IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社の特許一覧

特開2022-159908遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法
<>
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図1
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図2
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図3
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図4
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図5
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図6
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図7
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図8
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図9
  • 特開-遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159908
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び走行映像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
G05D1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064376
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏暢
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301AA10
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】車両と通信し車両を遠隔で運転する遠隔運転装置のオペレータの運転に係る操作性を向上させることが可能な遠隔運転システムを提案する。
【解決手段】この遠隔運転システムの遠隔運転装置は、運転に係る操作を入力するための運転操作装置と、表示装置と、情報処理装置と、を備えている。情報処理装置は、車両と遠隔運転装置の間の遅延時間を算出する処理と、現時点から所定時間経過時点までの運転操作装置の予測操作を算出する処理と、現時点までに入力された運転操作装置の操作による撮影時点から作用時点までの車両の第1予測走行経路、及び予測操作による作用時点以降の車両の第2予測走行経路を算出する処理と、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路を車両の走行映像に重畳して表示する処理と、を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の遠隔運転を行う遠隔運転システムであって、
前記車両に搭載され前記車両の走行映像を撮影するカメラと、
前記車両に搭載され前記車両の走行状態を検出するセンサと、
前記車両と通信し前記車両を遠隔で運転する遠隔運転装置と、
を含み、
前記遠隔運転装置は、
運転に係る操作を入力するための運転操作装置と、
表示装置と、
前記運転操作装置及び前記表示装置に接続された情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記カメラで撮影された前記走行映像を取得する処理と、
前記センサで検出された前記走行状態を取得する処理と、
前記車両と前記遠隔運転装置との間の通信及び情報処理に係る遅延時間を算出する処理と、
現時点までに入力された前記運転操作装置の操作の情報に基づいて、前記現時点から所定時間経過時点までの前記運転操作装置の予測操作を算出する処理と、
前記遅延時間に基づいて、前記現時点において入力される前記運転操作装置の操作が前記車両に作用する作用時点を算出する処理と、
前記走行状態の情報、前記運転操作装置の操作の情報、及び前記遅延時間に基づいて、前記現時点までに入力された前記運転操作装置の操作による前記走行映像の撮影時点から前記作用時点までの前記車両の第1予測走行経路を生成する処理と、
前記予測操作による前記作用時点以降の前記車両の第2予測走行経路を生成する処理と、
前記第1予測走行経路、及び前記第2予測走行経路を前記走行映像に重畳した表示を前記表示装置に表示する表示処理と、
を実行する
ことを特徴とする遠隔運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔運転システムであって、
前記情報処理装置は、
前記現時点における前記運転操作装置の操舵に係る操作が前記所定時間経過時点まで維持される場合の前記作用時点以降の前記車両の第3予測走行経路を生成する処理をさらに実行し、
前記表示処理において、前記第1予測走行経路、及び前記第2予測走行経路と併せて前記第3予測走行経路を表示する
ことを特徴とする遠隔運転システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遠隔運転システムであって、
前記遅延時間には、前記遠隔運転装置の操作を行うオペレータの操作に係る反応時間が含まれる
ことを特徴とする遠隔運転システム。
【請求項4】
車両と通信し前記車両を遠隔で運転する遠隔運転装置であって、
表示装置と、
運転に係る操作を入力するための運転操作装置と、
情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記車両の走行映像を取得する処理と、
前記車両の走行状態を取得する処理と、
前記車両と前記遠隔運転装置との間の通信及び情報処理に係る遅延時間を算出する処理と、
現時点までに入力された前記運転操作装置の操作の情報に基づいて、前記現時点から所定時間経過時点までの前記運転操作装置の予測操作を算出する処理と、
前記遅延時間に基づいて、前記現時点において入力される前記運転操作装置の操作が前記車両に作用する作用時点を算出する処理と、
前記走行状態の情報、前記運転操作装置の操作の情報、及び前記遅延時間に基づいて、前記現時点までに入力された前記運転操作装置の操作による前記走行映像の撮影時点から前記作用時点までの前記車両の第1予測走行経路を生成する処理と、
前記予測操作による前記作用時点以降の前記車両の第2予測走行経路を生成する処理と、
前記第1予測走行経路、及び前記第2予測走行経路を前記走行映像に重畳した表示を前記表示装置に表示する表示処理と、
を実行する
ことを特徴とする遠隔運転装置。
【請求項5】
請求項4に記載の遠隔運転装置であって、
前記情報処理装置は、
前記現時点における前記運転操作装置の操舵に係る操作が前記所定時間経過時点まで維持される場合の前記作用時点以降の前記車両の第3予測走行経路を生成する処理をさらに実行し、
前記表示処理において、前記第1予測走行経路、及び前記第2予測走行経路と併せて前記第3予測走行経路を表示する
ことを特徴とする遠隔運転装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の遠隔運転装置であって、
前記遅延時間には、前記遠隔運転装置の操作を行うオペレータの操作に係る反応時間が含まれる
ことを特徴とする遠隔運転装置。
【請求項7】
車両と通信し前記車両を遠隔で運転する遠隔運転装置に備える表示装置に前記車両の走行映像を表示する走行映像表示方法であって、
運転操作装置は、前記遠隔運転装置に備えられ運転に係る操作を入力するための装置であり、
前記走行映像を取得する処理と、
前記車両の走行状態を取得する処理と、
前記車両と前記遠隔運転装置との間の通信及び情報処理に係る遅延時間を算出する処理と、
現時点までに入力された前記運転操作装置の操作の情報に基づいて、前記現時点から所定時間経過時点までの前記運転操作装置の予測操作を算出する処理と、
前記遅延時間に基づいて、前記現時点において入力される前記運転操作装置の操作が前記車両に作用する作用時点を算出する処理と、
前記走行状態の情報、前記運転操作装置の操作の情報、及び前記遅延時間に基づいて、前記現時点までに入力された前記運転操作装置の操作による前記走行映像の撮影時点から前記作用時点までの前記車両の第1予測走行経路を生成する処理と、
前記予測操作による前記作用時点以降の前記車両の第2予測走行経路を生成する処理と、
前記第1予測走行経路、及び前記第2予測走行経路を前記走行映像に重畳した表示を前記表示装置に表示する表示処理と、
をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする走行映像表示方法。
【請求項8】
請求項7に記載の走行映像表示方法であって、
前記現時点における前記運転操作装置の操舵に係る操作が前記所定時間経過時点まで維持される場合の前記作用時点以降の前記車両の第3予測走行経路を生成する処理をさらに含み、
前記表示処理において、前記第1予測走行経路、及び前記第2予測走行経路と併せて前記第3予測走行経路を表示する
ことを特徴とする走行映像表示方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の走行映像表示方法であって、
前記遅延時間には、前記遠隔運転装置の操作を行うオペレータの操作に係る反応時間が含まれる
ことを特徴とする走行映像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の遠隔運転を行う遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び車両の遠隔運転に用いられる表示の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遠隔操縦装置を操作した場合に、当該操作が示す動作を移動装置が実際に行う時を未来時点として、未来時点における移動装置から各位置までの距離感を人がつかみやすい画像を表示する遠隔操縦用表示装置が開示されている。
【0003】
この遠隔操縦用表示装置は、移動装置の遠隔操縦時に、移動装置から見た環境を表示するための装置であって、移動装置の進行方向側の環境を表す環境データに基づいて3次元のCG画像を生成する画像生成装置と、生成されたCG画像を表示するディスプレイと、を備えている。画像生成装置は、移動装置と遠隔操縦装置との通信時間を考慮した遅延時間に基づく未来時点における移動装置の未来位置を予測し、予測した未来位置から見たCG画像を生成する。
【0004】
また、本発明が属する技術分野の技術レベルを表す先行技術文献として、下記の特許文献2及び特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-049888号公報
【特許文献2】特開2018-106676号公報
【特許文献3】特開2010-61346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両の遠隔運転においては、普通に運転する場合と比べて運転感覚が十分に得られないため、運転に係る操作が難しくなる。このため、遠隔運転装置(遠隔操縦装置)のオペレータの操作性を向上するための技術が求められている。
【0007】
特許文献1に開示されている遠隔操縦用表示装置では、予測した未来位置から見たCG画像がディスプレイに表示される。しかしながら、車両(移動装置)と遠隔運転装置との間の通信のために、遠隔運転装置の操作が遅れて車両に作用する遠隔運転においては、車両の走行映像(CG画像)が表示されているだけでは、オペレータの操作性が十分でない虞がある。特に未来位置以降において、車両が遠隔運転操作の装置によってどのように走行することとなるのかをオペレータが確認することができない。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、遠隔運転装置のオペレータの操作性を向上することが可能な遠隔運転システム、遠隔運転装置、及び遠隔運転に用いられる表示の表示方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る遠隔運転システムは、車両の遠隔運転を行うシステムであって、車両に搭載され車両の走行映像を撮影するカメラと、車両に搭載され車両の走行状態を検出するセンサと、車両と通信し車両を遠隔で運転する遠隔運転装置と、を含んでいる。遠隔運転装置は、運転に係る操作を入力するための運転操作装置と、表示装置と、運転操作装置及び表示装置に接続された情報処理装置と、を備えている。
【0010】
情報処理装置は、カメラで撮影された走行映像を取得する処理と、センサで検出された走行状態を取得する処理と、車両と遠隔運転装置との間の通信及び情報処理に係る遅延時間を算出する処理と、現時点までに入力された運転操作装置の操作の情報に基づいて、現時点から所定時間経過時点までの運転操作装置の予測操作を算出する処理と、遅延時間に基づいて、現時点において入力される運転操作装置の操作が車両に作用する作用時点を算出する処理と、走行状態の情報、運転操作装置の操作の情報、及び遅延時間に基づいて、現時点までに入力された運転操作装置の操作による撮影時点から作用時点までの車両の第1予測走行経路を生成する処理と、予測操作による作用時点以降の車両の第2予測走行経路を生成する処理と、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路を走行映像に重畳した表示を表示装置に表示する表示処理と、を実行する。
【0011】
情報処理装置は、現時点における運転操作装置の操作に係る操作が所定時間経過時点まで維持される場合の作用時点以降の車両の第2予測走行経路を生成する処理をさらに実行しても良い。そして、表示処理において、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路と併せて第3予測走行経路を表示しても良い。
【0012】
遅延時間は、遠隔運転装置の操作を行うオペレータの操作に係る反応時間を含んでいても良い。
【0013】
本開示の一態様に係る遠隔運転装置は、車両と通信し車両を遠隔で運転する装置である。この遠隔運転装置は、表示装置と、運転に係る操作を入力するための運転操作装置と、情報処理装置と、を備えている。
【0014】
情報処理装置は、車両の走行映像を取得する処理と、車両の走行状態を取得する処理と、車両と遠隔運転装置との間の通信及び情報処理に係る遅延時間を算出する処理と、現時点までに入力された運転操作装置の操作の情報に基づいて、現時点から所定時間経過時点までの運転操作装置の予測操作を算出する処理と、遅延時間に基づいて、現時点において入力される運転操作装置の操作が車両に作用する作用時点を算出する処理と、走行状態の情報、運転操作装置の操作の情報、及び遅延時間に基づいて、現時点までに入力された運転操作装置の操作による撮影時点から作用時点までの車両の第1予測走行経路を生成する処理と、予測操作による作用時点以降の車両の第2予測走行経路を生成する処理と、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路を走行映像に重畳した表示を表示装置に表示する表示処理と、を実行する。
【0015】
情報処理装置は、現時点における運転操作装置の操作に係る操作が所定時間経過時点まで維持される場合の作用時点以降の車両の第2予測走行経路を生成する処理をさらに実行しても良い。そして、表示処理において、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路と併せて第3予測走行経路を表示しても良い。
【0016】
本開示の一態様に係る走行映像表示方法は、車両と通信し車両を遠隔で運転する遠隔運転装置に備える表示装置に車両の走行映像を表示する方法である。この走行映像表示方法は、車両の走行映像を取得する処理と、車両の走行状態を取得する処理と、車両と遠隔運転装置との間の通信及び情報処理に係る遅延時間を算出する処理と、現時点までに入力された運転操作装置の操作の情報に基づいて、現時点から所定時間経過時点までの運転操作装置の予測操作を算出する処理と、遅延時間に基づいて、現時点において入力される運転操作装置の操作が車両に作用する作用時点を算出する処理と、走行状態の情報、運転操作装置の操作の情報、及び遅延時間に基づいて、現時点までに入力された運転操作装置の操作による撮影時点から作用時点までの車両の第1予測走行経路を生成する処理と、予測操作による作用時点以降の車両の第2予測走行経路を生成する処理と、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路を走行映像に重畳した表示を表示装置に表示する表示処理と、をコンピュータに実行させる。
【0017】
この走行映像表示方法は、現時点における運転操作装置の操舵に係る操作が所定時間経過時点まで維持される場合の作用時点以降の車両の第3予測走行経路を生成する処理をさらに含んでいても良い。そして、表示処理において、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路と併せて第3予測走行経路を表示しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、車両と遠隔運転装置との間の遅延時間を考慮した予測走行経路が走行映像に重畳された表示が表示装置に表示される。これにより、オペレータは、予測走行経路を認識することで、自身の操作により車両がどのように走行することが予測されているかを逐次確認することができ、遠隔運転に係る操作の難しさが低減する。延いては、オペレータの操作性を向上させることができる。
【0019】
また、予測走行経路は、遠隔運転装置において生成される。これにより、運転操作装置の操作の情報が、車両と遠隔運転装置との間の通信の影響を受けることなく、予測走行経路を生成することができる。延いては、予測走行経路を精度よく生成することができる。
【0020】
さらに、作用時点以降の予測走行経路を示す第2予測走行経路は、予測操作に基づいて生成されている。これにより、オペレータは、自身の操作の傾向により作用時点以降において車両がどのように走行することが予測されているかを逐次確認することができる。延いては、オペレータの操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態に係る遠隔運転システムの概要を説明するための概念図である。
図2】本実施の形態に係る遠隔運転システムの遠隔運転装置の表示装置に表示する走行映像の概要を説明するための概念図である。
図3】本実施の形態に係る遠隔運転システムの構成を説明するためのブロック図である。
図4図3に示す情報処理装置の構成を説明するためのブロック図である
図5】表示装置に走行映像を表示するための処理を示すフローチャートである。
図6】車両と遠隔運転装置との間の遅延時間を説明するための概念図である。
図7】情報処理装置のプロセッサが図5に示す予測走行経路生成処理において実行する処理を示すフローチャートである。
図8図7に示す予測操作算出処理において算出する予測操作の例を説明するための図である。
図9】本実施の形態の変形例1に係る遠隔運転システムにおいて表示装置に表示する走行映像の例を示す概念図である。
図10】本実施の形態の変形例2に係る遠隔運転システムにおいて表示装置に表示する走行映像の概要を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0023】
1.概要
1-1.遠隔運転システム
図1は、本実施の形態に係る遠隔運転システム10の概要を説明するための概念図である。遠隔運転システム10は、車両100の遠隔運転を行うシステムである。遠隔運転システム10は、車両100を遠隔で運転する遠隔運転装置200を含んでいる。車両100と遠隔運転装置200は、互いに情報の伝達を行うことができるように、通信ネットワークを構成している。
【0024】
車両100の遠隔運転は、オペレータOPが遠隔運転装置200を操作することにより行われる。ここで、車両100は、その他の手段により運転が行うことが可能な車両であっても良い。例えば、車両100に備える運転操作装置(ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル等)を操作することで手動運転が可能であっても良いし、車両100に備える制御装置により自律走行が行われても良い。つまり、車両100は、運転に係る制御権が遠隔運転装置200に移譲されたときにおいて遠隔運転が可能な車両であって良い。
【0025】
車両100は、カメラ110を備えている。カメラ110は、車両100の前方の走行領域を撮影することができるように搭載され、車両100の前方の走行映像RIMを撮影する。ただし、車両100は、その他の方向の走行映像RIMを撮影する別個のカメラを複数搭載していても良い。カメラ110が撮影した走行映像RIMの情報は、通信により遠隔運転装置200に伝達される。
【0026】
車両100は、車両100の内部の情報を検出する内界センサINSを備えている。内界センサは、少なくとも、車両100の走行状態(車速、加速度、ヨーレート等)を検出する。内界センサINSとして、車両100の車速を検出するための車輪速センサ、車両100の加速度を検出するための加速度センサ、車両100のヨーレートを検出するための角速度センサ等が例示される。内界センサINSが検出する走行状態の情報は、通信により遠隔運転装置200に伝達される。
【0027】
車両100は、その他のセンサを備え、検出する情報を通信により遠隔運転装置200に伝達しても良い。
【0028】
遠隔運転装置200は、オペレータOPに情報を通知する出力装置を備えている。出力装置には、少なくとも、オペレータOPに情報を通知するための種々の表示を行う表示装置DPUが含まれる。図1には、出力装置としてさらに、オペレータOPに情報を通知するための種々の音を発生する音響装置SDUが示されている。出力装置には、その他の装置が含まれていても良い。出力装置は、図1において図示していない遠隔運転装置200に備える情報処理装置により、出力(表示、音等)が制御される。
【0029】
表示装置DPUは、少なくとも、車両100から取得する走行映像RIMの表示を行う。表示装置DPUは、複数の表示部分DPを含み、それぞれの表示部分DPに異なる表示を行っても良い。
【0030】
音響装置SDUは、典型的には、表示装置DPUの表示に合わせて音を発生させる。例えば、走行映像RIMの表示に合わせて、車両100に係る環境音(外部環境音、エンジンの駆動音、ロードノイズ等)を発生させる。この場合、発生させる音は、車両100に搭載するマイクによって録音した音を車両100から取得して発生させても良いし、車両100から取得する走行状態の情報に基づいて遠隔運転装置200の情報処理装置が生成した音、あるいは選択した音を発生させても良い。
【0031】
遠隔運転装置200は、オペレータOPの操作を入力するための入力装置を備えている。入力装置には、少なくとも、車両100の運転に係る操作を入力するための運転操作装置ROUが含まれる。図1には、入力装置としてさらに、遠隔運転装置200の種々の操作に対応するスイッチSWDが示されている。スイッチSWDとして、表示装置DPUの表示を切り替えるためのスイッチ、車両100の遠隔運転を終了するスイッチ等が例示される。
【0032】
図1には、運転操作装置ROUとして、ステアリングホイールSTR、アクセルペダルACL、ブレーキペダルBRKが示されている。ステアリングホイールSTR、アクセルペダルACL、及びブレーキペダルBRKの操作により、車両100の遠隔運転(操舵、加速、制動)が行われる。
【0033】
オペレータOPは、通常、出力装置が通知する情報を認識し、認識した情報に基づいて入力装置の操作を行う。特に、オペレータOPは、表示装置DPUに表示されている走行映像RIMを視認しながら、車両100が所望の走行を行うように運転操作装置ROUの操作を行う。
【0034】
運転操作装置ROUに入力された操作の情報(操作情報)は、車両100に伝達される。車両100は、取得する操作情報に従って走行する。ここで、車両100の走行は、図1において図示していない車両100に備える制御装置が、操作情報に従って走行するための制御信号を車両100の各アクチュエータに伝達することで実現される。延いては、車両100の遠隔運転が実現される。
【0035】
1-2.予測走行経路の表示
オペレータOPは、遠隔運転装置200を介して車両100の遠隔運転を行うため、普通に運転する場合と比べて運転感覚を十分に得ることができない。このため、遠隔運転に係る操作は、普通に運転する場合と比べて難しくなる。これに対し、オペレータOPの操作性を向上させる手段として、表示装置DPUに表示する走行映像RIMに、遠隔運転装置200の操作によって車両100が走行することが予測される経路(以下、「予測走行経路」とも称する。)を重畳して表示することが考えられる。
【0036】
一方で、車両100と遠隔運転装置200との間の通信のために、表示装置DPUに表示される走行映像RIMは、一定時間過去に撮影された走行映像RIMとなる。また、運転操作装置ROUに入力された操作が車両100に作用するまでには遅れが生じる。このため、車両100と遠隔運転装置200との間の通信を考慮せずに、走行映像RIMに予測走行経路を重畳して表示すると、遠隔運転に係る操作の難しさを十分に低減することができない。延いては、オペレータOPの操作性を十分に向上させることができない。
【0037】
そこで、本実施の形態に係る遠隔運転システム10の遠隔運転装置200は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間を考慮して、予測走行経路の表示を行う。ここで、遅延時間は、車両100と遠隔運転装置200との間の通信及び情報処理に係る遅延時間が含まれる。遅延時間の詳細については後述する。
【0038】
図2は、遠隔運転装置200の表示装置DPUに表示する走行映像RIMの概要を説明するための概念図である。図2は、右にカーブする道路において、車両100の遠隔運転を行う場合を示している。ここで、図2の上部には、車両100の走行の状況を表す上面図を示し、図2の下部には、上面図に示す状況における表示装置DPUの表示を示している。図2の下部に示すように、表示装置DPUには、カメラ110が撮影した走行映像RIMが表示されている。さらに、第1予測走行経路PTR1(実線)、及び第2予測走行経路PTR2(点線)が走行映像RIMに重畳して表示されている。
【0039】
以下、表示装置DPUに表示されている走行映像RIMがカメラ110によって撮影された時点を「撮影時点」とも称する。また、撮影時点において撮影された走行映像RIMが表示装置DPUに表示された時点を「現時点」とも称する。さらに、現時点の走行映像RIMに対してオペレータOPにより入力される運転操作装置ROUの操作が車両100に作用する時点を「作用時点」とも称する。
【0040】
第1予測走行経路PTR1は、現時点までに入力された運転操作装置ROUの操作により車両100が走行することが予測される予測走行経路である。第1予測走行経路PTR1は、撮影時点から作用時点までの予測走行経路PTRを与える。
【0041】
第2予測走行経路PTR2は、現時点から所定時間経過時点までの運転操作装置ROUの操作の予測値(以下、「予測操作」とも称する。)により車両100が走行することが予測される予測走行経路である。なお、予測操作は、現時点までに入力された運転操作装置ROUの操作の情報に基づいて算出される。第2予測走行経路PTR2は、作用時点以降の予測走行経路PTRを与える。
【0042】
また、走行映像RIMには、作用時点を明示するためのマークをさらに表示しても良い。図2では、作用時点を明示するためのマークとして白の丸印が表示されている。
【0043】
ここで、走行映像RIMの撮影時点に対する現時点、及び作用時点は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間に依存している。従って、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間を考慮して生成される。
【0044】
なお、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2は遠隔運転装置200において生成される。従って、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2の生成に際して、現時点までに入力された運転操作装置ROUの操作の情報が車両100と遠隔運転装置200との間の通信の影響を受けることはない。
【0045】
オペレータOPは、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を認識することで、自身の操作により車両100がどのように走行することが予測されるかを逐次確認することができる。
【0046】
このように、本実施の形態に係る遠隔運転システム10の遠隔運転装置200は、車両100と遠隔運転装置200との間の通信が考慮された第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を走行映像RIMに重畳して表示する。これにより、遠隔運転に係る操作の難しさを低減し、オペレータOPの操作性を向上させることができる。
【0047】
2.構成
2-1.遠隔運転システム
図3は、本実施の形態に係る遠隔運転システム10の構成を説明するためのブロック図である。遠隔運転システム10は、車両100と、遠隔運転装置200と、を含んでいる。
【0048】
車両100は、カメラ110と、センサ類120と、制御装置130と、アクチュエータ類140と、通信装置150と、を備えている。制御装置130は、センサ類120、アクチュエータ類140、及び通信装置150と互いに情報を伝達することができるように構成されている。同様に、通信装置150は、カメラ110、センサ類120、及び制御装置130と互いに情報を伝達することができるように構成されている。典型的には、ワイヤーハーネスにより互いに電気的に接続された車載ネットワークが構成されている。
【0049】
カメラ110は、車両100の走行映像RIMを撮影し、撮影した走行映像RIMの情報を出力する。ここで、カメラ110が出力する走行映像RIMの情報には、走行映像RIMの撮影時刻の情報が含まれる。カメラ110は、少なくとも車両100の前方の走行映像RIMを撮影する。ただし、カメラ110には、その他の方向の走行映像を撮影するカメラが含まれていても良い。この場合、カメラ110は、複数のカメラにより構成される系を示す。
【0050】
センサ類120は、車両100の運転環境の情報を検出し、検出情報を出力するセンサの類である。センサ類120は、内界センサINSを含んでいる。内界センサINSは、少なくとも車両100の走行状態を検出する。つまり、センサ類120が出力する検出情報には、少なくとも車両100の走行状態の情報が含まれる。ここで、内界センサINSが検出する走行状態の情報には、走行状態を検出した時刻の情報が含まれる。センサ類120に含まれるその他のセンサとして、車両100の周囲環境(先行車、車線、障害物等)の情報を検出するセンサであるミリ波レーダー、センサカメラ、LiDAR等が例示される。
【0051】
制御装置130は、取得する情報に基づいて車両100の制御に係る種々の処理を実行し、制御信号を生成して出力する。制御装置130は、典型的には、メモリとプロセッサとを備えるECU(Electronic Control Unit)である。メモリは、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、プロセッサで実行可能なプログラムやプログラムに係る種々のデータを記憶するROM(Read Only Memory)と、を含んでいる。制御装置130が取得する情報は、メモリに記憶される。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出し、メモリから読み出す種々のデータに基づいてプログラムに従う処理を実行する。
【0052】
制御装置130が取得する情報には、センサ類120から取得する検出情報と、通信装置150から取得する通信情報と、が含まれる。特に、取得する通信情報には、遠隔運転装置200に備える運転操作装置ROUの操作の情報(操作情報)が含まれる。ただし、その他の情報を取得しても良い。例えば、図3において図示していない車両100に備える手動運転のための運転操作装置やHMI装置から取得する情報が含まれていても良い。
【0053】
制御装置130は、少なくとも取得した操作情報に従う車両100の走行を実現するための処理を実行する。つまり、取得した操作情報(操舵角、アクセル開度、ブレーキペダル踏み込み量等)に応じた制御信号を生成して出力する。
【0054】
なお、制御装置130が実行する種々の処理は、1つのプログラムの部分として与えられていても良いし、それぞれの処理毎、又は一群の処理毎に別個のプログラムにより与えられても良い。あるいは、それぞれの処理、又は一群の処理が、別個のECUにより実行されても良い。この場合、制御装置130は、複数のECUにより構成される系を示し、それぞれのECUは、処理の実行に際して必要な情報を取得することができる程度に、互いに情報を伝達することができるように構成される。
【0055】
アクチュエータ類140は、制御装置130から与えられる制御信号に従って動作するアクチュエータの類を示す。アクチュエータ類140は、例えば、エンジン(内燃機関、電気モータ、又はそれらのハイブリット等)を駆動するアクチュエータ、車両100に備えるブレーキ機構を駆動するアクチュエータ、車両100のステアリング機構を駆動するアクチュエータを含んでいる。アクチュエータ類140に含まれるそれぞれのアクチュエータが制御信号に従って動作することにより、制御装置130による車両100の種々の制御が実現される。特に、遠隔運転装置200による車両100の遠隔運転が実現される。
【0056】
通信装置150は、車両100の外部の装置と通信を行うことで種々の情報(通信情報)の送受信を行う装置である。通信装置150は、少なくとも遠隔運転装置200と情報の送受信を行うことができる。典型的には、遠隔運転装置200が接続する基地局と電波による移動体通信を行う装置である。ただし、通信装置150は、その他の形態の装置を含んでいても良い。例えば、車車間通信や路車間通信を行う装置、GPS(Global Positioning System)受信機等を含んでいても良い。この場合、通信装置150は、複数の装置を含む類を示す。
【0057】
通信装置150が送信する通信情報には、少なくともカメラ110から取得する走行映像RIMの情報、及び内界センサINSから取得する走行状態の情報が含まれる。通信装置150が受信する通信情報には、少なくとも運転操作装置ROUの操作情報が含まれる。通信装置150は、受信した通信情報を出力する。
【0058】
遠隔運転装置200は、出力装置210と、入力装置220と、情報処理装置230と、通信装置250と、を備えている。情報処理装置230は、出力装置210、入力装置220、及び通信装置250と互いに情報を伝達することができるように構成されている。同様に、通信装置250は、情報処理装置230、及び入力装置220と互いに情報を伝達することができるように構成されている。
【0059】
出力装置210は、遠隔運転装置200のオペレータOPに情報を通知するための出力を行う装置の類である。出力装置210は、情報処理装置230から与えられる制御信号に従って動作する。出力装置210は、少なくとも表示装置DPUを含んでいる。ただし、その他の装置を含んでいても良い。例えば、図1において示す音響装置SDUを含んでいても良い。
【0060】
表示装置DPUは、オペレータOPに情報を通知するための種々の表示を行う。表示装置DPUは、少なくとも車両100の走行映像RIMを表示する。表示装置DPUの形態は特に限定されない。典型的には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ等が例示される。
【0061】
入力装置220は、遠隔運転装置200のオペレータOPの操作を入力するための装置の類である。入力装置220は、少なくとも運転操作装置ROUを含んでいる。ただし、その他の装置を含んでいても良い。例えば、図1において示すスイッチSWDを含んでいても良い。
【0062】
運転操作装置ROUは、遠隔運転に際して、車両100の運転(操舵、加速、制動)に係る操作を入力するための装置である。運転操作装置ROUは、典型的には、図1に示すようにステアリングホイールSTR、アクセルペダルACL、ブレーキペダルBRKにより構成される。運転操作装置ROUは、入力された操作の情報(操作情報)を出力する。ここで、運転操作装置ROUが出力する操作情報には、その操作が入力された時刻の情報が含まれる。
【0063】
情報処理装置230は、取得する情報に基づいて遠隔運転装置200に係る種々の処理を実行し、制御信号を生成して出力する。情報処理装置は、典型的には、メモリとプロセッサとを備えるコンピュータである。
【0064】
情報処理装置230が取得する情報には、運転操作装置ROUから取得する操作情報と、通信装置250から取得する通信情報と、が含まれる。特に、取得する通信情報には、車両100に備えるカメラ110が撮影する走行映像の情報、及び内界センサINSが検出する走行状態の情報が含まれる。情報処理装置が取得する情報は、メモリに記憶される。特に、情報処理装置230は、一定期間の操作情報、及び走行状態の情報のデータを記憶する。
【0065】
情報処理装置230は、少なくとも出力装置210の出力を制御するための処理を実行する。特に、情報処理装置230は、表示装置DPUに走行映像RIMを表示するための処理を実行する。
【0066】
通信装置250は、車両100と通信し種々の情報(通信情報)の送受信を行う装置である。典型的には、車両100と電波による移動体通信を行う基地局が接続する通信ネットワークに接続し、基地局を介して情報の送受信を行う装置である。
【0067】
通信装置250が送信する通信情報には、少なくとも運転操作装置ROUの操作情報が含まれる。通信装置250が受信する通信情報には、少なくともカメラ110が撮影する走行映像の情報、及び内界センサINSが検出する走行状態の情報が含まれる。通信装置250は、受信した通信情報を出力する。
【0068】
なお、遠隔運転装置200に含まれるそれぞれの装置は、一体的でなくても良い。例えば、情報処理装置230は、インターネット等の通信ネットワーク上に構成されたサーバ(仮想的であっても良い)であって、出力装置210、入力装置220、及び通信装置250と通信することで互いに情報の伝達を行っても良い。あるいは、さらに出力装置210と、入力装置220と、はそれぞれが分離して構成され、通信により互いに情報の伝達を行っても良い。
【0069】
2-2.情報処理装置
図4は、情報処理装置230の構成を説明するためのブロック図である。情報処理装置230は、メモリ231と、プロセッサ232と、を備えている。
【0070】
メモリ231は、走行映像データIMDと、操作情報データOPDと、走行状態データDRDと、走行映像表示プログラムDPGを記憶している。ただし、その他のデータ又はプログラム、あるいはその他の情報を記憶していても良い。
【0071】
走行映像データIMDは、通信装置250を介してカメラ110から取得する走行映像RIMのデータである。操作情報データOPDは、運転操作装置ROUから取得する操作情報の一定期間の時系列データである。走行状態データDRDは、通信装置250を介して内界センサINSから取得する走行状態の情報の一定期間の時系列データである。ここで、操作情報データOPD、及び走行状態データDRDについて、データを記憶する期間は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間に対して十分に長い期間である。例えば、10secの間の時系列データを記憶する。
【0072】
走行映像表示プログラムDPGは、表示装置DPUに走行映像RIMを表示するための処理に係るプログラムである。
【0073】
プロセッサ232は、メモリ231からプログラムを読み出し、メモリ231から読み出す種々のデータに基づいてプログラムに従う処理を実行する。特に、プロセッサ232は、メモリ231から走行映像表示プログラムDPGを読み出し、走行映像表示プログラムDPGに従って表示装置DPUに走行映像RIMを表示するための処理を実行する。これにより、表示装置DPUに走行映像RIMを表示するための制御信号が生成され、生成された制御信号は情報処理装置230から表示装置DPUに伝達される。そして、表示装置DPUが与えられた制御信号に従って表示を行うことで、表示装置DPUに走行映像RIMが表示される。プロセッサ232が走行映像表示プログラムDPGに従って実行する処理の詳細については後述する。
【0074】
3.機能
3-1.走行映像表示プログラムに係る処理
図5は、プロセッサ232が走行映像表示プログラムDPGに従って実行する処理を示すフローチャートである。図5に示す処理は、遠隔運転装置200の起動と同等のタイミングで開始され、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0075】
ステップS100において、プロセッサ232は、走行映像RIMの表示に必要なデータを取得する。少なくとも、走行映像データIMD、操作情報データOPD、及び走行状態データDRDを取得する。ステップS100の後、処理はステップS200に進む。
【0076】
ステップS200において、プロセッサ232は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間を算出する。算出する遅延時間の詳細については後述する。ステップS200の後、処理はステップS300に進む。
【0077】
ステップS300において、プロセッサ232は、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路を生成する。ステップS300における処理の詳細については後述する。ステップS300の後、処理はステップS400に進む。
【0078】
ステップS400において、プロセッサ232は、第1予測走行経路、及び第2予測走行経路を走行映像RIMに重畳した表示を表示装置DPUに表示するための処理を実行する。ステップS400の後、所定の周期経過後に再度ステップS100に戻り処理を繰り返す。
【0079】
3-2.遅延時間の算出
プロセッサ232は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間を算出する(図5におけるステップS200)。図6は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間を説明するための概念図である。
【0080】
図6は、撮影時点から作用時点までの車両100、遠隔運転装置200、及びオペレータOPそれぞれにおけるイベント(丸印で示す)を時間の流れに沿って示し、それぞれのイベント間で経過する時間をdti(i=1~7)で示している。つまり、プロセッサ232は、それぞれのdtiを車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間として算出する。
【0081】
dt1は、走行映像RIMが撮影された撮影時点から、通信情報(撮影時点での走行映像RIM、及び走行状態の情報を含む)の送信が行われるまでに経過する時間である。つまり、車両100において、通信情報の送信のための情報処理に係る遅延時間である。これは、カメラ110、センサ類120、及び通信装置150の処理時間の計測により得ることができる。過去に計測された処理時間のデータの平均値や、データから推測される値を用いても良い。さらに、カメラ110のシャッタースピードを遅延時間に加えても良い。この場合、例えば、カメラ110の設定情報を取得することによりシャッタースピードを与えることができる。
【0082】
dt2は、通信情報が車両100から送信されて遠隔運転装置200が受信するまでに経過する時間である。つまり、車両100と遠隔運転装置200との間の通信のアップリンクに係る遅延時間である。これは、車両100が通信情報を送信する時刻と、遠隔運転装置200が通信情報を受信する時刻との差分により与えることができる。このとき、例えば、車両100と遠隔運転装置200とが構成する通信ネットワーク上のNTPサーバを用いて車両100及び遠隔運転装置200の時刻を同期させることで、差分を精度良く与えることができる。
【0083】
dt3は、通信情報を遠隔運転装置200が受信してから、撮影時点での走行映像RIMを表示装置DPUに表示するまでに経過する時間である。つまり、遠隔運転装置200において、走行映像RIMの表示のための情報処理に係る遅延時間である。これは、表示装置DPU、情報処理装置230、及び通信装置250の処理時間の計測により得ることができる。過去に計測された処理時間のデータの平均値や、データから推測される値を用いても良い。さらに、表示装置DPUに表示する走行映像RIMのデータ量を考慮して遅延時間の推測を行っても良い。
【0084】
dt4は、走行映像RIMが表示装置DPUに表示(現時点)されてから、その走行映像RIMをオペレータOPが認識して運転操作装置ROUの操作を行うまでに経過する時間である。つまり、オペレータOPの操作に係る反応時間である。これは、一般的な人の反応時間により与えることができる。例えば、200msとする。
【0085】
dt5は、オペレータOPの操作が運転操作装置ROUに入力されてから、通信情報(入力された操作の情報を含む)の送信が行われるまでに経過する時間である。つまり、遠隔運転装置200において、通信情報の送信のための情報処理に係る遅延時間である。これは、遠隔運転装置200、及び通信装置250の処理時間の計測により得ることができる。過去に計測された処理時間のデータの平均値や、データから推測される値を用いても良い。
【0086】
dt6は、通信情報が遠隔運転装置200から送信されて車両100が受信するまでに経過する時間である。つまり、車両100と遠隔運転装置200との間の通信のダウンリンクに係る遅延時間である。これは、dt6と同様に与えることができる。
【0087】
dt7は、遠隔運転装置200が通信情報を受信してから、現時点における走行映像RIMに対して入力された運転操作装置ROUの操作に応じてアクチュエータ類140が駆動する(作用時点)までに経過する時間である。つまり、車両100において、アクチュエータ類140の駆動を行うための情報処理に係る遅延時間である。これは、制御装置130、及び通信装置150の処理時間の計測により得ることができる。過去に計測された処理時間のデータの平均値や、データから推測される値を用いても良い。さらに、アクチュエータ類140の駆動時間を遅延時間に加えても良い。この場合、例えば、アクチュエータ類140に含まれるそれぞれのアクチュエータの仕様から駆動時間を与えることができる。
【0088】
なお、プロセッサ232は、それぞれのdtiを算出して更新する頻度は、それぞれのdtiで異なっていても良い。例えば、dt2やdt6は、遅延時間の算出を行う毎に更新する一方で、dt5やdt7は所定のタイミングにおいて更新を行っても良い。
【0089】
以下、dt1~dt7の合計の遅延時間を「総合遅延時間」とも称する。また、dt1~dt3の合計の遅延時間を「表示遅延時間」とも称する。dt4~dt7の合計の遅延時間を「作用遅延時間」とも称する。
【0090】
3-3.予測走行経路生成
プロセッサ232は、走行映像RIMに重畳して表示する第1予測走行経路、及び第2予測走行経路を生成する処理(以下、「予測走行経路生成処理」とも称する。)を実行する(図5におけるステップS300)。図7は、プロセッサ232が予測走行経路生成処理において実行する処理を示すフローチャートである。
【0091】
ステップS310において、プロセッサ232は、予測操作を算出する。予測操作は、現時点から所定時間経過時点までの運転操作装置ROUの操作の予測値であり、現時点までに入力された運転操作装置ROUの操作の情報に基づいて算出される。ここで、予測操作は、運転操作装置ROUに含まれる装置(ステアリングホイールSTR、アクセルペダルACL、ブレーキペダルBRK等)それぞれについて算出される。また、所定時間は、走行映像表示プログラムDPGにあらかじめ与えられる時間であり、本実施の形態に係る遠隔運転システム10が採用される環境に合わせて実験的に最適に定められる。
【0092】
図8は、ステアリングホイールSTRによる操舵に係る操作について算出する予測操作の例を説明するための図である。図8では、ステアリングホイールSTRを時計回りの方向に操舵している場合を示し、現時点においてその操舵に係る操作が途中である場合を示している。例えば、右にカーブする道路を走行しようとしている場合である。
【0093】
いま、図8に示すように、操舵角が一定の増加量をもって増加するようにステアリングホイールSTRの操作が現時点まで入力されているとする。このとき、プロセッサ232は、図8に示すように、所定時間経過時点まで操舵角が同等の増加量をもって増加するステアリングホイールSTRの操作を予測操作として算出する。あるいは、カルマンフィルタを用いて予測操作を推定しても良い。または、車両100の周囲環境の情報を考慮しても良い。例えば、走行する道路の形状を考慮して、予測操作を算出しても良い。
【0094】
再度図7を参照する。ステップS310の後、処理はステップS320に進む。
【0095】
ステップS320において、プロセッサ232は、第1予測走行経路PTR1を生成する。第1予測走行経路PTR1は、現時点までに入力された運転操作装置ROUの操作により車両100が走行することが予測される予測走行経路である。第1予測走行経路PTR1は、操作情報データOPD、走行状態データDRD、及び車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間に基づいて生成される。ここで、遅延時間は、プロセッサ232が算出した遅延時間である。
【0096】
第1予測走行経路PTR1は、撮影時点から作用時点までの予測走行経路PTRを与える。例えばプロセッサ232は、遅延時間の情報に基づいて、撮影時点において車両100にまだ作用していない現時点までの運転操作装置ROUの操作の情報を操作情報データOPDから選択する。これは、現時点から総合遅延時間だけ過去の時点から現時点までに入力された運転操作装置ROUの操作の情報であるとして行うことができる。また撮影時点における車両100の走行状態の情報を走行状態データDRDから選択する。これは、現時点から表示遅延時間だけ過去の時点の走行状態の情報であるとして行うことができる。そして、選択された操作が、選択された走行状態である車両100に作用するとして第1予測走行経路PTR1を生成する。
【0097】
ステップS320の後、処理はステップS330に進む。
【0098】
ステップS330において、プロセッサ232は、第2予測走行経路PTR2を生成する。第2予測走行経路PTR2は、ステップS310において算出した予測操作により車両100が走行することが予測される予測走行経路である。第2予測走行経路PTR2は、操作情報データOPD、走行状態データDRD、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間、及び予測操作の情報に基づいて生成される。ここで、遅延時間は、プロセッサ232が算出した遅延時間である。
【0099】
第2予測走行経路PTR2は、作用時点以降の予測走行経路PTRを与える。例えばプロセッサ232は、操作情報データOPD、走行状態データDRD、及び遅延時間の情報に基づいて、作用時点における車両100の走行状態を予測する。ここで、作用時点は、現時点から作用遅延時間だけ経過した時点であるとして算出することができる。そして、予測操作が、作用時点以降において車両100に作用するとして第2予測走行経路PTR2を生成する。
【0100】
ステップS330の後、予測走行経路生成処理は終了する。なお、予測走行経路生成処理において生成される第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2は、地図上の位置の情報として与えられる。例えば、2次元の地図上の位置の情報で与えられる経路である(図2の上部を参照)。
【0101】
図7に示す処理の順序は一例であり、処理の順序を適当に入れ替えても良い。例えば、予測操作の算出(ステップS310)の処理を実行する前に、第1予測走行経路の生成(ステップS320)の処理を実行しても良い。その他、作用時点を算出する処理を、第1予測走行経路の生成(ステップS320)の処理の前にあらかじめ実行しても良い。
【0102】
3-4.表示処理
プロセッサ232は、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を走行映像RIMに重畳した表示を表示装置DPUに表示するための処理を実行する(図5におけるステップS400)。この処理において、プロセッサ232は、走行映像RIMに重畳した表示となるように、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2の座標変換を行う。そして、走行映像RIMを表示装置DPUに表示するための制御信号を生成する。これにより、表示装置DPUに、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を走行映像RIMに重畳した表示が走行映像RIMに表示される(図2の下部を参照)。ここで、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2の座標変換は、典型的には、カメラ110の取り付け位置、及びカメラ110のモデルに基づいて行われる。
【0103】
4.効果
以上説明したように、本実施の形態に係る遠隔運転システム10の遠隔運転装置200は、車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間を考慮した第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を走行映像RIMに重畳して表示する。特に第2予測走行経路PTR2は、予測操作により車両100が走行することが予測される予測走行経路である。
【0104】
これにより、オペレータOPは、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を認識することで、自身の操作により車両100がどのように走行することが予測されているかを逐次確認することができ、遠隔運転に係る操作の難しさが低減する。延いては、オペレータOPの操作性を向上させることができる。
【0105】
特に、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2の生成に当たり考慮する車両100と遠隔運転装置200との間の遅延時間には、オペレータOPの運転操作装置ROUの操作に係る反応時間が含まれる。この反応時間は、遅延時間のうち大きな割合を占める部分である(4割程度)。従って、遅延時間として反応時間を考慮することにより、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2の精度をさらに向上させることができる。
【0106】
また、本実施の形態に係る遠隔運転システム10では、遠隔運転装置200において、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を生成する。従って、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2は、現時点までに入力されたすべての運転操作装置ROUの操作の情報を考慮して生成することができる。つまり、運転操作装置ROUの操作の情報が、車両100と遠隔運転装置200との間の通信の影響を受けることがない。延いては、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2を精度よく生成することができる。
【0107】
さらに、第2予測走行経路PTR2は、予測操作に基づいて生成されている。これにより、オペレータOPは、自身の操作の傾向により作用時点以降において車両100がどのように走行することが予測されているかを逐次確認することができる。延いては、オペレータOPの操作性を向上させることができる。
【0108】
5.変形例
本実施の形態に係る遠隔運転システム10は、以下のように変形した態様を採用しても良い。なお、以下、前述した内容においてすでに説明した事項については適宜省略する。
【0109】
5-1.変形例1
プロセッサ232は、走行映像RIMを表示装置DPUに表示するに当たり、車両100が、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2の特定の地点を通過することが予測される時間を示す表示をさらに行っても良い。図9は、本実施の形態の変形例1に係る遠隔運転システム10において表示装置DPUに表示する走行映像RIMの例を示す概念図である。図9に示すように、走行映像RIMには、予測走行経路PTR上の特定の地点において時間が表示されている。これは、表示されている時間経過後に車両100が対応する地点を通過することが予測されていることを示すものである。これにより、さらにオペレータOPの操作性を向上させることができる。
【0110】
5-2.変形例2
プロセッサ232は、予測走行経路生成処理において、現時点における運転操作装置ROUの操舵に係る操作が所定時間経過時点まで維持される場合の作用時点以降の予測走行経路を示す第3予測走行経路をさらに生成しても良い。そして、プロセッサ232は、第1予測走行経路PTR1、及び第2予測走行経路PTR2と併せて第3予測走行経路を走行映像RIMに重畳した表示を表示装置DPUに表示しても良い。
【0111】
例えばプロセッサ232は、操作情報データOPD、走行状態データDRD、及び遅延時間の情報に基づいて、作用時点における車両100の走行状態を予測する。そして、現時点における運転操作装置ROUの操舵に係る操作が、作用時点以降において維持され、車両100に作用するとして第3予測走行経路を生成する。
【0112】
図10は、本実施の形態の変形例2に係る遠隔運転システム10において表示装置DPUに表示する走行映像RIMの概要を説明するための概念図である。図10は、図2と同様の図を示している。図10に示すように、表示装置DPUに表示する走行映像RIMには、第3予測走行経路PTR3(2点鎖線)がさらに重畳して表示されている。これにより、オペレータOPは、予測操作だけでなく、現時点における運転操作装置ROUの操作によって車両100がどのように走行することが予測されているかを確認することがでる。延いては、さらにオペレータの操作性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0113】
10 遠隔運転システム
100 車両
110 カメラ
INS 内界センサ
200 遠隔運転装置
DPU 表示装置
RIM 走行映像
PTR1 第1予測走行経路
PTR2 第2予測走行経路
ROU 運転操作装置
230 情報処理装置
DRD 走行状態データ
IMD 走行映像データ
OPD 操作情報データ
OP オペレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10