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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159787
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】水系撥水抗菌処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
C09K3/18 102
C09K3/18 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064194
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳史
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】高島 大樹
【テーマコード(参考)】
4H020
【Fターム(参考)】
4H020AA03
4H020AA06
4H020BA12
4H020BA34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】繊維などの被着体に塗工したときに塗膜が撥水性を示すとともに抗菌性を示し、抗菌性を発現させる材料が組成物中に均一に分散して沈殿等しない安定性を有するともに塗工したときの塗膜が耐久性を有する水系撥水抗菌処理剤を提供する。
【解決手段】グリコールエーテルと、アミノ変性シリコーンと、フッ素樹脂と、界面活性剤と、銀錯体、亜鉛錯体、銅錯体から選ばれる少なくとも1種である金属錯体と、水系溶剤を含有することを特徴とする水系撥水抗菌処理剤による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールエーテルと、
フッ素樹脂乳化物と、
シリコーンと、
銀錯体、亜鉛錯体、銅錯体から選ばれる少なくとも1種である金属錯体と、
水系溶剤を含有することを特徴とする水系撥水抗菌処理剤。
【請求項2】
前記シリコーンがアミノ変性シリコーンであることを特徴とする請求項1に記載の水系撥水抗菌処理剤。
【請求項3】
前記フッ素樹脂脂乳化物は、フッ素樹脂、界面活性剤及び水が含有されている乳化物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水系撥水抗菌処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維などの表面を撥水性及び撥油性を有し、さらに抗菌性を有するようにコーティングするための水系の処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維などの被着体に対して、フッ素を包含する化合物を含有して撥水性及び撥油性を付与するとともに、抗菌剤も含有することで抗菌性を付与する組成物が種々知られている。
【0003】
例えば、特許文献1において、臨界表面張力が所定値以下であるポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂、フッ素樹脂、銀、銅、亜鉛などが担持されたゼオライトなどを含有する耐汚染性に優れ抗菌性を有する樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2において、フルオロアルキル基を有する含フッ素重合体、界面活性剤及び水性媒体を含み、前記含フッ素重合体を含む粒子のゼータ電位が2~100mVである含フッ素重合体水性分散体と、銀、銅又は亜鉛が無機担体に担持された抗菌剤粒子と、アニオン性官能基を有する水溶性重合体とが混合された抗菌撥水撥油剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-216239号公報
【特許文献2】特開2019-137811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先行文献1及び先行文献2の組成物は、抗菌性を発現させるために所定の金属を担持させたゼオライトを含有するものであるが、当該ゼオライトが水や有機溶剤に不溶であるために組成物中に均一に分散しにくく、さらには塗工された後に経時的に磨耗することで当該ゼオライトにより塗膜が剥離するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明において、繊維などの被着体に塗工したときに塗膜が撥水性を示すとともに抗菌性を示し、抗菌性を発現させる材料が組成物中に均一に分散して沈殿等しない安定性を有するともに塗工したときの塗膜が耐久性を有する水系撥水抗菌処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水系撥水抗菌処理剤について鋭意研究を重ね、後述する種々の化合物を組み合わせて配合することにより、抗菌性を発現させる材料が処理剤中に均一に分散して沈殿等しない安定性を有し、塗工したときに撥水性及び抗菌性を有するとともに耐久性にも優れた塗膜を作成することができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明に至った。
【0009】
〔1〕すなわち、本発明は、グリコールエーテルと、フッ素樹脂乳化物と、シリコーンと、銀錯体、亜鉛錯体、銅錯体から選ばれる少なくとも1種である金属錯体と、水系溶剤を含有することを特徴とする水系撥水抗菌処理剤である。
【0010】
〔2〕そして、前記シリコーンがアミノ変性シリコーンであることを特徴とする前記〔1〕に記載の水系撥水抗菌処理剤である。
【0011】
〔3〕そして、前記フッ素樹脂脂乳化剤は、フッ素樹脂、界面活性剤及び水が含有されている乳化物であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の水系撥水抗菌処理剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水系撥水抗菌処理剤によれば、繊維などの被着体に塗工したときに塗膜が撥水性を示すとともに抗菌性を示し、抗菌性を発現させる材料が処理剤中に均一に分散して沈殿等しない安定性を有するともに塗工したときの塗膜が耐久性を有するという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の水系撥水抗菌処理剤に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記は、上限と下限を含有するものである。
【0014】
本発明の処理剤は、グリコールエーテルと、シリコーンと、フッ素樹脂乳化物と、銀錯体、亜鉛錯体、銅錯体から選ばれる少なくとも1種である金属錯体と、水系溶剤を含有している。少なくともこれら成分を配合した処理剤により、後述するように、塗膜作製後に撥水性における耐久性が優れるとともに、防汚性及び耐擦り傷性に優れる塗膜を作成することができる。
【0015】
本発明におけるグリコールエーテルは、2価の脂肪族アルコールのエーテルであり、塗工して塗膜を形成するときの助剤である。グリコールエーテルを配合することにより、本発明の処理剤において、水を揮発させて造膜するときに、水よりも揮発性が低いことから塗膜のひび割れを抑制し均一な塗膜を得ることができる。また、グリコールエーテルを配合することにより、とりわけフッ素樹脂を界面活性剤、水と混合した乳化物として用いるときに、高温で短時間に造膜させる場合にも均一な塗膜を得ることができる。
【0016】
当該グリコールエーテルとしては、具体的に、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが好ましい。このうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
また、グリコールエーテルの含有割合は、1~40重量%であることが好ましく、3~30重量%であることが好ましい。グリコールエーテルの含有割合がこの範囲であると、得られる塗膜がひび割れなどせず均一な表面となり撥水性を向上することができる。
【0018】
本発明に含有されるシリコーンは、ジメチルポリシロキサンなどのポリシロキサンである。シリコーンは、その側鎖や末端のケイ素にアミノ基や、アミノプロピル基、N-(β-アミノエチル)イミノプロピル基などのアミノ基を有する置換基を導入したアミノ変性シリコーンであることが好ましい。アミノ変性シリコーンであると、処理剤中により均一に分散することができる。シリコーンを配合することにより、形成された塗膜の撥水性を向上することができる。また、シリコーンは、水や界面活性剤などと乳化物として配合することもできる。
【0019】
当該シリコーンは、25℃において液状であることが好ましい。当該シリコーンが25℃において液状であると、処理剤として保存しているときに析出するなどして不均一にならず、安定した均一な塗膜を作成することができる。また、シリコーン重合平均分子量として、100~10000が好ましく、300~6000が好ましい。なお、当該シリコーンの重合平均分子量を測定する方法として、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて、展開溶媒としてトルエンなどを用いて、標準ポリスチレン換算として算出されることが好ましい。
【0020】
また、シリコーンの含有割合は、0.05~2重量%であることが好ましく、0.1~1重量%であることが好ましい。シリコーンの含有割合がこの範囲であると、形成された塗膜の撥水性を向上することができる。
【0021】
本発明に含有されるフッ素樹脂乳化物は、構造中にフッ素原子が結合されているフッ素樹脂を乳化した組成物である。当該フッ素樹脂乳化物を配合することにより、被着体の表面に塗膜が形成されると、フッ素樹脂によって撥水性及び撥油性を向上することができ、フッ素樹脂を処理剤中で沈殿や大きな凝集等の偏りが生じずに分散し、均一な塗膜を形成することができる。
【0022】
フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体などが好ましい。このようなフッ素樹脂を用いることにより、フッ素原子が撥水性及び撥油性を有している。主鎖の炭素原子に結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換された完全フッ素化樹脂でもよいし、耐光性が良好である限りにおいて主鎖の炭素原子に結合する水素原子が一部フッ素原子に置換された部分フッ素化樹脂でもよい。
【0023】
フッ素樹脂の親水性を向上させてより乳化しやすくするために、側鎖にカルボキシル基、スルホニル基、リン酸基の少なくとも1つを備えるフッ素樹脂を用いることもできる。例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2-(2-フルオロカルボニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体の加水分解物、カルボニルアルコキシドを有するフッ化メチレン鎖とトリフルオロエチレンのビニルアルコールとの共重合体の加水分解物、パーフルオロ[2-(2-フルオロカルボニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]の重合体の加水分解物などにより、側鎖にカルボキシル基を有するフッ素樹脂を作製することができる。
【0024】
また、フッ素樹脂乳化物におけるフッ素樹脂の含有割合は、10~50重量%であることが好ましく、20~40重量%であることが好ましい。フッ素樹脂乳化物におけるフッ素樹脂の含有割合がこの範囲であると、フッ素樹脂乳化物においてフッ素樹脂が分離せずに均一な液状を維持することができる。さらに、本発明の処理剤におけるフッ素樹脂の含有割合は、0.05~10重量%であることが好ましく、0.5~5重量%であることが好ましい。フッ素樹脂の含有割合がこの範囲であると、形成された塗膜の撥水性を向上することができる。
【0025】
また、フッ素樹脂乳化物は、界面活性剤や水などの水系溶剤と乳化物として形成されて配合されていることが好ましい。フッ素樹脂が予め乳化物として形成されていると、上述したように、フッ素樹脂が処理剤中で沈殿や大きな凝集等の偏りが生じずに分散しており、均一な塗膜を形成させることができる。
【0026】
フッ素樹脂乳化物に含有される界面活性剤は、親水性基と親油性基を併せ持つ有機化合物であり、水やエタノールなどの水系溶剤に、フッ素樹脂などの親水性が低い化合物を均一に分散させることができる。また、上述したように、界面活性剤は、予めフッ素樹脂や水などの水系溶剤と乳化物として形成されて配合されていることが好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、例えば、陽イオン界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が好ましい。陽イオン界面活性剤は、水中で解離したとき陽イオンとなる界面活性剤であり、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などが好ましい。このうちアルキル基は、炭素数12~22であることが好ましく、カウンターアニオンとして塩化物イオン、水酸化物イオン、臭化物イオンなどであることが好ましい。そして、陰イオン界面活性剤は、水中で解離したとき陰イオンとなる界面活性剤であり、例えば、脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩などが好ましい。このうちアルキル基は、炭素数12~22であることが好ましく、カウンターカチオンとしてナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどであることが好ましい。そして、両性界面活性剤は、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方を併せ持っており、溶液のpHに応じて陽イオン、陰イオン、および陽イオンと陰イオンの両性となる界面活性剤であり、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが好ましい。このうちアルキル基は、炭素数12~22であることが好ましい。そして、非イオン界面活性剤は、親水部がイオン化しない親水性部位を有る活性剤であり、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテルやポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン付加多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミドなどが好ましい。上記非イオン界面活性剤のうち、グリフィンの式より算出されるHLBが3~17のものがさらに好ましい。上記非イオン界面活性剤でポリオキシエチレン骨格を有するものは適宜オキシエチレンの付加モル数を変更することができる。HLBが上記範囲の非イオン界面活性剤であると、処理剤の保存安定に優れ、具体的には時間が経過しても分離などが起こらず均一な液状を維持することができる。また、これらの界面活性剤は、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、フッ素樹脂乳化物における界面活性剤の含有割合は、0.5~20重量%であることが好ましく、1.0~10重量%であることが好ましい。界面活性剤の含有割合がこの範囲であると、フッ素樹脂乳化物においてフッ素樹脂が分離せずに均一な液状を維持することができる。
【0029】
本発明に含有される金属錯体は、銀錯体、亜鉛錯体、銅錯体から選ばれる少なくとも1種であり、さらに具体的には、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ヒドロキシル基などの極性を有する置換基を備えた有機化合物と銀、亜鉛、銅のいずれか1種の金属との有機金属錯体である。金属錯体は、それに含まれる銀、亜鉛、銅が抗菌性を有していることから、形成された塗膜においても抗菌性を発現し、さらに、本発明の他の材料と相溶性を有する有機化合物との錯体であることから、金属担持ゼオライトのような無機物とは異なり、塗膜に均一に分散しやすく、摩耗により剥がれ落ちることもないことから塗膜の耐久性を向上することができる。
【0030】
銀錯体、亜鉛錯体又は銅錯体である金属錯体は、水又は後述する水系溶剤に可溶なものであれは特に限定されないが、例えば、アスパラギン酸銀錯体、ヒスチジン銀錯体、アセチルメチオニン銀錯体、2-ピロリドン-5-カルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体などの銀錯体、ジンクピリジオンなどの亜鉛錯体、銅フタロシアニンなどの銅錯体が好ましい。
【0031】
また、本発明の処理剤における金属錯体の含有割合は、0.001~1重量%であることが好ましく、0.005~0.5重量%であることが好ましい。金属錯体の含有割合がこの範囲であると、形成された塗膜において所定の抗菌性を発現することができる。
【0032】
本発明に含有される水系溶剤は、水や、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~4の低級アルコールなど極性を有し水と相溶する溶剤である。水系溶剤を用いることにより、グリコールエーテル、アミノ変性シリコーン、フッ素樹脂、界面活性剤、金属錯体を均一に溶解或いは分散することができる。水系溶剤として、水、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~4の低級アルコールなどから1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
また、本発明の水系撥水抗菌処理剤における水系溶剤の含有割合は、70~98重量%であることが好ましく、80~96重量%であることが好ましい。水系溶剤の含有割合がこの範囲であると、被着体に塗工しやすい液状であるとともにムラが生じないように塗膜を作成することができる。
【0034】
本発明の処理剤は、グリコールエーテル、シリコーン、フッ素樹脂乳化物、所定の金属錯体、水系溶剤の各成分を配合後、室温で撹拌して調製される。
【0035】
そして、本発明の水系撥水抗菌処理剤は、必要に応じて、紫外線吸収剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤、pH調整剤などを添加することができる。
【0036】
本発明の水系撥水抗菌処理剤は、天然繊維、合成繊維の各繊維に対して処理されることが好ましい。
【実施例0037】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))3.8g(フッ素樹脂分1.25g)、銀錯体0.033g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例2)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル7.5g、アミノ変性シリコーン0.38g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、銀錯体0.033g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例3)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))3.8g(フッ素樹脂分1.25g)、銀錯体0.041g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例4)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル7.5g、アミノ変性シリコーン0.39g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、亜鉛錯体0.005g、エタノール10g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例5)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル3.0g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))3.8g(フッ素樹脂分1.25g)、銀錯体0.041g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例6)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル30.0g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))3.8g(フッ素樹脂分1.25g)、銀錯体0.033g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例7)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、アミノ変性シリコーン0.17g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、銀錯体0.041g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例8)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))2.0g(フッ素樹脂分0.66g)、亜鉛錯体0.005g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例9)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル14.0g、アミノ変性シリコーン0.68g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))10.0g(フッ素樹脂分0.33g)、銀錯体0.041g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(実施例10)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、銀錯体0.249g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例1)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル7.5g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、銀担持ゼオライト0.1g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例2)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル7.5g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))3.8g(フッ素樹脂分1.25g)、銀担持ゼオライト0.5g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例3)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル7.5g、アミノ変性シリコーン0.25g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、フェノール系化合物0.22g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例4)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル7.5g、アミノ変性シリコーン0.17g、フッ素樹脂乳化物(日華化学社製:S-05(フッ素樹脂含有割合33重量%))3.8g(フッ素樹脂分1.25g)、脂肪族カチオン0.43g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例5)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、アミノ変性シリコーン0.17g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、芳香族化合物0.45g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例6)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル3.0g、アミノ変性シリコーン0.17g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例7)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、亜鉛錯体0.005g、エタノール10g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例8)
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル5.0g、アミノ変性シリコーン0.34g、銀錯体0.033g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
(比較例9)
アミノ変性シリコーン0.34g、フッ素樹脂乳化物(AGC社製:AG-E550D(フッ素樹脂含有割合30重量%))5.7g(フッ素樹脂分1.71g)、銀錯体0.041g、残余を水として合計100gの水系撥水抗菌処理剤を得た。
【0038】
各実施例及び各比較例に記載の処理剤を、ポリエステル布に均一に塗布し、それを室温にて1日間室温にて自然乾燥及び養生して、塗膜を付した試験片を作製した。
【0039】
これら作製された塗膜を付した試験片について、撥水性、磨耗後の撥水性、抗菌性、塗膜感応性を評価した。
【0040】
〔撥水性〕
撥水性については、JIS L1092のシャワー試験に準拠して試験を行い、1級:表面全体に湿潤を示すもの、2級:表面の半分に湿潤を示し,小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの、3級:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの、4級:表面に湿潤しないが,小さな水滴の付着を示すもの、5級:表面に湿潤及び水滴の付着がないものの5つの指標のうち、4級及び5級に相当する例を撥水性が良好として○と評価し、1級から3級に相当する例を撥水性が良好でないとして×と評価した。
【0041】
〔磨耗後の撥水性〕
新たに作製された塗膜を付した試験片に対して、600g重の荷重にて7000回磨耗した後に、上述のJIS L1092のシャワー試験を行った。試験後の塗膜の評価については、上記撥水性の試験と同様に、4級及び5級に相当する例を撥水性が良好として○と評価し、1級から3級に相当する例を撥水性が良好でないとして×と評価した。
【0042】
〔抗菌性〕
新たに作製された塗膜を付した試験片に対して、JIS Z2801に準じて、大腸菌を用いて抗菌試験を行い、抗菌活性値が2.0以上の例を抗菌性が良好として○と評価し、抗菌活性値2.0未満の例を抗菌性が良好でないとして×と評価した。
【0043】
〔感応性〕
新たに作製された塗膜を付した試験片に対して、目視による塗膜のムラ、基材であるポリエステル布の 変色確認と、手触りによって、各処理剤を塗工していないポリエステル布と比べ、外観、触感に著しい変化がない例を感応性に優れるとして○と評価し、外観、触感に著しい変化がある例を感応性に優れないとして×と評価した。
【0044】
また、各実施例及び各比較例に記載の処理剤そのものについても、粒度分布、外観を評価した。
【0045】
〔粒度分布〕
各例の処理剤について、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、品番:LA920)を用いて測定した。その結果、平均粒径が0.5μm以下の例を均一に分散しているとして○と評価し、平均粒径が0.5μmより大きい例を均一に分散していないとして×と評価した。
【0046】
〔外観〕
各例の処理剤について、目視等にて外観上の性状を確認した。沈殿がない又は沈殿があったとしても攪拌により容易に再分散可能なものを実使用上問題ないとして〇と評価し、沈殿があり攪拌により容易に再分散できないものを実使用上問題ありとして×と評価した。
【0047】
得られた各種処理剤の組成及び評価結果を、表1及び表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1及び表2に示すように、実施例1から10の処理剤により作成された塗膜において、撥水性を示すとともに抗菌性を示し、物理的な力が加わっても同様の撥水性を維持することができ、各処理剤そのものが均一に分散可能であることが分かった。