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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159949
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】噴霧システム及び噴射部材
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/14 20060101AFI20221011BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F24F6/14
F24F6/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064446
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100154634
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 みさ子
(72)【発明者】
【氏名】岡 力矢
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055AA07
3L055BB01
3L055DA01
3L055DA12
3L055DA20
(57)【要約】
【課題】安全性とミストの噴霧範囲を向上させ得る噴霧システムを提供できる。
【解決手段】本発明は、次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給部と、前記次亜塩素酸水のミストを生成するミスト生成部と、ミストを上方向へ誘導する上誘導配管と、前記上誘導配管に接続され、横方向に延びる横誘導配管と、前記横誘導配管の下端よりも下方向に設けられ、ミストを下方向へ誘導する下誘導配管と、前記下誘導配管の下流側に設けられ、ミストを噴射する噴射部と、噴霧システムの筐体または横誘導配管に設けられ、ミストを横方向へ拡散するために風を送出する拡散ファンとを有するようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給部と、
前記次亜塩素酸水のミストを生成するミスト生成部と、
ミストを上方向へ誘導する上誘導配管と、
前記上誘導配管に接続され、横方向に延びる横誘導配管と、
前記横誘導配管の下端よりも下方向に設けられ、ミストを下方向へ誘導する下誘導配管と、
前記下誘導配管の下流側に設けられ、ミストを噴射する噴射部と、
前記噴射部から噴射されたミストを横方向へ拡散するために風を送出する拡散ファンと
を備えることを特徴とする噴霧システム。
【請求項2】
前記噴射部は、床面からの高さが1m未満となるように取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項3】
前記拡散ファンは、
噴霧システムの筐体に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の噴霧システム。
【請求項4】
前記拡散ファンは、
水平方向から上15°~下45°の範囲で上下方向に傾斜して取り付けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の噴霧システム。
【請求項5】
前記拡散ファンは、
前記横誘導配管に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の噴霧システム。
【請求項6】
前記拡散ファンは、
水平方向から下45°の範囲で下方向に傾斜して取り付けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の噴霧システム。
【請求項7】
前記噴射部および拡散ファンは、
前記噴射部から噴射されるミストと、前記拡散ファンから送出される気流とが、45°~100°の範囲で交差するように取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項8】
前記噴射部および拡散ファンは、
複数設けられている
ことを特徴とする請求項4または6に記載の噴霧システム。
【請求項9】
前記横誘導配管に風を送出する搬送ファン
を有することを特徴とする請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項10】
前記次亜塩素酸水供給部及び前記ミスト生成部を収納する筐体と、
前記筐体の下に取り付けられ、前記筐体を自動的に回転させる自動回転部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項11】
前記次亜塩素酸水供給部は、
前記次亜塩素酸水を貯留するタンクである
ことを特徴とする請求項8に記載の噴霧システム。
【請求項12】
前記次亜塩素酸水供給部は、
供給される電解質水溶液と原水とを電気分解する電気分解部である
ことを特徴とする請求項9に記載の噴霧システム。
【請求項13】
次亜塩素酸のミストを上方向へ誘導する上誘導配管と、
前記上誘導配管に接続され、横方向に延びる横誘導配管と、
前記横誘導配管の下側に設けられ、前記ミストを下方向へ噴射する噴射部と、
前記横誘導配管に設けられ、ミストを横方向へ拡散するために風を送出する拡散ファンと
を備えることを特徴とする噴射部材。
【請求項14】
前記上誘導配管に接続され、前記上誘導配管に風を送出する搬送ファン
を備えることを特徴とす請求項13に記載の噴射部材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば酸性電解水のミストを床面付近に拡散させることが可能な噴霧システムに対して好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、電解水などの殺菌力が高い次亜塩素酸水を噴霧する噴霧装置としては、超音波を用いてミストにした電解水を上方へ向けて噴霧するミスト噴霧装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-224856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかるミスト噴霧装置では、ユーザが誤って次亜塩素酸水を大量に吸い込むことを未然に防止することにより、安全性を高めながら、広範囲に渡ってミストを拡散させることができれば、次亜塩素酸水のミストの活用の場を広げることができると考えられる。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、安全性を高めつつ、広範囲に渡って次亜塩素酸水を拡散させ得る噴霧システム及び噴射部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明の噴霧システムは、
次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給部と、
前記次亜塩素酸水のミストを生成するミスト生成部と、
ミストを上方向へ誘導する上誘導配管と、
前記上誘導配管に接続され、横方向に延びる横誘導配管と、
前記横誘導配管の下端よりも下方向に設けられ、ミストを下方向へ誘導する下誘導配管と、
前記下誘導配管の下流側に設けられ、ミストを下方向へ向けて噴射する噴射部と、
前記噴射部から噴射されたミストを横方向へ拡散するために風を送出する拡散ファンとを備えることを特徴とする。
【0007】
さらに本発明の次亜塩素酸水を噴射する噴射部材は、次亜塩素酸のミストを上方向へ誘導する上誘導配管と、
前記上誘導配管に接続され、横方向に延びる横誘導配管と、
前記横誘導配管の下側に設けられ、前記ミストを下方向へ噴射する噴射部と、
噴霧システムの筐体に設けられ、ミストを横方向へ拡散するために風を送出する拡散ファンと
を備えることを特徴とする噴射部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、設計の自由度を向上させ得る噴霧システム及び噴射部材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態における噴霧システムの構成を示す略線図(1)である。
図2】第1の実施の形態における噴霧システムの構成を示す略線図(2)である。
図3】第1の実施の形態における噴霧システムの構成を示す略線図(3)である。
図4】第1の実施の形態における拡散ファンの調整カバーの構成を示す略線図(1)である。
図5】第1の実施の形態における拡散ファンの調整カバーの構成を示す略線図(2)である。
図6】第1の実施の形態における噴射部材の構成を示す略線図である。
図7】第1の本実施の形態における噴射部材の断面構成を示す略線図である。
図8】第1の実施の形態における絞り部の作用を説明する略線図である。
図9】第1の実施の形態における絞り部の構成を示す略線図である。
図10】第2の実施の形態における噴霧システムの構成を示す略線図である。
図11】他の実施の形態における噴霧システムの構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0011】
<第1の実施の形態>
図1は噴霧装置1の正面図、図2は噴霧装置1の背面図、図3は噴霧装置を右側から見た側面図である。図1~3に示すように、噴霧装置1は、筐体2と、該筐体2の上部に配置された噴射部材3とを有している。噴霧装置1は、筐体2内部の貯水タンク5に貯留された次亜塩素酸水を噴射部材3に取り付けられた噴射部44、45から下方向へ向けて噴射する。噴射されたミスト(霧状の微細水滴)は、筐体2に取り付けられた拡散ファン81、82によって、さらに横方向へ拡散される。なお、図6で説明するドレイン機構については、図1~3では省略している。
【0012】
なお図示しないが、噴霧装置1は、図示しないMPU(Micro Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成される制御部20(図示せず)が噴霧装置1の全体を統括的に制御するようになされている。
【0013】
筐体2は、貯水タンク5と、ミスト生成部4とが収納されている。貯水タンク5は、次亜塩素酸水を貯留するタンクであり、その構成は制限されず、公知のタンクを使用することができる。例えば10リットル程度のガロンボトルを初めとする10~100リットル容量のタンクが好適に設置される。なお、図2以降ではミスト生成部4と貯水タンク5とを省略している。
【0014】
ミスト生成部4は、貯水タンク5と隣接して設けられており、貯水タンク5に貯留されている次亜塩素酸水をミストにして噴射部材3へと供給する。ミスト生成部4のミスト生成方法に制限はないが、超音波方式、気化方式又は加熱によるスチーム方式が好適に使用される。
【0015】
貯水タンク5に貯留される次亜塩素酸水としては、特に制限はなく、電気分解により生成された電解水や次亜塩素酸ナトリウムを溶解させpH調整した次亜塩素酸溶解水を適宜選択して使用することができる。電解水としては、pH2~6.5の酸性電解水、pH6.5~8の中性電解水、酸性または中性電解水を水道水で希釈したもののいずれを使用しても良く、噴射の用途に応じた電解水が使用される。例えば、除菌を目的にする場合には、酸性電解水が好適に使用される。酸性電解水は、次亜塩素酸ナトリウム水と比較して低い塩素濃度で同等の殺菌効果を得ることが可能である。酸性電解水を使用する場合の塩素濃度は、安全性と殺菌力を担保するため、5~50ppm、特に10~30ppmであることが好ましい。
【0016】
噴射部材3は、上方向へ延びる上誘導配管31の上端に横方向へ延びる横誘導配管32,33がそれぞれ接続され、全体としてT字形状を有している。なお、「上方向へ延びる」とは、鉛直上方向から±45°の範囲で前後左右方向に傾斜を有していても良い。また、「横方向へ延びる」とは、水平方向から±45°の範囲で上下方向に傾斜を有していても良い。
【0017】
上誘導配管31は、上流である下方向から下流である上方向へ向けて、大径部31A、中継部31B、小径部31Cを有している。大径部31Aは小径部31Cより径が大きく、下から上方向へ向けて径が小さくなる中継部31Bによって両者が接続されている。
【0018】
上誘導配管31の上端には、横方向へ延びる横誘導配管32,33が接続されている。なお、図では横誘導配管32,33が左右方向に延びているが、前後方向に延びていても良い。
【0019】
横誘導配管32,33の左右端部には、下誘導配管34,35が接続されている。下誘導配管34,35は、配管の方向を下方向へ変える。下誘導配管34,35の下方向の末端には、ミストを噴射する噴射部44、45が形成されている。ユーザが誤って次亜塩素酸水を大量に吸い込むことを未然に防止するため、噴射部44、45の床面からの高さは1.2m未満、特に1.0m未満であることが好ましく、子どもがいる場合には子どもの胸以下(例えば50cm以下)の位置であることが望ましい。噴射部44,45からの高さは、子どもの有無などに応じて適宜選択されることが好ましい。また、「下方向」とは、鉛直下方向から±45°の範囲を含み、鉛直下方向から前後左右方向に傾斜を有していても良い。
【0020】
例えば、図4及び図5に示すように、拡散ファン81、82の前面側に風向きを調整するための風向き調整カバー81A,81Bを設けても良い。風向き調整カバー81Aでは、開口部217Aの下側に沿うようにして、前側に突出し、先端に行くほど径が小さくなり(すなわち円錐の円を半分に割って、一部を切り取った)、前側に行くにつれて底の位置が上昇するU字形状の翼部219が設置されている。上下方向に同位置から突出する翼部219により、上下方向へ広がろうとする気流を進行方向へと変化させることができ、翼部219がない場合と比較して、風の進行方向へ向かった強い流れを形成することができる。
【0021】
また、十字枠217Bの上方向の左右側には、ファン215から送出される風の左右方向への拡散を制限する風向き調整部217Dが設けられている。これにより、風向き調整カバー81A,81Bでは、風の指向性をコントロールすることが出来る。
【0022】
また、上誘導配管31の下方向末端の近傍には、風を送出する搬送ファン6に接続されたファン配管7が接続されている。なお、下方向末端の近傍とは、上誘導配管31の上流側末端から20cm以内にファン配管7の下端が位置することを言う。
【0023】
拡散ファン81、82は、筐体2の左右側面に設けられている。拡散ファン81、82は、噴射部44、45からそれぞれ噴射されたミストを拡散するために、横方向に風を送出するように取り付けられている。また、「横方向に風を送出するように」とは、水平方向から上15°~下45°の範囲で上下方向に傾斜して取り付けられていても良い。このとき、噴射部44、45から噴射されるミストの中心線と、拡散ファン81、82から送出される気流の中心線との成す交差角αが45°~100°の範囲で交差するように取り付け角を設定するのが望ましい。交差角αは、拡散ファン81、82の取付位置などに応じて、適宜選択される。
【0024】
従って、ミスト生成部4から上誘導配管31に供給されるミストは、搬送ファン6からの風に付勢され、搬送ファン6からの風と共に横誘導配管32,33に送出されると共に、下誘導配管34,35を通って噴射部44,45から下向きに噴射される。搬送ファン6による付勢の効果で、ミストは速やかに噴射口44D、45Dから下方向に噴射され、拡散ファン81、82から送出される気流と衝突することによって、さらに横方向に拡散される。これにより、ユーザの口鼻より低い範囲にミストを拡散させることができるため、安全性を高めることができる。搬送ファン6の上流側(図では後方向)には、後述する下側遮断部42,43と同様のC型形状を有する下側遮断部(図示しない、ギャップ形成部は設けられてない)が設置されており、搬送ファン6の後側へ水滴が行くのを抑制している。また、搬送ファン6の後側には、風塵の混入防止用のメッシュが設置されてもよい。
【0025】
ここで、ミスト(微細水滴)は、衝突を繰り返すと徐々に大きくなって水滴となり、下に落ちてしまうという特性を有している。上方向にミストを噴射する場合には、水滴がそのまま配管を伝って貯水タンクに戻るようにできる。しかしながら、横方向及び下方向へミストを移動させると、移動に伴って水滴が発生し、横誘導配管の内部に溜ったり、噴射部から水滴がしたたり落ちてしまうという問題が発生する。
【0026】
そこで本願発明では、水滴の発生を抑制したり、水滴を貯水タンク5に戻るようにしたりすることにより、噴射部45から落ちる水滴を低減している。
【0027】
図6に、噴射部材3の内部構造及を破線でドレイン構造を示している。また、図7(A)~(D)に、図6におけるA-A‘~D-D’断面をそれぞれ示している。
【0028】
図6及び図7に示すように、大径部31Aの下端近傍(下端から10cm以内)には、絞り部41が設置されている。図8に示すように、絞り部41は、中心部分に小径部31Cより内径が小さい(好ましくは直径が小径部31Cの70~30%)径を有する絞り孔41Aを備える円筒部41Dと、絞り孔41Aから外側へ向けて僅か(3~20°)に下方向に傾斜する周囲遮断部41Bと、周囲遮断部41Bの周縁部に形成された複数(図では4個)の周縁孔41Cとを有している。例えば、絞り孔41Aの内径DAが16mm、大径部31Aの内径及び周囲遮断部41Bの外径DBが60mm、周囲遮断部41Bの厚さTが15mmに設計される。
【0029】
従って、上方向に進むミストは、周囲遮断部41Bによって一部は反射されて貯水タンク5へと戻り、中心部分のミストが勢い良く絞り孔41Aから噴出する。このとき、周縁付近に位置し、衝突確率が高いミストと、周囲遮断部41Bによって反射されたミストのうち、重量の大きい大きめのミストは絞り孔41Aを通過することができず、小さいミストが選択的に絞り孔41Aを通過することができる。また、下流側から伝わって下る水滴を、周縁孔41Cから貯水タンク5へと戻すことができる。周縁孔41Cの形状や大きさに制限は無いが、例えば周縁孔41Cは、底辺が三角形状の切り欠きとして形成される。
【0030】
図9に示すように、絞り部41は、絞り孔41Aからミストを上昇させると共に、搬送ファン6から送出される風の方向を前方向から上方向へ偏向する。このとき、ミストは径の小さい絞り孔41Aから勢いよく噴出するため、押し戻されることなく上方向へと進行できる。また、周囲遮断部41Bから突出する円筒部41Dを有することにより、風の進行方向に乱れを形成し、風にミストを巻き込んで上昇させることができる。
【0031】
横誘導配管32,33の分岐部分(上誘導配管31との接続部分)の近傍(左右方向の接続部より20cm以内)には、下側遮断部42,43が設置されている。下側遮断部42,43は、外側が横誘導配管32,33とほぼ同一径、中心部がくり抜かれたドーナツ形状において、上側が60~150°(図では約90°)の切り欠きを有するC型形状を有している。中心部の直径は、横誘導配管32,33の内径の70~30%である。また、下側遮断部42,43の下側には、横誘導配管32,33との隙間を形成するギャップ形成部42B,43Bが形成されている。
【0032】
下側遮断部42,43は、重量が軽くて上側に位置するミスト及び衝突確率が小さい中心近傍のミストを選択的に通過させると共に、下流側から伝わって下る水滴を、ギャップ形成部42B,43Bから貯水タンク5へと戻すことができる。
【0033】
横誘導配管32,33には、下流側から上流側に向かって下方向へ傾斜する傾斜部46、47が設置されている。傾斜部46、47は、下流側から伝わって下る水滴を上流側へ誘導し、ギャップ形成部42B,43Bを介して貯水タンク5へと戻すことができる。なおこのギャップ形成部42B,43Bは、傾斜部46,47が設置された場合のみ設けられる。すなわち傾斜部46,47が設置されないときには、下側遮断部42,43の下方向は横誘導配管32,33と接触して設けられる。
【0034】
横誘導配管32,33の左右末端(下流側)には、ミストの方向を下側へ変える下誘導配管34,35が形成されている。下誘導配管34,35は、外側が緩やかな曲線を描いており、ミストを滑らかなカーブでミストの方向を下方向へ変化させる。下誘導配管34,35の下端には、噴射部44,45が接続されている。
【0035】
噴射部45は、上下方向が開放された中心円筒44A,45Aと、該中心円筒44A,45Aから上方向へ向かって広がる誘導部44F,45Fを有している。中心円筒44A,45Aの外側に形成された底面45Bと中心円筒44A,45Aの上端との位置に差異が生じる。言い換えると、底面45Bに形成された孔に対して逆円錐形の本体部分(誘導部44F,45F)と、円錐の先端から伸びる足である中心円筒44A,45Aを有するじょうご形状の先端が噴射口45Dとして設置されている。
【0036】
このため、底面45Bと中心円筒44A,45Aの上端との差異に応じた水滴貯留部44C,45Cが形成される。水滴貯留部48Cには、下誘導配管34,35より下流で発生する水滴を貯留することができ、水滴を中心円筒44A,45Aの下方向の開口部である噴射口45Dから落ちることを抑制できる。
【0037】
貯留部48には、貯留される水滴を排出するドレイン機構が設けられている。貯留部48の底面45Bには底面孔44E,45Eが設けられており、ドレイン管51,52がそれぞれ接続されている。ドレイン管51,52は、連結部53で連結され、共通排出管54の排出口54Aから排出される。共通排出管54の先端部分は、ドレインタンク55に挿入されており、水滴はドレインタンク55に貯留される。
【0038】
また、ドレイン機構(底面孔44E,45E、ドレイン管51,52、連結部53、共通排出管54、ドレインタンク55)を設けない構成としても良い。この場合、例えば噴射部44,45は、ネジなどの係止部で取り外し可能な状態で嵌合されており、噴射部44,45のみを簡単に取り外すようにすれば、水滴貯留部44C,45Cに貯留された次亜塩素酸水を簡単に廃棄できる。
【0039】
<第2の実施の形態>
次に、図10を用いて第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、拡散ファンが横誘導配管132、133に取り付けられている点が第1の実施の形態と相違している。第1の実施の形態と対応する箇所に100を加算した符号を附し、同一箇所についての説明を省略する。
【0040】
噴霧装置101は、第1の実施の形態と同様に、筐体102と、該筐体102の上部に配置された噴射部材103とを有している。噴霧装置101は、筐体102内部の貯水タンク105に貯留された次亜塩素酸水を噴射部材103に取り付けられた噴射部144、145から下方向へ向けて噴射する。ユーザが誤って次亜塩素酸水を大量に吸い込むことを未然に防止するため、噴射部144、145の床面からの高さは1m未満であることが望ましい。また、「下方向へ噴射」とは、鉛直下方向から±45°の範囲であり、前後左右方向に傾斜を有していても良い。
【0041】
拡散ファン181、182は、横誘導配管132、133に設けられている。拡散ファン181、182は、噴射部144、145からそれぞれ噴射されたミストを拡散するために、横方向に風を送出するように取り付けられている。また、「横方向に風を送出するように」とは、水平方向から―下45°の範囲で下方向に傾斜して取り付けられていても良い。このとき、噴射部144、145から噴射されるミストの中心線と、拡散ファン181、182から送出される気流の中心線とが、45°~100°の範囲で交差するように取り付け角を設定するのが望ましい。
【0042】
従って、ミスト生成部104から上誘導配管131に供給されるミストは、搬送ファン106からの風に付勢され、搬送ファン106からの風と共に横誘導配管132,133に送出されると共に、下誘導配管134,135を通って噴射部144,145から下向きに噴射される。搬送ファン6による付勢の効果で、ミストは速やかに噴射口144D、145Dから下方向に噴射され、拡散ファン181、182から送出される気流と衝突することによって、さらに横方向に拡散される。これにより、ユーザの口鼻より低い範囲にミストを拡散させることができるため、安全性を高めることができる。第1の実施の形態と同様に、搬送ファン106の上流側(図では後方向)には、後述する下側遮断部142,143と同様のC型形状を有する下側遮断部(図示しない、ギャップ形成部は設けられてない)が設置されており、搬送ファン106の後側へ水滴が行くのを抑制している。また、搬送ファン106の後側には、風塵の混入防止用のメッシュが設置されてもよい。
【0043】
<動作及び効果>
以下、上記した実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて課題及び効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。また、各特徴に記載した用語の意味や例示等は、同一の文言にて記載した他の特徴に記載した用語の意味や例示として適用しても良い。
【0044】
以上の構成によれば、本発明の噴霧システム(噴霧装置1)は、
次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給部(貯水タンク5)と、
前記次亜塩素酸水のミストを生成するミスト生成部(ミスト生成部4)と、
ミストを上方向へ誘導する上誘導配管(上誘導配管31)と、
前記上誘導配管に接続され、横方向に延びる横誘導配管(横誘導配管32,33)と、
前記横誘導配管の下端よりも下方向に設けられ、ミストを下方向へ誘導する下誘導配管(下誘導配管34)と、
前記下誘導配管の下流側に設けられ、ミストを噴射する噴射部(噴射部44,45)と、
噴霧システムの筐体または前記横誘導配管に設けられ、ミストを横方向へ拡散するために風を送出する拡散ファン(拡散ファン81、82)とを備えることを特徴とする。
【0045】
これにより、噴霧システムでは、重力の関係により上方向に進行する次亜塩素酸水のミストを下方向へ向けて噴霧し、床面付近に拡散できるため、ユーザが誤って次亜塩素酸水を大量に吸い込むことを未然に防止し、安全性を高めることができる。また、広範囲に渡って次亜塩素酸水を拡散することもできる。
【0046】
噴射システムにおいて、前記噴射部は、床面からの高さが1m未満となるように取り付けられていることを特徴とする。
【0047】
これにより、噴射システムでは、噴射部の下に入り込む危険性を最大限抑制でき、安全性をたかめることができる。
【0048】
噴射システムにおいて、前記拡散ファンは、噴霧システムの筐体に設けられている
ことを特徴とする。
【0049】
これにより、噴射システムにおける下方向から風を送出できるため、噴射部から供給レ瑠ミストとは違う方向に風を送出することができ、ミストの拡散性を調整しやすくできる。
【0050】
噴射システムにおいて、前記拡散ファンは、
水平方向から上15°~下45°の範囲で上下方向に傾斜して取り付けられていることを特徴とする。
【0051】
これにより、下方向へ向けて噴射されるミストを水平方向に近い状態へと誘導拡散することができる。
【0052】
噴射システムにおいて、前記拡散ファンは、
前記横誘導配管に設けられていることを特徴とする。
【0053】
これにより、噴射部と近い位置に対して斜め下へ向かう風を送出できるため、拡散前のミストに直接風を吹付けることができ、拡散性を向上できる。
【0054】
噴射システムにおいて、前記拡散ファンは、
水平方向から下45°の範囲で下方向に傾斜して取り付けられていることを特徴とする。
【0055】
これにより、下方向へ向かうミストの流れを変化させ、ミストを効果的に拡散することができる。
【0056】
噴射システムにおいて、前記噴射部および拡散ファンは、
前記噴射部から噴射されるミストと、前記拡散ファンから送出される気流とが、45°~100°の範囲で交差するように取り付けられている
ことを特徴とする。
【0057】
これにより、下方向へ向かうミストの流れを変化させ、ミストを効果的に拡散することができる。
【0058】
噴射システムにおいて、前記噴射部および拡散ファンは、複数設けられていることを特徴とする。これにより、複数の噴射部および拡散ファンから、効率良くかつ大量にミストを噴射できる。
【0059】
噴射システムにおいて、前記横導配管に風を送出する搬送ファン(搬送ファン6)を有する。これにより、噴射部から噴出されるミストが指向性を有するため、拡散ファンの風をぶつけることができ、ミストのコントロールがし易くなる。
【0060】
噴射システムにおいて、
前記次亜塩素酸水供給部及び前記ミスト生成部を収納する筐体と、
前記筐体の下に取り付けられ、前記筐体を自動的に回転させる自動回転部と
を有することを特徴とする。
【0061】
これにより、全方位に対して満遍なくミストを噴射できる。
【0062】
噴射システムにおいて、前記次亜塩素酸水供給部は、前記次亜塩素酸水を貯留するタンクであることを特徴とする。これにより、次亜塩素酸水を生成するための生成部が不要となるため、噴射システムの構成を簡易にできる。
【0063】
噴射システムにおいて、
前記次亜塩素酸水供給部は、
供給される電解質水溶液と原水とを電気分解する電気分解部であることを特徴とする。
【0064】
これにより、水道に接続することができ、タンク構成と比較して、次亜塩素酸水の補給作業をせずに済み、使い勝手を向上させ得る。
【0065】
噴射部材において、次亜塩素酸のミストを上方向へ誘導する上誘導配管と、
前記上誘導配管に接続され、横方向に延びる横誘導配管と、
前記横誘導配管の下側に設けられ、前記ミストを下方向へ噴射する噴射部と、
前記横誘導配管に設けられ、ミストを横方向へ拡散するために風を送出する拡散ファンとを備えることを特徴とする。
【0066】
これにより、重力の関係により上方向に進行する次亜塩素酸水のミストを下方向かつ外側方向へ向けて噴霧し、拡散できるため、ユーザが誤って次亜塩素酸水を大量に吸い込むことを未然に防止し、安全性を高めることができる。また、広範囲に渡って次亜塩素酸水を拡散することもできる。
【0067】
噴射システムにおいて、
前記上誘導配管に接続され、前記上誘導配管に風を送出する搬送ファンを備えることを特徴とする。
【0068】
これにより、噴射部から噴出されるミストが指向性を有するため、拡散ファンの風をぶつけることができ、ミストのコントロールがし易くなる。
【0069】
<他の実施の形態>
上述実施形態では、次亜塩素酸水供給部として、貯水タンク5を使用したが、本発明はこれに限られない。例えば、1室型の電解槽や、アノード電極を有するアノード室及びカソード電極を有するカソード室を備える2室型、又はアノード室及びカソード室に加えて電解質水溶液が供給される中間室を備える3室型の電解槽を有する電気分解部を用いても良い。
【0070】
上述実施形態では、電気分解によって生成された電解水を噴射するようにしたが、本発明はこれに限らず、ファインバブルを含有する気泡電解水を噴射しても良い。なお、気泡電解水は、電気分解前又は電気分解後に、化学処理剤を使用しない物理的衝突作用(高速旋回方式、圧力開放方式、ベンチュリー方式など、若しくはこれらの組み合わせ)によって、ナノオーダー(1~999nm)のナノバブルを1ミリリットル当たり10の7乗個以上含有する電解水をいう。
【0071】
上述実施形態では、下誘導配管35の下に噴射口45Dを有する噴射部45が設置されたが、本発明はこれに限られない。例えば、横誘導配管の末端近傍の下側に噴射口が設けられても良い。また、絞り部41、下側遮断部42,43、傾斜部46,47、水滴貯留部44C,45C、ドレイン機構は必須ではなく、適宜選択して用いられる。また、絞り部41、下側遮断部42,43、傾斜部46,47の構成や設置位置は適宜変更できる。
【0072】
上述実施形態では、噴射口44D,45Dが2つ設けられたが、本発明はこれに限られず、任意の数だけ設けることができる。例えば図11に示す噴霧装置101Xのように、上誘導配管31から前方向に横誘導配管33が延び、噴射口45Dが一つだけ設けられたり、搬送ファンを省略しても良い。なお、噴霧装置101Xでは、拡散ファン81Xの中心が筐体2の底面(床面)近傍(床面から30cm以下)に取り付けられており、水平から少し上向き(5~15°)に風を噴くように取り付けられている。これにより、ミストがユーザの顔付近に来るころにはミストが拡散されて濃度が薄まっており、安全性を確保することができる。また、図示しないが、例えば噴射口を3又は4以上設けても良い。また、床面近傍(床面から拡散ファンの筐体の下端までが15cm以下)に拡散ファンを水平方向に風が流れるように設置することにより、スムーズにミストを巻き込み、床面を這うようにして拡散しながら噴霧を行うことができる。また、床面近傍に設置した拡散ファンを水平から僅かに上向き(15°以内)にすることにより、下向きに噴射されたミストの勢いを打ち消すことができ、噴射部の直下にたくさんのミストが噴霧されることを効果的に防止できる。
【0073】
上述実施形態では、噴霧装置1を床面に直接載置したが、本発明はこの限りではない。例えば、図11に示したように、噴霧装置1の下に自動回転装置90を配置することができる。自動回転装置は、ターンテーブルのように回転可能な構成を有し、予め設定された速度で自動的に回転する。例えば、1分間に0.2~3周程度のゆっくりした速度で回転する。これにより、全方位に対してミストを満遍なく噴射することができる。また、噴霧装置1は、自動回転装置90の回転方位に応じて、水との噴射を弱めたり、特定の包囲に対して停止したりして自動回転装置90と連動することが可能である。これにより、選択された場所にのみ適切に噴霧を行うことができる。
【0074】
上述実施形態では、風向き調整カバー81A,81Bを使用したが、風向き調整カバーは必須ではない。また、風向き調整カバーとしての構成に制限は無く、風を送出したい方向へ誘導するような誘導部(翼部219、風向き調整部217D)を有しておればよく、誘導部の形状に制限は無い。
【0075】
上述実施形態では、上誘導配管31が筐体2の外側に位置するようにしたが、本発明はこれに限られない。例えば、筐体2内に設けられても良く、筐体2内でミスト生成部4に接続された上誘導配管31に対して、横誘導配管33が接続され、筐体2から横誘導配管33が横方向に突出するようにしても良い。
【0076】
上述実施形態では、次亜塩素酸水供給部としての貯水タンク5と、ミスト生成部としてのミスト生成部4と、上誘導配管としての上誘導配管31と、横誘導配管としての横誘導配管32,33と、噴射部としての噴射口45Dと、拡散ファンとしての拡散ファンとによって本発明の噴霧システムとしての噴霧装置1とを構成するようにしたが、本発明はこの限りではなく、その他種々の構成による次亜塩素酸水供給部と、上誘導配管と、横誘導配管と、噴射部と、ファンとによって本発明の次亜塩素酸水噴霧システムを構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば次亜塩素酸水を噴霧する噴霧装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 :噴霧装置
2 :筐体
3 :噴射部材
4 :ミスト生成部
5 :貯水タンク
6 :搬送ファン
7 :ファン配管
81、82:拡散ファン
31 :上誘導配管
32,33:横誘導配管
34,35:下誘導配管
41 :絞り部
42,43:下側遮断部
46,47:傾斜部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11