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特開2022-159741レンズ装置及びレンズ用画像変換リング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159741
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】レンズ装置及びレンズ用画像変換リング
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/20 20060101AFI20221011BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20221011BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20221011BHJP
【FI】
G02B13/20
G03B17/14
G02B7/02 H
G02B7/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064124
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大久保 紀
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕章
【テーマコード(参考)】
2H044
2H087
2H101
【Fターム(参考)】
2H044AE10
2H044AG01
2H087KA02
2H087KA03
2H087LA01
2H087NA01
2H087PA03
2H087PA20
2H087PB06
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA14
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA46
2H087RA32
2H087RA37
2H087RA44
2H101EE01
(57)【要約】
【課題】 レンズ用画像変換リングの着脱により、通常撮影レンズ機能とソフトフォーカスレンズ機能を切換可能にして撮像レンズの多様性、更には付加価値をより高めるとともに、大型化及び複雑化する弊害を回避し、撮像レンズの小型コンパクト化及び低コスト化を実現する。
【解決手段】 所定の収差を発生させてソフトフォーカス効果を生じさせる撮像レンズMoと、この撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3,及びこのレンズ着脱部3に一体に備え、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4を有するレンズ用画像変換リング1を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズを配した撮像レンズ,及びこの撮像レンズにおけるレンズ鏡筒の前端部に着脱するレンズ用画像変換リングを備えるレンズ装置であって、所定の収差を発生させてソフトフォーカス効果を生じさせる撮像レンズと、この撮像レンズにおけるレンズ鏡筒の前端部に着脱するレンズ着脱部,及びこのレンズ着脱部に一体に備え、前記レンズ鏡筒の前端部への装着時に、前記撮像レンズに入射する入光量を制限し、かつ前記所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部を有するレンズ用画像変換リングを備えてなることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記複数のレンズは、物体側から像側へ、両凸レンズと両凹レンズを接合した第一接合レンズ、正メニスカスレンズと両凹レンズを接合した第二接合レンズ、負メニスカスレンズと両凸レンズを接合した第三接合レンズを備えることを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第一接合レンズと前記第二接合レンズ間に、内部開口絞りを配することを特徴とする請求項2記載のレンズ装置。
【請求項4】
複数のレンズを配した撮像レンズにおけるレンズ鏡筒の前端部に着脱するレンズ用画像変換リングであって、所定の収差を発生させてソフトフォーカス効果を生じさせる撮像レンズにおけるレンズ鏡筒の前端部に着脱するレンズ着脱部と、このレンズ着脱部に一体に備え、前記レンズ鏡筒の前端部への装着時に、前記撮像レンズに入射する入光量を制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部とを備えることを特徴とするレンズ用画像変換リング。
【請求項5】
前記レンズ着脱部は、前記レンズ鏡筒の前端部におけるアクセサリ装着部の内周面に設けた凹ネジ部に螺着する凸ネジ部により形成することを特徴とする請求項4記載のレンズ用画像変換リング。
【請求項6】
前記外部絞りリング部は、制限する入光量を異ならせた複数の外部絞りリング部から選択して前記レンズ着脱部に組付可能に構成することを特徴とする請求項4又は5記載のレンズ用画像変換リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ等に用いて好適なレンズ装置及びレンズ用画像変換リングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャープな描写を行う通常撮像レンズとソフトフォーカス描写が可能なソフトフォーカスレンズは知られており、この種のソフトフォーカスレンズとしては、既に本出願人が提案した特許文献1に記載されるソフトフォーカスレンズが知られている。このソフトフォーカスレンズは、通常撮像レンズとソフトフォーカスレンズの光学要素を共通化して、設計及び製造等に伴うコストの大幅な削減を図るとともに、レンズ性能を確保し、かつ高品位ソフトフォーカス描写が得られるようにしたことを目的としたものであり、具体的には、正屈折力の第一レンズ群及び正屈折力の第二レンズ群を前後に配した通常撮影レンズの光学系に対して、一つのソフトフォーカス形成レンズを追加又は置換することにより、光学系全体の球面収差が、開放F値の三倍以上の絞り領域で所定の収差以下となり、かつ開放で所定の収差以上となるように設定したものである。
【0003】
また、ソフトフォーカスレンズのソフトフォーカス効果を可変、即ち、収差を可変できるようにしたいわゆるバリアブルソフトフォーカスレンズも知られており、この種のレンズとしては、特許文献2に記載される収差可変光学系が知られている。この収差可変光学系は、十分大きな画角を有し、シャープな画質状態を挟んで球面収差を負の値から正の値まで連続的に変化させることができる収差可変光学系の提供を目的としたものであり、具体的には、正屈折力の第1部分レンズ群と、負屈折力の第2部分レンズ群と、正屈折力の第3部分レンズ群とを有するマスターレンズ群を備えるとともに、正レンズ成分と負レンズ成分とを有するコンバータレンズ群を備え、正レンズ成分と負レンズ成分との軸上空気間隔を変化させることにより主に球面収差を変化させることができるようにし、Fmを無限遠合焦状態におけるマスターレンズ群の焦点距離,Fcを無限遠合焦状態でかつ球面収差の発生量が最も少ないレンズ位置状態におけるコンバータレンズ群の焦点距離としたとき、-1<Fm/Fc<0になるように設定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-301883号公報
【特許文献2】特開平10-68879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献2に記載のレンズをはじめ、従来におけるバリアブルソフトフォーカスレンズは、次のような難点があった。
【0006】
即ち、収差の可変は、レンズ鏡筒の内部における特定のレンズ又はレンズ群を移動させて行うため、レンズ群等を移動させる構造が煩雑になる。特に、レンズ又はレンズ群を移動させてフォーカス調整を行うフォーカス調整機構などの他の調整機構に干渉する虞れがあり、光学系の複雑化及び大型化、更には精度の低下を招きやすい。
【0007】
したがって、スペース的にある程度の余裕があるレンズ鏡筒の場合には可能であるとしても、小型コンパクト化を目的とした撮像レンズに適用する場合、小型コンパクト化の大きな支障となり、目標とする小型コンパクト化を実現するには限界がある。しかも、ある程度の小型コンパクト化を実現したとしてもコストアップが無視できないとともに、レンズ系の光学性能に悪影響を及ぼす虞れがあるなどの難点があった。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレンズ装置及びレンズ用画像変換リングの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレンズ装置Mは、上述した課題を解決するため、複数のレンズL1,L2…を配した撮像レンズMo,及びこの撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ用画像変換リングを備えるレンズ装置であって、所定の収差を発生させてソフトフォーカス効果を生じさせる撮像レンズMoと、この撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3,及びこのレンズ着脱部3に一体に備え、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4を有するレンズ用画像変換リング1を備えてなることを特徴とする。
【0009】
一方、本発明に係るレンズ用画像変換リング1は、上述した課題を解決するため、複数のレンズL1,L2…を配した撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ用画像変換リングを構成するに際して、所定の収差を発生させてソフトフォーカス効果を生じさせる撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3と、このレンズ着脱部3に一体に備え、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は好適な態様により、撮像レンズMoにおける複数のレンズL1,L2…は、物体OBJ側から像IMG側へ、両凸レンズL1と両凹レンズL2を接合した第一接合レンズJ1、正メニスカスレンズL3と両凹レンズL4を接合した第二接合レンズJ2、負メニスカスレンズL5と両凸レンズL6を接合した第三接合レンズJ3を備えて構成できるとともに、第一接合レンズJ1と第二接合レンズJ2間に、内部開口絞りSTOを配することができる。他方、レンズ用画像変換リング1におけるレンズ着脱部3は、レンズ鏡筒2の前端部2fにおけるアクセサリ装着部6の内周面に設けた凹ネジ部6nに螺着する凸ネジ部3sにより形成することができる。さらに、外部絞りリング部4は、制限する入光量Cを異ならせた複数の外部絞りリング部4…から選択してレンズ着脱部3に組付可能に構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るレンズ装置M及びレンズ用画像変換リング1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) ソフトフォーカス効果を有する撮影は、レンズ鏡筒2の前端部2fに装着したレンズ用画像変換リング1を取り外せば足りる。したがって、ソフトフォーカス効果を得るソフトフォーカスレンズ機能(ボカシ機能)とシャープな描写を行う通常撮影レンズ機能を容易に切換えることができる。これにより、撮像レンズMoの多様性、更には付加価値をより高めることができる。
【0013】
(2) 構成的(部品的)には、撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3,及びこのレンズ着脱部3に一体に備え、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4を有するレンズ用画像変換リング1を用意すれば実施できる。したがって、撮像レンズMoの内部における光学系の構成を変更することなく実施できるなど、大型化したり複雑化する弊害を極力回避できるとともに、撮像レンズMoの小型コンパクト化及び低コスト化を実現することができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、撮像レンズMoにおける複数のレンズL1,L2…として、物体OBJ側から像IMG側へ、両凸レンズL1と両凹レンズL2を接合した第一接合レンズJ1、正メニスカスレンズL3と両凹レンズL4を接合した第二接合レンズJ2、負メニスカスレンズL5と両凸レンズL6を接合した第三接合レンズJ3を備えて構成すれば、単レンズを含まない三組の接合レンズJ1,J2,J3のみで全光学系を構築できるため、収差の可変機能を有する撮像レンズMoの更なる小型コンパクト化を図ることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、撮像レンズMoにおける第一接合レンズJ1と第二接合レンズJ2間に、内部開口絞りSTOを配すれば、通常の絞り機能を有する内部開口絞りSTOとレンズ用画像変換リング1における外部絞りリング部4による第二の絞り機能を組合わせることが可能になるため、ソフトフォーカス撮影を含めた多彩な撮影を行うことができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、レンズ用画像変換リング1におけるレンズ着脱部3を構成するに際し、レンズ鏡筒2の前端部2fにおけるアクセサリ装着部6の内周面に設けた凹ネジ部6nに螺着する凸ネジ部3sにより形成すれば、撮像レンズMoに対して、レンズフィルタ等のアクセサリ感覚により着脱できるため、取扱いの容易性に優れるとともに、利便性及び使い勝手に優れる。
【0017】
(6) 好適な態様により、レンズ用画像変換リング1における外部絞りリング部4として、制限する入光量Cを異ならせた複数の外部絞りリング部4…から選択してレンズ着脱部3に組付可能に構成すれば、ソフトフォーカス効果の度合(例えば、強,中,弱)を選択可能になるなど、実質的なバリアブルソフトフォーカス機能を得れるとともに、多機能性及び多様性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好適実施形態に係るレンズ装置におけるレンズ用画像変換リング及び撮像レンズの要部を示す断面側面図、
図2】同レンズ用画像変換リングの正面図、
図3】同撮像レンズに同レンズ用画像変換リングを装着した状態を示す一部抽出拡大図を含む一部断面側面図、
図4】同レンズ用画像変換リングの原理説明図、
図5】同レンズ用画像変換リングと撮像レンズの装着時の外観側面図、
図6】同レンズ用画像変換リングと撮像レンズの離脱時の外観側面図、
図7】同レンズ用画像変換リングを装着したレンズ装置の光学系の構成図、
図8】同レンズ用画像変換リングを装着しないレンズ装置の光学系の構成図、
図9】同レンズ装置におけるレンズ全系のレンズデータ、
図10】同レンズ装置の諸元データ、
図11】同レンズ用画像変換リングの装着したときのレンズ装置における無限遠時の横収差図、
図12】同レンズ用画像変換リングを離脱したときのレンズ装置における無限遠時の横収差図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
最初に、本実施形態に係るレンズ装置Mの基本構成について、図1図10を参照して説明する。
【0021】
図1及び図6に示すように、本実施形態に係るレンズ装置Mは、撮像レンズMoと、この撮像レンズMoに装着して使用するレンズ用画像変換リング1からなる。図1に示す撮像レンズMoは、前半部を実線で示し、他の部位となる後半部を仮想線で示した断面側面図である。なお、例示の撮像レンズMoは、デジタルスチルカメラに用いることができる交換レンズであり、矢印Ffが撮像レンズMoの前方(物体OBJ側)となる。
【0022】
まず、撮像レンズMoは、レンズ鏡筒2を備え、11はレンズ鏡筒2における固定筒を示す。この固定筒11は、前端に、フードやレンズフィルタ等のカメラアクセサリが着脱するアクセサリ装着部6を有するとともに、後端に、カメラ側のマウントに装着(着脱)するレンズ側マウント部22を備える。また、固定筒11の外周部には、仮想線で示すフォーカス調整リング23を備えるとともに、このフォーカス調整リング23の前側に絞り調整リング24を備える。フォーカス調整リング23の回動操作により、フォーカシング調整を行うことができるとともに、絞り調整リング24の回動操作により、撮像レンズMoの光学系に備える内部開口絞りSTOの絞り調整を行うことができる。一方、レンズ鏡筒2(固定筒11)の内部には、レンズ保持部25,26,27により保持された複数のレンズL1,L2…が配される。
【0023】
図7及び図8は、本実施形態に係る撮像レンズMoにおけるレンズ全系100の構成を示すとともに、図9及び図10に、レンズ全系100のレンズデータ及び諸元データを示す。
【0024】
レンズ全系100は、物体OBJ側から像IMG側へ、両凸レンズL1と両凹レンズL2を接合した第一接合レンズJ1、像IMG側が凸に湾曲した正メニスカスレンズL3と両凹レンズL4を接合した第二接合レンズJ2、物体OBJ側が凸に湾曲した負メニスカスレンズL5と両凸レンズL6を接合した第三接合レンズJ3を備える。レンズ全系100を、このように構成すれば、単レンズを含まない三組の接合レンズJ1,J2,J3のみで全光学系を構築できるため、収差の可変機能を有する撮像レンズMoの更なる小型コンパクト化を図ることができる。そして、上述した内部開口絞りSTOは、第一接合レンズJ1と第二接合レンズJ2間に配設される。図7及び図8中、Dcは光軸を示し、矢印Ffが前側(物体OBJ側)となる。
【0025】
また、図9に示すレンズデータにおいて、物体OBJ側から数えたレンズ面の面番号をiで示し、図7及び図8に示した符号(数字)に一致する。これに対応して、レンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)をそれぞれ示す。nd(i)及びνd(i)はd線(587.6〔nm〕)に対する数値である。軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚或いは空気空間を示す。曲率半径R(i)と面間隔D(i)の単位は〔mm〕である。面番号のOBJは物体、STOは内部開口絞り、IMGは像の位置を示す。曲率半径R(i)の「∞」は平面を示す。屈折率nd(i)とアッベ数νd(i)の空欄は空気であることを示す。
【0026】
さらに、図10に示すように、撮像レンズMoの無限物点時のレンズ全系100の諸元データは、焦点距離f:50.5〔mm〕,Fナンバー:F1.562,画角:46.311〔゜〕,像高:21.633〔mm〕,レンズ全長:76.576〔mm〕,BF(バックフォーカス):31.879〔mm〕である。
【0027】
他方、レンズ用画像変換リング1は、図1及び図6に示すように、要部の構成として、上述した撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3と、このレンズ着脱部3に一体に有し、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4とを備える。
【0028】
このレンズ用画像変換リング1は、図6図5)に示すように、レンズ鏡筒2の前端部2fとほぼ同一の外径を有する偏平円筒状に形成した変換リングベース31を備え、この変換リングベース31の後端に、この変換リングベース31よりも小径となるレンズ着脱部3を一体に形成する。レンズ着脱部3は、リング状に一体形成するとともに、外周面に、レンズ鏡筒2の前端部2fにおけるアクセサリ装着部6の内周面に設けた凹ネジ部6nに螺着する凸ネジ部3sを形成する。このように構成すれば、レンズ用画像変換リング1は、撮像レンズMoに対して、レンズフィルタ等のアクセサリ感覚により着脱できるため、取扱いの容易性に優れるとともに、利便性及び使い勝手に優れる。
【0029】
また、レンズ着脱部3の内周面には、外部絞りリング部4を取付けるリング形の取付板部32を一体形成する。外部絞りリング部4は、リング板状に形成し、内側に円形の入光開口部4sを形成するとともに、外周側を取付板部32に重ね合わせるための被取付部4cに形成する。したがって、この入光開口部4sの内径Ecを選定することにより、入光開口部4sからの入光量Cを決定することができる。例示の場合、図1図4)に示すように、第一接合レンズJ1を保持するレンズ保持部25の内径とほぼ同一となる内径Ecに選定した。
【0030】
さらに、変換リングベース31の内周面には、上述したアクセサリ装着部6の内周面に設けた凹ネジ部6nと同一の凹ネジ部33nを形成することにより、レンズフィルタ等のアクセサリを装着(着脱)するアクセサリ装着部33として形成する。そして、凹ネジ部33nに螺着する凸ネジ部34sを外周面に形成したリング保持板34を用意し、取付板部32に、外部絞りリング部4における被取付部4cを重ね合わせた後、リング保持板34の凸ネジ部34sをアクセサリ装着部33の凹ネジ部33nに螺着し、被取付部4c(外部絞りリング部4)を取付板部32に固定する。なお、リング保持板34は、アクセサリ装着部33における凹ネジ部33nの後半部に螺着するため、アクセサリ装着部33における凹ネジ部33nの前半部は、本来のアクセサリ装着部として使用できる。
【0031】
レンズ用画像変換リング1を、このように構成すれば、制限する入光量Cを異ならせた複数の外部絞りリング部4…、即ち、入光開口部4sの内径を異ならせた複数の外部絞りリング部4…から所望の外部絞りリング部4を選択してレンズ着脱部3に対して組付可能になる。換言すれば、複数の外部絞りリング部4…からの選択により、ソフトフォーカス効果の度合(例えば、強,中,弱)を選択可能になるため、実質的なバリアブルソフトフォーカス機能を得れるとともに、多機能性及び多様性をより高めることができる。
【0032】
以上により、変換リングベース31に対してレンズ着脱部3及び外部絞りリング部4が一体となるレンズ用画像変換リング1を構成することができる。
【0033】
このように、レンズ用画像変換リング1は、基本的な構成として、撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3と、このレンズ着脱部3に一体に有し、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4とを備えている。
【0034】
このため、前述した撮像レンズMoは、所定の収差を発生させてソフトフォーカス効果を生じさせる光学性能を持たせている。したがって、レンズ用画像変換リング1を装着しない撮像レンズMoのみを用いれば、ソフトフォーカス効果(ボカシ効果)を得るソフトフォーカスレンズとして使用することができる。他方、図5に示すように、撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fにレンズ用画像変換リング1を装着すれば、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去することによりソフトフォーカス効果を解消し、シャープな描写を行う通常撮影レンズとして使用することができる。即ち、本実施形態に係るレンズ装置Mは、撮像レンズMoに対して、予め、収差を含ませることにより、ソフトフォーカス効果を生じさせるとともに、レンズ用画像変換リング1を装着して収差を取り除き、通常撮影レンズに変換する原理に基づくものである。
【0035】
次に、本実施形態に係るレンズ装置1の機能及び使用方法について、図1図12を参照して説明する。
【0036】
レンズ装置1は、図5及び図6に示すように、撮像レンズMoとこの撮像レンズMoに着脱するレンズ用画像変換リング1を備えるため、図5に示すように、撮像レンズMoにレンズ用画像変換リング1を装着して使用すれば、シャープな描写を行う通常撮影レンズとして利用できる。この場合、撮像レンズMoの前端に、比較的薄いレンズ用画像変換リング1を装着した状態となるため、外観的には一体化されるため、特に、大型化したり形状が損なわれるなどの弊害は生じない。
【0037】
通常撮影レンズとして使用する場合、図4に示すように、入光量Cは、仮想線で示す光線Csのように、レンズ用画像変換リング1の入光開口部4sにより制限された状態となるため、周辺側の光量(明るさ)がカットされる状態となり、周辺側の収差が除去されてソフトフォーカス効果が解消される。即ち、シャープな描写が行なわれる通常撮影レンズとして利用できる。
【0038】
他方、ソフトフォーカスレンズとして利用する場合には、撮像レンズMoからレンズ用画像変換リング1を離脱し、図6に示す撮像レンズMoのみで使用すればよい。これにより、図4に示すように、入光量Cは、実線で示す光線となり、ほとんど制限されない状態となるため、撮像レンズMoのレンズ全系100にとって、最大の明るさとなり収差を増加させることができる。これにより、周辺側にボケが生じるソフトフォーカスレンズ(特殊効果レンズ)として利用できる。
【0039】
この場合、撮像レンズMoのみで使用するときは、画像変換リングを取り外すため、無限遠時の横収差特性は、図12に示すように、収差を増加させることができる。即ち、ソフトフォーカス効果を生じる収差特性を得ることができる。一方、レンズ用画像変換リング1を装着した撮像レンズMoとして使用する場合、図9のレンズデータにおける面番号i=1の軸上面間隔D(i)は、5.0〔mm〕となり、無限遠時の横収差特性は、図11に示すように、周辺側が相対的に収差が小さくなる。
【0040】
なお、第一接合レンズJ1と第二接合レンズJ2間には、前述した内部開口絞りSTOを備えるため、通常の絞り機能を有する内部開口絞りSTOとレンズ用画像変換リング1における外部絞りリング部4による第二の絞り機能を組合わせることが可能になり、ソフトフォーカス撮影を含めた多彩な撮影を行うことができる。
【0041】
このように、本実施形態に係るレンズ装置Mは、基本構成として、所定の収差を発生させてソフトフォーカス効果を生じさせる撮像レンズMoと、この撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3,及びこのレンズ着脱部3に一体に備え、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4を有するレンズ用画像変換リング1を備えるため、ソフトフォーカス効果を有する撮影は、レンズ鏡筒2の前端部2fに装着したレンズ用画像変換リング1を取り外せば足りる。したがって、ソフトフォーカス効果を得るソフトフォーカスレンズ機能(ボカシ機能)とシャープな描写を行う通常撮影レンズ機能を容易に切換えることができる。これにより、撮像レンズMoの多様性、更には付加価値をより高めることができる。
【0042】
また、構成的(部品的)には、撮像レンズMoにおけるレンズ鏡筒2の前端部2fに着脱するレンズ着脱部3,及びこのレンズ着脱部3に一体に備え、レンズ鏡筒2の前端部2fへの装着時に、撮像レンズMoに入射する入光量Cを制限し、かつ所定の収差を除去してソフトフォーカス効果を解消する外部絞りリング部4を有するレンズ用画像変換リング1を用意すれば実施できる。したがって、撮像レンズMoの内部における光学系の構成を変更することなく実施できるなど、大型化したり複雑化する弊害を極力回避できるとともに、撮像レンズMoの小型コンパクト化及び低コスト化を実現することができる。
【0043】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0044】
例えば、レンズ画像変換リング1は、レンズ着脱部3と外部絞りリング部4を組付けて構成した場合を示したが、一体に成形する場合を排除するものではない。また、レンズ用画像変換リング1のレンズ着脱部3は、アクセサリ装着部6の内周面に設けた凹ネジ部6nに螺着する凸ネジ部3sにより形成した場合を示したが、レンズ鏡筒2の前端部2fの外周面に嵌め込むタイプなど、他の取付手段を排除するものではない。さらに、外部絞りリング部4は、制限する入光量Cを異ならせた複数の外部絞りリング部4…から選択してレンズ着脱部3に組付可能に構成する例を示したが、外部絞りリング部4の前後の位置を変更できるように構成してもよい。一方、レンズ画像変換リング1は、例示した撮像レンズMoに対して固有のレンズ画像変換リング1として構成した場合を示したが、各種撮像レンズに対して使用できる汎用的なレンズ画像変換リング1として構成してもよい。他方、撮像レンズMoにおける複数のレンズL1,L2…は、物体OBJ側から像IMG側へ、両凸レンズL1と両凹レンズL2を接合した第一接合レンズJ1、正メニスカスレンズL3と両凹レンズL4を接合した第二接合レンズJ2、負メニスカスレンズL5と両凸レンズL6を接合した第三接合レンズJ3を用いた場合を例示したが、レンズL1,L2…の枚数や構成は任意である。したがって、内部開口絞りSTOの位置も特定の配置位置に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るレンズ装置は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の各種光学機器における専用レンズ或いは交換レンズとして利用できるとともに、本発明に係るレンズ用画像変換リングは、これらの各種撮像レンズに利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1:レンズ用画像変換リング,2:レンズ鏡筒,2f:レンズ鏡筒の前端部,3:レンズ着脱部,3s:凸ネジ部,4:外部絞りリング部,6:アクセサリ装着部,6n:凹ネジ部,M:レンズ装置,Mo:撮像レンズ,C:入光量,OBJ:物体,IMG:像,STO:内部開口絞り,L1:両凸レンズ,L2:両凹レンズ,L3:正メニスカスレンズ,L4:両凹レンズ,L5:負メニスカスレンズ,L6:両凸レンズ,J1:第一接合レンズ,J2:第二接合レンズ,J3:第三接合レンズ
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