(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159872
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】遠隔オペレータのレコメンドシステム及びレコメンド方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20221011BHJP
【FI】
G06Q30/02 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064326
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 諒
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB05
5L049CC17
(57)【要約】
【課題】ユーザが車両の遠隔運転サービスを利用する場合に、ユーザの満足度が向上する可能性のある遠隔オペレータを推薦することができる遠隔オペレータのリコメンドシステムを提供する。
【解決手段】本リコメンドシステムは、多数のユーザが満足するユーザ属性とオペレータ属性との関係が統計的にモデル化されているマッチングモデル33を用いて、要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合遠隔オペレータを特定する。また、本リコメンドシステムは、多数の遠隔オペレータに対する多数のユーザの評価結果を用いて作成された協調フィルタリングモデル34を用いて、待機中の遠隔オペレータの中から要求ユーザは未利用であるが要求ユーザによる高い評価が期待される期待遠隔オペレータを予測する。そして、本リコメンドシステムは、期待遠隔オペレータを適合遠隔オペレータと並べて要求ユーザに対して推薦する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の遠隔運転を要求する要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合遠隔オペレータをマッチングモデルを用いて特定し、前記適合遠隔オペレータを前記要求ユーザに対して推薦するように構成された遠隔オペレータのリコメンドシステムにおいて、
多数の遠隔オペレータに対する多数のユーザの評価結果を用いて作成された協調フィルタリングモデルを記憶した記憶装置と、
前記記憶装置と結合された少なくとも一つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
待機中の遠隔オペレータの中から前記要求ユーザは未利用であるが前記要求ユーザによる高い評価が期待される期待遠隔オペレータを前記協調フィルタリングモデルを用いて予測する処理と、
前記期待遠隔オペレータを前記適合遠隔オペレータと並べて前記要求ユーザに対して推薦する処理と、を実行する
ことを特徴とする遠隔オペレータのリコメンドシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔オペレータのリコメンドシステムにおいて、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
前記要求ユーザが新規ユーザの場合、待機中の遠隔オペレータのうちで遠隔運転回数が最も多い遠隔オペレータを推薦する処理、を実行する
ことを特徴とする遠隔オペレータのリコメンドシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遠隔オペレータのリコメンドシステムにおいて、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
担当遠隔オペレータによる遠隔運転の終了後、前記要求ユーザから前記担当遠隔オペレータの評価を受け付ける処理と、
前記要求ユーザによる前記担当遠隔オペレータの評価結果に基づいて前記協調フィルタリングモデルを更新する処理と、を実行する
ことを特徴とする遠隔オペレータのリコメンドシステム。
【請求項4】
車両の遠隔運転を要求する要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合遠隔オペレータをマッチングモデルを用いて特定し、前記適合遠隔オペレータを前記要求ユーザに対して推薦するステップを有する遠隔オペレータのリコメンド方法において、
待機中の遠隔オペレータの中から前記要求ユーザは未利用であるが前記要求ユーザによる高い評価が期待される期待遠隔オペレータを、多数の遠隔オペレータに対する多数のユーザの評価結果を用いて作成された協調フィルタリングモデルを用いて予測するステップと、
前記期待遠隔オペレータを前記適合遠隔オペレータと並べて前記要求ユーザに対して推薦するステップと、を有する
ことを特徴とする遠隔オペレータのリコメンド方法。
【請求項5】
コンピュータに、車両の遠隔運転を要求する要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合遠隔オペレータをマッチングモデルを用いて特定し、前記適合遠隔オペレータを前記要求ユーザに対して推薦する処理を実行させるプログラムにおいて、
待機中の遠隔オペレータの中から前記要求ユーザは未利用であるが前記要求ユーザによる高い評価が期待される期待遠隔オペレータを、多数の遠隔オペレータに対する多数のユーザの評価結果を用いて作成された協調フィルタリングモデルを用いて予測する処理と、
前記期待遠隔オペレータを前記適合遠隔オペレータと並べて前記要求ユーザに対して推薦する処理と、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔運転サービスの利用を希望するユーザに対して、ユーザに代わって車両を遠隔運転する遠隔オペレータを利用可能な遠隔オペレータの中から推薦するレコメンドシステム及びレコメンド方法、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザ自身が車両を運転する代わりに、遠隔オペレータに車両を遠隔運転してもらう遠隔運転サービスの提供が検討されている。特許文献1には、ユーザの属性情報と遠隔オペレータの属性情報とを比較した結果に基づいて選ばれた複数の遠隔オペレータをユーザに提示し、ユーザに遠隔オペレータを選択させる技術が開示されている。
【0003】
上記の従来技術によれば、属性情報において適合した遠隔オペレータがユーザに推薦される。しかし、属性情報において適合している遠隔オペレータのみが、必ずしもユーザにとって満足度の高い遠隔オペレータであるとは限らない。このため、上記の従来技術には、推薦される遠隔オペレータに対するユーザの満足度において向上の余地がある。
【0004】
なお、本出願が属する技術分野の技術レベルを表す先行技術文献としては、特許文献1の他、下記の特許文献2乃至4を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-220744号公報
【特許文献2】国際公開第2018/087828号公報
【特許文献3】特開2019-219723号公報
【特許文献4】特開2019-175209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものである。本開示は、ユーザが車両の遠隔運転サービスを利用する場合に、ユーザの満足度が向上する可能性のある遠隔オペレータを推薦することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は遠隔オペレータのリコメンドシステムを提供する。本開示のシステムは、車両の遠隔運転を要求する要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合遠隔オペレータを、マッチングモデルを用いて特定し、特定された適合遠隔オペレータを要求ユーザに対して推薦するように構成される。さらに、本開示のシステムは、多数の遠隔オペレータに対する多数のユーザの評価結果を用いて作成された協調フィルタリングモデルを記憶した記憶装置と、記憶装置と結合された少なくとも一つのプロセッサとを備える。本開示のシステムが備える上記少なくとも一つのプロセッサは、待機中の遠隔オペレータの中から、要求ユーザは未利用であるが要求ユーザによる高い評価が期待される期待遠隔オペレータを、協調フィルタリングモデルを用いて予測する。そして、上記少なくとも一つのプロセッサは、協調フィルタリングモデルを用いて予測された期待遠隔オペレータを、マッチングモデルを用いて特定された適合遠隔オペレータと並べて要求ユーザに対して推薦する。
【0008】
上述のように構成された本開示のシステムによれば、ユーザは未利用ではあるが高い評価が期待される遠隔オペレータを協調フィルタリングによって予測することによって、ユーザが未利用のオペレータを推薦する場合であっても、ユーザの満足度が向上する可能性のある遠隔オペレータを推薦することができる。
【0009】
本開示のシステムにおいて、上記少なくとも一つのプロセッサは、要求ユーザが新規ユーザの場合、待機中の遠隔オペレータのうちで遠隔運転回数が最も多い遠隔オペレータを推薦してもよい。これによれば、新規ユーザには利用可能な遠隔オペレータの中で最も人気のある遠隔オペレータを推薦することで、新規ユーザを満足させることができる。
【0010】
本開示のシステムにおいて、上記少なくとも一つのプロセッサは、担当遠隔オペレータによる遠隔運転の終了後、要求ユーザから担当遠隔オペレータの評価を受け付け、その評価結果に基づいて協調フィルタリングモデルを更新してもよい。これによれば、ユーザが担当した遠隔オペレータを評価した評価結果を協調フィルタリングモデルに反映させることで、協調フィルタリングモデルの精度を向上させることができる。
【0011】
また、本開示は遠隔オペレータのリコメンド方法を提供する。本開示の方法は、車両の遠隔運転を要求する要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合遠隔オペレータを、マッチングモデルを用いて特定し、適合遠隔オペレータを要求ユーザに対して推薦するステップを有する。さらに、本開示の方法は、待機中の遠隔オペレータの中から要求ユーザは未利用であるが要求ユーザによる高い評価が期待される期待遠隔オペレータを、協調フィルタリングモデルを用いて予測するステップを有する。さらに、本開示の方法は、協調フィルタリングモデルを用いて予測された期待遠隔オペレータを、マッチングモデルを用いて特定された適合遠隔オペレータと並べて要求ユーザに対して推薦するステップを有する。
【0012】
また、本開示はプログラムを提供する。本開示のプログラムは、車両の遠隔運転を要求する要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合遠隔オペレータを、マッチングモデルを用いて特定し、適合遠隔オペレータを要求ユーザに対して推薦する処理をコンピュータに実行させる。さらに、本開示のプログラムは、待機中の遠隔オペレータの中から要求ユーザは未利用であるが要求ユーザによる高い評価が期待される期待遠隔オペレータを、協調フィルタリングモデルを用いて予測する処理をコンピュータに実行させる。さらに、本開示のプログラムは、協調フィルタリングモデルを用いて予測された期待遠隔オペレータを、マッチングモデルを用いて特定された適合遠隔オペレータと並べて要求ユーザに対して推薦する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ユーザは未利用ではあるが高い評価が期待される遠隔オペレータを協調フィルタリングによって予測することによって、ユーザが未利用のオペレータを推薦する場合であっても、ユーザの満足度が向上する可能性のある遠隔オペレータを推薦することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施形態に係る遠隔運転システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る遠隔オペレータのリコメンドシステムの構成を示すブロック図である。
【
図3】協調フィルタリングモデルの具体例を説明するための図である。
【
図4】協調フィルタリングモデルの具体例を説明するための図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る遠隔オペレータのリコメンド方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。
【0016】
1.遠隔運転システムの構成
図1は、車両の遠隔運転システムの構成図である。遠隔運転システム100は、ユーザ22に対して遠隔運転サービスを提供するシステムである。遠隔運転サービスにおけるユーザ22は、遠隔運転される車両20の運転者或いは搭乗者である。遠隔運転される車両20は、遠隔運転が行われていない場合に運転者による手動運転が可能な車両、或いは、自動運転機能を有する車両であることが好ましい。また、遠隔運転される車両20は、例えば、自家用車でもよいしレンタカーでもよい。
【0017】
遠隔運転では、車両20の運転に必要な認知、判断、及び操作は、ユーザ22の代わりに遠隔オペレータ42によって行われる。以下、遠隔オペレータを単にオペレータと呼ぶ。オペレータ42は、遠隔運転される車両20の監視が行われる監視センタに常駐して車両20を遠隔運転する常駐オペレータと、自宅から監視センタにアクセスして遠隔運転を行う在外オペレータとを含む。
【0018】
オペレータ42は遠隔運転席40において車両20を遠隔運転する。遠隔運転席40には、画像を出力するディスプレイと音を出力するスピーカとが設けられている。ディスプレイは、例えば、車両20のカメラが撮像した車両20の前方の画像を表示する。スピーカは、例えば、マイクにより集音された車両20の周囲の状況を音声によりオペレータ42に伝える。
【0019】
遠隔運転席40には、操舵操作のためのステアリングホイール、加速操作のためのアクセルペダル、及び減速操作のためのブレーキペダルが設けられている。また、車両20が変速機を備えるのであれば、遠隔運転席40にも変速機のレバー或いはスイッチを備えてもよい。その他にも、車両20の方向指示器を操作するための操作レバーやワイパーを動作させる操作レバー等、安全な運転に必要な操作を行うための機器が遠隔運転席40に備えられる。
【0020】
オペレータ42が操作する遠隔運転席40は、サーバ30に接続されている。また、遠隔運転される車両20は、4Gや5Gを含む通信ネットワーク10を介してサーバ30に接続されている。サーバ30は、少なくとも1つのプロセッサ30aとプロセッサ30aに結合された記憶装置30bとを備えている。記憶装置30bには、プロセッサ30aで実行可能な1つ又は複数のプログラムとそれに関連する種々の情報とが記憶されている。
【0021】
記憶装置30bに記憶されたプログラムには、サーバ30を、ユーザ22に対してオペレータ42を推薦するリコメンドシステムとして機能させるプログラムが含まれる。リコメンドシステムとしてのサーバ30は、ユーザ22から車両20の遠隔運転の要求があった場合、利用可能なオペレータ42の中から1又は複数人のオペレータ42を推薦する。ユーザ22がオペレータ42を選択することによって、選択されたオペレータ42の遠隔運転席40と車両20とが通信ネットワーク10を介して接続され、オペレータ42による車両20の遠隔運転が可能になる。
【0022】
2.遠隔オペレータのリコメンドシステムの構成
以下、リコメンドシステムとしてのサーバ30の詳細な構成について
図2を用いて説明する。リコメンドシステムとしてのサーバ30は、ユーザデータベース31、オペレータデータベース32、マッチングモデル33、協調フィルタリングモデル34、及び人気オペレータテーブル35を備える。これらは記憶装置30bに記憶されている。
【0023】
ユーザデータベース31は、ユーザごとにユーザ属性が登録されたデータベースである。ユーザ属性には、例えば、ユーザの年齢及び性別、並びにユーザが利用する車両の種別が含まれる。車両の種別には、例えば、普通自動車、中型自動車、大型自動車、大型特殊自動車、牽引自動車等が含まれる。
【0024】
オペレータデータベース32は、オペレータごとにオペレータ属性が登録されたデータベースである。オペレータ属性には、例えば、オペレータの年齢及び性別、並びにオペレータが有するライセンスの種別が含まれる。ライセンスの種別には、例えば、普通免許、中型免許、大型免許、大型特殊免許、牽引免許等が含まれる。
【0025】
マッチングモデル33は、ユーザによるオペレータの評価結果を目的関数とする回帰モデルであって、ユーザ属性とオペレータ属性とを特徴量としてその共起性に基づいて作成されている。マッチングモデル33では、多数のユーザが満足するユーザ属性とオペレータ属性との関係が統計的にモデル化されている。マッチングモデル33は、ユーザによるオペレータの評価結果が新たな得られる都度、或いは、一定量の評価結果が溜まったときに評価結果に基づいて更新される。
【0026】
遠隔運転を要求したユーザのユーザ属性は、ユーザデータベース31を用いて特定される。特定されたユーザ属性はマッチングモデル33に入力され、ユーザ属性に適合したオペレータ属性がマッチングモデル33を用いて特定される。特定されたオペレータ属性はオペレータデータベース32に入力され、待機中のオペレータの中から、特定されたオペレータ属性を有する1又は複数人のオペレータが選定される。以下、ユーザデータベース31、マッチングモデル33、及びオペレータデータベース32を用いて推薦されたオペレータを適合オペレータ(適合遠隔オペレータ)と呼ぶ。
【0027】
協調フィルタリングモデル34は、協調フィルタリングを用いてオペレータを推薦するモデルである。協調フィルタリングモデル34は、多数のユーザから収集したオペレータの評価結果に基づいて作成されている。ここで、協調フィルタリングモデル34の概要について
図3及び
図4を用いて説明する。
【0028】
協調フィルタリングモデル34の作成段階及び更新段階では、遠隔運転の終了後、ユーザによるオペレータの評価が例えば最低評価の1から最高評価の5までの5段階で行われる。そして、
図3に示すような表に評価結果がまとめられる。
図3には、一例として、ユーザの人数が5人、オペレータの人数が5人の場合における評価結果が示されている。
図3に示すユーザ×オペレータのマトリックスにおいて“-”と記載されているセルは、ユーザが未利用であるオペレータを表している。例えば、ユーザIIにとっては、オペレータA及びオペレータEが未利用であり、ユーザVにとっては、オペレータA及びオペレータCが未利用である。
【0029】
協調フィルタリングモデル34では、ユーザが未利用であるオペレータについて、交互最小二乗法(Alternative least square)を用いてユーザの評価が予測される。
図4において丸で囲まれた数値は、交互最小二乗法で予測された評価値である。例えば、ユーザIIにとって未利用であったオペレータAの評価値は5と予測され、オペレータEの評価値は3と予測されている。協調フィルタリングモデル34では、予測評価値に対して推薦基準となる閾値が設定される。この閾値が4である場合、ユーザIIに対しては予測評価値が5であるオペレータAが推薦される。一方、ユーザVに対しては予測評価値が4以上であるオペレータがいないため、協調フィルタリングモデル34によるオペレータの推薦は行われない。
【0030】
協調フィルタリングモデル34は、ユーザによるオペレータの評価結果が新たに得られる都度、或いは、一定量の評価結果が溜まったときに更新される。例えば、今回、推薦にしたがってユーザIIがオペレータAを選択した場合、遠隔運転の終了後にユーザIIによるオペレータAの評価結果が得られる。その評価結果は
図3に示すマトリックスに入力され、ユーザが未利用であるオペレータの評価値の予測に用いられる。
【0031】
以上の例のように作成された協調フィルタリングモデル34を用いることで、待機中のオペレータの中から、遠隔運転を要求したユーザは未利用であるが、そのユーザによる高い評価が期待されるオペレータを予測することができる。一般に、ユーザはオペレータの選択にあたって保守的な傾向があるが、協調フィルタリングモデル34によれば、ユーザにとって意外性のあるオペレータを推薦することができる。以下、協調フィルタリングモデル34を用いて推薦されたオペレータを期待オペレータ(期待遠隔オペレータ)と呼ぶ。
【0032】
次に、人気オペレータテーブル35について説明する。人気オペレータテーブル35は、オペレータごとに利用回数を集計し、利用回数の高い順にランキングすることで作成されたテーブルである。利用回数はオペレータの人気の高さを示す一つの指標である。人気オペレータテーブル35によれば、待機中のオペレータのうちで遠隔運転回数が最も多いオペレータを選定することができる。人気オペレータテーブル35には、各オペレータの最新の利用回数が反映されている。
【0033】
人気オペレータテーブル35は、本リコメンドシステムの利用実績のない新規ユーザに対してのみ用いられる。遠隔運転を要求するユーザが新規ユーザかどうかは、ユーザデータース31に登録されているか否かによって判断される。ユーザデータベース31に登録されている登録ユーザに対しては、上述のマッチングモデル33と協調フィルタリングモデル34とを用いてオペレータが推薦される。ユーザデータベース31に登録されていない新規ユーザに対しては、人気オペレータテーブル35を用いて、利用可能なオペレータの中で最も人気が高いオペレータが1人又は複数人推薦される。
【0034】
3.遠隔オペレータのリコメンド方法
次に、上述のように構成されたリコメンドシステムによって実行される遠隔オペレータのリコメンド方法について
図5を用いて説明する。
【0035】
ステップS1では、サーバ30は、遠隔運転を要求する要求ユーザからの遠隔運転の要求を受信する。遠隔運転の要求には、例えば、ユーザを識別するユーザ識別情報、出発地、目的地、遠隔運転の開始時が含まれる。
【0036】
ステップS2では、サーバ30は、ユーザ識別情報をユーザデータベース31に照合することによって、要求ユーザが登録ユーザか新規ユーザかを判定する。要求ユーザが登録ユーザである場合、サーバ30は、ステップS3乃至ステップS5を実行する。要求ユーザが新規ユーザである場合、サーバ30は、ステップS6及びステップS7を実行する。
【0037】
ステップS3では、サーバ30は、ユーザデータベース31、マッチングモデル33、及びオペレータデータベース32を利用し、要求ユーザのユーザ属性に適合したオペレータ属性を有する適合オペレータを特定する。ステップS3で特定される適合オペレータの人数は1人以上である。すなわち、遠隔運転システム100では、少なくとも1人の適合オペレータが存在するように、様々なオペレータ属性を有する多数のオペレータが用意されている。
【0038】
ステップS4では、サーバ30は、協調フィルタリングモデル34より、要求ユーザが高い評価をつけると予測される期待オペレータを予測する。ステップS4で予測される期待オペレータの人数はゼロ人以上である。すなわち、協調フィルタリングの結果によっては、期待オペレータが存在しない場合もありうる。
【0039】
ステップS5では、サーバ30は、要求ユーザに対する推薦オペレータとして、ステップS3で特定された適合オペレータと、ステップS4で予測された期待オペレータとを並べて提示する。推薦オペレータの提示は、車両20内のディスプレイ、或いはユーザの携帯端末に表示される形式で行われる。表示される推薦オペレータの情報には、例えば、名前、年齢、性別が含まれる。その他にも、オペレータが公開を許可するのであれば、運転歴、国籍、趣味などの情報を表示できるようにしてもよい。
【0040】
一方、ステップS6では、サーバ30は、人気オペレータテーブル35を用いて、利用可能なオペレータの中で最も人気のあるオペレータを1又は複数人を選定する。
【0041】
ステップS7では、サーバ30は、ステップS6で選定された人気オペレータを要求ユーザ22に対して推薦オペレータとして提示する。
【0042】
要求ユーザは、サーバ30から推薦された推薦オペレータの中から遠隔運転を依頼するオペレータを選択する。ステップS8では、サーバ30は、要求ユーザによるオペレータの選択結果を受信する。
【0043】
ステップS9では、サーバ30は、要求ユーザの車両20と要求ユーザが選択したオペレータの遠隔運転席40とを通信ネットワーク10で接続する。これにより、オペレータによる車両20の遠隔運転が可能になる。
【0044】
要求ユーザは、遠隔運転を担当したオペレータの評価を行う。評価は例えば5段階評価で行われる。ステップS10では、サーバ30は、要求ユーザによるオペレータの評価結果を受信する。
【0045】
ステップS11では、サーバ30は、要求ユーザによる担当オペレータ(担当遠隔オペレータ)の評価結果に基づいてマッチングモデル33を更新する。また、ステップS12では、サーバ30は、要求ユーザによる担当オペレータの評価結果に基づいて協調フィルタリングモデル34をそれぞれ更新する。さらに、ステップS13では、サーバ30は、要求ユーザによるオペレータの利用結果に基づいて人気オペレータテーブル35を更新する。
【0046】
上述のステップを有する遠隔オペレータのリコメンド方法によれば、要求ユーザは未利用ではあるが高い評価が期待されるオペレータを協調フィルタリングによって予測することによって、要求ユーザが未利用のオペレータを推薦する場合であっても、要求ユーザの満足度が向上する可能性のあるオペレータを推薦することができる。
【0047】
4.その他の実施形態
マッチングモデル33のパラメータに走行条件情報を加えてもよい。走行条件情報には、例えば、地域、天気、時間帯が含まれる。遠隔運転を要求するユーザのユーザ属性と、走行条件情報とをマッチングモデル33に入力することによって、想定する走行条件下において最も適したオペレータ属性を有するオペレータを推薦することができる。
【0048】
人気オペレータテーブル35のパラメータに地域、性別、ライセンスなどの属性を加えてもよい。そして、新規ユーザに希望する属性を選択させ、選択した属性に基づいて人気オペレータテーブル35の中から推薦する人気オペレータを絞りこんでも良い。
【符号の説明】
【0049】
10 通信ネットワーク
20 車両
22 ユーザ
30 サーバ
30a プロセッサ
30b 記憶装置
40 遠隔運転席
42 遠隔オペレータ
31 ユーザデータベース
32 オペレータデータベース
33 マッチングモデル
34 協調フィルタリングモデル
35 人気オペレータテーブル