(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159963
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/28 20060101AFI20221011BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20221011BHJP
C08F 220/36 20060101ALI20221011BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20221011BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20221011BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20221011BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221011BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20221011BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C08F220/28
C08F220/18
C08F220/36
C08F290/06
C09D4/02
C09D7/47
C09D7/63
C09D7/48
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064488
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健
(72)【発明者】
【氏名】佐内 康之
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J038DF002
4J038DL032
4J038FA091
4J038FA111
4J038FA151
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4J100AL03Q
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4J127DA26
4J127DA27
4J127FA08
4J127FA11
4J127FA21
(57)【要約】
【課題】組成物が低粘度で硬化性に優れ、得られる硬化物が基材に対する密着性、特にプラスチック基材に対する密着性に優れ、帯電防止性、カール性、すべり性、耐湿熱性に優れる活性エネルギー線硬化型組成物、好ましくは賦型材料用活性エネルギー線硬化型組成物の提供。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)成分:四級アンモニウム塩を含むイオン性化合物であって、25℃で液体である化合物
(B)成分:下記(B-1)~(B-3)成分を含むエチレン性不飽和基を有する化合物
(B-1)成分:アルキレンオキサイド単位を有し、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-2)成分:1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-3)成分:2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:レベリング剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)成分:四級アンモニウム塩を含むイオン性化合物であって、25℃で液体である化合物
(B)成分:下記(B-1)~(B-3)成分を含むエチレン性不飽和基を有する化合物
(B-1)成分:アルキレンオキサイド単位を有し、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-2)成分:1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-3)成分:2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:レベリング剤
【請求項2】
前記(B-3)成分が、重量平均分子量が450~50,000で、25℃の粘度が500~1,000,000mPa・s以下のウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記(B)成分合計100重量%中に、(B-1)成分を58~90重量%、(B-2)成分を5~27重量%、(B-3)成分を1~15重量%含む請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、ポリシロキサン単位を有する化合物である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、アルキル基、ポリアルキレンオキサイド単位、又は/及び(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンである請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
さらに、光ラジカル重合開始剤(D)を含有する請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
さらに、変質防止剤(E)である紫外線吸収剤、光安定剤、及び酸化防止剤のいずれか1種以上を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
前記(B)成分合計100重量部に対して、(A)成分が2~30重量部、(C)成分が0.1~10重部含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む賦型剤用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項10】
請求項11記載の賦型剤用活性エネルギー線硬化型組成物が硬化した硬化物を含むレンズ。
【請求項11】
請求項1~請求項8のいずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含むコーティング剤用活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物に関し、好ましくは賦型材料用活性エネルギー線硬化型組成物及びコーティング用活性エネルギー線硬化型組成物に関し、これら技術分野に属する。
尚、本明細書においては、「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を「(メタ)アクリロイル基」と、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を「(メタ)アクリレート」と、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を「(メタ)アクリル酸」と表す。
【背景技術】
【0002】
プリズムシート等のレンズシート、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有した反射防止フィルム(いわゆる、モスアイフィルム)、防眩フィルム、有機EL・LED用光取出しフィルム、太陽電池用光閉じ込めフィルム及び熱線再帰性反射フィルム等の賦型フィルムは、以下の方法で通常製造されている。
即ち、微細凹凸構造の反転構造を表面に有するスタンパと透明基材との間に、活性エネルギー線硬化型組成物を充填し、活性エネルギー線の照射によって硬化させた後、スタンパを離型して硬化物に微細凹凸構造を転写する方法、又は、前記スタンパと透明基材との間に、活性エネルギー線硬化型組成物を充填した後、スタンパを離型して活性エネルギー線硬化型組成物に微細凹凸構造を転写し、その後、活性エネルギー線の照射によって活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させる方法が用いられている。
【0003】
この様な賦型材料用活性エネルギー線硬化型組成物としては、従来、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを含む活性エネルギー線硬化型組成物が知られている(特許文献1)。
しかしながら、当該組成物の硬化物は、表面抵抗率が高いため帯電しやすく、部品に異物が付着して製品品質を悪化させるという問題を有するものであった。又、当該組成物は、高粘度のためスタンパへの充填が困難であったり、その硬化物が、基材への密着性が不十分であったり、カールを発生することがあった。
【0004】
又、賦型材料用活性エネルギー線硬化型組成物に限らず、光学材料及び電子材料で使用されるプラスチックやガラス等の表面についても帯電防止が要求されている。
例えば、プラスチックやガラス等の表面が帯電していると、その面に埃などが付着して汚れの原因となったり、静電気の高い電圧に起因してICやLSI等の破壊、不良が起こる、電磁波ノイズにより電子機器の誤動作が生じる等の静電気に起因する問題がある。
そこで、光学材料及び電子材料で使用されるプラスチックやガラス等の表面には、帯電防止用のコーティングが行われている。
【0005】
帯電防止性を付与する対策として、四級アンモニウム塩を側鎖に有するポリマー(特許文献2)、イミダゾリウム塩のイオン性液体(特許文献3)、界面活性剤(特許文献4)、導電性ポリマー(特許文献5)、アルカリリチウム塩(特許文献6)、又は導電性金属微粒子(特許文献7)を含有させる方法が知られている。
又、非特許文献1にあるようにイオン性液体系では耐湿熱性が優れる一方で、界面活性剤系は耐湿熱性が悪いと知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-071290号公報
【特許文献2】特開2019-073617号公報
【特許文献3】特開2009-287010号公報
【特許文献4】特開2018-088017号公報
【特許文献5】特開2007-190716号公報
【特許文献6】特開2016―008287号公報
【特許文献7】特開2011-065966号公報
【非特許文献1】三浦 祐嗣、「イオン液体の帯電防止剤用途への展開」、[online、第一工業製薬社報 No.585 拓人2018夏、[令和3年3月1日検索]、インターネット<URL:https://www.dks-web.co.jp/catalog#pdf/585#1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、組成物が低粘度で硬化性に優れ、得られる硬化物が基材に対する密着性、特にプラスチック基材に対する密着性に優れ、帯電防止性、カール性、すべり性、耐湿熱性に優れる活性エネルギー線硬化型組成物、好ましくは賦型材料用活性エネルギー線硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、液状である四級アンモニウム塩を含むイオン性化合物、特定3種を含むエチレン性不飽和化合物、及びレベリング剤を含む活性エネルギー線硬化型組成物が、低粘度で、基材に対する密着性、帯電防止性、カール性、すべり性、耐湿熱性に優れることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物によれば、低粘度で硬化性に優れ、得られる硬化物が基材に対する密着性に優れ十分な帯電防止能を発揮することができる。さらに、組成物の硬化物がカール性、すべり性、耐湿熱性に優れる。
従って、本発明の組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物に好ましく使用することができ、より好ましくは賦型材料用活性エネルギー線硬化型組成物及びコーティング用活性エネルギー線硬化型組成物に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む活性エネルギー線硬化型組成物(以下、単に「組成物」ということもある)に関する。
(A)成分:四級アンモニウム塩を含むイオン性化合物であって、25℃で液体である化合物
(B)成分:下記(B-1)~(B-3)成分を含むエチレン性不飽和基を有する化合物
(B-1)成分:アルキレンオキサイド単位を有し、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-2)成分:1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-3)成分:2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:レベリング剤
以下、必須成分である(A)成分~(C)成分、その他の成分、及び使用方法等について説明する。
【0011】
1.(A)成分
(A)成分は、四級アンモニウム塩基を含むイオン性化合物であって、25℃で液体である化合物である。
(A)成分は、組成物を硬化させることで、硬化物に優れた帯電防止性を付与する。さらに、25℃で液体であるイオン性化合物を使用することにより、湿熱試験後の外観の悪化を防ぐことができる。
(A)成分としては、四級アンモニウム塩基を含む有機カチオンと、アニオンの塩を好ましく用いることができる。
【0012】
(A)成分における、四級アンモニウム塩基を含む有機カチオンと、アニオンの塩としては、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせからなる化合物が適宜選択して用いることができる。
アニオンとしては、フルオロ基及びスルホニル基を有するアニオン、及びテトラフルオロボレートを有する化合物が好ましい。
フルオロ基及びスルホニル基を有するアニオンを有する化合物としては、下記式(A1)及び(A2)で表される化合物が好ましい。
【0013】
(R1)+(R2SO2)2N- ・・・・・(A1)
【0014】
式(A1)において、R1は、四級アンモニウム塩基を意味し、R2は、フルオロアルキル基を意味する。
【0015】
(R1)+R2SO3
- ・・・・・(A2)
【0016】
式(A2)において、R1は、四級アンモニウム塩基を意味し、R2は、フルオロアルキル基を意味する。
【0017】
(R1)+(R2SO2)N-(R3CONH3) ・・・・・(A3)
【0018】
式(A3)において、R1は、四級アンモニウム塩基を意味し、R2は、フルオロアルキル基を意味、R3は、フルオロアルキル基を意味する。
【0019】
テトラフルオロボレートを有するアニオンを有する化合物としては、下記式(A4)で表される化合物が好ましい。
【0020】
(R1)+BF- ・・・・・(A4)
【0021】
式(A4)において、R1は、式(A1)と同様の意味を示す。
【0022】
前記式(A1)~(A4)における、R1の四級アンモニウム塩基の例としては、下記式(a1)で表される基、芳香族四級アンモニウム塩基等が挙げられる。
【0023】
【0024】
式(a1)において、Ra、Rb、Rc、及びRdは、アルキル基、アルコキシアルキル基、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基やアルキニル基、炭素数6~24のアリール基、又はグリシジル基を意味する。Ra、Rb、Rc、及びRdは、同一であっても、異なっていても良い。
【0025】
アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、及びエトキシエチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、エチレン基、、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、及びペンテン基等が挙げられる。
アルキニル基としては、アルキレン基、プロピン基、1-ブチン基、及び2-ブチン基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基、ベンジルオキシ基、フェニルエチル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、及び2-ナフチル基等が挙げられる。
【0026】
R1の芳香族四級アンモニウム塩基としては、イミダゾリウム基等が挙げられ、より具体的には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム基が挙げられる。
【0027】
R2は、フルオロアルキル基を意味する。
R2におけるフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0028】
(A)成分にとしては、前記式(A1)で表される化合物が好ましい。
以下、前記式(A1)~(A4)で表される化合物について説明する。
【0029】
1-1.式(A1)で表される化合物
式(A1)で表される化合物の例としては、R1が前記式(a1)で表される基であり、R2がトリフルオロメチル基である化合物が挙げられる。
【0030】
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アルキル基の例としては、以下の化合物が挙げられる。
即ち、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N,N-ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-ペンチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N,N-ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピル-N-ブチル-N-へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピル-N,N-ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びN-メチル-N-エチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0031】
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アリル基及びアルキル基の例としては、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0032】
当該化合物において、式(a1)のR1、R2、R3、及びR4が、グリシジル基及びアルキル基の例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0033】
当該化合物において、式(a1)のR1、R2、R3、及びR4が、アルキル基及びアルコキシアルキル基の例としては、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0034】
式(A1)で表される化合物の例としては、R1が前記式(a1)で表される基である化合物であり、R2がペンタフルオロエチル基である化合物が挙げられる。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アルキル基及びアルコキシアルキル基の例としては、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、グリシジル基及びアルキル基の例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アリル基及びアルキル基の例としては、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0035】
1-2.式(A2)で表される化合物
式(A2)で表される化合物の例としては、R1が前記式(a1)で表される基である化合物であり、R2がトリフルオロメチル基である化合物が挙げられる。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アルキル基及びアルコキシアルキル基の例としては、N,N―ジエチル―N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、グリシジル基及びアルキル基の例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アリル基及びアルキル基の例としては、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0036】
1-3.式(A3)で表される化合物
式(A3)で表される化合物としては、R2がトリフルオロメチル基で、R3がトリフルオロメチル基である化合物が挙げられる。
当該化合物において、R1がピリジニウム基である例としては、1-ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、及び1-ブチル-3-メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド等が挙げられる。
当該化合物において、R1がイミダゾリウム基である例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、及びN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド等が挙げられる。
当該化合物において、R1が前記式(a1)で表される基である化合物であり、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アリル基及びアルキル基の例としては、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド等が挙げられる。
当該化合物において、R1が前記式(a1)で表される基である化合物であり、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、グリシジル基及びアルキル基の例としては、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド等が挙げられる。
【0037】
1-4.式(A4)で表される化合物
式(A4)で表される化合物の例としては、R1が前記式(a1)で表される基である化合物が例示される。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アリル基及びアルキル基の例としては、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
当該化合物において、式(a1)のRa、Rb、Rc、及びRdが、アルキル基及びアルコキシアルキル基の例としては、N,N―ジエチル―N―メチル―N-(2-メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
又、(A)成分は1種類のみ、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
1-5.市販品の例
(A)成分としては、市販品を使用することができる。
市販品の例としては「IL―A2」(広栄化学(株)製商品名)、「AS-110」(第一工業製薬(株)製商品名)等が挙げられる。
(A)成分としては、(B)成分に対する(A)成分1重量%あたりの表面抵抗値の低減差が高いものほど好ましく、当該市販品としては、例えば「IL―A2」が好ましい。
【0039】
1-6.含有割合
(A)成分の含有割合としては目的に応じて適宜設定すれば良く、(B)成分合計100重量部に対して2~30重量部含むことが好ましく、より好ましくは3~10重量部である。
(A)成分の割合を2重量部以上とするとで、電気を比較的速やかに消散するために好ましい表面抵抗値である1011Ω/sq.以下とすることができ、十分な帯電防止性を発揮することができ、30重量%以下とすることで、表面抵抗値が106Ω/sq.以下になることを防止できるうえ、長時間高温・高湿度下にさらされた際に、吸水による膨潤剥離を防止することができる。尚、表面抵抗値が106Ω/sq.以下のものが帯電した物質に接触すると、激しい静電気放電が起こる可能性がある。
【0040】
2.(B)成分
(B)成分は、下記(B-1)~(B-3)成分を含むエチレン性不飽和基を有する化合物である。
(B-1)成分:アルキレンオキサイド単位を有し、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-2)成分:1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B-3)成分:2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート
以下、(B-1)~(B-3)成分について説明する。
尚、下記においては、一分子中にn個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートをn官能(メタ)アクリレートという。官能基数が上昇するにつれてカールしやすくなるためn=2が好ましい。nはあくまで平均値であるため整数にならない場合もある。
【0041】
2-1.(B-1)成分
(B-1)成分は、アルキレンオキサイド単位を有し、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。但し、(B-1)成分は、後記する(B-3)成分〔ウレタン(メタ)アクリレート〕を除く化合物である。
(B-1)成分は、組成物の硬化性向上に寄与する。
【0042】
(B-1)成分の具体例に以下が挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物の等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;
ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジトリ(メタ)アクリレート;並びに、
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノールF等のビスフェノールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0043】
3官能以上の(メタ)アクリレートとして、具体的には、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオサイシド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンアルキレンオキシド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールアルキレンオキサイ付加物のトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;並びに、
トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
この場合アルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びテトラメチレンオキサイド等を挙げることができる。アルキレンオキサイドの繰り返し単位としては、硬化性に優れる点で1~8が好ましく、特に4~6であるとさらに好ましい。
又、(B-1)成分は、1種類のみを使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0044】
(B-1)成分としては市販品を使用することができる、
市販品の例としては、例えば、「アロニックスM-208」、「アロニックスM-211B」、「アロニックスM-240」、「アロニックスM-320」(以上、東亞合成(株)製商品名)、「HBPE-4」(第一工業製薬(株)製商品名)、「ライトアクリレート4EG-A」、「ライトアクリレートBP-4EAL」、「ライトアクリレートBP-4PA」(以上、共栄社化学(株)製商品名)、「KAYARAD R-551」、「KAYARAD R-551」「KAYARAD R-712」(以上、日本化薬(株)製商品名)等が使用可能である。
【0045】
(B-1)成分の含有割合は目的に応じて適宜設定すれば良く、(B)成分合計100重量%中に58~90重量%含むことが好ましく、より好ましくは70~80重量%である。上記の範囲であると、硬化物のタックとカールを抑制でき、帯電防止性に悪影響を及ぼさない。
【0046】
2-2.(B-2)成分
(B-2)成分は、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
(B-2)成分を含むことにより、組成物を低粘度化し、硬化物の基材密着性を向上させることができる。
(B-2)成分の例としては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕、及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルアミド化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリルアミド」という〕等が挙げられる。
【0047】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する単官能(メタ)アクリレート:
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシ(メタ)アクリレート及びp-クミルフェノールエチレン(メタ)アクリレート等の芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルモルホリン等の複素環を有する単官能(メタ)アクリレート;並びに
エチルカルビトール(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド単位を有する単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、種々の官能基を有する化合物であっても良い。
環状エーテル基を有する化合物の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
イミド基及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物の例としては、マレイミド基を有する化合物が挙げられる。マレイミド基を有する化合物としては、(メタ)アクリロリルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
オキセタニル基を有する化合物の例としては、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-sec-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジヘキシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
又、(B-2)成分は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
(B-2)成分として好ましい化合物は、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びアクリロイルモルフォリン(ACMO)等が挙げられる。これら化合物は、低粘度で、環構造起因のカール抑制ができるため好ましい。
【0050】
(B-2)成分の含有割合は、配合成分に応じて、特に(B-1)成分の種類及び割合に応じて、並びに適用する基材に応じて適宜設定すれば良い。
具体的には、(B-2)成分の含有割合としては、(B)成分の合計量100重量%中に、5~27重量%であることが好ましく、5~17重量%であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、本発明の組成物の特長である優れた基材密着性と硬化性を損なうことなく物性の調節をすることができる
【0051】
2-3.(B-3)成分
(B-3)成分は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
(B-3)成分を含むことにより、組成物を適切な粘度に調整することができ、組成物の硬化物の基材密着性が向上し、カールを抑制することができる。
(B-3)成分としては、種々の化合物が使用でき、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物又は、有機ポリイソシアネートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物との反応させた化合物等が挙げられる。
【0052】
ポリオールとしては、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格及びポリカーボネート骨格を有するポリオールが好ましい。
ここで、ポリエーテル骨格を有するジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリエステル骨格を有するポリオールとしては、低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオールと、二塩基酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
二塩基酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及びビスフェノールA等のビスフェノールと、エチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
【0053】
有機ポリイソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソソアネート;
水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシイレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等の脂環式基含有ポリイソシアネート;
トリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート2量体、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及びパラフェニレンジイソシアネートヘキサメチレンジイソシアネート相互付加物、トリメチロールプロパントリス(トリレンジイソシアネート)付加物等の芳香族ポリイソシアネート;並びに
1,6-ヘキサンジイソシアネート3量体等の複素環を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
又、有機ポリイソシアネートとしては、硬化物の着色を抑制することができるため、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環式基含有ポリイソシアネートが好ましい。
【0054】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
これらは、ジブチルスズジラウレート等の付加触媒存在下、使用する有機イソシアネートとポリオール成分を加熱撹拌し付加反応せしめ、さらにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加し、加熱撹拌し付加反応せしめることにより得られる。
【0056】
(B-3)成分は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
(B-3)成分としては、重量平均分子量(以下、「Mw」という)450以上50,000以下である化合物が好ましい。
(B-3)成分のMwを50,000以下とすることにより、他の成分との相溶性を向上させることができる。
尚、本発明においてMwとは、標準ポリスチレンを検量線として用いたゲルパーミエションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により求めた値を意味する。
又、(B-3)成分としては、粘度500以上1,000,000mPa・s以下の化合物が好ましい。
(B-3)成分の粘度を1,000,000mPa・s以下とすることにより、組成物の粘度が高くなり塗工性が低下することを抑制することができる。
又、本発明において粘度とは、E型粘度計(コーンプレート型粘度計)により25℃で測定した値を意味する。
【0058】
(B-3)成分として好ましい市販品としては硬化性、密着性、組成物の相溶性の観点からTOAON-013、UN-2301、UN-2601(以上、根上工業(株)製)、M-1600(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0059】
(B-3)成分の含有割合は目的に応じて適宜設定すれば良く、(B)成分合計100重量%中に1~15重量%含むことが好ましく、より好ましくは5~10重量%である。(B-3)成分の含有割合を1重量%以上とすることで、基材密着性を向上させ、カールを抑制することができる。(B-3)成分の含有割合を15重量%以下とすることにより、組成物の粘度が高くなることを抑制することができる。
【0060】
2-4.その他
(B)成分は、前記(B-1)~(B-3)成分を必須成分として含むエチレン性不飽和基を有する化合物であるが、必要に応じて、前記(B-1)~(B-3)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を少量含んでいても良い。
(B)成分の組成物中の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、組成物100重量%中に、58~99重量%含むことが好ましく、より好ましくは80~98重量%である。
【0061】
3.(C)成分
(C)成分は、レベリング剤である。(C)成分は、組成物硬化物の滑り性向上に寄与する。
【0062】
(C)成分としては、従来から知られているものを使用することができ、シリコーン系レベリング剤〔以下、「(C-1)成分」という〕、フッ素系レベリング剤〔以下、「(C-2)成分」という〕、及びアクリル系レベリング剤等が挙げられる。
本発明においては、(C-1)成分及び(C-2)成分が好ましく、(C-1)成分がより好ましい。
以下、(C-1)成分及び(C-2)成分について説明する。
【0063】
3-1.(C-1)成分
(C-1)成分の例としては、ポリシロキサン単位を有する化合物が挙げられる。ポリシロキサン単位を有する化合物の例としては、ストレートシリコーン、及び変性シリコーン等が挙げられる。
変性シリコーンとは、側鎖又は末端に有機基を導入した化合物であり、導入する有機基の性質によって反応性シリコーンと非反応性シリコーンに分けられる。
(C-1)成分としては、長期安定性に優れる点で、エチレン性不飽和基を有する反応性シリコーンが好ましい。該エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、他の成分との共重合性に優れる点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0064】
又、(C-1)成分としては、アルキル基又は/及びポリアルキレンオキサイド単位を有する化合物が好ましい。これら官能基又は/及び単位を有する化合物は、硬化物の滑り性が好ましいものとなる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等が挙げられる。
ポリアルキレンオキサイド単位としては、ポリエチレンオキサイド単位、ポリプロピレンオキサイド単位、ポリエチレンオキサイド単位とポリプロピレンオキサイド単位を有する単位等が挙げられる。この場合のアルキレンオキサイド単位の平均繰り返し数としては、1~10が好ましい。
【0065】
(C-1)成分としては、組成物の塗膜表面に効率よく偏析させることができ、かつ保管中に組成物との分離が起こらないような、他の成分との相溶性に優れるものが好ましい。そのため、(C-1)成分のMw(重量平均分子量)としては、10,000~50,000が好ましい。(C-1)成分のMwを10,000以上とすることで、ポリシロキサン単位が組成物の塗膜表面に偏析することで、滑り性を向上させることができ、50,000以下とすることにより、組成物中の他の成分との相溶性に優れるものとすることができる。
【0066】
(C-1)成分は市販品を使用することができ、アクリロイル基を有するシリコーン系レベリング剤のBYK-UV3500(アクリロイル基を有するポリエーテル変性ポリシロキサン)、BYK-UV3530(アクリロイル基を有するポリエーテル変性ポリシロキサン)、BYK-UV3576(アクリロイル基を有するポリシロキサン)〔以上、ビックケミー・ジャパン(株)製〕、メタクリロイル基を有するシリコーンであるKF-2012、X-22-2426〔以上、信越化学工業(株)製〕等が挙げられる。
これらの中でも、特に組成物の相溶性と滑り性と耐湿熱性の観点からメタクリル変性ポリジメチルシロキサン(Mw12,000)であるX-22-2426が好ましい。
【0067】
3-2.(C-2)成分
(C-2)成分の例としては、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖を有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー、並びにパーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキサイド鎖を有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー等が挙げられる。
(C-2)成分はは市販品を使用することができ、ダイキン工業(株)製オプツールDAC-HP、DIC(株)製RS-75、及びRS-56等を挙げることができる。
【0068】
(C)成分は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
(C)成分の含有割合としては目的に応じて適宜設定すれば良く、(B)成分合計100重量部に対して0.1~10重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.5~3重量部である。0.1重部以上とすることで、硬化物に十分な滑り性を付与することができ、10重量部以下とすることで、組成物中の(C)成分の相溶性が悪化することを防止することができる。
【0069】
4.活性エネルギー線硬化型組成物
本発明は、前記(A)、(B)及び(C)成分を含む活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、例えば、(A)、(B)及び(C)成分、必要に応じてその他の成分を撹拌混合して製造することができる。
【0070】
本発明の組成物の粘度としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、1~5000mPa・s以下が好ましく、1~100mPa・s以下がより好ましい。5000mPa・s以上では、混合の際脱泡が難しいなるため硬化物に気泡が入りやすくなり外観の悪化が起こりやすい。又、100mPa・s以下であると特に塗工しやすいので好ましい。
【0071】
本発明の組成物は、前記(A)~(C)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
その他成分としては、具体的には、光ラジカル重合開始剤〔以下、「(D)成分」という〕、変質防止剤〔以下、「(E)成分」という〕、有機溶剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料・染料、レベリング剤及びシランカップリング剤等が挙げられる。
以下、これらの成分うち、(D)及び(E)成分について説明する。
【0072】
4-1.(D)成分
(D)成分は、光ラジカル重合開始剤である。
(D)成分は、活性エネルギー線として紫外線及び可視光線を用いた場合に配合する成分である。活性エネルギー線として電子線を使用する場合には、必ずしも配合する必要はないが、硬化性を改善させるため必要に応じて少量配合することもできる。
【0073】
本発明における(D)成分としては、種々の公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0074】
(D)成分の具体例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパノン}及び2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン及び4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルファイド等のベンゾフェノン系化合物;
メチルベンゾイルフォルメート、オキシフェニル酢酸の2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル及びオキシフェニル酢酸の2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等のα-ケトエステル系化合物;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チタノセン系化合物;
1-〔4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフィニル)プロパン-1-オン等のアセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤;
2-((ベンゾイルオキシ)イミノ)-1-(4-(フェニルチオ)フェニル)オクタン-1-オン等のオキシムエステル系化合物;並びに
カンファーキノン等が挙げられる。
【0075】
これらの中でも、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、及び、フォスフィンオキサイド系化合物が好ましく挙げられる。塗工液にラミネートフィルムを覆い少量の積算光量で硬化させる場合でも良好な硬化性を容易に得ることができることから、フォスフィンオキサイド系化合物が特に好ましく挙げられる。
又後述の紫外線吸収剤を使用する場合は可視光領域に吸収を有するという点でもフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。
又、(D)成分は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
(D)成分の含有割合は、硬化物の厚さに応じて適宜設定すれば良い。硬化物を10μm程度の薄膜で塗工するとき、(B)成分の合計量100重量部に対して、0.01~5重量部であることが好ましく、0.5~1.5重量部であることがより好ましい。上記範囲であると、組成物の硬化性に優れる。
【0077】
4-2.(E)成分
(E)成分は、変質防止剤である。
(E)成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤が挙げられる。
以下、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤について説明する。
【0078】
<酸化防止剤>
本発明の組成物は、硬化物の耐熱性や耐候性を良好にする目的で、酸化防止剤をさらに含有していてもよい。
本発明に用いられる酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又は、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール類を好ましく挙げることができる。市販されているものとしては、(株)アデカ製のAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-70、AO-80等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン等のホスフィン類や、亜リン酸トリアルキルや亜リン酸トリアリール等が好ましく挙げられる。
これらの誘導体で市販品としては、例えば(株)アデカ製、アデカスタブPEP-4C、PEP-8、PEP-24G、PEP-36、HP-10、260、522A、329K、1178、1500、135A、3010等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物が挙げられ、市販品としては(株)アデカ製AO-23、AO-412S、AO-503A等が挙げられる。
【0079】
酸化防止剤の含有割合は、本発明の組成物合計量100重量%中に、0.01~5重量%含むことが好ましく、0.1~1重量%含むことがより好ましい。酸化防止剤の含有割が上記範囲内にあると、異常重合を抑制でき組成物の安定性に優れる。
【0080】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤の具体例としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシロキシ)プロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子等の紫外線を吸収する無機粒子等が挙げられる。
前記化合物の中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0081】
紫外線吸収剤は、活性エネルギー線の照射により黄変しやすいプラスチック基材の変色を抑える目的で使用される。
紫外線吸収剤の含有割合としては、(B)成分の合計量100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.05~5重量部であることがより好ましく、0.1~2重量部であることがさらに好ましい。好適な部数範囲から外れる場合、組成物を十分硬化できなくなる。紫外線吸収剤を上記割合で含むことにより、組成物の硬化性を低下させることなく、変色を防止することができる。
【0082】
<光安定剤>
光安定剤としては、公知の光安定剤を用いることができるが、中でも、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好ましく挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチロキシ)-4-ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤の市販品としては、BASF社製、TINUVIN 111FDL、TINUVIN123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100等が挙げられる。
【0083】
光安定剤の含有割合としては、(B)成分の合計量100重量部に対して、0.01~5重量部であることが好ましく、0.05~2重量部であることがより好ましく、0.1~1重量部であることがさらに好ましい。光安定剤を上記割合で含むことにより、組成物の硬化性を低下させることなく、光安定性を付与することができる。
【0084】
5.使用方法
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従えば良い。
例えば、適用される基材に組成物を通常の塗装方法により塗布した後、活性エネルギー線を照射するか又は加熱して硬化させる方法が挙げられる。
活性エネルギー線の照射方法は、従来の硬化方法として知られている一般的な方法を採用すれば良い。
【0085】
本発明の組成物が適用できる基材としては、プラスチック、木材、及び紙等が挙げられる。プラスチックの具体例としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0086】
本発明の組成物の基材への塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ディップコーター、ロールコーター、スピンコーター、フローコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
【0087】
基材に対する組成物の硬化物の厚さは、目的に応じて適宜設定すればよい。硬化物の厚さとしては、使用する基材や製造した硬化物を有する基材の用途に応じて選択すればよいが、1~100μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましい。好適な部数範囲から外れる場合、硬化物を十分硬化できなくなる。
【0088】
本発明の組成物を活性エネルギー線硬化型組成物として使用する場合において、硬化させるための活性エネルギー線としては、電子線、紫外線及び可視光線が挙げられるが、紫外線又は可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線(UV)無電極ランプ、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すべきものであるが、一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV-A領域の照射エネルギーで50~8,000mJ/cm2が好ましく、100~3,000mJ/cm2がより好ましい。
【0089】
6.用途
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、帯電防止が要求される種々の用途に使用することができ、例えば、コーティング剤、賦型剤、成形剤、インキ、及びパターン形成用等の種々の用途に使用可能である。
【0090】
本発明の組成物は、コーティング剤として好ましく使用することができる。
コーティング剤の具体例としては、木工塗料のトップコート及びプライマー、並びにガラス及びプラスチックの帯電防止コーティング剤等が挙げられる。
具体例としては、電気及び電子材料の用途としては、液晶保護フィルム、液晶基板、半導体工程用の帯電防止テープ、及びICキャリアテープ等が挙げられる。
又、建材用途に使用した場合は、静電気の管理が要求される工場及び事業所等の床用の帯電防止剤等が挙げられる。具体的には、クリーンルーム、エレクトロニクス工場、IC及びC電子部品工場、コンピュータルーム、医療用施設、及び研究施設等が挙げられる。
上記以外にも、各種包装材料及びプラスチック成型品や眼鏡用コーティング剤等が挙げられる。
【0091】
又、本発明の組成物は、低粘度で硬化物の帯電防止性、滑り性や耐湿熱性に優れるため、金型転写やナノインプリント等で使用する成形材用組成物として好ましく使用することができ、特に、ナノインプリント等の微細加工用途で使用する賦型材料に好ましく使用することができる。
【0092】
賦型材料としては、レンズシート、ナノインプリント、モスアイ形状を有する反射防止フィルム、偏光フィルム、防眩フィルム、有機EL・LED用光取出しフィルム、太陽電池用光閉じ込めフィルム及び熱線再帰性反射フィルム等の微細凹凸構造を表面に有する賦型フィルムの製造に使用可能である。
【実施例0093】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。又、以下において、特に断りのない限り、「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
【0094】
1.実施例1~同5及び比較例1~同5
1)組成物の調製
表1、2に示す各成分を使用し、表1、2に示す割合で60℃にて3時間撹拌・混合して、組成物を得た。尚、いずれの組成物も、組成物を調整した後、1日放置したものを使用した。
得られた組成物を使用して、以下に示す方法に従い評価した。
【0095】
【0096】
【0097】
表1及び表2における略号は、下記を意味する。表1及び表2における各成分の数字は、部数を意味する。
(A)成分
・IL-A2:脂肪族アミン系イオン性液体〔広栄化学(株)製 IL-A2〕
(B)成分
(B-1)成分
・M-240:ポリエチレングリコールジアクリレート(n≒4)〔東亞合成(株)製 アロニックスM-240〕
・M-1067:2―フェニルフェノール1.5EOアクリレート〔東亞合成(株)製 アロニックスM-1067〕
・M-320:プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを主成分とするプロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンとアクリル酸の反応生成物〔東亞合成(株)製 アロニックスM-320〕
(B-2)成分
・IB-X:イソボルニルメタクリレート〔共栄社化学(株)製 ライトエステルIB-X〕
・IB:イソブチルメタクリレート〔共栄社化学(株)製 ライトエステルIB〕
(B-3)成分
・TOAON13:ウレタンアクリレート〔根上工業(株)製 ART RESIN TOAON―013〕(Mw:7,100、25℃粘度440,000mPa・s、ポリエーテル骨格を有するウレタンアクリレート)
・UN―2601:ウレタンアクリレート〔根上工業(株)製 UN―2601〕(Mw:1,600、25℃粘度11,000mPa・s、アダクト系ウレタンジアクリレート)
・UN―2301:ウレタンアクリレート〔根上工業(株)製 UN―2301〕(Mw:740、25℃粘度9,300mPa・s、ウレタンジアクリレート)
M-1600:ウレタンアクリレート〔東亞合成(株)製 アロニックスM-1600〕(Mw:2,500、25℃粘度35,000mPa・s、ポリエーテル骨格を有するウレタンアクリレート)
(C)成分
・X-2426:片末端型メタクリル変性シリコーンオイル、Mw:12,000〔信越化学工業(株)製 X-22-2426〕
(D)成分
・TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、〔IGM Resins社製 Omnirad TPO〕
【0098】
2)評価方法
(1)粘度
得られた組成物を使用し、E型粘度計を使用して、25℃での粘度を測定した。
【0099】
(2)塗工性
得られた組成物を使用し、25℃の室温下で組成物を塗工する際の塗工しやすさを評価した。
○:組成物を予め60℃以上に加熱せずに基材に液を塗工できる。
×:組成物を予め60℃以上に加熱しないと基材に塗工できない。
【0100】
(3)試験体の製造
得られた組成物を使用し、バーコーターを用い、10cm角に裁断した(株)東洋紡製の易接着PETフィルム〔コスモシャイン(登録商標)A4360、膜厚:100μm。以下、「A4360」という〕に塗工し、膜厚が10μmとなるよう塗工した。
これを使用し、コンベアを備えた高圧水銀ランプ〔アイグラフィックス(株)製H06-L41〕を用いて、UV-Aランプ出力照度80W/cm、1パスあたりの照射強度290mW/cm2で照射エネルギーが250mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。
得られた試験体を使用し、以下の方法に従い評価した。それらの結果を表2に示す。
【0101】
(4)硬化性
得られた試験体の硬化物を指触により、以下の評価基準で評価した。
○:表面にタックがない。
△:表面にタックがある。
×:硬化していない。
【0102】
(5)カール
得られた試験体の硬化物の4頂点の高さの平均を測定した。1.0mm以下が好ましい。
【0103】
(6)密着性
JIS K 5600-8-5に従いクロスカット法により以下の評価基準で評価した。
○:剥離部分がない。
×:剥離部分がある。
【0104】
【0105】
【0106】
3)評価結果
実施例1~同5の組成物は、低粘度で、塗工性、硬化性及び密着性に優れ、硬化物が密着性に優れ、カールも生じないか、又は、わずかに生じる程度であった。
これに対して、比較例1の組成物は、(B-2)及び(B-3)成分を含まない組成物であるが、低粘度で、塗工性、及び硬化性に優れ、硬化物の密着性に優れるものの、カールが生じてしまった。
比較例2の組成物は、(B-2)成分を含まない組成物であり、低粘度で、塗工性、及び密着性に優れるものの、硬化性が低下し、比較例1程ではないが硬化物のカールが生じてしまった。
比較例3の組成物は、(B-2)及び(B-3)成分を含まない組成物であり、比較例4の組成物は、(B-3)成分を含まない組成物であり、塗工性、及び硬化性に優れ、密着性に優れるものの、粘度がやや上昇してしまい、硬化物のカールが大きくなってしまった。
比較例5の組成物は、(B-1)及び(B-2)成分を含まない組成物であり、硬化性に優れ、硬化物のカールがないものの、高粘度で塗工性が悪く、硬化物の密着性が大きく低下してしまった。
【0107】
2.実施例6、7及び比較例6~同9
1)組成物の調製
実施例6、7と比較例6~同9では実施例2の(A)成分のみ変えて実施例2同様に組成物と硬化物を得た。組成比は表5の通りとした。
【0108】
【0109】
表5における略号は、前記で定義したもの以外は下記を意味する。表5における各成分の数字は、部数を意味する。
(A)成分
・AS-110:1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド〔第一工業製薬(株)製 エレクセル AS-110〕
【0110】
(A’)成分
・KH-05:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製 アクアロン KH-05〕
・KH-10:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製 アクアロン KH-10〕
・AR-10:ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製 アクアロン AR-10〕
【0111】
2)評価方法
得られた組成物を使用し、前記と同様の方法に従い、粘度を測定した。
得られた組成物を使用し、前記と同様の方法で試験体を得た。
得られた試験体を使用して、前記と同様の方法に従い、硬化性、カール及び密着性を評価した。さらに。以下の方法に従い表面抵抗及び耐湿熱性を評価した。
それらの結果を、表6に示す。
【0112】
(1)表面抵抗
得られた試験体を25℃、50%RHの条件で12時間以上状態調整した後、JISK6271‐2008(二重リング電極法)に準じて硬化物の表面抵抗値を測定した。帯電防止性は表面抵抗値と相関があり、電気を比較的速やかに消散するためには1011Ω/sq.以下が好ましい。
【0113】
(2)耐湿熱性
得られた試験体を5cm角に裁断した。この裁断した硬化物上にポリカーボネート板を乗せ、さらにこの試験体を同サイズのガラス板ではさみ固定した。この硬化膜を含んだガラス板を60℃、95%RH、500時間の条件で静置した。その後1日常温常圧下で静置し、ポリカーボネート板や硬化物の外観を以下の評価基準で目視により評価した。
○:ポリカーボネート板や硬化物に白い析出物がなく、透明性を維持している。
×:ポリカーボネート板や硬化物に白い析出物又は、白く濁った箇所が見られる。
【0114】
【0115】
3)評価結果
実施例6、及び同7の組成物は、低粘度で、塗工性、及び硬化性に優れ、硬化物が密着性に優れ、カールがわずかに生じる程度で、電気を比較的速やかに消散するために好ましい1011Ω/sq.以下の表面抵抗値を示し、耐湿熱性にも優れていた。
これに対して、比較例6~同8の組成物は、(A)成分に代え、25℃で液状を示さない反応性のカチオン系界面活性剤を含む組成物であり、低粘度で、塗工性、及び硬化性に優れ、硬化物が密着性に優れ、カールがわずかに生じる程度で、表面抵抗値の低いものであった。しかしながら、比較例6~同8の組成物で使用された界面活性剤は、従来の界面活性剤の中では耐湿熱性に優れるものと知られているものであるが、耐湿熱性試験後の外観に不良が見られた。
比較例9の組成物は、(A)成分を含まない組成物であり、低粘度で、塗工性、及び硬化性に優れ、硬化物が密着性に優れ、カールがわずかに生じる程度で、耐湿熱性にも優れていたが、表面抵抗値が高くなってしまった。
【0116】
3.実施例8~10、及び比較例10
1)組成物の調製
実施例6の(C)成分と添加部数を、表7に従い変更した以外は実施例6同様に組成物を調製した。
尚、表7には、参照のため実施例6の組成物も合わせて記載している。
【0117】
2)評価方法
得られた組成物を使用し、前記と同様の方法に従い、粘度を測定した。
得られた組成物を使用し、前記と同様の方法で試験体を得た。
得られた試験体を使用して、前記と同様の方法に従い、硬化性、カール、密着性、表面抵抗及び耐湿熱性を評価した。さらに、以下の方法に従い摩擦係数を評価した。
摩擦係数及び表面抵抗の結果を、表7に示す。
【0118】
(1)摩擦係数
得られた組成物を使用して、前記と同様の方法で試験体を得た。
得られた試験体と無塗工の易接着PETフィルムA4360を5cm×3cmに裁断した。
(株)イマダ製電動計測スタンド MH2-100Nに(株)イマダ製デジタルフォースゲージ ZTS-100Nを取り付けた。土台に固定した硬化物の上に易接着PETフィルムを乗せ、さらに500gのおもりを乗せて10秒静置した。その後300mm/minの速さで水平方向に2cm引っ張り、硬化物の易接着PETフィルムに対する摩擦力を縦横方向で測定した。静止摩擦力は摩擦力の最大値、動摩擦力は摩擦力の平均値とした。測定は5回行い、その5回の測定のうち最大値と最小値を除いた3回の平均値を測定サンプルの静摩擦力、動摩擦力とした。摩擦係数はこの摩擦力を荷重で除することで算出した。
【0119】
【0120】
表7における略号は、前記で定義したもの以外は下記を意味する。表7における各成分の数字は、部数を意味する。
(C)成分
・BYK3500:アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、Mw3,900〔ビックケミー・ジャパン(株)製 BYK UV-3500〕
・KF2012:片末端型メタクリル変性シリコーンオイル、Mw4,600〔信越化学工業(株)製 KF-2012〕
(E)成分
・T144:ビス(1、2,2、6、6-ペンタメチルー4-ピペリジル)-((3、5-ビス(1、1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル)〔BASF社製 Tinuvin144〕
・S6928:2-(2H-ベンゾトリアゾル)-6-(1-メチルー1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール〔(株)SHUANG-BANG INDUSTRIAL社製 SB-UVA6928
【0121】
3)評価結果
実施例8~同10、及び比較例10において、粘度、密着性、硬化性、カール、耐湿熱性はいずれも実施例6と同様であり、表7には記載を省略した。
【0122】
粘度、密着性、硬化性、カール、耐湿熱性、表面抵抗がいずれも実施例6と同様であったことから、(C)成分はこれらの物性に影響を与えないことがわかった。実施例8~10の組成物は、(C)成分を含まない比較例10の組成物より滑り性が向上した。
又、Mwの小さい(C)成分を使用した実施例10よりMwの大きい(C)成分を使用した実施例6の方が、滑り性が向上した。これはポリジメチルシロキサン鎖が長くなったことで最表面にシロキサンが配位しやすくなったためであると推測している。
(E)成分を添加した実施例8は実施例6と同様の結果となり、(E)成分は他の物性へ悪影響を及ぼさないことが示された。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、例えば、コーティング剤、賦型剤、成形剤、インキ、及びパターン形成用等の種々の用途に使用可能であり、賦型剤及びコーティング剤として好ましく使用できるものである。