(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159834
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/00 20060101AFI20221011BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B28D1/00
E04G23/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064261
(22)【出願日】2021-04-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】593162291
【氏名又は名称】株式会社フタミ
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 竜一
【テーマコード(参考)】
2E176
3C069
【Fターム(参考)】
2E176AA03
2E176AA05
2E176BB05
2E176BB36
2E176DD28
3C069AA06
3C069BA07
3C069BB03
3C069BB04
3C069BC02
3C069CA09
3C069EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中心部分などに、表面処理残しが生じないようにすることができるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置を提供する。
【解決手段】ウォータージェットノズル14は、表面処理装置の回転軸に取付けられる。ウォータージェットノズル14は、複数の噴射ノズル14mを有する左右2つの回転体14h,14iを備えている。回転体14h,14iは、ウォータージェットノズル14の全体の回転とは別に、自由回転可能となっている。ウォータージェットノズル14の全体が回転しながら、回転体14h,14iが回転して、高圧水が噴射される。これにより、高圧水の噴射軌跡が中心部分でもクロスすることとなり、中心部分の表面処理が残るという問題を解消できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理装置において、高圧水を連通可能な回転軸に取付けられ、前記回転軸の回転に応じて全体が回転するウォータージェットノズルであって、
噴射ノズルを有する少なくとも1つの回転体を備えており、
全体の回転とは別に、前記回転体が回転可能となっており、
全体が回転しながら、前記回転体が回転して、前記高圧水が噴射されることを特徴とする、ウォータージェットノズル。
【請求項2】
前記噴射ノズルからの前記高圧水の噴射によって、前記回転体が自転することを特徴とする、請求項1に記載のウォータージェットノズル。
【請求項3】
前記噴射ノズルからの前記高圧水の噴射によって、前記回転体が自転可能なように、前記噴射ノズルは、鉛直下方向に対して、角度を付けて、設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のウォータージェットノズル。
【請求項4】
前記回転軸に取付けられており、前記高圧水の通水路を有する連結手段を備えており、
前記回転体は、前記連結手段に対して、自由回転可能に取付けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のウォータージェットノズル。
【請求項5】
前記回転体は、前記連結手段に対して、回転可能ジョイントを用いて、自由回転可能に取付けられていることを特徴とする、請求項4に記載のウォータージェットノズル。
【請求項6】
前記回転体は、前記回転可能ジョイントの回転軸心を中心にして、左右に、複数の前記噴射ノズルを有することを特徴とする、請求項5に記載のウォータージェットノズル。
【請求項7】
前記回転体は、前記回転軸の回転軸心を中心にして、左右に、少なくとも2つ、前記連結手段に対して、自由回転可能に取付けられていることを特徴とする、請求項4~6のいずれかに記載のウォータージェットノズル。
【請求項8】
前記回転体において、左又は右の端部の前記噴射ノズルは、外側に向けて前記高圧水を噴射するように、傾斜して設けられていることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のウォータージェットノズル。
【請求項9】
供給される高圧水を連通させると共に回転可能に構成された回転軸と、
前記回転軸を回転させるための回転手段と、
前記回転軸に取付けられて回転可能なウォータージェットノズルとを備え、
ウォータージェットノズルは、請求項1~8のいずれかに記載の構造を有することを特徴とする、表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向に複数の噴射ノズルを配置しており、回転させて使用されるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向に複数の噴射ノズルを配置した横長の給水管によるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置として、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1では、横方向に複数のノズル(3)及び(3′)を配置した給水管(2)がウォータージェットノズルとなる(括弧内の符号は、特許文献1における符号を意味する。以下同様。)。特許文献1では、給水管(2)の中心部が、ロータリージョイントを介してハウジング(1)に回転自在に保持されている。回転駆動手段(4)がロータリージョイントの回転軸を回転させることで、給水管(2)が回転するように構成されている。別途の高圧水発生手段からの高圧水をノズル(3)から路面等の表面に噴射することで、剥離、はつり作業を行うことができる。給水管(2)の回転中心(P)を中心に、左右に、ノズル(3)及びノズル(3′)が一列に配置されており、各ノズル(3)の中心からの半径と、各ノズル(3′)の中心からの半径とは、異なるようなっている。さらに、特許文献1の
図5に示されているように、一側面視において、各ノズル(3)及び各ノズル(3′)は、回転軸心方向に対して、それぞれ異なる方向に、10度ないし30度の角度(α1)及び(α2)だけ傾斜するように配置されている。
【0004】
特許文献1では、給水管(2)の回転中心(P)からの左右の各ノズル(3)及び各ノズル(3′)の距離を異ならせることで、回転によって得られる同心円の半径が異なることとなるので、高圧水の噴射を密な状態とすることが可能となる。また、各ノズル(3)及び各ノズル(3′)を、一側面視において、回転軸心に対して傾斜させることで、回転方向に対して、常に斜め方向に、高圧水を噴射させることが可能となる。これにより、表面処理(例えば、路面の剥離や洗浄など)の効率を高めることが可能となる。
【0005】
図8は、他の従来のウォータージェットノズル41の構成を示す図である。
図8において、ウォータージェットノズル41は、全体が逆T字状であり、上部に、雌ネジ47を有している。雌ネジ47が、図示しないロータリージョイントの回転軸の雄ネジ部分と連結する。ロータリージョイントの回転軸からの高圧水が給水されて、第1給水路45及び第2給水路46を介して、下方に向けて半径方向に二列にジグザグに形成された各第3給水路48に、高圧水が供給される。
【0006】
第3給水路48の先端の装着穴42には、同じく、二列にジグザグに噴射ノズル43が取付けられている。これにより、密な噴射が可能となっている。ただし、回転軸心の中心付近の複数の第3給水路48(
図8(c)では、左右4つずつ計8個)は、栓部材44で栓がされている。高圧水は、中心部分ほど、強くなるため、中心部分が必要以上に剥離等されるのを防止するためである。
【0007】
なお、
図8(c)において、栓部材44及び噴射ノズル43について、同じ図示の部分は、同じ箇所であり、全てには、符号を付していない。噴射ノズル43については、中心に小さい丸い穴を図示している。
図8(b)及び(c)の回転軸心を中心にした左右の噴射ノズル43は、中心からの距離r1,r2,r3,r4(ここでは、栓部材44で塞がれている)がそれぞれ異なるように配置されている。なお、
図8(c)では、r4までしか記載していないが、中心から離れる全ての噴射ノズル43についても同様、半径が異なるようになっている(半径を示す図は省略している)。これによって、特許文献1と同様に、中心からの同心円半径が異なることとなり、表面処理の効率を高めている。
【0008】
ウォータージェットノズル41では、特許文献1の場合と異なり、
図8(d)に示すように、一側面視において、回転軸心に対して、同じ方向に傾斜している。これにより、
ウォータージェットノズルが180度回転した際、高圧水の噴射方向が反対になるため、ムラ無く、高圧水を吹き付けることが可能としていた。
【0009】
これらのウォータージェットノズルを用いた表面処理装置は、本願出願人によって、商品名称「アクアサーフェス工法」として、実用化されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】株式会社フタミWEBサイト,検索日:2020年10月1日、作成者株式会社フタミ,URL:http://www.sb-futami-aj.co.jp/,http://www.sb-futami-aj.co.jp/aj/index.html,http://www.sb-futami-aj.co.jp/aj/index2.html、http://www.sb-futami-aj.co.jp/aj/as.html,http://www.sb-futami-aj.co.jp/aj/as2.html,http://www.sb-futami-aj.co.jp/aj/index3.html,http://www.sb-futami-aj.co.jp/aj/index4.html,http://www.sb-futami-aj.co.jp/common/pdf/aj_panf.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8に記載したウォータージェットノズル41は、回転しつつ、かつ、前進しながら、路面等の表面を処理していくこととなる。
図9は、噴射ノズル43から噴射される高圧水の軌跡を示した図(「軌跡図」という。以下同様。)である。ウォータージェットノズル41は、地点Aで一回転すれば、噴射ノズル43がそれぞれ一つの円(a1,a2,a3,・・・)の軌跡を描くこととなる。ウォータージェットノズル41が地点Bまで、前進すれば、噴射ノズル43がそれぞれ一つの円(b1,b2,b3,・・・)の軌跡を描くこととなる。このように、高圧水を噴射しながら、ウォータージェットノズル41が前進していくと、
図9に示すような高圧水の軌跡が得られることとなる。
【0013】
しかし、
図9の太い点線で示した領域のように、ウォータージェットノズル41の回転中心部分については、一方向(
図9の軌跡図では、上から下の方向)にしか高圧水が当らない。他方、太い点線以外の領域のように、ウォータージェットノズル41の中心から離れた領域では、ウォータージェットノズル41の回転と前進によって、
図9の軌跡図上で、斜め上からや斜め下から高圧水がクロスするようにして、当ることとなる。
【0014】
その結果、クロスに高圧水が当る領域に比べて、ウォータージェットノズル41の中心部分では、表面処理の残存が多くなる。
【0015】
図10は、従来のウォータージェットノズル41を用いた場合の路面の表面処理の結果を示す図面代用写真である。
図10の太い点線で示した領域のように、中心部分の表面処理の残存が多いのが確認できる。
【0016】
それゆえ、本発明は、中心部分などに、表面処理残しが生じないようにすることができるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、表面処理装置において、高圧水を連通可能な回転軸に取付けられ、回転軸の回転に応じて全体が回転するウォータージェットノズルであって、噴射ノズルを有する少なくとも1つの回転体を備えており、全体の回転とは別に、回転体が回転可能となっており、全体が回転しながら、回転体が回転して、高圧水が噴射されることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、噴射ノズルからの高圧水の噴射によって、回転体が自転するとよい。
【0019】
好ましくは、噴射ノズルからの高圧水の噴射によって、回転体が自転可能なように、噴射ノズルは、鉛直下方向に対して、角度を付けて、設けられているとよい。
【0020】
好ましくは、回転軸に取付けられており、高圧水の通水路を有する連結手段を備えており、回転体は、連結手段に対して、自由回転可能に取付けられているとよい。
【0021】
好ましくは、回転体は、連結手段に対して、回転可能ジョイントを用いて、自由回転可能に取付けられているとよい。
【0022】
好ましくは、回転体は、回転可能ジョイントの回転軸心を中心にして、左右に、複数の噴射ノズルを有するとよい。
【0023】
好ましくは、回転体は、回転軸の回転軸心を中心にして、左右に、少なくとも2つ、連結手段に対して、自由回転可能に取付けられているとよい。
【0024】
好ましくは、回転体において、左又は右の端部の噴射ノズルは、外側に向けて高圧水を噴射するように、傾斜して設けられているとよい。
【0025】
本発明は、供給される高圧水を連通させると共に回転可能に構成された回転軸と、回転軸を回転させるための回転手段と、回転軸に取付けられて回転可能なウォータージェットノズルとを備える表面処理装置であって、ウォータージェットノズルは、上記のいずれかに記載の構造を有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ウォータージェットノズルの全体の回転とは別に、回転体が回転可能となっており、全体が回転しながら、回転体が回転して、高圧水が噴射されることとなるので、高圧水の噴射軌跡が、ウォータージェットノズルの全体の回転の中心部分においても、クロスするようになる。これにより、中心部分などでの表面処理残りが生じないようになる。また、本発明によって、噴射ノズルの数を最小限の数にしても、むらのない表面処理が可能となるので、その結果、従来に比べて、使用する水の量が少なくなり、排水による汚水も少なくなる。
【0027】
回転体を高圧水の噴射の力によって、自転するように構成することで、回転体を回転させるための動力及び/又は伝達手段を用いなくてもよくなる。そのため、たとえば、従来の表面処理装置のカバーの高さを改造するなど、最小限の改造で、遊星回転するウォータージェットノズルを提供することが可能となる。
【0028】
噴射ノズルを傾斜させて配置することで、回転体を高圧水の噴射の力で、確実に、自転させることができる。
【0029】
回転軸に取付けられた連結手段に、回転体を自由回転可能に取付けることで、全体の回転とは別に、自由回転可能な回転体を備えるウォータージェットノズルが提供されることとなる。
【0030】
連結手段として、スイベルジョイントなどの回転可能ジョイントを用いれば、簡易な構造で、自由回転可能な回転体を構成することができる。
【0031】
回転可能ジョイントの回転軸心を中心に、左右に、複数の噴射ノズルを有するように回転体を構成すれば、回転体が安定的に自由回転することとなる。
【0032】
回転体の左又は右の端部に外側に向けて高圧水を噴射するように噴射ノズルを構成すれば、路面の端部などの処理残りを防止することが可能となる。
【0033】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の概略構成を示す正面である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の概略構成を示す左側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の概略構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態におけるウォータージェットノズル14の概略構成を示す図である。(a)は正面図、(b)は(a)における矢印A方向からの部分側面図、(c)は平面図である。
図4に示す矢印は、高圧水の噴射方向を示しているが、実際は、噴射ノズル14mからの噴射後、高圧水は、広がりを持って、噴射される。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における表面処理装置20が進行方向に移動しながらウォータージェットノズル14から高圧水が噴射される場合の高圧水の軌跡図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の一実施例を示す写真である。(a)は、底面から見たときの写真である。(b)は、高圧水を噴射したときの写真である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の一実施例を用いて、路面の表面を処理したときの写真である。(a)は、全体写真である。(b)は、拡大写真である。
【
図8】
図8は、従来のウォータージェットノズル41の概略構成を示す図である。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図である。なお、
図13において、噴射ノズル43、第3給水路48、及び装着穴42については、ウォータージェットノズル41の内部に存在する箇所についても、分かりやすくするために実線で表している。
図8に示す矢印は、高圧水の噴射方向を示しているが、実際は、噴射ノズル14dからの噴射後、高圧水は、広がりを持って、噴射される。
【
図9】
図9は、進行方向に進みながら回転するときの従来のウォータージェットノズル41から噴射される高圧水の軌跡図である。
【
図10】
図10は、従来のウォータージェットノズル41を用いて路面の表面を処理したときの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(ウォータージェットによる表面処理装置20の全体構成)
図1ないし
図3を参照しながら、ウォータージェットによる表面処理装置20の全体構成について説明する。
【0036】
表面処理装置20は、架台1と、自在車輪2と、固定車輪3と、ハンドル4と、高さ調整ハンドル5と、2つのロックハンドル6と、ロータリージョイント7と、エアモータ8と、筐体9と、カバー10と、連結部11と、ウォータージェットノズル14と、バキューム接続口15とを備える。
【0037】
架台1の前輪は、固定車輪3である。架台1の後輪は、自在車輪2である。ただし、これは、一例であり、両方が自在車輪でもよいし、両方が固定車輪でもよい。架台1には、ハンドル4が取付けられており、使用者は、ハンドル4を持って、表面処理装置20を施工したい場所に移動させることができる。
【0038】
架台1には、4つの連結部11が取付けられている。各連結部11には、L字状金具11aが取付けられている。L字状金具11aに、板状部材を介して、カバー10が取付けられている。このようにして、架台1に、カバー10が取付けられる構造となっている。言うまでもないが、カバー10を架台1に取付ける構造は一例に過ぎず、本発明においては、いかなる取付け構造も採用し得る。
【0039】
カバー10の上部には、2本の支柱6aが取付けられている。筐体9は、ロックハンドル6を介して、支柱6aに上下可能に取付けられる。筐体9は、高さ調整ハンドル5と連結する固定部5cと連結している。高さ調整ハンドル5は、ねじ棒5aと連結している。高さ調整ハンドル5を回転させると、ねじ棒5aが回転し、左右の支柱5bに沿って、固定部5cが上下して、筐体9が上下する構造となっている。高さが調整された後、ロックハンドル6を閉じて、筐体9の高さを固定する。なお、筐体9を上下させるための構造はあくまでも一例に過ぎず、本発明においては、いかなる高さ調整構造も採用し得る。
【0040】
筐体9の上部には、ロータリージョイント7が取付けられている。ロータリージョイント7は、高圧水供給口7aから供給される高圧水を連通する自在継手になっている。ロータリージョイント7は、回転軸7bを有しており、回転軸7bの内部を高圧水が連通する構造となっている。なお、ロータリージョイント7以外に、スイベルジョイントなどが用いられてもよい。すなわち、ロータリージョイント7の部分は、高圧水を連通させることができる回転軸を有する手段であればいかなる構造であってもよい。
【0041】
回転軸7bには、筐体9内部で、プーリー7cが取付けられている。筐体9には、エアモータ8が取付けられている。エアモータ8の回転軸(不図示)には、プーリー8bが取付けられている。プーリー7cとプーリー8bとは、タイミングベルトやチェーンなどの伝達手段8aで連結されている。なお、エアモータ8に供給される空気の入出口については、図示を省略している。かかる伝達機構により、エアモータ8の回転軸が回転すると、ロータリージョイント7の回転軸7bが回転する仕組みになっている。なお、本発明において、エアモータ8以外に、電気モータや油圧モータなどの他の回転手段が使用されてもよいことは言うまでもない。
【0042】
なお、回転軸7bを回転させるための機構は、あくまでも一例に過ぎず、本発明においては、いかなる回転機構も採用し得る。また、伝達手段は、あくまでも一例に過ぎず、歯車など、他の伝達手段でモータの回転が伝達してもよい。
【0043】
カバー10の上部には、回転軸7bを通す穴が開いている。当該穴に、回転軸7bが通される。筐体9の高さを調整することで、回転軸7bも上下し、回転軸7bに連結するウォータージェットノズル14が上下する構造となっている。ウォータージェットノズル14を上下させることで、路面等の表面からのウォータージェットノズル14の高さを調節することができる。
【0044】
回転軸7bの下端は、雄ネジになっている。ウォータージェットノズル14の上端は、雌ネジになっている。雄ネジと雌ネジとを連結させることで、回転軸7bに、ウォータージェットノズル14が取付けられる構造となっている。ここで示す回転軸7bにウォータージェットノズル14を取付けるための構造は、あくまでも一例に過ぎず、高圧水が連通可能となるように、回転軸7bにウォータージェットノズル14が取付けられればよく、その他の連結構造を用いてもよいことは、言うまでもない。
【0045】
カバー10の下部外周には、ブラシ10aが取付けられている。カバー10には、バキューム接続口15が設けられている。バキューム接続口15に、吸引装置(不図示)が接続されて、剥離物や汚水などが吸引される。ブラシ10aを設けることで、剥離物や汚水がカバー10の回りに拡散するのを防止しつつ、吸引装置(不図示)による吸引を可能としている。
【0046】
以上のような構成を有する表面処理装置20は、本願出願人が既に、実用化しているもものであり、具体的な構造に本発明が限定されるものではない。
【0047】
本発明は、表面処理装置20の回転軸7bに取付けられるウォータージェットノズル14の構造に特徴を有するものであり、ウォータージェットノズル14に対して、高圧水が供給し、かつ、回転可能な回転軸7bを回転させるための構造は、特に本発明を限定するものではなく、あらゆる構造を採用できる。
【0048】
以下、ウォータージェットノズル14の実施形態及び実施例について、説明する。
【0049】
(一実施形態)
図4を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウォータージェットノズル14について説明する。
【0050】
ウォータージェットノズル14は、上部の連結部14aと、左右の通水管14b,14cと、支持部14d,14dと、左右の連結部14e,14fと、下部の支持板14gと、左右の回転体14h,14iと、左右の回転可能ジョイント14j,14kと、各回転体の左右に複数設けられた噴射ノズル14m(引出線は一部にのみ付与)とを備える。
図4において、高圧水の流れを太い破線で示す。また、一点鎖線を用いて、回転の軸心を示す。
【0051】
連結部14aの上部は、通水路を兼ねた雌ネジになっており、回転軸7bの下端の雄ネジと連結可能となっている。これにより、回転軸7bが回転すれば、ウォータージェットノズル14全体が回転する構造となっている。
【0052】
支持板14gから立脚して取付けられた支持部14d,14dによって、連結部14aが上部で挟まれるようにして、固定されている。連結部14aの内部は、逆T字状に、通水路を有している。連結部14aの左右の通水路の出口に、通水管14b,14cが取付けられている。
【0053】
通水管14b,14cの端部には、それぞれ、連結部14e,14fが取付けられている。連結部14e,14fの内部は、高圧水の通水路を有している。連結部14e,14fの下端は、支持板14gに固定されている。
【0054】
このように、連結部14a、通水管14b,14c、支持部14d,14d、連結部14e,14f、及び支持板14gは、連結されており、回転軸7bの内部の通水路からの高圧水を左右に、分岐することができる構造となっている。連結部14a、通水管14b,14c、及び連結部14e,14fが、高圧水を通水するための回転軸との連結手段となっている。なお、具体的な連結手段の構造は、回転軸からの高圧水を通水して、回転軸に連結されるものであればよく、図示した例に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0055】
連結部14e,14fの下端には、スイベルジョイントなどの回転可能ジョイント14j,14kが取付けられている。そして、回転可能ジョイント14j,14kに、それぞれ、回転体14h,14iが取付けられている。これにより、回転体14h,14iは、ウォータージェットノズル14の下部の左右端部で、自由回転できるようになっている。
【0056】
回転体14h,14iの下部は、左右対称に、複数の噴射ノズル14mを備える。ただし、左右対称であることに限定されず、また、噴射ノズル14mの数は、本発明において、図示した例に限定されるものではない。
【0057】
回転体14h,14iの内部は、連結部14e,14fからの高圧水を通水する縦方向の通水路と、縦方向の通水路とつながる横方向の通水路と、横方向の通水路から下側に向けてつながる噴射ノズルへの通水路とを有する。回転体14h,14iにおける通水路については、太い破線で示してある。
【0058】
噴射ノズル14mの先端には、通水路の太さよりも小さい穴がある。当該穴から、高圧水が噴射される。
【0059】
回転体14h,14iにおいて、図示した例では、左右に3つずつの噴射ノズル14mが取付けられている。一組となる3つの噴射ノズル14mを取付けるための直方体状の部分14nは、鉛直下方向に対して、角度がαだけ傾いている(
図4(b)参照)。たとえば、αは、約10度であるが、限定されるものではない。
【0060】
回転体14h,14iのぞれぞれの左右の一組の噴射ノズル14mが、角度αだけ傾くことで、一側面から見た場合は、ハの字状に、高圧水が噴射される。回転体14h,14iは、自由回転するようになっているので、この噴射によって、回転体14h,14iは、一方向に回転することとなる(
図4(a)において、「噴射によって自転」と記載した回転方向を参照のこと。)。
【0061】
なお、角度αを設けなくても、全体の回転による遠心力などによって、回転体14h,14iが自転するのであれば、角度αを設けることは必須ではない。
【0062】
以上の構造によって、ウォータージェットノズル14は、全体がエアモータ8などの回転手段の力によって、回転すると共に、高圧水の噴射によって、回転体14h,14iが回転することとなる。このような回転は、全体が回転しつつ、遊星歯車が回転するような、遊星歯車機構と似ているので、ここでは、遊星回転と呼ぶことにする。
【0063】
この遊星回転によって、高圧水の噴射軌跡が複雑なものとなる。まず、
図5(a)に、ウォータージェットノズル14全体が一回転して、回転体14h,14iが一回転するときの軌跡を示す。
図5(a)に示すように、ウォータージェットノズル14全体が回転しながら、回転体14h,14iが回転していく。その結果、表面処理装置20が進行しながら、施工が進むと、
図5(b)に示すような軌跡を描くように、高圧水が噴射されることとなる。
【0064】
図5(b)に示されているように、高圧水の軌跡が、ほとんどの箇所で、クロスしながら表面に当っていることが分かる。その結果、従来のように、中心部分の表面処理が残るというような問題を解消することができることとなる(
図7参照)。
【0065】
(変形例)
上記実施形態に対して、以下のような変形例が考えられる。
【0066】
上記実施形態では、ウォータージェットノズル14の正面視において、噴射ノズル14mは、下方向に、高圧水を噴射することとしているが、これに限られるものではない。たとえば、
図4(a)における回転体14h,14iの左又は右の端部の噴射ノズル14mについては、正面視において、外側に向けて、高圧水を噴射するようにしてもよい。これにより、ウォータージェットノズル14の左又は右の端部から、外側に向けて高圧水が噴射されることとなるので、路面の端部などの処理残りを防止することが可能となる。
【0067】
上記実施形態では、噴射ノズル14mは、一列に直線状に配置することとしているが、ジグザグに配置するようにしてもよいし、二列に配置するようにしてもよい。ジグザグや二列に配置すれば、複雑な噴射軌跡が描かれることとなるので、処理残りの防止が期待される。
【0068】
遊星回転のための機構は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、回転体14h,14iの回転は、噴射水による自転によって、実現しているが、回転手段からの動力を回転体14h,14iに直接伝達する手段を設けて、回転手段の動力によって、回転体14h,14iが回転するようにしても、遊星回転を実現することが可能となる。この場合、回転体14h,14iは、高圧水の噴射によって自転しなくてもよくなるので、噴射ノズル14mの噴射方向には、
図4(b)に示したような角度αは無くてもよく、正面及び側面において、噴射ノズル14mの噴射方向は、完全に鉛直下方向であってもよいこととなる。ただし、動力によって、回転体14h,14iを回転させる場合でも、角度αがついていてもよいことは言うまでもない。
【0069】
また、上記実施形態では、遊星回転する回転体の数が、二つであるとしているが、この数も限定されない。片側一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。たとえば、三つの回転体を使用する場合は、連結部14aから分岐する通水路を三方向となるように構成すればよい。
【0070】
このように、本発明においては、ウォータージェットノズル全体を回転させる第1の回転手段と、噴射ノズルを取付けた少なくとも1つの回転体自体を回転させる第2の回転手段とが存在することとなるのである。そして、上記実施形態では、第1の回転手段は、エアモータ8を用いた動力による回転手段であり、第2の回転手段は、高圧水の噴射による自転回転機構ということになる。
【0071】
第2の回転手段の変形例として、回転体を直接動力で回転させる回転手段を用いてもよいということになる。
【0072】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
20 表面処理装置
1 架台
2 自在車輪
3 固定車輪
4 ハンドル
5 高さ調整ハンドル
5a ねじ棒
5b 支柱
5c 固定部
6 ロックハンドル
6a 支柱
7 ロータリージョイント
7a 高圧水供給口
7b 回転軸
7c プーリー
8 エアモータ
8a 伝達手段
8b プーリー
9 筐体
10 カバー
11 連結部
11a L字状金具
14 ウォータージェットノズル
14a 連結部
14b,14c 通水管
14d,14d 支持部
14e,14f 連結部
14g 支持板
14h,14i 回転体
14j,14k 回転可能ジョイント
14m 噴射ノズル
14n 噴射ノズル14mを取付ける部分
15 バキューム接続口