造可能であって、電線3およびキャビティ11の軸線に対して第1部分41および第2部分42を例えば対称に、規定の位置に安定して配置することができる。そうすると、第1部分41および電線3の圧着状態が安定し、かつ、第1部分41および第2部分42の弾性変形・変位の挙動が安定するので、電線3の座屈防止を安定して図ることができる。
【0050】
〔変形例〕
上記実施形態に備わる各要素は、例えば以下に列挙するように、適宜に改変することができる。以下、上記実施形態とは相違する事項を中心に説明する。上記実施形態と同様の要素には同一の符号を付している。
【0051】
第1変形例:図6(a)および(b)
上記実施形態(図2)において、第1部分41と第2部分42との境界Bは、被覆バレル222の後端222Bの近傍に位置しているが、その限りではない。
圧着により第1部分41が拘束されていない区間の長さ、つまり、被覆バレル222の後端222Bと、第1部分41の後端41Bとの距離Lは、適宜に設定することができる。図6(b)は、距離Lが0である場合を示している。
【0052】
キャビティ11への端子20の挿入を開始する時に、保持機構等により第2部分42が保持され、第1部分41は保持されていない場合、距離Lが長過ぎると、第1部分41の非拘束区間が自重により下方へ曲がり易いので、キャビティ11の軸線に沿って端子20を挿入口11Bに挿入することが難しい場合がある。また、距離Lが長過ぎて第1部分41の弾性変形量が大き過ぎると、保持機構による第2部分42の軸方向変位のストロークを長くする必要があり、また、端子20の装着に必要な時間が長くなる。以上の観点からは、距離Lは短いことが好ましい。
図6(a)に示すように、距離Lが上記実施形態と比べて長くても、端子20の組み付けには支障がない。図6(a)は、端子20がハウジング10の正規の位置に収容されている状態を示している。第1部分41の後端41Bは挿入口11Bの位置にある。第2部分42よりも剛性の低い第1部分41はハウジング10の内側に収容されているため、振動、衝撃等の外力から保護されている。
【0053】
第2変形例:図7(a)および(b)
図7(a)および(b)は、上記実施形態(図3)の端子20およびサポート4とはそれぞれ形状が異なる端子20-2およびサポート4-2を示している。
サポート4-2は、端子20-2の被覆バレル222に圧着される第1部分41と、例えば二色成形により第1部分41と一体に形成されている第2部分42-2とを備えている。第2部分42-2は、第1部分41の後端に連続し、第1部分41の外径よりも外径が大きな前端部42-2Aと、前端部42-2Aの外径よりもさらに外径が大きな後端部42-2Bとを備えている。前端部42-2Aの径は、キャビティ11の挿入口11Bの内径と同等に設定されている。後端部42-2Bは、保持機構により保持されるとともに、挿入時の端子20の変位量の上限を決めるストッパとしても機能する。端子20がランス12により係止される正規位置まで挿入されると、後端部42-2Bがハウジング10の後端10Bに当接し、前端部42-2Aにより挿入口11Bが塞がれる。このとき組付体2は、キャビティ11の軸心に位置決めされている。
【0054】
第3変形例:図8(a)~(d)
筒状のサポート4に代えて、図8(a)および(b)に示すように、スリット44が形成されている略筒状のサポート4-3を組付体2が備えていてもよい。スリット44は、サポート4-3の軸線に沿って形成されている。上記実施形態のサポート4と同様に、サポート4-3の孔43に電線3を通すことで電線3の外周にサポート4-3を配置することができる他、スリット44からサポート4の内側に電線3を挿入することで、電線3の外周にサポート4-3を配置することもできる。
【0055】
また、図8(c)に示すサポート4-3Aは、二体に分離している第1半割部451と第2半割部452とを備えている。図8(d)に示すサポート4-3Bは、軸線方向に沿って形成されているヒンジ46にそれぞれ結合している第1半割部451と第2半割部452とを備えている。図8(c)および(d)のいずれの構成についても、第1半割部451と第2半割部452との間に電線3を挟むことで、電線3の外周にサポート4-3A,4-3Bを配置することができる。
【0056】
本発明におけるサポート4の全体の形状として、特に制約はない。サポート4は、例えば、横断面の外形が矩形状であってもよい。
【0057】
第4変形例:図9(a)
図9(a)に示すサポート4-4は、コネクタ1の防水を図る機能を有している。サポート4-4に備わる第1部分41-4の外周部には、径方向外側に突出し、少なくとも径方向に弾性変形可能な弾性片47が形成されている。第1部分41-4は、軸線方向に並ぶ複数の弾性片47を備えている。
第1部分41-4の外周部から弾性片47が突出している高さは、前方から後方に向かうにつれて次第に突出している。
第1部分41-4は、ゴム系材料により全体が弾性体として形成されているため、弾性片47は弾性体の一部に相当する。
なお、第1部分41-4は、必ずしもゴム系材料から形成されている必要はなく、例えば、ゴム系材料よりも剛性が高い樹脂材料から形成された第1部分41の外周部に、ゴム系材料から形成された弾性片47を設けることができる。
【0058】
サポート4-4がキャビティ11に挿入されると、弾性片47がキャビティ11の壁に押し付けられてキャビティ11の内側を封止する。そのため、ハウジング10の外部から水や塵埃等がキャビティ11に入って端子20や電線3に接触することを避けることができる。
【0059】
第5変形例:図9(b)および(c)
例えば図9(b)や(c)に示すように、第2部分42-5,42-6のそれぞれの後端部42Bに固有の形状を与えることにより、後端部42Bの形状(矩形状や、回転非対称の形状)に基づいて品種等を区別することができる。そうすると、組付対象とは異なるハウジング10に組付体2を誤って組み付けることを未然に防ぐことができる。
【0060】
第6変形例:図10(a)および(b)
図10(a)に示すサポート4-6および図10(b)に示すサポート4-7は、1種類の樹脂材料のみを用いた射出成形により一体に形成されている。サポート4-6,4-7は、全体に亘り、上記実施形態の第2部分42と同様の樹脂材料により形成することができる。
サポート4-6は、高剛性部としての第2部分42と、第2部分42よりも薄肉に形成された被圧着部としての第1部分41-6とを備えている。第1部分41-6の内径は、第2部分42の内径と同等であり、第1部分41-6の外径は、第2部分42の外径よりも小さい。第1部分41-6は、第2部分42の前端部42Aよりも前方に延びている。
第1部分41-6が圧着可能な程度に薄肉であることにより、第1部分41-6と、その内周に配置されている電線3と、被覆バレル222とを圧着可能である。
【0061】
図10(b)に示すサポート4-7も、高剛性部としての第2部分42と、第2部分42よりも薄肉に形成された被圧着部としての第1部分41-7とを備えている。第2部分42は、サポート4-7において第1部分41-7よりも後方の区間と、第1部分41-7よりも前方の区間とに相当する。
上記同様に、第1部分41-7と、その内周に配置されている電線3と、被覆バレル222とを圧着可能である。
【0062】
第7変形例:図10(c)
サポート4の第1部分41と第2部分42との境界Bは、必ずしも、軸線に直交する面に沿って設定されていなくてもよい。図10(c)に示す例では、第2部分42-8の前端部42-8Aが、第1部分41-8の後端41-8Bよりも前方に位置している。
【0063】
第2部分42-8の前側には、後側の外径よりも外径が小さい円環状の領域421が存在する。この領域421の周囲に第1部分41-8が上記実施形態と比べて薄肉に配置されている。円環状領域421と、第1部分41-8と、被覆バレル222とが圧着されている。
円環状領域421と第1部分41-8とを二色成形により一体形成することができる。あるいは、円環状領域421に相当する円環状の突起と、第1部分41-8とを別々に成形し、円環状の突起の外周に第1部分41-8を装着することで一体化することができる。
図10(c)に示す例では、第2部分42-8の前側の円環状領域421が、第1部分41-8の後側の内周に配置されている。これとは逆に、第1部分41の後側の領域が、第2部分42の前側の内周に配置されていてもよい。
【0064】
第8変形例:図11
本発明の組付体に備わるサポートは、電線3に圧着される被圧着部を含み、反挿入力F3に対して端子20を支持する限りにおいて、適宜に構成することができる。
例えば、図11に示すサポート4-9は、電線3と共に被覆バレル222に圧着される第1部分41-9と、反挿入力F3を受けて端子20を支持する第2部分42-9とを備えている。第1部分41-9は、電線3の外周に倣う円弧状に形成され、電線3の周りに配置されている。第2部分42―9は、電線3に沿って棒状に形成されており、第1部分41-9に適宜な方法で接合されている。このサポート4-9によっても、端子20を前方へ押してハウジング10に組み付けることができる。
【0065】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0066】
本発明の組付体およびコネクタは、下記の構成への展開が可能である。以下に示す(1)および(2)のいずれの構成においても、サポート4は端子20に圧着されていない。その点を除いて、(1)および(2)のそれぞれの構成は、上記実施形態および各変形例の組付体およびコネクタと同様である。
(1)インサート成形によりサポート4と端子20とが結合している。例えば、電線3と端子20とを圧着したものを金型に配置し、熱可塑性の樹脂材料を用いる射出成形により、電線3と端子20との圧着箇所の周りにサポート4を設ける。こうして製造された組付体をキャビティ11に挿入することによれば、電線3を座屈させることなく端子20をハウジング10に組み付けることができる。
(2)ハウジング10への組み付け前において、サポート4が端子20に対して必ずしも結合している必要はない。端子20から分離しているサポート4を、キャビティ11へ端子20を押し込む治具として用いることが可能である。つまり、押し込み治具としてのサポート4に電線3を通し、電線3と端子20とを圧着したならば、キャビティ11に端子20を配置し、端子20の後端面あるいは端子20に形成した突起等をサポート4の前端面等により前方へ押すことで、電線3を座屈させずに端子20をハウジング10に組み付けることができる。その後、適宜な方法でサポート4をハウジング10に固定すればよい。例えば、キャビティ11の挿入口11Bの近傍に設けられたロック部によりサポート4をハウジング10に係止することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 コネクタ
2 組付体
3 電線
4,4-2,4-3,4-3A,4-3B,4-4,4-6,4-7,4-8、4-9 サポート
4A 前端
4B 後端
10 ハウジング
10B 後端
11 キャビティ
11A 開口
11B 挿入口
12 ランス
12A 自由端
13 壁
20 端子
21 端子本体
22 接合部
31 芯線
32 被覆
41,41-4,41-6,41-7,41-8,41-9 第1部分(被圧着部)
41B,41-8B 後端
42,42-2,42-5,42-6,42-8,42-9 第2部分(高剛性部)
42A,42-2A,42-8A 前端部
42B,42-2B 後端部
43 孔
44 スリット
46 ヒンジ
47 弾性片
211 接触部
212 係止部
213 突起
221 芯線バレル
222 被覆バレル
222A 前端
222B 後端
421 円環状領域
451 第1半割部
452 第2半割部
B 境界
D1 挿入方向
F1 挿入力
F2 弾性力
F3 反挿入力
L 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11