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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159907
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221011BHJP
   E04F 15/024 20060101ALI20221011BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B32B27/00 E
E04F15/024 601A
E04F15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064374
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】河西 優衣
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】佐野 麻美子
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA02
2E220AA11
2E220AA13
2E220AA15
2E220AA16
2E220AA33
2E220BB02
2E220BB05
2E220FA02
2E220GA24X
2E220GA25X
2E220GB32X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB36X
2E220GB37X
2E220GB43X
4F100AA21
4F100AK01A
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25E
4F100AK51
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AS00A
4F100AS00E
4F100AT00B
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21C
4F100CA13
4F100DD01A
4F100EJ08
4F100EJ39A
4F100EJ54
4F100EJ65
4F100GB08
4F100HB31
4F100HB31C
4F100JB12
4F100JB12E
4F100JB14
4F100JB14A
4F100JK09
4F100JK12
4F100JL10
4F100JL10D
4F100JN01
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】製造工程数の削減が可能であって、薄膜でありながら硬度が高く耐傷付き性に優れた化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧板を得る。
【解決手段】化粧シート10は、単層フィルムである透明原反層20の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層50、着色層40が順に形成され、透明原反層20の表面側に、表面保護層60が形成され、透明原反層20の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムで形成されたラミネート層を有しない化粧シートであって、透明原反層20は、造核剤又は無機フィラーのうちいずれか一方と、透明のオレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成され、表面保護層60は、電離放射線硬化型樹脂を含んで形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層フィルムである原反層の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層、着色層が順に形成され、
前記原反層の表面側に、表面保護層が形成され、
前記原反層の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムで形成されたラミネート層を有しない化粧シートであって、
前記原反層は、造核剤又は無機フィラーのうちいずれか一方と、透明のオレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成され、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含んで形成されている
化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層は、アクリル系電離放射線硬化型樹脂を含んで形成されている
請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記表面保護層は、最表層であって前記電離放射線硬化型樹脂で形成された第一表面保護層と、前記第一表面保護層と前記原反層との間に設けられた第二表面保護層との2層で形成されている
請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記第二表面保護層は、2液硬化型アクリル系樹脂で形成されている
請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記表面保護層の最表面側には、前記絵柄と同調させたエンボス部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記原反層の厚みは、70μm以上150μm以下の範囲内である
請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記原反層は、コア層と、該コア層を挟んで配置される2層のスキン層と、から構成され、
2層の前記スキン層は、前記造核剤又は前記無機フィラーのうちいずれか一方と、前記オレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成される
請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記着色層において前記印刷絵柄層と反対の面に設けられたプライマー層を有する
請求項1から7のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の化粧シートと、
前記化粧シートが少なくとも一方の表面に貼り合わされた基板と、
を有する化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば床材等の表面化粧等に使用される化粧シート及び化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シートは、燃焼時のガスの問題から近年ではオレフィン系材料のものが主に使用されている(特許文献1~3参照)。
【0003】
表面の摩耗から絵柄を守るために、化粧シートを複層にし、着色オレフィンシート上に印刷したものの上に透明のオレフィンシートを貼り合わせたものが広く使われている(特許文献2の段落[0034]及び図1参照、特許文献3の段落[0059]及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-110929号公報
【特許文献2】特開2015-199313号公報
【特許文献3】特開2016-101663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の化粧シートでは、製造時において印刷工程とラミネートの工程とが必要となる。このため、化粧シートの製造工程数が多くなり、例えば1工程のインライン化が実現できないという第一の問題点があった。
【0006】
また、従来の化粧シートは、複層であるがゆえにシートの薄膜化が容易ではなく、成膜上の限界までの薄さと、シートに十分な硬さを付与することとを両立できないという第二の問題がある。
【0007】
さらに、従来の化粧シートは、シートの成膜上の限界により、薄膜化した際にシートの硬さが得られず、シートが伸びることによって印刷合わせが困難となり、化粧板にした時の表面物性が劣ってしまうという第三の問題がある。
【0008】
本開示は、上記した第一から第三の問題点に鑑み、製造工程数の削減が可能であって、薄膜でありながら硬度が高く耐傷付き性に優れた化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧シートは、単層フィルムである原反層の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層、着色層が順に形成され、前記原反層の表面側に、表面保護層が形成され、前記原反層の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムで形成されたラミネート層を有しない化粧シートであって、前記原反層は、造核剤又は無機フィラーのうちいずれか一方と、透明のオレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成され、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含んで形成されている。
【0010】
また、本開示の他の態様に係る化粧板は、上述の化粧シートと、上述の化粧シートが少なくとも一方の表面に貼り合わされた基板と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の態様によれば製造工程数の削減が可能であって、薄膜でありながら硬度が高く耐傷付き性に優れた化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第一実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。
図2】本開示の第一実施形態の変形例に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。
図4】本開示の第三実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。
図5】本開示の第四実施形態に係る化粧材の一構成例を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
【0014】
本開示の第一実施形態に係る積層体について説明する。本開示に係る化粧シートは、例えば、壁面、床材等に施工される化粧シートであり、特に、床材に用いることが好ましい化粧シートである。なお、以下の説明では、化粧シートの貼り付け面に接触する側を「下」、化粧シートの貼り付け面に接触する側と反対側(表面)を「上」として説明する場合がある。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0015】
1.第一実施形態
(1.1)化粧シートの基本構成
図1は、本開示の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る化粧シート10の一構成例を説明するための断面図である
図1中、10は、化粧シートであり、図示しないが、例えば室内に使用され、壁材や、床材などの表面に貼られ、家や部屋毎に壁材、床材の柄を合わせたりして使用される。
化粧シート10は、次の各層を含み、各層が(1)から順に設けられる。
なお、次の(1)~(5)については後述する。
(1)プライマー層30
(2)着色層40
(3)印刷絵柄層50
(4)透明原反層20
(5)表面保護層60
【0016】
なお、化粧シート10の各層は、上記した(1)~(5)に限定されず、表面保護層60の表面側に、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部90を形成しても良いし、プライマー層30の側に後述の図4に示す基板を接着し、化粧板としても良い。
また、化粧シート10において、上記「(1)プライマー層30」を省略しても良い。すなわち、上記「(2)着色層40」にプライマー層としての機能があれば、プライマー層30を省略可能である。
つまり、化粧シート10は、単層フィルムである透明原反層20の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層50、着色層40が順に形成され、透明原反の表面側に、表面保護層60が形成されていればよい。また、化粧シート10は、透明原反層20の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムで形成されたラミネート層を有しない化粧シートである。
さらに、上記「(2)着色層40」を省略しても良い。すなわち、着色層も必要がない場合、例えば隠蔽性を付与する必要が無い場合には、着色層40を省略可能である。
【0017】
プライマー層30は、化粧シート10と化粧シート10が貼りつけられる床材や壁面等の貼り付け面との接着性を向上させるために設けられる層である。
着色層40は、化粧シート10に所望の色彩を付与する層である。
印刷絵柄層50は、化粧シート10に意匠性を付与するための絵柄が印刷された層である。
透明原反層20は、化粧シート10の支持体となるものであって、透明オレフィンシートで形成される。詳しくは後述するが、透明原反層20は、図1に示すように、透明スキン層21A、透明のポリプロピレン製の透明コア層22、透明スキン層21Bの順に2種3層で製造している。つまり、透明原反層20は、透明コア層22と、該透明コア層を挟んで配置される2層の透明スキン層(透明スキン層21A,21Bと、から構成される。
表面保護層60は、化粧シート10の最上面に設けられ、化粧シート10の保護や化粧シート1表面の艶の調整のために設けられる層である。
本実施形態に係る化粧シート1は、少なくとも、着色層40と、透明原反層20と、表面保護層60とがこの順に積層された構成であればよい。
本実施形態において表面保護層60は、下塗り層(第2表面保護層の一例)61と、上塗層(第1表面保護層の一例)62と、を有している。
以下、プライマー層30、着色層40、印刷絵柄層50及び表面保護層60、透明原反層20の各層について詳細に説明する。
【0018】
(1.1.1)化粧シート10の透明原反層の構成
透明原反層20は、図1に示すように、次の3層から形成されている。
なお、(1)~(3)については後述する。
(1)透明コア層22
(2)表面側透明スキン層21A
(3)裏面側透明スキン層21B
透明原反層20は、裏面側透明スキン層21B、透明コア層22、表面側透明スキン層21Aが順次積層される。
【0019】
〔透明コア層22〕
透明コア層22は、ポリプロピレン樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを使用する。
透明コア層22は、例えば、透明ポリプロピレン樹脂フィルムである。また、透明原反層20は、図1中において、透明コア層22、表面側透明スキン層21A、裏面側透明スキン層21Bが別層を形成する様に表現しているが、実際は透明コア層22、表面側透明スキン層21A、裏面側透明スキン層21B連続的であり、界面は存在しない単層シート(単層フィルム)である。
【0020】
(樹脂材料)
透明コア層22を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで基材層等として用いられていた熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0021】
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0022】
透明コア層22には、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。
【0023】
〔表面側透明スキン層21A及び裏面側透明スキン層21B〕
表面側透明スキン層21A及び裏面側透明スキン層21B(以下、「透明スキン層21A,21B」ともいう。)は、同種の熱可塑性樹脂、例えば透明ポリプロピレン系樹脂を用い、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して形成する(以下、「分散剤ナノ仕様」ともいう)。
つまり、本実施形態において透明原反層20は、2種3層で形成される。
また、透明スキン層21A,21Bにも、透明コア層22と同様に、耐候剤をブレンドしたものを使用してもよい。なお、透明原反層20は表面側透明スキン層21A及び裏面側透明スキン層21Bのうち少なくとも一方が設けられていればよい。つまり、透明原反層20は少なくとも一方の面に、透明スキン層が設けられて入ればよい。
【0024】
表面側透明スキン層21Aは、透明コア層21の表面側、すなわち透明コア層22の表面保護層60の側の面に位置する。また、裏面側透明スキン層21Bは、透明コア層22の裏面側、すなわち透明コア層22を挟んで表面側透明スキン層21Aと反対側の面(印刷絵柄層50の側の面)に位置する。なお、
【0025】
透明スキン層21A,21Aは、樹脂材料と樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤とを含む層であり、表面に凹凸形状を有している。本実施形態では、造核剤は、外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で樹脂材料に添加されている。
透明スキン層21A,21Aの厚さは、例えば1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。透明スキン層21A,21Bの厚さが1μm以上である場合、化粧シート10の耐傷性が十分に高くなる。また、透明スキン層21A,21Bの厚さが50μm以下である場合、化粧シート10の曲げ性が必要以上に高くなりすぎず、化粧シート1を貼り付ける貼り付け面が平面でない場合にも化粧シート10を貼り付け面に密着させた状態で施工することができる。
また、透明原反層20は、例えば、「表面側透明スキン層21A:透明コア層22:裏面側透明スキン層21B」が「0.5:9:0.5」の厚み比率になるように同時押出して形成している。
【0026】
(樹脂材料)
透明スキン層21A,21Bを構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、透明コア層22と同様の樹脂材料を用いることができる。
【0027】
(造核剤)
透明スキン層21A,21Bはナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されることが好ましい。また、本実施形態において、透明スキン層21A,21Bを構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていても良い。透明スキン層21A,21Bは造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート10の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
【0028】
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。
この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
【0029】
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。
一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。
このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0030】
透明スキン層21A,21Bは、例えば、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成される。
造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21A,21Bの耐傷性が十分に向上しないおそれがある。また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21A,21Bの耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、透明スキン層21A,21Bを構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料を示すものとする。
【0031】
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。
また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0032】
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。
超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0033】
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。
つぎに、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。
この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0034】
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0035】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。
このうち、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0036】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしても良い。
本実施形態の化粧シート10においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート10の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしても良い。
【0037】
上述のように、実施形態の化粧シート10において、透明原反層20は、造核剤と、樹脂材料(例えば透明のオレフィン系熱可塑性樹脂)とを含んで形成される。より具体的には、本実施形態の化粧シート10は、透明スキン層21A,21Bが造核剤と樹脂材料(例えばオレフィン系熱可塑性樹脂)、とを含んで形成される。
また、本実施形態の化粧シート10は、透明スキン層21A,21Bを形成する際に、樹脂材料に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂材料を結晶化させる点に特徴を有している。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち透明スキン層21A,21B中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏する。一方、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することが、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。
【0038】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート10の前駆体である積層体の状態においても透明スキン層21A,21Bに高分散されている。
しかしながら、化粧シート10の作製工程において、通常、積層体は圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施され、このような処理によって造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕したり、化学反応する場合がある。
【0039】
このため、化粧シート10の処理工程によって、完成後の化粧シート10における造核剤の外膜が破砕したり、化学反応している状態がばらつき、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。
そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。
このように、本開示は、従来に比して、化粧シート10に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0040】
透明原反層20の厚さは、例えば、70μm以上150μm以下の範囲内であることが好ましく、90μm以上130μm以下の範囲内であることがより好ましい。
透明原反層20の厚さが70μm以上である場合、化粧シート10を床材に用いる際に好適な強度が付与され、耐傷性の向上することができる。また透明原反層20の厚さが90μm以上である場合、透明原反層20の強度がより増大し、耐傷性をより確実に向上することができる。
一方、透明原反層20の厚さが150μm以下である場合、化粧シート10の膜厚の薄さと強度とを両立しつつ、加工時において白化や割れといった不具合が生じることを抑制する、即ち加工適性を向上することができる。また、印刷絵柄層の絵柄をシート表面(表面保護層60側)から見るのに十分な透明性を維持することができる。また、透明原反層20の厚さが130μm以下である場合、化粧シート10の膜厚の薄さと強度とをより確実に両立し、加工適性を向上することができる。
【0041】
(1.1.2)化粧シート10の各層の構成
(プライマー層30)
プライマー層30は、図1に示すように、透明原反層20の裏面側に位置し、主として接着性改善を目的で設けられるものである。プライマー層30は、透明原反層20の裏面側において、着色層40に積層して形成されている。言い換えれば、プライマー層30は、着色層40において印刷絵柄層50と反対の面に設けられている。
なお、プライマー層30の機能には、接着性改善のほか、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。
プライマー層30は、例えばグラビア印刷法により固形分量が1g/mとなるようにウレタン系樹脂を塗工して形成している。
【0042】
(着色層40)
着色層40は、図1に示すように透明原反層20の裏面側、より詳細には印刷絵柄層50の更に裏面側であって、プライマー層30の表面側に位置し、印刷方法を用いて形成され、主として隠蔽性を付与する目的で設けられるものである。
着色層40は、例えばグラビア印刷法により2液ウレタン系樹脂で印刷したものである。当該2液ウレタン系樹脂は、ウレタン樹脂に酸化チタンの白顔料を混ぜた構成であってもよい。
【0043】
(印刷絵柄層50)
印刷絵柄層50は、図1に示すように、着色層40の表面側、すなわち透明原反層20の裏面側に位置し、印刷方法を用いて形成され、化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷絵柄層50は、例えばグラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷したものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法を例示したが、これに限定されず、例えばオ
フセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用可能である。
【0044】
印刷絵柄層50の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
印刷方法に用いられる印刷インキとしては、例えば塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)を用いている。
【0045】
なお、印刷インキとしては、ウレタン系樹脂を例示したが、これに限定されず、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤等でも良いし、又、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
【0046】
(表面保護層60)
表面保護層60は、トップコートともいい、図1に示すように、透明原反層20の表面側に位置し、印刷方法を用いて形成され、耐磨耗性や耐水性、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能(表面物性)を付与する目的で設けられるものである。
表面保護層60は、単層であってもよいし、複数の層を重ねて表面保護層60としてもよい。本実施形態に係る化粧シート10において、表面保護層60は、図1に示すように、透明原反層20の表面に塗布する下塗り層61と、下塗り層61の表面に塗布する、下塗り層61と比較し、艶の高い上塗り層62とから構成されている。
【0047】
下塗り層61を構成する樹脂材料としては、例えば熱硬化型樹脂が挙げられる。熱硬化型樹脂としては、耐擦傷性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を用いるのが好ましい。2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
熱硬化型樹脂で形成された下塗り層61は、比較的架橋度が低いために、折り曲げや基材への追従などの柔軟性に優れる傾向にある。
下塗り層61には、これらの樹脂材料のうち、アクリルポリオールを主体とするアクリル系2液硬化型ウレタン樹脂を好適に用いることができる。
【0048】
上塗り層62を構成する樹脂材料としては、例えば電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂で形成された上塗り層62は、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷性に優れる傾向にある。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。なかでも、上塗り層62の材料として、アクリル系の電離放射線硬化型樹脂(例えば、アクリル系紫外線硬化型樹脂)を好適に用いることができる。
【0049】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0050】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常、190nm以上380nm以下の範囲が好ましい。
【0051】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100keV以上1000keV以下の範囲のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましく、100keV以上300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものがより好ましい。
【0052】
このように、本実施形態においてアクリル系電離放射線硬化型樹脂を用いて上塗り層62を形成することにより、化粧シート10に床材用途に好適な硬度を付与することができる。
また、上塗り層62を構成する樹脂材料として、電離放射線硬化型樹脂と熱硬化型樹脂とを混合した混合材料を用いてもよい。上塗り層62の樹脂材料に用いる熱硬化型樹脂には、下塗り層61と同様の熱硬化型樹脂を用いることができる。このとき、例えば、上述の混合材料において、熱硬化型樹脂よりも電離放射線硬化型樹脂を多く含有することにより、耐傷性を満足させると同時に、曲げ加工においては表面保護層60の白化や割れが発生し難くすることができる。
【0053】
また上塗り層62は、下塗り層61と比較して艶を高くした樹脂材料を塗布し、印刷絵柄層50と同調した絵柄で印刷している。
すなわち、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させ、化粧シート10の意匠性を向上することもできる。
【0054】
また、上塗り層62の表面、すなわち表面保護層60の最表面側には、印刷絵柄層50の絵柄(例えば、木目導管柄)と同調させたエンボス部90を形成しても良い。
エンボス部90においては、下塗り層61が露出してもよい。
ここで、エンボス部というと、それなりの高低差のイメージを持つが、本実施形態において、エンボス部90における下塗り層61と絵柄と同調した上塗り層62との高低差は、実際には数μmオーダーの高低差しかなく、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させる、という表現と同様の意味である。エンボス部90を形成することにより、表面保護層60において、艶の高い部分(上塗り層62)と艶の低い部分(下塗り層61)との質感の差を利用して、より本物に近い意匠を再現することができる。例えば、例えば上塗り層6に木目導管柄を印刷した場合、エンボス部90によって表面保護層60の表面に実際の木目導管を模した凹凸形状を付与することができる。これにより、本物の木材に近い意匠を再現することができる。
【0055】
さらに、表面保護層60には、抗ウイルス処理を施してもよい。
抗ウイルス処理としては、表面保護層60に抗ウイルス剤を添加する。抗ウイルス剤としては、例えば、銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)を使用している。
ここで、表面保護層60への抗ウイルス剤の添加は、表面保護層60が下塗り層61上塗り層62から構成されていることから、下塗り層61及び上塗り層62の両方に添加しても良いし、或いは表面保護層60の表面側に位置する上塗り層62だけに添付しても良い。
なお、表面保護層60に抗ウイルス剤を添加したが、これに限定されず、表面保護層60の表面側、少なくとも上塗り層62の表面に、抗ウイルス剤を塗布しても良い。
また、表面保護層60が単層構造である場合には、単層の表面保護層60に抗ウイルス剤(例えば、銀系抗ウイルス剤)が含まれていればよい。
【0056】
また、表面保護層60に各種機能を付与するために、表面保護層60の各層は抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を含んでいてもよい。また、表面保護層60の各層は、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系の光安定化剤が挙げられる。
【0057】
このように、本実施形態に係る化粧シート10において、表面保護層60は、最表層であって電離放射線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂)で形成された上塗り層62と、上塗り層62と透明原反層20との間に設けられた下塗り層61との2層で形成されている。これにより、表面保護層60の硬度がより向上するとともに、化粧シート10に優れた耐傷付き性能が付与され、且つ各種添加剤(例えば抗ウイルス剤等)により付与される性能の効果を高めることができる。
また、下塗り層61は、2液硬化型アクリル系樹脂で形成されていることが好ましい。これにより、化粧シート10の耐傷付き性能を満足させると同時に加工適性が向上し、加工時においては表面保護層60の白化や割れが発生し難くなる。
表面保護層60が一層から構成される構造(単層構造)の場合、下塗り層61または上塗り層62のいずれかを表面保護層60とすればよいが、化粧シート10の硬度の向上および意匠性させる観点から、電離放射線硬化型樹脂を含む上塗り層62を表面保護層60とすることが好ましい。また、上塗り層62は、電離放射線硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合材料を含んで形成されていてもよい。
つまり、表面保護層60は、電離放射線硬化型樹脂を含んで形成されていればよく、アクリル系電離放射線硬化型樹脂(例えば、アクリル系紫外線硬化型樹脂)を含んで形成されていることがより好ましい。また、表面保護層60は、電離放射線硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合材料を含んで形成されていてもよい。
【0058】
(1.2)化粧シート10の製造方法
化粧シート10は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程から第3の構成を有し、インラインで製造するものである。
ここで、「インライン」は、フィルム同士をラミネートするラミネート工程が無いため、通常、複数の工程となる印刷を、一つのライン、すなわちワンラインで加工できることを意味する。すなわち、印刷から表面保護層60を付与するまでの製造工程を1工程のインラインで行うことができる。
【0059】
(1)第1の工程
第1の工程は、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いた透明コア層22と、透明コア層22の表裏面側にそれぞれ位置し、熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加した透明スキン層21A,21Bと、を押出し成形した単層フィルムである透明原反層20を製造する工程である。
【0060】
具体的には、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料に必要に応じて無機顔料等を添加して溶融混錬し、透明コア層22となる無機顔料等を含む基材層用樹脂材料を得る。次に、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料に造核剤ベシクルを混合して透明スキン層21A,21B用の造核剤ベシクル含有樹脂材料を得る。続いて、加熱溶融した透明コア層22用の樹脂材料及び透明スキン層21A,21B用の造核剤ベシクル含有樹脂材料を、例えば造核剤ベシクル含有樹脂材料/コア層用樹脂材料/造核剤ベシクル含有樹脂材料の順に積層されるように押出機から同時に押し出し、冷却ロールで冷却して積層フィルムを形成した。これにより、スキン層12B/基材層12A/スキン層12Bが積層された透明原反層20を得る。
【0061】
(2)第2の工程
第2の工程は、第1の工程で製造した透明原反層20の裏面側に、印刷絵柄層50と、着色層40と、プライマー層30とを順に形成する工程である。
(3)第3の工程
第3の工程は、第2の工程の後、又は第2の工程に先立ち、前記第1の工程で製造した透明原反層20の表面側に、表面保護層60を形成する工程である。
上記工程の順番は、第1の工程、第2の工程、第3の工程の順番と、第1の工程、第3の工程、第2の工程の順番との二通りである。
従来の化粧シートは、複層であるため、印刷絵柄層の付与と、ラミネートフィルム表面の表面保護層との同調表現が困難であった。これに対し、本実施形態に係る化粧シート10は上述のようにインラインで製造することができる。このため、化粧シート10では、インラインでの製造時に、透明オレフィンシートある透明原反層20の表裏面側に絵柄印刷とエンボス部90とを付与することで、印刷絵柄層50と表面保護層60との同調表現が容易にできる。
【0062】
以上により、プライマー層30、着色層40、印刷絵柄層50、透明原反層20及び表面保護層60がこの順に積層された第一実施形態の化粧シートを得ることができる。
【0063】
(1.3)第一実施形態の効果
以上のような化粧シート1は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の化粧シート1は、単層フィルムである透明原反層20の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層50、着色層40が順に形成され、透明原反層20の表面側に、表面保護層60が形成され、透明原反層20の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムで形成されたラミネート層を有しない化粧シートであって、透明原反層20は、造核剤と、透明のオレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成され、表面保護層60は、電離放射線硬化型樹脂を含んで形成されている。
この構成によれば、製造工程数の削減が可能であって、薄膜でありながら硬度が高く耐傷付き性に優れた化粧シート10を得ることができる。
(2)本実施形態の化粧シート10において、表面保護層60は、アクリル系電離放射線硬化型樹脂を含んで形成されていてもよい。
この構成によれば、化粧シート10において床材に好適な硬度を確実に向上することができる。
【0064】
(3)本実施形態の化粧シート1において、表面保護層60は、最表層であって電離放射線硬化型樹脂で形成された上塗り層62と、上塗り層62と透明原反層20との間に設けられた下塗り層61との2層で形成されている。
この構成によれば、化粧シート10は、耐傷性をより向上し、各種添加剤(例えば抗ウイルス剤)により付与される性能の効果を高めることができる。
(4)本実施形態の化粧シート1において、下塗り層61は、2液硬化型アクリル系樹脂で形成されていてもよい。
この構成によれば、耐傷付き性能を満足させると同時に加工適性が向上し、耐傷付き性能と加工適性とのバランスに優れた化粧シートを得ることができる。
(5)本実施形態の化粧シート1において、表面保護層60の最表面側(上塗り層62の最表面)には、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部90が形成されていてもよい。
この構成によれば、製造工程数の削減が可能であって、薄膜でありながら高い硬度を有するとともに、印刷絵柄層50と表面保護層60との同調表現によって意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。
(6)本実施形態の化粧シート10において、透明原反層20の厚みは、70μm以上150μm以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、製造工程数の削減が可能であって、膜厚の薄さと、床材に適した高い硬度との両立がより確実な化粧シートを得ることができる。
【0065】
(7)本実施形態の化粧シート1において、透明原反層20は、透明コア層22と、透明コア層22を挟んで配置される2層の透明スキン層21A,21Bと、から構成され、2層の透明スキン層21A,21Bは、造核剤と、オレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成されてもよい。
この構成によれば、床材に適した高い硬度と加工適性とを両立可能な化粧シートを得ることができる。
(8)本実施形態の化粧シート10は、着色層40において印刷絵柄層50と反対の面に設けられたプライマー層30を有していてもよい。
この構成によれば、化粧シート10と床材や壁面等との接着に用いられる接着剤との密着性を向上することができる。
【0066】
(1.4)第一実施形態の変形例
本実施形態に係る化粧シートの変形例について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態の変形例による化粧シート10の一構成例を説明するための断面模式図である。図2に示すように、化粧シート10において、表面保護層60は表面が平坦に形成された上塗り層162を有していてもよい。つまり、表面保護層60の最表面はエンボス部を有していなくてもよい。上塗り層162は、表面が平坦である以外は、図1に示す上塗り層62と同一の構成を有する。したがって、上塗り層162は印刷絵柄層50と同調した絵柄で印刷することができる。
上塗り層162の表面が平坦に形成されることにより、表面保護層60の形成時において、上塗り層162にエンボス部を形成するための作業負荷や製造コストを低減することができ、結果として、化粧シート10の製両方の表面を平坦とした場合であっても、化粧シート10が薄膜でありながら硬度が高く、優れた耐傷性能は十分に維持することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の変形例による化粧シート1において、表面保護層60における上塗り層162は、表面が平坦に形成されていてもよい。
これにより、化粧シート10の製造工数をさらに低減することができるとともに、薄膜でありながら硬度が高く優れた耐傷性能を有する化粧シートを得ることができる。
【0068】
2.第二実施形態
以下、本開示の第二実施形態に係る化粧シートについて、図3を用いて説明する。
図3は、本開示の第二実施形態に係る化粧シート11の一構成例を説明するための断面図である。本実施形態に係る化粧シート11は、化粧シート10と同様に、例えば、壁面や床材等に施工されることが好ましい化粧シートである。
【0069】
化粧シート11は、プライマー層30と、着色層40と、印刷絵柄層50と、透明原反層120と、表面保護層60と、を備えている。すなわち、化粧シート110は、透明原反層20に代えて透明原反層120を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート10と相違する。
【0070】
以下、透明原反層120について説明する。なお、透明原反層120以外の各層(プライマー層30、着色層40、印刷絵柄層50及び表面保護層60)については、化粧シート10の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0071】
(2.1)化粧シートの基本構成
<透明原反層>
透明原反層120は、透明コア層22と、透明コア層22の少なくとも一方の面に設けられた透明スキン層とを有している。透明原反層120は、透明コア層22の表面(表面保護層60側の面)に透明スキン層121Aが設けられていてもよいし、透明コア層22の裏面(着色層40側の面)に透明スキン層121Bが設けられていてもよいし、透明コア層22の両面に透明スキン層(透明スキン層121A,121B)が設けられた構成であってもよい。本実施形態では、透明コア層22の両面に透明スキン層が設けられた構成(透明コア層22が透明スキン層121A,121Bに挟まれた構成)の透明原反層120について説明する。
【0072】
(2.1.1)透明コア層22
本実施形態における透明コア層22は、第一実施形態に係る透明コア層22と同様の構成であるため説明を省略する。
【0073】
(2.1.2)透明スキン層121A,121B
透明スキン層121A,121Bは、樹脂材料と無機材料とを含む層である。第一実施形態にかかる化粧シート1では、造核剤を含んで形成される分散剤ナノ仕様の樹脂材料によって高い結晶性を有する高耐傷性樹脂シートを形成して透明スキン層121A,121Bとした。一方、第二実施形態にかかる化粧シート11では、造核剤に代えて、硬度の高いナノサイズの無機フィラー(無機ナノ粒子)を樹脂材料(例え透明ポリプロピレン系樹脂)に添加して、透明スキン層121A,121Bを形成する(以下、「無機ナノ粒子仕様」ともいう)。これにより、高い硬度を有する透明スキン層121A,121Bを形成し、高耐傷性を有する化粧シート11を得る。
【0074】
無機フィラーとしては、例えばナノサイズのシリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子が挙げられる。
透明スキン層121A,121Bは、例えば、樹脂材料100質量部に対して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内で無機フィラーが添加された樹脂材料により形成される。
【0075】
透明原反層120は、例えば、ナノサイズの無機粒子を含む無機粒子含有ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、コア層用樹脂材料とともに共押し出し成形することにより、透明コア層22の少なくとも一方の面に透明スキン層(透明スキン層121Aまたは透明スキン層121B)が設けられて形成される。
なお、透明スキン層21A,21Bは、無機フィラーを含んで形成される無機ナノ粒子仕様だけでも良いし、無機ナノ粒子仕様に加え、造核剤を含んで形成される分散剤ナノ仕様を追加しても良い。つまり、透明スキン層21A,21Bは、分散剤に加え、無機フィラーを添加して形成してもよい。
【0076】
(2.2)第二実施形態の効果
以上のような化粧シート11は、以下の効果を有する。
本実施形態の化粧シート11は、単層フィルムである透明原反層120の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層50、着色層40が順に形成され、透明原反層120の表面側に、表面保護層60が形成され、透明原反層120の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムで形成されたラミネート層を有しない化粧シートであって、透明原反層120は、無機フィラーと、透明のオレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成され、表面保護層60は、電離放射線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂)で形成されている。
この構成によれば、上記第一実施形態と同様に、製造工程数の削減が可能であって、薄膜でありながら硬度が高く、耐傷付き性に優れた化粧シート11を得ることができる。
【0077】
3.第三実施形態
以下、本開示の第三実施形態に係る化粧材について、図4を用いて説明する。
図4は、本開示の第二実施形態に係る化粧シート12の一構成例を説明するための断面図である。本実施形態に係る化粧シート12は、化粧シート10と同様に、例えば、壁面や床材等に施工されることが好ましい化粧シートである。
【0078】
化粧シート12は、プライマー層30と、着色層40と、印刷絵柄層50と、透明原反層220と、表面保護層60と、を備えている。すなわち、化粧シート12は、透明原反層20に代えて透明原反層220を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート10と相違する。
【0079】
以下、透明原反層220について説明する。なお、透明原反層220以外の各層(プライマー層30、着色層13及びトップコート層14)については、化粧シート10の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0080】
(3.1)化粧シートの基本構成
<透明原反層>
透明原反層220は、透明コア層222で構成されている。つまり、本実施形態において、透明コア層222にはいずれの面にも透明スキン層が設けられておらず、透明原反層220は、透明オレフィンシートのみ、すなわち透明コア層222のみで構成される単層フィルムである。
【0081】
(3.1.1)透明コア層222
本実施形態における透明コア層222は、樹脂材料(例えば透明ポリプロピレン系樹脂)に、ナノサイズの添加剤としての分散剤(例えば造核剤)を添加して形成した分散剤ナノ仕様でもよいし、樹脂材料にナノサイズの添加剤としての無機フィラーを添加して形成した無機ナノ粒子仕様でもよいし、分散剤ナノ仕様に加え、無機ナノ粒子仕様を追加して形成されてもよい。
つまり、透明コア層222の一層で構成される透明原反層220は、造核剤又は無機フィラーのうち少なくともいずれか一方と、透明のオレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成されてもよい。
これにより、高い硬度を有する透明コア層222を形成し、高耐傷性を有する化粧シート12を得る。
【0082】
透明原反層220、すなわち透明コア層222は、例えば、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料に造核剤ベシクルおよび無機フィラーの少なくとも一方を混合して得た基材層用樹脂材料を押出機から押し出し、単層フィルムとして形成すればよい。
つまり、本実施形態では、透明コア層222を分散剤ナノ仕様および無機ナノ粒子仕様のうち少なくとも一方とすることで、化粧シートに高耐傷性を有するとともに、化粧シートの製造工数をさらに低減することができる。
【0083】
(3.2)第三実施形態の効果
以上のような化粧シート12は、以下の効果を有する。
本実施形態の化粧シート12は、単層フィルムである透明原反層220の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層50、着色層40が順に形成され、透明原反層220の表面側に、表面保護層60が形成され、透明原反層220の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムで形成されたラミネート層を有しない化粧シートであって、透明原反層220は透明コア層222を有し、透明コア層222は、造核剤又は無機フィラーのうち少なくともいずれか一方と、透明のオレフィン系熱可塑性樹脂とを含んで形成され、表面保護層60は、電離放射線硬化型樹脂で形成されている。
この構成によれば、製造工程数をさらに削減することが可能であって、薄膜でありながら硬度が高く、耐傷付き性に優れた化粧シート12を得ることができる。
【0084】
4.第4実施形態
以下、本開示の第四実施形態に係る化粧板について、図5を用いて説明する。
図5は、本開示の第四実施形態に係る化粧板100の一構成例を説明するための断面図である。
(化粧板)
化粧板100は、化粧シート10と、化粧シート10が少なくとも一方の表面に貼り合わされた基板とを備える。
化粧板100は、透明原反層20の一方の面側に、着色層40、及び印刷絵柄層50がこの順に積層されており、透明原反層20の他方の面側に表面保護層60が積層されている。また、化粧板100は、着色層40において印刷絵柄層50と反対の面に設けられたプライマー層30においてと、基板80と貼り合わされている。
すなわち、化粧板100は、基板80を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート10と相違する。
【0085】
以下、基板80について説明する。なお、化粧シート10については、上記第一実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0086】
[基板]
基板80は、使用者が歩行する床面を構成するものであり、硬質性材料から構成される。基板80は、合板等の木質基材、木粉とプラスチックとを混合した複合基材、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンや塩化ビニル(PVC)等の樹脂基材等の硬質性材料からなる。木質基材としては例えば、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。なお基板80は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。基板80を形成することにより、例えば使用者の歩行や家具が配設されることによる傷の発生を抑制可能な化粧板100を提供することができる。
【0087】
床材は、家具が乗せられたりすることで傷がつけられやすい。このため、床材に用いられる化粧シートは、一般的な化粧シートと比較してより高い耐傷性が必要となる。薄膜でありながら硬度が高く耐傷付き性に優れた化粧シート10を用いて化粧板100を形成することで、床材に適した耐傷付き性に優れた化粧板を得ることができる。
【0088】
また、化粧板100において、プライマー層30を化粧シート10ではなく、基板80の一方の面に設け、基板80上のプライマー層を介して化粧シート10と基板80とが貼り合わされてもよい。なお、本実施形態においては、化粧シート10に基板80が貼り合わされているが、この化粧シート10は、表面保護層60において最表面が平坦な上塗り層162が設けられた化粧シート10であってもよいし、化粧シート10に代えて化粧シート11又は化粧シート12を用いて化粧板100を形成してもよい。
【0089】
<第四実施形態の効果>
本実施形態に係る化粧板100は、第一実施形態および第二実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(13)本実施形態の化粧板100は、化粧シート(化粧シート10,11,12)と、化粧シート10が少なくとも一方の表面に貼り合わされた基板とを備える
この構成によれば、化粧板100は、製造工程数の削減が可能であって、薄膜でありながら硬度が高く耐傷付き性に優れた化粧シートを用いた化粧板を得ることができる。
【実施例0090】
以下、本開示に係る化粧シートについて、実施例を挙げて説明する
なお、本開示は、下記の実施例1及び実施例2に限定されるものではない。
実施例では、以下の各実施例及び各比較例で説明する構成の化粧シートを作製し、床材用の基板上に貼り合せて化粧シートの評価を行った。
【0091】
<実施例1>
実施例1は、次の材料と手順で、評価用の化粧シートを作製した。
透明原反層20の透明コア層22(コア層)には、ポリプロピレン樹脂、耐候剤をブレンドしたものを使用し、表面側透明スキン層21A及び裏面側透明スキン層21B(スキン層)にはナノサイズの添加剤としての分散剤を添加する処方(分散剤ナノ仕様)の透明ポリプロピレン樹脂を使用し、「表面側透明スキン層21A:透明コア層22:裏面側透明スキン層21B」が「0.5:9:0.5」の厚み比率になるように同時押出し、総厚150μmで透明原反層20を作製した。
【0092】
透明原反層20の裏面側に、グラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷して、印刷絵柄層50を付与した後、隠蔽を出すためにグラビア印刷法により、ウレタン樹脂で酸化チタンの白顔料を混ぜた2液ウレタン系樹脂で着色層40を付与した。
さらに、グラビア印刷法により、固形分量が1g/mとなるようにウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層30を形成した。
その後、透明原反層20の表面側に、コロナ処理を施した後、表面保護層60(トップコート層)として、下塗り層61、上塗り層62を形成した。具体的には、艶の低いアクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製アクリルウレタン樹脂)を6μmの厚さになるよう塗布し下塗り層61とした。また、下塗り層61の上にアクリル系紫外線硬化型樹脂(DICグラフィック社製アクリル系紫外線硬化型樹脂)を印刷絵柄層50と同調した絵柄で印刷して上塗り層62とし、評価用の化粧シートを作製した。
【0093】
<実施例2>
透明原反層20の総厚を90μmとした以外は、実施例1と同様にして、評価用の化粧シートを作製した。
【0094】
<実施例3>
表面保護層60において、艶の高い上塗り層62を印刷絵柄層50と同調した木目導管柄で印刷し、さらにエンボス部90を形成して部分的に下塗り層61を露出させた。これにより、表面保護層60の表面を、木目導管を模した凹凸形状とした。これ以外は、実施例1と同様にして、評価用の化粧シートを作製した。
【0095】
<比較例1>
透明原反層20を形成する透明ポリプロピレン樹脂に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加しなかった。これ以外は、実施例1と同様にして、評価用の化粧シートを作製した。
<比較例2>
透明原反層20を形成する透明ポリプロピレン樹脂に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加しなかった。これ以外は、実施例2と同様にして、評価用の化粧シートを作製した。
【0096】
(評価方法および評価基準)
上記して作製した評価用の化粧シートの評価方法は、次の通りである。
(1)スクラッチ試験
(2)引っ掻き硬度試験(鉛筆硬度)
(3)耐摩耗性試験
(4)耐キャスター性試験
【0097】
(スクラッチ試験)
スクラッチ試験は、各評価用化粧シートのそれぞれに対して、コインスクラッチ試験を行い、評価用化粧シートの表面に連続的な傷跡が生じなかった際の荷重を測定した。
なお、スクラッチ試験では、10円硬貨を評価シートの表面に当てて、荷重1Kgから試験を開始し、1Kgずつ徐々に荷重を増加し、4kgまで試験を行った。
【0098】
(引っ掻き硬度試験)
引っ掻き硬度試験は、各評価シートのそれぞれに対して、JISK5600-5-4:1999に規定する引っ掻き硬度(鉛筆法)試験により、各評価用化粧シートの表面に傷跡を生じなかった最も固い鉛筆の硬度(鉛筆硬度)を測定した。
【0099】
(耐摩耗性試験)
各評価用化粧シートを貼付けた化粧板を、「JAS フローリングの日本農林規格」に規定される耐摩耗試験にかけ、柄の消失が始まるまでの回転数を確認した。摩耗紙の交換は1000回転毎とした。
【0100】
(耐キャスター性試験)
各評価用化粧シートを貼付けた化粧板上で、鉄輪(直径40mm、1輪の幅9mm、2輪間の幅18mm)に25kgの重りで荷重をかけ(約245N)、1000回(1ストローク20cm以上)、キャスターを速度20cm/秒で動かした。その後、化粧板上の痕について観察した。
(評価基準)
スクラッチ試験においては、荷重が「1Kg」以上を合格とし、それ以外は不合格とした。
引っ掻き硬度試験においては、鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「B」以上を合格とし、それ以外は不合格とした。
耐摩耗性試験においては、「1000回転」以上を合格とし、それ以外は不合格とした。
耐キャスター性試験においては、「著しい割れが無い場合」を合格とし、それ以外は不合格とした。
【0101】
<評価結果>
評価用化粧シートの組成および評価結果を、表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
(実施例1から3、並びに比較例1、2)
実施例1から3、並びに比較例1、2の計5枚の評価用化粧シートのうち、実施例1から3の評価用化粧シートは、上記評価方法の(1)から(4)の全てが「合格」であった。すなわち、実施例1から3の評価用化粧シートは薄膜でありながら硬度が高く、耐傷付き性に優れていることが分かった。一方、比較例1、2の評価用化粧シートでは、上記評価方法の(1)から(4)のうち、少なくとも1つにおいて「不合格」であった。具体的には、比較例1の評価用化粧シートは、引っ掻き硬度試験の評価が「不合格」であり、比較例2の評価用化粧シートは、スクラッチ試験および引っ掻き硬度試験の評価が「不合格」であった。つまり、ナノサイズの添加剤(造核剤(分散剤)又は無機フィラー)が添加された化粧シートは、薄膜でありながらも、ナノサイズの添加剤が添加されていない化粧シートに比べて硬度が向上され、耐傷付き性に優れていることが分かった。
【0104】
また、実施例1、3と実施例2において、引っ掻き硬度試験で差が出たのは、評価用化粧シートの厚みが影響しているもの推測できる。すなわち、実施例1、3のものは、実施例2と比較し、評価用化粧シートの厚みが厚く、厚い方が、引っ掻き硬度試験において有利であるものと推測できる。
【0105】
なお、本開示の化粧シート及び化粧材は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
10、11、12 化粧シート
20、120、220 透明原反層
100 化粧板
22、222 透明コア層
21A、21B、121A、121B 透明スキン層
30 プライマー層
40 着色層
50 印刷絵柄層
60 表面保護層
61 下塗り層
62 上塗り層
80 基板
90 エンボス部
図1
図2
図3
図4
図5