(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159808
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】コンバータ制御装置、コンバータシステム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064229
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】相場 謙一
(72)【発明者】
【氏名】清水 健志
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 剛
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006BB01
5H006BB05
5H006CA01
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006DB01
5H006DB07
5H006DC02
5H006DC04
(57)【要約】
【課題】整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータにおいて、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源にエネルギーが回生することを抑制することのできるコンバータ制御装置を提供する。
【解決手段】コンバータ制御装置は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータを制御するコンバータ制御装置であって、交流電源が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測する波形観測部と、前記交流電源が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定する位相調整部と、前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成する制御信号生成部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータを制御するコンバータ制御装置であって、
交流電源が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測する波形観測部と、
前記交流電源が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定する位相調整部と、
前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成する制御信号生成部と、
を備えるコンバータ制御装置。
【請求項2】
前記スイッチング信号は、
前記交流電源が出力する電圧が基準電圧よりも高い期間に前記上アームのスイッチング素子をオフ状態にし、前記交流電源が出力する電圧が前記基準電圧よりも低い期間に前記下アームのスイッチング素子をオフ状態にする、
請求項1に記載のコンバータ制御装置。
【請求項3】
前記ゼロクロス点を検出するゼロクロス検出部、
を備え、
前記波形観測部は、
前記ゼロクロス検出部が検出した前記ゼロクロス点を基準として、前記波形を観測する、
請求項1または請求項2に記載のコンバータ制御装置。
【請求項4】
前記入力電流を検出する入力電流検出部、
を備え、
前記波形観測部は、
前記ゼロクロス点を基準として、前記入力電流検出部が検出した前記入力電流の前記波形を観測する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のコンバータ制御装置。
【請求項5】
整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータと、
前記コンバータを制御する請求項1から請求項4の何れか一項に記載のコンバータ制御装置と、
を備えるコンバータシステム。
【請求項6】
整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータを制御する制御方法であって、
交流電源が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測することと、
前記交流電源が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定することと、
前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成することと、
を含む制御方法。
【請求項7】
整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータを制御するコンピュータに、
交流電源が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測することと、
前記交流電源が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定することと、
前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータ制御装置、コンバータシステム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品など様々な分野で交流電力を直流電力に変換するコンバータが使用されている。
特許文献1、2には、関連する技術として、コンバータに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-064447号公報
【特許文献2】特開2017-017931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、整流を行う素子の上アームと下アームの両方がスイッチング素子(例えば、トランジスタ)であり、一般的なコンバータに流れるコンバータ電流は、電力を電源からコンバータへ入力(力行)することも、コンバータから電源へ出力(回生)することも可能である。そのため、前述のような一般的なコンバータにおいて、電源に異常(例えば、瞬間的な電圧の低下、位相の急変など)が発生した場合、正常時にリアクトルの電源側(VR1、VS1、VT1)の電位が中性電位Nより高くなることを想定して、コンバータ側(VR2、VS2、VT2)も中性電位Nより高くしている期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなり、電流の向きが逆になり、電源にエネルギーが回生して、コンバータに過電流が流れたりや直流バス電圧が低下するなどの異常が発生する可能性がある。
そこで、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータにおいて、正常時に電源側の電位が中性電位Nよりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源にエネルギーが回生することを抑制することのできる技術が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータにおいて、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源にエネルギーが回生することを抑制することのできるコンバータ制御装置、コンバータシステム、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るコンバータ制御装置は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータを制御するコンバータ制御装置であって、交流電源が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測する波形観測部と、前記交流電源が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定する位相調整部と、前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成する制御信号生成部と、を備える。
【0007】
本開示に係るコンバータシステムは、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータと、前記コンバータを制御する上記のコンバータ制御装置と、を備える。
【0008】
本開示に係る制御方法は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータを制御する制御方法であって、交流電源が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測することと、前記交流電源が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定することと、前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成することと、を含む。
【0009】
本開示に係るプログラムは、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータを制御するコンピュータに、交流電源が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測することと、前記交流電源が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定することと、前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るコンバータ制御装置、コンバータシステム、制御方法及びプログラムによれば、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータにおいて、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源にエネルギーが回生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態によるコンバータ制御部の構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態における第1スイッチング信号の一例を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態によるコンバータ制御装置の処理フローの一例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態によるコンバータにおけるR相の電流の向きを説明するための図である。
【
図6】本開示の一実施形態によるコンバータに関連するコンバータにおける制御の一例を示す図である。
【
図7】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
(モータ駆動装置の構成)
本開示の一実施形態によるモータ駆動装置について説明する。
図1は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1の構成を示す図である。モータ駆動装置1は、交流電源4からの交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を交流電力に変換して圧縮機モータ20に出力する装置である。モータ駆動装置1は、
図1に示すように、コンバータシステム100、インバータ3、リアクトル6a、6b、6c、平滑コンデンサ12、インバータ制御装置19を備える。コンバータシステム100は、コンバータ2、コンバータ制御装置13を備える。
【0013】
交流電源4は、リアクトル6a、6b、6cを介して、コンバータ2に交流電力を供給する。以下の説明では、交流電源4は、三相交流電源であるものとして説明する。ただし、交流電源4は、三相交流電源に限定するものではなく、コンバータ2が交流電力を直流電力に変換できる範囲において相の数は任意であってよい。
【0014】
コンバータ2は、交流電源4からの三相交流電力を直流電力に変換してインバータ3に出力する装置である。コンバータ2は、コンバータ制御装置13による制御の下、交流電源4が出力する三相交流電圧に同期した(すなわち、位相が一致した)電流(コンバータ電流)を流す。コンバータ制御装置13による制御については後述する。
【0015】
リアクトル6a、スイッチング素子7a、スイッチング素子8aは、第1スイッチング回路9aを構成する。第1スイッチング回路9aは、R相に対応する回路である。リアクトル6b、スイッチング素子7b、スイッチング素子8bは、第2スイッチング回路9bを構成する。第2スイッチング回路9bは、S相に対応する回路である。リアクトル6c、スイッチング素子7c、スイッチング素子8cは、第3スイッチング回路9cを構成する。第3スイッチング回路9cは、T相に対応する回路である。これら第1~第3スイッチング回路(9a、9b、9c)と平滑コンデンサ12とによって整流回路が構成される。この整流回路は、インバータ3に入力される電圧を生成する。
【0016】
スイッチング素子7a、スイッチング素子8aは、コンバータ制御装置13の後述するコンバータ制御部15が生成する信号SgRに応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第1スイッチング回路9aに流れる電流の値を変化させる。同様に、スイッチング素子7b、スイッチング素子8bは、後述するコンバータ制御部15が生成する信号SgSに応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第2スイッチング回路9bに流れる電流の値を変化させる。また、同様に、スイッチング素子7c、スイッチング素子8vは、後述するコンバータ制御部15が生成する信号SgTに応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第3スイッチング回路9cに流れる電流の値を変化させる。
【0017】
なお、スイッチング素子7a、7b、7c、8a、8b、8cとしては、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が挙げられる。また、
図1に示すように、スイッチング素子7a、7b、7c、8a、8b、8cのそれぞれには、上側をカソードとし下側をアノードとするダイオード10が並列に接続される。
【0018】
平滑コンデンサ12は、第1スイッチング回路9a、第2スイッチング回路9b、第3スイッチング回路9cのそれぞれから電流を受ける。つまり、インバータ3に入力される電圧は、第1スイッチング回路9a、第2スイッチング回路9b、第3スイッチング回路9cのそれぞれから平滑コンデンサ12に流れる電流値の総和によって決定される。
【0019】
コンバータ制御装置13は、
図1に示すように、入力電流検出部30、ゼロクロス検出部17、コンバータ制御部15を備える。入力電流検出部30は、交流電源4のR相、S相、T相それぞれに流れる電流(以下、「入力電流」と記載)を検出する。入力電流検出部30は、検出した入力電流の情報をコンバータ制御部15に出力する。
【0020】
ゼロクロス検出部17は、交流電源4が出力する電圧のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス点は、交流電源4が出力する電圧がゼロボルトを交差する時刻を示し、その時刻がモータ駆動装置1の処理において基準の時刻となる。ゼロクロス検出部17は、ゼロクロス点の情報を含むゼロクロス信号を生成する。ゼロクロス検出部17は、ゼロクロス信号をコンバータ制御部15に出力する。
【0021】
コンバータ制御部15は、ゼロクロス点を基準に入力電流波形を観測し、観測した入力電流波形に基づいて、信号SgR、SgS、SgTのそれぞれを生成し、信号SgR、SgS、SgTのそれぞれを用いてコンバータ2を制御する。コンバータ制御部15による制御の詳細は後述する。
【0022】
インバータ3は、コンバータ2から出力された直流電力を三相交流電力に変換して圧縮機モータ20に出力する装置である。インバータ3は、スイッチング素子181、182、183、184、185、186を備える。スイッチング素子181、182、183、184、185、186としては、パワー電界効果トランジスタ、IGBT等が挙げられる。
【0023】
スイッチング素子181~186は、ブリッジ回路を構成する。具体的には、スイッチング素子181と182、スイッチング素子183と184、スイッチング素子185と186のそれぞれが対を成してブリッジ回路が構成される。スイッチング素子181~186のそれぞれは、インバータ制御装置19から受ける信号に応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、スイッチング素子181~186のそれぞれに流れる電流を制御し、圧縮機モータ20を駆動する三相交流電力を生成する。この三相交流電力が圧縮機モータ20に出力されることにより、圧縮機モータ20が動作する。
【0024】
インバータ制御装置19は、スイッチング素子181のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子181に出力する。また、インバータ制御装置19は、スイッチング素子182のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子182に出力する。同様に、インバータ制御装置19は、スイッチング素子183~186のそれぞれがオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子181~186のそれぞれに出力する。なお、
図1では、インバータ制御装置19からインバータ3に出力されるゲート駆動信号をまとめてゲート駆動信号Spwmと示している。インバータ制御装置19は、ブリッジ回路を構成するスイッチング素子181~186それぞれの開閉を制御する。インバータ制御装置19は、例えば、図示していない上位装置から入力される要求回転数指令に基づいて、スイッチング素子181~186のゲート駆動信号Spwmを生成する。インバータ制御装置19は、生成したゲート駆動信号Spwmをインバータ3に与える。なお、インバータ制御の具体的な手法の例としては、ベクトル制御、センサレスベクトル制御、V/F(Variable Frequency)制御、過変調制御、1パルス制御などが挙げられる。
【0025】
コンバータ制御部15は、ゼロクロス点を基準に入力電流波形を観測し、観測した入力電流波形に基づいて、信号SgR、SgS、SgTのそれぞれを生成し、信号SgR、SgS、SgTのそれぞれを用いてコンバータ2を制御する制御部である。具体的には、コンバータ制御部15は、コンバータ2に流れるコンバータ電流の位相が交流電源4の電圧の位相に同期するような信号SgR、SgS、SgTであって、上アームおよび下アームのスイッチング素子の両方がオン状態になる期間のない(すなわち、上アームまたは下アームのスイッチング素子の一方のみをオン状態にし、他方をオフ状態にする)信号SgR、SgS、SgTを生成し、信号SgR、SgS、SgTのそれぞれを用いてコンバータ2を制御する。
【0026】
図2は、コンバータ制御部15の機能ブロック図である。コンバータ制御部15は、
図2に示すように、波形観測部21、位相調整部22、制御信号生成部23(信号生成部の一例、制御部の一例)、記憶部24を備える。
【0027】
波形観測部21は、ゼロクロス検出部17が検出した交流電源4のゼロクロス点を示すゼロクロス信号をゼロクロス検出部17から受ける。波形観測部21は、入力電流検出部30から入力電流波形を受ける。波形観測部21は、ゼロクロス点を基準として、入力電流波形を観測する。位相調整部22は、ゼロクロス検出部17で検出した電圧の位相と入力電流検出部30で検出した電流の位相を同相にするために、波形観測部21が観測した入力電流波形の位相の調整量を特定する。
【0028】
制御信号生成部23は、位相調整部22が特定した位相の調整量に応じて、入力電流の位相を交流電源4が出力する電圧と同相にする、第1スイッチング回路9aを制御するための第1スイッチング信号SgR、第2スイッチング回路9bを制御するための第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング回路9cを制御するための第3スイッチング信号SgTを生成する。
【0029】
なお、第1スイッチング信号SgR、第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング信号SgTのそれぞれは、上アームおよび下アームのスイッチング素子の両方がオン状態になる期間のない電圧指令である。
図3は、本開示の一実施形態における第1スイッチング信号SgRの一例を示す図である。
図3の(a)の部分は、スイッチング素子7aがオン状態となる期間とオフ状態となる期間を示している。また、
図3の(b)の部分は、スイッチング素子8aがオン状態となる期間とオフ状態となる期間を示している。なお、
図3の(c)、(d)の部分は、第2スイッチング信号SgS、
図3の(e)、(f)の部分は、第3スイッチング信号SgTに対応している。
【0030】
記憶部24は、コンバータ制御部15が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。例えば、記憶部24は、位相調整部22が特定した位相の調整量、制御信号生成部23が生成した第1スイッチング信号SgR、第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング信号SgTを記憶する。
【0031】
次に、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1の処理について説明する。
図4は、本開示の一実施形態によるコンバータ制御装置の処理フローの一例を示す図である。ここでは、
図4を参照して、コンバータ制御装置13の処理について説明する。
【0032】
入力電流検出部30は、交流電源4のR相、S相、T相それぞれに流れる入力電流を検出する(ステップS1)。入力電流検出部30は、検出した入力電流の情報をコンバータ制御部15に出力する。
【0033】
ゼロクロス検出部17は、交流電源4が出力する電圧のゼロクロス点を検出する(ステップS2)。ゼロクロス検出部17は、ゼロクロス点の情報を含むゼロクロス信号を生成する(ステップS3)。ゼロクロス検出部17は、ゼロクロス信号をコンバータ制御部15に出力する。
【0034】
波形観測部21は、ゼロクロス検出部17が検出した交流電源4のゼロクロス点を示すゼロクロス信号をゼロクロス検出部17から受ける。波形観測部21は、入力電流検出部30から入力電流波形を受ける。波形観測部21は、ゼロクロス点を基準として、入力電流波形を観測する(ステップS4)。位相調整部22は、ゼロクロス検出部17で検出した電圧の位相と入力電流検出部30で検出した電流の位相を同相にするために、波形観測部21が観測した入力電流波形の位相の調整量を特定する(ステップS5)。
【0035】
制御信号生成部23は、位相調整部22が特定した位相の調整量に応じて、入力電流の位相を交流電源4が出力する電圧と同相にする(すなわち、力率を1にする)、第1スイッチング回路9aを制御するための第1スイッチング信号SgR、第2スイッチング回路9bを制御するための第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング回路9cを制御するための第3スイッチング信号SgTを生成する(ステップS6)。
【0036】
なお、第1スイッチング信号SgR、第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング信号SgTのそれぞれは、上アームおよび下アームのスイッチング素子の両方がオン状態になる期間のない電圧指令である。
【0037】
図5は、本開示の実施形態によるコンバータ2におけるR相の電流の向きを説明するための第1の図である。
図4を参照した上述のような制御を行った場合、正常時にリアクトル6の電源(交流電源4)側(VR1、VS1、VT1)の電位がコンバータ(コンバータ2)側(VR2、VS2、VT2)の電位よりも高くなるべき期間には、
図5において実線で示される向きに電流が流れる。つまり、上アームでは、ダイオード10に電流が流れ、下アームでは、スイッチング素子8aに電流が流れる。また、
図4を参照した上述のような制御を行った場合、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなるべき期間には、
図5において破線で示される向きに電流が流れる。つまり、上アームでは、スイッチング素子7aに電流が流れ、下アームでは、ダイオード10に電流が流れる。
【0038】
図4を参照した上述のような制御を行い、例えば、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、交流電源4が瞬時停電などで瞬間的に出力する電圧が低下した場合、上アームのスイッチング素子7aは、オフ状態である。また、ダイオード10は、逆方向のバイアスとなり電流を流さない。つまり、本開示の実施形態によるコンバータ制御装置13が行う制御により、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータにおいて、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源にエネルギーが回生することを抑制することができる。
【0039】
図6は、本開示の実施形態によるコンバータ2に関連するコンバータにおける制御の一例を示す図である。
図6に示す制御は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータにおいて上アームをPWM制御する期間に下アームもPWM制御するものである。このような制御を行い、例えば、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、交流電源4が瞬時停電などで瞬間的に出力する電圧が低下した場合、上アームのスイッチング素子7aを介して、コンバータ側から電源側に電流が流れてしまう。
【0040】
以上、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1について説明した。
本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1のコンバータ制御装置13は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータ2を制御する。コンバータ制御装置13において、波形観測部21は、交流電源4が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測する。位相調整部22は、交流電源4が出力する電圧の位相と、入力電流の位相とを同相にするための入力電流の波形の位相の調整量を特定する。制御信号生成部23は、位相の調整量に応じて、入力電流の位相を交流電源4が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成する。
【0041】
こうすることで、コンバータ制御装置13は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子を有するコンバータにおいて、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源にエネルギーが回生することを抑制することができる。
【0042】
なお、上述の第1スイッチング信号SgRを生成する方法において、力率は1である(すなわち、R相の電圧の位相とR相の電流の位相が同相であり、S相の電圧の位相とS相の電流の位相が同相であり、T相の電圧の位相とT相の電流の位相が同相である)と仮定している。制御信号生成部23は、上述の第1スイッチング信号SgRを生成する方法を、S相に対応する第2スイッチング回路9bを制御するための第2スイッチング信号SgSの生成、及び、T相に対応する第3スイッチング回路9cを制御するための第3スイッチング信号SgTの生成のそれぞれに適用することにより、第1スイッチング信号SgRと同様に、第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング信号SgTを生成することができる。
【0043】
なお、本開示の一実施形態では、交流電源4の例を示したが、本開示の別の実施形態では電源は三相以外の相の電圧及び電流を出力する電源であってもよい。
【0044】
なお、本開示の各実施形態における記憶部24、その他の記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部24、その他の記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0045】
なお、本開示の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0046】
本開示の実施形態における記憶部24や記憶装置(レジスタ、ラッチを含む)のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部24や記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0047】
本開示の実施形態について説明したが、上述のコンバータ制御装置13、インバータ制御装置19、コンバータ制御部15、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ50は、
図7に示すように、CPU60、メインメモリ70、ストレージ80、インターフェース90を備える。
例えば、上述のコンバータ制御装置13、インバータ制御装置19、コンバータ制御部15、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ50に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ80に記憶されている。CPU60は、プログラムをストレージ80から読み出してメインメモリ70に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU60は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ70に確保する。
【0048】
ストレージ80の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ80は、コンピュータ50のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース90または通信回線を介してコンピュータ50に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ50に配信される場合、配信を受けたコンピュータ50が当該プログラムをメインメモリ70に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ80は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0049】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、種々の省略、種々の置き換え、種々の変更を行ってよい。
【0051】
<付記>
本開示の各実施形態に記載のコンバータ制御装置(13)、コンバータシステム(100)、制御方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0052】
(1)第1の態様に係るコンバータ制御装置(13)は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)を制御するコンバータ制御装置(13)であって、交流電源4が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測する波形観測部(21)と、前記交流電源(4)が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定する位相調整部(22)と、前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源(4)が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成する制御信号生成部(23)と、を備える。
【0053】
このコンバータ制御装置(13)により、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)において、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源(4)にエネルギーが回生することを抑制することができる。
【0054】
(2)第2の態様に係るコンバータ制御装置(13)は、(1)のコンバータ制御装置(13)であって、前記スイッチング信号は、前記交流電源(4)が出力する電圧が基準電圧よりも高い期間に前記上アームのスイッチング素子(7a、7b、7c)をオフ状態にし、前記交流電源(4)が出力する電圧が前記基準電圧よりも低い期間に前記下アームのスイッチング素子(8a、8b、8c)をオフ状態にするものであってもよい。
【0055】
このコンバータ制御装置(13)により、スイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を介した電流の逆流を抑制することができる。
【0056】
(3)第3の態様に係るコンバータ制御装置(13)は、(1)または(2)のコンバータ制御装置(13)であって、前記ゼロクロス点を検出するゼロクロス検出部(17)、を備え、前記波形観測部(21)は、前記ゼロクロス検出部(17)が検出した前記ゼロクロス点を基準として、前記波形を観測するものであってもよい。
【0057】
このコンバータ制御装置(13)により、ゼロクロス点を基準として位相を調整することができる。
【0058】
(4)第4の態様に係るコンバータ制御装置(13)は、(1)から(3)の何れか1つのコンバータ制御装置(13)であって、前記入力電流を検出する入力電流検出部(30)、を備え、前記波形観測部(21)は、前記ゼロクロス点を基準として、前記入力電流検出部(30)が検出した前記入力電流の前記波形を観測するものであってもよい。
【0059】
このコンバータ制御装置(13)により、入力電流の波形を観測することができる。
【0060】
(5)第5の態様に係るコンバータシステムは、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)と、前記コンバータ(2)を制御する上記何れかのコンバータ制御装置(13)と、を備える。
【0061】
このコンバータシステムにより、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)において、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源(4)にエネルギーが回生することを抑制することができる。
【0062】
(6)第6の態様に係る制御方法は、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)を制御する制御方法であって、交流電源(4)が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測することと、前記交流電源(4)が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定することと、前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源(4)が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成することと、を含む。
【0063】
この制御方法により、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)において、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源(4)にエネルギーが回生することを抑制することができる。
【0064】
(7)第7の態様に係るプログラムは、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)を制御するコンピュータ(50)に、交流電源(4)が出力する電圧のゼロクロス点を基準として、入力電流の波形を観測することと、前記交流電源(4)が出力する電圧の位相と、前記入力電流の位相とを同相にするための前記波形の位相の調整量を特定することと、前記調整量に応じて、前記入力電流の位相を前記交流電源(4)が出力する電圧と同相にするスイッチング信号を生成することと、を実行させる。
【0065】
このプログラムにより、整流を行う素子として上アームと下アームの両方にスイッチング素子(7a、7b、7c、8a、8b、8c)を有するコンバータ(2)において、正常時に電源側の電位がコンバータ側の電位よりも高くなるべき期間に、電源側の電位がコンバータ側の電位よりも低くなった場合であっても、電源(4)にエネルギーが回生することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・モータ駆動装置
2・・・コンバータ
3・・・インバータ
6a、6b、6c・・・リアクトル
7a、7b、7c、8a、8b、8c、181、182、183、184、185、186・・・スイッチング素子
12・・・平滑コンデンサ
13・・・コンバータ制御装置
15・・・コンバータ制御部
17・・・ゼロクロス検出部
19・・・インバータ制御装置
20・・・圧縮機モータ
21・・・波形観測部
22・・・位相調整部
23・・・制御信号生成部
24・・・記憶部
30・・・入力電流検出部
50・・・コンピュータ
60・・・CPU
70・・・メインメモリ
80・・・ストレージ
90・・・インターフェース
100・・・コンバータシステム