(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159925
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】バスケット型内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/221 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61B17/221
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064400
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】503468972
【氏名又は名称】小林 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160370
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 鈴
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】ワイヤ形状が加工し易い形状であり取り込み空間で異物を取り込み易く取り込み空間を段階的に窄めることができるバスケット型内視鏡用処置具の提供。
【解決手段】可撓性シース1と、操作ワイヤ2と、複数本の弾性ワイヤの基端および先端を基端結束チップ14および先端結束チップ15で結束しているバスケット部10とを備え、バスケット部は、各弾性ワイヤ11a‐11eが第1ないし第4の線分12a‐12dに区分され弾性的に拡開して取り込み空間を等間隔で取り囲むよう形成され、各弾性ワイヤの第1の線分は基端結束チップよりフレア状に広がり取り込み空間の中程に対応する長軸の周りの楕円球面上に略等間隔となる位置に配され、各弾性ワイヤの第2の線分ないし第3の線分はシース延長線の周りに同一方向に向いた蛇行形状であり、各第4の線分は先端結束チップよりフレア状に拡開している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シースと、
前記可撓性シース内に進退自在に挿通された操作ワイヤと、
前記操作ワイヤの先端に設けられ3-8本の弾性ワイヤと前記弾性ワイヤの基端および先端を結束している基端結束チップおよび先端結束チップとからなるバスケット部とを備え、
前記バスケット部は、前記基端結束チップが前記可撓性シースの先端に位置する状態では前記3-8本の弾性ワイヤが弾性的に拡開して楕円球状または球状の取り込み空間を等間隔で取り囲むよう形成され、
さらに前記3-8本の弾性ワイヤのそれぞれは、
基端側から順に屈曲部によって第1ないし第4の線分に区分される二山の蛇行形状に形成され、
各前記弾性ワイヤの前記第1の線分が、前記基端結束チップよりフレア状に広がり前記第2の線分との屈曲部が前記基端結束チップと先端結束チップとを結ぶシース延長線の周りにかつシース延長線の中程に対応する楕円球面上に略等間隔となる位置に配され、
各前記弾性ワイヤの前記第4の線分が、前記先端結束チップよりフレア状に広がり、
各前記弾性ワイヤの前記二山の蛇行形状が、前記取り込み空間を先端結束チップ側から視たときに前記シース延長線の周りに同一方向に屈曲している
ことを特徴とするバスケット型内視鏡用処置具。
【請求項2】
第1の線分が、基端結束チップから線分中途までは曲率半径の中心が外側にあり、線分中途から第1の屈曲部までは曲率半径の中心が内側にあって取り込み空間に外接する形状であり、第4の線分が、先端結束チップから第3の屈曲部まで曲率半径の中心が内側にあって取り込み空間に外接する形状である
ことを特徴とする請求項1に記載のバスケット型内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記バスケット部が、前記取り込み空間と前記シース延長線との基端側交点から前記基端結束チップまでの距離と、前記取り込み空間と前記シース延長線との先端側交点から前記先端結束チップまでの距離とが、それぞれ2-6mmの範囲に設定されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバスケット型内視鏡用処置具。
【請求項4】
各前記弾性ワイヤの前記第1の線分と前記第2の線分とで形成される一山は前記第3の線分と前記第4の線分とで形成される一山よりも高く形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバスケット型内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡のチャネルを介して体腔内に挿入され、体腔内の結石等の異物を把持して除去するために用いられるバスケット型内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
バスケット型内視鏡用処置具は、両端を後端チップと先端チップとで纏められた複数本の弾性ワイヤを可撓性シース内に挿通された操作ワイヤの先端部に連結されてなるバスケット部を備え、操作ワイヤの進出操作により可撓性シースから突出する複数本の弾性ワイヤが外側に屈曲してワイヤ間隔を広げ、この状態の複数の弾性ワイヤが操作ワイヤの引退操作により閉じ合わさって可撓性シースの先端部内に収容される機能を有する。
【0003】
バスケット型内視鏡用処置具は、内視鏡チャネルに挿入され、内視鏡が透視下で胆管等の体腔内に挿入されていき、内視鏡の先端側部の開口が除去すべき結石等の異物が存在する体腔に対向したとき、内視鏡内のガイドワイヤが先行して先端側部の開口より異物が存在する体腔に進入するように操作され、後行して可撓性シースがガイドワイヤに係合案内されて異物が存在する体腔に進入し異物がある位置を通り越した位置で、ガイドワイヤが後退した後に、操作ワイヤの進出操作により可撓性シースから先方へ進出するバスケット部が複数本の弾性ワイヤを広げ、操作ワイヤの引退操作により結石などの異物の捕捉し、必要に応じて狭圧力により異物を破砕するようになっている。
【0004】
バスケット型内視鏡用処置具は、可撓性シースと、可撓性シース内に進退自在に挿通された操作ワイヤと、操作ワイヤの先端に設けられバスケット部であって複数本の弾性ワイヤの基端および先端を結束しているバスケット部とを備えている。そして、バスケット部は、可撓性シースの先端より突出した状態では弾性ワイヤが弾性的に拡開して取り込み空間を形成する。
【0005】
バスケット部は、体腔内で拡張し、その拡張状態を保持したまま体腔内を移動させることにより結石を取り込み、操作ワイヤの引き込み操作により取り込み空間を窄ませて結石を捕捉する。
【0006】
従来より、体腔内で移動されることにより弾性ワイヤが移動方向に対して交差している形状とすることにより、弾性ワイヤの脇を結石がすり抜けてしまうことなく異物と弾性ワイヤとの出会いが生じて結石を取り込み空間に取り込むことができる工夫が成されたバスケット部が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-285500号公報
【特許文献2】特開2004-188011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたバスケット型把持鉗子のバスケット部は、結石を取り込み易くするため複数の弾性ワイヤのそれぞれの先端側部分が菱形に形成された形状である。しかしながら、菱形部分を形成することは、製造上、非常に難しい。
【0009】
特許文献2に開示されたバスケット型把持鉗子のバスケット部は、4本のワイヤのそれぞれの先端側部分を屈曲形状として取り込み空間を形成し、これにより、異物と弾性ワイヤとの出会いが生じて異物を取り込み空間に取り込む構成である。しかしながら、このバスケット部は、ワイヤ間隔が先端側で大きく取り込み空間を窄ませるときに弾性ワイヤの脇を結石がすり抜けてしまう。具体的には、特許文献4の
図1および
図5に示されたバスケット部は、一の弾性ワイヤの2つの線分W1およびW2の屈曲部分と、一の弾性ワイヤに隣接する1つの線分W1との間の間口が大きく開いている。この間口は、バスケット部が窄んでいくときにP2の屈曲部が可撓性シースの先端に近づいていくから狭くならないので、異物を取り込み空間に取り込んでもこの間口から異物が抜け出てしまう。同様に、特許文献4の
図3および
図4に示されたバスケット部は、いずれも、一の弾性ワイヤの2つの線分W1、W2およびW3の屈曲部分と、一の弾性ワイヤに隣接する1つの線分W1との間の間口が大きく開いており、この間口は、バスケット部が窄んでいくときにP2の屈曲部が可撓性シースの先端に近づいていくから狭くならないので、異物を取り込み空間に取り込んでもこの間口から異物が抜け出てしまう。
【0010】
また、異物である結石には様々なサイズが存在するが、上述のバスケット型把持鉗子では、結石のサイズに合わせて取り込み空間のサイズを調節することが困難である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための案出されたものであり、経内視鏡的に体腔内に挿入され、体腔内の結石等の異物を把持して除去するために用いられ、ワイヤ形状が加工し易い形状であり取り込み空間で異物を取り込み捕捉し易く、取り込み空間を段階的に窄めることができるバスケット型内視鏡用処置具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の第1の発明態様に係るバスケット型内視鏡用処置具は、上記課題を解決するために、可撓性シースと、前記可撓性シース内に進退自在に挿通された操作ワイヤと、前記操作ワイヤの先端に設けられ3-8本の弾性ワイヤと前記弾性ワイヤの基端および先端を結束している基端結束チップおよび先端結束チップとからなるバスケット部とを備えている。
【0013】
そして、前記バスケット部は、前記基端結束チップが前記可撓性シースの先端に位置する状態では前記3-8本の弾性ワイヤが弾性的に拡開して楕円球状または球状の取り込み空間を等間隔で取り囲むよう形成されている。
【0014】
さらに、前記3-8本の弾性ワイヤのそれぞれは、基端側から順に屈曲部によって第1ないし第4の線分に区分される二山の蛇行形状に形成され、各前記弾性ワイヤの前記第1の線分が、前記基端結束チップよりフレア状に広がり前記第2の線分との屈曲部が前記基端結束チップと先端結束チップとを結ぶシース延長線の周りにかつシース延長線の中程に対応する楕円球面上に略等間隔となる位置に配され、各前記弾性ワイヤの前記第4の線分が、前記先端結束チップよりフレア状に広がり、各前記弾性ワイヤの前記二山の蛇行形状が、前記取り込み空間を先端結束チップ側から視たときに前記シース延長線の周りに同一方向に屈曲している構成である。
【0015】
本願発明の第2の発明態様に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部は、上記第1の発明態様に係る構成に加え、第1の線分が、基端結束チップから線分中途までは曲率半径の中心が外側にあり、線分中途から第1の屈曲部までは曲率半径の中心が内側にあって取り込み空間に外接する形状であり、第4の線分が、先端結束チップから第3の屈曲部まで曲率半径の中心が内側にあって取り込み空間に外接する形状とされた構成である。
【0016】
本願発明の第3の発明態様に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部は、上記第1または2の発明態様に係る構成に加え、前記取り込み空間と前記シース延長線との基端側交点から前記基端結束チップまでの距離と、前記取り込み空間と前記シース延長線との先端側交点から前記先端結束チップまでの距離とが、それぞれ2-6mmの範囲に設定されている構成である。
【0017】
本願発明の第4の発明態様に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部は、上記第1ないし3のいずれか1つの発明態様に係る構成に加え、各前記弾性ワイヤの前記第1の線分と前記第2の線分とで形成される一山は前記第3の線分と前記第4の線分とで形成される一山よりも高く形成されている構成である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、経内視鏡的に体腔内に挿入され、体腔内の結石等の異物を把持して除去するために用いられ、ワイヤ形状が加工し易い形状であり取り込み空間で異物を取り込み易く捕捉し易く、結石のサイズに合わせて取り込み空間を段階的に窄めることができるバスケット型内視鏡用処置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具の概略の原理図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部を先端外方より見た斜視図、(B)は側方から斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部の正面図、(B)は(A)のIIIB―IIIB矢視図、(C)は(A)のIIIC―IIIC矢視図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部を構成する1本の弾性ワイヤの正面図、(B)は(A)のIVB―IVB矢視図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部を構成する1本の弾性ワイヤの側面図である。
【
図6】(A)―(C)は本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部の操作ワイヤを進退操作していくバスケット部を構成する1本の弾性ワイヤの形状変化と取り込み空間が窄んでいく変化を示す変化図を示す。
【
図7】本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部で小さな異物を捕捉する変化図を示すものであって、(A)はバスケット部内に異物を取り込むところを示す図、(B)は操作ワイヤを進退操作し一段階程度窄んだバスケット部内に異物を取り込むところを示す図、(C)は操作ワイヤを進退操作し二段階程度窄んだバスケット部内に異物を取り込むところを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部で大きな異物を捕捉する変化図を示すものであって、(A)はバスケット部内に異物を取り込むところを示す図、(B)は操作ワイヤを進退操作し一段階程度窄んだバスケット部内に異物を取り込むところを示す図、(C)は操作ワイヤを進退操作し二段階程度窄んだバスケット部内に異物を取り込むところを示す図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部を先端外方から視た図であって、(A)は3本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(B)は4本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(C)は5本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(D)は6本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(E)は7本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(F)は8本の弾性ワイヤからなるバスケット部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るバスケット型内視鏡用処置具について図面を参照して説明する。
【0021】
[実施形態1]
[基本的構成]
図1に示すバスケット型内視鏡用処置具100は、可撓性シース1と、可撓性シース1内に進退自在に挿通された操作ワイヤ2と、可撓性シース1の基端部に連結して設けられ操作ワイヤ2の基端部を保持し操作ワイヤ2を進退操作する操作部3と、操作ワイヤ2の先端に延長するように設けられていて、可撓性シース1の先端部内に収容された状態と可撓性シース1の先方へ突出して
図2に示す三次元形状に拡開する状態とに変化するバスケット部10とを備えている。
【0022】
可撓性シース1は、コイルや樹脂等によって形成されかつ内視鏡チャネル内に挿通可能な可撓性を有する長尺円筒状に形成されている。
【0023】
操作ワイヤ2は、可撓性シース内に進退自在に挿通されている。操作ワイヤ2は、バスケット部10を構成する弾性ワイヤとは別体の撚り線からなる。操作ワイヤ2の先端は、基端結束チップ14の内部に差し込まれ半田付け、ロウ付け、レーザー溶接等により接続される。
【0024】
操作部3は、例えばポリカーボネート製の成形体である操作部本体4と、操作パイプ5aを有する把持部5を含んでいる。
【0025】
操作部本体4は、可撓性シース1が接続された薬液送給路6を有し、薬液送給路6の後端に注射器等が接続される注薬口7を有する。
【0026】
把持部5は、操作パイプ5aを操作部本体4の基端部を貫通して薬液送給路6内に延びていて操作ワイヤ2の基端部を収容しかつ固定されている。
【0027】
バスケット部10は、撚り線からなる5本の弾性ワイヤ11a―11eと、弾性ワイヤ11a―11eの基端を結束する基端結束チップ14と、弾性ワイヤ11a―11eの先端を結束する先端結束チップ15とからなる。弾性ワイヤ11a―11eの基端は基端結束チップ14に差し込まれ半田付け、ロウ付け、レーザー溶接等により接続される。弾性ワイヤ11a―11eの先端は先端結束チップ15に差し込まれ半田付け、ロウ付け、レーザー溶接等により接続される。
【0028】
把持部5を進退操作することによって操作ワイヤ2を可撓性シース1内の長手方向に移動させることができる。また、注薬口7に図示しない注射器等を取り付けて可撓性シース1内に薬液を送液できる。
【0029】
[特徴的構成]
バスケット型内視鏡用処置具100についての特徴的構成は、
図2-
図3に示すように、基端結束チップ14および先端結束チップ15により基端および先端を結束された5本の弾性ワイヤ11a―11eよりなるバスケット部10について、弾性ワイヤ11a―11eの三次元形状にある。
【0030】
図3に示すように、5本の弾性ワイヤ11a―11eは、可撓性シース1内に収容された状態から可撓性シース1の先方に突出されると弾性的に拡開して取り込み空間Kに等間隔で取り囲むように外接した状態になる。取り込み空間Kは、楕円球形状であるのが好ましい。
【0031】
バスケット部10は、取り込み空間Kとシース延長線Yとの基端側交点から基端結束チップ14までの距離H1と、取り込み空間Kとシース延長線Yとの先端側交点から先端結束チップ15までの距離H2は、それぞれ、2-6mmの範囲内の適宜の値とすることが望ましい。距離H1と距離H2のいずれが大きくても特に問題はない。
【0032】
各第1の線分12aは基端結束チップ14よりフレア状に拡開し、および各第4の線分12dは先端結束チップ15よりフレア状に拡開している。
【0033】
5本の弾性ワイヤ11a―11eのそれぞれは、基端側から順に屈曲部13a―13cによって第1ないし第4の線分12a―12dに区分される二山の蛇行形状に形成されている。
【0034】
第1の線分12aは、基端結束チップ14よりフレア状に広がり、第2の線分12bとの屈曲部13a(第1の線分12aの先端)が基端結束チップ14と先端結束チップ15とを結ぶシース延長線Yの周りにかつシース延長線Yの中程に対応する楕円球面上に略等間隔となる位置に配されている。
【0035】
図4(B)に示すように、5本の弾性ワイヤ11a―11eのそれぞれの第1の線分ないし第4の線分12b―12dは、取り込み空間Kを先端結束チップ15側から視たときにシース延長線Yの周りに同一方向に屈曲する二山の蛇行形状に形成されている(周方向に屈曲)。
【0036】
各弾性ワイヤ11a―11eの第1の線分12aと第2の線分12bとで形成される一山は第3の線分12cと第4の線分12dとで形成される一山よりも高くなるよう形成されていてもよく、略同一の高さに形成されていてもよい。第1の線分と第2の線分とで形成される山の頂角、第2の線分と第3の線分とで形成される谷の谷角、第3の線分と第4の線分とで形成される山の頂角は、それぞれ適宜の角度に設定されてよいが、頂角と谷角が90度プラスマイナス30度であることが好ましい。
【0037】
図5は、本発明の実施形態1に係るバスケット型内視鏡用処置具のバスケット部を構成する1本の弾性ワイヤの側面図であって、基端結束チップから延びる第1の線分の曲がり具合と、先端結束チップから延びる第5の線分の曲がり具合を説明するための図である。
【0038】
第1の線分12aは、基端結束チップ14よりフレア状に広がり、第4の線分12dは、先端結束チップ15よりフレア状に広がっている。第1の線分12aは、基端結束チップ14から線分中途までは曲率半径の中心が外側にあり(取り込み空間Kの側へ凸に湾曲)、線分中途から第1の屈曲部13aまでは曲率半径の中心が内側にあって(取り込み空間Kの外側へ向かって凸に湾曲)、第1の屈曲部13aにて取り込み空間Kに接線状に外接する形状である。同様に、第4の線分12dは、全長または少なくとも線分中途までは先端結束チップ15から曲率半径R3の中心が内側にあるようにフレア状に広がり、第3の屈曲部13cに至るところで取り込み空間Kに接線状に外接する位置に配される形状である。
【0039】
このような第1の線分12aのフレア形状と、第4の線分12dのフレア形状と、第1―第4の線分12a―12dよりなる二山形状は、協働して機能し、基端結束チップ14が可撓性シース1内を基端方向に移動するときにバスケット部10が窄んでいくときに山と谷の形状が逆転するなどして、取り込み空間Kが一機に扁平状に消失してしまうことがなく、取り込み空間Kが大中小の段階を経て窄んでいく機能を有し、異物を取り込む操作が良好に行える。
【0040】
換言すると、
図5に示すように、第1の線分12aと第4の線分12dが、基端結束チップ14と先端結束チップ15とを結ぶ線に関して同じ側にフレア状に広がり、かつ、第1の線分12aと第4の線分12dとを、滑らかな円弧の線分で繋げず、第2の線分12bと第3の線分12dで繋いでいるので、バスケット部10が窄んでいくときに取り込み空間Kが一機に扁平状に消失してしまうことがなく、第1の線分12a~第4の線分12dからなる大サイズの取込空間(
図6(A))、第2の線分12b~第4の線分12dからなる中サイズの取込空間(
図6(B))、第3の線分12c~第4の線分12dからなる小サイズの取込空間(
図6(C))の大中小の段階を経て窄んでいく機能を有するため、結石のサイズに合わせて取込空間のサイズを選択することができる。そして、第2―第4の線分12b―12dを取り込み空間Kの先端側半部に対応して配設しているので、隣同士の第1の線分12a間では異物を取り込み空間K内へ取り込み易い隙間を確保できるとともに、隣同士の第2―第4の線分12b―12d間では取り込み空間K内に取り組んだ異物を捕捉できる機能を有する。
【0041】
図6(A)―(C)は、操作ワイヤ2が可撓性シース1内を基端方向に移動することにより可撓性シース1内にバスケット部を構成する5本の弾性ワイヤが引き込まれていくときの、5本の中の1本の弾性ワイヤ11aの形状変化と、それに伴って大中小の段階に窄んでいく取り込み空間K1-K3の大きさを示し、併せて、取り込み空間S内に小さい異物Sを取り込む状態とを示す変化図を示す。
【0042】
このように、
図3に示す第1の線分と第5の線分を、
図5に示すような湾曲形状とすると、5本の弾性ワイヤ11a―11eが可撓性シース1内に引き込まれていくときに、5本の弾性ワイヤ11a―11eの中、取り込み空間Kを挟む対向位置の弾性ワイヤが曲がり状態を反転して重ね合わさり、もって、取り込み空間Kが一周に消失して異物Sを取り込み不能になることはなく、取り込み空間Sを
図6(A)―(C)に示すように大きさを段階的に窄ませていくことが安定して実現できる。
【0043】
図7(A)―(C)は試作したバスケット部10を構成する5本の弾性ワイヤが可撓性シース1内に引き込まれていくときの、5本の弾性ワイヤの形状変化と、併せて取り込み空間内に小さい異物Sを取り込む状態とを示す変化図を示す。
図7の(A)はバスケット部10内に異物Sを取り込むところ、(B)は操作ワイヤを進退操作し一段階程度窄んだバスケット部10内に異物Sを取り込むところ、(C)は操作ワイヤを進退操作し二段階程度窄んだバスケット部内に異物を取り込むところを示す。
【0044】
図8(A)―(C)は試作したバスケット部10を構成する5本の弾性ワイヤが可撓性シース1内に引き込まれていくときの、5本の弾性ワイヤの形状変化と、併せて取り込み空間内に取り込み得る最大級の異物Sを取り込む状態とを示す変化図を示す。
図8の(A)はバスケット部内に異物を取り込むところを示す図、(B)は操作ワイヤを進退操作し一段階程度窄んだバスケット部内に異物を取り込むところを示す図、(C)は操作ワイヤを進退操作し二段階程度窄んだバスケット部内に異物を取り込むところを示す図である。
【0045】
バスケット部10の具体的な大きさの一例について説明する。
図3(A)、
図4(A),(B)において、弾性ワイヤ11a―11eは、折癖を付与されることにより第1―第3の屈曲部13a―13cが形成されるとともに第1―第4の線分12a―12dが区分される。弾性ワイヤの全長を72mmとすると、基端結束チップ14と先端結束チップ15で結束される部分のそれぞれの長さが6mm程度、第4の線分12dが15mm、第2,第3の線分12b,12cがそれぞれ10mm、残りの長さ(約25mm)が第1の線分12aとなる。そして、5本の弾性ワイヤ11a―11eのそれぞれの、第1の線分12aと第2の線分12bとの屈曲部13aは、間隔が約3.5mmとなるように取り込み空間Kの周方向に等配置となる。なお、折癖の付与は形状記憶を利用してもよい。
【0046】
次に、上記構成のバスケット型内視鏡用処置具100を用いて異物S(例えば胆管結石)を回収する場合について説明する。
【0047】
まず、
図1に示すバスケット型内視鏡用処置具100のバスケット部10を可撓性シース1内に収納した状態で、例えば側視型の鉗子起上台付きの内視鏡のチャネル(不図示)を通じてバスケット部10を体腔内に導入する。そして、可撓性シース1の先端側を内視鏡の先端から突出させて十二指腸乳頭から胆管内へと挿入する。
【0048】
次いで、可撓性シース1の基端の把持部5を操作することにより操作ワイヤ2を前進させ、バスケット部10を可撓性シース1の先端から突出させる。これにより、バスケット部10は、5本の弾性ワイヤ11a―11eのそれぞれの弾性復元力により
図2(A),(B)に示すように拡開する。
【0049】
続いて、
図7(A)、
図8(A)に示すように、拡開したバスケット部10内に結石Sを取り込む。次いで、可撓性シース1の基端の操作手段を操作し操作ワイヤ2を後退させて、
図7(B)、
図8(B)に示すように、バスケット部10を可撓性シース1内に収納しながらバスケット部10を収縮させる。このとき、バスケット部10の5本の弾性ワイヤ11a―11eは、3次元的な広がっており、結石と接触する機会が格段に増大しているため、バスケット部10を収縮させても、変形したワイヤ間の隙間から結石がバスケット部10の外側に抜け出てしまう虞は殆どなく、バスケット部10内の結石とワイヤとが確実に接触して、バスケット部10内に結石を確実に保持することができる。その後、バスケット部を内視鏡と共に体腔内から抜去すれば、結石Sを回収することができる。
【0050】
このように、撚線からなる5本の弾性ワイヤ11a―11eによりバスケット部10を作っていることと、5本の弾性ワイヤ11a―11eの第1の線分12aが基端結束チップ14の近傍で外向きに湾曲し、および第4の線分12dが先端結束チップ15の近傍で外向きに湾曲していることにより、5本の弾性ワイヤ11a―11eからなるバスケット部10が楕円球状の取り込み空間Kを形成していることにより、結石を捕捉するため、バスケット部10を可撓性シース1内に引き込むときに力が側方に逃げようとしてバスケット部10に回転がかかりかつ取り込み空間Kが一気に潰れる恐れがなく形状を安定的に保持するので結石を取り込み易い。さらに、バスケット部10を可撓性シース1内に引き込んでいくとき、バスケット部10の回転は5本の弾性ワイヤ11a―11eのそれぞれの二山の蛇行形状により右回転―左回転―右回転となって取り込み空間Kを窄めていきバスケット部10内に取り込んだ結石をバスケット部10外へ取り零してしまう恐れがない。
【0051】
[その他の実施の形態]
[バスケット部の弾性ワイヤの本数について]
バスケット部は、5本の弾性ワイヤからなるものに限定されるものでなく、
図9に示すように、3-8本の弾性ワイヤからなるものであってよい。
図9(A)―(F)は、バスケット部を先端外方から視た図であって、(A)は3本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(B)は4本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(C)は5本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(D)は6本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(E)は7本の弾性ワイヤからなるバスケット部、(F)は8本の弾性ワイヤからなるバスケット部を示す。
【0052】
図9(A)―(F)に示すように、弾性ワイヤの本数が少ないほどバスケット部の二山の高さを大きく谷を深くすると、捕捉機能が得られるが、可撓性シース内に引き込む際の抵抗が大きくなるので屈曲部の力率半径を大きくするとよい。
【0053】
[バスケット部の異物取り込む空間について]
バスケット部の複数本の弾性ワイヤが取り囲む異物取り込む空間は、上記の実施形態1で示した楕円球面状に限定されるものでなく、球面状であってもよい。異物取り込む空間は、目に見えない仮想の空間である。複数本の弾性ワイヤの各第1の線分がフレア状に広がり、各第2の線分ないし第4の線分が楕円球面上の半分または球面上の半分を占めるように放射状に均等に周方向に配置されていれば、複数本の弾性ワイヤが楕円球面状または球面状の異物取り込む空間を略取り囲んでいると言えるものである。
【0054】
以上説明した実施の形態によれば、ワイヤ形状が加工し易い形状であり可撓性シースの先端部内から突出して弾性的に拡開したときに取り込み空間を形成しこの取り込み空間の基端側半部の操作ワイヤ間隔が大きく先端側半部では小さいことにより基端側半部で異物を取り込み易く先端側半部で捕捉し易く可撓性シース内にバスケット部を引き込んでいくときに取り込み空間を段階的に窄めることができ小さい異物から大きい異物まで取り零しが少ないから、経内視鏡的に体腔内に挿入され、体腔内の結石等の異物を把持して除去するための優れたバスケット型内視鏡用処置具を提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…可撓性シース
2…操作ワイヤ
3…操作部
4…操作部本体
5…把持部
5a…操作パイプ
6…薬液送給路
7…注薬口
10…バスケット部
11a―11d…弾性ワイヤ
12a―12d…第1ないし第4の線分
13a―13c…屈曲部
14…基端結束チップ
15…先端結束チップ
K,K1―K4…取り込み空間
Y…シース延長線
S…異物