(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159807
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 7/00 20060101AFI20221011BHJP
H01C 1/016 20060101ALI20221011BHJP
H01C 1/14 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01C7/00 110
H01C1/016
H01C1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064227
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【テーマコード(参考)】
5E028
5E033
【Fターム(参考)】
5E028BA04
5E028BB01
5E028CA02
5E028DA04
5E028EA01
5E028JA13
5E028JC02
5E028JC07
5E033AA27
5E033BC01
5E033BD01
5E033BE02
5E033BG02
5E033BG03
5E033BH02
(57)【要約】
【課題】ヒートショック耐性を向上できるチップ抵抗器を提供する。
【解決手段】チップ抵抗器1の裏面電極14は、絶縁基板10の端面から離れた内方側に設けられた第1裏面電極14aと、第1裏面電極14aと接触する(隣接する)ように絶縁基板10の端面に近い外方側に設けられた第2裏面電極と14bと、を有する。第1裏面電極14aの電気抵抗率は、第2裏面電極14bの電気抵抗率よりも低い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面における長手方向両端部に設けられた一対の表面電極と、
前記一対の表面電極に跨るように設けられた抵抗体と、
前記絶縁基板の裏面における長手方向両端部に設けられ、導電性粒子を含有する合成樹脂材料からなる一対の裏面電極と、
前記絶縁基板の長手方向両端面に設けられ、前記表面電極と前記裏面電極とを電気的に接続する一対の端面電極と、
前記裏面電極および前記端面電極を覆うように電解めっきにより形成された外部電極と、を備え、
前記裏面電極は、
少なくとも前記絶縁基板の端面から離れた内方側に設けられた第1裏面電極と、
前記第1裏面電極と隣接するように前記絶縁基板の端面に近い外方側に設けられた第2裏面電極と、を有し、
前記第1裏面電極の電気抵抗率は、前記第2裏面電極の電気抵抗率よりも低いことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載のチップ抵抗器において、
前記第1裏面電極は、前記第2裏面電極の一部を覆うことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項3】
請求項1に記載のチップ抵抗器において、
前記第1裏面電極は、少なくとも前記絶縁基板と前記第2裏面電極との間に介在する部分を有することを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項4】
請求項3に記載のチップ抵抗器において、
前記第1裏面電極は、前記絶縁基板上に設けられ、
前記第2裏面電極は、前記第1裏面電極上に設けられることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項5】
請求項3に記載のチップ抵抗器において、
前記第2裏面電極は、前記絶縁基板の外方側において前記絶縁基板と接触していることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のチップ抵抗器において、
前記第1裏面電極が含有する前記導電性粒子は、金属粒子であり、
前記第2裏面電極が含有する前記導電性粒子は、カーボン粒子であることを特徴とするチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板のランド上に半田接合される面実装タイプのチップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面における長手方向両端部に設けられた一対の表面電極と、一対の表面電極に跨るように設けられた抵抗体と、絶縁基板の裏面における長手方向両端部に設けられた一対の裏面電極と、絶縁基板の長手方向両端面に設けられ、表面電極と裏面電極とを電気的に接続する一対の端面電極と、裏面電極および端面電極を覆うように設けられた外部電極と、を備える。この種のチップ抵抗器は、回路基板に設けられたランド上に裏面電極を下に向けた姿勢で搭載され、半田接合されることで面実装される。
【0003】
上記のように面実装されたチップ抵抗器では、熱環境の変化が繰り返されること(以下「ヒートショック」という。)により、回路基板の熱膨張率とチップ抵抗器の絶縁基板の熱膨張率との差に起因して熱応力が発生する。そして、この熱応力は回路基板とチップ抵抗器とを接合する半田接合部に作用してクラックを生じさせてしまう。そこで、特許文献1に記載のチップ抵抗器は、裏面電極が、絶縁基板上に設けられた合成樹脂材料からなる応力緩和層と、応力緩和層上に設けられた金属薄膜層と、を備えている。このようなチップ抵抗器は、回路基板に面実装されたときにヒートショックに晒されても、応力緩和層によって半田接合部に作用する熱応力を緩和できるため、ヒートショック耐性を有するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のチップ抵抗器では、裏面電極に電解めっきにより外部電極を安定して形成できるように、応力緩和層の表面は全体的に金属薄膜層によって覆われている。そのため、外部電極は安定して形成できるものの、金属薄膜層が応力緩和層による熱応力の緩和を阻害する虞があり、ヒートショック耐性については未だ改良の余地がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ヒートショック耐性を向上できるチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面における長手方向両端部に設けられた一対の表面電極と、前記一対の表面電極に跨るように設けられた抵抗体と、前記絶縁基板の裏面における長手方向両端部に設けられ、導電性粒子を含有する合成樹脂材料からなる一対の裏面電極と、前記絶縁基板の長手方向両端面に設けられ、前記表面電極と前記裏面電極とを電気的に接続する一対の端面電極と、前記裏面電極および前記端面電極を覆うように電解めっきにより形成された外部電極と、を備え、前記裏面電極は、少なくとも前記絶縁基板の端面から離れた内方側に設けられた第1裏面電極と、前記第1裏面電極と隣接するように前記絶縁基板の端面に近い外方側に設けられた第2裏面電極と、を有し、前記第1裏面電極の電気抵抗率は、前記第2裏面電極の電気抵抗率よりも低いことを特徴とする。
【0008】
このように構成されたチップ抵抗器によれば、導電性粒子を含有する合成樹脂材料からなる第1裏面電極および第2裏面電極の双方の可撓性によって、ヒートショック時の熱応力を吸収して緩和できる。よって、チップ抵抗器のヒートショック耐性を向上できる。しかも、第1裏面電極は、チップ抵抗器の製造工程において電解めっきにより外部電極を形成する際の起点となり、裏面電極の周りに安定して外部電極を形成できる。
【0009】
また、上記構成において、前記第1裏面電極は、前記第2裏面電極の一部を覆う構成にすると、電解めっきを行う際に、第1裏面電極から第2裏面電極に電流を流し易くすることができる。
【0010】
また、上記構成において、前記第1裏面電極は、少なくとも前記絶縁基板と前記第2裏面電極との間に介在する部分を有する構成にすると、電解めっきを行う際に、第1裏面電極から第2裏面電極に電流を流し易くすることができる。
【0011】
また、上記構成において、前記第1裏面電極は、前記絶縁基板上に設けられ、前記第2裏面電極は、前記第1裏面電極上に設けられる構成にすると、電解めっきを行う際に、第1裏面電極から第2裏面電極にさらに電流を流し易くすることができる。
【0012】
また、上記構成において、前記第2裏面電極は、前記絶縁基板の外方側において前記絶縁基板と接触している構成にすると、チップ抵抗器の製造工程において、裏面電極が形成された絶縁基板を分割し易くすることができる。
【0013】
また、上記構成において、前記第1裏面電極が含有する前記導電性粒子は、金属粒子であり、前記第2裏面電極が含有する前記導電性粒子は、カーボン粒子である構成にすると、第1裏面電極によって電解めっきにより外部電極を形成する際の起点を形成できるとともに、第2裏面電極によってヒートショック時の熱応力を緩和できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヒートショック耐性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
【
図3】チップ抵抗器の裏面電極を示す平面図である。
【
図4】(a)~(d)はチップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
【
図5】(e)~(h)はチップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
【
図6】(i)はチップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
【
図7】チップ抵抗器の製造工程を示すフローチャートである。
【
図8】チップ抵抗器の実装状態を示す断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図10】変形例に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図11】第3実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図12】変形例に係るチップ抵抗器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るチップ抵抗器1の平面図であり、
図2は
図1のII-II線断面図である。
【0018】
図1および
図2に示すように、チップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板10と、この絶縁基板10の表面(
図2において上面)における長手方向両端部に設けられた一対の表面電極11と、これら表面電極11に跨るように設けられた抵抗体12と、抵抗体12を覆うように設けられた2層構造の保護層13と、絶縁基板10の裏面(
図2において下面)における長手方向両端部に設けられた一対の裏面電極14と、絶縁基板10の長手方向両端面に設けられ、表面電極11と裏面電極14とを電気的に接続する一対の端面電極15と、裏面電極14および端面電極15を覆うように設けられた2層構造の一対の外部電極16と、を備える。
【0019】
絶縁基板10は例えばアルミナを主成分とするセラミック基板からなる。絶縁基板10は、後述する大判基板(
図4参照)上に格子状に延びる分割溝に沿ってブレイク(分割)して多数個取りされたものである。
【0020】
一対の表面電極11は、Ag系ペーストを大判基板の表面にスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。
【0021】
抵抗体12は、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストを大判基板の表面にスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。抵抗体12の長手方向両端部は、一対の表面電極11と重なる。なお、図示は省略するが、抵抗体12には抵抗値を調整するためのトリミング溝が形成される。
【0022】
保護層13は、抵抗体12を覆うアンダーコート層13aと、アンダーコート層13aを覆うオーバーコート層13bと、を有する。アンダーコート層13aは、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。オーバーコート層13bは、エポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化(焼付け)させたものである。なお、アンダーコート層13aは抵抗体12にトリミング溝が形成される前に設けられ、オーバーコート層13bは抵抗体12にトリミング溝が形成された後に設けられる。
【0023】
一対の裏面電極14は、導電性粒子を含有する合成樹脂(例えばエポキシ樹脂)ペーストを大判基板の裏面にスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。裏面電極14は、絶縁基板10の端面から絶縁基板10の中央側に延びるように形成される。裏面電極14の詳細については後述する。
【0024】
一対の端面電極15は、ニッケル(Ni)/クロム(Cr)等をスパッタリングすることによって形成されたものである。端面電極15は、絶縁基板10の端面を介して離間する表面電極11と裏面電極14とを導通させる。なお、端面電極15は、表面電極11の表面において長手方向の途中位置まで延び、オーバーコート層13bを覆うことなく露出させる。また、端面電極15は、裏面電極14の表面において長手方向の途中位置まで延びて裏面電極14の一部を覆い、その残りを露出させる。
【0025】
一対の外部電極16は、バリヤ―層として機能するNiめっき層16aと、外部接続層として機能するSnめっき層16bと、を有する。Niめっき層16aは、裏面電極14および端面電極15を覆うように電解めっきにより形成されたものである。Snめっき層16bは、Niめっき層16aを覆うように電解めっきにより形成されたものである。外部電極16は、端面電極15、および端面電極15から露出している裏面電極14を覆うように形成される。
【0026】
次に、
図3を参照してチップ抵抗器1の一対の裏面電極14について説明する。
図3はチップ抵抗器1の裏面電極14を示す平面図である。なお、裏面電極14の形状を分かり易くするために、端面電極15および外部電極16の図示は省略されている。
【0027】
図3に示すように、一対の裏面電極14は各々、第1裏面電極14aと、第2裏面電極14bと、を有する。第1裏面電極14aは、絶縁基板10の端面から離れた内方側に設けられる。第2裏面電極14bは、第1裏面電極14aと接触する(隣接する)ように絶縁基板10の端面に近い外方側に設けられる。
【0028】
第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bは何れも矩形状に形成され、第2裏面電極14bの表面積は第1裏面電極14aの表面積よりも大きい。また、第2裏面電極14bは、第1裏面電極14aによって覆われることなくその表面全体を露出させる。
【0029】
上述したように、第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bは導電性粒子を含有する合成樹脂材料からなり、双方とも可撓性を有することでヒートショック時の熱応力を吸収可能である。第1裏面電極14aが含有する導電性粒子は金属粒子(例えばAg)であり、第2裏面電極14bが含有する導電性粒子はカーボン粒子である。
【0030】
また、第2裏面電極14bのカーボン粒子の含有率は、第1裏面電極14aの金属粒子の含有率よりも低い。そのため、第2裏面電極14b全体における合成樹脂(例えばエポキシ樹脂)が占める割合は、第1裏面電極14a全体における合成樹脂が占める割合よりも高く、第2裏面電極14bは第1裏面電極14aよりも高い可撓性を有する。なお、第2裏面電極14bの一部は端面電極15によって覆われるが、その残りは露出しているため、第2裏面電極14bによる熱応力の緩和は阻害されない。
【0031】
第1裏面電極14aの表面粗さは、第2裏面電極14bの表面粗さよりも大きく、外部電極16(Niめっき層16a)と強固に接合する。また、第1裏面電極14aの電気抵抗率は、第2裏面電極14bの電気抵抗率よりも低い(つまり、第1裏面電極14aの電気伝導率は、第2裏面電極14bの電気伝導率よりも高い)。具体的には、第1裏面電極14aの電気抵抗率は概ね10-3[Ω・cm]以下の範囲内で設定され、第2裏面電極14bの電気抵抗率は概ね10-2[Ω・cm]以下の範囲内で設定される。よって、第1裏面電極14aは、第2裏面電極14bに比べて電流が流れ易く、チップ抵抗器1の製造工程において電解めっきにより外部電極16(Niめっき層16a)を形成する際の起点となる。
【0032】
このように、裏面電極14(第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14b)はヒートショック時の熱応力を吸収して緩和し、第1裏面電極14aは電解めっきによる外部電極16(Niめっき層16a)の形成時の起点となる。そのため、裏面電極14は、熱応力の緩和とともに外部電極16の安定した形成を可能とする。
【0033】
次に、
図4~
図7を参照してチップ抵抗器1の製造工程について説明する。
図4(a)~(d)、
図5(e)~(h)、および
図6(i)はチップ抵抗器1の製造工程を示す断面図であり、
図7は同工程を示すフローチャートである。
【0034】
まず、
図7のステップS1に示すように、絶縁基板10が多数個取りされるシート状の大判基板17を準備する(大判基板の準備工程)。この大判基板17には格子状に延びる1次分割溝と2次分割溝(何れも不図示)が設けられ、これら両分割溝で区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ形成領域となる。なお、
図4~
図6には1個のチップ形成領域に対応する断面図が示されているが、実際は多数個分のチップ形成領域に相当する大判基板17に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0035】
図7のステップS2において、大判基板17の表面における2次分割溝で挟まれた領域内に、各1次分割溝を跨ぐようにAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成する。これにより、
図4(a)に示すように、大判基板17の表面にチップ形成領域を挟んで対向する一対の表面電極11を形成する(表面電極形成工程)。
【0036】
次に、
図7のステップS3において、大判基板17の表面に酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成する。これにより、
図4(b)に示すように、一対の表面電極11に跨る抵抗体12を形成する(抵抗体形成工程)。
【0037】
次に、
図7のステップS4において、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成する。これにより、
図4(c)に示すように、抵抗体12を覆うアンダーコート層13aを形成する(アンダーコート層形成工程)。その後、アンダーコート層13a上から抵抗体12に不図示のトリミング溝を形成して抵抗値を調整する。
【0038】
次に、
図7のステップS5において、アンダーコート層13a上からエポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させる。これにより、
図4(d)に示すように、表面電極11の一部とアンダーコート層13aの全体を覆うオーバーコート層13bを形成する(オーバーコート層形成工程)。なお、これらアンダーコート層13aおよびオーバーコート層13bによって保護層13を形成することになる。
【0039】
次に、
図7のステップS6において、大判基板17の裏面における2次分割溝で挟まれた領域内に、各1次分割溝を跨ぐようにカーボン粒子を含有するエポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させる。これにより、
図5(e)に示すように、大判基板17の外方側に第2裏面電極14bを形成する(第2裏面電極形成工程)。
【0040】
次に、
図7のステップS7において、金属粒子(例えばAg)を含有するエポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させる。これにより、
図5(f)に示すように、第2裏面電極14bに対して大判基板17の内方側に第1裏面電極14aを形成する(第1裏面電極形成工程)。この場合、第1裏面電極14aを第2裏面電極14bと接触する(隣接する)ように形成することで、第1裏面電極14aを介して第2裏面電極14bに電流が確実に流れるようにする。
【0041】
これまでの工程は大判基板17に対する一括処理であるが、次に、大判基板17を1次分割溝に沿って1次ブレイク(1次分割)して短冊状基板18を得る。
【0042】
その後、
図7ステップS8において、短冊状基板18の分割面にNi―Crをスパッタリングする。その際に、裏面電極14が形成された複数の短冊状基板18を所定の治具に上下方向に積み重ねて配置する。そして、一の短冊状基板の裏面電極14と、その下側に配置された他の短冊状基板のオーバーコート層13bとが当接することで、両短冊状基板の両端側に所定の隙間を形成し、これら短冊状基板18の分割面にスパッタリングする。これにより、
図5(g)に示すように、短冊状基板18の両端面およびその両端面から表面電極11の表面と裏面電極14の表面とに回り込むように、これらを電気的に接続する端面電極15を形成する(端面電極形成工程)。なお、端面電極15は、表面電極11の一部を覆ってその残りを露出させるとともに、裏面電極14(第2裏面電極14b)の一部を覆ってその残りを露出させる。また、上記のようにスパッタリングにより端面電極15を形成する代わりに、例えばAg系ペーストをディップ塗布して加熱硬化させることで、端面電極15を形成しても良い。
【0043】
次に、短冊状基板18の2次分割溝に沿って2次ブレイク(2次分割)することにより、チップ抵抗器1と同等の大きさのチップ単体1aを得る。
【0044】
最後に、
図7のステップS9において、個片化されたチップ単体1aに対して電解めっきを2度施す。具体的には、1度目の電解めっきにより、
図5(h)に示すように、裏面電極14および端面電極15の表面全体にNiめっき層16aを形成する。この場合、裏面電極14の周りでは、第1裏面電極14aが電解めっきの起点となって当該第1裏面電極14aに電流が十分に流れることで、この第1裏面電極14aを覆うようにNiめっき層16aを形成できる。また、それと同時に、この第1裏面電極14aを介して第2裏面電極14bにも電流が十分に流れることで、第2裏面電極14bを覆うようにNiめっき層16aを形成できる。その後、2度目の電解めっきにより、
図6(i)に示すように、Niめっき層16aを覆うSnめっき層16bを形成する。なお、これらNiめっき層16aおよびSnめっき層16bによって一対の外部電極16を形成することになる。
【0045】
次に、
図8を参照してチップ抵抗器1の実装状態について説明する。
図8はチップ抵抗器1の実装状態を示す断面図である。
【0046】
図8に示すように、チップ抵抗器1は、回路基板19に設けられたランド20上に裏面電極14を下に向けた姿勢で搭載される。その際に、裏面電極14および端面電極15に被着された一対の外部電極16を対応するランド20にそれぞれ半田21を介して接合することで、チップ抵抗器1が回路基板19に面実装される。このとき、可撓性を有する第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bの双方が回路基板19側を向いた状態となる。そのため、ヒートショック時に熱応力が発生しても、その熱応力を第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bによって吸収して緩和できる。
【0047】
以上のように構成されたチップ抵抗器1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0048】
導電性粒子を含有する合成樹脂材料からなる第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bの双方の可撓性によって、ヒートショック時の熱応力を吸収して緩和できる。よって、チップ抵抗器1のヒートショック耐性を向上できる。
【0049】
また、チップ抵抗器1が回路基板19に面実装されたときに、これらを接合する半田21の量が比較的多い方、つまり、絶縁基板10の端面に近い外方側に可撓性の高い第2裏面電極14bが配置される。よって、ヒートショック時に半田21が受ける熱応力を効果的に吸収できる。さらに、第2裏面電極14bの表面積は第1裏面電極14aの表面積よりも大きいので、第2裏面電極14bによって熱応力の緩和を極めて効果的に行える。
【0050】
しかも、第1裏面電極14aの電気抵抗率は、第2裏面電極14bの電気抵抗率よりも低いので、第1裏面電極14aは、チップ抵抗器1の製造工程において電解めっきにより外部電極16(Niめっき層16a)を形成する際の起点となる。よって、裏面電極14の周りに安定して外部電極16を形成できる。特に、第1裏面電極14aは、絶縁基板10の端面から離れた内方側に設けられるので、電解めっきにより外部電極16を形成し難い絶縁基板10の内方側にも安定して外部電極16を形成できる。
【0051】
さらに、上記のように熱応力を緩和する第2裏面電極14bには、電解めっきの際に第1裏面電極14aに比べて電流が流れ難いが、第1裏面電極14aを介して第2裏面電極14bに十分な電流を流すことができる。よって、第2裏面電極14bの周りにも外部電極16を安定して形成できる。
【0052】
このようにチップ抵抗器1においては、第2裏面電極14bによってヒートショック時の熱応力を緩和できるとともに、第1裏面電極14aによって電解めっきの際に外部電極16を安定して形成できる。
【0053】
また、第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bは双方とも合成樹脂材料からなるので、第1裏面電極14aが焼成銀からなるとともに第2裏面電極14bが合成樹脂材料からなる場合に比べて、両者の熱膨張率の差を小さくでき、ヒートショック時の熱応力を抑制できる。また、合成樹脂同士の結合力は高いので、両者の界面にクラックが発生することも抑制できる。
【0054】
さらに、第1裏面電極14aは、外部電極16(Niめっき層16a)と強固に接合するため、裏面電極14に熱応力を緩和する第2裏面電極14bが含まれていても、裏面電極14からNiめっき層16aが剥離することを防止できる。
【0055】
なお、上記第1実施形態では、第1裏面電極14aは、第2裏面電極14bよりも絶縁基板10の内方側に形成されていたが、この構成に限定されない。第1裏面電極14aは、少なくとも絶縁基板10の内方側に形成されていれば良く、例えば第1裏面電極14aは第2裏面電極14bの周りを囲むようにチャネル状(コの字状)に形成されても良い。この場合でも、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、
図9を参照して第2実施形態に係るチップ抵抗器2について説明する。
図9は第2実施形態に係るチップ抵抗器2の断面図である。チップ抵抗器2は、第1裏面電極14aが第2裏面電極14bの一部を覆っている点で上記第1実施形態と異なる。
【0057】
図9に示すように、第1裏面電極14aは、金属粒子(例えばAg)を含有する合成樹脂(例えばエポキシ樹脂)ペーストを大判基板の裏面に複数回スクリーン印刷して加熱硬化させたものである。第1裏面電極14aは、第2裏面電極14bよりも下方に突出し、第2裏面電極14bの内方側の端部を覆っている。第1裏面電極14aの膜厚T1は第2裏面電極14bの膜厚T2よりも大きい。なお、第2裏面電極14bの大半は第1裏面電極14aによって覆われることなく露出しているため、第2裏面電極14bによるヒートショック時の熱応力の緩和は十分に確保される。
【0058】
このようなチップ抵抗器2の製造工程において、裏面電極形成工程(第2裏面電極形成工程および第1裏面電極形成工程)が終了すると、裏面電極14は膜厚T1,T2の差分に相当する大きさの段差部14cを有する。そして、端面電極形成工程においてスパッタリングをする際に、上記第1実施形態と同様に、複数の短冊状基板(
図4(g)参照)を所定の治具に上下方向に積み重ねて配置すると、上下方向に接触し合う2つの短冊状基板の両端側に、段差部14cによって十分な隙間が確保される。そのため、上側の短冊状基板の第2裏面電極14bと、下側の短冊状基板の表面電極11と、が十分離れた状態となる。よって、スパッタリングにより短冊状基板の両端面から表面電極11の表面および裏面電極14の表面に回り込むように、端面電極15を容易に形成可能となる。
【0059】
このように構成されたチップ抵抗器2によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、端面電極形成工程においてスパッタリングをする際に、上下方向に積み重ねて配置された複数の短冊状基板(絶縁基板)のうち、一の短冊状基板の第2裏面電極14bの表面と、その下側に配置された他の短冊状基板の表面電極11と、の間に十分な隙間を確保できる。よって、一の短冊状基板の第2裏面電極14bが、他の短冊状基板の表面電極11に付着することを防止できる。特に、第2裏面電極14bは、カーボン粒子を含有する合成樹脂材料からなるため他の基材に付着し易いため、この効果は極めて有益である。
【0060】
また、短冊状基板の両端面にスパッタリングをする際に、上記のように十分な隙間が確保されるので、短冊状基板の両端面から表面電極11の表面および裏面電極14の表面に回り込むように、端面電極15を容易に形成できる。よって、端面電極15を短冊状基板の端面から離れた内方側にも十分に形成できる。
【0061】
また、第1裏面電極14aが第2裏面電極14bの内方側の端部を覆っているので、電解めっきの際に第1裏面電極14aから第2裏面電極14bに電流を流し易くすることができる。
【0062】
(変形例)
次に、
図10を参照して、第2実施形態の変形例に係るチップ抵抗器2-1について説明する。
図10は変形例に係るチップ抵抗器2-1の断面図である。チップ抵抗器2-1は、第1裏面電極14aの膜厚が第2裏面電極14bの膜厚よりも僅かに厚い点で上記第2実施形態と異なる。
【0063】
図10に示すように、第1裏面電極14aは、第2裏面電極14bの内方側の端部を薄く覆っている。第1裏面電極14aの膜厚は第2裏面電極14bの膜厚よりも僅かに大きい。
【0064】
このように構成されたチップ抵抗器2-1によれば、必要となる第1裏面電極14aの量をできるだけ抑えつつ、電解めっきの際に第1裏面電極14aから第2裏面電極14bに電流を流し易くすることができる。
【0065】
上記第2実施形態では、第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bが互いに異なる材料からなる構成であったが、この構成に限定されず、両者が同一の材料からなる構成でも良い。この場合、第1裏面電極14aの膜厚T1を第2裏面電極14bの膜厚T2よりも大きくすることで、第1裏面電極14aの抵抗値[Ω]を第2裏面電極14bの抵抗値[Ω]よりも小さくできる。このように構成すれば、チップ抵抗器の製造を容易化できるとともに、電解めっきの際に第1裏面電極14aから第2裏面電極14bに電流を流し易くすることができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、
図11を参照して第3実施形態に係るチップ抵抗器3について説明する。
図11は第3実施形態に係るチップ抵抗器3の断面図である。チップ抵抗器3は第1裏面電極14aが絶縁基板10と第2裏面電極14bとの間に介在する部分を有する点で第1実施形態と異なる。
【0067】
図11に示すように、第1裏面電極14aは絶縁基板10の裏面においてその端面から内方側に延びるように設けられる。また、第2裏面電極14bは第1裏面電極14aの表面においてその端面から内方側に延びるように設けられる。第2裏面電極14bは、第1裏面電極14aの大半を覆っており、その残りを露出させる。
【0068】
なお、チップ抵抗器3の製造工程においては、上記第1実施形態で説明したオーバーコート層形成工程後(
図7のステップS5参照)に、第1裏面電極形成工程(
図7のステップS7参照)を行い、その後第2裏面電極形成工程(
図7のステップS6参照)を行えば良い。
【0069】
このように構成されたチップ抵抗器3によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2裏面電極14bにおける第1裏面電極14a側の全表面が、第1裏面電極14aと接触するので、電解めっきの際に第1裏面電極14aから第2裏面電極14bにさらに電流を流し易くすることができる。
【0070】
(変形例)
次に、
図12を参照して第2実施形態の変形例に係るチップ抵抗器3-1について説明する。
図12は変形例に係るチップ抵抗器3-1の断面図である。チップ抵抗器3-1は、第2裏面電極14bが絶縁基板10の外方側において絶縁基板10と接触している点で上記第3実施形態と異なる。
【0071】
図12に示すように、第1裏面電極14aは絶縁基板10の端面から所定間隔Dを存して内方側に設けられる。つまり、第1裏面電極14aは、大判基板(
図4参照)上に延びる1次分割溝を跨いで形成されない。第2裏面電極14bは、絶縁基板10の外方側で絶縁基板10と接触し、絶縁基板10の内方側で第1裏面電極14aの一部を覆い、その残りを露出させる。
【0072】
このように構成されたチップ抵抗器3-1によれば、第1裏面電極14aは大判基板上に延びる1次分割溝を跨いで形成されないため、チップ抵抗器3の製造工程において大判基板を1次分割溝に沿って1次ブレイク(1次分割)し易くすることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態および変形例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態および変形例は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0074】
例えば上記第1実施形態では、第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bは互いに接触していたが、この構成に限定されない。チップ抵抗器1の製造工程において、裏面電極14を覆うように電解めっきによりNiめっき層16aを十分に形成できる範囲内で、第1裏面電極14aと第2裏面電極14bとが隣接するように配置されれば良い。このように配置された第2裏面電極14bも、本発明を構成する第2裏面電極に含まれる。
【0075】
また、上記実施形態では、第1裏面電極14aが含有する金属粒子として例えばAgを挙げて説明をしたが、この構成に限定されることなく、導電性を有する種々の金属粒子(例えばCu等)を採用できる。
【0076】
また、上記実施形態では、第2裏面電極14bは、カーボン粒子が含有された合成樹脂材料からなる構成であったが、この構成に限定されない。第1裏面電極14aの電気抵抗率が第2裏面電極14bの電気抵抗率よりも小さくなる範囲内であれば、第2裏面電極14bの合成樹脂材料にカーボン粒子に加えて金属粒子(例えばAg)が含有されても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、裏面電極14に含まれる合成樹脂としてエポキシ樹脂を挙げて説明をしたが、この構成に限定されることなく、可撓性を有する種々の合成樹脂(例えばフェノール樹脂)を採用できる。
【0078】
さらに、上記実施形態では、第1裏面電極14aおよび第2裏面電極14bは、同じ種類の合成樹脂材料(例えばエポキシ樹脂)を採用した構成であったが、これに限定されることなく、互いに異なる種類の合成樹脂材料を採用しても良い。例えば、第1裏面電極14aにはエポキシ樹脂を採用し、第2裏面電極14bにはフェノール樹脂を採用しても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、第2裏面電極14bの可撓性の方が第1裏面電極14aの可撓性よりも大きい構成であったが、これに限定されることなく、第1裏面電極14aの可撓性の方が第2裏面電極14bの可撓性よりも大きくしても良い。
【符号の説明】
【0080】
1,2,3,2-1,3-1 チップ抵抗器
10 絶縁基板
11 表面電極
12 抵抗体
14 裏面電極
14a 第1裏面電極
14b 第2裏面電極
15 端面電極
16 外部電極