(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159964
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】コンテナ位置決定システム
(51)【国際特許分類】
B65G 63/00 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
B65G63/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064492
(22)【出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】520119253
【氏名又は名称】吉原 和男
(72)【発明者】
【氏名】吉原 和男
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デッキ上に多数のコンテナを積載する貨物船は重心が高く、パラメトリック横揺れが発生し易いため、重いコンテナを低い位置に積載し、軽いコンテナを高い位置に積載するようにして重心を下げる必要があるが、この様な積み方を効率的に行うためのコンテナヤードにおけるコンテナの積み方と、実際にコンテナがコンテナヤードに到着した順番とが対応していなくてもパラメトリック横揺れを効果的に抑制できるようにする。
【解決手段】コンテナ位置決定システム1は、コンテナの目的地(港)とコンテナ重量から貨物船内の各コンテナの位置を決定し、この位置に基づいてコンテナヤードにおけるコンテナ位置を予め決定し、その後、実際に各コンテナがコンテナヤードに到着する到着予想時刻に基づいてコンテナヤード及び貨物船における各コンテナの位置を修正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物船のコンテナ積載スペースの寸法を、縦、横、高さで入力可能な寸法入力
機能を備える事を特徴とするコンテナ位置決定システム。
【請求項2】
コンテナヤードのコンテナ積載スペースの寸法を、縦、横、高さで入力可能な寸法入力
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項3】
コンテナ毎にコンテナの一意の識別子、
コンテナの規格もしくは寸法、
コンテナの目的地(港)、
コンテナ重量を記録するコンテナDB
を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項4】
コンテナの目的地(港)に基づき、
コンテナの積みかえ回数が少ない、貨物船内のコンテナ位置を決定するコンテナ位置決定
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項5】
コンテナの送り主が申告したコンテナ重量に基づき、
貨物船の重心が低くなる、貨物船内のコンテナ位置を決定するコンテナ位置決定
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項6】
前記コンテナ位置決定機能で定められた貨物船内のコンテナ位置に基づき、
コンテナヤード上のコンテナ位置を決定するコンテナ位置決定
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項7】
コンテナがコンテナターミナルへ到着する予想時刻を取得する到着予想時刻取得機能を備え、
前記コンテナの到着予想時刻に基づき、
コンテナヤード上のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項8】
前記修正されたコンテナヤード上のコンテナ位置に基づき、
貨物船内のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項9】
コンテナターミナルでのコンテナ受け入れ時に計測したコンテナ重量を取得するコンテナ重量取得機能を備え、
取得したコンテナ重量に基づき、
貨物船内のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項10】
コンテナ重量取得機能により取得したコンテナ重量に基づき修正された、
前記貨物船内のコンテナ位置に基づき、
コンテナヤード上のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項11】
コンテナ重量の申告値と実測値が乖離していた際、
重量が乖離していたコンテナ毎に、送り主、申告された重量、実測された重量を記録する実測値乖離DB
を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【請求項12】
貨物船に積載予定のコンテナ数に含まれる、
実測値乖離DBに記録された送り主のコンテナ数の割合、過去の乖離度合いから、
コンテナ重量の実測値が申告値から乖離するコンテナの数と、乖離度合いを予測する実測値乖離予測
機能を備える事を特徴とする請求項1に記載のコンテナ位置決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物船の重心を下げるコンテナ位置を算出する事で、波浪等による貨物船のパラメトリック横揺れを抑制するためのものである。
【背景技術】
【0002】
貨物船の重心を下げるためのクレーン制御方法に関する技術(下記、特許文献1)、コンテナヤードにおけるクレーン制御の効率化に関する技術(下記、特許文献2)、コンテナ位置を管理し物流全体を効率化する技術(下記、特許文献3)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-83538
【特許文献2】特開2018-108883
【特許文献3】特開2017-199320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デッキ上に多数のコンテナを積載する貨物船は重心が高く、パラメトリック横揺れが発生し易いため、海上輸送中に多数のコンテナが海中に没している。
重いコンテナを低い位置に積載し、軽いコンテナを高い位置に積載する事で重心を下げれば、パラメトリック横揺れを抑制出来るが、この様な積み方を効率的に行うには、コンテナヤードにおけるコンテナの積み方が重要となる。
しかしながら、コンテナヤードにおけるコンテナの積み方は、コンテナがコンテナターミナルに到着する順番に依存せざるを得ない。
【0005】
このため、コンテナの目的地(港)とコンテナ重量から、貨物船内のコンテナ位置を決定し、前記貨物船内のコンテナ位置基づきコンテナヤード上のコンテナ位置を決定、その後、コンテナがコンテナターミナルに到着する到着予想時刻に基づき、コンテナヤード及び貨物船内のコンテナ位置を修正するシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンテナ位置決定システムは、貨物船のコンテナ積載スペースの寸法を、縦、横、高さで入力可能な寸法入力機能を備える。
【0007】
好適には、コンテナヤードのコンテナ積載スペースの寸法を、縦、横、高さで入力可能な寸法入力機能を備える。
【0008】
より好適には、コンテナ毎にコンテナの一意の識別子、コンテナの規格もしくは寸法、コンテナの目的地(港)、コンテナ重量を記録するコンテナDBを備える。
【0009】
より好適には、コンテナの目的地(港)に基づき、コンテナの積みかえ回数が少ない、貨物船内のコンテナ位置を決定するコンテナ位置決定機能を備える。
【0010】
より好適には、コンテナの送り主が申告したコンテナ重量に基づき、貨物船の重心が低くなる、貨物船内のコンテナ位置を決定するコンテナ位置決定機能を備える。
【0011】
より好適には、前記コンテナ位置決定機能で定められた貨物船内のコンテナ位置に基づき、コンテナヤード上のコンテナ位置を決定するコンテナ位置決定機能を備える。
【0012】
より好適には、コンテナがコンテナターミナルへ到着する予想時刻を取得する到着予想時刻取得機能を備え、前記コンテナの到着予想時刻に基づき、コンテナヤード上のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正機能を備える。
【0013】
より好適には、前記修正されたコンテナヤード上のコンテナ位置に基づき、貨物船内のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正機能を備える。
【0014】
より好適には、コンテナターミナルでのコンテナ受け入れ時に計測したコンテナ重量を取得するコンテナ重量取得機能を備え、取得したコンテナ重量に基づき、貨物船内のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正機能を備える。
【0015】
より好適には、コンテナ重量取得機能により取得したコンテナ重量に基づき修正された、前記貨物船内のコンテナ位置に基づき、コンテナヤード上のコンテナ位置を修正するコンテナ位置修正機能を備える。
【0016】
より好適には、コンテナ重量の申告値と実測値が乖離していた際、重量が乖離していたコンテナ毎に、送り主、申告された重量、実測された重量を記録する実測値乖離DBを備える。
【0017】
より好適には、貨物船に積載予定のコンテナ数に含まれる、実測値乖離DBに記録された送り主のコンテナ数の割合、過去の乖離度合いから、コンテナ重量の実測値が申告値から乖離するコンテナの数と、乖離度合いを予測する実測値乖離予測機能を備える。
【0018】
本発明に係るコンテナ位置決定システムによれば、コンテナの移動回数、移動距離が少なく、パラメトリック横揺れを抑制出来るコンテナ位置の決定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係るコンテナ位置決定システムを説明するための概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るコンテナ位置決定システムについて、実施例にて図面を用いて説明する。
<実施例>
【0021】
図1は、コンテナ位置決定システムを説明する概略図である。
コンテナ位置決定システム1は、寸法入力機能2、コンテナDB3、コンテナ位置決定機能4、コンテナ位置修正機能5、到着予想時刻取得機能6、コンテナ重量取得機能7、実測値乖離DB8、実測値乖離予測機能9から構成される。
【0022】
本発明のコンテナ位置決定システム1は、寸法入力機能2により貨物船とコンテナヤード10のコンテナ積載スペースの寸法(縦、横、高さ)と、隣り合うコンテナ間に必要なすき間(縦、横、高さ)が入力される。
貨物船とコンテナヤード10のコンテナ積載スペースを入力するUIは、3次元CADであるか、3次元CADで作成したCADデータを取り込める事が望ましい。
【0023】
コンテナDB3には、貨物船に積載予定のコンテナ毎に、コンテナの一意の識別子、コンテナの規格もしくは寸法、コンテナの目的地(港)、コンテナ重量、貨物船内のコンテナ位置、コンテナヤード10上のコンテナ位置が保存される。
コンテナがコンテナターミナルに到着するまでは、コンテナ重量にはコンテナの送り主が申告した値が保存される。
【0024】
コンテナ位置決定機能4は、コンテナDB3に保存されたコンテナの目的地(港)に基づき、荷物の積みかえ回数が少ない貨物船内のコンテナ位置を決定し、前記申告されたコンテナ重量に基づき、貨物船の重心が低くなる貨物船内のコンテナ位置を決定する。
【0025】
また、コンテナ位置決定機能4は、前記貨物船内のコンテナ位置、コンテナヤードの寸法、コンテナヤードに設置されたクレーンを制御するクレーン管理機能11から取得したクレーンの制御情報から、貨物船へコンテナを積み込む際にクレーン、構内車両の移動距離が少なくなるコンテナヤード10上のコンテナ位置を決定する。
【0026】
コンテナ位置修正機能5は、到着予想時刻取得機能6がコンテナ追跡システム12から取得したコンテナがコンテナターミナルへ到着する予想時刻、クレーン管理機能11から取得したクレーンの制御情報から、コンテナヤード上のコンテナ位置を修正する。
また、コンテナ位置修正機能5は、前記修正されたコンテナヤード上のコンテナ位置から、既に定められている貨物船内のコンテナ位置に積み込むと、積み込みが非効率になると判断される場合には、貨物船内のコンテナ位置を修正するか、到着予想時刻に基づき修正された前記コンテナヤード10上のコンテナ位置を破棄する。
【0027】
コンテナ追跡システム12は、GPS等でコンテナの現在位置を追跡し、コンテナがコンテナターミナルに到着する時刻を予測する事で、物流を効率化するために検討されている技術を示す。
【0028】
コンテナ重量取得機能7は、コンテナターミナルに設置されたコンテナ重量計測機能13が、コンテナ受け入れ時に計測したコンテナ重量を取得し、前記取得したコンテナ重量が申告されていたコンテナ重量と乖離する場合、コンテナ位置修正機能5により、貨物船内のコンテナ位置を修正する。
コンテナDB3に保存されるコンテナ重量は、コンテナ重量取得機能7が取得した実測値に上書きされても、実測値と申告値の双方が管理されても、いずれでも構わない。
【0029】
コンテナ位置修正機能5は、コンテナ重量取得機能7が取得したコンテナ重量に基づき修正された、前記貨物船内のコンテナ位置、クレーン管理機能11から取得したクレーンの制御情報に基づき、コンテナヤード10上のコンテナ位置を修正する。
【0030】
コンテナ重量の申告値と実測値が大きく乖離しているコンテナの数が少ない場合、貨物船の重心高への影響は軽微であるため、コンテナ重量取得機能7が取得したコンテナ重量に基づく、貨物船内のコンテナ位置の修正は不要となる。
実測値から乖離したコンテナ重量を申告してくるのは、特定の送り主だと推測されるため、コンテナ重量の申告値と実測値が乖離している場合、実測値乖離DB8に重量が乖離していたコンテナ毎に、送り主、申告値、実測値、積み荷の内容を記録し、その送り主のコンテナの実測値が乖離していたコンテナの割合、乖離度合いを記録する。
【0031】
貨物船に積載予定のコンテナに含まれる、実測乖離DBに記録された送り主のコンテナ数の割合と、過去の申告値との乖離度合いから、実測乖離予測機能9はコンテナ重量の申告値が実測値と乖離するコンテナ数、乖離する度合いを予測、乖離が大きいと予測される場合には、コンテナ重量取得機能7が取得したコンテナ重量に基づき貨物船内のコンテナ位置の修正を行い、乖離が小さいと予測される場合には、取得したコンテナ重量に基づく貨物船内のコンテナ位置の修正は実施しない事が望ましい。
【0032】
コンテナ位置決定機能4、コンテナ位置修正機能5、実測値乖離予測機能9は、機械学習が採用される事が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、コンテナの移動回数、移動距離が少なく、パラメトリック横揺れを抑制出来るコンテナ位置の決定に好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 コンテナ位置決定システム
2 寸法入力機能
3 コンテナDB
4 コンテナ位置決定機能
5 コンテナ位置修正機能
6 到着予想時刻取得機能
7 コンテナ重量取得機能
8 実測値乖離DB
9 実測値乖離予測機能
10 コンテナヤード
11 クレーン管理機能
12 コンテナ追跡システム
13 コンテナ重量計測機能