(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159706
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】充電制御方法及び充電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20221011BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221011BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221011BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20221011BHJP
B60L 53/68 20190101ALI20221011BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20221011BHJP
【FI】
H02J7/10 J
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L53/62
B60L53/68
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064065
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 英明
(72)【発明者】
【氏名】古城 直樹
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503FA06
5G503GC04
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC21
5H125BE01
5H125BE02
5H125CD02
5H125EE27
5H125EE51
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】走行駆動用バッテリの充電残量が所定の閾値以下である場合に、充電待ち時間が長くなるのを抑制することができる充電制御方法及び充電制御装置を提供する。
【解決手段】走行駆動用バッテリの充電が必要となる第1充電閾値と、充電残量が第1充電閾値より大きい第2充電閾値とを設定し、充電残量を検出して第1充電閾値及び第2充電閾値と比較し、充電残量が第2充電閾値より小さく第1充電閾値より大きい場合に、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットがあるときには、充電を行う充電指示を出力する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された走行駆動用バッテリの充電残量と、充電スポットの利用状況から算出した充電待ち時間に基づいて充電指示を行う充電制御方法であって、
前記走行駆動用バッテリの充電が必要となる第1充電閾値と、前記充電残量が第1充電閾値より大きい第2充電閾値とを設定し、
前記充電残量を検出して前記第1充電閾値及び前記第2充電閾値と比較し、
前記充電残量が前記第2充電閾値より小さく前記第1充電閾値より大きい場合に、前記充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットがあるときには、充電を行う充電指示を出力する充電制御方法。
【請求項2】
前記充電残量が前記第2充電閾値より小さくなった場合に、
前記充電スポットにおける前記充電待ち時間の予測値を演算し、
前記充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットがあるときには、前記充電指示を出力する請求項1に記載の充電制御方法。
【請求項3】
前記充電残量が前記第1充電閾値より小さい場合には、前記充電待ち時間にかかわらず、前記充電指示を出力する請求項1又は2に記載の充電制御方法。
【請求項4】
前記充電残量が前記第2充電閾値より小さく前記第1充電閾値より大きい場合における前記充電指示の出力表示と、
前記充電残量が前記第1充電閾値より小さい場合における前記充電指示の出力表示と、が異なる表示態様である請求項1~3のいずれか一項に記載の充電制御方法。
【請求項5】
前記充電指示を、前記車両の車載装置に出力する請求項1~4のいずれか一項に記載の充電制御方法。
【請求項6】
前記充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットが複数ある場合には、
前記車両が、それぞれの前記充電スポットに到着するまでに必要となる走行時間を演算し、
前記充電スポットにおける前記充電待ち時間と、前記充電スポットに到着するまでに必要となる走行時間との和からなる充電所要時間を算出し、
前記充電所要時間が最小となる充電スポットを探索し、前記充電指示を出力する請求項1~5のいずれか一項に記載の充電制御方法。
【請求項7】
前記充電残量が前記第2充電閾値となった現在の時刻における前記充電待ち時間の予測値と、前記充電スポットにおいて現在充電している他車両が充電を完了するまでの時間から算出した前記現在の時刻における前記充電待ち時間の測定値とから、前記充電待ち時間の修正値を演算し、
前記充電待ち時間の修正値が前記充電待ち時間の上限値より小さく、現在の時刻以降の前記充電待ち時間の増加量が所定値より大きい場合には、前記充電指示を出力する請求項1~6のいずれか一項に記載の充電制御方法。
【請求項8】
前記現在の時刻における前記充電待ち時間の測定値が、前記現在の時刻における前記充電待ち時間の予測値より大きい場合には、前記充電待ち時間の修正値を、前記充電待ち時間の測定値とする請求項7に記載の充電制御方法。
【請求項9】
前記充電待ち時間の上限値は、前記充電残量が前記第2充電閾値となる予測時刻から前記第1充電閾値となる予測時刻までにおける前記充電待ち時間の予測値の最小値に基づいて演算する請求項7又は8に記載の充電制御方法。
【請求項10】
前記現在の時刻以降の前記充電待ち時間の増加量は、前記現在の時刻における前記充電待ち時間の測定値と、前記充電残量が前記第2充電閾値となる予測時刻から前記第1充電閾値となる予測時刻までにおける前記充電待ち時間の予測値の最小値とを比較した増加量に基づいて演算する請求項7~9のいずれか一項に記載の充電制御方法。
【請求項11】
前記充電スポットにおける前記充電待ち時間の予測値は、前記充電スポットにおける過去の利用状況に基づいて演算する請求項1~10のいずれか一項に記載の充電制御方法。
【請求項12】
車両に搭載された走行駆動用バッテリの充電残量と、充電スポットの利用状況から算出した充電待ち時間に基づいて充電指示を行うプロセッサを備えた充電制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記走行駆動用バッテリの充電が必要となる第1充電閾値と、前記充電残量が第1充電閾値より大きい第2充電閾値とを設定し、
前記充電残量を検出して前記第1充電閾値及び前記第2充電閾値と比較し、
前記充電残量が前記第2充電閾値より小さく前記第1充電閾値より大きい場合に、前記充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットがあるときには、充電を行う充電指示を出力する充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車など、走行駆動用バッテリの充電を必要とする車両の充電制御方法及び充電制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の充電残量が所定の閾値以下である場合に、車両が現在の充電残量により走行可能な範囲を算出し、当該走行可能な範囲に存在する充電スポットの位置を提示する車両用情報提供装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両用情報提供装置では、充電残量が所定の閾値以下であるにもかかわらず、充電スポットが混雑する時間帯やアクセスが集中する立地である場合など、充電スポットの混雑状況によっては、充電待ち時間が長くなるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、走行駆動用バッテリの充電残量が所定の閾値以下である場合に、充電待ち時間が長くなるのを抑制することができる充電制御方法及び充電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行駆動用バッテリの充電が必要となる第1充電閾値と、充電残量が第1充電閾値より大きい第2充電閾値とを設定し、充電残量を検出して第1充電閾値及び第2充電閾値と比較し、充電残量が第2充電閾値より小さく第1充電閾値より大きい場合に、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットがあるときには、充電を行う充電指示を出力することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行駆動用バッテリの充電残量が所定の閾値以下である場合に、充電待ち時間が長くなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の充電制御装置を備える充電制御システムの一実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明の充電制御装置によって充電制御が実行される車両のバッテリのSOC(充電残量)と充電待ち時間の、経過時間に対する変動の一例を示すグラフである。
【
図3】(A)及び(B)のそれぞれは、
図1の充電計画部で実行される処理例を説明するための図である。
【
図4】本発明の充電制御装置を用いて、充電を実行する充電スポットを選択するシーンの一例を説明するための図である。
【
図5A】
図1の予測誤差修正部で実行される処理例を説明するための図(その1)である。
【
図5B】
図1の予測誤差修正部で実行される処理例を説明するための図(その2)である。
【
図6】(A)及び(B)のそれぞれは、車両の車載制御装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図7】
図1の充電制御装置で実行される制御処理例を示すフローチャートである。
【
図8】
図7のステップS7で実行されるサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の充電制御方法及び装置1は、車両データベースに蓄積された車両Vの車両情報からバッテリのSOC(State of Charge)の推移を予測し、走行駆動用バッテリ(電気自動車又はハイブリッド車の走行駆動モータに電力を供給する二次電池を言う。以下、単にバッテリとも称する。)が、いわゆる電欠状態となることを防止する第1充電閾値と、第1充電閾値より大きい第2充電閾値を設定する。そして、充電スポットデータベースに蓄積された充電スポット(車両外部の充電器)の施設情報から、充電待ち時間の予測値を算出し、バッテリのSOCが第2充電閾値より小さく第1充電閾値より大きい場合に、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットがあるときには充電指示を出力するものである。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る充電制御装置1を用いた充電制御システムSの概略を示すブロック図である。本実施形態の充電制御装置1は、本発明にかかる充電制御方法を実施する一実施の形態でもある。充電制御装置1は、通信部13を備え、充電器2は通信部23を備え、車載制御装置3は通信部33を備え、インターネットなどの電気通信回線網NWを介して相互に情報の送受信が可能とされている。なお、通信経路は有線であっても無線であってもよい。
【0011】
充電器2は、車両Vに搭載されたバッテリと、充電スポットCに備えられた商用電源との間に接続され、商用電源から入力される電圧を、バッテリの充電に適した電圧に変換し、変換された電圧を充電電圧としてバッテリに電力を供給する。本実施形態では、充電スポットCとして、一つの充電ポートを備える一台の充電器2が商用電源に接続された例を適用して説明するが、充電スポットCの形態は、たとえば複数の充電ポートを備える複数台の充電器2が商用電源に接続されてもよい。
【0012】
充電器2は、バッテリの充電の制御処理を実行する制御部21と、バッテリと電気的に接続されるセンサ22と、充電制御装置1又は車載制御装置3などの外部装置と通信を行う通信部23と、を備える。
【0013】
制御部21は、車両Vに搭載されたバッテリの充電を制御する充電制御機能と、バッテリの充電時間を演算する充電時間演算機能と、を備える。具体的には、給電コネクタのプラグ等を介して充電器2と車両Vが電気的に接続されると、充電制御機能により、制御部21は車載制御装置3からSOCの測定値やバッテリの電圧、電流、温度等の検出値を取得し、充電器2から出力されるバッテリへの充電電力を制御する。
【0014】
また、制御部21は、バッテリの充電可能能力と充電器2の出力可能電力に応じて充電モードを切り替える。充電可能能力とは、バッテリの充電の際、充電器2からバッテリに入力可能な最大の入力電力であり、出力可能電力とは、充電器2からの出力可能な最大の出力電力でる。充電器2には、出力可能電力が高い急速充電器と、急速充電器よりも出力可能電力が低い普通充電器があり、バッテリの充電可能能力に応じて、充電モードが選択される。制御部21は、充電時間演算機能により、充電モードに応じて、バッテリの充電時間(充電が開始されてから完了されるまでの時間)やバッテリの残余充電時間(充電が完了されるまでの残り時間)などを演算し、通信部23を介して充電制御装置1及び車載制御装置3へ出力する。
【0015】
センサ22は、たとえば充電器2の給電コネクタに備えられたプラグ等であり、本実施形態においては通信部23を兼ねる。充電器2のプラグが車両Vの充電ポートに挿入されることにより、充電器2とバッテリが電気的に接続される。充電器2がバッテリに電気的に接続されると、センサ22及び通信部23としてのプラグは、充電器2の動作情報を車両Vに送信するとともに、車両Vから充電許可信号や充電指令値などの充電情報を受信し、これを制御部21に出力する。
【0016】
センサ22は、バッテリの充電が実行される度に、通信部23を介して、充電器2の利用情報を充電スポットデータベース12に送信する。充電器2の利用情報には、充電器2が使用された日付、時刻、充電時間、充電容量、異なる車両が連続して充電したか否か及び充電した車両の識別情報などの情報が含まれる。
【0017】
車載制御装置3は、バッテリの充電の制御処理を実行する制御部31と、バッテリのSOCを検出する充電容量検出部32と、充電制御装置1又は充電器2などの外部装置と通信を行う通信部33と、車両Vのドライバーに情報を通知するための表示部34と、を備える。車両Vに搭載されるバッテリは、たとえばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などの二次電池を、複数接続することで構成される電池を用いたバッテリである。
【0018】
制御部31は、充電容量検出部32を用いて取得した、バッテリの現在のSOCの情報を、通信部33を介して充電制御装置1及び充電器2に送信する。バッテリの現在のSOCの情報は、充電制御装置1が充電計画を立案する際や、充電器2により充電を実行する際に用いられる。また、制御部31は、車載制御装置3に備えられた図示しないGPS(Global Positioning System)受信機などの位置検出装置を用いて、車両Vの現在の位置情報を取得し、取得した現在の位置情報を、通信部33を介して充電制御装置1に送信する。この車両Vの現在の位置情報は、充電制御装置1が充電計画を立案する際の基準位置を特定するために用いられる。
【0019】
さらに、制御部31は、ディスプレイなどの表示部34を用いて、充電制御装置1から受信した充電指令や、充電器2から受信した動作情報を、車両Vのドライバーに通知する。表示部34は、たとえば、ナビゲーション装置のディスプレイ、インストルメントパネルに設けられたディスプレイ等の表示装置である。制御部31は、充電制御装置1から充電指令とともに、充電を実行する充電スポットCの位置情報を受信した場合には、当該充電スポットCを地図画像に重畳して表示部34に表示することにより、車両Vのドライバーに、充電スポットCの案内情報を提示することができる。また、充電器2から動作情報を受信した場合には、充電器2で演算されたバッテリの残余充電時間を表示部34に表示することにより、車両Vのドライバーに、充電に要する時間を提示することができる。
【0020】
また、本実施形態の制御部31は、車両Vの自律走行制御機能を備える。自律走行制御機能は、制御部31が自車両の走行をドライバーの操作に依ることなく自律制御するための機能である。制御部31の自律走行制御機能は、自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御機能と、自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御機能とを含む。ドライバーの操作に依ることなく自律制御することには、一部の操作をドライバーにより行うことも含まれる。なお、制御部31の自律走行制御機能は、本発明に必須の構成ではなく、必要に応じて全ての操作をドライバーにより行ってもよい。
【0021】
充電容量検出部32は、バッテリの現在のSOCを所定時間間隔で演算し、演算結果を制御部31に出力する。たとえば、車載制御装置3に備えられた図示しない電流センサ、電圧センサ及び温度センサ等の検出値に基づいて、バッテリのSOCを演算する。バッテリが充電器2と電気的に接続され、充電が実行されている場合には、電流センサを用いてバッテリの充電電流を積算することで、充電中のSOCを演算する。充電容量検出部32により、バッテリの現在のSOCが目標のSOC(たとえば100%など)に達したことを検出すると、制御部31は、通信部33を介して充電器2からバッテリへの出力を停止する指令を送信し、バッテリの充電を終了させる。
【0022】
充電制御装置1は、車両の識別情報、充電履歴情報及びSOCの推移と対応付けて記憶された車両Vの走行距離などの車両情報を蓄積した車両データベース11と、充電スポットCの設備情報、利用情報及び充電器2の利用状況から演算した充電待ち時間を含む施設情報などを蓄積した充電スポットデータベース12と、充電器2又は車載制御装置3と相互に通信可能な通信部13と、充電制御処理を実行する制御部14と、を備える。なお、本実施形態では、車両データベース11と、充電スポットデータベース12は、充電制御装置1に含まれる構成としたが、たとえば外部のサーバなどに設けられ、インターネット回線などを介してアクセス可能な構成とされてもよい。
【0023】
車両データベース11は、通信部13を介して車載制御装置3から受信した、車両Vの車両情報を蓄積し、定期的に更新する。車両情報には、車両Vの車両番号、車体番号、車種などの識別情報や、バッテリの定格容量、充電可能能力、充電頻度、充電場所などの充電履歴及びSOCの推移と対応付けて記憶された車両Vの走行距離などの情報が含まれる。これらのほか、車両Vの位置情報、進行方向、車速、ドアロックのON/OFF状態、ドアの開閉状態、シートベルトセンサー値、自律走行中か否かなどの車両Vの状態情報を含んでもよい。これらの車両情報は、充電計画部141により充電計画を立案する際に利用される。
【0024】
充電スポットデータベース12は、通信部13を介して充電器2から受信した、充電スポットCの施設情報を蓄積し、定期的に更新する。施設情報には、充電スポットCの位置情報(緯度及び経度)、充電器2の種別、台数、出力可能電力などの設備情報や、充電スポットCの稼働率、満空情報、混雑時間帯、充電器2が使用された日付、時刻、充電時間、充電容量、異なる車両が連続して充電したか否か及び充電した車両の識別情報などの利用情報のほか、充電器2の利用状況から演算した充電待ち時間などの情報が含まれる。充電待ち時間については後述する。
【0025】
通信部13は、電気通信回線網NWを介して充電器2又は車載制御装置3などの外部装置と通信する。制御部14は、通信部13を介して、充電器2から充電スポットCの現在の利用状況を取得するとともに、車載制御装置3からバッテリの現在のSOCを取得して、充電計画に反映する。また、充電制御装置1からの充電指令は、通信部13を介して、車載制御装置3に送信される。
【0026】
制御部14は、充電制御装置1による充電制御処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、充電制御装置1として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備える。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。制御部14の充電計画部141、充電計画修正部142、予測誤差修正部143、電欠防止判断部144及び充電タイミング判定部145は、ROMに格納されたプログラムを実行することで、充電制御装置1としての充電計画機能、予測誤差修正機能、電欠防止機能、充電タイミング判定機能といった各種機能を実現する。
【0027】
充電計画部141は、車両データベース11から取得した車両Vの車両情報と、充電スポットデータベース12から取得した充電スポットCの施設情報に基づいて、車両Vの充電計画を立案する。上述したように、車両Vの車両情報には、バッテリの定格容量、充電可能能力、充電頻度、充電場所などの充電履歴及びSOCの推移と対応付けて記憶された車両Vの走行距離などの情報が含まれる。また、充電スポットCの施設情報には、充電器2が使用された日付、時刻、充電時間、充電容量、異なる車両が連続して充電したか否か及び充電した車両の識別情報などの利用情報のほか、充電器2の利用状況から演算した充電待ち時間などの情報が含まれる。充電計画部141は、これらの情報からバッテリのSOCの予測推移と、充電スポットCの充電待ち時間の予測値を演算する。そして、この演算結果に基づいて、車両Vの充電計画を立案し、充電タイミング判定部145に出力する。
【0028】
図2は、バッテリのSOCの予測推移と充電スポットの充電待ち時間の予測値の一例を示すグラフである。一点鎖線グラフは、経過時間に対するバッテリのSOC(充電残量)の予測推移を示し、実線グラフは、経過時間に対する充電スポットCにおける充電待ち時間の予測値の推移を示している。まず、充電計画部141は、バッテリの充電が必要となる所定のSOCを第1充電閾値として設定する。バッテリの充電が必要となる所定のSOCとは、車両Vがいわゆる電欠状態(SOC0%)となることを防ぐための値であり、特に限定されないが、たとえばSOC20%など、電欠状態となるまでに、車両Vがある程度走行することができる値である。第1充電閾値は、任意の値に設定してもよいし、たとえば車両データベース11から取得した、SOCの推移と対応付けて記憶された車両Vの走行距離から演算して設定してもよい。
【0029】
次に、充電計画部141は、第1充電閾値より大きい所定のSOCを第2充電閾値として設定する。第1充電閾値より大きい所定のSOCとは、特に限定されないが、たとえばSOC35%など、第1充電閾値となるまでに、車両Vがある程度走行することができる値である。第2充電閾値は、任意の値に設定してもよいし、たとえば無人タクシーによる配車サービスなどの営業用車両に本発明を適用する場合には、1度の配車サービス(迎車、目的地までの輸送、待機ステーションへの帰着)で消費する充電量を演算し、第1充電閾値に当該配車サービスで消費する充電量を加算して第2充電閾値としてもよい。具体的には、車両データベース11から取得した車両Vの車両情報から、1度の配車サービスに消費する充電量がSOC10%であると演算された場合には、第1充電閾値SOC20%に対して2度の配車サービスで消費する充電量SOC20%を加算した、SOC40%を第2充電閾値として設定する。2度の配車サービスで消費する充電量を加算するのは、1度の配車サービスを終えた時点で第1充電閾値になるとすると、充電指令が送信される頻度が高くなり、充電効率が低下する虞があるからである。
【0030】
SOCの予測推移に基づいて第1充電閾値及び第2充電閾値が設定されると、充電計画部141は、車両データベース11から取得した車両Vの車両情報を用いて、バッテリのSOCが第2充電閾値となる予測時刻t1と、バッテリのSOCが第1充電閾値となる予測時刻t5を演算する。そして、バッテリのSOCが第2充電閾値となる予測時刻t1を充電検討開始時刻、バッテリのSOCが第1充電閾値となる予測時刻t5を充電検討終了時刻として設定する。
【0031】
次に、充電計画部141は、車載制御装置3から取得した車両Vの現在の位置情報や、車両Vに対して設定された走行経路情報などから、充電検討開始時刻t1から充電検討終了時刻t5に至るまでの、車両Vの走行位置情報を演算する。そして、充電スポットデータベース12を検索して、車両Vの走行位置から走行可能な範囲にある充電スポットCを検出し、充電待ち時間の予測値を算出する対象充電スポットCとして特定する。当該特定された充電スポットCについて、充電計画部141は、充電検討開始時刻t1から充電検討終了時刻t5に至るまでの、充電待ち時間の予測値を演算する。
【0032】
図3は、充電スポットCの過去の充電待ち時間のデータに基づいて、充電待ち時間の予測値を演算するシーンの一例を示している。同図(A)は、充電スポットデータベース12に蓄積された、充電器2の過去の利用状況から演算される充電待ち時間と、これらの充電待ち時間に基づいて演算される充電待ち時間の予測値の一例を示す。同図(B)は、9時00分における充電待ち時間の演算処理を説明するための図である。たとえば、充電検討開始時刻t1が9時00分であった場合には、充電計画部141は、充電スポットデータベース12に記憶された、過去の9時00分の充電待ち時間のデータを検索し、過去の充電待ち時間の和から平均値を演算して、これを充電待ち時間の予測値とする。
【0033】
図3(B)は、充電器2の過去の利用状況から、充電スポットCの9時00分の充電待ち時間を算出するシーンを示す。なお、充電器2を利用して1度の充電に要する時間は30分であるものとする。2021年3月1日では、充電器2を利用して8時45分から充電を開始している車両がいるので、9時00分の充電待ち時間は15分となる。同様に、2021年3月2日は、8時50分から充電を開始している車両がいるので、充電待ち時間は20分となる。これに対して、2021年3月3日は、充電器2を利用して充電している車両がいないので、充電待ち時間は0分となる。2021年3月4日は、8時45分から充電を開始している車両と、当該車両が充電を終えた後に続けて9時15分から充電を開始している車両がいるので、充電待ち時間は45分となる。このように、充電器2の過去の利用状況から充電待ち時間を演算することができる。なお、充電待ち時間の演算方法として、その他の公知の方法を用いてもよい。
【0034】
充電計画部141は、充電器2の過去の利用状況から演算された充電待ち時間から、充電待ち時間の予測値を演算する。たとえば、9時00分時点における充電待ち時間の予測値について説明すると、
図3(A)に示すように、2021年3月1日は15分、2021年3月2日は20分、2021年3月3日は0分、2021年3月4日は45分の充電待ち時間がそれぞれ検索されると、充電計画部141は、2021年3月1日から2021年3月4日までの充電待ち時間の平均時間である20分を充電待ち時間の予測値とする。なお、充電待ち時間の予測値は、過去の充電待ち時間の平均値を用いてもよく、中央値としてもよく、その他の公知の方法を用いることもできる。このように、充電スポットデータベース12に蓄積された、充電スポットCの過去の利用状況のデータを用いることにより、実測値に基づいた適切な充電待ち時間の予測値を演算することができる。
【0035】
図2に戻り、充電計画部141は、充電待ち時間の予測値を演算すると、充電検討開始時刻t1から充電検討終了時刻t5に至るまでの間に、充電待ち時間の予測値が予め定めた所定値より小さくなる時刻を演算する。予め定めた所定値は、特に限定されないが、たとえば充電器2の1度の利用時間である30分に設定してもよいし、車両データベース11から取得した車両Vの車両情報に基づいて、バッテリのSOCが第2充電閾値から第1充電閾値に至るまでの推定時間を演算して設定してもよい。
【0036】
図2に示すように、充電検討開始時刻t1から時刻t2,時刻t3から充電検討終了時刻t5において、充電待ち時間の予測値が所定値(ここでは30分)より小さい。一方、時刻t2から時刻t3では、充電待ち時間の予測値が所定値より大きい。このため、充電計画部141は、充電検討開始時刻t1から時刻t2及び時刻t3から充電検討終了時刻t5において、充電を実行するように充電指示を出力する。このように、バッテリのSOC(充電残量)が所定の閾値以下である場合に、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットがあるときには、充電を行う充電指示を出力するので、充電待ち時間が長くなるのを抑制することができる。なお、本実施形態では、充電検討開始時刻t1から充電検討終了時刻t5に至るまでの間に、充電待ち時間の予測値が最も小さくなる、時刻t4を充電推奨時刻として設定する。これにより、充電待ち時間が長くなるのをさらに抑制することができる。
【0037】
図4は、複数ある充電スポットCから、充電を実行する充電スポットCを選択するシーンを説明するための図である。
図4に示すシーンでは、充電推奨時刻t4において、車両Vの走行可能範囲(点線枠内)に、充電待ち時間の予測値が演算された複数の充電スポットC1,C2,C3が存在するものとする。充電推奨時刻t4における充電待ち時間の予測値は、それぞれ、充電スポットC1が15分、充電スポットC2が5分、充電スポットC3が35分であるとする。充電待ち時間の予測値が所定値30分より小さい、複数の充電スポットC1,C2が存在している。
【0038】
このような場合には、充電計画部141は、充電待ち時間の予測値に加えて、車両Vがそれぞれの充電スポットCに到達するまでの到達時間を演算する。そして、充電待ち時間の予測値と充電スポットCに到達するまでの到達時間との和から、車両Vが充電を開始するまでに要する充電所要時間を算出する。
【0039】
たとえば
図4に示すシーンにおいて、充電スポットC1への到達時間T1が5分、充電スポットC2への到達時間T2が10分であるとすると、充電スポットC1の充電所要時間は、充電待ち時間の予測値15分と到達時間5分の和から20分となる。これに対して、充電スポットC2の充電所要時間は、充電待ち時間の予測値5分と到達時間10分の和から15分となる。このとき、充電計画部141は、充電所要時間が最小となる充電スポットC2を、充電を実行する充電スポットCとして特定し、充電計画に反映する。これにより、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい複数の充電スポットCの中から、充電スポットCに到達するまでの時間を含めた、充電所要時間が最小となる充電スポットCを特定することができるので、充電待ち時間が長くなるのをさらに抑制することができる。
【0040】
充電計画部141は、第1充電閾値、第2充電閾値、充電検討開始時刻t1、充電検討終了時刻t5、充電推奨時刻t4、充電待ち時間の予測値、充電を実行する充電スポットCなどの情報を含む充電計画を立案すると、充電タイミング判定部145に出力する。この充電計画に基づいて、充電推奨時刻t4になると、充電タイミング判定部145は、充電指令を車載制御装置3に送信する。
【0041】
充電計画修正部142は、通信部13を介して車載制御装置3から受信した、バッテリの現在のSOCに基づいて充電計画の修正を行う。バッテリの使用環境、使用態様によっては、充電計画部141で演算された第2充電閾値の到達予測時刻より早く、SOCが第2充電閾値に達する場合があるからである。具体的には、充電計画で定めた充電検討開始時刻t1(第2充電閾値の到達予測時刻)より早く、SOCが第2充電閾値に達した場合には、バッテリのSOCが実際に第2充電閾値に達した時刻(以下、第2充電閾値到達時刻又は現在の時刻とも称する)における充電待ち時間の予測値を演算するとともに、後述する予測誤差修正部143により演算される充電待ち時間の修正値を用いて、充電計画を修正する。修正された充電計画は、充電タイミング判定部145に出力される。
【0042】
なお、予測誤差修正部143は、本発明に必須の構成ではなく、必要に応じて省略してもよい。この場合には、充電計画修正部142は、第2充電閾値到達時刻における充電待ち時間の予測値を演算し、当該充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットCがあるときには、充電推奨時刻t4より早いタイミングで充電指令を出力できるように、充電計画を修正し、充電タイミング判定部145に出力してもよい。これにより、バッテリのSOC(充電残量)が当初の充電計画より早く第2充電閾値に達した場合であっても、充電待ち時間が長くなるのを抑制して充電を実行することができる。
【0043】
また、充電計画修正部142は、第2充電閾値到達時刻における充電待ち時間の予測値を演算するほか、充電検討終了時刻t5(第1充電閾値の到達予測時刻)を再度演算し、充電検討終了時刻t5に至るまでの、充電待ち時間の予測値を新たに演算して充電推奨時刻t4を更新してもよい。さらに、バッテリのSOCが実際に第2充電閾値に到達するより前の時刻においても、充電計画修正部142は、バッテリの現在のSOCに基づいて、充電検討開始時刻t1、充電検討終了時刻t5、充電検討開始時刻t1から充電検討終了時刻t5に至るまでの充電待ち時間の予測値、充電推奨時刻t4を再度演算し、充電計画を適時修正してもよい。これにより、バッテリの実際のSOCを反映した充電計画を用いて、充電を実行することができる。
【0044】
予測誤差修正部143は、バッテリの現在のSOCが第2充電閾値に達すると、充電待ち時間の修正処理を実行する。具体的には、SOCが第2充電閾値に到達した現在の時刻での充電待ち時間の予測値と、通信部13を介して充電器2から取得した、現在の時刻での充電スポットCの実際の充電待ち時間の測定値とを比較して、充電待ち時間の修正値を演算する。
【0045】
図5Aは、
図2に示すシーンで立案した充電計画とバッテリの実際のSOCの推移を示したグラフ(上図)と、充電待ち時間の修正値の演算処理を説明するための図(下図)である。上図の一点鎖線グラフは、充電計画の立案時に演算された経過時間に対するバッテリのSOC(充電残量)の予測推移を示し、実線グラフは、経過時間に対する充電待ち時間の予測値の推移を示している。これに対して、点線グラフは、経過時間に対するバッテリの実際のSOCの推移を示している。
図5Aに示すシーンは、バッテリの実際のSOCが、充電計画で設定された充電検討開始時刻t1より早い、時刻t0で第2充電閾値に達したシーンである。
【0046】
図5Aで示すシーンにおいて、バッテリの実際のSOCが第2充電閾値に達した、現在の時刻t0の充電待ち時間の予測値Cp0は12分である。しかしながら、充電器2により演算された、現在の時刻t0の充電スポットCにいる他車両が、実際に充電を完了するまでの残余充電時間は20分である。この現在充電している他車両が充電を完了するまでの残余充電時間20分を、充電待ち時間の測定値Cm0とする。ここで、現在の時刻t0に車両Vが充電スポットCへ向かったとすると、実際の充電待ち時間は、充電待ち時間の予測値Cp0の12分より長くなる可能性が高い。現在充電している他車両が充電を完了するまでは、自車両の充電をすることができないからである。そのため、予測誤差修正部143は、充電待ち時間の測定値Cm0の20分を、充電待ち時間の修正値とする。
【0047】
図5Bに示すシーンでは、現在の時刻t0の充電スポットCで、現在充電している他車両がいない点において異なる。第2充電閾値に達した現在の時刻t0の充電待ち時間の予測値Cp0は12分であるのに対して、現在の時刻t0の充電スポットCでは他車両が充電していないので、充電待ち時間の測定値Cm0は0分である。現在の時刻t0に車両Vが充電スポットCへ向かったとすると、実際の充電待ち時間は、充電待ち時間の予測値Cp0の12分より短くなる可能性が高い。そのため、予測誤差修正部143は、充電待ち時間の予測値Cp0の12分をそのまま用いて、充電待ち時間の修正値とする。なお、充電待ち時間の測定値Cm0が、充電待ち時間の予測値Cp0より小さい場合には、充電待ち時間の修正値を、2つの値の平均値としてもよい。
図5Bに示すシーンでいうと、充電待ち時間の測定値Cm0の0分と、充電待ち時間の予測値Cp0の12分との平均値6分を、充電待ち時間の修正値としてもよい。2つの値の平均値を用いることで、実際の充電待ち時間により近い値に基づいて充電計画を修正することができる。
【0048】
このように、予測誤差修正部143は、バッテリの実際のSOCが第2充電閾値に達した、現在の時刻t0における充電待ち時間の予測値<充電待ち時間の測定値となる場合には、充電待ち時間の測定値を、充電待ち時間の補正値とする。これに対して、充電待ち時間の測定値<充電待ち時間の予測値となる場合には、充電待ち時間の予測値をそのまま用いて、充電待ち時間の補正値とする。これにより、予測値から演算した充電待ち時間の誤差を補正することができる。
【0049】
予測誤差修正部143は、充電待ち時間の修正値を演算すると、充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さいか否かを判定する。充電待ち時間の上限値は、特に限定されないが、たとえば充電推奨時刻t4における充電待ち時間の予測値とする。これにより、充電計画で設定された充電推奨時刻t4の充電待ち時間より長い待ち時間となることを抑制することができる。
【0050】
図5Aに示すシーンでいうと、現在の時刻t0の充電待ち時間の修正値は20分となるのに対して、充電推奨時刻t4の充電待ち時間の予測値は15分である。一方、
図5Bに示すシーンでは、現在の時刻t0の充電待ち時間の修正値は12分となるのに対して、充電推奨時刻t4の充電待ち時間の予測値は15分である。このような場合には、予測誤差修正部143は、充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さいと判定する。
【0051】
充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さいと判定した場合には、予測誤差修正部143は、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が所定値より大きいか否かを判定する。現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が大きい場合には、現在の時刻t0に充電を実行したほうがよいからである。充電待ち時間の増加量の所定値は、特に限定されないが、たとえば10分などの任意の時間に設定してもよいし、現在の時刻t0の充電待ち時間の測定値と、充電推奨時刻t4の充電待ち時間の予測値とを比較した増加量に設定してもよい。これにより、現在の時刻t0以降の充電待ち時間が長くなる可能性を考慮して、充電を実行することができる。
【0052】
図5Bに示すシーンでいうと、現在の時刻t0の充電待ち時間の測定値Cm0の0分と、充電推奨時刻t4の充電待ち時間の予測値Cp4の15分とを比較した増加量15分を所定値とする。現在の時刻t0の充電待ち時間の修正値12分と、現在の時刻t0以降の、たとえば時刻t1の充電待ち時間の予測値Cp1の28分とを比較した増加量は16分となる。すなわち、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量16分が、所定値15分より大きい。このような場合には、予測誤差修正部143は、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が所定値より大きいと判定する。
【0053】
充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さく、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が所定値より大きい場合には、予測誤差修正部143は、充電推奨時刻t4より早いタイミングで充電指令を出力するため、演算結果を充電計画修正部142に送信する。これを受信した充電計画修正部142は、充電計画を修正し、充電タイミング判定部145に出力する。これにより、過去の充電スポットCの利用状況から演算した充電待ち時間の予測誤差を、現在の充電スポットCの利用状況に基づいて補正することができる。
【0054】
電欠防止判断部144は、車両Vが電欠状態とならないように、バッテリのSOCを監視する。具体的には、通信部13を介して車載制御装置3から受信した、バッテリの現在のSOCが第1充電閾値に達した場合には、第1充電閾値に達した旨の信号とともに、充電指令を充電タイミング判定部145に送信する。SOCが第1充電閾値に達した場合には、上述した充電待ち時間の予測値にかかわらず、充電を実行したほうがよいからである。これにより、車両Vが電欠状態となるのを抑制することができる。
【0055】
充電タイミング判定部145は、充電計画部141から受信した充電計画、充電計画修正部142から受信した修正された充電計画及び電欠防止判断部144から受信した充電指令に基づいて、通信部13を介して車載制御装置3に充電指令を送信する。これを受信した車載制御装置3は、制御部31からの指令信号により、車両Vを自律走行制御して、充電を実行する充電スポットCまで車両Vを走行させる。
【0056】
車載制御装置3は、充電タイミング判定部145から受信した充電指令に基づいて、車両Vのドライバーに充電行動について通知してもよい。
図6(A)及び(B)のそれぞれは、充電指令を車両Vの車載制御装置3に表示した表示画面の一例を示す図である。車載制御装置3が備える、表示部34としてのナビゲーション装置のディスプレイに表示する画像を示すものである。
【0057】
図6(A)に示す表示例は、充電計画において設定した充電推奨時刻t4に至った場合における表示画像の形態である。表示画像の形態は、特に限定されないが、たとえばバッテリのSOC(充電残量)とともに「充電スポットが混雑していないので充電しますか」などの充電を提案する文章と、「はい/いいえ」などの回答ボタンを表示する。これに対して、同図(B)に示す表示例は、充電推奨時刻t4より前にSOCが第1充電閾値に至った場合における表示画像の形態である。この場合には、充電待ち時間の予測値にかかわらず車両Vの充電を行うために、たとえばバッテリのSOC(充電残量)とともに「充電残量が僅かなので充電スポットに向かってください」などの充電を促す文章を表示する。このように、SOCが第2充電閾値から第1充電閾値に至るまでは、充電するか否かを選択できるようにし、SOCが第1充電閾値より小さい場合には、充電を強制するといった、バッテリのSOCに応じた表示態様とすることにより、車両Vのドライバーに適切な充電行動を促すことができる。
【0058】
次に、
図5A及び
図5Bに示すシーンを例に、充電制御装置1にて実行される充電制御の制御処理例について説明する。
図7は、充電制御装置1にて実行される充電制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8は、
図7に示すステップS7のサブルーチンを示す。
【0059】
以下に説明する充電制御処理は、たとえば、車両Vの主電源スイッチがオンとなった場合に、充電制御装置1により所定の時間間隔で実行される。また、以下においては、車両Vは、車載制御装置3の自律走行制御機能により、自律走行制御が実行されているものとする。
【0060】
図7のステップS1~ステップS5にて、充電計画部141は、バッテリの充電計画を立案する。まず、ステップS1にて、車両Vがいわゆる電欠状態となることを防ぐ所定のSOCを第1充電閾値として設定する。次に、第1充電閾値より大きい所定のSOCを第2充電閾値として設定し、ステップS2へ進む。第1充電閾値より大きい所定のSOCとは、たとえばSOC35%など、第1充電閾値となるまでに車両Vがある程度走行することができる値である。
【0061】
ステップS2にて、バッテリのSOCが第2充電閾値となる予測時刻を演算し、充電検討開始時刻t1に設定する。続くステップS3にて、バッテリのSOCが第2充電閾値となる予測時刻を演算し、充電検討終了時刻t5に設定する。
【0062】
ステップS4にて、充電検討開始時刻t1から充電検討終了時刻t5に至るまでの、充電スポットCにおける充電待ち時間の予測値を演算する。充電待ち時間の予測値は、充電スポットCの過去の利用状況から演算された充電待ち時間に基づいて算出する。
【0063】
続くステップS5にて、充電検討開始時刻t1から充電検討終了時刻t5に至るまでの間に、充電待ち時間の予測値が予め定めた所定値より小さくなる時刻を演算する。予め定めた所定値は、たとえば充電器2の1度の利用時間30分などである。充電計画部141は、演算結果に基づいて、充電待ち時間の予測値が最も小さい時刻t4を充電推奨時刻として設定する。
【0064】
ステップS6にて、充電計画修正部142は、バッテリの現在のSOCが第2充電閾値より小さいか否かを判定し、SOCが第2充電閾値より小さい場合には、ステップS7へ進む。これに対して、SOCが第2充電閾値より小さくなるまで、所定時間、ステップS6を繰り返す。ステップS7では、後述する充電待ち時間の修正処理を実行する。
【0065】
ステップS7にて充電待ち時間の修正処理が実行されると、続くステップS8にて、予測誤差修正部143は、充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さいか否かを判定する。充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さいと判定された場合には、ステップS9へ進む。これに対して、充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さくないと判定された場合には、ステップS11に進む。充電待ち時間の上限値は、たとえば充電推奨時刻t4における充電待ち時間の予測値とする。
【0066】
ステップS8の判定の結果、充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さいと判定された場合には、ステップS9にて、第2充電閾値に到達した現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が所定値より大きいか否かを判定する。充電待ち時間の増加量の所定値は、たとえば現在の時刻t0の充電待ち時間の測定値と、充電推奨時刻t4の充電待ち時間の予測値とを比較した増加量に設定する。
【0067】
ステップS9の判定の結果、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が所定値より大きい場合には、現在の時刻t0のタイミングで充電を実行したほうが、充電待ち時間が長くなる可能性が低いので、ステップS10へ進み、充電指令を出力する。
【0068】
ステップS8の判定の結果、充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さくないと判定された場合には、ステップS11にて、バッテリの現在のSOCが第1充電閾値より小さいか否かを判定する。
【0069】
ステップS11の判定の結果、バッテリの現在のSOCが第1充電閾値より小さいと判定された場合には、車両Vの電欠状態を防止するため、ステップS10へ進み、充電指令を出力する。
【0070】
これに対して、ステップS9の判定の結果、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が所定値より大きくないと判定された場合及びステップS11の判定の結果、バッテリの現在のSOCが第1充電閾値より小さくないと判定された場合には、ステップS12にて充電推奨時刻t4であるか否かを判定する。充電推奨時刻t4であると判定された場合には、ステップS10へ進み、充電指令を出力する。これに対して、充電推奨時刻t4になるまで、所定時間、ステップS12を繰り返す。
【0071】
図7のステップS7では、充電待ち時間の修正処理、
図8に示す処理が実行される。まず、ステップS71にて、バッテリのSOCが実際に第2充電閾値に到達した、現在の時刻t0における充電待ち時間の予測値を演算し、ステップS72へ進む。
【0072】
ステップS72にて、予測誤差修正部143は、現在の時刻t0における充電待ち時間の測定値を取得する。充電待ち時間の測定値は、充電スポットCで現在充電している他車両が、充電を完了するまでの残余充電時間に基づいて演算する。
【0073】
続くステップS73にて、バッテリのSOCが第2充電閾値に到達した、現在の時刻t0での充電待ち時間の予測値と、現在の時刻t0での充電スポットCの実際の充電待ち時間の測定値とを比較して、充電待ち時間の修正値を演算する。予測誤差修正部143は、
図5Aに示すように、充電待ち時間の予測値<充電待ち時間の測定値となる場合には、充電待ち時間の測定値を、充電待ち時間の補正値とする。これに対して、
図5Bに示すように、充電待ち時間の測定値<充電待ち時間の予測値となる場合には、充電待ち時間の予測値を充電待ち時間の補正値として、ステップS8へ進む。
【0074】
以上の通り、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、走行駆動用バッテリの充電が必要となる第1充電閾値と、SOC(充電残量)が第1充電閾値より大きい第2充電閾値とを設定し、SOC(充電残量)を検出して第1充電閾値及び第2充電閾値と比較し、SOC(充電残量)が第2充電閾値より小さく第1充電閾値より大きい場合に、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットCがあるときには、充電を行う充電指示を出力する。これにより、走行駆動用バッテリの充電残量が所定の閾値以下である場合に、充電待ち時間が長くなるのを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、SOC(充電残量)が第2充電閾値より小さくなった場合に、充電スポットCにおける充電待ち時間の予測値を演算し、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットCがあるときには、充電指示を出力するので、バッテリのSOC(充電残量)が当初の充電計画より早く第2充電閾値に達した場合であっても、充電待ち時間が長くなるのを抑制して充電を実行することができる。
【0076】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、SOC(充電残量)が第1充電閾値より小さい場合には、充電待ち時間にかかわらず、充電指示を出力するので、車両Vが電欠状態となるのを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、SOC(充電残量)が第2充電閾値より小さく第1充電閾値より大きい場合における充電指示の出力表示と、SOC(充電残量)が第1充電閾値より小さい場合における充電指示の出力表示と、が異なる表示態様である。SOC(充電残量)が第2充電閾値から第1充電閾値に至るまでは、充電するか否かを選択できるようにし、SOC(充電残量)が第1充電閾値より小さい場合には、充電を強制するといった、バッテリのSOC(充電残量)に応じた表示態様とすることにより、車両Vのドライバーに適切な充電行動を促すことができる。
【0078】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、充電指示を、車両Vの車載制御装置3に出力するので、自律走行により車両Vを円滑に充電させることができる。
【0079】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい充電スポットCが複数ある場合には、車両Vが、それぞれの充電スポットCに到着するまでに必要となる走行時間を演算し、充電スポットCにおける充電待ち時間と、充電スポットに到着するまでに必要となる走行時間との和からなる充電所要時間を算出し、充電所要時間が最小となる充電スポットCを探索し、充電指示を出力する。これにより、充電待ち時間の予測値が所定値より小さい複数の充電スポットCの中から、充電スポットCに到達するまでの時間を含めた充電所要時間が最小となる充電スポットCを特定することができるので、充電待ち時間が長くなるのをさらに抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、SOC(充電残量)が第2充電閾値となった現在の時刻t0における充電待ち時間の予測値と、充電スポットCにおいて現在充電している他車両が充電を完了するまでの時間から算出した現在の時刻t0における充電待ち時間の測定値とから、充電待ち時間の修正値を演算し、充電待ち時間の修正値が充電待ち時間の上限値より小さく、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量が所定値より大きい場合には、充電指示を出力する。これにより、過去の充電スポットCの利用状況から演算した充電待ち時間の予測誤差を、現在の充電スポットCの利用状況に基づいて補正することができる。
【0081】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、現在の時刻t0における充電待ち時間の測定値が、現在の時刻t0における充電待ち時間の予測値より大きい場合には、充電待ち時間の修正値を、充電待ち時間の測定値とするので、予測値から演算した充電待ち時間の誤差を補正することができる。
【0082】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、充電待ち時間の上限値は、SOC(充電残量)が第2充電閾値となる予測時刻t1から第1充電閾値となる予測時刻t5までにおける充電待ち時間の予測値の最小値に基づいて演算するので、充電計画で設定された充電推奨時刻t4の充電待ち時間より長い待ち時間となることを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、現在の時刻t0以降の充電待ち時間の増加量は、現在の時刻t0における充電待ち時間の測定値と、SOC(充電残量)が第2充電閾値となる予測時刻t1から第1充電閾値となる予測時刻t5までにおける充電待ち時間の予測値の最小値とを比較した増加量に基づいて演算する。これにより、現在の時刻t0以降の充電待ち時間が長くなる可能性を考慮して、充電を実行することができる。
【0084】
また、本実施形態の充電制御方法及び充電制御装置1によれば、充電スポットCにおける充電待ち時間の予測値は、充電スポットCにおける過去の利用状況に基づいて演算するので、実測値に基づいた適切な充電待ち時間の予測値を演算することができる。
【0085】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0086】
S…充電制御システム
1…充電制御装置
11…車両データベース
12…充電スポットデータベース
13…通信部
14…制御部
2…充電器
21…制御部
22…センサ
23…通信部
3…車載制御装置
31…制御部
32…充電容量検出部
33…通信部
34…表示部
V…車両
C…充電スポット
NW…電気通信回線網