(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159794
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】座部跳ね上げ装置
(51)【国際特許分類】
A47C 1/121 20060101AFI20221011BHJP
A47C 7/56 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A47C1/121
A47C7/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064202
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116596
【氏名又は名称】愛知株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中川 北斗
(72)【発明者】
【氏名】海瀬 悟
【テーマコード(参考)】
3B099
【Fターム(参考)】
3B099FA12
(57)【要約】
【課題】椅子の座部を着座位置から起立位置へ回動する速さの調整を容易に行うことができる新たな技術を提供する。
【解決手段】座部が着座位置から起立位置まで所定の回転軸を中心として回転可能に構成された椅子の座部跳ね上げ装置は、捩りバネと、回転部材と、調整部材と、を備える。捩りバネは、座部フレームに第1端部が固定される。回転部材は、捩りバネの第2端部が固定され、捩りバネの捩り方向に第2端部と共に回転移動する。調整部材は、座部と共に回転しない保持部材に保持され、回転部材の位置を調整する。座部は、捩りバネの捩り変形による弾性力によって、着座位置から起立位置まで回転する。第2端部は、調整部材により回転部材の位置が調整されることによって、捩り方向における位置が変化する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着席可能な座部が着席時の着座位置から非着席時の起立位置まで所定の回転軸を中心として回転可能に構成された椅子の座部跳ね上げ装置であって、
前記座部が有する座部フレームに第1端部が固定される捩りバネと、
前記捩りバネの前記第1端部とは反対側の第2端部が固定され、前記捩りバネの捩り方向に前記第2端部と共に回転移動する回転部材と、
前記座部と共に回転しない保持部材に保持され、前記回転部材の位置を調整する調整部材と、
を備え、
前記座部は、前記捩りバネの捩り変形による弾性力によって、前記着座位置から前記起立位置まで回転し、
前記第2端部は、前記調整部材により前記回転部材の位置が調整されることによって、前記捩り方向における位置が変化する、座部跳ね上げ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の座部跳ね上げ装置であって、
前記回転部材は、前記調整部材が当接する当接面を有し、前記調整部材の変位に伴い前記当接面の位置が移動することによって前記第2端部と共に前記捩り方向に回転移動する、座部跳ね上げ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の座部跳ね上げ装置であって、
前記調整部材は、前記当接面と当接する頂点部を有し、
前記当接面は、前記回転部材が前記捩り方向に回転する際、前記頂点部と少なくとも一部が垂直に当接するように湾曲した形状を有する、座部跳ね上げ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の座部跳ね上げ装置であって、
前記回転部材は、前記保持部材に保持され、
前記保持部材は、前記調整部材が取り付けられる取付部と、前記回転部材が回転可能に取り付けられる回転面と、を有する、座部跳ね上げ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の座部跳ね上げ装置であって、
前記座部フレームを回転可能に支持し、前記座部と共に回転しない回転支持部を更に備え、
前記保持部材は、筒状であり、前記回転支持部が貫通し、
前記回転面は、前記保持部材の外周面であって、
前記回転部材は、筒状であり、前記回転面を外側から囲うように前記保持部材が貫通する、座部跳ね上げ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の座部跳ね上げ装置であって、
前記回転部材は、前記調整部材によって前記弾性力の強さを調整するための目安を示す印を有する、座部跳ね上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、座部跳ね上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場やホール等には、座部が非着席時の起立位置から着席時の着座位置まで回動可能な構成の椅子が設置されていることが多い。当該椅子において、着座者の離席の際に座部を着座位置から起立位置へ向けて自動的に回動させることにより起立させる技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、座部支持軸と、スプリング掛け部材と、コイルスプリングと、を備える椅子用座部起立装置が開示されている。コイルスプリングの一端は、椅子の座部が着座位置と起立位置との間で回動可能となるように座部支持軸によって左右部分が回動可能に支持される座部フレームに掛止される。また、コイルスプリングの他端は、内部を貫通する座部支持軸に対して所定の周方向位置を位置決めするスプリング掛け部材に掛止される。この椅子用座部起立装置では、コイルスプリングの他端が掛止されるスプリング掛止孔を、スプリング掛け部材の周方向に複数設けられるスプリング掛止孔の何れかに変更することによって、コイルスプリングの弾性力を適宜変更させ、座部の起立の速さを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した椅子用座部起立装置では、スプリング掛け部材におけるスプリング掛止孔の位置が固定されているため、コイルスプリングの個体差による弾性力のばらつきを考慮した微調整が難しいという問題があった。
【0006】
本開示の一局面は、椅子の座部を着座位置から起立位置へ回動する速さの調整を容易に行うことができる新たな技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、使用者が着席可能な座部が着席時の着座位置から非着席時の起立位置まで所定の回転軸を中心として回転可能に構成された椅子の座部跳ね上げ装置であって、捩りバネと、回転部材と、調整部材と、を備える。捩りバネは、座部が有する座部フレームに第1端部が固定される。回転部材は、捩りバネの第1端部とは反対側の第2端部が固定され、捩りバネの捩り方向に第2端部と共に回転移動する。調整部材は、座部と共に回転しない保持部材に保持され、回転部材の位置を調整する。座部は、捩りバネの捩り変形による弾性力によって、着座位置から起立位置まで回転する。第2端部は、調整部材により回転部材の位置が調整されることによって、捩り方向における位置が変化する。
【0008】
このような構成では、捩りバネの第1端部が座部フレームに固定された状態において、調整部材により回転部材の位置が調整されることで、捩りバネの捩り方向に回転部材と共に捩りバネの第2端部が回転移動し、第2端部の捩り方向における位置が変化する。このため、調整部材による回転部材の位置の調整によって、捩りバネの捩り変形による弾性力を強めたり、弱めたりすることができる。したがって、椅子の座部を着座位置から起立位置へ回動する速さの調整を、調整部材を用いて容易に行うことができる。
【0009】
本開示の一態様では、回転部材は、調整部材が当接する当接面を有してもよい。また、回転部材は、調整部材の変位に伴い当接面の位置が移動することによって第2端部と共に捩り方向に回転移動してもよい。このような構成によれば、調整部材を変位させて当接面の位置を移動させることで、回転部材の捩り方向における位置を容易に調整することができる。
【0010】
本開示の一態様では、調整部材は、当接面と当接する頂点部を有してもよい。当接面は、回転部材が捩り方向に回転する際、頂点部と少なくとも一部が垂直に当接するように湾曲した形状を有してもよい。このような構成によれば、調整部材の変位による力が当接面に加わりやすくなる。もし仮に、当接面が平面状である場合、調整部材により回転部材が捩りバネの捩り方向に回転する際、頂点部に対して当接面は斜めに交わりやすく、当接面と頂点部とが垂直に当接しにくい。一方、本開示の一態様にように、当接面が湾曲した形状を有する場合は、当接面と頂点部とが垂直に当接しやすく、当接面が平面状である場合と比較して、調整部材の変位による力が当接面に加わりやすい。
【0011】
本開示の一態様では、回転部材は、保持部材に保持されてもよい。保持部材は、調整部材が取り付けられる取付部と、回転部材が回転可能に取り付けられる回転面と、を有してもよい。このような構成によれば、保持部材に調整部材及び回転部材が保持されるため、座部跳ね上げ装置における回転部材及び調整部材の配置を容易に行うことができる。
【0012】
本開示の一態様では、回転支持部を更に備えてもよい。回転支持部は、座部フレームを回転可能に支持し、座部と共に回転しない。保持部材は、筒状であり、回転支持部が貫通してもよい。回転面は、保持部材の外周面であってもよい。回転部材は、筒状であり、回転面を外側から囲うように保持部材が貫通してもよい。このような構成によれば、保持部材を座部と共に回転しないように固定する他の部品を備えなくても、回転支持部を用いることで、簡易な構成で座部跳ね上げ装置を構成することができる。
【0013】
本開示の一態様では、回転部材は、調整部材によって弾性力の強さを調整するための目安を示す印を有してもよい。このような構成によれば、捩りバネの捩り変形による弾性力の強さの調整を目安の印に基づき容易に行うことができる。また、捩りバネの捩り変形による弾性力の強さを目視で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】座部跳ね上げ装置の拡大右側面を模式的に示す図である。
【
図13】捩りバネの捩り変形による弾性力を強くする場合の右側面視における座部跳ね上げ装置の動きを示す模式図である。
【
図14】
図13における回転部材、保持部材及び調整部材の配置を模式的に示す斜視図である。
【
図15】捩りバネの捩り変形による弾性力を弱くする場合の右側面視における座部跳ね上げ装置の動きを示す模式図である。
【
図16】
図15における回転部材、保持部材及び調整部材の配置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
[1-1.座部]
図1及び
図2に示す座部100は、椅子における使用者が着席可能に構成された部分である。座部100は、使用者が椅子を使用していない状態、つまり非着席時には、着席する使用者の背中を支持可能に構成された背もたれ200と、当該座部100の着座面101と、が略平行に並ぶように起立した起立位置にある。また、座部100は、使用者が椅子を使用している状態、つまり着席時には、背もたれ200に対して当該座部100の着座面101が略垂直となるように倒れた着座位置にある。すなわち、座部100は、回転軸Aを中心として起立位置と着座位置との間を回転可能に構成されている。以下の説明では、説明の便宜上、座部100が起立位置にある状態を基準に、上下方向及び前後方向を表現する。また、左右方向については、座部100が着座位置にある状態において、椅子に正常に着席した使用者を基準に表現する。
【0016】
座部100は、座部フレーム11と、座板12と、クッション部13と、回転支持部14を有する座部跳ね上げ装置300と、を備える。
座部フレーム11は、矩形枠状のフレームであり、上方に配置される上板111、下方に配置される下板112、左側方に配置される左側板113及び右側方に配置される右側板114によって形成される。なお、座部100が着座位置にある状態では、上板111は前方に配置され、下板112は後方に配置される。
【0017】
座板12は、座部フレーム11の後面を閉塞するように覆う、略矩形状の樹脂製の板である。座板12には、多数の同心円を形成するように円弧状に穿設された複数の溝が左右対称に設けられていてもよい。
【0018】
クッション部13は、座板12の後面及び座部フレーム11の上板111を少なくとも覆うように被せられるクッション材であり、当該座部100の着座面101を構成する。すなわち、座部100が着座位置にある状態では、座部フレーム11の上面に、座板12及びクッション部13がその順に配置される。なお、座部100は、クッション部13の上から布地などで張り包まれていてもよい。また、座部100は、座部フレーム11の前面を閉塞するように覆う板状の裏蓋を有してもよい。すなわち、座部100が着座位置にある状態では、座部フレーム11の下面に当該裏蓋を有してもよい。
座部跳ね上げ装置300は、座部フレーム11により形成される内部空間内の右下方寄りに設けられる。
【0019】
回転支持部14は、長さを有する筒状のパイプであり、当該回転支持部14の中心軸に垂直な断面形状が矩形状である。回転支持部14は、座部100と共に回転しないように、座部100の左右両側に立設される図示しない支柱にそれぞれ固定されている。回転支持部14は、当該回転支持部14の中心軸が、座部100を備える椅子が配置される床面と略平行となるように、上述した支柱に固定される。支柱は、例えば座部100の左右両側に設けられる、当該座部100を備える椅子の脚であってもよい。回転支持部14は、座部フレーム11の左側板113及び右側板114の下方寄りにそれぞれ設けられる、
図3に示す第1貫通孔115を貫通して、当該回転支持部14を中心として座部フレーム11を回転可能に支持している。つまり、回転支持部14の中心軸は、座部100が起立位置と着座位置との間で回転する回転軸Aと一致する。
図2に示すように、本実施形態では、回転支持部14が座部フレーム11を回転可能に支持するために、軸部141がそれぞれ回転支持部14の両側端部に取り付けられる。詳細な図示は省略するが、軸部141は、回転支持部14に固定されるように回転支持部14が貫通する矩形状の孔部と、座部フレーム11の円形状の貫通孔に回転可能に挿入される円形の外周面と、を有する。なお、
図3に示すように、軸部141が座部フレーム11の第1貫通孔115を貫通しきらないように、座部フレーム11の外側に軸部141の貫通を防止可能な防止板142が設けられていてもよい。防止板142には、軸部141の外周面の外径よりも内径が小さい部分を有する第2貫通孔143が形成されている。
図3に示す例では、軸部141の外周面は、防止板142の第2貫通孔143に挿入されることで、座部フレーム11の第1貫通孔115に挿入されている。
【0020】
[1-2.座部跳ね上げ装置]
図3に示す座部跳ね上げ装置300は、例えば椅子の着座者が離席した際に、座部100を着座位置から起立位置へ向けて自動的に回転させることが可能な装置である。座部跳ね上げ装置300は、捩りバネ3と、調整部材4と、保持部材5と、回転部材6と、ストッパ7と、を備える。なお、本実施形態では、回転支持部14における座部フレーム11の内部空間を渡る部分には、軸部141、ストッパ7、捩りバネ3、回転部材6がその順に右から左に並ぶように外挿され、捩りバネ3及び回転部材6と重なるように保持部材5が外挿される。
【0021】
ストッパ7は、軸部141と後述する保持部材5との間に配置されるように回転支持部14に取り付けられる。ストッパ7が有する矩形状の孔部に回転支持部14が貫通し、ストッパ7が回転支持部14に回転不能に固定される。ストッパ7は、当該ストッパ7の左側に、後述する捩りバネ3の筒状部分に挿入される突出部71を有する。
【0022】
捩りバネ3は、筒状部分を有するようにコイル状に形成される捩りコイルバネである。
図3及び
図4に示すように、捩りバネ3は、第1端部31が座部フレーム11に固定され、第1端部31とは反対側の第2端部32が後述する回転部材6に固定される。具体的には、捩りバネ3の第1端部31は、座部フレーム11の右側板114に外側から内側に貫通するように固定されたネジ8に引っ掛かるように固定される。また、捩りバネ3の第2端部32は、回転部材6のバネ引掛部63に引っ掛かるように固定される。このため、捩りバネ3は、第2端部32が固定された状態で、
図4に示す第1捩り方向θ1に第1端部31を捩った場合、捩りバネ3の捩り変形により蓄積される弾性力Fを開放可能である。第1捩り方向θ1は、座部100が起立位置から着座位置へ向かって回転する方向と同じ方向である。つまり、弾性力Fは、座部100が着座位置から起立位置へ向かって自動的に回転する方向へ向かって働く力である。
【0023】
調整部材4は、後述する保持部材5に保持されるネジである。調整部材4は、例えば六角ナット及び四角ナット等のダブルナットによって位置が固定される六角穴付止めネジである。具体的には、調整部材4は、保持部材5が有する後述する取付部57の第4貫通孔571に挿入された上で、その上下方向をダブルナットで挟み込むことで位置が固定される。なお、調整部材4は、例えば、つまみを有するような止めネジ、また様々な形状のネジであってもよい。また、調整部材4が挿入される第4貫通孔571に雌ネジが切ってあってもよい。この場合、調整部材4における上下方向の位置の微調整が行いやすくなる。なお、雌ネジが切ってある第4貫通孔571に調整部材4を挿入する場合でも、調整部材4の緩み止め防止のために、ナット等を掛けてもよい。
【0024】
保持部材5は、調整部材4と後述する回転部材6とを保持し、捩りバネ3の筒状部分の一部に挿入されるように構成されている。保持部材5は、座部100と共に回転しないように、回転支持部14に固定される樹脂製の部材である。
図5から
図8に示すように、保持部材5は、略円筒状に形成される。保持部材5は、第1溝53と、位置決め部54と、凸部55と、固定部56と、取付部57と、回転面58と、を有する。
【0025】
第1溝53は、保持部材5の第1端部51から第2端部52まで延びる溝である。なお、本実施形態では、第1端部51が左方、第2端部52が右方にそれぞれ配置されるように、保持部材5が回転支持部14に固定される。第1溝53は、保持部材5の内周面に4つ設けられる。4つの第1溝53は、内部に挿入される回転支持部14の4つの角が嵌るように配置される。4つの第1溝53に回転支持部14の4つの角がそれぞれ嵌ることで、回転支持部14の中心軸に対する保持部材5の回転が抑制される。すなわち、4つの第1溝53によって、保持部材5の回転支持部14に対する
図4に示す第1捩り方向θ1及びのその反対方向である第2捩り方向θ2の回転が抑制される。
【0026】
位置決め部54は、保持部材5の第1端部51寄りに設けられる。位置決め部54は、保持部材5の外周面から環状に突出する部分である。
凸部55は、保持部材5の外周面から突出する。凸部55は、保持部材5の外周面における、位置決め部54よりも第2端部52側に設けられる。凸部55は、保持部材5の外周面上に2つ設けられる。当該2つの凸部55は、互いに対向する位置に配置される。なお、本実施形態では、2つの凸部55が保持部材5の上方及び下方にそれぞれ配置されるように、保持部材5が回転支持部14に固定される。
【0027】
固定部56は、保持部材5の外周面における、位置決め部54よりも第1端部51側に設けられる。なお、本実施形態では、固定部56は、保持部材5の前方に配置される。固定部56は、保持部材5の外周面から内周面に貫通する第3貫通孔561を有する。第3貫通孔561に
図3に示すネジ9を挿入して、固定部56により保持部材5を回転支持部14に固定することによって、回転支持部14に対する保持部材5の回転支持部14の中心軸に沿う方向への移動が抑制される。
【0028】
取付部57は、保持部材5の外周面における、位置決め部54よりも第2端部52側に設けられる。なお、本実施形態では、取付部57は、保持部材5の前方に向かって突出する部分である。取付部57は、前方から見てU字状を有する。取付部57は、第4貫通孔571と、第2溝572と、を有する。第4貫通孔571は、取付部57における突出壁のうち、前方及び左右方向に延びる突出壁を上下方向に貫通する孔である。第2溝572は、第4貫通孔571が設けられる上述した突出壁から上方に延びる溝であって、保持部材5の外周面上に設けられる。上述した調整部材4は、第4貫通孔571に挿入されることで、取付部57に取り付けられる。調整部材4は、第2溝572に沿って、上下方向に位置が変位可能に取付部57に取り付けられる。
【0029】
回転面58は、保持部材5の外周面のうち、位置決め部54よりも第2端部52側の面である。
図7及び
図8に示すように、保持部材5は、位置決め部54から第2端部52に向かって外径が小さくなる。つまり、回転面58は、第1端部51側から第2端部52側に向かって、保持部材5の中心軸に近づくような傾斜を有する。上述した2つの凸部55は、回転面58上に配置される。
図3に示すように、回転面58上において、凸部55よりも第2端部52側には上述した捩りバネ3の筒状部分の一部が外挿され、凸部55よりも第1端部51側には後述する回転部材6が回転可能に固定される。
【0030】
回転部材6は、
図4に示す第1捩り方向θ1及び第2捩り方向θ2、すなわち回転軸Aを中心に、捩りバネ3の第2端部32と共に回転移動可能な樹脂製の部材である。なお、以下の説明では、第1捩り方向θ1及び第2捩り方向θ2の回転方向を特定する必要がない場合は、単に捩り方向とも表現する。回転部材6は、略円筒状に形成される。
図3に示すように、回転部材6は、保持部材5の回転面58上に回転可能に取り付けられる。換言すると、回転部材6は、回転面58を外側から覆うように、内部を保持部材5が貫通する。回転部材6の第1端部61は、保持部材5の位置決め部54と当接する。回転部材6の第1端部61側には、回転部材6が保持部材5に取り付けられた際に、取付部57と干渉しないように第1端部61が位置決め部54と当接可能に、切欠き部611が形成されている。回転部材6の切欠き部611に保持部材5の取付部57が挿入されるように、保持部材5に回転部材6が取り付けられる。
【0031】
図9から
図12に示すように、回転部材6は、バネ引掛部63と、当接部64と、第3溝65と、第4溝66と、を有する。
バネ引掛部63は、回転部材6の外側に筒状の湾曲に沿って折り返すように突出した部分である。バネ引掛部63は、引掛溝631と、折返し部632と、有する。引掛溝631は、回転部材6の第2端部62側から第1端部61側に向かって延びる溝である。引掛溝631には、上述した捩りバネ3の第2端部32が引っ掛かるように嵌め込まれる。折返し部632は、引掛溝631に嵌まる捩りバネ3がバネ引掛部63から外れるのを抑制するために、回転部材6の外周に沿って延びる板状の部分である。
【0032】
当接部64は、回転部材6の筒状の形状から外側に突出した部分である。当接部64は、調整部材4が当接する当接面641を有する。当接面641は、当接部64における調整部材4と対向する側の面であり、湾曲した形状を有する。具体的には、当接面641は、
図13及び
図14に示す第2捩り方向θ2、又は、
図15及び
図16に示す第1捩り方向θ1に回転部材6が回転する際、調整部材4の頂点部41と常に一部が垂直に当接するように湾曲した形状を有する。回転部材6の当接面641が保持部材5の取付部57の上方に配置されるように、保持部材5に回転部材6が取り付けられる。
【0033】
図9から
図12に戻り、第3溝65は、回転部材6の第1端部61から第2端部62まで延びる溝である。第3溝65は、回転部材6の内周面に互いに対向するように2つ設けられる。
【0034】
第4溝66は、回転部材6の周方向に沿って所定の長さを有するように延びる溝である。第4溝66は、回転部材6の第2端部62側において第3溝65と連続するように設けられる。第4溝66は、回転部材6の内周面に互いに対向するように2つ設けられる。回転部材6の内部に保持部材5を貫通させる際、上述した保持部材5の凸部55を第3溝65に嵌めた後、第3溝65に沿って移動させる。そして、保持部材5の凸部55が第4溝66に到達したら、第4溝66に沿って凸部55が移動するように、回転部材6を回転させることで、保持部材5における回転部材6の左右方向の位置が固定される。
【0035】
回転部材6の外周面には、「0」から「5」までの数字と共に表記された印が所定の間隔で設けられている。当該印は、調整部材4によって、後述するように、捩りバネ3の弾性力Fの強さを調整するための目安を示す印である。
【0036】
[1-3.座部跳ね上げ装置における捩りバネの弾性力の調整について]
図13及び
図14に示すように、調整部材4を上方に移動させると、回転部材6における当接部64の当接面641が調整部材4の頂点部41によって上方に押され、調整部材4の変位に伴い回転部材6の当接面641の位置が上方に移動する。このように、当接面641の位置が上方に移動すると、回転軸Aを中心として第2捩り方向θ2に回転部材6が保持部材5の回転面58上で回転移動する。その結果、回転部材6のバネ引掛部63に固定された捩りバネ3の第2端部32も第2捩り方向θ2に移動する。このように回転部材6が回転軸Aを中心として第2捩り方向θ2に回転すると、捩りバネ3の捩り角度が増加するため、捩りバネ3のトルクが増加し、捩りバネ3の弾性力Fが強くなる。
【0037】
また、
図15及び
図16に示すように、調整部材4を下方に移動させると、回転部材6における当接部64の当接面641が調整部材4の頂点部41と当接しつつ下方に下がり、調整部材4の変位に伴い回転部材6の当接面641の位置が下方に移動する。このように、当接面641の位置が下方に移動すると、回転軸Aを中心として第1捩り方向θ1に回転部材6が保持部材5の回転面58上で回転移動する。その結果、回転部材6のバネ引掛部63に固定された捩りバネ3の第2端部32も第1捩り方向θ1に移動する。このように回転部材6が回転軸Aを中心として第1捩り方向θ1に回転すると、捩りバネ3の捩り角度が減少するため、捩りバネ3のトルクが減少し、捩りバネ3の弾性力Fが弱くなる。
【0038】
本実施形態では、例えば、保持部材5に記された図示しない基準印に、回転部材6の外周面に設けられた「0」から「5」までの数字の印を合わせることで、弾性力Fの目安とすることができる。具体的には、調整部材4を操作して、基準印に「5」の印が合う方向に回転部材6を回転させると、捩りバネ3の弾性力Fが強くなる。すなわち、
図14においては、調整部材4を押し込んで、数字の印が奥に移動するように回転部材6を回転させると、捩りバネ3の弾性力Fが強くなる。また、調整部材4を操作して、基準印に「0」の印が合う方向に回転部材6を回転させると、捩りバネ3の弾性力Fが弱くなる。すなわち、
図16においては、調整部材4の押し込みを緩めて、数字の印が手前に移動するように回転部材6を回転させると、捩りバネ3の弾性力Fが弱くなる。
【0039】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、回転部材6が回転可能に保持部材5に取り付けられており、調整部材4の変位に伴い回転部材6の位置、換言すると回転部材6の回転角度が調整可能である。これにより、捩りバネ3の第1端部31が座部フレーム11に固定された状態において、捩り方向に回転部材6と共に捩りバネ3の第2端部32が回転移動する。その結果、第2端部32の捩り方向における位置が変化する。このため、調整部材4による回転部材6の位置の調整によって、捩りバネ3の捩り変形による弾性力Fを強めたり、弱めたりすることができる。したがって、椅子の座部100を着座位置から起立位置へ回動する速さの調整を、調整部材4を用いて容易に行うことができる。
【0040】
また、調整部材4によって、捩りバネ3の弾性力Fにより回転部材6が座部100の起立位置への回動とは逆の方向に回転しようとすることが抑制されている。このため、調整部材4が当接面641と当接することで、回転部材6の位置を固定することができる。
【0041】
また、例えば座部100に設けられる裏蓋が木板で構成されている場合など、座部100の自重が重い仕様である場合、座部100を着座位置から起立位置へ回動する速さが遅くなりやすい。しかし、本実施形態では、調整部材4によって、捩りバネ3の弾性力Fを強く設定するように調整して組み立てることで、仕様にあった速さに調整することができる。また、例えば、座部100を有する椅子を組み立てる現場で、床面のがたつきや部品精度の個体差により、座部100を着座位置から起立位置へ回動する速さが不ぞろいなったときに、調整部材4によって微調整を行うことができる。
【0042】
(2b)本実施形態では、回転部材6の当接面641は、捩り方向に回転部材6が回転する際、調整部材4の頂点部41と常に一部が垂直に当接するように湾曲した形状を有する。このため、調整部材4の変位による力が当接面641に加わりやすくなる。一方、当接面が平面状である場合、調整部材4により回転部材6が捩り方向に回転する際、頂点部41に対して当接面は斜めに交わりやすく、当接面と頂点部41とが垂直に当接しにくい。このため、本実施形態にように当接面641が湾曲した形状を有する場合は、当接面641と頂点部41とが常に垂直に当接しやすく、当接面が平面状である場合と比較して、調整部材4の変位による力が当接面641に加わりやすい。
【0043】
(2c)本実施形態では、保持部材5に調整部材4及び回転部材6が保持されるため、座部跳ね上げ装置300における回転部材6及び調整部材4の配置を容易に行うことができる。また、座部100と共に回転しないように回転支持部14に固定する機能、捩りバネ3の第2端部32を保持する機能、及び、捩りバネ3の弾性力Fの強さを調整する機能をひとまとまりで構成することができる。
【0044】
(2d)本実施形態では、座部100と共に回転しないように支柱に固定される回転支持部14に保持部材5が回転不要に固定される。このため、保持部材5を座部100と共に回転しないように固定する他の部品を備えなくても、回転支持部14を用いることで、簡易な構成で座部跳ね上げ装置300を構成することができる。
【0045】
(2e)本実施形態では、回転部材6の外周面に設けられた「0」から「5」までの数字と共に表記された印に基づき、捩りバネ3の捩り変形による弾性力Fの強さの調整を容易に行うことができる。また、当該印によって、捩りバネ3の捩り変形による弾性力Fの強さを目視で確認することができる。
【0046】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0047】
(3a)上記実施形態では、調整部材4と回転部材6とが保持部材5に保持される構成を例示したが、座部跳ね上げ装置300の構成はこれに限定されるものではない。例えば、座部跳ね上げ装置が保持部材5を備えない構成であってもよい。この場合、例えば、回転支持部14が、回転部材6を直接又は他の部材を介して、捩りバネ3の第2端部32と共に回転移動可能に保持してもよい。また、例えば、回転支持部14が、調整部材4を直接保持可能な構成を有していてもよい。また、例えば、調整部材4は、回転支持部14とは別の座部100と共に回転しない他の部材に保持されていてもよい。
【0048】
(3b)上記実施形態では、回転部材6が筒状に形成されていたが、回転部材の形状はこれに限定されるものではない。例えば、回転部材は、保持部材5の回転面58に沿うように湾曲した板状部材であってもよい。この場合、例えば、保持部材の外周面に設けられる円周方向に延びる溝等に回転部材が回転可能に保持されていてもよい。
【0049】
(3c)上記実施形態では、保持部材が筒状に形成されていたが、保持部材の形状はこれに限定されるものではない。例えば、保持部材は、回転部材が回転移動可能な回転面を有し、回転支持部14に固定可能な構成を有するような様々な形状を有してもよい。
【0050】
(3d)回転部材6の外周面に設けられる、捩りバネ3の弾性力Fの強さを調整するための目安を示す印は、「5」以下の数字又は「5」以上の数字と共に表記されていてもよい。また、例えば、当該印は、数字でなく、「強」及び「弱」等の文字と共に表記されていてもよい。
【0051】
(3e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0052】
3…バネ、4…調整部材、5…保持部材、6…回転部材、7…ストッパ、8,9…ネジ、11…座部フレーム、12…座板、13…クッション部、14…回転支持部、31,51,61…第1端部、32,52,62…第2端部、41…頂点部、53…第1溝、54…位置決め部、55…凸部、56…固定部、57…取付部、58…回転面、63…バネ引掛部、64…当接部、65…第3溝、66…第4溝、71…突出部、100…座部、101…着座面、111…上板、112…下板、113…左側板、114…右側板、115…第1貫通孔、141…軸部、142…防止板、143…第2貫通孔、200…背もたれ、300…座部跳ね上げ装置、561…第3貫通孔、571…第4貫通孔、572…第2溝、611…切欠き部、631…引掛溝、632…折返し部、641…当接面、A…回転軸、F…弾性力。