(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159695
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20221011BHJP
B60S 1/04 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60S1/04 730
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064051
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】茂木 芳成
(72)【発明者】
【氏名】笹木 美千秋
【テーマコード(参考)】
3D203
3D225
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB16
3D203BB35
3D203BB38
3D203BB43
3D203BB54
3D203BC03
3D203BC14
3D203CA57
3D203CB19
3D203CB26
3D203DA18
3D203DA19
3D203DA37
3D225AD02
3D225AE03
(57)【要約】
【課題】ウインドシールドと電装部品との間の車両前後方向距離が小さいレイアウトであっても、電装部品の被水を抑制する車両の前部構造を提供する。
【解決手段】フロントウインドシールド4下方に設けられる電装部品16と、電装部品16の直後部で、かつフロントウインドシールド4の下方に設けられて、フロントウインドシールド4から滴下する水を受ける樋部材40と、を備え、樋部材40は、水滴が樋部材40に滴下した際、水滴を車幅方向に流す流路部47を備え、流路部47は、車幅方向において電装部品16が設けられる位置において、最も高くなるよう設定される最上部48と、最上部48の車幅方向に隣接し車幅方向内側および車幅方向外側ほど下方に向かう傾斜部49R,49Lと、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインドシールド下方に設けられる電装部品と、
該電装部品の直後部で、かつ上記フロントウインドシールドの下方に設けられて、当該フロントウインドシールドから滴下する水を受ける樋部材と、を備え、
上記樋部材は、
水滴が当該樋部材に滴下した際、該水滴を車幅方向に流す流路部を備え、
上記流路部は、車幅方向において上記電装部品が設けられる位置において、最も高くなるよう設定される最上部と、
当該最上部の車幅方向に隣接し車幅方向内側および車幅方向外側ほど下方に向かう傾斜部と、
を備えたことを特徴とする
車両の前部構造。
【請求項2】
上記最上部における上記流路部の車両前後方向の幅は他部に対して最も小さく設定された
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
上記電装部品はワイパモータであり、
該ワイパモータはワイパピボット間に位置しており、
上記ワイパピボットは、上記流路部から滴下した水滴を下方に排水するピボット排水通路を備える
請求項1または2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
上記ワイパピボットは車幅方向内側と車幅方向外側とに一対設けられており、
車幅方向外側のワイパピボットにおける上記ピボット排水通路の下方には、補機類を収納するケースを上方から覆う補機類カバーが備えられ、
上記補機類カバーは車幅方向外側ほど下方に傾斜するカバー傾斜部を備える
請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
上記補機類を収納するケースの上端に対して、上記補機類カバーの下端は、車幅方向外側にオフセットして設けられる
請求項4に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前部構造に関し、詳しくは、フロントウインドシールド下方に設けられる電装部品と、該電装部品の直後部で、かつ上記フロントウインドシールドの下方に設けられて、当該フロントウインドシールドから滴下する水を受ける樋部材と、を備えたような車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントウインドシールドから滴下する水を、ワイパモータなどの電装部品に被水させないために、樋部材(カウルセンタ)を設ける構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、バッテリ等の補機類の上方を覆うカバー部材を、カウルグリルの車幅方向外側の前方領域に設けると、該カバー部材下方の上記補機類に対するメンテナンス時等のアクセス向上を図る目的で、広い開口が必要となり、上述の電装部品が車両前後方向においてフロントウインドシールドに近接するレイアウトとなる。
【0004】
特に、FR(フロントエンジン・リヤドライブ、前部機関後輪駆動)方式においてエンジンユニットを縦置き配置すると、エンジンユニットの後部がダッシュロアパネルに近接される関係上、電装部品がフロントウインドシールドに近接するレイアウトが顕著となる。
【0005】
この場合、上述の樋部材の排水機能を果たすために必要な、樋部材の車両前後方向の寸法が充分確保できず、一対のワイパピボット間から離れた位置に電装部品としてのワイパモータをレイアウトせざるを得なくなる等、レイアウトが不利になるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、フロントウインドシールドと電装部品との間の車両前後方向距離が小さいレイアウトであっても、電装部品の被水を抑制することができる車両の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両の前部構造は、フロントウインドシールド下方に設けられる電装部品と、該電装部品の直後部で、かつ上記フロントウインドシールドの下方に設けられて、当該フロントウインドシールドから滴下する水を受ける樋部材と、を備え、上記樋部材は、水滴が当該樋部材に滴下した際、該水滴を車幅方向に流す流路部を備え、上記流路部は、車幅方向において上記電装部品が設けられる位置において、最も高くなるよう設定される最上部と、当該最上部の車幅方向に隣接し車幅方向内側および車幅方向外側ほど下方に向かう傾斜部と、を備えたものである。
上述の電装部品は、ワイパモータであってもよい。また、上述の樋部材はカウルセンタに設定してもよい。
【0009】
上記構成によれば、電装部品が設けられた位置において、フロントウインドシールドから樋部材の流路部における最上部に滴下した水は、当該最上部に滴下すると直ちに傾斜部に流れるため、電装部品配置位置の上記樋部材の前後方向寸法、上下方向寸法が小さくても、電装部品への被水を抑制することができる。
要するに、フロントウインドシールドと電装部品との間の車両前後方向距離が小さいレイアウトであっても、電装部品の被水を抑制することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記最上部における上記流路部の車両前後方向の幅は他部に対して最も小さく設定されたものである。
上述の流路部とは、通路断面が凹状に形成された領域であり、断面が凹状でない排水を目的とする部分は流路部から排除する。
上記構成によれば、最上部の流路部の前後方向幅が最小で、排水能力が低くても、電装部品への被水を抑制することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記電装部品はワイパモータであり、該ワイパモータはワイパピボット間に位置しており、上記ワイパピボットは、上記流路部から滴下した水滴を下方に排水するピボット排水通路を備えるものである。
【0012】
上記構成によれば、ワイパピボットがピボット排水通路を有しており、このピボット排水通路は流路部から滴下した水滴を下方に排水するので、樋部材の排水能力向上を図ることができる。また、上述のピボット排水通路を排水経路の一部として用いることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ワイパピボットは車幅方向内側と車幅方向外側とに一対設けられており、車幅方向外側のワイパピボットにおける上記ピボット排水通路の下方には、補機類を収納するケースを上方から覆う補機類カバーが備えられ、上記補機類カバーは車幅方向外側ほど下方に傾斜するカバー傾斜部を備えるものである。
上述の補機類はヒューズボックスであってもよい。
【0014】
上記構成によれば、樋部材からピボット排水通路を介して補機類カバー上面に滴下した水滴を、上記カバー傾斜部の傾斜方向に沿って、車幅方向外側に排水し、補機類への被水を抑制することができる。また、上述の補機類カバーを排水経路の一部として用いることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記補機類を収納するケースの上端に対して、上記補機類カバーの下端は、車幅方向外側にオフセットして設けられるものである。
【0016】
上記構成によれば、上記オフセット構造により、毛細管現象で補機類のカバー下端から上記ケースの内部に水が浸入することを抑制し、これにより、補機類への被水をより一層抑制することができる。
【0017】
因に、ケース上端と補機類カバーの下端とが非オフセット構造である場合には、毛細管現象により上記ケース内部に水が浸入するが、上記構成により斯る水の浸入を抑制するものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、フロントウインドシールドと電装部品との間の車両前後方向距離が小さいレイアウトであっても、電装部品の被水を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の車両の前部構造を備えた車両前部の平面図。
【
図2】
図1からカウルグリルを取外して示す車両前部の平面図。
【
図3】
図2からカバー部材を取外して示す車両前部の平面図。
【
図11】(a)は車幅方向内側のピボット排水構造を示す斜視図、(b)は車幅方向左端部側のピボット排水構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
フロントウインドシールドと電装部品との間の車両前後方向距離が小さいレイアウトであっても、電装部品の被水を抑制するという目的を、フロントウインドシールド下方に設けられる電装部品と、該電装部品の直後部で、かつ上記フロントウインドシールドの下方に設けられて、当該フロントウインドシールドから滴下する水を受ける樋部材と、を備え、上記樋部材は、水滴が当該樋部材に滴下した際、該水滴を車幅方向に流す流路部を備え、上記流路部は、車幅方向において上記電装部品が設けられる位置において、最も高くなるよう設定される最上部と、当該最上部の車幅方向に隣接し車幅方向内側および車幅方向外側ほど下方に向かう傾斜部と、を備えるという構成にて実現した。
【実施例0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部構造を示し、
図1は当該車両の前部構造を備えた車両前部の平面図、
図2は
図1からカウルグリルを取外して示す車両前部の平面図、
図3は
図2からカバー部材を取外して示す車両前部の平面図である。
【0022】
また、
図4は
図3の斜視図、
図5は電装部品としてのワイパモータとその周辺構造を示す正面図、
図6は
図1のA―A線に沿う要部の矢視断面図、
図7は
図3のB―B線に沿う要部の矢視断面図である。
【0023】
車両の前部構造の説明に先立って、まず、前部車体構造について説明する。
図6に示すように、エンジンルーム1(
図1~
図4参照)と車室2とを車両前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。このダッシュロアパネル3は車幅方向に延びており、当該ダッシュロアパネル3の車幅方向左右両端部は、図示しないヒンジピラーに連結されている。
【0024】
上述のヒンジピラーは、車両の上下方向に延びるように立設されている。このヒンジピラーは、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を有する車体強度部材である。
【0025】
上述のヒンジピラーの下端部には、当該下端部から車両後方に延びるサイドシルが設けられている。このサイドシルはサイドシルインナとサイドシルアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体強度部材である。
【0026】
また、上述のヒンジピラーの上端部には、当該上端部から後方かつ上方へ斜め方向に延びるフロントピラーが設けられている。このフロントピラーはフロントピラーインナとフロントピラーアウタとを接合固定して、車両の後上方向に斜めに延びるフロントピラー閉断面を備えた車体強度部材である。
【0027】
図1~
図4に示すように、左右一対のフロントピラーと、車両上部前側に位置するフロントヘッダと、後述するカウルパネル13とで囲繞形成されたフロントウインドシールド配置用の開口部には、フロントウインドシールド4(いわゆる、フロントウインドガラス)が設けられている。
【0028】
ここで、上述のダッシュロアパネル3は、
図6に示すように、フロントウインドシールド4の下端部に位置し、車幅方向に延びてエンジンルーム1と車室2とを車両前後方向に仕切るパネル部材である。
【0029】
一方、
図1~
図4に示すように、上述の左右のヒンジピラーの上端前部には、当該上端前部から車両前方に延びるエプロンレインフォースメント5が左右一対に設けられている。
図1~
図4に示すように、ダッシュロアパネル3の車幅方向両端側から車両前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム6を設けている。このフロントサイドフレーム6は上述のエプロンレインフォースメント5に対して車幅方向内側で、かつ車両上下方向の下側に位置している。
【0030】
また、上述のフロントサイドフレーム6は、フロントサイドフレームインナとフロントサイドフレームアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びるフロントサイドフレーム閉断面を備えた車体強度部材である。
【0031】
図1~
図4に示すように、上述のフロントサイドフレーム6に固定されて上方に突出し、図示しないフロントサスペンション装置のダンパ上部を支持するサスペンションタワー部7を設けている。
図4に示すように、このサスペンションタワー部7は、エプロンレインフォースメント5の内側面を構成する前側サイドパネル8aと、上述のフロントサイドフレーム6との間に跨がって取付けられている。ここで、上述のサスペンションタワー部7としてはストラットタワー部を採用してもよい。
上述の前側サイドパネル8aに対して、車両前後方向に連続するように、後側サイドパネル8bが設けられている(
図4、
図7参照)。
【0032】
図1~
図4に示すように、上述のフロントサイドフレーム6の前端部において、当該前端部とエプロンレインフォースメント5の前部とを車両上下方向に連結する連結部材9を設けている。
【0033】
一方、
図1~
図4に示すように、上述のエンジンルーム1の車幅方向左右両側部は、フロントフェンダパネル10により覆われている。また、上述のエンジンルーム1の上方は、ボンネット(図示せず)により開閉可能に覆われている。
【0034】
ここで、
図1~
図3に示すように、上述のフロントフェンダパネル10はエプロンレインフォースメント5に対して複数の取付け部材11を用いて固定されている。また、上述のボンネットは、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを備え、ボンネットアウタパネルの周縁部をヘミング加工して、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを一体化したものである。
【0035】
図6に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端折曲げ部3aには、ダッシュアッパパネル12を介して断面略ハット形状のカウルパネル13を設けている。当該カウルパネル13と上述のダッシュアッパパネル12との間には、車幅方向に延びるカウル閉断面14を形成して、カウル部の剛性向上を図るように形成している。
【0036】
図6に示すように、上述のカウルパネル13の前低後高状に傾斜する上壁部13aには、接着剤15を介して上述のフロントウインドシールド4が取付けられている。
【0037】
図6に示すように、上述のフロントウインドシールド4の車幅方向左側の下方には電装部品としてのワイパモータ16が設けられている。このワイパモータ16は、
図5、
図6に示すワイパモータ支持ブラケット17で支持されている。
また、上述のワイパモータ16は、
図5に示すように、車幅方向に離間配置された一対のワイパピボットWP1,WP2間に配設されている。
【0038】
図1~
図4に示すように、車幅方向左端部側に位置する一方のワイパピボットWP1には、ワイパアーム20を介してワイパブレード21が取付けられており、ワイパピボットWP1に対して車幅方向内側に位置する他方のワイパピボットWP2には、ワイパアーム22を介してワイパブレード23が取付けられている。
【0039】
上述のワイパモータ16の駆動時には、一対のワイパピボットWP1,WP2を支点として、左右のワイパアーム20,22を介して左右のワイパブレード21,23が同時に駆動されてフロントウインドシールド4を払拭するように構成している。
【0040】
図1、
図6に示すように、フロントウインドシールド4の下方(この実施例では、フロントウインドシールド4の傾斜下方)で、かつ上述のワイパモータ16の上方には、ダッシュロアパネル3の車両前方に位置するカウルグリル24を備えている。
【0041】
図1に示すように、このカウルグリル24は車幅方向の略全幅にわたって延びている。また、
図6に示すように、このカウルグリル24は前後の上面部24a,24bと、前後の縦壁部24c,24dと、図示しないカウルシールを取付けるカウルシール取付け部24eとを備えている。
【0042】
さらに、
図1に示すように、上述のカウルグリル24の後側の上面部24bにおいて、車幅方向中間部位から車幅方向右側に片寄った部位には、メッシュ構造の外気導入孔25が開口形成されている。
【0043】
図1、
図3に示すように、カウルグリル24の車幅方向左側前方には、補機類としてのリザーバタンク(図示せず)と、補機類としてのヒューズボックス26(
図7参照)を収納するケース27との上方を覆うカバー部材30(
図1参照)が設けられている。
【0044】
また、
図1、
図3に示すように、カウルグリル24の車幅方向右側前方には、補機類としてのバッテリ31と、補機類としてのヒューズボックスを収納するケース32との上方を覆うカバー部材33(
図1参照)が設けられている。
【0045】
図6に示すように、左側のカバー部材30の前部には、フランジ部30aが一体形成されており、このフランジ部30aの下面と、後述する排水部材60との間には、インシュレータで形成された仕切部材34が設けられている。
【0046】
図2、
図3、
図4に示すように、フロントウインドシールド4の下方において、車幅方向中間部に間隔を隔てて左右の樋部材としてのカウルセンタ40,41が設けられている。これらの各カウルセンタ40,41はフロントウインドシールド4から滴下する水を受ける雨樋部材である。
【0047】
図6には一方のカウルセンタ40のみを示すが、左右の各カウルセンタ40,41はカウルパネル13の前壁部13bから車両前方に延びるように設けられている。車両左側のカウルセンタ40は
図5、
図6に示すように、上述のワイパモータ16(電装部品)の直後部に設けられている。
【0048】
図8はカウルセンタ40の正面図、
図9はカウルセンタの斜視図、
図10は
図9のC―C線矢視断面図、
図11の(a)は車幅方向内側のピボット排水構造を示す斜視図、
図11の(b)は車幅方向左端部側のピボット排水構造を示す斜視図、
図12は
図7の要部拡大図である。
【0049】
図8、
図9に示すように、上述のカウルセンタ40は、その長手方向中間部前側のワイパモータ16が設けられる位置Xに、車両平面視で車両後方に凹む凹部42が設けられ、この凹部42の周縁から上方に立ち上がる前壁40aが形成されている。
【0050】
また、上述のカウルセンタ40は、車幅方向左側前部の一方のワイパピボットWP1が設けられる位置Yに、車両平面視で車両後方に凹む凹部43が設けられ、この凹部43の周縁から下方に延びるスカート部40bが形成されている。
【0051】
さらに、上述のカウルセンタ40は、その車幅方向右側前部の他方のワイパピボットWP2が設けられる位置Zの車幅方向右側近傍に、車両平面視で車両後方に凹む凹部44が設けられ、この凹部44の周縁から上方に立ち上がる立壁40cが形成されている。
【0052】
上述の位置Yにおける左側の凹部43は滴下した水滴の流出部45となる。
上述の右側の凹部44の車幅方向左側に隣接して滴下した水滴の流出部46が、上記位置Zに設けられている。
【0053】
また、上述の位置Xにおける前壁40aの車幅方向左端と、位置Yにおける凹部43の車幅方向右端前部との間には、上方に立ち上がる仕切壁40dが設けられている。
さらに、上述の位置Xにおける前壁40aの車幅方向右端と、流出部46の車幅方向左端前部との間にも、上方に立ち上がる仕切壁40eが設けられている。
【0054】
図9に示すように、上述のカウルセンタ40はその長手方向に延びる底壁40fと、この底壁40fを含んでカウルセンタ40の車幅方向全幅から上方に立ち上がる後壁40gと、を備えており、上述の凹部43の車幅方向左端前部と後壁40gの車幅方向左端との間には、側壁40hが設けられている。
また、上述の凹部44の車幅方向右側と後壁40gの車幅方向右側との間には、車両前後方向に延びる堰部40iが設けられている。
【0055】
図9に示すように、上述の底壁40fにおける車幅方向左側には、稜線40jを介して車幅方向外側ほど下方に向かう傾斜壁40kが形成されている。
また、上述の底壁40fにおける車幅方向右側には、稜線40mを介して車幅方向内側ほど下方に向かう傾斜壁40nが形成されている。
【0056】
さらに、上述の傾斜壁40kの前後方向中間には、仕切壁40dと平行で、かつ、上方に立ち上がる中間仕切壁40pが設けられている。
そして、上述の各壁40a,40c,40d,40e,40f,40g,40k,40n,40pにより、水滴がカウルセンタ40に滴下した際、該水滴を車幅方向の左右両側に流す流路部47が形成されている。
【0057】
この流路部47は、車幅方向においてワイパモータ16が設けられる位置Xにおいて、最も高くなるように設定される最上部48と、該最上部48の車幅方向に稜線40j,40mを介して隣接し車幅方向外側および車幅方向内側ほど下方に向かう傾斜部49L,49Rと、を備えている。
【0058】
上述の最上部48は、各壁40a,40f,40gにより通路断面が凹状に形成されており、一方の傾斜部49Lは、各壁40d,40k,40pにより通路断面が凹状に形成されており、他方の傾斜部49Rは、各壁40c,40e,40nにより通路断面が凹状に形成されている。
【0059】
上述の車幅方向外側ほど下方に向かう傾斜部49Lは、一方の流出部45に連通しており、また、車幅方向内側ほど下方に向かう傾斜部49Rは、他方の流出部46に連通している。
【0060】
このように、流路部47はワイパモータ16が設けられる位置Xにおいて最も高くなる最上部48と、最上部48の車幅方向に隣接して車幅方向外側および車幅方向内側ほど下方に向かう傾斜部49L,49Rと、を備えている。
【0061】
これにより、ワイパモータ16が設けられた位置Xにおいて、フロントウインドシールド4からカウルセンタ40の流路部47における最上部48に滴下した水が、直ちに傾斜部49L,49Rに流下し、ワイパモータ16の配置位置Xにおいてカウルセンタ40の前後寸法、上下寸法が小さくても、ワイパモータ16への被水を抑制すべく構成したものである。
【0062】
また、
図9に示すように、上述の最上部48における流路部47の車両前後方向の幅は他部に対して最も小さく設定されている。これにより、最上部48の流路部47の前後幅が最小で、排水能力が低くても、ワイパモータ16への被水を抑制するように構成している。
【0063】
さらに、
図5、
図11(a)(b)に示すように、ワイパモータ16は一対のワイパピボットWP1,WP2間に位置しており、ワイパピボットWP1,WP2は、上述の流路部47の傾斜部49L,49Rから滴下した水滴を下方に排水するピボット排水通路としての受皿50,51を備えている。
【0064】
一方のワイパピボットWP1に対応して傾斜部49L先端の流出部45から滴下する水滴を受ける受皿50は、
図11(b)に示すように、底壁部50aと、該底壁部50aから上方に立ち上がる周壁部50bと、上記底壁部50aに連通する流出部50cと、を備えている。上述の底壁部50aは流出部50cに向けて車両前方かつ車幅方向外方ほど下方に傾斜する傾斜面に形成されている。
【0065】
他方のワイパピボットWP2に対応して傾斜部49R先端の流出部46から滴下する水滴を受ける受皿51は、
図11(a)に示すように、底壁部51aと、該底壁部51aから上方に立ち上がる周壁部51bと、上記底壁部51aに連通する流出部51cと、を備えている。上述の底壁部51aは流出部51cに向けて車両前方かつ車幅方向内方ほど下方に傾斜する傾斜面に形成されている。
【0066】
これにより、ワイパピボットWP1,WP2がピボット排水通路としての受皿50,51を有しており、受皿50,51は流路部47の各流出部45,46から滴下した水滴を下方に排出し、カウルセンタ40の排水能力向上を図るように構成している。また、上述の受皿50,51を排水経路の一部として用いるように構成したものである。
【0067】
ところで、
図7、
図12に示すように、ヒューズボックス26を収納するケース27(補機類収納ケース)は、当該ケース27を上方から覆う補機類カバー28(以下、単にカバー28と略記する)を有している。
【0068】
同図に示すように、該カバー28は車両前後方向の後部において、上壁部28aと、該上壁部28aの車幅方向内端から上方に延びる内側壁部28bと、上壁部28aの車幅方向外端から階段状に下方に延びる外側壁部28cと、上壁部28aの後端から上方に延びる後壁部28dと、を備えている。さらに、上述の上壁部28aの前端から上方に延びる仕切壁部28e(
図11の(b)参照)を備えている。
【0069】
図7、
図11(b)に示すように、上述のカバー28(特に、その上壁部28a)は、車幅方向外側のワイパピボットWP1における受皿50の流出部50c下方に位置するように設けられている。また、上述のカバー28における上壁部28aは、
図7、
図12に示すように、車幅方向外側ほど下方に傾斜するカバー傾斜部29に設定されている。
【0070】
これにより、カウルセンタ40から受皿50を介してカバー28上面(すなわち、上壁部28a)に滴下した水滴を、上述のカバー傾斜部29の傾斜方向に沿って、車幅方向外側に排水し、補機類としてのヒューズボックス26への被水を抑制するように構成したものである。また、上述のカバー28を排水経路の一部として用いるように構成している。
【0071】
さらに、
図12に示すように、補機類としてのヒューズボックス26を収納するケース27の車幅方向外側上端27aに対して、カバー28の外側壁部28cの下端28fは、車幅方向外側にオフセットして設けられている。
【0072】
上述のオフセット構造により、毛細管現象でカバー28の下端28fからケース27の内部に水が浸入することを抑制し、これにより、ヒューズボックス26への被水をより一層抑制すべく構成したものである。
【0073】
上述の実施例では、FR(前部機関後輪駆動)方式で、かつ、エンジンユニットを縦置き配置した左ハンドル車両を例示している。上述のカバー傾斜部29により、水を車幅方向外側に排水することで、ブレーキ系に対する水の飛散抑制を図っている。また、
図11(b)に示すように、上壁部28aの前部に仕切壁部28eを設けることで、水の乗り越え防止を図っている。
【0074】
ところで、
図3、
図4に示すように、フロントウインドシールド4の下方で、かつ、カウルグリル24、左右のカウルセンタ40,41、および左右のカバー部材30,33の下方部には、車幅方向に延びる排水部材60が設けられており、フロントウインドシールド4から滴下した水滴を、当該排水部材60で受止めて、その車幅方向左右両外側方から排水すべく構成している。
【0075】
なお、
図6、
図7において、35はエンジンユニット側方を覆うインシュレータ、
図7において、18はダッシュアッパパネル12に下部に設けられるカウルレインアッパ、19はカウルレインアッパ18の下部に設けられるカウルレインロアである。また、
図7において、36はエンジンユニット後部上方を覆うインシュレータである。
【0076】
さらに、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0077】
このように、上記実施例の車両の前部構造は、フロントウインドシールド4下方に設けられる電装部品(ワイパモータ16参照)と、該電装部品(ワイパモータ16)の直後部で、かつ上記フロントウインドシールド4の下方に設けられて、当該フロントウインドシールド4から滴下する水を受ける樋部材(カウルセンタ40)と、を備え、上記樋部材(カウルセンタ40)は、水滴が当該樋部材(カウルセンタ40)に滴下した際、該水滴を車幅方向に流す流路部47を備え、上記流路部47は、車幅方向において上記電装部品(ワイパモータ16)が設けられる位置Xにおいて、最も高くなるよう設定される最上部48と、当該最上部48の車幅方向に隣接し車幅方向内側および車幅方向外側ほど下方に向かう傾斜部49R,49Lと、を備えたものである(
図4、
図5、
図9参照)。
【0078】
この構成によれば、電装部品(ワイパモータ16)が設けられた位置Xにおいて、フロントウインドシールド4から樋部材(カウルセンタ40)の流路部47における最上部48に滴下した水は、当該最上部48に滴下すると直ちに傾斜部49R,49Lに流れるため、電装部品(ワイパモータ16)配置位置の上記樋部材(カウルセンタ40)の前後方向寸法、上下方向寸法が小さくても、電装部品(ワイパモータ16)への被水を抑制することができる。
【0079】
要するに、フロントウインドシールド4と電装部品(ワイパモータ16)との間の車両前後方向距離が小さいレイアウトであっても、電装部品(ワイパモータ16)の被水を抑制することができる。
【0080】
また、この発明の一実施形態においては、上記最上部48における上記流路部47の車両前後方向の幅は他部に対して最も小さく設定されたものである(
図9参照)。
この構成によれば、最上部48の流路部47の前後方向幅が最小で、排水能力が低くても、電装部品(ワイパモータ16)への被水を抑制することができる。
【0081】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記電装部品はワイパモータ16であり、該ワイパモータ16はワイパピボットWP1,WP2間に位置しており、上記ワイパピボットWP1,WP2は、上記流路部47から滴下した水滴を下方に排水するピボット排水通路(受皿50,51)を備えるものである(
図5、
図11参照)。
【0082】
この構成によれば、ワイパピボットWP1,WP2がピボット排水通路(受皿50,51)を有しており、このピボット排水通路(受皿50,51)は流路部47から滴下した水滴を下方に排水するので、樋部材(カウルセンタ40)の排水能力向上を図ることができる。また、上述のピボット排水通路(受皿50,51)を排水経路の一部として用いることができる。
【0083】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記ワイパピボットWP1,WP2は車幅方向内側と車幅方向外側とに一対設けられており、車幅方向外側のワイパピボットWP1における上記ピボット排水通路(受皿50)の下方には、補機類(ヒューズボックス26)を収納するケース27を上方から覆う補機類カバー(カバー28)が備えられ、上記補機類カバー(カバー28)は車幅方向外側ほど下方に傾斜するカバー傾斜部29を備えるものである(
図7、
図12参照)。
【0084】
この構成によれば、樋部材(カウルセンタ40)からピボット排水通路(受皿50)を介して補機類カバー(カバー28)上面に滴下した水滴を、上記カバー傾斜部29の傾斜方向に沿って、車幅方向外側に排水し、補機類(ヒューズボックス26)への被水を抑制することができる。また、上述の補機類カバー(カバー28)を排水経路の一部として用いることができる。
【0085】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記補機類(ヒューズボックス26)を収納するケース27の上端27aに対して、上記補機類カバー(カバー28)の下端28fは、車幅方向外側にオフセットして設けられるものである(
図12参照)。
【0086】
この構成によれば、上記オフセット構造により、毛細管現象で補機類(ヒューズボックス26)のカバー28の下端28fから上記ケース27の内部に水が浸入することを抑制し、これにより、補機類(ヒューズボックス26)への被水をより一層抑制することができる。
【0087】
因に、ケース上端と補機類カバーの下端とが非オフセット構造である場合には、毛細管現象により上記ケース内部に水が浸入するが、上記構成により斯る水の浸入を抑制するものである。
【0088】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の電装部品は、実施例のワイパモータ16に対応し、
以下同様に、
補機類は、ヒューズボックス26に対応し、
補機類カバーは、カバー28に対応し、
樋部材は、カウルセンタ40に対応し、
ピボット排水通路は、受皿50,51に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0089】
例えば、上記実施例においては車両の前部構造を左ハンドル車両に採用した場合について説明したが、この車両の前部構造は右ハンドル車両に採用してもよく、この場合には、カウルセンタ40、ワイパモータ16、ワイパピボットWP1,WP2、受皿50,51、ケース27、カバー28、カバー傾斜部29等の各要素を左右対称にして配置するとよい。
以上説明したように、本発明は、フロントウインドシールド下方に設けられる電装部品と、該電装部品の直後部で、かつフロントウインドシールドの下方に設けられて、当該フロントウインドシールドから滴下する水を受ける樋部材と、を備えたような車両の前部構造について有用である。