(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159937
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4093 20060101AFI20221011BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G05B19/4093 A
B23Q15/00 303C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064426
(22)【出願日】2021-04-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 興治
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB08
3C269CC02
3C269EF39
3C269QB02
3C269QE18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】荒加工と仕上げ加工とで、工作機械の動作が変わるように細かい設定をしなくても、簡単な操作で好適な加工を実現する。
【解決手段】複数の加工工程を含む機械加工を工作機械に行わせるための加工プログラムを生成する情報処理装置であって、オペレーション分類として荒加工または仕上加工を選択するための選択画面を表示する表示部と、荒加工が選択された場合には、加工プログラムに対して時間優先モードを設定するコマンド、送り速度の変更を認めるコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可するコマンドの少なくともいずれかを加工プログラムに記述し、仕上げ加工が選択された場合には、加工プログラムに対して精度優先モードを設定するコマンド、送り速度を一定にするコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可しないコマンドの少なくともいずれかを加工プログラムに記述する加工プログラム生成部とを備えた情報処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工工程を含む機械加工を工作機械に行わせるための加工プログラムを生成する情報処理装置であって、
前記複数の加工工程に含まれる少なくとも1つの加工工程に対して、少なくとも荒加工および仕上加工を含む複数のオペレーション分類から1つのオペレーション分類を選択するための選択画面を表示する表示部と、
(i)前記選択画面で荒加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、時間優先モードを設定するコマンド、送り速度の変更を認めるコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可するコマンドの少なくともいずれかを前記加工プログラムに記述するよう判定し、(ii)前記選択画面で仕上げ加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、精度優先モードを設定するコマンド、送り速度を一定にするコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可しないコマンドの少なくともいずれかを前記加工プログラムに記述するよう判定する、加工プログラム生成部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
複数の加工工程を含む機械加工を工作機械に行わせるための加工プログラムを生成する情報処理装置であって、
前記複数の加工工程に含まれる少なくとも1つの加工工程に対して少なくとも荒加工と仕上加工とを含む複数のオペレーション分類から1つのオペレーション分類を選択するための選択画面を表示する表示部と、
(i)前記選択画面で荒加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、時間優先モードを設定するコマンドと、送り速度に関するコマンドと、を含む前記加工プログラムを生成し、(ii)前記選択画面で仕上げ加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、精度優先モードを設定するコマンドと、送り速度に関するコマンドと、工作機械内の振動発生部からの振動が生じている中で加工を許可しないコマンドと、を含む前記加工プログラムを生成する、加工プログラム生成部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項3】
前記選択画面での選択に応じて、APT(automatically programmed tools)言語で書かれた工具経路データに、荒加工か仕上加工かを分類するためのAPTコマンドを追加する工具経路データ生成部をさらに有し、
前記加工プログラム生成部は、前記工具経路データ生成部で、前記APTコマンドが追加された工具経路データに基づいて、前記加工プログラムを生成する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、オペレーションをツリー構造で表示し、ツリー構造で示されたオペレーションのいずれかが選択された場合に、選択されたオペレーションのオペレーション分類として荒加工、中仕上げ加工および仕上げ加工の3つからオペレーション分類を選択するための選択画面を表示する請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
複数の加工工程を含む機械加工を行ための加工プログラムを生成する情報処理プログラムであって、
前記複数の加工工程に含まれる少なくとも1つの加工工程に対してオペレーション分類として荒加工または仕上加工を選択するための選択画面を表示する表示ステップと、
(i)前記選択画面で荒加工が選択された場合に、前記加工プログラムに対して、時間優先モードを設定するコマンド、送り速度を変更を認めるコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可するコマンドの少なくともいずれかを設定し、(ii)前記選択画面によって仕上げ加工が選択された場合に、前記加工プログラムに対して、精度優先モードを設定するコマンド、送り速度を一定にするコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可しないコマンドの少なくともいずれかを設定する、加工プログラム生成ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、荒加工の場合と仕上げ加工の場合で工作機械の動作が変わるように細かく設定を変える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、荒加工の場合と仕上げ加工の場合では、工作機械の動作が変わるように加工プログラムにおいて細かい設定が必要だった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る装置は、
複数の加工工程を含む機械加工を工作機械に行わせるための加工プログラムを生成する情報処理装置であって、
前記複数の加工工程に含まれる少なくとも1つの加工工程に対して、少なくとも荒加工および仕上加工を含む複数のオペレーション分類から1つのオペレーション分類を選択するための選択画面を表示する表示部と、
(i)前記選択画面で荒加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、時間優先モードを設定するコマンド、送り速度の変更を認めるコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可するコマンドの少なくともいずれかを前記加工プログラムに記述するよう判定し、(ii)前記選択画面で仕上げ加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、精度優先モードを設定するコマンド、送り速度を一定にするコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可しないコマンドの少なくともいずれかを前記加工プログラムに記述するよう判定する、加工プログラム生成部と、
を備えた情報処理装置である。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る他の装置は、
複数の加工工程を含む機械加工を工作機械に行わせるための加工プログラムを生成する情報処理装置であって、
前記複数の加工工程に含まれる少なくとも1つの加工工程に対して少なくとも荒加工と仕上加工とを含む複数のオペレーション分類から1つのオペレーション分類を選択するための選択画面を表示する表示部と、
(i)前記選択画面で荒加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、時間優先モードを設定するコマンドと、送り速度に関するコマンドと、を含む前記加工プログラムを生成し、(ii)前記選択画面で仕上げ加工が選択された場合には、前記加工プログラムに対して、精度優先モードを設定するコマンドと、送り速度に関するコマンドと、工作機械内の振動発生部からの振動が生じている中で加工を許可しないコマンドと、を含む前記加工プログラムを生成する、加工プログラム生成部と、
を備えた情報処理装置である。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
複数の加工工程を含む機械加工を行ための加工プログラムを生成する情報処理プログラムであって、
前記複数の加工工程に含まれる少なくとも1つの加工工程に対してオペレーション分類として荒加工または仕上加工を選択するための選択画面を表示する表示ステップと、
(i)前記選択画面で荒加工が選択された場合に、前記加工プログラムに対して、時間優先モードを設定するコマンド、送り速度を変更を認めるコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可するコマンドの少なくともいずれかを設定し、(ii)前記選択画面によって仕上げ加工が選択された場合に、前記加工プログラムに対して、精度優先モードを設定するコマンド、送り速度を一定にするコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可しないコマンドの少なくともいずれかを設定する、加工プログラム生成ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザが簡単な操作で、好適な加工を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第2実施形態に係る工作機械システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第2実施形態に係る情報処理装置における工程編集画面の一例を示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る情報処理装置における工程編集画面の一例を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る情報処理装置における工程編集画面の一例を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る情報処理装置におけるAPT-CLデータの一例を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る情報処理装置における送り速度制御の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る情報処理装置におけるNCプログラム生成処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図9】第2実施形態に係る情報処理装置におけるNCプログラム生成処理のためのテーブルを示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る情報処理装置において生成されたNCプログラムの一例を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る情報処理装置において生成されたNCプログラムの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての情報処理装置100について、
図1を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、情報処理装置100は、複数の加工工程を含む機械加工を行ための加工プログラムを生成する装置であり、表示部101と加工プログラム生成部102とを備えている。
【0013】
表示部101は、複数の加工工程に含まれる少なくとも1つの加工工程に対してオペレーション分類として荒加工または仕上加工を選択するための選択画面111を表示する。
【0014】
加工プログラム生成部102は、選択画面111で荒加工が選択された場合には、加工プログラムに対して、時間優先モードを設定するコマンド、送り速度を変更を認めるコマンド、およびマガジン旋回中の加工を許可するコマンドの少なくともいずれかを設定する。
【0015】
本実施形態によれば、ユーザは、選択画面でオペレーション分類を選択するだけで、適正に設定された加工プログラムを生成することができ、荒加工か仕上げ加工かに応じた加工を実現することが可能となる。
【0016】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る工作機械システム200について、
図2以降を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係る工作機械システム200の全体構成について説明するための図である。
【0017】
(システム全体構成)
工作機械システム200は、情報処理装置201とCNC(Computerized 工作機械202とを含む。
【0018】
工作機械202としては、例えば、ワークに付加加工(Additive Manufacturing)を加える機械、ワークに除去加工(Subtractive Manufacturing)を加える機械、レーザなどの光を照射して加工する機械などが挙げられる。具体的には、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤、多軸加工機、レーザ加工機、積層加工機等のように、NC(Numerical Control)プログラムに基づいて数値制御され、金属、木材、石材、樹脂等のワークに対して、旋削、切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ、成形、微細加工、積層加工等の各種の加工を施す機械であればよい。さらに、工作機械202は計測機能を有するものでもよく、タッチプローブやカメラ等の計測器を用いてワークの寸法等を計測可能に構成されたものでもよい。
【0019】
工作機械202は、例えば3軸加工機であり、機械要素として、主軸モータ226および送り軸モータ227を含む。主軸モータ226は、工具を回転させ、送り軸モータ227は、ボールねじ等を介してテーブルをX,Y軸方向に直線移動させたり、工具またはテーブルをZ軸方向に直線移動させたりする。工作機械202はもちろん5軸加工機でもよい。
【0020】
数値制御装置220は、工作機械202における加工を数値制御する装置であり、NCプログラム250を解釈する解釈部としてのNCインタプリタ221と各種コントローラに制御指令を出力する指令出力部222とを含む。
【0021】
主軸モータサーボコントローラ223は、指令出力部222からの制御指令に基づいて主軸モータ226を制御する。送り軸モータサーボコントローラ224は指令出力部222からの制御指令に基づいて送り軸モータ227を制御する。
【0022】
数値制御装置220は、情報処理装置201で生成されたNCプログラム250を解釈し、プログラム中に埋め込まれたタグ(コメントやサブルーチン呼び出しのGコード)を認識して、工作機械202に特殊な制御指令を出力する。
【0023】
情報処理装置201は、いわゆるCAMのポストプロセッサであり、CAM240から取得した工具経路データとしてのCLデータ(cutter location data)230に対して工程編集を行った後、数値制御装置220で用いられる加工プログラムとしてのNCプログラム250を生成する。
【0024】
CAM240は、メインプロセッサ241を有する。メインプロセッサ241は、CAD(Computer-Aided Design)260から取得した形状データに基づいてCLデータ230を生成する。ここでは、CLデータ230をCAM240から取得する場合について説明したが、CAM240から取得したNCプログラムをリバースエンジニアリングして必要情報を抽出しても同様にAPT-CLデータを生成することができる。
【0025】
(情報処理装置の構成)
情報処理装置201は、工程編集画面表示部211と、オペレーション分類設定部212と、APT(Automatically Programmed Tool)-CLデータ生成部213と、NCプログラム生成部215とパラメータテーブル216とを含む。
【0026】
工程編集画面表示部211は、工程編集画面という工程(=オペレーション)ごとのパラメータ設定を行うGUIとして、
図3に示すような工程編集画面300を表示する。工程編集画面300は、オペレーションツリー表示部301とパラメータ設定部302とを含む。オペレーションツリー表示部301は、系統(主軸または刃物台)ごとに、オペレーションをツリー構造で表示する。オペレーションとは、加工工程のグループである。単一の加工工程(平面加工、穴加工、溝加工など)や連続した加工工程は1つのオペレーションとしてグループ化される。
図3の工程編集画面300は、下刃物台ありの工作機械の例であるため、第1系統、第2系統という2つの系統が表示されているが、下刃物台を有さない5軸加工機などの場合には、第1系統のみが表示される。
【0027】
図4に示すように、オペレーションツリー表示部301において、1つのオペレーション401が選択されると、パラメータ設定部302には、選択したオペレーションのパラメータが表示され、各パラメータの編集が可能となる。具体的には、ワーク座標系、座標系原点、回転軸の割り出し角度、安全点Z最大値、安全点Zクリアランス、ダイナミックフィクスチャオフセット、ワーク設置誤差補正、傾斜面加工指令などのパラメータの編集が可能となる。
【0028】
図5に示すように、パラメータ設定部302に表示されるパラメータの1つに「オペレーション分類」があり、プルダウンメニューが用意されている。ユーザは、プルダウンメニューにより、「Rough(荒加工)」「Middle Finish(中仕上げ加工)」「Finish(仕上げ加工)」の3つから一つを選ぶことができる。
【0029】
ユーザによる選択を受けて、オペレーション分類設定部212は、各オペレーションについて、それぞれ、「Rough(荒加工)」「Middle Finish(中仕上げ加工)」「Finish(仕上げ加工)」の3つのいずれかを設定登録する。
【0030】
APT-CLデータ生成部213は、登録されたオペレーション分類に応じた荒加工か仕上げ加工を分類するためのAPTコマンドを追加したAPT-CLデータ214を生成する。具体的には、荒加工の場合、
図6に示すように、「OPTYPE/ROUGH」というAPTコマンド601を所定位置に挿入する。中仕上げ加工の場合、「OPTYPE/MIDDLE」、仕上げ加工の場合、「OPTYPE/FINISH」というAPTコマンドを同じ位置に挿入する。
【0031】
次に、NCプログラム生成部215は、パラメータテーブル216を参照して、APT-CLデータからNCプログラムを生成する。
【0032】
この時、NCプログラム生成部215は、APT-CLデータ214に記述されたAPTコマンドが、「OPTYPE/ROUGH」、「OPTYPE/MIDDLE」、「OPTYPE/FINISH」のいずれであるか判定する。そして、NCプログラムにおいて、そのAPTコマンドに応じた指令(Gコード、Mコード)を以下の(1)~(3)のように記述する。
【0033】
(1)加工モード選択(G332)において、荒加工なら「時間優先モード」、中仕上げ加工なら「中間モード」、仕上げ加工なら「精度優先モード」といったように目的に合わせた加工モードを設定する。「時間優先モード」とは、加工時間の短縮を最優先したモードである。「精度優先モード」とは、加工精度を優先したモードであり、加工精度や仕上げ面を要求される加工に使用する。「中間モード」は、時間優先モードと精度優先モードの中間モードであり、精度と時間を要求される中仕上げ加工に使用する。
具体的には、NCプログラムにおいて「G332 R1」「G332 R2」「G332 R3」「G332 R4」のいずれかが、所定の位置(例えば、位置検出用のMコード(M380)などの後)に挿入される。
引数であるR1~R4はそれぞれ以下の場合に設定される。
R1:荒加工の時に設定
R2:中仕上げ加工の時に設定
R3:仕上げ加工の時に設定
R4:設定したい場合のみユーザが手動で設定(ユーザが特に精度を気にして加工したい時に使われるモード)
【0034】
(2)
図7に示すように、切削力推定による送り速度制御を行う指令において、荒加工なら切削力を平準化するように送り速度を変化させることで加工時間を短縮する。一方、仕上げ加工であれば、頻繁に送り速度を変えると引き目が変わるため面品位の低下につながることがあるため、送り速度を変化させないように設定する。ポスト出力時のNCプログラムには、送り速度として、切削力のシミュレーション結果に応じたF値が付加される。荒加工の時には切削力が平準化されるようなF値を出力する。
【0035】
切削力のシミュレーションにおいて、工具の摩耗や工具のびびりなどを考慮した切削力の目標値が算出される。送り速度は、その切削力の目標値に近づくように変更するものである。
【0036】
(3)仕上げ加工モード選択(M380、M381)のオンオフ設定を行う。これらは、仕上げ加工の際にマガジンを制御するMコードである。マガジン旋回中に仕上げ加工を行うと、振動により加工面の加工精度が悪くなるおそれがある。そこで仕上げ加工の場合には、仕上げ加工のプログラムの前後に、M380(仕上げ加工モードオン)とM381(仕上げ加工モードオフ)を挿入する。これにより、工作機械では、マガジンの旋回が終了してから仕上げ加工が行われるように制御される。
【0037】
なお、ここではマガジンの旋回と仕上げ加工とのタイミング制御を行っているが、本発明はこれに限定されるものではない。マガジン以外の振動発生部からの振動が生じている中で加工を許可しないコマンドをNCプログラムに挿入してもよい。例えば、振動発生部としては、マガジン以外に、チップコンベア、クーラント放出部のポンプなどが挙げられる。
【0038】
図8は、NCプログラム生成部215による処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0039】
NCプログラム生成部215は、APT-CLデータ214を入力すると、ステップS801において、OPTYPEを判定し、荒加工の場合、ステップS803に進み、G332を時間優先モードにする。次に、ステップS805では、加工時間を短縮化させるべく送り速度を柔軟に変化させる設定とする。
【0040】
ステップS801において、OPTYPEを判定した結果、中仕上げ加工の場合、ステップS809に進み、G332を中間モードとした後、ステップS811で、加工時間を短縮化させるべく送り速度を柔軟に変化させる設定とする。さらにステップS813では、中仕上げ加工指令の前後にM380、M381を挿入し、加工中のマガジン旋回を停止させる。
【0041】
ステップS801において、OPTYPEを判定した結果、仕上げ加工の場合、ステップS815に進み、G332を精度優先モードとした後、ステップS811で、送り速度を一定にする設定とする。さらにステップS813では、仕上げ加工指令の前後にM380、M381を挿入し、加工中のマガジン旋回を停止させる。
【0042】
これらの制御処理は、
図9に示すパラメータテーブル216を参照することにより可能となる。
【0043】
図10、
図11は、NCプログラム生成部215が生成したNCプログラムの具体例を示す。
図6に示したように、APT-CLデータ214においてAPTコマンドとしてOPTYPE/ROUGH(荒加工)601が設定された場合には、
図10に示すように、M380のコードは挿入されず、G332 R1というGコードおよび引数1001が挿入される。
また、切削部分1002においては、切削力が高い部分が送り速度が遅くなり、切削力が低い部分では送り速度が早くなるように、G01の引数が設定される。
一方、APT-CLデータ214においてAPTコマンドとしてOPTYPE/FINISH(仕上げ加工)が設定された場合には、
図11に示すように、M380およびM381のコード1101が挿入され、G332 R3というGコードおよび引数1102が挿入される。切削部分1103においては、送り速度が一定となるように、G01の引数が設定される。
以上の通り、本実施形態によれば、ユーザは、選択画面でオペレーション分類を選択するだけで、適正に設定された加工プログラムを生成することができ、荒加工か仕上げ加工かに応じた加工を実現することが可能となる。
【0044】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。