(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159851
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】熱分解装置及びこれを用いた油化処理装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20221011BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20221011BHJP
F27B 5/08 20060101ALI20221011BHJP
F27B 5/06 20060101ALI20221011BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20221011BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20221011BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20221011BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B01J19/00 301E
C10G1/10
F27B5/08
F27B5/06
F27D17/00 104D
F27D17/00 104G
F27D19/00 Z
F27D1/00 G
F27D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064286
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】521151485
【氏名又は名称】杉澤 修
(71)【出願人】
【識別番号】521143675
【氏名又は名称】広原 淨
(71)【出願人】
【識別番号】521143686
【氏名又は名称】崎村 英司
(71)【出願人】
【識別番号】521151522
【氏名又は名称】工藤 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 修
(72)【発明者】
【氏名】工藤 武彦
【テーマコード(参考)】
4G075
4H129
4K051
4K056
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4G075AA14
4G075AA22
4G075AA37
4G075AA61
4G075AA63
4G075BA05
4G075BD09
4G075BD13
4G075CA02
4G075CA03
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA01
4G075EA07
4G075EB01
4G075EC25
4G075FA01
4G075FB02
4G075FC06
4G075FC20
4H129AA01
4H129BA04
4H129BA07
4H129BB03
4H129BC20
4H129BC22
4H129BC36
4H129NA45
4K051AA04
4K051AB03
4K051BC01
4K056DB01
4K056DB02
4K056DB05
4K056DB13
4K056DC06
4K056FA08
4K056FA10
4K061BA07
4K061CA08
4K061CA12
4K061DA05
4K061GA10
4K061HA05
4K063AA12
4K063BA13
4K063CA06
4K063EA01
(57)【要約】
【課題】プラスチック等の処理対象物を熱分解する際の処理効率を向上可能な熱分解装置を提供する。
【解決手段】内部に密閉状の空間部を区画する外炉7と、外炉7の空間部14内に全体が収納されると共に空間部14に対して密閉され、内部に熱分解の対象物を収容する内炉9と、空間部14に対して設けられ内炉9を加熱する熱源11と、内炉9内に連通し内炉9の加熱による対象物の分解で発生したガスを取り出すための排出路13と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に密閉状の空間部を区画する外炉と、
前記外炉の空間部内に全体が収納されると共に前記空間部に対して密閉され、内部に熱分解の対象物を収容する内炉と、
前記空間部に対して設けられ前記内炉を加熱する熱源と、
前記内炉内に連通し前記加熱による前記対象物の分解で発生したガスを取り出すための排出路と、
を備える熱分解装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱分解装置であって、
前記内炉は、前記空間部に対して着脱自在に設けられ、
前記外炉は、前記空間部を開放して前記内炉を前記空間部に側方から着脱可能とする開閉扉を備えた、
熱分解装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱分解装置であって、
前記空間部は、前記内炉を着脱される着脱位置から収納位置にスライドさせることによって収納し、
前記内炉は、前記収納位置で前記排出路に接続されて連通される接続口を備える、
熱分解装置。
【請求項4】
請求項3記載の熱分解装置であって、
前記空間部内で前記内炉を前記着脱位置から前記収納位置へスライドさせるジャッキを備えた、
熱分解装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の熱分解装置であって、
前記内炉は、前記収納位置で展開可能な脚部を有する、
熱分解装置。
【請求項6】
内部に相互に連続する収納空間及び連続空間からなる密閉状の空間部を区画する外炉と、
前記外炉の収納空間内に全体が収納されると共に内部が前記連続空間に対して解放され、前記内部に熱分解の対象物を収容する内炉と、
前記収納空間に対して設けられ前記内炉を加熱する第1熱源と、
前記連続空間に対して設けられ前記連続空間を介して前記対象物に対向し前記連続空間及び前記対象物を加熱する第2熱源と、
前記連続空間内に連通し前記加熱による前記対象物の分解で発生したガスを取り出すための排出路と、
を備える熱分解装置。
【請求項7】
請求項6記載の熱分解装置であって、
前記内炉は、前記空間部に対して着脱自在に設けられた、
熱分解装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の熱分解装置であって、
前記外炉は、前記空間部側に位置する保温部材と、該保温部材の外周を覆う断熱部材とを備えた、
熱分解装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の熱分解装置であって、
前記内炉は、板厚が0.5mm~2.5mmの缶体である、
熱分解装置。
【請求項10】
請求項1~5の何れか一項に記載の熱分解装置であって、
前記内炉は、前記空間部を区画する前記外炉の内周面に嵌合し、
前記熱源は、前記空間部を区画し前記内炉に対向する前記外炉の壁部に設けられた、
熱分解装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の熱分解装置であって、
前記内炉は、前記ガスを排出するためのオリフィスを備え、
前記排出路は、前記オリフィスを介して前記内炉内に連通する、
熱分解装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の熱分解装置を備えた油化処理装置であって、
前記熱分解装置の排出路に接続され、流入したガスを冷却して油化する冷却装置を備えた、
油化処理装置。
【請求項13】
請求項12記載の熱分解装置を備えた油化処理装置であって、
前記冷却装置は、前記ガスを流入させ前記ガスに対して冷却液を噴霧して前記冷却を行う冷却部と、前記冷却液を一定のPH及び温度に保持して前記冷却部へ供給する前記冷却液の供給源と、を備える、
油化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやゴム等の対象物を熱分解する熱分解装置及びこれを用いた油化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄されるプラスチック製品やゴム製品の環境への影響が世界的な問題となっている。これに対する取り組みとして、プラスチック製品等の使用量の削減の他、プラスチック等の処理量を増加することも行われている。
【0003】
プラスチック等を処理する方法としては、資源の有効活用の観点からプラスチック等を分解して油を生成する油化技術が注目されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の油化技術では、プラスチック等の廃棄物(対象物)を熱分解してガスを発生させ、発生したガスを冷却して油を得るようになっている。
【0005】
熱分解は、効率等を考慮して、外釜内に内釜である収納室を設けた二重釜によって行われている。二重釜は、外釜と内釜との間に熱媒油(耐熱性油)が介在しており、外釜をバーナーによって熱することで、熱媒油を介して内釜に熱を均一に伝達する。これによって、内釜内の廃棄物をガス化することができる。
【0006】
しかし、特許文献1の油化技術では、外釜内と内釜内とが連通しているので、内釜内の熱が外釜内へと逃げやすく、処理効率の向上に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、プラスチック等の処理対象物を熱分解する際の処理効率の向上に限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、内部に密閉状の空間部を区画する外炉と、前記外炉の空間部内に全体が収納されると共に前記空間部に対して密閉され、内部に熱分解の対象物を収容する内炉と、前記空間部に対して設けられ前記内炉を加熱する熱源と、前記内炉内に連通し前記加熱による前記対象物の分解で発生したガスを取り出すための排出路と、を備える熱分解装置を提供する。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、内部に相互に連続する収納空間及び連続空間からなる密閉状の空間部を区画する外炉と、前記外炉の収納空間内に全体が収納されると共に内部が前記連続空間に対して解放され、前記内部に熱分解の対象物を収容する内炉と、前記収納空間に対して設けられ前記内炉を加熱する第1熱源と、前記連続空間に対して設けられ前記連続空間を介して前記対象物に対向し前記連続空間及び前記対象物を加熱する第2熱源と、前記連続空間内に連通し前記加熱による前記対象物の分解で発生したガスを取り出すための排出路と、を備える熱分解装置を提供する。
【0011】
さらに、本発明の第3の態様は、熱分解装置を備えた油化処理装置を提供する。この油化処理装置は、前記熱分解装置の排出路に接続され、流入したガスを冷却して油化する冷却装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、外炉内の密閉状の空間部に、この空間部に対して密閉された内炉全体を収納したので、外部に対して断熱された状態で内炉を迅速に加熱することができると共に、内炉内と空間部との間での熱交換が抑制され、より迅速に内炉を加熱することができる。結果として、対象物の熱分解の所要時間を短縮することができ、熱分解の処理効率を向上することができる。
【0013】
また、本発明の第2の態様によれば、内炉の内部が連続空間に対して解放され、この連続空間を介して第2熱源により内炉内の対象物を加熱する。このため、連続空間を対象物と共に加熱して連通する内炉内との間での熱交換を抑制しながら、対象物の熱分解の所要時間を短縮することができ、熱分解の処理効率を向上することができる。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、熱分解の処理効率の向上を通じて、油化処理の処理効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】熱分解装置を適用した油化処理装置を示す全体図である(実施例1)。
【
図2】
図1の熱分解装置の概略構成を示す斜視図である(実施例1)。
【
図3】
図1の熱分解装置の縦断面図であり、内炉が収納位置にある状態を示す(実施例1)。
【
図4】
図1の熱分解装置の縦断面図であり、内炉が着脱位置にある状態を示す(実施例1)。
【
図5】
図1の熱分解装置の内炉を示す側面図である(実施例1)。
【
図6】熱分解装置を適用した油化処理装置を示す全体図である(実施例2)。
【
図7】
図6の熱分解装置の縦断面図である(実施例2)。
【
図8】
図6の熱分解装置の内炉と第1熱源の側部ヒーターとの関係を示す概略斜視図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
プラスチック等の対象物を熱分解する際の処理効率を向上するという目的を、外炉内の密閉状の空間部に、この空間部に対して密閉された内炉全体を収納したことにより実現した。
【0017】
すなわち、熱分解装置(3)は、外炉(7)と、内炉(9)と、熱源(11)と、排出路(13)とを備える。外炉(7)は、内部に密閉状の空間部(14)を区画する。内炉(9)は、外炉(7)の空間部(14)内に全体が収納されると共に空間部(14)に対して密閉され、内部に熱分解の対象物を収容する。熱源(11)は、空間部(14)に対して設けられ、内炉(9)を加熱する。排出路(13)は、内炉(9)内に連通し、内炉(9)の加熱による対象物の分解で発生したガスを取り出す。
【0018】
密閉状の空間部(14)は、完全な気密性を確保する必要はなく、接面漏れ等が生じる程度の気密性が確保されていればよい。内炉(9)の空間部(14)に対する密閉も同様である。
【0019】
内炉(9)は、空間部(14)に対して着脱自在に又は固定的に設けることができる。内炉(9)を着脱自在な構成とする場合は、空間部(14)に対する内炉(9)の着脱方式は問わない。ただし、外炉(7)は、空間部(14)を開放して内炉(9)を空間部(14)に側方から着脱可能とする開閉扉(15a)を備えるのが好ましい。
【0020】
この場合において、空間部(14)は、内炉(9)を着脱される着脱位置から収納位置にスライドさせることによって収納し、内炉(9)は、収納位置で内部が排出路(13)に結合されて連通される接続口(31b)を備えた構成としてもよい。内炉(9)のスライドの方向は、上下方向、左右方向、斜め方向と自由であるが、上下方向とするのが好ましい。
【0021】
さらに、熱分解装置(3)は、空間部(14)内で内炉(9)を着脱位置から収納位置へスライドさせるジャッキ(25)を備えてもよい。また、内炉(9)は、収納位置で展開可能な脚部(29a)を有してもよい。
【0022】
一方、熱分解装置(1)は、内炉(9)内を外炉(7)の空間部(14)に対して解放する構成とする形態も可能である。かかる形態の熱分解装置(1)は、外炉(7)と、内炉(9)と、第1熱源(73)及び第2熱源(75)と、排出路(13)とを備える。
【0023】
外炉(7)は、内部に相互に連続する収納空間(77)及び連続空間(79)からなる密閉状の空間部(14)を区画する。内炉(9)は、外炉(7)の収納空間(14)内に全体が収納されると共に内部が連続空間(79)に対して解放され、内部に熱分解の対象物を収容する。第1熱源(73)は、収納空間(77)に対して設けられ、内炉(9)を加熱する。第2熱源(75)は、連続空間(79)に対して設けられ、連続空間(79)を介して対象物(O)に対向し連続空間(79)及び対象物(O)を加熱する。排出路(13)は、連続空間(79)内に連通する。
【0024】
かかる形態においても、内炉(9)は、空間部(14)に対して着脱自在に設けられてもよい。この場合、内炉(9)を側方から着脱可能とする他、上方から着脱可能としてもよい。
【0025】
外炉(7)は、外部に対する断熱性を有するのが好ましく、さらに好ましくは保温性を有する。このため、外炉(7)は、空間部(14)側に位置する保温部材(21)と、この保温部材(21)の外周を覆う断熱部材(23)とを備えてもよい。
【0026】
内炉(9)は、排出路(13)に連通するが、連通方法は問わない。ただし、内炉(9)は、ガスを排出するためのオリフィスを備え、排出路(13)は、オリフィスを介して内炉(9)内に連通するのが好ましい。
【0027】
内炉(9)は、外炉(7)に対して密閉可能な熱源を持たない容器であればよく、好ましくは板厚が0.5mm~2.5mmの缶体とする。
【0028】
内炉(9)は、空間部(14)を区画する外炉(7)の内周面(7a)に嵌合し、熱源(11)は、空間部(14)を区画し、内炉(9)に対向する外炉(9)の壁部(15,17)に設けられてもよい。
【0029】
熱分解装置(3)を備えた油化処理装置(1)は、熱分解装置(3)に加えて、冷却装置(5)を備える。冷却装置(5)は、熱分解装置(3)の排出路(13)に接続され、流入したガスを冷却して油化する。
【0030】
冷却装置(5)は、ガスを流入させガスに対して冷却液(W)を噴霧して冷却を行う冷却部(47,49)と、冷却液(W)を一定のPH及び温度に保持して冷却部(47,49)へ供給する冷却液(W)の供給源(72)と、を備えてもよい。
【実施例0031】
[油化処理装置の構成]
図1は、本発明の実施例1に係る熱分解装置を適用した油化処理装置を示す全体図である。
【0032】
油化処理装置1は、プラスチックやゴム等の対象物を熱分解してガスを発生させ、発生したガスを冷却して油化するものである。この油化処理装置1は、熱分解装置3と、冷却装置5とを備えている。
【0033】
[熱分解装置]
図2は、熱分解装置3の概略構成を示す斜視図である。
図3は、熱分解装置3の縦断面図であり、内炉9が収納位置にある状態を示し、
図4は、同内炉9が着脱位置にある状態を示す。
図5は、内炉9を示す側面図である。
【0034】
熱分解装置3は、外炉7と、内炉9と、熱源11と、排出路13とを備える。
【0035】
外炉7は、内部に密閉状の空間部14を区画し、空間部14内に配置された内炉9を加熱する炉である。この外炉7は、電気ヒーター炉、遠赤外線炉、間接加熱炉等を採用することが可能であるが、本実施例において電気ヒーター炉となっている。なお、密閉状の空間部14は、完全な気密性を確保する必要はなく、接面漏れ等が生じる程度の気密性が確保されていればよい。
【0036】
外炉7は、密閉状の空間部14を区画できれば種々の構造を採用可能である。本実施例の外炉7は、円筒状の側壁部15の軸方向両側の開口を端壁部17,19によって閉止して構成されている。この外炉7は、一方の端壁部17が下方に位置し、他方の端壁部19が上方に位置するように軸方向が上下方向に沿って設置されている。ただし、外炉7は、設置スペースの関係等により、水平方向に沿って設置し或いは上下左右に対する斜め方向に設置してもよい。なお、軸方向とは、外筒7の軸線に沿った方向をいうが、厳密に軸線に沿っている必要はなく、軸線に対して僅かに斜めの方向も含む(以下、同じ)。
【0037】
一方の端壁部17は、ステンレス鋼や鉄等の金属からなり、内部が中空状の円板状に形成されている。端壁部17には、設置用の脚部17aが取り付けられている。この端壁部17には、後述する熱源11の底部ヒーター35が設けられている。なお、端壁部17内には、後述する断熱部材23や保温部材21を設けてもよい。
【0038】
他方の端壁部19は、ステンレス鋼や鉄等の金属によって構成された円板状の部材である。この端壁部19には、接続筒19aが設けられている。接続筒19aは、端壁部19を貫通して設けられている。この接続筒19aは、端壁部19に対して弾性部材である板ばね20によって、後述する内炉9のスライド方向である上下方向に弾性変位可能に支持されている。なお、弾性部材としては、板ばね20に限られず、ねじりばねやコイルばね等としてもよい。
【0039】
この接続筒19aは、外炉7内で空間部14内に臨み、外炉7外で排出路13内に臨んでいる。接続筒19aは、後述する内炉9の接続口31bを内炉9のスライドに応じた挿入により接続させる。このとき、接続筒19aは、板バネ20の弾性力で開口縁部が内炉9に密接して閉止される。
【0040】
かかる構成より、本実施例では、内炉9と排出路13とを接続するために排出路13側を可動にする必要がない。なお、接続筒19aは、端壁部19に固定してもよい。また、接続筒19aに代えて、端壁部19に貫通孔を設けてもよい。
【0041】
側壁部15は、ステンレス鋼や鉄等の金属からなり、内部が中空状の円筒体によって形成されている。側壁部15内には、保温部材21と断熱部材23とが設けられている。
【0042】
保温部材21は、側壁部15の空間部14側に位置して設けられている。この保温部材21は、熱源11の側部ヒーター33によって加熱され、加熱による温度を保持ものである。本実施例の保温部材21は、側壁部15に沿って環状に形成された、例えばオイル等の熱媒体を充填したジャケットや配管等によって構成される。この保温部材21は、上下方向及び周方向において空間部11の全域に設けられているが、上下方向及び周方向の何れか一方又は双方の一部にのみ設けてもよい。
【0043】
ただし、保温部材21は、ケイ酸カルシウム等の断熱部材を兼用するものであってもよい。また、保温部材21は、側部ヒーター33によって加熱して保温可能なものであれば、環状に形成する必要はなく、周方向や軸方向に所定間隔毎に設けてもよい。また、保温部材21は、省略することも可能である。
【0044】
この保温部材21の内周には、熱源11の側部ヒーター33が設けられ、保温部材21の外周には、断熱部材23が設けられている。
【0045】
断熱部材23は、保温部材21の外周を覆うように設けられている。本実施例の断熱部材23は、保温部材21の外周に沿って環状に形成されている。なお、断熱部材23は、外炉7の内外を断熱できればよいので、環状に形成する必要はなく、箱状等にすることも可能である。この断熱部材23は、アルミナ、粘土、リフラクトリーセラミックファイバ、アルミナファイバ、ケイ酸カルシウム等によって形成することが可能である。
【0046】
かかる構成の側壁部15は、開閉扉15aと本体部15bとに分割されて構成されている。開閉扉15aは、本体部15bに対してヒンジ等によって開閉可能に結合されている。この開閉扉15aは、空間部14を開放して内炉9を空間部14に側方から着脱可能とする。なお、空間部14に対する内炉9の着脱は、他方の端壁部19を開閉して行ってもよい。
【0047】
空間部14は、内炉9を着脱される
図4の着脱位置から
図3の収納位置にスライドさせることによって収納する。なお、着脱位置とは、内炉9の側方からの着脱が可能な位置であり、本実施例において、外炉7の接続筒19aから内炉9の接続口31bが抜けた状態の位置をいう。収納位置は、内炉9の側方からの着脱が不能な位置であり、本実施例において、外炉7の接続筒19aに内炉9の接続口31bが挿入された状態の位置をいう。
【0048】
内炉9のスライドは、ジャッキ25により行われる。すなわち、本実施例の熱分解装置3は、空間部14内で内炉9を着脱位置から収納位置へスライドさせるジャッキ25を備えた構成となっている。なお、ジャッキ25を省略して、スライドを手動によって行ってもよい。
【0049】
ジャッキ25は、油圧式、ねじ式、エアー式等の適宜のもの採用可能であるが、本実施例において油圧式となっている。このジャッキ25は、空間部14に配置されたサドル25aにラムシリンダー25bが結合されている。ラムシリンダー25bを動作させるレバー25cは、外炉7外に引き出されている。
【0050】
このジャッキ25では、レバー25cの非操作時にサドル25aが着脱位置に位置し、レバー25cの操作時にラムシリンダー25bを伸長させてサドル25aを着脱位置から収納位置まで上昇させるようになっている。
【0051】
内炉9は、外炉7の空間部14内に全体が収納されると共に空間部14に対して密閉され、内部に熱分解の対象物を収容する。内炉9の空間部14に対する密閉は、完全な気密性を確保する必要はなく、接面漏れ等が生じる程度の気密性が確保されていればよい。
【0052】
この内炉9は、熱源を持たない容器である。本実施例において、内炉9は、上記のように空間部14に対して着脱自在に設けられている。ただし、内炉9は、空間部14に対して固定的に設けてもよい。
【0053】
内炉9は、種々の形態を採用することが可能であるが、本実施例において円筒状の缶体となっている。すなわち、内炉9は、円筒状の側壁部27の軸方向両側の開口を端壁部29,31によって閉止して構成されている。
【0054】
端壁部29,31は、ステンレス鋼や鉄等の金属からなり、円板状に形成されている。側壁部27は、ステンレス鋼や鉄等の金属からなり、端壁部29,31の外周縁間に設けられている。一方の端壁部29には、収納位置で展開可能な脚部29aが設けられている。脚部29aの展開は、脚部29aの自重、ばね等の付勢部材、或いは手動によって行えばよい。展開した脚部29aは、端壁部29と外炉7との間に位置し、内炉9を収納位置に保持する。
【0055】
他方の端壁部31は、側壁部27に対して着脱自在に構成されている。具体的には、端壁部31は、外周縁に沿って設けられたバンド31aによって側壁部27に締結されて固定される。なお、端壁部31は、他の締結具等によって側壁部27に締結する構成としてもよい。
【0056】
この端壁部31には、接続口31bが設けられている。接続口31bは、端壁部31から上方に突出した筒状に形成されている。接続口31bは、内炉9の内部及び外部を連通し、ガスを排出するためのオリフィスを構成する。この接続口31bは、上記のように内炉9が収納位置に収納された状態で、内炉9を排出路13に接続して連通させる構成となっている。
【0057】
なお、接続口31bは、端壁部31に設けられた貫通孔でもよい。この場合、接続筒19aを接続口31bに挿通することで内炉9を排出路13に接続すればよい。
【0058】
本実施例の接続口31bには、蓋体31cが開閉可能に設けられている。蓋体31cは、ヒンジ(図示せず)によって接続口31bに開閉自在に支持され、且つばね等の付勢部材(図示せず)によって接続口31bを閉止する位置に保持される。
【0059】
この蓋体31cは、内炉9が収納位置に収納された状態で、外炉7の接続筒19a内に位置するピン19bにより、付勢部材の付勢力に抗して内側に押し込まれて接続口31bを開放する。この開放により、本実施例の接続口31bは、内炉9の内部を排出路13に連通する。なお、蓋体31cは省略することも可能である。
【0060】
内炉9の端壁部29,31及び側壁部27の板厚(内炉9の板厚)は、0.5mm~2.5mmに設定されている。これにより、熱抵抗が極めて低く、加熱及び冷却を迅速に行うことが可能となっている。
【0061】
なお、側壁部27の板厚を0.5mm~2.5mmに設定し、端壁部29,31の板厚を0.5mmよりも小さく設定し、或いは2.5mmよりも大きく設定してもよい。また、端壁部29,31及び側壁部27の板厚の全てを、0.5mmよりも小さく設定し、或いは2.5mmよりも大きく設定してもよい。
【0062】
内炉9の容量は、20~300リットル程度、特に100~200リットル程度となっている。従って、内炉9は、ドラム缶と同様のサイズ及び構成となっている。なお、内炉9の容量は、20リットルよりも小さく、或いは300リットルよりも大きく設定してもよい。
【0063】
内炉9の外径は、空間部14を区画する外炉7の内周面7aの径と同一か僅かに小さく設定されている。これにより、内炉9の外周面9aは、外炉7の内周面7aに嵌合する構成となっている。ここでの嵌合は、内炉9のスライドを妨げない程度のものであり、僅かな隙間を有するものも含まれる。
【0064】
熱源11は、空間部14に対して設けられ、内炉9を加熱するものである。この熱源11は、空間部14を区画し内炉9に対向する外炉7の壁部である側壁部15及び端壁部17に設けられている。熱源11には、外炉7の加熱方式に応じて適宜のものが採用される。
【0065】
本実施例では、外炉7が電気ヒーター炉であるため、熱源11が電熱線からなっている。電熱線は、ニクロム線や鉄クロム線等の電熱合金等によって構成することが可能である。なお、熱源11は、加熱方式に応じて、熱電素子、セラミックヒーター、カーボンヒーター等を採用することも可能である。
【0066】
かかる熱源11は、側部ヒーター33と底部ヒーター35とを備えている。
【0067】
側部ヒーター33は、外炉7の側壁部15に配置されている。本実施例の側部ヒーター33は、側壁部15内において、内炉9の側壁部27全体を加熱するように配置されており、保温部材21の内周全体にわたる筒状に形成されている。
【0068】
側部ヒーター33の内周は、外炉7の内周面7aを構成する側壁部15の内壁16に対して側壁部15内から接している。これにより、側部ヒーター33は、側壁部15の内壁16を介して内炉9を加熱するようになっている。なお、側部ヒーター33は、外炉7の内周面7aに取り付けて、空間部14内に露出させてもよい。
【0069】
底部ヒーター35は、外炉7の端壁部17に配置されている。本実施例の底部ヒーター35は、ジャッキ25のラムシリンダー25bを避けるように、平面視において環状に設けられている。ジャッキ25を省略する場合は、底部ヒーター35を環状にする必要はない。この底部ヒーター35は、外炉7の内底面7bを構成する端壁部17の表壁18に端壁部17内から接し、端壁部17の表壁18を介して空間部14内を加熱するようになっている。なお、底部ヒーター35は、端壁部17の表壁18上に取り付けて、空間部14内に露出させてもよい。また、底部ヒーター35は、省略することも可能である。
【0070】
排出路13は、内炉9内に連通し、内炉9の加熱による対象物の分解で発生したガスを取り出す。本実施例の排出路13は、ガスを流通可能な管路である。
【0071】
排出路13の一端部37は、外炉7と一体に構成されている。具体的には、排出路13の一端部37は、外炉7の端壁部19上に形成されている。この一端部37は、排出路13の管路状の管路部39,41に対して膨出形状となっており、中空状の内部に触媒45が配置されている。触媒45は、対象物の熱分解によって生じたガスを接触させて改質する。なお、排出路13の一端部37は、外炉8の他端壁部19上の断熱部としても機能する。
【0072】
排出路13の一端部37には、
図1のように、一端側の管路部39が一体に設けられている。この管路部39には、他端側の管路部41が締結されて結合されている。この他端側の管路部41は、管路部41と同様の管路状の他端部43に至る。この排出路13の他端部43は、冷却装置5に一体に設けられている。
【0073】
[冷却装置]
冷却装置5は、
図1のように、熱分解装置3の排出路13に接続され、流入したガスを冷却して油化するものである。本実施例の冷却装置5は、一対の冷却部47,49と、フィルター部51とを備えている。なお、冷却部47,49の数は任意であり、一つ或いは三つ以上設けてもよい。また、フィルター部51は、冷却装置5の仕様によっては省略することも可能である。
【0074】
冷却部47,49は、対称な構成であり、それぞれハウジング53内に冷却液としての冷却水Wを貯留すると共に噴霧器55を収容している。なお、冷却液としては、冷却水以外のクーラントとすることが可能である。これら冷却部47,49は、冷却水Wを噴霧器55によって噴霧することで内部に流入したガスを冷却して油化する。
【0075】
なお、一方の冷却部47には、排出路13の他端部43からガスが流入し、他方の冷却部49には、冷却部47,49間を連通する連通管57を介して一方の冷却部47からガスが流入する。
【0076】
ハウジング53内には、相互間を接続する冷却水Wの水路53bやドレン53cに加えて、油取込み口53dが設けられている。油取込み口53dは、タンク59に至る油送管61の端部であり、冷却水Wの水面よりも上方に突出して配置されている。この油取込み口53dは、ガスの冷却による油が冷却水W上に貯まるため、この溜まった油を取り込むようになっている。
【0077】
油の取り込みは、油送管61に接続されたポンプ63によって行われる。油送管61に取り込まれた油は、タンク59へと貯められる。タンク59には、油の取出口59aやドレン59bが設けられている。
【0078】
フィルター部51は、他方の冷却部49に接続された排気管65がハウジング67内を通って外部へと引き出されている。この排気管65には、ハウジング67内で排気フィルター69及びエアーポンプ71が接続されている。排気フィルター69は、油化後のガスを浄化するフィルターである。浄化されたガスは、エアーポンプ71によって外部へ排気される。
【0079】
[熱分解]
本実施例の熱分解装置3では、内炉9を外炉7から取り外した状態において、内部にプラスチックやゴム等の対象物を収容する。内炉9内への対象物の収容は、内炉9の端壁部31を取り外しておくことで作業を容易に行うことができる。対象物は、事前に破砕しておく。ただし、対象物は、破砕していないものであってもよい。こうして対象物を収容した内炉9は、リフト等によって外炉7へと搬送する。
【0080】
内炉9を外炉7内へ収納する際には、
図2のように、外炉7の開閉扉15aを開けて空間部14を開放しておく。この状態で、内炉9を空間部14内へと側方から入れ込む。この入れ込みにより、
図4のように、内炉9を着脱位置にあるジャッキ25のサドル25a上に載置して、内炉9を着脱位置に配置する。
【0081】
こうして着脱位置に配置した内炉9を収納位置へとスライドさせる。内炉9のスライドは、ジャッキ25のレバー25cを操作して容易に行うことができる。このスライドにより、
図3のように、内炉9の接続口31bが外炉7の接続筒19b内に挿入されて接続される。この状態で接続口31bが開放されて内炉9内を排出路13へと連通する。
【0082】
内炉9が収納位置へとスライドした状態においては、内炉9の脚部29aを手動により展開させる。この展開した脚部29aにより、内炉9が収納位置に保持される。
【0083】
こうして内炉9が収納位置に保持されると、開閉扉15aを閉めて空間部14を密閉し、空間部14内に内炉9が収納された状態となる。なお、開閉扉15aは、内炉9を着脱位置に配置した状態で閉めてもよい。
【0084】
内炉9を収納した後は、外炉7による加熱を開始する。この加熱により内炉9を所定温度とし、且つその温度を所定時間保持する。このときの温度は、プラスチック等の対象物の熱分解が行われる300度~500度程度とする。また、温度を保持する時間は、効率を考慮して対象物をガス化できるように適宜設定すればよい。
【0085】
内炉9の加熱は、板厚が0.5mm~2.5mm程度のステンレス鋼や鉄等によって構成されることで熱抵抗が極めて小さく設定されているので、迅速に行うことができる。
【0086】
また、内炉9は、密閉状の空間部14内に収納されているので、外部に対して断熱された状態で加熱することができる。従って、内炉9をより迅速に加熱できる。
【0087】
さらに、内炉9は、その内部が外炉7の空間部14から密閉されているので、内炉9内と空間部14との間での熱交換が抑制され、より迅速に加熱することができる。
【0088】
しかも、内炉9は、接続口31bがガスを排出するためのオリフィスを構成しているので、対象物のガス化が始まると内部の圧力が上昇し、これによって内部の温度を上昇させることができる。結果として、より迅速に内炉9を加熱することができる。
【0089】
こうして迅速に内炉9を加熱することができるため、本実施例では、対象物のガス化の所要時間を短縮することができる。
【0090】
また、内炉9の保温時には、保温部材21によって補助されるので、熱源11の稼働を少なくすることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0091】
内炉9の所定温度を所定時間保持した後は、内炉9を冷却して次の内炉9に入れ替える。内炉9の冷却は、加熱を中止すると共に開閉扉15aを開けて空間部14及び内炉9を大気開放することで行われる。この内炉9の冷却は、内炉9の熱抵抗が低いので、迅速に行わせることができる。
【0092】
また、開閉扉15aを開けることで、内炉9の側方を大きく開放できるので、より迅速に内炉9を冷却できる。同時に、保温部材21を設けても内炉9の冷却を行うことを可能とする。さらに、内炉9は、スライドによって収納位置へと位置することで、その端壁部29と外炉7の端壁部17との間に隙間が区画されているので、隙間を介してより迅速に内炉9を冷却できる。
【0093】
所定時間冷却した後は、内炉9を外炉7から取り出せば、次の内炉9に迅速に交換できると共に取り出した内炉9の冷却も促進できる。このように内炉9を外炉7から取り出してしまえば、外炉7に保温部材21を設けても内炉9の冷却をより確実に行うことができる。
【0094】
このように、本実施例では、内炉9を迅速に加熱し冷却することで対象物の熱分解の所要時間を短縮することができ、熱分解の処理効率を向上することができる。特に、本実施例の熱分解装置3は、200リットル程度の対象物の熱分解を一時間程度で行うことができ、一日に1.5トン程度の油化を可能とする。熱分解装置3は、一日に同程度の油化を可能とする大容量の熱分解装置と比較して大幅に小型化及びコスト低減を図ることができる。
【0095】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の熱分解装置3は、内部に密閉状の空間部を区画する外炉7と、外炉7の空間部14内に全体が収納されると共に空間部14に対して密閉され、内部に熱分解の対象物を収容する内炉9と、空間部14に対して設けられ内炉9を加熱する熱源11と、内炉9内に連通し内炉9の加熱による対象物の分解で発生したガスを取り出すための排出路13と、を備えている。
【0096】
従って、内炉9は、外炉7内の密閉状の空間部14に、この空間部14に対して密閉された内炉9全体を収納したので、外部に対して断熱された状態で内炉9を迅速に加熱することができると共に、内炉9内と空間部14との間での熱交換を抑制して、より迅速に内炉9を加熱することができる。結果として、対象物の熱分解の所要時間を短縮することができ、熱分解の処理効率を向上することができる。
【0097】
内炉9は、空間部14に対して着脱自在に設けられ、外炉7は、空間部14を開放して、内炉9を空間部14に側方から着脱可能とする開閉扉15aを備えている。
【0098】
従って、本実施例では、開閉扉15aを開けることにより、内炉9を空間部14に対して容易に着脱できると共に、加熱後に内炉9の冷却を迅速に行うことができる。結果として、本実施例では、熱分解の処理効率をさらに向上することができる。
【0099】
空間部14は、内炉9を着脱される着脱位置から収納位置にスライドさせることによって収納し、内炉9は、収納位置で排出路13に接続されて連通される接続口31bを備えている。
【0100】
熱分解装置3は、内炉9のスライドによって内炉9を排出路13に確実に接続して連通させることができ、排出路13側を可動構造にする必要がなく、構成の簡素化やコスト低減を図ることができる。
【0101】
また、熱分解装置3は、空間部14内で内炉9を着脱位置から収納位置へスライドさせるジャッキを備えており、内炉9のスライドを容易且つ確実に行わせることができる。
【0102】
内炉9は、収納位置で展開可能な脚部29aを有するので、展開した脚部29aにより収納位置に容易且つ確実に保持される。
【0103】
外炉7は、空間部14側に位置する保温部材21と、この保温部材21の外周を覆う断熱部材23とを備えている。
【0104】
従って、本実施例では、保温部材21を設けて内炉9の加熱時の温度保持を容易且つ確実に行わせることができる。このように構成しても、開閉扉15aを開けて内炉9を開放し或いは外炉7から取り外すことにより冷却することができる。
【0105】
内炉9は、ガスを排出するためのオリフィスを備え、排出路13は、オリフィスを介して内炉9内に連通する。
【0106】
従って、内炉9は、対象物のガス化が始まると、内部の圧力が上昇し、内部の温度を上昇させることができる。この結果、より迅速に内炉9を加熱することができ、熱分解の処理効率をさらに向上することができる。
【0107】
内炉9は、板厚が0.5mm~2.5mmの缶体であるため、熱抵抗が極めて小さく、熱分解の処理効率をさらに向上することができる。
【0108】
内炉9は、空間部14を区画する外炉7の内周面7aに嵌合し、熱源11は、空間部14を区画し内炉9に対向する外炉7の側壁部15及び端壁部17に設けられている。従って、より迅速に内炉9を加熱することができ、熱分解の処理効率をさらに向上することができる。
本実施例の油化処理装置1は、熱分解装置3の内炉9内を外炉7の空間部14に対して解放する構成とし、且つ冷却装置5に冷却水Wの供給源としての冷却水タンク72を設けたものである。
熱分解装置3では、内炉9内を外炉7の空間部14に対して解放するために、外炉7及び内炉9の構成が変更されている。加えて、本実施例の熱分解装置3は、第1熱源73及び第2熱源75を備える。
外炉7は、内部に相互に連続する収納空間77及び連続空間79からなる密閉状の空間部14を区画する。本実施例の外炉7は、上部を開放可能に構成されている。すなわち、外炉7は、円筒状の側壁部15の軸方向両側の開口を端壁部17及び蓋体81によって閉止して構成されている。なお、外炉7は、端壁部17が下方に位置し、蓋体81が上方に位置するように設置されている。
蓋体81は、ヒンジ83によって側壁部15に対して開閉可能に取り付けられている。蓋体81には、側壁部15の上部に外側から嵌合する嵌合筒部85が設けられている。この嵌合筒部85は、外周に沿って設けられたバンド85aにより側壁部15の上部に締結される。
なお、蓋体81と側壁部15との間には、ゴム等のシール部材を設けてもよい。シール部材を設けても、側壁部15の表面の温度上昇が断熱部材23により抑制できるので問題がいない。特に、本実施例では、上部に保温部材21及び側部ヒーター33が設けられておらず、代わりに断熱部材23の径方向の厚みが増加しているため、より確実に側壁部15の表面の温度上昇を抑制できる。
収納空間77は、外炉7の下部側に形成され、連続空間79は、外炉7の上部側に形成されている。収納空間77は、本実施例の収容位置を区画し、空間部14内の内炉9全体を収納する部分を意味する。この空間部14を区画する外炉7の内周面7aは、実施例1と同様、内炉9の外周面9aに嵌合する構成となっている。
連続空間79は、空間部14内の収納空間77以外の部分であり、内炉9の上方に隣接して位置する。この連続空間79は、収納空間77と単一の空間として外炉7の側壁部15によって区画される。このため、連続空間79が内炉9の側方には空間部14が位置しない構成となっている。
かかる連続空間79には、側壁部15の上部を貫通する排出路13が連通している。側壁部15の上部は、側部ヒーター33及び保温部材21が位置しないので、保温部材21及び側部ヒーター33を避けて排出路13の貫通を容易にしている。従って、側壁部15の上部は、上記のように断熱部材23の厚みを増加することで、側壁部15の表面の温度上昇を防止する機能を有すると共に、排出路13の貫通を容易にする機能を有する。この連続空間79に対し、内炉9の内部が連通している。
内炉9は、外炉7の上方から空間部14内にスライドによって着脱することが可能に構成されている。この内炉9は、上方が開口した円筒状の缶体となっている。すなわち、内炉9は、円筒状の側壁部27の軸方向一側である下方側の開口を端壁部29によって閉止して構成されている。
内炉9は、空間部14内への収容状態で、収納空間77内に全体が収容されている。この状態で、内炉9の上方の開口が連続空間79に臨んでいる。これにより、内炉9の内部が、連続空間79に対して連通する。
第1熱源73は、実施例1の熱源11であり、収納空間に対して設けられ内炉9を加熱する。すなわち、第1熱源73は、側部ヒーター33と底部ヒーター35とを備えている。側部ヒーター33は、実施例1と同一であり、電熱線33aで構成されたものとなっている。
電熱線33aは、外炉7の内壁16に対してコイル状に巻かれている。この側部ヒーター33は、電熱線33aで発生した熱により、内壁16を介して内炉9を加熱する。同時に、側部ヒーター33は、電磁誘導によって内炉9を加熱することができる。従って、内炉9並びに対象物Oの加熱を迅速に行うことができる。底部ヒーター35は、基本的に実施例1と同一であるが、外炉7の端壁部17に対し、内炉9に上下方向で対向する範囲全体に設けられている。
第2熱源75は、連続空間79に対して設けられ、連続空間79を介して内炉9内の対象物Oに対向する。本実施例の第2熱源75は、外炉7の蓋体81の内面に設けられ、上下方向において連続空間79を介して対象物Oに対向する。これにより、第2熱源75は、連続空間79及び対象物Oを加熱するようになっている。
冷却装置5の冷却水タンク72は、冷却液である冷却水Wを一定のPH及び温度に保持して、一対の冷却部47,49へ供給する。冷却部47,49への冷却水Wの供給は、冷却部47,49の噴霧器55に対して管路87を介して行われる。噴霧器55に供給された冷却水は、そのまま噴霧器55によって冷却部47,49内で噴霧される。なお、冷却水Wの供給は、噴霧器55ではなく、単に冷却部47,49内へ行ってもよい。
冷却部47,49内の冷却水Wは、管路87を介して冷却水タンク72に戻る。なお、管路87は、冷却水タンク72からの冷却水の供給と冷却水タンク72への冷却水の戻りとを行わせるために、供給路と還流路とが備えるのが好ましい。ただし、管路87は、ポンプ等の動作を切り替えることによって供給路及び還流路としての機能が切り替わるように構成してもよい。
冷却水タンク72での冷却水Wの温度の保持は、常温よりも高い温度での保温となるため、冷却水タンク72に設けた各種ヒーター等の保温器によって行えばよい。このように、常温よりも高い温度に冷却水Wを保持することにより、油化の効率化を図ることができると共に、得られる油の固化による冷却装置5の詰まり等を抑制できる。冷却水Wの温度は、ガスの油化効率と得られた油の固化との関係で適宜設定すればよい。
冷却水タンク72でのPHの保持は、冷却水Wに酸又はアルカリを加えることで行われる。このように冷却水WのPHを保持する保持することにより、ガス中のアルカリ等を中和できる。このPHの保持では、冷却水タンク72内にPHセンサーを設け、PHセンサーでの検出に応じて自動的に酸又はアルカリを加えてもよい。冷却水WのPHは、中和対象や中和効率との関係で適宜設定すればよい。
以上説明したように、本実施例の熱分解装置3は、内部に相互に連続する収納空間77及び連続空間79からなる密閉状の空間部14を区画する外炉7と、外炉7の収納空間77内に全体が収納されると共に内部が連続空間79に対して解放され、内部に熱分解の対象物Oを収容する内炉9と、収納空間77に対して設けられ内炉9を加熱する第1熱源73と、連続空間79に対して設けられ、連続空間79を介して対象物Oに対向し連続空間79及び対象物Oを加熱する第2熱源75と、連続空間79内に連通し内炉9の加熱及び対象物Oの加熱による対象物Oの分解で発生したガスを取り出すための排出路13と、を備える。
従って、熱分解装置3は、連続空間79を対象物Oと共に加熱するので、連続空間79の温度を上昇させて連通する内炉9内の温度に近づけ或いは同一にすることができる。このため、連続空間79と内炉9内との間での熱交換を抑制することができ、しかも対象物Oを直接加熱するため、対象物Oの熱分解の所要時間を短縮することができ、熱分解の処理効率を向上することができる。
また、本実施例の油化処理装置1は、ガスを流入させてガスに対して冷却水Wを噴霧して冷却を行う冷却部47,49と、冷却水Wを一定のPH及び温度に保持して冷却部47,49へ供給する冷却水タンク72と、を備える。
このため、油化の効率化を図ることができると共に、得られる油の固化による油化処理装置1の詰まり等を抑制できると共に、ガスのアルカリ等を中和することができる。