(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015985
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119216
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】502265286
【氏名又は名称】山本 圭治郎
(71)【出願人】
【識別番号】315005417
【氏名又は名称】手塚 崇之
(71)【出願人】
【識別番号】317009396
【氏名又は名称】茂垣 知江
(71)【出願人】
【識別番号】508013766
【氏名又は名称】桑原 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭治郎
(72)【発明者】
【氏名】手塚 崇之
(72)【発明者】
【氏名】茂垣 知江
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY37
3C707DS01
3C707ES05
3C707ET03
3C707EU11
3C707EV12
3C707HS17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物の把持に際して、指部が適切に運動を行うロボットハンドを提供する。
【解決手段】対象物の把持に際して、調整制御部は、指部140A
j(j=1,…,3)の第1関節機構のベローズへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御により、第1関節機構のベローズが膨張し、第1関節機構が屈曲状態になる方向に、指基部が、第1リンク部に対して回転運動しながら、当該第1リンク部から離れる方向にスライド運動する。引き続き、調整制御部は、指部140A
jの第2関節機構のベローズへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御により、第2関節機構のベローズが膨張し、第2関節機構が屈曲状態になる方向に、指先部が、指基部に対して回転運動しながら、当該指基部から離れる方向にスライド運動する。これにより、屈曲した指部140A
jが対象物を把持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの指部と;
前記少なくとも1つの指部のそれぞれの運動を制御する調整制御部と;を備え、
前記少なくとも1つの指部のそれぞれは、
第1リンク部と;
第2リンク部と;
前記第1リンク部の一端部と、前記第2リンク部の一端部とを運動可能に接続する第1関節機構と;を備え、
前記第1関節機構は、前記調整制御部の制御により、前記第1リンク部の一端部と前記第2リンク部の一端部との距離、及び、前記第1リンク部の一端部から前記第1リンク部が延びる方向と、前記第2リンク部の一端部から前記第2リンク部が延びる方向とが成す角度が変化可能となるように、前記第1リンク部と前記第2リンク部とを接続する、
ことを特徴するロボットハンド。
【請求項2】
前記第1関節機構は、
前記第1リンク部の一端部及び前記第2リンク部の一端部のいずれか一方に形成された第1ガイド溝と;
前記第1ガイド溝に係合し、前記第1リンク部の一端部及び前記第2リンク部の一端部を接続する第1軸部材と;
前記第1リンク部の一端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記第2リンク部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第1関節機構が関節運動を行う力を発生させる少なくとも1つの第1ベローズと;を備え、
前記調整制御部は、前記第1ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記第1ベローズを伸縮させる制御を行い、
前記第1ベローズの伸縮により、前記第1リンク部に対して前記第2リンク部がスライド運動及び回転運動をする、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第1関節機構は、
前記第1リンク部の一端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記第2リンク部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第1関節機構が関節運動を行う力を発生させる2以上の第1ベローズ;を備え、
前記調整制御部は、前記2以上の第1ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記2以上の第1ベローズを互いに独立に伸縮させる制御を行い、
前記2以上の第1ベローズの伸縮により、前記第1リンク部に対して前記第2リンク部が運動をする、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記第2リンク部は、
前記第1リンク部に対して、前記第1関節機構により、運動可能に取り付けられる指基部と;
指先部と;
前記指基部の他端部と、前記指先部の一端部とを運動可能に接続する第2関節機構と;を備え、
前記第2関節機構は、前記調整制御部の制御により、前記指基部の他端部と前記指先部の一端部との距離、及び、前記指基部の他端部から前記指基部が延びる方向と、前記指先部の一端部から前記指先部が延びる方向とが成す角度が変化可能となるように、前記指基部と前記指先部とを接続する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記第2関節機構は、
前記指基部の他端部及び前記指先部の一端部のいずれか一方に形成された第2ガイド溝と;
前記第2ガイド溝に係合し、前記指基部の他端部及び前記指先部の一端部を接続する第2軸部材と;
前記指基部の他端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記指先部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第2関節機構が関節運動を行う力を発生させる少なくとも1つの第2ベローズと;を備え、
前記調整制御部は、前記第2ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記第2ベローズを伸縮させる制御を行い、
前記第2ベローズの伸縮により、前記指基部に対して前記指先部がスライド運動及び回転運動をする、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記第2関節機構は、
前記指基部の他端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記指先部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第2関節機構が関節運動を行う力を発生させる2以上の第2ベローズ;を備え、
前記調整制御部は、前記2以上の第2ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記2以上の第2ベローズを互いに独立に伸縮させる制御を行い、
前記2以上の第2ベローズの伸縮により、前記指基部に対して前記指先部が運動をする、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに係り、より詳しくは、関節運動を行う指部を備えるロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物を把持する様々なロボットハンドが提案されている。こうしたロボットハンドとしては、関節運動を行う指部を有するものが一般的である。
【0003】
かかる関節運動を行う指部を有するロボットハンドの一つとして、モータ及びワイヤによって駆動するアクチュエータを用いて関節運動を行うものがある(特許文献1参照:以下、「従来例」と呼ぶ)。この従来例の技術では、ハンド掌部に、指と当該指の同じ数の駆動源とを配置する。ここで、駆動源は、回転型モータ及びネジ要素を備えている。また、各指には、回転自在な複数の関節を設けて、各関節に当該関節を支点とするプーリと、当該関節を伸展方向に駆動するコイルバネとが設けられている。こうした状態で、ネジ要素にワイヤの一方端を固定し、各関節のプーリを介して指先端にワイヤの片端を固定する。そして、ネジ要素を手首方向に動かすと、ワイヤが引かれて指が伸展し、ネジ要素を手指方向に動かすと、コイルバネの復元力により指が屈曲するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例の技術では、関節に設けられたプーリにワイヤが巻き付けられ、ワイヤの一端がハンド掌部に配置されたネジ要素に固定され、当該ワイヤの他端が指部の指先端に固定される。したがって、従来例の技術については、指に設けられている複数の関節の運動を、独立して制御することができない。この結果、従来例の技術では、例えば、各指について1つの関節のみを運動させることができず、指の運動が制限されている。
【0006】
また、従来例の技術では、ロボットハンドの動作は、関節の一軸性の屈曲運動及び伸展運動だけになっている。このため、指部の長さが関節運動によって変化しないため、把持できる対象物の大きさは、人体の手部と同様、掌部の大きさ及び指部の長さに依存する。しかし、ロボットハンドの指部の関節運動の自由度を更に広げれば、把持できる対象物の大きさの範囲も広げることが期待できる。
【0007】
このため、各関節部を独立して制御することができるとともに、指部の長さを自在に変化させて、把持できる対象物の大きさの範囲を拡大することができる技術が望まれている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、対象物の把持に際して、指部が適切に運動を行うことができる新たなロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1つの指部と;前記少なくとも1つの指部のそれぞれの運動を制御する調整制御部と;を備え、前記少なくとも1つの指部のそれぞれは、第1リンク部と;第2リンク部と;前記第1リンク部の一端部と、前記第2リンク部の一端部とを運動可能に接続する第1関節機構と;を備え、前記第1関節機構は、前記調整制御部の制御により、前記第1リンク部の一端部と前記第2リンク部の一端部との距離、及び、前記第1リンク部の一端部から前記第1リンク部が延びる方向と、前記第2リンク部の一端部から前記第2リンク部が延びる方向とが成す角度が変化可能となるように、前記第1リンク部と前記第2リンク部とを接続する、ことを特徴するロボットハンドである。
【0010】
当該ロボットハンドでは、指部は、第1リンク部と、第2リンク部と、当該第1リンク部と第2リンク部とを運動可能に接続する第1関節機構とを備えて構成されている。こうした構成で、調整制御部の制御により、第1関節機構は、(i)第1リンク部の一端部と第2リンク部の一端部との距離を変化させ、(ii)第1リンク部の一端部から第1リンク部が延びる方向と、第2リンク部の一端部から第2リンク部が延びる方向とが成す角度を変化させる。この結果、第2リンク部が第1リンク部に対して運動し、指部が運動する。
【0011】
このため、本発明のロボットハンドでは、第1リンク部と第2リンク部との間の距離、及び、第1リンク部と第2リンク部との成す角度を変化させて、把持できる対象物の大きさの範囲を拡大することができる。したがって、本発明のロボットハンドによれば、対象物の把持に際して、指部が適切に運動を行うことができる。
【0012】
本発明のロボットハンドでは、前記第1関節機構は、前記第1リンク部の一端部及び前記第2リンク部の一端部のいずれか一方に形成された第1ガイド溝と;前記第1ガイド溝に係合し、前記第1リンク部の一端部及び前記第2リンク部の一端部を接続する第1軸部材と;前記第1リンク部の一端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記第2リンク部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第1関節機構が関節運動を行う力を発生させる少なくとも1つの第1ベローズと;を備え、前記調整制御部は、前記第1ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記第1ベローズを伸縮させる制御を行い、前記第1ベローズの伸縮により、前記第1リンク部に対して前記第2リンク部がスライド運動及び回転運動をする、ようにすることができる。
【0013】
この場合には、調整制御部による第1ベローズ内の作動流体圧の調整制御により、第1ベローズが膨張又は収縮すると、第1軸部材が第1ガイド溝に沿って移動することで、第1リンク部に対して第2リンク部がスライド運動をしたり、第1リンク部に対して第2リンク部が回転運動したりする。この結果、調整制御部の調整制御により、(i)第1リンク部の一端部と第2リンク部の一端部との距離を変化させ、(ii)第1リンク部の一端部から第1リンク部が延びる方向と、第2リンク部の一端部から第2リンク部が延びる方向とが成す角度を変化させることができる。
【0014】
なお、軽量の柔らかい樹脂製のベローズを構成要素とすれば、ロボットハンドの軽量化を図ることができ、例えば、ロボットハンドが取り付けられる支持装置の重さについての耐久性能を高くする必要がなくなる。
【0015】
また、本発明のロボットハンドでは、前記第1関節機構は、前記第1リンク部の一端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記第2リンク部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第1関節機構が関節運動を行う力を発生させる2以上の第1ベローズ;を備え、前記調整制御部は、前記2以上の第1ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記2以上の第1ベローズを互いに独立に伸縮させる制御を行い、前記2以上の第1ベローズの伸縮により、前記第1リンク部に対して前記第2リンク部が運動をする、ようにすることができる。
【0016】
この場合には、調整制御部による2以上の第1ベローズ内の作動流体圧の調整制御により、2以上の第1ベローズが互いに独立に膨張又は収縮すると、第2リンク部が、第1リンク部との距離を変える運動や、第1リンク部に対して回転運動をする。この結果、調整制御部の調整制御により、(i)第1リンク部の一端部と第2リンク部の一端部との距離を変化させ、(ii)第1リンク部の一端部から第1リンク部が延びる方向と、第2リンク部の一端部から第2リンク部が延びる方向とが成す角度を変化させることができる。
【0017】
本発明のロボットハンドでは、前記第2リンク部は、前記第1リンク部に対して、前記第1関節機構により、運動可能に取り付けられる指基部と;指先部と;前記指基部の他端部と、前記指先部の一端部とを運動可能に接続する第2関節機構と;を備え、前記第2関節機構は、前記調整制御部の制御により、前記指基部の他端部と前記指先部の一端部との距離、及び、前記指基部の他端部から前記指基部が延びる方向と、前記指先部の一端部から前記指先部が延びる方向とが成す角度が変化可能となるように、前記指基部と前記指先部とを接続する、ようにすることができる。
【0018】
この場合には、第2リンク部は、第1関節機構により、第1リンク部に対して運動可能に取り付けられる指基部と、指先部と、当該指基部と指先部とを運動可能に接続する第2関節機構とを備えて構成されている。こうした構成で、調整制御部の制御により、第2関節機構は、(iii)指基部の他端部と指先部の一端部との距離を変化させ、(iv)指基部の他端部から指基部が延びる方向と、指先部の一端部から指先部が延びる方向とが成す角度を変化させる。この結果、指先部が指基部に対して運動し、指部が運動する。このため、第1関節機構及び第2関節機構を独立して制御し、指部の運動を行うことができる。
【0019】
また、本発明のロボットハンドでは、前記第2関節機構は、前記指基部の他端部及び前記指先部の一端部のいずれか一方に形成された第2ガイド溝と;前記第2ガイド溝に係合し、前記指基部の他端部及び前記指先部の一端部を接続する第2軸部材と;前記指基部の他端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記指先部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第2関節機構が関節運動を行う力を発生させる少なくとも1つの第2ベローズと;を備え、前記調整制御部は、前記第2ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記第2ベローズを伸縮させる制御を行い、前記第2ベローズの伸縮により、前記指基部に対して前記指先部がスライド運動及び回転運動をする、ようにすることができる。
【0020】
この場合には、調整制御部による第2ベローズ内の作動流体圧の調整制御により、第2ベローズが膨張又は収縮すると、第2軸部材が第2ガイド溝に沿って移動することで、指基部に対して指先部がスライド運動したり、指基部に対して指先部が回転運動したりする。この結果、調整制御部の調整制御により、(iii)指基部の他端部と指先部の一端部との距離を変化させ、(iv)指基部の他端部から指基部が延びる方向と、指先部の一端部から指先部が延びる方向とが成す角度を変化させることができる。
【0021】
本発明のロボットハンドでは、前記第2関節機構は、前記指基部の他端部側に一方側の端部が接続されるとともに、前記指先部の一端部側に他方側の端部が接続され、前記第2関節機構が関節運動を行う力を発生させる2以上の第2ベローズ;を備え、前記調整制御部は、前記2以上の第2ベローズ内の作動流体圧を調整して、前記2以上の第2ベローズを互いに独立に伸縮させる制御を行い、前記2以上の第2ベローズの伸縮により、前記指基部に対して前記指先部が運動をする、ようにすることができる。
【0022】
この場合には、調整制御部による2以上の第2ベローズ内の作動流体圧の調整制御により、2以上の第2ベローズが互いに独立に膨張又は収縮すると、指先部が、指基部との距離を変える運動や、指基部に対して回転運動をする。この結果、調整制御部の調整制御により、(iii)指基部の他端部と指先部の一端部との距離を変化させ、(iv)指基部の他端部から指基部が延びる方向と、指先部の一端部から指先部が延びる方向とが成す角度を変化させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明のロボットハンドによれば、対象物の把持に際して、様々な状況に応じて、適切に運動を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るロボットハンドの外観図(その1)である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るロボットハンドの外観図(その2)である。
【
図3】第1実施形態に係る指部の第1及び第2関節機構を説明するための図である。
【
図4】
図1,2の調整制御部の構成を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その1)である。
【
図6】第1実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その2)である。
【
図7】第1実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その3)である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るロボットハンドの外観図(その1)である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るロボットハンドの外観図(その2)である。
【
図10】第2実施形態に係る第1リンク部、指基部及び指先部の構成を説明するための図である。
【
図11】第2実施形態に係る指部の第1及び第2関節機構を説明するための図である。
【
図12】第2実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その1)である。
【
図13】第2実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その2)である。
【
図14】第2実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その3)である。
【
図15】第2実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その4)である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係るロボットハンドの外観図(その1)である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係るロボットハンドの外観図(その2)である。
【
図18】第3実施形態に係る指部の第1及び第2関節機構を説明するための図である。
【
図19】第3実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その1)である。
【
図20】第3実施形態に係るハンド部の状態を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、
図1~
図7を参照して説明する。
【0027】
<構成>
図1,2には、第1実施形態に係るロボットハンド100Aの外観図が示されている。
図1,2における座標系(X,Y,Z)は、図示の通りに定義されている。ここで、
図1は、ロボットハンド100Aを、
図1に示した座標系で表した斜視図である。また、
図2は、ロボットハンド100Aを、-Y方向側から視た外観図(XZ平面視図)である。第1実施形態では、ロボットハンド100Aは、不図示の支持装置に取り付けられ、当該支持装置により、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能になっているものとする。
【0028】
図1,2により総合的に示されるように、ロボットハンド100Aは、ハンド部110Aを備えている。また、ロボットハンド100Aは、調整制御部280Aを備えている。
【0029】
《ハンド部110Aの構成》
上記のハンド部110Aの構成について、説明する。ハンド部110Aは、
図1,2により総合的に示されるように、ベース部材120Aと、取付部材130Aと、指部140A
1,140A
2,140A
3,140A
4とを備えている。なお、以下の説明では、指部140A
1,140A
2,140A
3,140A
4を総称して、指部140A
j(j=1,…,4)とも記す。
【0030】
上記のベース部材120Aは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XY平面と平行な円盤状の部材である。ベース部材120Aにおける+Z方向側の面には、取付部材130A、及び、指部140Ajが取り付けられている。
【0031】
上記の取付部材130Aは、例えば、鋼鉄製の板状部材であり、ベース部材120Aにおける+Z方向側の面に固定して取り付けられる。当該取付部材130Aには、指部140Ajが固定されている。
【0032】
上記の指部140A
j(j=1,…,4)は、第1実施形態では、取付部材130Aに固定されている。また、指部140Aは、ベース部材120Aに取り付けられている。ここで、指部140A
1は、伸展状態時に+X方向に延び、指部140A
2は、伸展状態時に-Y方向に延びている。また、指部140A
3は、伸展状態時に-X方向に延び、指部140A
4は、伸展状態時に+Y方向に延びている。ここで、
図2には、指部140A
1の構成図が示されている。他の指部140A
2,140A
3,140A
4についても、指部140A
1と同様に構成されている。
【0033】
指部140A
j(j=1,…,4)のそれぞれは、
図1,2により総合的に示されるように、第1リンク部221
jと、指基部222
jと、指先部223
jとを備えている。また、指部140A
jのそれぞれは、ベローズ241
j,242
jと、配管251
j,252
jとを備えている。ここで、指基部222
j及び指先部223
jは、第2リンク部に対応している。
【0034】
上記の第1リンク部221
jは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。当該長板部には、他方側(
図2における「+X方向側」)に略直立して+Z方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。第1リンク部221
jの長板部の他方側の端部には、指部140A
1,140A
3の場合にはY方向に沿って延び、指部140A
2,140A
4の場合にはX方向に沿って延びる軸部材AX1
jを挿入する軸穴が形成され、軸部材AX1
jにより、指基部222
jが接続されている。また、第1リンク部221
jの他方側の接続部は、ベローズ241
jの一方側端部に接続されている。
【0035】
また、第1リンク部221
jの長板部の一方側(
図2における「-X方向側」)の端部には、取付部材130Aが固定されている。当該第1リンク部221
jの長板部は、ベース部材120Aに取付けられている。
【0036】
上記の指基部222
jは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。当該長板部の両端側には、略直立して延びる環状の接続部が形成されている。指基部222
jの長板部の一方側の端部には、当該長板部が延びる方向に沿って、ガイド溝GC1
j(後述する
図3参照)が形成されている。そして、ガイド溝GC1
jに軸部材AX1
jが係合し、指基部222
jの一方側の端部、及び、第1リンク部221
jの他方側の端部は、軸部材AX1
jにより、回転可能及びスライド可能に接続されている。また、指基部222
jの一方側の接続部は、ベローズ241
jの他方側端部に接続されている。
【0037】
また、指基部222
jの長板部の他方側の端部には、当該長板部が延びる方向に沿って、ガイド溝GC2
j(
図3参照)が形成されている。そして、ガイド溝GC2
jに軸部材AX2
jが係合し、指基部222
jの他方側の端部、及び、指先部223
jの一方側の端部は、軸部材AX2
jにより、回転可能及びスライド可能に接続されている。また、指基部222
jの他方側の接続部は、ベローズ242
jの一方側端部に接続されている。
【0038】
上記の指先部223jは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。当該長板部には、一方側に略直立して延びる環状の接続部が形成されている。指先部223jの長板部の一方側には、指部140A1,140A3の場合にはY方向に沿って延び、指部140A2,140A4の場合にはX方向に沿って延びる軸部材AX2jを挿入する軸穴が形成され、軸部材AX2jにより、指基部222jが接続されている。また、指先部223jの一方側の接続部は、ベローズ242jの他方側端部に接続されている。
【0039】
上記のベローズ241jは、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、軸部材AX1jの周りに沿って、関節の伸展側(+Z方向側)に配置される。ベローズ241jの一方側端部は、第1リンク部221jの他方側(ベローズ241j側)に形成された接続部に接続されるとともに、ベローズ241jの他方側端部は、指基部222jの一方側(ベローズ241j側)に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ241jは、第1関節機構の一部として関節運動を行う力を発生する。
【0040】
上記のベローズ242jは、ベローズ241jと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、軸部材AX2jの周りに沿って、関節の伸展側に配置される。ベローズ242jの一方側端部は、指基部222jの他方側(ベローズ242j側)に形成された接続部に接続されるとともに、ベローズ242jの他方側端部は、指先部223jの一方側(ベローズ242j側)に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ242jは、第2関節機構の関節運動を行う力を発生する。
【0041】
ここで、ベローズ241jには、可撓性を有する樹脂製の配管251jが取り付けられ、当該ベローズ241jは、配管251jを介して調整制御部280Aと接続している(不図示)。そして、ベローズ241j内の空気圧が変化すると、当該ベローズ241jが膨縮する。この結果、ベローズ241jが上述した関節運動を行う力を発生させる。
【0042】
また、ベローズ242jには、可撓性を有する樹脂製の配管252jが取り付けられ、当該ベローズ242jは、配管252jを介して調整制御部280Aと接続している(不図示)。そして、ベローズ242j内の空気圧が変化すると、当該ベローズ242jが膨縮する。この結果、ベローズ242jが上述した関節運動を行う力を発生させる。
【0043】
《第1関節機構JTA1
jの構成》
第1関節機構JTA1
jは、
図2,3により総合的に示されるように、指基部222
jに形成されたガイド溝GC1
jと、軸部材AX1
jと、ベローズ241
jとから構成されている。指基部222
jの一方側の端部、及び、第1リンク部221
jの他方側の端部は、ガイド溝GC1
jに係合された軸部材AX1
jにより、回転可能及びスライド可能に接続されている。そして、ベローズ241
jが膨縮すると、指基部222
jが第1リンク部221
jに対してスライド運動や回転運動を行う。
【0044】
《第2関節機構JTA2
jの構成》
第2関節機構JTA2
jは、
図2,3により総合的に示されるように、指基部222
jに形成されたガイド溝GC2
jと、軸部材AX2
jと、ベローズ242
jとから構成されている。指先部223
jの一方側の端部、及び、指基部222
jの他方側の端部は、ガイド溝GC2
jに係合された軸部材AX2
jにより、回転可能及びスライド可能に接続されている。そして、ベローズ242
jが膨縮すると、指先部223
jが指基部222
jに対してスライド運動や回転運動を行う。なお、第1実施形態における第1及び第2関節機構を、片側ベローズの「スライド型関節機構」ともいう。
【0045】
《調整制御部280Aの構成》
上記の調整制御部280Aの構成について、説明する。調整制御部280Aは、配管251j,252jを介して指部140Ajのベローズ241j,242jと接続している。以下の説明においては、これらのベローズを総称して、単に「ベローズ」とも記す。
【0046】
かかる接続関係を有する調整制御部280Aは、
図4に示されるように、加圧ポンプ281と、減圧ポンプ282と、電気-空気圧制御弁283Aと、制御部284Aとを備えている。また、調整制御部280Aは、配管285,286を備えている。
【0047】
上記の加圧ポンプ281は、配管285を介して、電気-空気圧制御弁283Aのポンプ側接続口の一方側に接続されている。加圧ポンプ281は、ベローズへの空気の強制的供給を行う際に利用される。上記の減圧ポンプ282は、配管286を介して、電気-空気圧制御弁283Aのポンプ側接続口の他方側に接続されている。減圧ポンプ282は、ベローズからの空気の強制的排出を行う際に、利用される。
【0048】
上記の電気-空気圧制御弁283Aは、流路切換弁と、圧力制御弁(比例ソレノイドバルブ)とを備えて構成されている。この流路切換弁の入口側の一方が加圧ポンプ281に接続されているとともに、入口側の他方が減圧ポンプ282に接続されている。
【0049】
そして、流路切換弁は、制御部284Aによる制御のもとで、ベローズへの空気の強制的供給を行う際には、加圧ポンプ281に接続されている配管285と指定されたベローズと連通している配管とを接続して流路を形成する。また、流路切換弁は、制御部284Aによる制御のもとで、ベローズからの空気の強制的排出を行う際には、減圧ポンプ282に接続されている配管286と指定されたベローズと連通している配管とを接続して流路を形成する。
【0050】
例えば、指部140Ajのベローズ241jへの空気の強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管285と配管251jとを接続して流路を形成する。また、ベローズ241jからの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管286と配管251jとを接続して流路を形成する。さらに、指部140Ajのベローズ242jへの空気の強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管285と配管252jとを接続して流路を形成する。また、ベローズ242jからの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管286と配管252jとを接続して流路を形成する。
【0051】
上記の制御部284Aは、ベローズからの空気の強制的排出、及び、ベローズへの空気の強制的供給の切り換え、並びに、ベローズ内の空気圧の制御を行う。かかる制御に際して、ベローズへの空気の強制的供給を行う場合には、制御部284Aは、電気-空気圧制御弁283Aが加圧ポンプ281と関節運動を行うベローズとを接続する流路を形成し、ベローズ内の空気圧力を調整するように制御する。また、ベローズからの空気の強制的排出を行う場合には、制御部284Aは、電気-空気圧制御弁283Aが減圧ポンプ282と関節運動を行うベローズとを接続する流路を形成し、ベローズ内の空気圧力を調整するように制御する。
【0052】
こうした制御は、不図示の入力部を利用して行われる利用者による入力結果に基づき、行われるようになっている。
【0053】
<動作>
以上のようにして構成されたロボットハンド100Aの動作について、指部140Ajの対象物の把持動作に主に着目して説明する。
【0054】
当初においては、ロボットハンド100Aでは、調整制御部280Aによるベローズ241j,242j内の空気圧調整は行われておらず、大気開放となっているものとする。
【0055】
対象物の把持を行うに際して、調整制御部280Aが、まず、ベローズ241j,242jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ241j,242j内の空気圧が下降する。そして、ベローズ241j,242j内の空気圧が下降すると、ベローズ241j,242jが収縮する。
【0056】
こうしてベローズ241jが収縮すると、ベローズ241jが、第1関節機構を伸展状態にする力を発生する。当該力により、指基部222jが、軸部材AX1jを回転軸にして第1リンク部221jに対して回転運動しながら、当該第1リンク部221jに近づく方向にスライド運動する。また、こうしてベローズ242jが収縮すると、ベローズ242jが、第2関節機構を伸展状態にする力を発生する。当該力により、指先部223jが、軸部材AX2jを回転軸にして指基部222jに対して回転運動しながら、当該指基部222jに近づく方向にスライド運動する。
【0057】
こうして第1及び第2関節機構が伸展状態となったときのロボットハンド100Aの状態が、
図1,2に示されている。第1及び第2関節機構が伸展状態になると、支持装置により、ロボットハンド100Aが、対象物の近傍に位置するように移動する。
【0058】
《把持動作(その1)》
引き続き、調整制御部280Aが、ベローズ241jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ241j内の空気圧が上昇する。ベローズ241j内の空気圧が上昇すると、ベローズ241jが膨張する。こうしてベローズ241jが膨張すると、ベローズ241jが、第1関節機構を屈曲状態にする力を発生する。当該力により、指基部222jが、軸部材AX1jを回転軸にして第1リンク部221jに対して回転運動しながら、当該第1リンク部221jから離れる方向にスライド運動する。
【0059】
こうして第1関節機構が屈曲状態となり、第2関節機構が伸展状態となったときのロボットハンド100Aにおけるハンド部110Aの状態が、
図5(A),(B)に示されている。ここで、
図5(A)は、ハンド部110Aを、上述した
図1に示した座標系で表した斜視図である。また、
図5(B)は、ハンド部110Aを、-Y方向側から視た外観図である。
【0060】
次いで、調整制御部280Aが、ベローズ242jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ242j内の空気圧が上昇する。ベローズ242j内の空気圧が上昇すると、ベローズ242jが膨張する。こうしてベローズ242jが膨張すると、ベローズ242jが、第2関節機構を屈曲状態にする力を発生する。当該力により、指先部223jが、軸部材AX2jを回転軸にして指基部222jに対して回転運動しながら、当該指基部222jから離れる方向にスライド運動する。
【0061】
こうして第1及び第2関節機構が屈曲状態となったときのロボットハンド100Aにおけるハンド部110Aの状態が、
図6に示されている。ここで、
図6は、ハンド部110Aを、-Y方向側から視た外観図である。
【0062】
この結果、4本の指部140A
1,140A
2,140A
3,140A
4が、対象物を把持する。なお、
図6では、対象物の図示を省略している。当該把持動作は、例えば、縦長の対象物を把持するのに適した動作である。すなわち、
図5(A),(B)の状態になったスライド型関節機構の指部140A
jを縦長の対象物の周りに深く差し込み、縦長の対象物を把持する動作に適した機構である。また、当該スライド型関節機構は、一軸性の非スライド型の関節機構を有するロボットハンドが把持可能な対象物に比べて、より大きな対象物を把持する動作に適した機構である。
【0063】
《把持動作(その2)》
指部140A
jの第1及び第2関節機構が伸展状態となっている状態(
図1,2参照)で、調整制御部280Aが、ベローズ242
jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ242
j内の空気圧が上昇する。ベローズ242
j内の空気圧が上昇すると、ベローズ242
jが膨張する。こうしてベローズ242
jが膨張すると、ベローズ242
jが、第2関節機構を屈曲状態にする力を発生する。当該力により、指先部223
jが、軸部材AX2
jを回転軸にして指基部222
jに対して回転運動しながら、当該指基部222
jから離れる方向にスライド運動する。
【0064】
こうして第1関節機構が伸展状態となり、第2関節機構が屈曲状態となったときのロボットハンド100Aにおけるハンド部110Aの状態が、
図7に示されている。
図7は、ハンド部110Aを、-Y方向側から視た外観図である。
【0065】
次いで、調整制御部280Aが、ベローズ241jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ241j内の空気圧が上昇する。ベローズ241j内の空気圧が上昇すると、ベローズ241jが膨張する。こうしてベローズ241jが膨張すると、ベローズ241jが、第1関節機構を屈曲状態にする力を発生する。当該力により、指基部222jが、軸部材AX1jを回転軸にして第1リンク部221jに対して回転運動しながら、当該第1リンク部221jから離れる方向にスライド運動する。
【0066】
こうして第1及び第2関節機構が屈曲状態となったときのロボットハンド100Aにおけるハンド部110Aの状態が、上記の
図6に示されている。この結果、4本の指部140A
1,140A
2,140A
3,140A
4が、対象物を把持する。当該把持動作は、例えば、独楽のような上部が広い形状の対象物を、上部側から把持するのに適した動作である。
【0067】
以上説明したように、第1実施形態では、調整制御部280Aが、ベローズ241j,242jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ241jが収縮し、第1関節機構が伸展状態になる方向に、指基部222jが、軸部材AX1jを回転軸にして第1リンク部221jに対して回転運動し、当該第1リンク部221jに近づく方向にスライド運動する。また、かかる制御を行うと、ベローズ242jが収縮し、第2関節機構が伸展状態になる方向に、指先部223jが、軸部材AX2jを回転軸にして指基部222jに対して回転運動し、当該指基部222jに近づく方向にスライド運動する。
【0068】
次に、調整制御部280Aは、ベローズ241jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ241jが膨張し、第1関節機構が屈曲状態になる方向に、指基部222jが、軸部材AX1jを回転軸にして第1リンク部221jに対して回転運動し、当該第1リンク部221jから離れる方向にスライド運動する。
【0069】
引き続き、調整制御部280Aは、ベローズ242jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、ベローズ242jが膨張し、第2関節機構が屈曲状態になる方向に、指先部223jが、軸部材AX2jを回転軸にして指基部222jに対して回転運動し、当該指基部222jから離れる方向にスライド運動する。これにより、屈曲した指部140Ajが対象物を把持する。
【0070】
このため、回転運動及びスライド運動が可能なスライド型の第1及び第2関節機構を有するロボットハンド100Aの運動によって、対象物を把持することができる。
【0071】
したがって、第1実施形態によれば、対象物の把持に際して、指部が適切に運動を行うことができる。
【0072】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、
図8~
図14を主に参照して説明する。
【0073】
<構成>
図8,9には、第2実施形態に係るロボットハンド100Bの外観図が示されている。ここで、
図8は、ロボットハンド100Bを、
図8に示した座標系で表した斜視図である。また、
図9は、ロボットハンド100Bを、-Y方向側から視た外観図(XZ平面視図)である。第2実施形態についても、ロボットハンド100Bは、不図示の支持装置に取り付けられ、当該支持装置により、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能になっているものとする。ここで、
図8,9に示されるロボットハンド100Bは、構成する後述の全てのベローズ内が大気開放となっている状態である。
【0074】
図8,9により総合的に示されるように、ロボットハンド100Bは、上述した第1実施形態のロボットハンド100Aと比べて、ハンド部110Aに代えてハンド部110Bを備える点、及び、調整制御部280Aに代えて調整制御部280Bを備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0075】
《ハンド部110Bの構成》
上記のハンド部110Bの構成について、説明する。ハンド部110Bは、
図8,9により総合的に示されるように、上述した第1実施形態のハンド部110Aと比べて、ベース部材120Aに代えてベース部材120Bを備える点、指部140A
j(j=1,…,4)に代えて指部140B
jを備える点、及び、取付部材130Aを備えていない点が異なっている。
【0076】
上記のベース部材120Bは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XY平面と平行な円盤状の部材である。ベース部材120Bにおける+Z方向側の面には、指部140Bjが取り付けられている。
【0077】
上記の指部140B
j(j=1,…,4)は、第2実施形態では、ベース部材120Bに取り付けられている。ここで、
図9には、指部140B
1の構成図が示されている。他の指部140B
2,140B
3,140B
4についても、指部140B
1と同様に構成されている。
【0078】
指部140B
j(j=1,…,4)のそれぞれは、
図8,9により総合的に示されるように、第1リンク部221B
jと、指基部222B
jと、指先部223B
jとを備えている。また、指部140B
jのそれぞれは、ベローズ241
O,j,241
I,j,242
O,j,242
I,jと、配管251
O,j,251
I,j,252
O,j,252
I,jとを備えている。
【0079】
さらに、指部140Bjのそれぞれは、連接部材261Bj,262Bj,271Bj,272Bjを備えている。ここで、指基部222Bj及び指先部223Bjは、第2リンク部に対応している。
【0080】
上記の第1リンク部221B
jは、例えば、鋼鉄製の部材であり、折曲した長板部を有している。
図9,10により総合的に示されるように、第1リンク部221B
jの長板部には、他方側(
図10における「略+X方向側」)の端部に、ベローズ241
O,jに接続される環状の外側接続部と、ベローズ241
I,jに接続される環状の内側接続部とが形成されている。第1リンク部221B
jの他方側の端部には、連接部材261B
j,271B
jを介して、指基部222B
jが接続されている。また、第1リンク部221B
jの長板部の一方側(
図10における「略-X方向側」)は、ベース部材120Bに取付けられている。なお、
図10では、連接部材261B
j,271B
jの図示を省略している。
【0081】
上記の指基部222B
jは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。
図9,10により総合的に示されるように、指基部222B
jの長板部における一方側の端部には、ベローズ241
O,jに接続される環状の外側接続部と、ベローズ241
I,jに接続される環状の内側接続部とが形成されている。指基部222B
jの一方側の端部には、連接部材261B
j,271B
jを介して、第1リンク部221B
jが接続されている。
【0082】
また、指基部222B
jの長板部における他方側の端部には、ベローズ242
O,jに接続される環状の外側接続部と、ベローズ242
I,jに接続される環状の内側接続部とが形成されている。指基部222B
jの他方側の端部には、連接部材262B
j,272B
jを介して、指先部223B
jが接続されている。なお、
図10では、連接部材262B
j,272B
jの図示を省略している。
【0083】
上記の指先部223B
jは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。
図9,10により総合的に示されるように、指先部223B
jの長板部には、一方側の端部に、ベローズ242
O,jに接続された環状の外側接続部と、ベローズ242
I,jに接続された環状の内側接続部とが形成されている。指先部223B
jの一方側の端部には、連接部材262B
j,272B
jを介して、指基部222B
jが接続されている。
【0084】
上記のベローズ241O,jは、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、関節の伸展側に配置される。ベローズ241O,jの一方側端部は、第1リンク部221Bjの他方側(ベローズ241O,j側)の端部に形成された外側接続部に接続されるとともに、ベローズ241O,jの他方側端部は、指基部222Bjの一方側(ベローズ241O,j側)の端部に形成された外側接続部に接続される。こうして配置されたベローズ241O,jは、第1関節機構の一部として関節運動を行う力を発生する。
【0085】
上記のベローズ241I,jは、ベローズ241O,jと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、関節の屈曲側に配置される。ベローズ241I,jの一方側端部は、第1リンク部221Bjの他方側の端部に形成された内側接続部に接続されるとともに、ベローズ241I,jの他方側端部は、指基部222Bjの一方側の端部に形成された内側接続部に接続される。こうして配置されたベローズ241I,jは、第1関節機構の一部として関節運動を行う力を発生する。
【0086】
上記のベローズ242O,jは、ベローズ241O,jと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、関節の伸展側に配置される。ベローズ242O,jの一方側端部は、指基部222Bjの他方側の端部に形成された外側接続部に接続されるとともに、ベローズ242O,jの他方側端部は、指先部223Bjの一方側の端部に形成された外側接続部に接続される。こうして配置されたベローズ242O,jは、第2関節機構の一部として関節運動を行う力を発生する。
【0087】
上記のベローズ242I,jは、ベローズ241O,jと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、関節の屈曲側に配置される。ベローズ242I,jの一方側端部は、指基部222Bjの他方側の端部に形成された内側接続部に接続されるとともに、ベローズ242I,jの他方側端部は、指先部223Bjの一方側の端部に形成された内側接続部に接続される。こうして配置されたベローズ242I,jは、第2関節機構の一部として関節運動を行う力を発生する。
【0088】
以下、ベローズ241O,j,242O,jを「外側ベローズ241O,j,242O,j」とも記し、ベローズ241I,j,242I,jを「内側ベローズ241I,j,242I,j」とも記す。
【0089】
また、ベローズ241O,jには、可撓性を有する樹脂製の配管251O,jが取り付けられ、当該ベローズ241O,jは、配管251O,jを介して調整制御部280Bと接続している(不図示)。そして、ベローズ241O,j内の空気圧が変化すると、当該ベローズ241O,jが膨縮する。また、ベローズ241I,jには、可撓性を有する樹脂製の配管251I,jが取り付けられ、当該ベローズ241I,jは、配管251I,jを介して調整制御部280Bと接続している(不図示)。そして、ベローズ241I,j内の空気圧が変化すると、当該ベローズ241I,jが膨縮する。この結果、ベローズ241O,j,241I,jが上述した関節運動を行う力を発生させる。
【0090】
また、ベローズ242O,jには、可撓性を有する樹脂製の配管252O,jが取り付けられ、当該ベローズ242O,jは、配管252O,jを介して調整制御部280Bと接続している(不図示)。そして、ベローズ242O,j内の空気圧が変化すると、当該ベローズ242O,jが膨縮する。また、ベローズ242I,jには、可撓性を有する樹脂製の配管252I,jが取り付けられ、当該ベローズ242I,jは、配管252I,jを介して調整制御部280Bと接続している(不図示)。そして、ベローズ242I,j内の空気圧が変化すると、当該ベローズ242I,jが膨縮する。この結果、ベローズ242O,j,242I,jが上述した関節運動を行う力を発生させる。
【0091】
上記の連接部材261B
jは、
図9に示されるように、第1リンク部221B
jが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材と、当該2つの長板状の部材を屈曲側で接続する保護用部材とが一体成形された部材である。当該保護用部材は、ベローズ241
I,jが対象物に触れること防止する。連接部材261B
jは、軸部材により、第1リンク部221B
j及び連接部材271B
jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0092】
上記の連接部材271Bjは、指基部222Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材271Bjは、軸部材により、指基部222Bj及び連接部材261Bjに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0093】
上記の連接部材262Bjは、指基部222Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材と、当該2つの長板状の部材を屈曲側で接続する保護用部材とが一体成形された部材である。当該保護用部材は、ベローズ242I,jが対象物に触れること防止する。連接部材262Bjは、軸部材により、指基部222Bj及び連接部材272Bjに接続されている。当該接続関係については、後述する
【0094】
上記の連接部材272Bjは、指先部223Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材272Bjは、軸部材により、指先部223Bj及び連接部材262Bjに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0095】
《第1関節機構JTB1
jの構成》
第1関節機構JTB1
jは、
図11により総合的に示されるように、連接部材261B
j,271B
jと、軸部材XB1
1,j,XB1
2,j,XB1
3,jと、ベローズ241
O,j,241
I,jとから構成されている。連接部材261B
j及び連接部材271B
jは、軸部材XB1
3,jにより、回転可能に接続されている。そして、第1リンク部221B
jの他方側の端部が、軸部材XB1
1,jにより、連接部材261B
jに対して回転可能に接続されている。また、指基部222B
jの一方側の端部が、軸部材XB1
2,jにより、連接部材271B
jに対して回転可能に接続されている。ベローズ241
O,j,241
I,jの膨縮に従って、連接部材261B
j及び連接部材271B
jは相互に回転するとともに、連接部材261B
jは第1リンク部221B
jに対して回転し、連接部材271B
jは指基部222B
jに対して回転する。
【0096】
《第2関節機構JTB2
jの構成》
第2関節機構JTB2
jは、
図11により総合的に示されるように、連接部材262B
j,272B
jと、軸部材XB2
1,j,XB2
2,j,XB2
3,jと、ベローズ242
O,j,242
I,jとから構成されている。連接部材262B
j及び連接部材272B
jは、軸部材XB2
3,jにより、回転可能に接続されている。そして、指基部222B
jの他方側の端部が、軸部材XB2
1,jにより、連接部材262B
jに対して回転可能に接続されている。また、指先部223B
jの一方側の端部が、軸部材XB2
2,jにより、連接部材272B
jに対して回転可能に接続されている。ベローズ242
O,j,242
I,jの膨縮に従って、連接部材262B
j及び連接部材272B
jは相互に回転するとともに、連接部材262B
jは指基部222B
jに対して回転し、連接部材272B
jは指先部223B
jに対して回転する。なお、第2実施形態における第1及び第2関節機構を、両側ベローズの「クランク型関節機構」ともいう。
【0097】
《調整制御部280B》
上記の調整制御部280Bについて説明する。調整制御部280Bは、上述した第1実施形態の調整制御部280Aと比べて、第2実施形態のロボットハンド100Bが、ベローズ241O,j,241I,j,242O,j,242I,jとを備えることに対応して、ベローズ241O,j,241I,j,242O,j,242I,jへの空気の強制的供給、及び、、ベローズ241O,j,241I,j,242O,j,242I,jからの空気の強制的排出を行う点が異なっている。
【0098】
<動作>
以上のようにして構成されたロボットハンド100Bの動作について、指部140Bjの対象物の把持動作に主に着目して説明する。
【0099】
《把持動作(その1)》
当初においては、調整制御部280Bによるベローズ241
O,j,241
I,j,242
O,j,242
I,j内の空気圧調整は行われておらず、大気開放になっているものとする(
図8,9参照)。
【0100】
対象物の把持を行うに際して、支持装置により、ロボットハンド100Bが、対象物の近傍に位置するように移動する。こうした状態で、調整制御部280Bが、外側ベローズ241O,j,242O,j内を大気開放に維持し、内側ベローズ241I,j,242I,jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、内側ベローズ241I,j,242I,j内の空気圧が上昇する。内側ベローズ241I,j,242I,j内の空気圧が上昇すると、当該内側ベローズ241I,j,242I,jが膨張する。
【0101】
こうして外側ベローズ241
O,j内を大気開放に維持し、内側ベローズ241
I,jが膨張すると、内側ベローズ241
I,jが、第1関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、
図12に示されるように、第1リンク部221B
jと指基部222B
jとが離れるように、連接部材261B
j及び連接部材271B
jが相互に回転し、連接部材261B
jの長板状の部材が延びる方向と、連接部材271B
jの長板状の部材が延びる方向とが略平行となる。これにより、第1リンク部221B
jと指基部222B
jと間の距離が長くなり、関節間距離が長くなった状態で、第1関節機構が伸展する。
【0102】
また、外側ベローズ242O,j内を大気開放に維持し、内側ベローズ242I,jが膨張すると、内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjとが離れるように、連接部材262Bj及び連接部材272Bjが相互に回転し、連接部材262Bjの長板状の部材が延びる方向と、連接部材272Bjの長板状の部材が延びる方向とが略平行となる。これにより、指基部222Bjと指先部223Bjとの距離が長くなり、関節間距離が長くなった状態で、第2関節機構が伸展する。
【0103】
次に、調整制御部280Bが、内側ベローズ241I,j,242I,j内を大気開放にし、外側ベローズ241O,j,242O,jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、外側ベローズ241O,j,242O,j内の空気圧が上昇する。外側ベローズ241O,j,242O,j内の空気圧が上昇すると、外側ベローズ241O,j,242O,jが膨張する。
【0104】
こうして内側ベローズ241
I,j内が大気開放され、外側ベローズ241
O,jが膨張すると、外側ベローズ241
O,jが、第1関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、
図13に示されるように、連接部材261B
jの長板状の部材が延びる方向と、連接部材271B
jの長板状の部材が延びる方向とが略平行となっている状態を維持しながら、連接部材261B
jが第1リンク部221B
jに対して回転し、連接部材271B
jが指基部222B
jに対して回転する。これにより、関節間距離が長い状態のままで、第1関節機構が屈曲する。
【0105】
また、内側ベローズ242I,j内が大気開放され、外側ベローズ242O,jが膨張すると、外側ベローズ242O,jが、第2関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、連接部材262Bjの長板状の部材が延びる方向と、連接部材272Bjの長板状の部材が延びる方向とが略平行となっている状態を維持しながら、連接部材262Bjが指基部222Bjに対して回転し、連接部材272Bjが指先部223Bjに対して回転する。これにより、関節間距離が長い状態のままで、第2関節機構が屈曲する。
【0106】
この結果、クランク型の第1及び第2関節機構の関節間距離が長くなった4本の指部140B
1,140B
2,140B
3,140B
4が、対象物を把持する。なお、
図13では、対象物の図示を省略している。この把持動作では、ベローズへの空気の強制的供給を行うための制御のみで、対象物を把持することができる。
【0107】
《把持動作(その2)》
当初においては、調整制御部280Bによるベローズ241
O,j,241
I,j,242
O,j,242
I,j内の空気圧調整は行われておらず、大気開放になっているものとする(
図8,9参照)。
【0108】
把持に際して、支持装置により、ロボットハンド100Bが、対象物の近傍に移動する。こうした状態で、調整制御部280Bが、内側ベローズ241I,j,242I,j内を大気開放に維持し、外側ベローズ241O,j,242O,jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、外側ベローズ241O,j,242O,j内の空気圧が下降する。外側ベローズ241O,j,242O,j内の空気圧が下降すると、当該外側ベローズ241O,j,242O,jが収縮する。
【0109】
こうして内側ベローズ241
I,j内を大気開放に維持し、外側ベローズ241
O,jが収縮すると、外側ベローズ241
O,jが、第1関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、
図14に示されるように、第1リンク部221B
jと指基部222B
jとが近づくように、連接部材261B
j及び連接部材271B
jが相互に折りたたまれるようにして回転し、連接部材261B
jの長板状の部材が延びる方向と、連接部材271B
jの長板状の部材が延びる方向とが略平行となる。これにより、第1リンク部221B
jと指基部222B
jと間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第1関節機構が伸展する。
【0110】
また、内側ベローズ242I,j内を大気開放に維持し、外側ベローズ242O,jが収縮すると、外側ベローズ242O,jが、第2関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjとが近づくように、連接部材262Bj及び連接部材272Bjが相互に折りたたまれるようにして回転し、連接部材262Bjの長板状の部材が延びる方向と、連接部材272Bjの長板状の部材が延びる方向とが略平行となる。これにより、指基部222Bjと指先部223Bjとの距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第2関節機構が伸展する。
【0111】
次に、調整制御部280Bが、外側ベローズ241O,j,242O,j内を大気開放にし、内側ベローズ241I,j,242I,jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、内側ベローズ241I,j,242I,j内の空気圧が下降する。内側ベローズ241I,j,242I,j内の空気圧が下降すると、内側ベローズ241I,j,242I,jが収縮する。
【0112】
こうして外側ベローズ241
O,j内が大気開放され、内側ベローズ241
I,jが収縮すると、内側ベローズ241
I,jが、第1関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、
図15に示されるように、連接部材261B
jの長板状の部材が延びる方向と、連接部材271B
jの長板状の部材が延びる方向とが略平行となっている状態を維持しながら、連接部材261B
jが第1リンク部221B
jに対して回転し、連接部材271B
jが指基部222B
jに対して回転する。これにより、関節間距離が短い状態のままで、第1関節機構が屈曲する。
【0113】
また、外側ベローズ242O,j内が大気開放され、内側ベローズ242I,jが収縮すると、内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、連接部材262Bjの長板状の部材が延びる方向と、連接部材272Bjの長板状の部材が延びる方向とが平行となっている状態を維持しながら、連接部材262Bjが指基部222Bjに対して回転し、連接部材272Bjが指先部223Bjに対して回転する。これにより、関節間距離が短い状態のままで、第2関節機構が屈曲する。
【0114】
この結果、クランク型の第1及び第2関節機構の関節間距離が短くなった4本の指部140B
1,140B
2,140B
3,140B
4が、対象物を把持する。なお、
図15では、対象物の図示を省略している。この把持動作では、ベローズからの空気の強制的排出を行うための制御のみで、対象物を把持することができる。
【0115】
以上説明したように、第2実施形態では、調整制御部280Bの制御により、外側ベローズ241O,j内を大気開放とし、内側ベローズ241I,jが膨張すると、内側ベローズ241I,jが、第1関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、第1リンク部221Bjと指基部222Bjと間の距離が長くなり、関節間距離が長くなった状態で、第1関節機構が伸展する。また、調整制御部280Bの制御により、外側ベローズ242O,j内を大気開放とし、内側ベローズ242I,jが膨張すると、内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjとの距離が長くなり、関節間距離が長くなった状態で、第2関節機構が伸展する。
【0116】
次に、調整制御部280Bの制御により、内側ベローズ241I,j内を大気開放とし、外側ベローズ241O,jが膨張すると、外側ベローズ241O,jが、第1関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、関節間距離が長い状態のままで、第1関節機構が屈曲する。また、調整制御部280Bの制御により、内側ベローズ242I,j内を大気開放とし、外側ベローズ242O,jが膨張すると、外側ベローズ242O,jが、第2関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、関節間距離が長い状態のままで、第2関節機構が屈曲する。
【0117】
このため、クランク型関節機構における関節間距離が長くなった指部140Bjによって、対象物を把持することができる。当該把持動作は、相対的に大きい対象物の把持に適している。
【0118】
この場合には、ベローズ内の空気圧を正圧する制御のみで、対象物を把持することができる。このため、調整制御部におけるポンプを加圧ポンプ(通常のコンプレッサ)だけとすることができる。
【0119】
また、第2実施形態では、調整制御部280Bの制御により、内側ベローズ241I,j内を大気開放とし、外側ベローズ241O,jが収縮すると、外側ベローズ241O,jが、第1関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、第1リンク部221Bjと指基部222Bjと間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第1関節機構が伸展する。また、調整制御部280Bの制御により、内側ベローズ242I,j内を大気開放とし、外側ベローズ242O,jが収縮すると、外側ベローズ242O,jが、第2関節機構を伸展させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjとの距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第2関節機構が伸展する。
【0120】
次に、調整制御部280Bの制御により、外側ベローズ241O,j内を大気開放とし、内側ベローズ241I,jが収縮すると、内側ベローズ241I,jが、第1関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、関節間距離が短い状態のままで、第1関節機構が屈曲する。また、調整制御部280Bの制御により、外側ベローズ242O,j内を大気開放とし、内側ベローズ242I,jが収縮すると、内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を屈曲させる力を発生する。当該力により、関節間距離が短い状態のままで、第2関節機構が屈曲する。
【0121】
このため、クランク型関節機構における関節間距離が短くなった指部140Bjによって、対象物を把持することができる。当該把持動作は、相対的に小さい対象物の把持に適している。
【0122】
この場合には、ベローズ内の空気圧を負圧する制御のみで、対象物を把持することができる。このため、調整制御部におけるポンプを減圧ポンプだけとすることができる。
【0123】
このように、第2実施形態に係るロボットハンド100Bの関節は、関節軸方式のハンドでありながら、ベローズの伸縮に応じて、第1リンク部221Bjと指基部222Bjとの間の距離、指基部222Bjと指先部223Bjとの間の距離が伸縮することを許容するクランク機構となっている。
【0124】
したがって、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、対象物の把持に際して、指部が適切に運動を行うことができる。
【0125】
[第3実施形態]
次いで、本発明の第3実施形態を、
図16~
図20を主に参照して説明する。
【0126】
<構成>
図16,17には、第3実施形態に係るロボットハンド100Cの外観図が示されている。
図16は、ロボットハンド100Cを、
図16に示した座標系で表した斜視図である。また、
図17は、ロボットハンド100Cを、-Y方向側から視た外観図(XZ平面視図)である。第3実施形態についても、ロボットハンド100Cは、不図示の支持装置に取り付けられ、当該支持装置により、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能になっているものとする。ここで、
図16,17に示されるロボットハンド100Cは、構成する全てのベローズ内が大気開放となっている状態である。
【0127】
図16,17により総合的に示されるように、ロボットハンド100Cは、上述した第2実施形態のロボットハンド100Bと比べて、ハンド部110Bに代えてハンド部110Cを備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0128】
《ハンド部110Cの構成》
上記のハンド部110Cの構成について、説明する。ハンド部110Cは、
図16,17により総合的に示されるように、上述した第2実施形態のハンド部110Bと比べて、指部140B
j(j=1,…,4)に代えて指部140C
jを備える点が異なっている。
【0129】
上記の指部140C
j(j=1,…,4)は、ベース部材120Bに取り付けられている。ここで、
図17には、指部140C
1の構成図が示されている。他の指部140C
2,140C
3,140C
4についても、指部140C
1と同様に構成されている。
【0130】
指部140C
j(j=1,…,4)のそれぞれは、
図16,17により総合的に示されるように、上述した第2実施形態の指部140B
jと比べて、連接部材261B
j,262B
j,271B
j,272B
jに代えて連接部材261C
O,j,261C
I,j,262C
O,j,262C
I,j,271C
O,j,271C
I,j,272C
O,j,272C
I,jを備える点、及び、規制部材281C
j,282C
jを更に備える点が異なっている。
【0131】
上記の連接部材261C
O,jは、
図17に示されるように、第1リンク部221B
jが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材261C
O,jは、軸部材により、第1リンク部221B
j及び連接部材271C
O,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0132】
上記の連接部材271CO,jは、指基部222Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材271CO,jは、軸部材により、指基部222Bj及び連接部材261CO,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0133】
上記の連接部材261CI,jは、第1リンク部221Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材261CI,jは、軸部材により、第1リンク部221Bj及び連接部材271CI,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0134】
上記の連接部材271CI,jは、指基部222Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材271CI,jは、軸部材により、指基部222Bj及び連接部材261CI,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0135】
上記の連接部材262CO,jは、指基部222Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材262CO,jは、軸部材により、指基部222Bj及び連接部材272CO,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0136】
上記の連接部材272CO,jは、指先部223Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材272CO,jは、軸部材により、指先部223Bj及び連接部材262CO,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0137】
上記の連接部材262CI,jは、指基部222Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材262CI,jは、軸部材により、指基部222Bj及び連接部材272CI,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0138】
上記の連接部材272CI,jは、指先部223Bjが延びる方向の両側に配置された2つの長板状の部材である。連接部材272CI,jは、軸部材により、指先部223Bj及び連接部材262CI,jに接続されている。当該接続関係については、後述する。
【0139】
上記の規制部材281C
jは、例えば、鋼鉄製の枠状の部材であり、
図17,18により総合的に示されるように、ガイド溝GC1
O,j,GC1
I,jが形成されている。ガイド溝GC1
O,jには、連接部材261C
O,j及び連接部材271C
O,jを回転可能に接続する軸部材XC1
O,jが挿入されている。ガイド溝GC1
I,jには、連接部材261C
I,j及び連接部材271C
I,jを回転可能に接続する軸部材XC1
I,jが挿入されている。
【0140】
上記の規制部材282Cjは、例えば、鋼鉄製の枠状の部材であり、ガイド溝GC2O,j,GC2I,jが形成されている。ガイド溝GC2O,jには、連接部材262CO,j及び連接部材272CO,jを回転可能に接続する軸部材XC2O,jが挿入されている。ガイド溝GC2I,jには、連接部材262CI,j及び連接部材272CI,jを回転可能に接続する軸部材XC2I,jが挿入されている。
【0141】
《第1関節機構JTC1
jの構成》
第1関節機構JTC1
jは、
図18に示されるように、連接部材261C
O,j,261C
I,j,271C
O,j,271C
I,jと、規制部材281C
jと、軸部材XC1
1,j,XC1
2,j,XC1
O,j,XC1
I,jと、ベローズ241
O,j,241
I,jとから構成されている。
【0142】
連接部材261CO,j及び連接部材271CO,jは、軸部材XC1O,jにより、回転可能に接続されている。当該軸部材XC1O,jは、規制部材281Cjに形成されたガイド溝GC1O,jに係合するようになっている。第1リンク部221Bjの他方側の端部が、軸部材XC11,jにより、連接部材261CO,jに対して回転可能に接続されている。また、指基部222Bjの一方側の端部が、軸部材XC12,jにより、連接部材271CO,jに対して回転可能に接続されている。
【0143】
連接部材261CI,j及び連接部材271CI,jは、軸部材XC1I,jにより、回転可能に接続されている。当該軸部材XC1I,jは、規制部材281Cjに形成されたガイド溝GC1I,jに係合するようになっている。第1リンク部221Bjの他方側の端部が、軸部材XC11,jにより、連接部材261CI,jに対して回転可能に接続されている。また、指基部222Bjの一方側の端部が、軸部材XC12,jにより、連接部材271CI,jに対して回転可能に接続されている。
【0144】
ベローズ241O,j,241I,jの膨縮に従って、連接部材261CO,j及び連接部材271CO,jが、ガイド溝GC1O,jによって移動が規制された軸部材XC1O,jを軸にして相互に回転し、連接部材261CI,j及び連接部材271CI,jが、ガイド溝GC1I,jによって移動が規制された軸部材XC1I,jを軸にして相互に回転する。これに連動して、連接部材261CO,j及び連接部材261CI,jは、第1リンク部221Bjに対して回転し、連接部材271CO,j及び連接部材271CI,jは、指基部222Bjに対して回転する。
【0145】
《第2関節機構JTC2
jの構成》
第2関節機構JTC2
jは、
図18に示されるように、連接部材262C
O,j,262C
I,j,272C
O,j,272C
I,jと、規制部材282C
jと、軸部材XC2
1,j,XC2
2,j,XC2
O,j,XC2
I,jと、ベローズ242
O,j,242
I,jとから構成されている。
【0146】
連接部材262CO,j及び連接部材272CO,jは、軸部材XC2O,jにより、回転可能に接続されている。当該軸部材XC2O,jは、規制部材282Cjに形成されたガイド溝GC2O,jに係合するようになっている。指基部222Bjの他方側の端部が、軸部材XC21,jにより、連接部材262CO,jに対して回転可能に接続されている。また、指先部223Bjの一方側の端部が、軸部材XC22,jにより、連接部材272CO,jに対して回転可能に接続されている。
【0147】
連接部材262CI,j及び連接部材272CI,jは、軸部材XC2I,jにより、回転可能に接続されている。当該軸部材XC2I,jは、規制部材282Cjに形成されたガイド溝GC2I,jに係合するようになっている。指基部222Bjの他方側の端部が、軸部材XC21,jにより、連接部材262CI,jに対して回転可能に接続されている。また、指先部223Bjの一方側の端部が、軸部材XC22,jにより、連接部材272CI,jに対して回転可能に接続されている。
【0148】
ベローズ242O,j,242I,jの膨縮に従って、連接部材262CO,j及び連接部材272CO,jが、ガイド溝GC2O,jによって移動が規制された軸部材XC2O,jを軸にして相互に回転し、連接部材262CI,j及び連接部材272CI,jが、ガイド溝GC2I,jによって移動が規制された軸部材XC2I,jを軸にして相互に回転する。これに連動して、連接部材262CO,j及び連接部材262CI,jは、指基部222Bjに対して回転し、連接部材272CO,j及び連接部材272CI,jは、指先部223Bjに対して回転する。なお、第3実施形態における第1及び第2関節機構を、両側ベローズの「パンタグラフ型関節機構」ともいう。
【0149】
<動作>
以上のようにして構成されたロボットハンド100Cの動作について、指部140Cjの対象物の把持運動の動作に主に着目して説明する。
【0150】
《把持動作(その1)
当初においては、調整制御部280Bによるベローズ241O,j,241I,j,242O,j,242I,j内の空気圧調整は行われておらず、大気開放となっているものとする。
【0151】
対象物の把持を行うに際して、支持装置により、ロボットハンド100Bが、対象物の近傍に位置するように移動する。こうした状態で、調整制御部280Bが、外側ベローズ241O,jへの空気の強制的供給を行い、内側ベローズ241I,jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、外側ベローズ241O,j内の空気圧が上昇する。外側ベローズ241O,j内の空気圧が上昇すると、当該外側ベローズ241O,jが膨張する。また。かかる制御を行うと、内側ベローズ241I,j内の空気圧が下降する。内側ベローズ241I,j内の空気圧が下降すると、当該内側ベローズ241I,jが収縮する。
【0152】
こうして外側ベローズ241
O,jが膨張し、内側ベローズ241
I,jが収縮すると、外側ベローズ241
O,j及び内側ベローズ241
I,jが、第1関節機構を内側に屈曲させる力を発生する。当該力により、
図19に示されるように、第1リンク部221B
jと指基部222B
jとが近づくように、規制部材281C
jによる規制のもとで、連接部材261C
I,j,261C
O,j,271C
I,j,271C
O,jが相互に回転し、連接部材261C
I,j,261C
O,j,271C
I,j,271C
O,jの長板状の部材が延びる方向が略平行になるとともに、これらの連接部材と、規制部材281C
jが延びる方向とが略平行となる。これにより、第1リンク部221B
jと指基部222B
jと間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第1関節機構が内側に屈曲する。
【0153】
引き続き、調整制御部280Bが、外側ベローズ242O,jへの空気の強制的供給を行い、内側ベローズ242I,jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、外側ベローズ242O,j内の空気圧が上昇する。外側ベローズ242O,j内の空気圧が上昇すると、当該外側ベローズ242O,jが膨張する。また。かかる制御を行うと、内側ベローズ242I,j内の空気圧が下降する。内側ベローズ242I,j内の空気圧が下降すると、当該内側ベローズ242I,jが収縮する。
【0154】
こうして外側ベローズ242O,jが膨張し、内側ベローズ242I,jが収縮すると、外側ベローズ242O,j及び内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を内側に屈曲させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjとが近づくように、規制部材282Cjによる規制のもとで、連接部材262CI,j,262CO,j,272CI,j,272CO,jが相互に回転し、連接部材262CI,j,262CO,j,272CI,j,272CO,jの長板状の部材が延びる方向が略平行になるとともに、これらの連接部材と、規制部材282Cjが延びる方向とが略平行となる。これにより、指基部222Bjと指先部223Bjと間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第2関節機構が内側に屈曲する。このように、第1関節機構が内側に屈曲し、第2関節機構が内側に屈曲するため、相対的に小さな対象物を外側から掴むようにして、把持することができる。
【0155】
この結果、パンタグラフ型の第1及び第2関節機構の関節間距離が短くなった4本の指部140C
1,140C
2,140C
3,140C
4が、対象物を把持する。なお、
図19では、対象物の図示を省略している。
【0156】
《把持動作(その2)》
当初においては、調整制御部280Bによるベローズ241O,j,241I,j,242O,j,242I,j内の空気圧調整は行われておらず、大気開放となっているものとする。
【0157】
把持に際して、支持装置により、ロボットハンド100Bが、対象物の近傍に移動する。こうした状態で、調整制御部280Bが、外側ベローズ241O,jへの空気の強制的供給を行い、内側ベローズ241I,jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御により、上述した第3実施形態における把持動作(その1)で説明したように、第1リンク部221Bjと指基部222Bjと間の距離が短くなった状態で、第1関節機構が内側に屈曲する。
【0158】
引き続き、調整制御部280Bが、外側ベローズ242O,jからの空気の強制的排出を行い、内側ベローズ242I,jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御を行うと、外側ベローズ242O,j内の空気圧が下降する。外側ベローズ242O,j内の空気圧が下降すると、当該外側ベローズ242O,jが収縮する。また。かかる制御を行うと、内側ベローズ242I,j内の空気圧が上昇する。内側ベローズ242I,j内の空気圧が上昇すると、当該内側ベローズ242I,jが膨張する。
【0159】
こうして外側ベローズ242O,jが収縮し、内側ベローズ242I,jが膨張すると、外側ベローズ242O,j及び内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を外側に屈曲させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjとが近づくように、規制部材282Cjによる規制のもとで、連接部材262CI,j,262CO,j,272CI,j,272CO,jが相互に回転し、連接部材262CI,j,262CO,j,272CI,j,272CO,jの長板状の部材が延びる方向が略平行になるとともに、これらの連接部材と、規制部材282Cjが延びる方向とが略平行となる。これにより、指基部222Bjと指先部223Bjと間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第2関節機構が外側に屈曲する。このように、第1関節機構が内側に屈曲し、第2関節機構が外側に屈曲する。このため、例えば、空の牛乳瓶を持ち上げるに際し、第2関節機構を外側に屈曲させていない状態で、瓶の飲み口の内側に指先部223Bjを挿入し、その後、第2関節機構を外側に屈曲させることで、指先部223Bjを返し、瓶の内側に当該指先部223Bjを引っ掛け、当該瓶を持ち上げることができる。
【0160】
この結果、パンタグラフ型の第1及び第2関節機構の関節間距離が短くなった4本の指部140C
1,140C
2,140C
3,140C
4が、対象物を把持する。なお、
図20では、対象物の図示を省略している。
【0161】
以上説明したように、第3実施形態では、調整制御部280Bの制御により、外側ベローズ241O,jが膨張し、内側ベローズ241I,jが収縮すると、外側ベローズ241O,j及び内側ベローズ241I,jが、第1関節機構を内側に屈曲させる力を発生する。当該力により、第1リンク部221Bjと指基部222Bjとの間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第1関節機構が内側に屈曲する。次に、調整制御部280Bの制御により、外側ベローズ242O,jが膨張し、内側ベローズ242I,jが収縮すると、外側ベローズ242O,j及び内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を内側に屈曲させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjと間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第2関節機構が内側に屈曲する。
【0162】
このため、パンタグラフ型関節機構における関節間距離が短くなった指部140Cjによって、相対的に小さな対象物を把持することができる。当該把持動作は、物を外側から掴むのに適している。
【0163】
また、第3実施形態では、外側ベローズ241O,jへの空気の強制的供給、及び、内側ベローズ241I,jからの空気の強制的排出が行われて、第1関節機構の関節間距離が短くなり、内側に屈曲している状態で、調整制御部280Bの制御により、外側ベローズ242O,jが収縮し、内側ベローズ242I,jが膨張すると、外側ベローズ242O,j及び内側ベローズ242I,jが、第2関節機構を外側に屈曲させる力を発生する。当該力により、指基部222Bjと指先部223Bjと間の距離が短くなり、関節間距離が短くなった状態で、第2関節機構が外側に屈曲する。
【0164】
このため、指部140Cjの第2関節機構を外側に屈曲させることが出来るため、例えば、第2関節機構を外側に屈曲させる前に、牛乳瓶の飲み口の内側に指先部223Bjを挿入し、その後、第2関節機構を外側に屈曲させて指先部223Bjを返し、瓶の内側に当該指先部223Bjを引っ掛けて、当該瓶を持ち上げたりすることができる。
【0165】
このように、第3実施形態に係るロボットハンド100Cの関節は、関節軸方式のハンドでありながら、ベローズの伸縮に応じて、第1リンク部221Bjと指基部222Bjとの間の距離、指基部222Bjと指先部223Bjとの間の距離が伸縮することを許容するパンタグラフ機構となっている。
【0166】
したがって、第3実施形態によれば、上述した第1及び第2実施形態と同様に、対象物の把持に際して、指部が適切に運動を行うことができる。
【0167】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0168】
例えば、上記の第1~第3実施形態では、第2リンク部は、指基部及び指先部の2つのリンクから構成されるとした。これに対し、第2リンク部は、1つのリンクから構成されるようにしてもよいし、3つ以上のリンクから構成されるようにしてもよい。
【0169】
また、上記の第1~第3実施形態では、4本の指部を備えるようにしたが、指部の数は1本~3本であってもよいし、5本以上であってもよい。
【0170】
また、上記の第1実施形態では、1つの関節機構に1つのベローズを用意したが、1つの関節機構に2以上のベローズを用意するようにしてもよい。
【0171】
また、上記の第2及び第3実施形態では、1つの関節機構に2つのベローズを用意したが、1つの関節機構に3以上のベローズを用意するようにしてもよい。
【0172】
本発明のロボットハンドは、第1実施形態に係る関節機構、第2実施形態に係る関節機構及び第3実施形態に係る関節機構を任意に組み合せたロボットハンドであってもよいことは勿論である。
【0173】
また、上記の第1~第3実施形態では、ベローズの膨縮によって関節運動を行う力を発生させたが、ベローズ以外のアクチュエータによって、関節運動を行う力を発生させるようにしてもよい。
【0174】
また、第1実施形態に係るロボットハンドについて、各指部における第1リンク部と、取付部材とが一体成形されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0175】
以上説明したように、本発明のロボットハンドは、対象物を把持するロボットハンドに適用することができる。
【符号の説明】
【0176】
100A~100C…ロボットハンド、110A~110C…ハンド部、120A,120B…ベース部材、130A…取付部材、140Aj~140Cj(j=1,…,4)…指部、221j,221Bj…第1リンク部、222j,222Bj…指基部(第2リンク部の一部)、223j,223Bj…指先部(第2リンク部の一部)、241j,242j,241O,j,241I,j,242O,j,242I,j…ベローズ、251j,252j,251O,j,251I,j,252O,j,252I,j…配管、261Bj,262Bj,271Bj,272Bj,261CO,j,261CI,j,262CO,j,262CI,j,271CO,j,271CI,j,272CO,j,272CI,j…連接部材、281Cj,282Cj…規制部材、280A,280B…調整制御部、281…加圧ポンプ、282…減圧ポンプ、283A…電気-空気圧制御弁、284A…制御部、285,286…配管、AX1j…軸部材(第1軸部材)、AX2j…軸部材(第2軸部材)、GC1j…ガイド溝(第1ガイド溝)、GC2j…ガイド溝(第2ガイド溝)、GC1O,j,GC1I,j,GC2O,j,GC2I,j…ガイド溝、XB11,j,XB12,j,XB13,j,XB21,j,XB22,j,XB23,j,XC11,j,XC12,j,XC1O,j,XC1I,j,XC21,j,XC22,j,XC2O,j,XC2I,j…軸部材、JTA1j,JTB1j,JTC1j…第1関節機構、JTA2j,JTB2j,JTC2j…第2関節機構