(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159733
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】熱管理方法及び熱管理装置
(51)【国際特許分類】
F01P 3/18 20060101AFI20221011BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20221011BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F01P3/18 G
F01P3/20 F
F01P3/20 L
B60K11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064116
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森本 達也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AC12
(57)【要約】
【課題】発熱体の連続定格出力を増加させることが可能な熱管理方法及び熱管理装置提供する。
【解決手段】熱管理装置は、第1発熱体1と、第1発熱体1を冷却する第1冷媒と、第1冷媒を循環させる第1ポンプ2と、第1冷媒を放熱させる第1放熱器(第1発熱体用ラジエータ3)とからなる第1冷却回路4と、第2発熱体5と、第2発熱体5を冷却する第2冷媒と、第2冷媒を循環させる第2ポンプ6と、第2冷媒を放熱させる第2放熱器(第2発熱体用ラジエータ7)とからなる第2冷却回路8と、第3発熱体9と、第3発熱体9を冷却する第3冷媒と、第1冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第1熱交換器13と、第2冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第2熱交換器14とからなる第3冷却回路12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発熱体と、前記第1発熱体を冷却する第1冷媒と、前記第1冷媒を循環させる第1ポンプと、前記第1冷媒を放熱させる第1放熱器とからなる第1冷却回路と、第2発熱体と、前記第2発熱体を冷却する第2冷媒と、前記第2冷媒を循環させる第2ポンプと、前記第2冷媒を放熱させる第2放熱器とからなる第2冷却回路と、第3発熱体と、前記第3発熱体を冷却する第3冷媒と、前記第1冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第1熱交換器と、前記第2冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第2熱交換器とからなる第3冷却回路と、を備える熱管理装置の熱管理方法であって、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器に流れる冷媒の流路を切り換える
ことを特徴とする熱管理方法。
【請求項2】
前記第1冷却回路は、前記第1冷媒が前記第1熱交換器に流れることなく回路を循環するための第1バイパス冷却路と、前記第1冷媒を前記第1熱交換器に流すか否かを切り換える第1流路切換え弁とをさらに備え、
前記第2冷却回路は、前記第2冷媒が前記第2熱交換器に流れることなく回路を循環するための第2バイパス冷却路と、前記第2冷媒を前記第2熱交換器に流すか否かを切り換える第2流路切換え弁とをさらに備え、
前記第1流路切換え弁及び前記第2流路切換え弁を切り換えることにより、前記第1熱交換器に流れる前記第1冷媒の流路を切り換え、前記第2熱交換器に流れる前記第2冷媒の流路を切り換える
ことを特徴とする請求項1に記載の熱管理方法。
【請求項3】
前記第3冷却回路は、前記第3冷媒が前記第1熱交換器に流れることなく回路を循環するための第1バイパス冷却路と、前記第3冷媒を前記第1熱交換器に流すか否かを切り換える第1流路切換え弁と、前記第3冷媒が前記第2熱交換器に流れることなく回路を循環するための第2バイパス冷却路と、前記第3冷媒を前記第2熱交換器に流すか否かを切り換える第2流路切換え弁と、をさらに備え、
前記第1流路切換え弁及び前記第2流路切換え弁を切り換えることにより、前記第1熱交換器に流れる前記第3冷媒の流路を切り換え、前記第2熱交換器に流れる前記第3冷媒の流路を切り換える
ことを特徴とする請求項1に記載の熱管理方法。
【請求項4】
前記第3発熱体は、前記第1発熱体よりも発熱密度が高い
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の熱管理方法。
【請求項5】
前記第2発熱体はエンジンであり、
前記第2放熱器は前記エンジンを冷却するためのラジエータである
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の熱管理方法。
【請求項6】
少なくとも前記第1発熱体の出力、前記第2発熱体の出力、前記第3発熱体の出力、前記第1発熱体の温度、前記第2発熱体の温度、前記第3発熱体の温度、前記第1冷媒の温度、及び前記第2冷媒の温度のうち、いずれか1つの要素を検出し、
前記1つの要素と、予め設定された前記1つの要素の閾値とに基づいて前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器に流れる冷媒の流路を切り換える
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の熱管理方法。
【請求項7】
前記第2熱交換器は前記第2発熱体の冷却水入口側と前記第2放熱器の冷却水出口側との間に接続される
ことを特徴とする請求項2に記載の熱管理方法。
【請求項8】
前記第1熱交換器は前記第1発熱体の冷却水入口側と前記第1放熱器の冷却水出口側との間に接続される
ことを特徴とする請求項7に記載の熱管理方法。
【請求項9】
第1発熱体と、前記第1発熱体を冷却する第1冷媒と、前記第1冷媒を循環させる第1ポンプと、前記第1冷媒を放熱させる第1放熱器とからなる第1冷却回路と、
第2発熱体と、前記第2発熱体を冷却する第2冷媒と、前記第2冷媒を循環させる第2ポンプと、前記第2冷媒を放熱させる第2放熱器とからなる第2冷却回路と、
第3発熱体と、前記第3発熱体を冷却する第3冷媒と、前記第1冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第1熱交換器と、前記第2冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第2熱交換器とからなる第3冷却回路と、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器に流れる冷媒の流路を切り換える流路切換弁と、
を備える
ことを特徴とする熱管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱管理方法及び熱管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の冷却システムの間で熱交換を行う発明が知られている(特許文献1)。特許文献1には、第1熱媒体を循環させて複数の機器を冷却する第1冷却システムと、第2熱媒体を循環させてエンジンを冷却する第2冷却システムとの間に熱媒体熱交換器を設け、熱交換を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷媒間の熱交換器としてヒートポンプを用いる場合には第1冷媒の温度と第2冷媒との温度差が大きくなると、ヒートポンプのエネルギー効率が悪化し発熱体の連続定格出力が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、発熱体の連続定格出力を増加させることが可能な熱管理方法及び熱管理装置提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る熱管理方法は、第1発熱体と、第1発熱体を冷却する第1冷媒と、第1冷媒を放熱させる第1放熱器とからなる第1冷却回路と、第2発熱体と、第2発熱体を冷却する第2冷媒と、第2冷媒を放熱させる第2放熱器とからなる第2冷却回路と、第3発熱体と、第3発熱体を冷却する第3冷媒と、第1冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第1熱交換器と、第2冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第2熱交換器とからなる第3冷却回路と、を備える熱管理装置の熱管理方法であって、第1熱交換器及び第2熱交換器に流れる冷媒の流路を切り換える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発熱体の連続定格出力を増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱管理装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態に係る熱管理装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16の動作例を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16の動作例を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態に係る熱管理装置の概略構成図である。
【
図6】
図6は、第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16の動作例を説明する図である。
【
図7】
図7は、第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16の動作例を説明する図である。
【
図8】
図8は、第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16のオンオフ切換制御方法の一例について説明する図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施形態に係る熱管理装置の概略構成図である。
【
図10】
図10は、本発明の第5実施形態に係る熱管理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照して本発明の第1実施形態に係る熱管理装置について説明する。
図1に示すように、熱管理装置は3つの冷却回路、すなわち、第1冷却回路4、第2冷却回路8、第3冷却回路12から構成される。本実施形態では熱管理装置は車両に搭載される装置として説明するが、これに限定されない。例えば熱管理装置はバイクに搭載されてもよい。
【0011】
第1冷却回路4は第1冷媒が流れる冷却路、第1ポンプ2、第1発熱体1、第1発熱体用ラジエータ3から構成される。第1発熱体1は特に限定されないが例えばモータ、インバータ、バッテリー、蓄熱材などである。第1冷却回路4において、第1発熱体1から第1冷媒へ熱が移動する。第1冷媒は第1ポンプ2によって循環する。第1冷媒が第1発熱体用ラジエータ3を通過する際、熱交換が行われ、第1冷媒が有する熱が空気中に放熱され第1冷媒は冷却される。
【0012】
第2冷却回路8は第2冷媒が流れる冷却路、第2ポンプ6、第2発熱体5、第2発熱体用ラジエータ7から構成される。第2発熱体5は特に限定されないが例えばエンジンである。第2冷却回路8において、第2発熱体5から第2冷媒へ熱が移動する。第2冷媒は第2ポンプ6によって循環する。第2冷媒が第2発熱体用ラジエータ7を通過する際、熱交換が行われ、第2冷媒が有する熱が空気中に放熱され第2冷媒は冷却される。
【0013】
第3冷却回路12は第3冷媒が流れる冷却路、圧縮機11、膨張弁10、第3発熱体9から構成される。第3冷媒は冷凍機冷媒であり、圧縮機11により高圧高温の冷媒となり、膨張弁10により低圧低温の冷媒となる。第3冷却回路12は冷凍サイクルを有する。なお第1冷媒及び第2冷媒は特に限定されず、周知の冷媒が用いられればよい。第3発熱体9は特に限定されないが例えば第1発熱体1と同様にモータ、インバータ、バッテリー、蓄熱材などである。ただし、第3発熱体は第1発熱体よりも発熱密度が高い。第3発熱体9は膨張弁10の冷却水出口側と圧縮機11の冷却水入口側との間に接続される。この位置に第3発熱体9が接続されることにより第3発熱体9には低圧低温の第3冷媒が供給される。低温かつ相変化を伴う沸騰冷却により第3発熱体9の発熱密度が高くても第3発熱体9の高温化が防止され、連続定格出力を増加させることが可能となる。
【0014】
また、第3冷却回路12は、圧縮機11の冷却水出口側と膨張弁10の冷却水入口側との間の冷却路において、第1熱交換器13及び第2熱交換器14を備える。より詳しくは、第1熱交換器13は圧縮機11の冷却水出口側と膨張弁10の冷却水入口側との間の冷却路と、第1冷却回路4とを接続するように設けられる。第2熱交換器14は、圧縮機11の冷却水出口側と膨張弁10の冷却水入口側との間の冷却路と、第2冷却回路8とを接続するように設けられる。
【0015】
次に第1熱交換器13及び第2熱交換器14の動作の一例を説明する。
図1に示すように、第1熱交換器13には第1冷媒及び第3冷媒が流れる。第1熱交換器13に流れる第1冷媒の温度よりも第3冷媒の温度が高くなると第3冷媒から第1冷媒へ熱が移動する。
図1に示すように、第2熱交換器14には第2冷媒及び第3冷媒が流れる。第2熱交換器14に流れる第2冷媒の温度よりも第3冷媒の温度が高くなると第3冷媒から第2冷媒へ熱が移動する。第3冷媒から第1冷媒へ移動した熱は第1発熱体用ラジエータ3によって空気中に放熱される。第3冷媒から第2冷媒へ移動した熱は第2発熱体用ラジエータ7によって空気中に放熱される。
【0016】
このように第1熱交換器13及び第2熱交換器14を備えることにより、第3冷媒の熱を第1冷媒及び第2冷媒に移動させることが可能となる。これにより第3発熱体9の連続定格出力を増加させることが可能となる。また第1発熱体1、第2発熱体5、及び第3発熱体9のいずれの発熱体の排熱も空気中へ放熱可能となり、高い冷却性能の維持が可能となる。
【0017】
第3発熱体9は膨張弁10の冷却水出口側と圧縮機11の冷却水入口側との間に接続される。第3発熱体9に膨張後の低圧低温の第3冷媒を供給することで低温かつ冷凍機冷媒の沸騰冷却現象を利用した高熱伝達率冷却、すなわち低熱抵抗の冷却を行うことができる。第3発熱体9から吸熱した分だけ熱量を持つ低圧低温の第3冷媒は圧縮機11により高圧高温の第3冷媒となり、第1熱交換器13、第2熱交換器14を通過する。この際、第1熱交換器13には第1冷媒が通過しているので第3冷媒よりも第1冷媒の方が低温である場合第3冷媒から第1冷媒へと熱が移動し、移動した熱は第1発熱体用ラジエータ3により放熱される。また、第2熱交換器14には第2冷媒が通過しているので第3冷媒よりも第2冷媒の方が低温である場合第3冷媒から第2冷媒へと熱が移動し、移動した熱は第2発熱体用ラジエータ7により放熱される。これにより低温かつ低熱抵抗の冷却による発熱体の連続定格出力向上とラジエータ枚数を増やすことなく車両の熱収支成立を両立することができる。
【0018】
(第2実施形態)
次に
図2を参照して本発明の第2実施形態に係る熱管理装置について説明する。第2実施形態が第1実施形態と相違する点は、熱管理装置が第1流路切換え弁15、第2流路切換え弁16、第1バイパス冷却路17、及び第2バイパス冷却路18を備えることである。より詳しくは、第1流路切換え弁15及び第1バイパス冷却路17は第1冷却回路4に設けられる。第2流路切換え弁16及び第2バイパス冷却路18は、第2冷却回路8に設けられる。第1実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。
【0019】
第1流路切換え弁15の機能は、第1熱交換器13に第1冷媒を流すか流さないかを切り換えるものである。第1流路切換え弁15により第3冷媒から第1冷媒への熱移動の有無を制御することが可能となる。第2流路切換え弁16の機能は、第2熱交換器14に第2冷媒を流すか流さないかを切り換えるものである。第2流路切換え弁16により第3冷媒から第2冷媒への熱移動の有無を制御することが可能となる。これにより第3冷媒の熱を第1発熱体用ラジエータ3から放熱するか第2発熱体用ラジエータ7から放熱するかを状況に応じて選択できるため、車両の熱収支の制御を容易に行うことができる。
【0020】
次に
図3~4を参照して第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16のオンオフ時の動作例について説明する。
図3において第1流路切換え弁15はオフ状態であり、第2流路切換え弁16はオン状態である。
図4において第1流路切換え弁15はオン状態であり、第2流路切換え弁16はオフ状態である。
【0021】
図3に示す状態において、第1冷媒は第1熱交換器13を通過するが、第1バイパス冷却路17を通過しない。一方、
図4に示す状態において、第1冷媒は第1熱交換器13を通過せず、第1バイパス冷却路17を通過する。このように第1流路切換え弁15のオンオフを切り換えることにより、第1熱交換器13における熱移動の有無を切り換えることが可能となり、かつ第1発熱体用ラジエータ3による放熱を常に行うことが可能となる。
【0022】
図3に示す状態において、第2冷媒は第2熱交換器14を通過せず、第2バイパス冷却路18を通過する。一方、
図4に示す状態において、第2冷媒は第2熱交換器14を通過するが、第2バイパス冷却路18を通過しない。このように第2流路切換え弁16のオンオフを切り換えることにより、第2熱交換器14における熱移動の有無を切り換えることが可能となり、かつ第2発熱体用ラジエータ7による放熱を常に行うことが可能となる。
【0023】
ここで第1発熱体1、第2発熱体5、第3発熱体9のそれぞれの発熱量が低い場合を考える。なお、第1発熱体1、第2発熱体5、第3発熱体9のそれぞれの発熱量が低いモードを以下では低負荷モードと呼ぶ場合がある。低負荷モードでは
図3に示すように第3発熱体9の排熱を第2冷却回路8よりも温度が低い第1冷却回路4に移動させて放熱することで第3冷却回路12内の高圧高温側と低圧低温側との間の温度差を小さくできるため圧縮機11の動力を小さくでき高効率でヒートポンプを運転できる。なお第3冷却回路12内の高圧高温側と低圧低温側との間の温度差を小さくするとは、圧縮機11で第3冷媒を高温高圧にする際の、温度及び圧力をどこまで上昇させるかを示す指標である上限値を小さくすることを意味する。
【0024】
低負荷モード以外のモードとして、第1発熱体1、第2発熱体5、第3発熱体9のそれぞれの発熱量が多い場合を考える。なお、第1発熱体1、第2発熱体5、第3発熱体9のそれぞれの発熱量が多いモードを以下では高負荷モードと呼ぶ場合がある。第1発熱体用ラジエータ3は第2発熱体用ラジエータ7と比較して放熱能力が小さく、第1発熱体1の耐熱温度は第2発熱体5の耐熱温度と比較して低いものとする。高負荷モードにおいて
図3のオンオフ状態に切り換えた場合、第1冷媒温度が上昇するため、発熱量を増やす、すなわち連続定格出力を増加させることは難しい。そこで、高負荷モードでは
図4のオンオフ状態に切り換えることにより、第3発熱体9の排熱を第2冷却回路8に移動させて放熱することにより連続定格出力を増加させることが可能となる。低負荷モードではヒートポンプを高効率で運転でき、高負荷モードでは連続定格出力を増加させることが可能となる。
【0025】
第3発熱体9は、第1発熱体1よりも発熱密度が高い。発熱密度が第1発熱体1よりも高い第3発熱体を低温かつ低熱抵抗の冷却が可能な第3冷却回路12に設置することにより連続定格出力を増加させることが可能となる。
【0026】
第2発熱体5の一例はエンジンであり、第2発熱体用ラジエータ7(第2放熱器)の一例はエンジンを冷却するためのラジエータである。このように構成することによりエンジンを含むハイブリッド車にも適用可能となり、多様な駆動方式に適用できる。また、エンジンは耐熱温度が高いため、第2冷却回路8側に第3発熱体9の排熱を移す方がラジエータを効果的に使用できる。
【0027】
(第3実施形態)
次に
図5を参照して本発明の第3実施形態に係る熱管理装置について説明する。上述の第2実施形態では、第1流路切換え弁15及び第1バイパス冷却路17は第1冷却回路4に設けられ、第2流路切換え弁16及び第2バイパス冷却路18は第2冷却回路8に設けられる。これに対して第3実施形態では、第1流路切換え弁15、第2流路切換え弁16、第1バイパス冷却路17、及び第2バイパス冷却路18は、第3冷却回路12に設けられる。
【0028】
第3実施形態における第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16のオンオフ時の動作例は
図6~7に示される。
図6は低負荷モードを示し、第3冷媒は第1熱交換器13を通過する(第1バイパス冷却路17を通過しない)が、第2熱交換器14を通過しない(第2バイパス冷却路18を通過する)。
図7は高負荷モードを示し、第3冷媒は第1熱交換器13を通過しない(第1バイパス冷却路17を通過する)が、第2熱交換器14を通過する(第2バイパス冷却路18を通過しない)。
【0029】
第1流路切換え弁15、第2流路切換え弁16、第1バイパス冷却路17、及び第2バイパス冷却路18を第3冷却回路12に設けた場合であっても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0030】
次に
図8を参照して第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16のオンオフ切換制御方法の一例について説明する。熱管理装置には図示しないセンサが設けられており、それらのセンサが第1発熱体1、第2発熱体5、第3発熱体9のそれぞれの出力、温度を検出する。なおセンサによって検出された温度を監視温度と呼ぶ場合がある。またセンサは第1冷媒及び第2冷媒の温度も検出する。第1発熱体1、第2発熱体5、第3発熱体9のそれぞれの出力、温度、及び、第1冷媒及び第2冷媒の温度には予め閾値が設定されている。このような閾値は実験、シミュレーションにより求めることができる。
図8に示すように、検出された出力などの単位時間あたりの変化量(傾き)が予め設定された閾値を超えた場合に第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16のオンオフが切り換えられる。
図8に示す例では、時刻T1において第2発熱体5の出力の変化量が閾値を超えたため、第1流路切換え弁15がオン状態からオフ状態に切り換えられ、第2流路切換え弁16がオフ状態からオン状態に切り換えられる。つまり、低負荷モードから高負荷モードに切り換えられる。
【0031】
なお、オンオフ切り換えに関し、第1発熱体1の出力、第2発熱体5の出力、第3発熱体9の出力、第1発熱体1の監視温度、第2発熱体5の監視温度、第3発熱体9の監視温度、第1冷媒の温度、第2冷媒の温度、のうち、少なくとも一つの要素の変化量が閾値を超えた場合にオンオフが切り換えられる。もちろんすべての要素の変化量が閾値を超えた場合にオンオフが切り換えられてもよく、任意の組み合わせに係る要素の変化量が閾値を超えた場合にオンオフが切り換えられてもよい。
【0032】
(第4実施形態)
次に
図9を参照して本発明の第4実施形態に係る熱管理装置について説明する。第4実施形態が第2実施形態と相違する点は、第2冷却回路8を循環する第2冷媒の方向が逆であることである。
図9に示すように第4実施形態では、第2熱交換器14は第2発熱体用ラジエータ7の冷却水出口側と第2発熱体5の冷却水入口側との間に接続される。第3冷媒から第2冷媒へ熱が移動する際、第2冷媒の温度が低いほど第3冷媒の温度を低くできる。すなわち、第2発熱体5の排熱により温度が上昇した後の第2冷媒へ第3冷媒から熱を移動させるよりも、第2発熱体5の排熱により温度が上昇する前の第2冷媒へ第3冷媒から熱を移動させる方が第3冷媒の温度を低くできるため、高効率でヒートポンプを運転できる。
【0033】
(第5実施形態)
次に
図10を参照して本発明の第5実施形態に係る熱管理装置について説明する。第5実施形態が第4実施形態と相違する点は、第1冷却回路4を循環する第2冷媒の方向が逆であることである。
図10に示すように第5実施形態では、第1熱交換器13は第1発熱体用ラジエータ3の冷却水出口側と第1発熱体1の冷却水入口側との間に接続される。第3冷媒から第1冷媒へ熱が移動する際、第1冷媒の温度が低いほど第3冷媒の温度を低くできる。すなわち、第1発熱体1の排熱により温度が上昇した後の第1冷媒へ第3冷媒から熱を移動させるよりも、第1発熱体1の排熱により温度が上昇する前の第1冷媒へ第3冷媒から熱を移動させる方が第3冷媒の温度を低くできるため、高効率でヒートポンプを運転できる。
【0034】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0035】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0036】
第1発熱体1及び第3発熱体9は第1冷却回路4及び第3冷却回路12において複数設置されてもよい。
【0037】
上述した本実施形態に係る発明は、以下のように表現されてもよい。
【0038】
第1発熱体1と、第1発熱体1を冷却する第1冷媒と、第1冷媒を循環させる第1ポンプ2と、第1冷媒を放熱させる第1放熱器(第1発熱体用ラジエータ3)とからなる第1冷却回路4と、第2発熱体5と、第2発熱体5を冷却する第2冷媒と、第2冷媒を循環させる第2ポンプ6と、第2冷媒を放熱させる第2放熱器(第2発熱体用ラジエータ7)とからなる第2冷却回路8と、第3発熱体9と、第3発熱体9を冷却する第3冷媒と、第1冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第1熱交換器13と、第2冷媒と第3冷媒とを熱交換させる第2熱交換器14とからなる第3冷却回路12と、を備える熱管理装置の熱管理方法であって、第1熱交換器13及び第2熱交換器14に流れる冷媒の流路を切り換える。
【0039】
第1冷却回路4は、第1冷媒が第1熱交換器13に流れることなく回路を循環するための第1バイパス冷却路17と、第1冷媒を第1熱交換器13に流すか否かを切り換える第1流路切換え弁15とをさらに備え、第2冷却回路8は、第2冷媒が第2熱交換器14に流れることなく回路を循環するための第2バイパス冷却路と、第2冷媒を第2熱交換器14に流すか否かを切り換える第2流路切換え弁16とをさらに備え、第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16を切り換えることにより、第1熱交換器13に流れる第1冷媒の流路を切り換え、第2熱交換器14に流れる第2冷媒の流路を切り換える。
【0040】
第3冷却回路12は、第3冷媒が第1熱交換器13に流れることなく回路を循環するための第1バイパス冷却路17と、第3冷媒を第1熱交換器13に流すか否かを切り換える第1流路切換え弁15と、第3冷媒が第2熱交換器14に流れることなく回路を循環するための第2バイパス冷却路と、第3冷媒を第2熱交換器14に流すか否かを切り換える第2流路切換え弁16と、をさらに備え、第1流路切換え弁15及び第2流路切換え弁16を切り換えることにより、第1熱交換器13に流れる第3冷媒の流路を切り換え、第2熱交換器14に流れる第3冷媒の流路を切り換える。
【0041】
第3発熱体9は、第1発熱体1よりも発熱密度が高い。
【0042】
第2発熱体5はエンジンであり、第2放熱器はエンジンを冷却するためのラジエータである。
【0043】
少なくとも第1発熱体1の出力、第2発熱体5の出力、第3発熱体9の出力、第1発熱体1の温度、第2発熱体5の温度、第3発熱体9の温度、第1冷媒の温度、及び第2冷媒の温度のうち、いずれか1つの要素を検出し、1つの要素と、予め設定された1つの要素の閾値とに基づいて第1熱交換器13及び第2熱交換器14に流れる冷媒の流路を切り換える。
【0044】
第2熱交換器14は第2発熱体5の冷却水入口側と第2放熱器の冷却水出口側との間に接続される。
【0045】
第1熱交換器13は第1発熱体1の冷却水入口側と第1放熱器の冷却水出口側との間に接続される。
【符号の説明】
【0046】
1 第1発熱体
2 第1ポンプ
3 第1発熱体用ラジエータ
4 第1冷却回路
5 第2発熱体
6 第2ポンプ
7 第2発熱体用ラジエータ
8 第2冷却回路
9 第3発熱体
10 膨張弁
11 圧縮機
12 第3冷却回路
13 第1熱交換器
14 第2熱交換器
15 第1流路切換え弁
16 第2流路切換え弁
17 第1バイパス冷却路
18 第2バイパス冷却路