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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159894
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】車両電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20221011BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20221011BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
F02D29/02 321Z
H02J1/00 301C
H02J1/00 309Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064353
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】北條 貴大
(72)【発明者】
【氏名】荒貝 隆
(72)【発明者】
【氏名】石神 貴識
(72)【発明者】
【氏名】石崎 哲
【テーマコード(参考)】
3G093
5G165
【Fターム(参考)】
3G093BA13
3G093DB05
5G165JA02
5G165JA07
5G165KA00
5G165LA07
(57)【要約】
【課題】車両走行中に制御装置の異常が発生した際に、使用者が誤って電源の供給停止の操作を行ったとしても、安全に車両の走行を継続させる車両電源制御装置を提供する。
【解決手段】車両電源制御装置100は、車速情報が入力される車速情報入力部10と、電源供給の開始/停止情報が入力される電源供給情報入力部20と、車速情報および供給/停止情報に基づいて、電源の供給に関する指令情報を出力する制御部30と、指令情報が入力され、電源供給リレーにオン信号またはオフ信号を出力する出力指令部40と、オン信号が入力されると、出力指令部に対してオンの指令情報を継続して出力するラッチ部50とを備え、ラッチ部は、車速情報入力部に入力された車速情報および電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報が入力され、車速情報において車速ゼロであるときに供給/停止情報が入力された場合にオン指令情報を継続して出力することを停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のイグニッション電源の供給を制御する車両電源制御装置であって、
車速情報が入力される車速情報入力部と、
電源供給の開始/停止情報が入力される電源供給情報入力部と、
前記車速情報入力部に入力された車速情報および前記電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報に基づいて、前記イグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する制御部と、
前記制御部が出力した指令情報が入力され、前記イグニッション電源の電源供給リレーにオン信号またはオフ信号を出力する出力指令部と、
前記出力指令部が出力したオン信号が入力されると、前記出力指令部に対してオンの指令情報を継続して出力するラッチ部と、
を備え、
前記ラッチ部は、前記車速情報入力部に入力された車速情報および前記電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報が入力され、車速情報において車速ゼロであるときに供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止する、
車両電源制御装置。
【請求項2】
車両のイグニッション電源の供給を制御する車両電源制御装置であって、
車速情報が入力される車速情報入力部と、
電源供給の開始/停止情報が入力される電源供給情報入力部と、
前記車速情報入力部に入力された車速情報および前記電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報に基づいて、前記イグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する第1制御部と、
前記車速情報入力部に入力された車速情報および前記電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報に基づいて、前記イグニッション電源の供給に関する指令情報を、前記第1制御部とは異なる方法で出力する第2制御部と、
前記第1制御部が出力した指令情報が入力され、前記イグニッション電源の電源供給リレーにオン信号またはオフ信号を出力する第1出力指令部と、
前記第2制御部が出力した指令情報が入力され、前記イグニッション電源の電源供給リレーにオン信号またはオフ信号を出力する第2出力指令部と、
前記第1出力指令部が出力したオン信号が入力されると、前記第1出力指令部に対してオンの指令情報を継続して出力する第1ラッチ部と、
前記第2出力指令部が出力したオン信号が入力されると、前記第2出力指令部に対してオンの指令情報を継続して出力する第2ラッチ部と、
を備え、
前記第1ラッチ部は、前記車速情報入力部に入力された車速情報および前記電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報が入力され、車速情報において車速ゼロであるときに供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止し、
前記第2ラッチ部は、前記車速情報入力部に入力された車速情報および前記電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報が入力され、車速情報において車速ゼロであるときに供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止する、
車両電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のイグニッション電源の供給を制御する車両電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行中の車両のイグニッションキーやイグニッションスイッチに対する誤操作、すなわちイグニッション電源の誤った供給停止操作に対応して、イグニッション電源の供給を継続させる技術が知られている。たとえば、特許文献1は、車両走行中に運転者の意図しないエンジン停止を回避する一方、車両異常時には車両走行中であってもエンジンの緊急停止を可能とするエンジン始動・停止制御装置を開示する。この制御装置は、ソフトウェアロジックに基づいて実行されているマイクロプロセッサに異常が発生して、イグニッションリレーに開指令が出力されても、車両が走行中であれば当該リレーが開とならないように制御する。
【0003】
また、制御に必要な情報や制御装置自身に異常に生じたようなときに上記誤操作をした場合であっても、電源の供給を継続させる技術が知られている。たとえば、特許文献2は、車速情報などの走行判定信号に異常が生じた場合であっても、車両の走行中における押圧スイッチの誤操作による駆動源の停止を防止しつつ車両の停車中におけるユーザの利便性を向上させることができる車両制御装置を開示する。この車両制御装置は、停車中におけるイグニッションスイッチの通常押圧操作による駆動源の始動・停止を許可し、走行中におけるイグニッションスイッチの通常押圧操作による駆動源の停止制御を禁止し且つイグニッションスイッチの特殊押圧操作による駆動源の停止制御を許可するように制御する。
【0004】
また、特許文献3は、制御装置のマイコン等の故障時においても、エンジンが停止することなく、駆動状態を維持しうるエンジン制御装置を開示する。この制御装置は、2つの入力判定手段で構成された判定手段からの2つの信号と走行検出手段からの入力信号によりエンジンの停止又は駆動を制御するため、入力判定手段及び走行検出手段のいずれかが故障した場合においてもエンジンを駆動状態に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-263020号公報
【特許文献2】特開2015-116911号公報
【特許文献3】特開2009-248743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両走行中に制御装置の異常が発生した際に、使用者が誤ってイグニッション電源の供給停止の操作(プッシュスタートストップスイッチを操作)を行ったとしても、安全に車両の走行を継続させることは非常に重要である。
【0007】
本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、車両走行中に制御装置の異常が発生した際に、使用者が誤ってイグニッション電源の供給停止の操作を行ったとしても、安全に車両の走行を継続させるために車両への電源供給を確実に継続させる車両電源制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、車両のイグニッション電源の供給を制御する車両電源制御装置であって、車速情報が入力される車速情報入力部と、電源供給の開始/停止情報が入力される電源供給情報入力部と、車速情報入力部に入力された車速情報および電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報に基づいて、イグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する制御部と、制御部が出力した指令情報が入力され、イグニッション電源の電源供給リレーにオン信号またはオフ信号を出力する出力指令部と、出力指令部が出力したオン信号が入力されると、出力指令部に対してオンの指令情報を継続して出力するラッチ部と、を備え、ラッチ部は、車速情報入力部に入力された車速情報および電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報が入力され、車速情報において車速ゼロであるときに供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止する、車両電源制御装置が提供される。
これによれば、ラッチ部が一旦オン信号を入力されるとオン指令情報を出力し続け、制御部を経由せずに入力される車速がゼロであるという情報および供給/停止情報に基づき、オン指令情報の出力を停止することで、車両走行中に制御装置の異常が発生した際に使用者が誤ってイグニッション電源の供給停止の操作を行ったとしても、安全に車両の走行を継続させるために車両への電源供給を確実に継続させ、安全が確保できたときにイグニッション電源の供給を停止する車両電源制御装置を提供することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、車両のイグニッション電源の供給を制御する車両電源制御装置であって、車速情報が入力される車速情報入力部と、電源供給の開始/停止情報が入力される電源供給情報入力部と、車速情報入力部に入力された車速情報および電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報に基づいて、イグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する第1制御部と、車速情報入力部に入力された車速情報および電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報に基づいて、イグニッション電源の供給に関する指令情報を、第1制御部とは異なる方法で出力する第2制御部と、第1制御部が出力した指令情報が入力され、イグニッション電源の電源供給リレーにオン信号またはオフ信号を出力する第1出力指令部と、第2制御部が出力した指令情報が入力され、イグニッション電源の電源供給リレーにオン信号またはオフ信号を出力する第2出力指令部と、第1出力指令部が出力したオン信号が入力されると、第1出力指令部に対してオンの指令情報を継続して出力する第1ラッチ部と、第2出力指令部が出力したオン信号が入力されると、第2出力指令部に対してオンの指令情報を継続して出力する第2ラッチ部と、を備え、第1ラッチ部は、車速情報入力部に入力された車速情報および電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報が入力され、車速情報において車速ゼロであるときに供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止し、第2ラッチ部は、車速情報入力部に入力された車速情報および電源供給情報入力部に入力された供給/停止情報が入力され、車速情報において車速ゼロであるときに供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止する車両電源制御装置が提供される。
これによれば、ラッチ部と出力指令部が二重化されることで、安全に車両の走行を継続させるために車両への電源供給をさらに確実に継続させ、安全が確保できたときにイグニッション電源の供給を停止する車両電源制御装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、車両走行中に制御装置の異常が発生した際に、使用者が誤ってイグニッション電源の供給停止の操作を行ったとしても、安全に車両の走行を継続させるために、車両への電源供給を確実に継続させる車両電源制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る第一実施例の車両電源制御装置のブロック構成図。
図2】本発明に係る第一実施例の車両電源制御装置の処理フローを示すフローチャート。
図3】本発明に係る第二実施例の車両電源制御装置のブロック構成図。
図4】本発明に係る第二実施例の車両電源制御装置の制御のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る車両電源制御装置の各実施例について説明する。
【0013】
<第一実施例>
図1乃至図2を参照し、本実施例における車両電源制御装置100について説明する。車両電源制御装置100は、車両のイグニッション電源の電源供給リレー70に指令を出力することにより、イグニッション電源の供給を制御する。車両電源制御装置100は、車速情報入力部10と、電源供給情報入力部20と、これらの入力情報に基づいてイグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する制御部30と、その指令情報に基づいて電源供給リレー70にオン/オフ信号を出力する出力指令部40と、オン信号の入力により出力指令部40に対してオンの指令情報を継続して出力するラッチ部50と、制御部30を常に監視する制御監視部60と、を備える。
【0014】
車速情報入力部10は、車軸の回転方向や回転速度から車両の地面に対する速度情報を取得するECU(Electronic Control Unit)などから走行スピードが伝達され、現在の車速情報が入力される。電源供給情報入力部20は、イグニッションスイッチ、所謂プッシュスタートストップスイッチの操作を検出するECUなどから操作の情報が伝達され、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われたことの情報が電源供給の開始/停止情報として入力される。
【0015】
制御部30は、車速情報入力部10に入力された車速情報および電源供給情報入力部20に入力された供給/停止情報に基づいて、イグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する。制御部30は、車速情報として、車両が停止中かまたは走行中かの情報を取得する。また、制御部30は、イグニッション電源の電源供給開始の情報/電源供給停止の情報として取得すると同時に、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われたことの情報として取得する。
【0016】
制御部30は、車両が停止中の場合には、電源供給が停止している状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されると電源供給開始の情報として検出し、出力指令部40に電源供給開始の旨のオン指令情報を出力する。また、制御部30は、車両が停止中の場合には、電源が供給されている状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されると電源供給停止の情報として検出し、出力指令部40に電源供給停止の旨のオフ指令情報を出力する。ただし、制御部30は、車両が走行中の場合は、電源が供給されている状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されても、電源供給停止の情報として検出せず、出力指令部40に電源供給停止の旨のオフ指令情報を出力しない。これにより、走行中に誤ってプッシュスタートストップスイッチの操作が行われても、電源の供給を継続させることができる。
【0017】
制御部30は、所謂マイクロプロセッサ(MCU)から構成される。制御部30は、制御監視部60に対して定期的に所定の信号(ウォッチドッグタイマ(WDT))を送信する。もし制御監視部60が一定期間内にその信号を受信しない場合や逆に複数の信号を受信したような場合には、制御部30は、停止や暴走などの異常が発生したものとして、制御監視部60からリセット信号(Reset)を掛けられる。リセット信号が入力された制御部30は、復帰するため強制的に再起動される。
【0018】
出力指令部40は、制御部30が出力した指令情報が入力され、その指令情報に基づきイグニッション電源の電源供給リレー70にオン信号またはオフ信号を出力する。出力指令部40は、制御部30から電源供給開始の旨のオン指令情報を入力されると電源供給リレー70に対してオン信号を出力し、電源供給停止の旨のオフ指令情報を入力されると電源供給リレー70に対してオフ信号を出力する。出力指令部40は、本実施例の場合、通信を経由して制御部30から指令情報を受信する。通信の方法やプロトコルなどは特に限定されない。出力指令部40と制御部30の間の指令情報の伝達は、通信経由に限られず、信号線により直接行われてもよい。
【0019】
ラッチ部50は、車速情報入力部10に入力された車速情報および電源供給情報入力部20に入力された供給/停止情報を制御部30を経由せず直接入力される。また、ラッチ部50は、出力指令部40が出力した指令情報を入力される。出力指令部40が出力した指令情報が電源供給リレー70をオンにするオン信号である場合、ラッチ部50は、そのオン信号をラッチし(保持し)、出力指令部40に対してオンの指令情報を継続して出力するように構成されている。ラッチ部50は、たとえば、1ビット(オンとオフの2状態)の情報を保持することができるラッチ回路から構成されている。
【0020】
ラッチ部50は、入力される車速情報および電源の供給/停止情報に基づき、その車速情報において車速ゼロであるときにその供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止する。このように、ラッチ部50が一旦オン信号を入力されるとオン指令情報を出力指令部40に出力し続けることで、出力指令部40は、電源供給リレー70にオン信号を出力し続ける。また、ラッチ部50は、制御部30を経由せずに入力される車速がゼロであるという情報、および、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われたという供給/停止情報の両方の情報が揃った場合に、オン指令情報の出力を停止する。
【0021】
これによれば、車両走行中に制御部30の異常が発生した際に使用者が誤ってイグニッション電源の供給停止の操作を行ったとしても、安全に車両の走行を継続させるために車両への電源供給を確実に継続させ、安全が確保できたときにイグニッション電源の供給を停止する車両電源制御装置100を提供することができる。なお、制御部30は、異常の原因によっては、リセット信号が掛けられても再起動に時間がかかる場合があり、さらには復帰しない場合もあり得る。しかし、制御部30がこのような異常が発生した場合であっても、ラッチ部50が一旦オン信号を入力されるとオン指令情報を出力指令部40に出力し続け、車速情報と供給/停止情報を直接取得するため、本発明の車両電源制御装置100は、安全に車両の走行を継続できるとともに、停止した場合には正常に車両の電源をオフにすることができる。
【0022】
図2を参照し、車両電源制御装置100の処理フローを説明する。なお、フローチャートにおけるSはステップを意味する。車両は、電源がオフで停車中である。車両電源制御装置100は、そのような状態において、S100において、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われるか否かを検知している。プッシュスタートストップスイッチの操作が行われた場合、その旨の情報が電源供給情報入力部20に入力され、制御部30は、S102において、オン指令情報を出力指令部40に出力し、出力指令部40は、電源供給リレー70にオン信号を出力し、車両はオン状態となる。出力指令部40がオン信号を出力すると、ラッチ部50は、S104において、オン信号をラッチし、出力指令部40にオン指令情報を出力し続ける。
【0023】
制御部30は、S106において、車速情報入力部10からの車速情報に基づき走行中か否かを検知する。走行中である場合、ラッチ部50は、S110において、オン信号をラッチし続ける。停車中である場合、制御部30は、S108において、電源供給情報入力部20からプッシュスタートストップスイッチが操作されたか否かを検知する。操作されていない場合、ラッチ部50は、S110において、オン信号をラッチし続ける。操作された場合、すなわち、停車中にプッシュスタートストップスイッチが操作された場合、ラッチ部50は、S112において、オン信号のラッチを終了し、オフ信号を出力する。
【0024】
この後、制御部30は、S114において、電源供給情報入力部20からプッシュスタートストップスイッチが操作されたことを検知するか否かを確認する。操作されたことを検知しない場合、S106~S112を繰り返す。これにより、制御部30が電源のオフを検知し制御しない場合は、ラッチ部50は、再びS110において、オン信号をラッチする。制御部30は、操作されたことを検知した場合、出力指令部40にオフ指令情報を出力する。これにより、出力指令部40は、電源供給リレー70にオフ信号を出力し、車両の電源はオフ状態となる。
【0025】
<第二実施例>
図3乃至図4を参照し、本実施例における車両電源制御装置100Aについて説明する。なお、重複記載を避けるため、上記実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。車両電源制御装置100Aは、車速情報入力部10と、電源供給情報入力部20と、これらの入力情報に基づいてイグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する制御部30A(第1制御部)と、この指令情報を制御部30Aとは異なる方法で出力する制御部30B(第2制御部)と、制御部30Aが出力した指令情報に基づいて電源供給リレー70にオン/オフ信号を出力する出力指令部40A(第1出力指令部)と、制御部30Bが出力した指令情報に基づいて電源供給リレー70にオン/オフ信号を出力する出力指令部40B(第2出力指令部)と、出力指令部40Aが出力したオン信号の入力により出力指令部40Aに対してオンの指令情報を継続して出力するラッチ部50A(第1ラッチ部)と、出力指令部40Bが出力したオン信号の入力により出力指令部40Bに対してオンの指令情報を継続して出力するラッチ部50B(第2ラッチ部)と、制御部30Aおよび制御部30Bを常に監視する制御監視部60と、を備える。
【0026】
制御部30Aおよび制御部30Bは、本実施例の場合は、1つのマイクロプロセッサから構成されているが、これに限定されず、それぞれが1つのマイクロプロセッサから構成されてもよい。制御部30Aは、上記実施例と同様、通信により出力指令部40Aに指令情報を伝達する。制御部30Bは、通信ではなく、信号線により直接出力指令部40Bと接続されており、制御部30Aとは異なる方法で出力指令部40Bに指令情報を伝達する。これにより、制御部30Aと出力指令部40Aの間、制御部30Bと出力指令部40Bの間が二重化される。
【0027】
制御部30Aおよび制御部30Bは、車速情報入力部10に入力された車速情報および電源供給情報入力部20に入力された供給/停止情報に基づいて、イグニッション電源の供給に関する指令情報を出力する。
【0028】
制御部30Aは、車両が停止中の場合には、電源供給が停止している状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されると電源供給開始の情報として検出し、出力指令部40Aに電源供給開始の旨のオン指令情報を出力する。制御部30Bは、車両が停止中の場合には、電源供給が停止している状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されると電源供給開始の情報として検出し、出力指令部40Bに電源供給開始の旨のオン指令情報を出力する。
【0029】
また、制御部30Aは、車両が停止中の場合には、電源が供給されている状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されると電源供給停止の情報として検出し、出力指令部40Aに電源供給停止の旨のオフ指令情報を出力する。制御部30Bは、車両が停止中の場合には、電源が供給されている状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されると電源供給停止の情報として検出し、出力指令部40Bに電源供給停止の旨のオフ指令情報を出力する。
【0030】
ただし、制御部30Aは、車両が走行中の場合は、電源が供給されている状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されても、電源供給停止の情報として検出せず、出力指令部40Aに電源供給停止の旨のオフ指令情報を出力しない。また、制御部30Bは、車両が走行中の場合は、電源が供給されている状態でプッシュスタートストップスイッチの操作情報が伝達されても、電源供給停止の情報として検出せず、出力指令部40Bに電源供給停止の旨のオフ指令情報を出力しない。これにより、走行中に誤ってプッシュスタートストップスイッチの操作が行われても、電源の供給を継続させることができる。
【0031】
出力指令部40Aは、制御部30Aが出力した指令情報が入力され、その指令情報に基づきイグニッション電源の電源供給リレー70にオン信号またはオフ信号を出力する。出力指令部40Aは、制御部30Aから電源供給開始の旨のオン指令情報を入力されると電源供給リレー70に対してオン信号を出力し、電源供給停止の旨のオフ指令情報を入力されると電源供給リレー70に対してオフ信号を出力する。出力指令部40Bは、制御部30Bが出力した指令情報が入力され、その指令情報に基づきイグニッション電源の電源供給リレー70にオン信号またはオフ信号を出力する。出力指令部40Bは、制御部30Bから電源供給開始の旨のオン指令情報を入力されると電源供給リレー70に対してオン信号を出力し、電源供給停止の旨のオフ指令情報を入力されると電源供給リレー70に対してオフ信号を出力する。
【0032】
ラッチ部50Aおよびラッチ部50Bは、車速情報入力部10に入力された車速情報および電源供給情報入力部20に入力された供給/停止情報を制御部30A/制御部30Bを経由せず直接入力される。また、ラッチ部50Aは、出力指令部40Aが出力した指令情報を入力される。ラッチ部50Bは、出力指令部40Bが出力した指令情報を入力される。出力指令部40Aが出力した指令情報が電源供給リレー70をオンにするオン信号である場合、ラッチ部50Aは、そのオン信号をラッチし、出力指令部40Aに対してオンの指令情報を継続して出力するように構成されている。出力指令部40Bが出力した指令情報が電源供給リレー70をオンにするオン信号である場合、ラッチ部50Bは、そのオン信号をラッチし、出力指令部40Bに対してオンの指令情報を継続して出力するように構成されている。
【0033】
ラッチ部50Aおよびラッチ部50Bは、入力される車速情報および電源の供給/停止情報に基づき、その車速情報において車速ゼロであるときにその供給/停止情報が入力された場合に、オンの指令情報を継続して出力することを停止する。このように、ラッチ部50A/ラッチ部50Bが一旦オン信号を入力されるとオン指令情報を出力指令部40A/出力指令部40Bに出力し続けることで、出力指令部40A/出力指令部40Bは、電源供給リレー70にオン信号を出力し続ける。また、ラッチ部50A/ラッチ部50Bは、制御部30A/制御部30Bを経由せずに入力される車速がゼロであるという情報、および、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われたという供給/停止情報の両方の情報が揃った場合に、オン指令情報の出力を停止する。
【0034】
このように、制御部30A、出力指令部40Aおよびラッチ部50Aの系統と、制御部30B、出力指令部40Bおよびラッチ部50Bの系統は、完全に分離され二重化されている。一方の系統(たとえば制御部30A)においては異常が発生していないが、他方の系統(たとえば制御部30B)において異常が発生している場合、他方の系統において、出力指令部40Bが電源供給リレー70にオン信号を出力し続けることで、安全に車両の走行を継続させるために車両への電源供給を確実に継続させることができる。また、一方の系統においてのみ異常が発生している場合でも、車速がゼロであるという情報、および、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われたという供給/停止情報の両方の情報が揃った場合には、安全が確保できたため、双方の系統においてオン指令情報の出力を停止することでイグニッション電源の供給を停止することができる。
【0035】
図4を参照し、制御部30が正常の場合と異常発生の場合の各部の動作について説明する。なお、本図では、制御部30A/制御部30Bが1つ制御部30である場合を説明する。正常動作の場合、車両の電源がオフ(電源供給リレー70がオフ)で停車中にプッシュスタートストップスイッチが操作されると、電源供給情報入力部20を経由して、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われた旨の情報すなわちイグニッション電源をオンする旨の情報が制御部30に伝達される。そうすると、制御部30は、所定のクロックサイクルで駆動されているので、若干遅延してオン指令情報を出力する。
【0036】
制御部30がオン指令情報を出力すると、そのオン指令情報は、通信と信号線を経由して出力指令部40Aと出力指令部40Bに伝達される。そうすると、出力指令部40Aがオン信号を出力し、ラッチ部50Aと電源供給リレー70に遅延なく伝達され、ラッチ部50Aはオン信号をラッチすると共に、電源供給リレー70はオンになる。同様に、出力指令部40Bがオン信号を出力し、ラッチ部50Bと電源供給リレー70に遅延なく伝達され、ラッチ部50Bはオン信号をラッチすると共に、電源供給リレー70はオンになる。
【0037】
車両は走行した後再度停止状態になり、その時にプッシュスタートストップスイッチが操作されると、電源供給情報入力部20を経由して、プッシュスタートストップスイッチの操作が行われた旨の情報すなわち今回はイグニッション電源をオフする旨の情報が制御部30に伝達される。そうすると、制御部30は、同様に若干遅延してオフ指令情報を出力し、そのオン指令情報は、出力指令部40Aと出力指令部40Bに伝達される。出力指令部40Aと出力指令部40Bは、オフ信号を出力し、電源供給リレー70に伝達され、電源供給リレー70はオフになる。ラッチ部50Aとラッチ部50Bは、制御部30を経由せずに信号線によりプッシュスタートストップスイッチの操作が行われた旨の情報を入力されるので、遅延なくオン指令情報を出力することを停止する。
【0038】
制御部30において異常が発生する場合を説明する。車両の電源がオフで停車中にプッシュスタートストップスイッチが操作されると、制御部30は、同様に若干遅延してオン指令情報を出力し、それに伴い、出力指令部40A/出力指令部40Bがオン信号を出力し、ラッチ部50A/ラッチ部50Bはオン信号をラッチすると共に電源供給リレー70はオンになるまでは正常動作と同じである。本例では走行中に制御部30に異常が発生し、制御部30が電源をオンにする信号を出力できなくなったものとする。このような場合であっても、ラッチ部50Aとラッチ部50Bは、それぞれが出力指令部40Aと出力指令部40Bに対してオンの指令情報を継続して出力するので、出力指令部40Aと出力指令部40Bからオン信号が出力され、電源供給リレー70はオン状態を継続する。
【0039】
さらに、このような状態においてプッシュスタートストップスイッチの操作が行われた場合、ラッチ部50Aおよびラッチ部50Bは、異常の生じた制御部30を経由せずに電源供給情報入力部20から直接その旨の情報を入力される。この場合であっても、ラッチ部50Aおよびラッチ部50Bは、異常の生じた制御部30を経由せずに車速情報入力部10から直接車速情報を入力され、その情報から走行中であることを検知できる。したがって、ラッチ部50Aおよびラッチ部50Bは、それぞれが出力指令部40Aと出力指令部40Bに対してオンの指令情報を継続して出力することで、電源供給リレー70はオン状態を継続する。
【0040】
その後車両は停止状態になり、その時にプッシュスタートストップスイッチが操作されると、電源供給情報入力部20からイグニッション電源をオフする旨の情報および車速情報入力部10から車速ゼロの情報がラッチ部50Aおよびラッチ部50Bに伝達される。そうすると、これらの情報は制御部30を介さずに信号線によりラッチ部50Aおよびラッチ部50Bに伝達されるため、出力指令部40A/出力指令部40Bおよび電源供給リレー70は遅延なくオフ状態になる。
【0041】
これによれば、車両走行中に制御部30の異常が発生した際に使用者が誤ってイグニッション電源の供給停止の操作を行ったとしても、安全に車両の走行を継続させるために車両への電源供給を確実に継続させ、安全が確保できたときにイグニッション電源の供給を停止する冗長化された車両電源制御装置100Aを提供することができる。
【0042】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0043】
100 車両電源制御装置
10 車速情報入力部
20 電源供給情報入力部
30 制御部
40 出力指令部
50 ラッチ部
60 制御監視部
70 電源供給リレー
図1
図2
図3
図4