(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159934
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】認知機能推定装置、認知機能推定方法、認知機能推定端末、認知機能推定システム装置、プログラム、及び、記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064422
(22)【出願日】2021-04-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 電気通信回線による発表: 掲載年月日:2020年10月26日 掲載アドレス:https://mic-tohokuictfair.go.jp/2020/10/26/exhibition001/ 電気通信回線による発表: 掲載年月日:2020年11月19日(アップロード日:2020年11月1日) 掲載アドレス:https://www.mic-tohokuictfair.go.jp https://mic-tohokuictfair.go.jp/2020/wp-content/uploads/2020/11/01_%E4%B8%80%E9%96%A2%E9%AB%98%E5%B0%82_%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E5%BF%9C%E6%8F%B4%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB.pdf 電気通信回線による発表: 掲載年月日:2021年2月5日 掲載アドレス:http://kosen-iot-contest.jp/2019/D_WiCON2019_kohobook.pdf 電気通信回線による発表: 掲載年月日:2021年3月10日 掲載アドレス:https://mic-ap2020.jp/exhibition_detail_all 学会でのWEB配信による発表 配信年月日:2020年11月13日~2020年11月15日 集会名、配信場所:日本機械学会 シンポジウム:スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス2020(WEB開催) 主催: 一般社団法人 日本機械学会 スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス部門 URL(学会トップページ) :https://www.jsme.or.jp/conference/shdconf20/ URL(開催プログラム) :https://www.jsme.or.jp/conference/shdconf20/doc/program.html URL(口頭発表が行われたページ) :http://jsme-proceedings.sakura.ne.jp/shd2020/SHD2020. URL(Zoomログイン用ポータルサイト、現在アクセス不可) :https://jsme-shd2.sakura.ne.jp/shd2020online
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 電気通信回線による発表: 掲載年月日:2020年11月11日 掲載アドレス:(講演論文集のダウンロードリンク) URL:https://jsme-proceedings.sakura.ne.jp/shd2020/SHD2020.zip(学会会期中に論文が公開されていたウェブページ) URL:https://jsme-shd.org/shd2020online/programproceedings/shd2020/(上記ウェブページのミラーサイト) URL:https://jsme-shd2.sakura.ne.jp/shd2020online/programproceedings/shd2020/
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(71)【出願人】
【識別番号】508090376
【氏名又は名称】リーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 彰汰
(72)【発明者】
【氏名】森 政男
(57)【要約】
【課題】検査対象者への負担が少なく、簡便に認知機能を推定できる認知機能推定装置を提供する。
【解決手段】本発明の認知機能推定装置は、足圧情報取得部、推定パラメータ算出部、判定部、および出力部を備え、
前記足圧情報取得部は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出部は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定部は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力部は、前記判定結果を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足圧情報取得部、推定パラメータ算出部、判定部、および出力部を備え、
前記足圧情報取得部は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出部は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定部は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力部は、前記判定結果を出力することを特徴とする、認知機能推定装置。
【請求項2】
前記推定パラメータ算出部は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定部は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、請求項1記載の認知機能推定装置。
【請求項3】
前記判定部は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、請求項1または2記載の認知機能推定装置。
【数1】
【請求項4】
さらに、認知機能推定部を備え、
前記推定パラメータ算出部は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定部は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力部は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、請求項1から3のいずれか一項に記載の認知機能推定装置。
【請求項5】
前記認知機能推定部は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、請求項4記載の認知機能推定装置。
【数2】
【請求項6】
前記認知機能推定部は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、請求項4記載の認知機能推定装置。
【数3】
【請求項7】
足圧情報取得工程、推定パラメータ算出工程、判定工程、および出力工程を備え、
前記足圧情報取得工程は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出工程は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定工程は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力工程は、前記判定結果を出力することを特徴とする、認知機能推定方法。
【請求項8】
前記推定パラメータ算出工程は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定工程は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、請求項7記載の認知機能推定方法。
【請求項9】
前記判定工程は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、請求項7または8記載の認知機能推定方法。
【数1】
【請求項10】
さらに、認知機能推定工程を備え、
前記推定パラメータ算出工程は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定工程は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力工程は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、請求項7から9のいずれか一項に記載の認知機能推定方法。
【請求項11】
前記認知機能推定工程は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、請求項10記載の認知機能推定方法。
【数2】
【請求項12】
前記認知機能推定工程は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、請求項10記載の認知機能推定方法。
【数3】
【請求項13】
被験者の認知機能を推定するためのプログラムであって、
コンピュータに、足圧情報取得手順、推定パラメータ算出手順、判定手順、および出力手順を実行させ、
前記足圧情報取得手順は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出手順は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定手順は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力手順は、前記判定結果を出力することを特徴とする、プログラム。
【請求項14】
前記推定パラメータ算出手順は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定手順は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、請求項13記載のプログラム。
【請求項15】
前記判定手順は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、請求項13または14記載のプログラム。
【数1】
【請求項16】
コンピュータに、さらに、認知機能推定手順を実行させ、
前記推定パラメータ算出手順は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定手順は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力手順は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、請求項13から15のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項17】
前記認知機能推定手順は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、請求項16記載のプログラム。
【数2】
【請求項18】
前記認知機能推定手順は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、請求項16記載のプログラム。
【数3】
【請求項19】
請求項13から18のいずれか一項に記載のプログラムを記録している、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項20】
足圧測定部および通信部を備え、
前記足圧測定部は、足圧情報として、被験者の足圧を測定可能であり、
前記通信部は、請求項1から6のいずれか一項に記載の認知機能推定装置と通信可能であり、前記足圧情報を前記認知機能推定装置に送信可能である、認知機能推定端末。
【請求項21】
請求項20記載の認知機能推定端末と、請求項1から6のいずれか一項に記載の認知機能推定装置とを備え、
前記認知機能推定端末と前記認知機能推定装置とが、通信可能である、認知機能推定システム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能推定装置、認知機能推定方法、認知機能推定端末、認知機能推定システム装置、プログラム、及び、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症患者は年々増加している。他方、認知症は、軽度認知機能障害(MCI)の段階で適切な治療を行うと、その44%が正常に回復することが知られている(非特許文献1)。このため、認知症患者について、早期発見の手段が求められており、認知症患者のスクリーニング検査として、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)等の認知症テストが知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Brodaty, H., Heffernan, M., Kochan, N. A., Draper, B., Trollor, J. N., Reppermund, S., ... & Sachdev, P. S., “Mild cognitive impairment in a community sample: the Sydney Memory and Ageing Study”, Alzheimer's & dementia, Vol. 9, No. 3 (2013), pp. 310-317
【非特許文献2】加藤伸司,“改定長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R) の作成”,老年精神医学雑誌,Vol. 2, (1991), pp. 1339-1347.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記認知症テストによる検査は、殆どが高齢者となる検査対象者が自発的に病院にて検査を受ける必要があり、検査の継続性にかけるという問題がある。このため、検査対象者への負担が少なく、日常的に行える認知機能推定方法が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、検査対象者への負担が少なく、簡便に認知機能を推定できる認知機能推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の認知機能推定装置(以下、「推定装置」ともいう)は、
足圧情報取得部、推定パラメータ算出部、判定部、および出力部を備え、
前記足圧情報取得部は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出部は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定部は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力部は、前記判定結果を出力する、装置である。
【0007】
本発明の認知機能推定方法(以下、「推定方法」ともいう)は、
足圧情報取得工程、推定パラメータ算出工程、判定工程、および出力工程を備え、
前記足圧情報取得工程は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出工程は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定工程は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力工程は、前記判定結果を出力する、方法である。
【0008】
本発明のプログラムは、被験者の認知機能を推定するためのプログラムであって、
コンピュータに、足圧情報取得手順、推定パラメータ算出手順、判定手順、および出力手順を実行させ、
前記足圧情報取得手順は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出手順は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定手順は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力手順は、前記判定結果を出力する。
【0009】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記本発明のプログラムを記録している。
【0010】
本発明の認知機能推定端末(以下、「推定端末」ともいう)は、足圧測定部および通信部を備え、
前記足圧測定部は、足圧情報として、被験者の足圧を測定可能であり、
前記通信部は、前記本発明の認知機能推定装置と通信可能であり、前記足圧情報を前記認知機能推定装置に送信可能である。
【0011】
本発明の認知機能推定システム装置(以下、「推定システム」または「推定システム装置」ともいう)は、前記本発明の認知機能推定端末と、前記本発明の認知機能推定装置とを備え、前記認知機能推定端末と前記認知機能推定装置とが通信可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便に検査対象者の認知機能を推定できる認知機能推定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1の認知機能推定装置および認知機能推定端末を備える認知機能推定システム装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の認知機能推定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の認知機能推定端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の認知機能推定端末における、被験者の足圧測定箇所の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の認知機能推定装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態2の認知機能推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の認知機能推定装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施例1および2において、被験者の足圧の測定方法について説明する写真である。
【
図9】
図9は、実施例1において、本発明の推定方法で推定した被験者のHDS-Rスコアと、測定した各被験者のHDS-Rスコアとの関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例1において、本発明の推定方法による推定結果の誤差分析の結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例2において、本発明の推定方法で推定した被験者のHDS-Rスコアと、測定した各被験者のHDS-Rスコアとの関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例2において、本発明の推定方法による推定結果の誤差分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の認知機能推定装置において、例えば、前記推定パラメータ算出部は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定部は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、という態様であってもよい。
【0015】
本発明の認知機能推定装置において、例えば、前記判定部は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、という態様であってもよい。
【数1】
【0016】
本発明の認知機能推定装置は、例えば、さらに、認知機能推定部を備え、
前記推定パラメータ算出部は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定部は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力部は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、という態様であってもよい。
【0017】
本発明の認知機能推定装置において、例えば、前記認知機能推定部は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、という態様であってもよい。
【数2】
【0018】
本発明の認知機能推定装置において、例えば、前記認知機能推定部は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、という態様であってもよい。
【数3】
【0019】
本発明の認知機能推定方法において、例えば、前記推定パラメータ算出工程は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定工程は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、という態様であってもよい。
【0020】
本発明の認知機能推定方法において、例えば、前記判定工程は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、という態様であってもよい。
【数1】
【0021】
本発明の認知機能推定方法は、例えば、さらに、認知機能推定工程を備え、
前記推定パラメータ算出工程は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定工程は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力工程は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、という態様であってもよい。
【0022】
本発明の認知機能推定方法において、例えば、前記認知機能推定工程は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、という態様であってもよい。
【数2】
【0023】
本発明の認知機能推定方法において、例えば、前記認知機能推定工程は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、という態様であってもよい。
【数3】
【0024】
本発明のプログラムにおいて、例えば、前記推定パラメータ算出手順は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定手順は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、という態様であってもよい。
【0025】
本発明のプログラムにおいて、例えば、前記判定手順は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、という態様であってもよい。
【数1】
【0026】
本発明のプログラムは、例えば、コンピュータに、さらに、認知機能推定手順を実行させ、
前記推定パラメータ算出手順は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定手順は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力手順は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、という態様であってもよい。
【0027】
本発明のプログラムにおいて、例えば、前記認知機能推定手順は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、という態様であってもよい。
【数2】
【0028】
本発明のプログラムにおいて、例えば、前記認知機能推定手順は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、という態様であってもよい。
【数3】
【0029】
次に、本発明の実施形態について図を用いて説明する。本発明は、以下の実施形態には限定されない。以下の各図において、同一部分には、同一符号を付している。また、各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用でき、各実施形態の構成は、特に言及がない限り、組合せ可能である。
【0030】
本発明において、「被験者」とは、本発明の認知機能推定装置を用いて認知機能を推定される対象者であり、例えば、検査対象者ともいう。前記「被験者」は、例えば、認知機能障害を有する者でもよいし、認知機能障害を有さない者(健常者)でもよいし、認知機能障害を有するか否か不明な者でもよい。
【0031】
本発明において、「認知機能障害」とは、後天的に認知機能が低下した状態を意味し、例えば、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)でもよいし、認知症でもよいし、重度認知症でもよい。前記認知機能障害の原因は、特に制限されず、具体例として、例えば、統合失調症;レビー小体型認知症;前頭側頭型認知症;アルツハイマー型認知症;脳梗塞、脳出血およびくも膜下出血等の脳血管性認知症;等の疾患に由来するものでもよいし、アルコール性認知症等の外的要因に由来するものでもよい。
【0032】
[実施形態1]
本実施形態は、本発明の認知機能推定装置および認知機能推定端末の一例を含む認知機能推定システムの例である。
図1は、本実施形態の推定装置1、推定端末2の一例を含む推定システム装置100の一例の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、推定システム装置100は、推定装置1と、推定端末2とを含む。また、
図1に示すように、推定装置1は、足圧情報取得部11、推定パラメータ算出部12、判定部13、および出力部14を備える。また、推定装置1は、例えば、任意の構成として、記憶部を備えてもよい。推定端末2は、足圧測定部21および通信部22を備える。
図1に示すように、推定装置1は、例えば、通信回線網3を介して、推定端末2と接続可能であるが、これには制限されず、推定装置1と推定端末2との接続は、例えば、ケーブルを利用した有線接続でもよいし、無線通信による無線接続でもよい。図示していないが、推定システム装置100は、例えば、複数の推定端末2を備えてもよい。前記無線接続は、例えば、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、LPWA(Low Power Wide Area)等が挙げられる。前記無線通信としては、各装置が直接通信する形態(Ad Hoc通信)、アクセスポイントを介した間接通信のいずれであってもよい。本実施形態の推定装置1は、システムとしてサーバに組み込まれていてもよい。また、本実施形態の推定装置1は、本発明のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末等であってもよい。また、図示していないが、推定装置1は、例えば、通信回線網3を介して、システム管理者の外部端末とも接続可能であり、システム管理者は、外部端末から推定装置1の管理を実施してもよい。
【0033】
通信回線網3は、特に制限されず、公知のネットワークを使用でき、例えば、有線でもよいし、無線でもよい。通信回線網3は、例えば、インターネット回線、WWW(World Wide Web)、電話回線、LAN(Local Area Network)、WiFi(Wireless Fidelity)、LPWA(Low Power Wide Area)等があげられる。
【0034】
推定端末2は、例えば、足圧測定部21により、前記被験者の足圧を測定可能であり、測定した被験者の足圧情報を、通信部22により推定装置1に送信可能なものであれば特に制限されない。推定端末2は、例えば、前記被験者が履く靴のインソールの下に足圧測定部21を設けた携帯型でもよいし、前記被験者が歩行する床部に足圧測定部21を設けた固定型でもよい。推定システム装置100における推定端末2としては、公知の足圧計が利用でき、例えば、特開2014-45885の記載を参照できる。また、推定端末2は、市販の足圧モニター(足圧計)を使用してもよい。前記市販の足圧計の具体例としては、リーフ株式会社の製品である足圧モニタインソール PiT(登録商標)、パラマウントベッド株式会社の製品であるリハビリ用足底圧センサー「Waltwin(ワルツイン)」、ニッタ株式会社の製品である足圧分布測定システム F-スキャンII、novel社(ドイツ)の製品であるインソール型足圧分布測定 Pedar等のインソール型足圧計;アニマ株式会社の製品であるシート式下肢加重計 ウォークWayNM-1000、Rsscan社(ベルギー)の製品である足底圧分布計測システム footscan等のシート型足圧計;等が使用できる。
【0035】
図2に、推定装置1のハードウェア構成のブロック図を例示する。推定装置1は、例えば、CPU(中央処理装置)101、メモリ102、バス103、記憶装置104、入力装置106、ディスプレイ107、通信デバイス108等を備える。推定装置1の各部は、それぞれのインタフェース(I/F)により、バス103を介して接続されている。
【0036】
CPU101は、例えば、コントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)等により、他の構成と連携動作し、推定装置1の全体の制御を担う。推定装置1において、CPU101により、例えば、本発明のプログラム105やその他のプログラムが実行され、また、各種情報の読み込みや書き込みが行われる。具体的には、例えば、CPU101が、足圧情報取得部11、推定パラメータ算出部12、判定部13、および出力部14として機能する。推定装置1は、演算装置として、CPUを備えるが、GPU(Graphics Processing Unit)、APU(Accelerated Processing Unit)等の他の演算装置を備えてもよいし、CPUとこれらとの組合せを備えてもよい。推定装置1において、CPU101は、後述する実施形態2における記憶部以外の各部として機能する。
【0037】
メモリ102は、例えば、メインメモリを含む。前記メインメモリは、主記憶装置ともいう。CPU101が処理を行う際には、例えば、後述する記憶装置104(補助記憶装置)に記憶されている本発明のプログラム105等の種々の動作プログラムを、メモリ102が読み込む。そして、CPU101は、メモリ102からデータを読み出し、解読し、前記プログラムを実行する。前記メインメモリは、例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)である。メモリ102は、例えば、さらに、ROM(読み出し専用メモリ)を含む。
【0038】
バス103は、例えば、外部機器とも接続できる。前記外部機器は、例えば、外部記憶装置(外部データベース等)、プリンタ等があげられる。推定装置1は、例えば、バス103に接続された通信デバイス108により、通信回線網3に接続でき、通信回線網3を介して、前記外部機器と接続することもできる。また、推定装置1は、通信デバイス108および通信回線網3を介して、推定端末2にも接続できる。
【0039】
記憶装置104は、例えば、前記メインメモリ(主記憶装置)に対して、いわゆる補助記憶装置ともいう。前述のように、記憶装置104には、本発明のプログラム105を含む動作プログラムが格納されている。記憶装置104は、例えば、記憶媒体と、前記記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。前記記憶媒体は、特に制限されず、例えば、内蔵型でも外付け型でもよく、HD(ハードディスク)、FD(フロッピー(登録商標)ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、MO、DVD、フラッシュメモリー、メモリーカード等があげられ、前記ドライブは、特に制限されない。記憶装置104は、例えば、前記記憶媒体と前記ドライブとが一体化されたハードディスクドライブ(HDD)であってもよい。推定装置1が、例えば、記憶部を含む場合、記憶装置104は、前記記憶部として機能する。
【0040】
推定装置1は、例えば、さらに、入力装置106、ディスプレイ107を備える。入力装置106は、例えば、タッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイス;キーボード;カメラ、スキャナ等の撮像手段;ICカードリーダ、磁気カードリーダ等のカードリーダ;マイク等の音声入力手段;等があげられる。ディスプレイ107は、例えば、LEDディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示装置があげられる。本実施形態1において、入力装置106とディスプレイ107とは、別個に構成されているが、入力装置106とディスプレイ107とは、タッチパネルディスプレイのように、一体として構成されてもよい。
【0041】
推定装置1において、メモリ102および記憶装置104は、ユーザからのアクセス情報およびログ情報、ならびに、外部データベース(図示せず)から取得した情報を記憶することも可能である。
【0042】
図3に、推定端末2のハードウェア構成のブロック図を例示する。
図3に示すように、推定端末2は、例えば、CPU201、メモリ202、バス203、記憶装置204、入力装置206、通信デバイス(通信部)22、ディスプレイ207、圧力測定部21等を備える。推定端末2の各部は、それぞれのインタフェース(I/F)により、バス203を介して接続されている。推定端末2において、圧力測定部21以外の各構成の説明は、推定装置1の各構成の説明を援用できる。
【0043】
圧力測定部21は、圧力センサであり、例えば、被験者の足裏において、複数箇所の足圧を測定可能な足圧センサであることが好ましい。前記複数箇所の具体例を、
図4を用いて説明する。
図4は、被験者の足裏における足圧測定箇所の一例を示す模式図である。推定端末2の圧力測定部21は、例えば、
図4に示すように、被験者の前足部における、母指(Thumb finger)211A、母指球(A ball of a thumb)211B、前足中央部(Middle forefoot)211C、小指球(Hypothenar)211D、被験者の後足部における、踵(Heel)211E、踵外側(Outside the heel)211F、土踏まず(Arch)211G等を測定可能であることが好ましい。圧力測定部21は、被験者の左右の足のそれぞれについて足圧を測定可能であることが好ましいが、これには制限されず、左右の足のいずれか一方を測定可能であってもよい。
【0044】
つぎに、本実施形態の認知機能推定方法について、
図5のフローチャートを用いて説明する。本実施形態の推定方法は、例えば、本実施形態の推定装置1および推定端末2を備える推定システム装置100を用いて実施できる。なお、本実施形態の推定方法は、推定システム装置100の使用には限定されない。
【0045】
まず、推定装置1による処理に先立ち、推定端末2の圧力測定部21により、被験者の足圧情報を測定する。前記足圧とは、被験者の足裏が接地した際の圧力を意味し、推定端末2の圧力測定部21により、例えば、前記被験者の歩行時における、母指(Thumb finger)211A、母指球(A ball of a thumb)211B、前足中央部(Middle forefoot)211C、小指球(Hypothenar)211D、被験者の後足部における、踵(Heel)211E、踵外側(Outside the heel)211F、土踏まず(Arch)211G等の足圧を測定する。前記足圧情報は、例えば、圧力測定部21による測定値を、被験者の体重で除算した値を用いてもよい。前記測定値を被験者の体重で除算することで、例えば、被験者の体重による影響を抑制できるため好ましい。また、足圧は、前記被験者の歩行動作に伴い経時的に変化するため、例えば、各測定部位の接地後、前記各部位が地面から離れるまでの間におけるピーク圧力を、前記各部位の足圧情報とすることできる。推定端末2は、例えば、前記被験者の母指、母指球、前足中央部、および小指球の足圧の合計値を、前記被験者の前足部の足圧とし、前記被験者の踵および踵外側の足圧の合計値を、前記被験者の後足部の足圧としてもよい。前記足圧の測定は、例えば、前記被験者が最初に踏み出した一歩、すなわち、初回の足圧を測定してもよいし、2歩以上の複数回における足圧を測定してもよい。後者の場合、例えば、複数回の測定値の平均値を各部位の足圧としてもよいし、複数回の測定値における最小値または最大値を各部位の足圧としてもよいが、最大値を使用することが好ましい。推定端末2の圧力測定部21による足圧の具体的な測定方法は、例えば、後述する実施例に記載の測定方法により測定できる。そして、推定端末2は、通信部22により、通信回線網3を介して、測定した前記足圧情報を推定装置1に送信する。なお、本発明はこれには制限されず、例えば、推定端末2は、測定した前記足圧情報をシステム外のデータベースに送信してもよい。この場合、前記データベースは、例えば、送信された前記被験者の足圧情報を記憶する。
【0046】
つぎに、推定装置1による処理を開始する。まず、推定装置1の足圧情報取得部11により、被験者の足圧情報を取得する(S1、足圧情報取得工程)。具体的には、足圧情報取得部11は、通信デバイス108により、通信回線網3を介して、推定端末2から前記足圧情報を取得する。また、推定装置1が前記記憶部を備える場合、例えば、推定装置1は、取得した前記足圧情報を前記記憶部に記憶してもよい。推定端末1の前記記憶部が前記足圧情報を記憶している場合、足圧情報取得部11は、前記記憶部に記憶されている前記足圧情報を読み出し、被験者の足圧情報を取得してもよい。また、例えば、推定端末2により測定された前記足圧情報が、システム外のデータベースに記憶されている場合、足圧情報取得部11は、例えば、前記データベースから、被験者の足圧情報を取得してもよい。
【0047】
つぎに、推定装置1の推定パラメータ算出部12により、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出する(S2、推定パラメータ算出工程)。前記認知機能推定パラメータは、被験者の認知機能を推定するための各種パラメータであり、推定パラメータ算出部12は、前記足圧情報に基づき、例えば、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出する。
【0048】
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏における最初に接地した箇所が接地してから、被験者の足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報であり、例えば、踵が接地してから、被験者の足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報である。具体的には、例えば、被験者の踵が接地した時間を「0(基準時間)」として、母指が接地するまでに経過した時間、母指球が接地するまでに経過した時間、前足中央部が接地するまでに経過した時間、小指球が接地するまでに経過した時間、踵外側が接地するまでに経過した時間があげられ、前記接地時間差情報は、例えば、これらの時間の情報のうち、少なくとも一つを含む。また、例えば、各部位の接地時間差について、前記被験者の足裏が接地してから完全に離れるまでの時間、すなわち、前記被験者の1ステップにかかる時間で除算した値を、各部位の接地時間差情報としてもよい。前記被験者の1ステップにかかる時間で除算することで、前記被験者の歩行速度による影響を抑制できる。推定パラメータ算出部12は、前記接地時間差情報として、例えば、前記被験者が最初に踏み出した一歩、すなわち、初回の接地時間差を算出してもよいし、2歩以上の複数回における接地時間差を算出してもよい。後者の場合、推定パラメータ算出部12は、例えば、複数回の接地時間差の平均値を各部位の接地時間差情報としてもよいし、複数回の接地時間差における最小値または最大値を各部位の接地時間差情報としてもよいが、最小値を使用することが好ましい。認知機能障害における症状の一つに、すり足歩行が知られているが、すり足歩行は重度になるほど踵の接地から各部位の接地までの時間が短くなるため、接地時間差情報として、前記最小値を用いることで、例えば、より精度よく被験者の認知機能障害の有無を判定できる。
【0049】
前記接地割合情報は、例えば、被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、被験者の足裏の各部位が接地している時間の割合の情報である。具体的には、例えば、前記被験者の足裏が接地してから完全に離れるまでの時間、すなわち、前記被験者の1ステップにかかる時間に対し、母指が接地してから完全に離れるまでに経過した時間、母指球が接地してから完全に離れるまでに経過した時間、前足中央部が接地してから完全に離れるまでに経過した時間、小指球が接地してから完全に離れるまでに経過した時間、踵外側が接地してから完全に離れるまでに経過した時間、または踵が接地してから完全に離れるまでに経過した時間の割合の情報である。推定パラメータ算出部12は、前記接地割合情報として、例えば、前記被験者が最初に踏み出した一歩、すなわち、初回の接地割合を算出してもよいし、2歩以上の複数回における接地割合を算出してもよい。後者の場合、推定パラメータ算出部12は、例えば、複数回の接地割合の平均値を各部位の接地割合情報としてもよいし、複数回の接地割合における最小値または最大値を各部位の接地割合情報としてもよいが、平均値を使用することが好ましい。
【0050】
つぎに、推定装置1の判定部13により、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する(S3、判定工程)。判定部13は、例えば、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定できる。
【0051】
判定部13による被験者の認知機能障害の有無の判定について、具体的に例示する。判定部13は、例えば、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する。下記式(1)において、γは、前記足圧情報を意味し、σは、前記接地時間差情報を意味し、φは、前記接地割合情報を意味し、pは、確率を意味する。下記式(1)において、例えば、mは、1または2であり、1は、被験者の前足部を意味し、2は、被験者の後足部を意味する。また、下記式(1)において、nは、1、2、3、4、5、または6であり、1は、被験者の母指、2は、被験者の母指球、3は、被験者の前足中央部、4は、被験者の小指球、5は、被験者の踵外側部、6は、被験者の踵をそれぞれ意味する。また、下記式(1)において、α(α
1~α
3)およびβは、係数であり、例えば、後述する実施例に基づき、被験者の改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-Rスコア)を従属変数とし、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報を独立変数として二項ロジスティック回帰分析を行うことで算出できる。
【数1】
【0052】
判定部13による被験者の認知機能障害の有無の判定について、さらに具体例をあげて説明する。判定部13は、例えば、下記式(1A)に基づいて、被験者が認知機能障害を有しているか否か、すなわち、被験者のHDS-Rスコアが30(健常者)か、29以下(認知機能障害)かを判定できる。下記式(1A)において、μ
1は、前記被験者が健常者、すなわち、認知機能障害を有していない確率を意味し、γ
2は、被験者の後足における足圧情報、すなわち、被験者の踵および踵外側の足圧の合計値を意味し、φ
2は、被験者の母指球の接地割合を意味する。
【数1A】
【0053】
判定部13による被験者の認知機能障害の有無の判定について、さらに具体例をあげて説明する。判定部13は、例えば、下記式(1B)に基づいて、被験者が、健常者~軽度認知機能障害(MCI)である、すなわち、被験者のHDS-Rスコアが30~21であるか、被験者が認知症、すなわち被験者のHDS-Rスコアが20以下かを判定してもよい。下記式(1B)において、μ
2は、前記被験者が健常者または軽度認知機能障害である確率を意味し、σ
4は、被験者の踵と小指球の接地時間差情報を意味し、φ
5は、被験者の踵外側の接地割合を意味する。
【数1B】
【0054】
そして、推定装置1の出力部14は、前記判定結果を出力する(S4、出力工程)。出力部14は、例えば、前記判定結果をディスプレイ107に出力してもよいし、通信デバイス108を介して、外部の装置に出力してもよい。前記外部の装置は、例えば、プリンタなどの印刷機、タブレット端末などの携帯端末、および推定端末2等があげられる。そして、推定装置1による処理を終了する(END)。
【0055】
出力部14が推定端末2に前記判定結果を出力する場合、前記推定端末2のディスプレイ207は、前記判定結果を表示可能であってもよい。
【0056】
本実施形態において、推定装置1が、足圧情報取得部11、推定パラメータ算出部12、判定部13、および出力部14の機能を発揮し、推定端末2が、足圧測定部21の機能を発揮していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、推定装置1および推定端末2は、それぞれ、互いの構成のうち、少なくとも1つ以上の部材の機能を発揮してもよい。具体的には、例えば、推定装置1が足圧センサを備えていてもよい。この場合、推定装置1の足圧情報取得部11は、前記足圧センサから被験者の前記足圧情報を取得できる。
【0057】
本実施形態の認知機能推定装置によれば、被験者の足圧情報に基づき、被験者が認知機能障害を有するか否か判定できる。このように、本発明の認知機能推定装置によれば、例えば、被験者の日常的な動作である歩行動作に基づいて被験者の認知機能を推定できるため、被験者への負担を抑制し、簡便に被験者の認知機能を推定できる。
【0058】
[実施形態2]
本実施形態は、実施形態1の推定装置1の構成に加えて、さらに認知機能推定部を備える以外は、実施形態1の推定装置1と同様であり、その説明を援用できる。本実施形態の推定装置は、さらに、認知機能推定部を備え、前記推定パラメータ算出部は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、前記認知機能推定部は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、前記出力部は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する。このため、本実施形態によれば、前記被験者が認知機能障害を有するか否かではなく、被験者の認知機能レベルがどの程度であるかを推定することができる。したがって、本実施形態の推定装置によれば、より精度よく被験者の認知機能を推定できる。
【0059】
図6は、本実施形態の推定装置1Aの一例の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、推定装置1Aは、実施形態1の推定装置1の構成に加えて、さらに、認知機能推定部15を備える。推定装置1Aのハードウェア構成は、
図2の推定装置1のハードウェア構成において、CPU101が、
図1の推定装置1の構成に代えて、
図6の推定装置1Aの構成を備える以外は同様である。
【0060】
本実施形態の推定装置1A、および推定端末2を含む推定システムにおける処理の一例を、
図7のフローチャートに基づいて説明する。
図7は、推定装置1Aの処理(S1~S3、S11、S4)の一例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、実施形態1の推定装置1の処理におけるS1と同様にして、S1を実施し、被験者の足圧情報を取得する。
【0062】
つぎに、推定装置1Aの推定パラメータ算出部12により、前記認知機能推定パラメータとして、前記接地時間差情報、接地割合情報、および足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された一つの情報を算出する(S2、推定パラメータ算出工程)。前記接地時間差情報および前記接地割合情報は、例えば、前述のとおりである。
【0063】
前記足圧中心の軌跡長情報は、例えば、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの間、すなわち、前記被験者の1ステップの間における、前記被験者の足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報である。前記足圧中心(center of pressure:COP)とは、例えば、前記被験者の足裏と床との接触面に働く力の分布の中心点を意味し、床反力作用点、または圧力中心ともいう。具体的には、例えば、被験者の足裏が床面に接触した際、前記足裏に生じる複数の床反力を合成した床反力ベクトルの重心部分が、その時点における前記被験者の足圧中心を示す。なお、前記複数の床反力は、例えば、1方向に対する床反力でもよいし、2以上の複数の方向に対する床反力でもよい。前者の場合、例えば、床面に対して鉛直方向に向かう床反力であることが好ましい。
【0064】
つぎに、前記実施形態1のS3と同様にして、S3を実施する。
【0065】
つぎに、推定装置1Aの認知機能推定部15は、S3において、前記認知機能に障害があると判定された被験者(S3、YES)について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する(S11、認知機能推定工程)。
【0066】
認知機能推定部15による被験者の認知機能レベルの推定について、具体的に例示する。認知機能推定部15は、例えば、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定できる。下記式(2)において、γは、前記足圧情報を意味し、σは、前記接地時間差情報を意味し、φは、前記接地割合情報を意味する。下記式(2)において、例えば、mは、1または2であり、1は、被験者の前足部を意味し、2は、被験者の後足部を意味する。また、下記式(2)において、nは、1、2、3、4、5、または6であり、1は、被験者の母指、2は、被験者の母指球、3は、被験者の前足中央部、4は、被験者の小指球、5は、被験者の踵外側部、6は、被験者の踵をそれぞれ意味する。また、下記式(2)において、α(α
1~α
3)およびβは、係数であり、例えば、後述する実施例に基づき、被験者の改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-Rスコア)を従属変数とし、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報を独立変数として重回帰分析を行うことで算出できる。
【数2】
【0067】
認知機能推定部15による被験者の認知機能レベルの推定について、さらに具体例をあげて説明する。認知機能推定部15は、例えば、下記式(2A)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定できる。下記式(2A)において、σ
1は、前記被験者の踵と母指との接地時間差情報を意味し、φ
3は、被験者の前足中央部の接地割合を意味し、φ
4は、被験者の小指球の接地割合を意味する。認知機能推定部15は、例えば、下記式(2A)に基づき、前記被験者のHDS-Rスコア、すなわち、認知機能レベルを推定できる。
【数2A】
【0068】
また、認知機能推定部15による被験者の認知機能レベルの推定のその他の例について、具体的に例示する。認知機能推定部15は、例えば、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定できる。下記式(3)において、γは、前記足圧情報を意味し、σは、前記接地時間差情報を意味し、φは、前記接地割合情報を意味し、ψは、前記足圧中心の軌跡長情報を意味する。下記式(3)において、例えば、mは、1または2であり、1は、被験者の前足部を意味し、2は、被験者の後足部を意味する。また、下記式(3)において、nは、1、2、3、4、5、または6であり、1は、被験者の母指、2は、被験者の母指球、3は、被験者の前足中央部、4は、被験者の小指球、5は、被験者の踵外側部、6は、被験者の踵をそれぞれ意味する。また、下記式(3)において、α(α
1~α
4)およびβは、係数であり、例えば、後述する実施例に基づき、被験者の改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-Rスコア)を従属変数とし、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡長情報を独立変数として重回帰分析を行うことで算出できる。
【数3】
【0069】
認知機能推定部15による被験者の認知機能レベルの推定について、さらに具体例をあげて説明する。認知機能推定部15は、例えば、下記式(3A)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定できる。下記式(3A)において、γ
1は、前記被験者の前足部の足圧情報を意味し、γ
2は、前記被験者の後足部の足圧情報を意味し、σ
1は、前記被験者の踵と母指との接地時間差情報を意味し、σ
2は、前記被験者の踵と母指球との接地時間差情報を意味し、σ
4は、前記被験者の踵と小指球との接地時間差情報を意味し、σ
5は、前記被験者の踵と踵外側部との接地時間差情報を意味し、φ
1は、被験者の母指の接地割合情報を意味し、φ
2は、被験者の母指球の接地割合情報を意味し、φ
6は、前記被験者の踵の接地割合情報を意味し、ψは、前記足圧中心の軌跡長情報を意味する。認知機能推定部15は、例えば、下記式(3A)に基づき、前記被験者のHDS-Rスコア、すなわち、認知機能レベルを推定できる。
【数3A】
【0070】
そして、推定装置1Aの出力部14は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する(S4、出力工程)。出力部14は、例えば、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記判定結果および前記認知機能レベルを出力し、前記認知機能障害がないと判定された被験者(S3、No)については、前記判定結果を出力する。そして、推定装置1Aによる処理を終了する(END)。
【0071】
[実施形態3]
本実施形態のプログラムは、前述の認知機能推定方法の各工程を、コンピュータに実行させるためのプログラムである。具体的に、本実施形態のプログラムは、被験者の認知機能を推定するためのプログラムであって、コンピュータに、足圧情報取得手順、推定パラメータ算出手順、判定手順、および出力手順を実行させる。
【0072】
前記足圧情報取得手順は、被験者の足圧情報を取得し、前記推定パラメータ算出手順は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、前記判定手順は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、前記出力手順は、前記判定結果を出力する。
【0073】
また、本実施形態のプログラムは、コンピュータを、足圧情報取得手順、推定パラメータ算出手順、判定手順、および出力手順として機能させるプログラムということもできる。
【0074】
本実施形態のプログラムは、前記本発明の認知機能推定装置および認知機能推定方法における記載を援用できる。前記各手順は、例えば、「手順」を「処理」と読み替え可能である。また、本実施形態のプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。前記記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)である。前記記録媒体は、特に制限されず、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク(HD)、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)等があげられる。
【実施例0075】
[実施例1]
被験者の足圧情報から算出した認知機能推定パラメータと、被験者の認知機能レベルが相関することを確認した。
【0076】
(1)被験者
被験者は、平均年齢82歳(67~92歳)の高齢者61名(男性11名、女性50名)とした。被験者には、研究の趣旨および目的、結果の取り扱いについて説明を行い、インフォームド・コンセントを得た上で調査した。なお、本実施例の試験は、一関工業高等専門学校倫理委員会の承認を受けて実施した。
【0077】
(2)足圧の測定および認知機能推定パラメータの算出
推定端末2として、リーフ株式会社の足圧モニタインソール PiT(登録商標)2を使用した。
図8に示すように、被験者の足に推定端末2を装着し、被験者の足の各部位(母指、母指球、前足中央部、土踏まず、踵外側、踵)の接地時圧力(足圧情報)を測定した。測定時の条件として、歩行速度は自由歩行速度とし、各被験者には普段通りに歩行するように指示した。また、歩行距離は10mとし、各被験者について、各2回測定した。そして、得られた足圧情報から、前記各種認知機能推定パラメータとして、前記接地時間差情報および前記接地割合情報を算出した。
【0078】
(3)認知機能レベルの測定
つぎに、各被験者について、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用いて、認知機能レベルを測定した。前記HDS-Rは、年齢、時間の見当識、場所の見当識、単語の再生および遅延再生、計算、数字の逆唱、物品の記銘、言語の流暢性の9項目から構成される、30点満点の認知機能検査である。HDS-Rは、得点が低いほど認知機能障害を有する可能性が高く、20点以下からは認知症の疑いがあるとされる。このため、本実施例においては、HDS-Rのスコアが0点~10点の被験者は、重度認知症(Severe)、11点~20点の被験者は、認知症(Dementia)、21点~29点の被験者は、軽度認知機能障害(MCI)、30点の被験者を健常者(Normal)とした。
【0079】
(4)分析
各被験者について、下記表1に示すように、被験者の認知機能レベルに応じて分類(グループI:すべての被験者、グループII:重度認知症、認知症、およびMCI、グループIII:重度認知症および認知症、グループIV:認知症およびMCI、グループV:MCIおよび健常者、グループVI:MCIのみ)し、前記(3)で測定したHDS-Rスコアを従属変数、前記(2)で測定および算出した足圧情報および認知機能推定パラメータを独立変数として、重回帰分析を行った。下記表1において、Nの欄は、各グループまたは認知症レベルにおける人数を示す。また、前記各グループにおける決定係数(R2)および自由度を調整した決定係数(Adjusted R2)を、下記表2に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
この結果、グループVI(MCI患者群)において、自由度を調整した決定係数がR
2=0.754となり、下記式(2A)により、MCI患者群のHDS-Rスコアを推定できることがわかった。
【数2A】
【0083】
前記式(2A)の係数と標準化係数を下記表3に示し、
図9に、式(2A)で推定したHDS-Rスコアと、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコアとの関係を示す。
【0084】
【0085】
図9は、式(2A)で推定したHDS-Rスコア(HDS-R
est)と、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコア(HDS-R
mes)との関係を示すグラフであり、縦軸は、式(2A)で推定したHDS-Rスコアを示し、横軸は、HDS-Rスコアの測定値を示す。
図9に示すように、HDS-R
estとHDS-R
mesとの間には、R
2=0.81(P<0.01)であり、強い関係性があった。すなわち、式(2A)により、被験者の認知機能レベルを推定できることがわかった。
【0086】
(5)汎化性能の検証
つぎに、Leave-one-out(LOO)交差検証を行い、式(2A)の汎化性能を確認した。前記LOO交差検証は、全被験者のデータから被験者一人分のデータをテストデータとして抽出し、残りのデータをトレーニングデータとした。そして、予め抽出したテストデータを用いて、トレーニングデータから式(2A)を検証し、トレーニングデータとテストデータとを交換しながら被験者数分の検証を行った。この結果、式(2A)の誤差の二乗平均平方根が1.43であり、HDS-Rスコアの分解能と関連していることから、式(2A)が汎化性能を有していることが確認された。
【0087】
(6)誤差分析
つぎに、Bland and Altman分析により、式(2A)の誤差分析を行った。結果を
図10に示す。
図10は、前記誤差分析の結果を示すグラフであり、縦軸は、式(2A)で推定したHDS-Rスコア(HDS-R
est)と、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコア(HDS-R
mes)との差を示し、横軸は、式(2A)で推定したHDS-Rスコア(HDS-R
est)と、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコア(HDS-R
mes)との平均値を示す。
図10に示すように、HDS-R
estとHDS-R
mesとの差の平均値は0に近く、平均値(mean)±2SD以内に収まっているため、加算誤差は認められなかった。また、HDS-R
estとHDS-R
mesの平均値と、HDS-R
estとHDS-R
mesとの差の相関係数は0.24と小さく、有意確率はP=0.39であった。したがって有意性はなく、比例誤差も認められなかった。
【0088】
前記表3に示すように、式(2A)の標準化係数は、独立変数と従属変数の標準化値から算出した重回帰モデルの係数である。これは、推定式における各変数の影響力の大きさを示す指標である。前記表3に示すように、σ1(踵と母指の接地時間差、φ3(前足中央部の接地割合)は、標準化係数が負の値を示し、φ4(小指球の接地割合)は、標準化係数が正の値を示した。これにより、被験者の踵と母指の接地時間差と前足中央部の接地割合が大きくなり、小指球の接地割合が小さくなると、被験者の認知機能レベルが低下することが示唆された。
【0089】
(7)認知機能障害の判定
つぎに、被験者が認知機能障害を有するか否か、すなわち、健常者か軽度認知機能障害かの判定を行うことを検討した。前記表1におけるグループV(MCIおよび健常者のグループ)を対象に、前記(3)で測定したHDS-Rスコアを従属変数、前記(2)で測定および算出した足圧情報および認知機能推定パラメータを独立変数として、二項ロジスティック回帰分析を行った。この結果、下記式(1A)により、被験者が健常者である確率を推定できることがわかった。式(1A)の係数とオッズ比とを下記表4に示す。また、式(1A)の適合性を検定するため、Hosmer-Lemeshow testを行った。結果を下記表5に示す。
【数1A】
【0090】
【0091】
【0092】
前記表5に示すように、式(1A)の検定における有意確率は、P=0.185であった。前記検定においては、P<0.05のとき、回帰式は適合していないとみなされるため、式(1A)は、適合していると判断できる。
【0093】
つぎに、式(1A)の的中精度を調べるため、下記表6に示す分割表を作成した。表6に示すように、式(1A)の的中精度は79.4%であり、式(1A)の推定精度が非常に高いことがわかった。
【0094】
【0095】
また、前記表4に示すように、式(1A)の変数γ2(後足圧)の有意確率はP=0.008であり、φ2(母指球の接地割合)の有意確率はP=0.061であった。すべての変数の有意確率がP≧0.05となったとき多重共線性が疑われるため、式(1A)は、多重共線性が含まれていないことが示された。オッズ比は従属変数への影響度を示しており、1のときは影響度が全くないことを示している。前記表4に示すように、すべての変数でOR≠1となったため、式(1A)中の変数は有意であるといえる。
【0096】
(8)カットオフ値の判別
つぎに、被験者が軽度認知機能障害(MCI)か、認知症かの判定を行う、すなわち、被験者のHDS-Rスコアが20以下か、21以上かの判定を行うことを検討した。前記表1におけるグループIV(MCIおよび認知症患者のグループ)を対象に、前記(3)で測定したHDS-Rスコアを従属変数、前記(2)で測定および算出した足圧情報および認知機能推定パラメータを独立変数として、二項ロジスティック回帰分析を行った。この結果、下記式(1B)により、被験者のHDS-Rスコアが21以上である確率を推定できることがわかった。式(1B)の係数とオッズ比とを下記表7に示す。また、式(1B)の適合性を検定するため、Hosmer-Lemeshow testを行った。結果を下記表8に示す。
【数1B】
【0097】
【0098】
【0099】
前記表8に示すように、式(1B)の検定における有意確率は、P=0.758であった。前記検定においては、P<0.05のとき、回帰式は適合していないとみなされるため、式(1B)は、適合していると判断できる。
【0100】
つぎに、式(1B)の的中精度を調べるため、下記表9に示す分割表を作成した。表9に示すように、式(1B)の的中精度は76.4%であり、式(1B)の推定精度が非常に高いことがわかった。
【0101】
【0102】
また、前記表7に示すように、式(1B)の変数σ4(小指球の接地時間差)の有意確率はP=0.0044であり、φ5(踵外側の接地割合)の有意確率はP=0.018であった。すべての変数の有意確率がP≧0.05となったとき多重共線性が疑われるため、式(1B)は、多重共線性が含まれていないことが示された。オッズ比は従属変数への影響度を示しており、1のときは影響度が全くないことを示している。前記表7に示すように、すべての変数でOR≠1となったため、式(1B)中の変数は有意であるといえる。
【0103】
これらのことから、前記式(1)により、被験者が認知機能障害を有しているか否かを判定でき、前記式(2)により、被験者の認知機能レベルを推定できることがわかった。
【0104】
[実施例2]
足圧中心の軌跡長情報を考慮することにより、より精度よく被験者の認知機能レベルを推定できることを確認した。
【0105】
実施例1の被験者に関し、実施例1(2)で測定した足圧情報に基づき、足圧中心の軌跡長情報を算出した。そして、前記表1におけるグループIV(MCIおよび認知症患者のグループ)を対象に、前記(3)で測定したHDS-Rスコアを従属変数、前記実施例1(2)で測定および算出した足圧情報、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡長情報を独立変数として、重回帰分析を行った。決定係数および自由度を調整した決定係数を、下記表10に示す。
【0106】
【0107】
この結果、グループIVにおいて、自由度を調整した決定係数がR
2=0.931となり、下記式(3A)により、MCI患者群および認知症患者群のHDS-Rスコアを推定できることがわかった。
【数3A】
【0108】
図11に、式(3A)で推定したHDS-Rスコアと、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコアとの関係を示す。
【0109】
図11は、式(3A)で推定したHDS-Rスコア(HDS-R
est)と、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコア(HDS-R
mes)との関係を示すグラフであり、縦軸は、式(3A)で推定したHDS-Rスコアを示し、横軸は、HDS-Rスコアの測定値を示す。
図11に示すように、HDS-R
estとHDS-R
mesとの間には、R
2=0.96(P<0.05)であり、強い関係性があった。すなわち、式(3A)により、被験者の認知機能レベルを推定できることがわかった。
【0110】
つぎに、Bland and Altman分析により、式(3A)の誤差分析を行った。結果を
図10に示す。
図12は、前記誤差分析の結果を示すグラフであり、縦軸は、式(3A)で推定したHDS-Rスコア(HDS-R
est)と、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコア(HDS-R
mes)との差を示し、横軸は、式(3A)で推定したHDS-Rスコア(HDS-R
est)と、前記(3)で測定した各被験者のHDS-Rスコア(HDS-R
mes)との平均値を示す。
図12に示すように、HDS-R
estとHDS-R
mesとの差の平均値は0に近く、殆どの数値が平均値(mean)±2SD以内に収まっているため、加算誤差は認められなかった。また、HDS-R
estとHDS-R
mesの平均値と、HDS-R
estとHDS-R
mesとの差の相関係数は0.10と小さく、有意確率はP=0.68であった。したがって有意性はなく、比例誤差も認められなかった。
【0111】
これらのことから、前記式(3)により、被験者の認知機能レベルを推定できることがわかった。
【0112】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0113】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
足圧情報取得部、推定パラメータ算出部、判定部、および出力部を備え、
前記足圧情報取得部は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出部は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定部は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力部は、前記判定結果を出力することを特徴とする、認知機能推定装置。
(付記2)
前記推定パラメータ算出部は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定部は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、付記1記載の認知機能推定装置。
(付記3)
前記判定部は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、付記1または2記載の認知機能推定装置。
【数1】
(付記4)
さらに、認知機能推定部を備え、
前記推定パラメータ算出部は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定部は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力部は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、付記1から3のいずれかに記載の認知機能推定装置。
(付記5)
前記認知機能推定部は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、付記4記載の認知機能推定装置。
【数2】
(付記6)
前記認知機能推定部は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、付記4記載の認知機能推定装置。
【数3】
(付記7)
足圧情報取得工程、推定パラメータ算出工程、判定工程、および出力工程を備え、
前記足圧情報取得工程は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出工程は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定工程は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力工程は、前記判定結果を出力することを特徴とする、認知機能推定方法。
(付記8)
前記推定パラメータ算出工程は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定工程は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、付記7記載の認知機能推定方法。
(付記9)
前記判定工程は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、付記7または8記載の認知機能推定方法。
【数1】
(付記10)
さらに、認知機能推定工程を備え、
前記推定パラメータ算出工程は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定工程は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力工程は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、付記7から9のいずれかに記載の認知機能推定方法。
(付記11)
前記認知機能推定工程は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、付記10記載の認知機能推定方法。
【数2】
(付記12)
前記認知機能推定工程は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、付記10記載の認知機能推定方法。
【数3】
(付記13)
被験者の認知機能を推定するためのプログラムであって、
コンピュータに、足圧情報取得手順、推定パラメータ算出手順、判定手順、および出力手順を実行させ、
前記足圧情報取得手順は、被験者の足圧情報を取得し、
前記推定パラメータ算出手順は、前記足圧情報に基づいて、認知機能推定パラメータを算出し、
前記判定手順は、前記足圧情報および前記認知機能推定パラメータの少なくとも一方に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定し、
前記出力手順は、前記判定結果を出力することを特徴とする、プログラム。
(付記14)
前記推定パラメータ算出手順は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、および接地割合情報の少なくとも一方を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記判定手順は、前記足圧情報、前記接地時間差情報、および前記接地割合情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、付記13記載のプログラム。
(付記15)
前記判定手順は、下記式(1)に基づいて、前記被験者の認知機能障害の有無を判定する、付記13または14記載のプログラム。
【数1】
(付記16)
コンピュータに、さらに、認知機能推定手順を実行させ、
前記推定パラメータ算出手順は、前記認知機能推定パラメータとして、前記足圧情報に基づき、接地時間差情報、接地割合情報、足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも一つの情報を算出し、
前記接地時間差情報は、前記被験者の足裏において、最初に接地した箇所が接地してから、前記足裏における他の箇所が接地するまでの時間の情報を含み、
前記接地割合情報は、前記被験者の足が接地してから離れるまでの時間に対する、各部位が接地している時間の割合の情報であり、
前記足圧中心の軌跡長情報は、前記被験者の足が地面に接地してから完全に離れるまでの時間における、足圧中心を示す箇所を繋いだ長さの情報であり、
前記認知機能推定手順は、前記認知機能に障害があると判定された被験者について、前記足圧情報、前記接地時間差情報、前記接地割合情報、および前記足圧中心の軌跡情報からなる群から選択された少なくとも二つに基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定し、
前記出力手順は、前記判定結果および前記認知機能レベルの少なくとも一方を出力する、付記13から15のいずれかに記載のプログラム。
(付記17)
前記認知機能推定手順は、下記式(2)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、付記16記載のプログラム。
【数2】
(付記18)
前記認知機能推定手順は、下記式(3)に基づいて、前記被験者の認知機能レベルを推定する、付記16記載のプログラム。
【数3】
(付記19)
付記13から18のいずれかに記載のプログラムを記録している、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
(付記20)
足圧測定部および通信部を備え、
前記足圧測定部は、足圧情報として、被験者の足圧を測定可能であり、
前記通信部は、付記1から6のいずれかに記載の認知機能推定装置と通信可能であり、前記足圧情報を前記認知機能推定装置に送信可能である、認知機能推定端末。
(付記21)
付記20記載の認知機能推定端末と、付記1から6のいずれかに記載の認知機能推定装置とを備え、
前記認知機能推定端末と前記認知機能推定装置とが、通信可能である、認知機能推定システム装置。
本発明は、被験者の足圧情報に基づき、被験者の認知機能を推定できる。このため、本発明によれば、検査対象者への負担が少なく、簡便に認知機能を推定できる。したがって、本発明は、介護分野・医療分野等において極めて有用である。