(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159996
(43)【公開日】2022-10-18
(54)【発明の名称】燃料電池スタック用のガラスセラミックシール材
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0282 20160101AFI20221011BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221011BHJP
H01M 8/021 20160101ALI20221011BHJP
H01M 8/0286 20160101ALI20221011BHJP
C03C 8/02 20060101ALI20221011BHJP
C03C 8/22 20060101ALI20221011BHJP
C03C 10/04 20060101ALI20221011BHJP
C03C 10/14 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01M8/0282
H01M8/12 101
H01M8/021
H01M8/0286
C03C8/02
C03C8/22
C03C10/04
C03C10/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022053285
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】63/170,764
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガスダ,マイケル ディー
(72)【発明者】
【氏名】ミュール,トゥイ タイン
(72)【発明者】
【氏名】エル バタウィ,エマッド
【テーマコード(参考)】
4G062
5H126
【Fターム(参考)】
4G062AA09
4G062AA11
4G062BB05
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4G062DA06
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4G062QQ06
5H126AA13
5H126AA14
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5H126JJ00
5H126JJ05
5H126JJ08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】個体酸化物形燃料電池用のガラスセラミックシール材、燃料電池スタック及びその製造方法の提供。
【解決手段】ガラスセラミックシールは、酸化物ベースの重量で、40~60%のSiO
2、25~28%のBaO、10~20%のB
2O
3、8~12%のAl
2O
3、0~2%のZrO
2、0~1%のY
2O
3、0~1%のCaO及び0~1%のMgOを含む。スタックを製造する方法は、25重量%未満の酸化バリウム含有量を有する第1のガラス粉末を、少なくとも45重量%の酸化バリウム含有量を有する第2のガラス粉末と混合する工程と、インターコネクトと固体酸化物形燃料電池との間に、混合された第1及び第2のガラス粉末を含む組成物をコーティングして、燃料電池スタックを形成する工程と、燃料電池スタック内の組成物を高められた温度で焼結して、インターコネクトと固体酸化物形燃料電池との間にガラスセラミックシールを形成する工程とを含む。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物ベースの重量で、
40~60%のSiO2、
25~28%のBaO、
10~20%のB2O3、
8~12%のAl2O3、
0~2%のZrO2、
0~1%のY2O3、
0~1%のCaO及び
0~1%のMgO
を含む、ガラスセラミックシール。
【請求項2】
酸化物ベースの重量で、
45~55%のSiO2、
25.5~27%のBaO、
11~15%のB2O3、
9~11%のAl2O3、
0.1~1%のZrO2、
0.1~0.75%のY2O3、
0.1~0.75%のCaO及び
0.1~0.75%のMgO
を含む、請求項1記載のガラスセラミックシール。
【請求項3】
酸化物ベースの重量で、
約50%のSiO2、
約26%のBaO、
約13%のB2O3、
約10%のAl2O3、
約0.5%のZrO2、
約0.5%のY2O3、
約0.1%のCaO及び
約0.5%のMgO
を含む、請求項2記載のガラスセラミックシール。
【請求項4】
前記ガラスセラミックシールが、アモルファスガラスマトリックス相に分散された少なくとも1つの結晶相を含む、請求項1記載のガラスセラミックシール。
【請求項5】
前記少なくとも1つの結晶相が、クリストバライト結晶及びケイ酸バリウム結晶を含む、請求項4記載のガラスセラミックシール。
【請求項6】
前記アモルファスガラスマトリックス相が、酸化ホウ素及び酸化ケイ素を含む、請求項5記載のガラスセラミックシール。
【請求項7】
前記ガラスセラミックシールが、4~8重量%のバリウムを含む、請求項1記載のガラスセラミックシール。
【請求項8】
前記ガラスセラミックシールが、5~7重量%のバリウムを含む、請求項7記載のガラスセラミックシール。
【請求項9】
前記ガラスセラミックシールが、850℃で、7.5dPa・s未満の粘度(log h)を有する、請求項1記載のガラスセラミックシール。
【請求項10】
前記ガラスセラミックシールが、850℃で、5.75~7dPa・sの粘度を有する、請求項9記載のガラスセラミックシール。
【請求項11】
互いに積層されたインターコネクトと、
前記インターコネクトの間に配置された固体酸化物形燃料電池と、
前記固体酸化物形燃料電池と前記インターコネクトとの間に配置された請求項1記載のガラスセラミックシールと
を備える、燃料電池スタック。
【請求項12】
前記インターコネクトの熱膨張係数が、前記固体酸化物形燃料電池の熱膨張係数と1~5%異なる、請求項11記載の燃料電池スタック。
【請求項13】
前記インターコネクトが、4~6重量%の鉄と94~96重量%のクロムとを含むクロム鉄合金を含み、
前記インターコネクトの熱膨張係数が、前記固体酸化物形燃料電池の熱膨張係数より2~3%大きい、
請求項12記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
酸化物ベースで25重量%未満の酸化バリウム含有量を有する第1のガラス粉末を、酸化物ベースで少なくとも45重量%の酸化バリウム含有量を有する第2のガラス粉末と混合する工程と、
インターコネクトと固体酸化物形燃料電池との間に、前記混合された第1及び第2のガラス粉末を含む組成物をコーティングして、燃料電池スタックを形成する工程と、
前記燃料電池スタック内の前記組成物を高められた温度で焼結して、前記インターコネクトと前記固体酸化物形燃料電池との間にガラスセラミックシールを形成する工程と
を含む、燃料電池スタックを製造する方法。
【請求項15】
前記第2のガラス粉末が、酸化物ベースの重量で、45%~60%のBaO、25%~40%のSiO2、5%~15%のB2O3、0~2%未満のAl2O3、2%~15%のMgO及び3%~15%のY2O3を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記混合する工程が、85~97.5重量%の前記第1のガラス粉末を2.5~15重量%の前記第2のガラス粉末と混合することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記混合する工程が、92.5~97.5重量%の前記第1のガラス粉末を2.5~7.5重量%の前記第2のガラス粉末と混合することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記ガラスセラミックシールが、酸化物ベースの重量で、
40~60%のSiO2、
25~28%のBaO、
10~20%のB2O3、
8~12%のAl2O3、
0~2%のZrO2、
0~1%のY2O3、
0~1%のCaO及び
0~1%のMgO
を含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記ガラスセラミックシールが、酸化ホウ素及び酸化ケイ素を含むアモルファスガラスマトリックス相に分散されたクリストバライト結晶及びケイ酸バリウム結晶を含み、
前記ガラスセラミックシールが、4~8重量%のバリウムを含み、
前記ガラスセラミックシールが、850℃で、7.5dPa・s未満の粘度(log h)を有する、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記インターコネクトの熱膨張係数が、前記固体酸化物形燃料電池の前記熱膨張係数と1~5%異なる、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ガラスセラミックシール材、特に、燃料電池スタック用のガラスセラミックシール材を対象とする。
【背景技術】
【0002】
高温形燃料電池システム、例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムでは、酸化剤流が燃料電池のカソード側を通過し、燃料流が燃料電池のアノード側を通過する。酸化剤流は典型的には空気であり、燃料流は炭化水素燃料、例えばメタン、天然ガス、ペンタン、エタノール又はメタノールであってよい。燃料電池は、750℃~950℃の典型的な温度で動作し、負に帯電した酸素イオンの、カソードフローストリームからアノードフローストリームへの移動を可能にし、ここでイオンは、自由水素又は炭化水素分子中の水素と結合して水蒸気を生成し、及び/又は、一酸化炭素と結合して二酸化炭素を生成する。負に帯電したイオンからの過剰電子は、アノードとカソードとの間に完成された電気回路を介して燃料電池のカソード側に戻され、その結果、回路を介して電流が流れるようになる。
【0003】
燃料電池スタックは、内部又は外部に燃料及び空気用のマニホールドを備えることができる。内部マニホールド型のスタックでは、燃料及び空気は、スタック内に含まれるライザを用いて各セルに分配される。換言すれば、ガスは、各燃料電池の支持層、例えば電解質層の開口部又は孔、及び各セルのガスフローセパレータを介して流れる。また、外部マニホールド型のスタックでは、スタックは燃料及び空気の入口側及び出口側で開口しており、燃料及び空気は、スタックのハードウェアとは独立して導入及び回収される。例えば、入口及び出口の燃料並びに空気は、スタックと、スタックが配置されるマニホールドハウジングとの間の別個の通路を流れる。
【0004】
燃料電池スタックは、多くの場合、プレーナ形の要素、チューブ又は他のジオメトリの形態の多数のセルから構築される。燃料と空気とは、電気化学的に活性な表面に供給されなければならず、その表面は大きくなり得る。燃料電池スタックの構成要素の1つは、スタック内の個々のセルを分離する、いわゆるガスフローセパレータ(プレーナ形のスタックではガスフローセパレータプレートと呼ばれる)である。ガスフローセパレータプレートは、スタック内の1つのセルの燃料極(つまり、アノード)に流れる燃料、例えば水素又は炭化水素燃料を、スタック内の隣接するセルの空気極(つまり、カソード)に流れる酸化剤、例えば空気から分離する。多くの場合、ガスフローセパレータプレートは、一方のセルの燃料極と、隣接するセルの空気極とを電気的に接続するインターコネクトとしても使用される。この場合、インターコネクトとして機能するガスフローセパレータプレートは、導電性材料で製造されるか、又は導電性材料を含む。
【発明の概要】
【0005】
本開示の様々な実施形態によると、ガラスセラミックシールは、酸化物ベースの重量で、40~60%のSiO2、25~28%のBaO、10~20%のB2O3、8~12%のAl2O3、0~2%のZrO2、0~1%のY2O3、0~1%のCaO及び0~1%のMgOを含む。
【0006】
本開示の様々な実施形態によると、燃料電池スタックを製造する方法は、酸化物ベースで25重量%未満の酸化バリウム含有量を有する第1のガラス粉末を、酸化物ベースで少なくとも45重量%の酸化バリウム含有量を有する第2のガラス粉末と混合する工程と、インターコネクトと固体酸化物形燃料電池との間に、混合された第1及び第2のガラス粉末を含む組成物をコーティングして、燃料電池スタックを形成する工程と、燃料電池スタック内の組成物を高められた温度で焼結して、インターコネクトと固体酸化物形燃料電池との間にガラスセラミックシールを形成する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を示しており、上記の一般的な説明及び下記の詳細な説明とともに、本発明の特徴を説明するのに役立つ。
【
図1B】
図1Aのコラムに含まれる1つのカウンタフロー型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタックの斜視図である。
【
図2A】
図1Bのスタックの従来のインターコネクトの空気側の平面図である。
【
図2B】従来のインターコネクトの燃料側の平面図である。
【
図3A】本開示の様々な実施形態による燃料電池スタックの斜視図である。
【
図3C】
図3Aのスタックに含まれるインターコネクトの燃料側の平面図である。
【
図3D】
図3Aのスタックに含まれる燃料電池の概略図である。
【
図4A】本開示の様々な実施形態による
図3Cのクロスフロー型のインターコネクトの空気側を示す平面図である。
【
図4B】本開示の様々な実施形態による
図3Cのクロスフロー型のインターコネクトの燃料側を示す平面図である。
【
図5A】
図3Cのインターコネクトの空気側を示す平面図である。
【
図5B】
図5Aのインターコネクトの変形バージョンを示す平面図である。
【
図6A】本開示の様々な実施形態による
図4A及び4Bの2つのインターコネクト、並びに
図3Aの燃料電池スタック内に組み立てられた燃料電池を示す断面斜視図である。
【
図6B】
図6Aのインターコネクトの燃料側の燃料電池及びシールの重なりを示す平面図である。
【
図7】本開示の様々な実施形態による燃料電池スタックの一部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
様々な実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、本発明の様々な特徴を説明することを意図している。可能な限り、同じ又は類似の部材を参照するために、図面全体にわたって同じ参照番号が使用される。特定の実施例及び実施形態への言及は、例示目的であり、本発明又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0009】
本明細書では、範囲は、「約」が付いている特定の値から、及び/又は「約」が付いている別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、例は、ある特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」又は「実質的に」を使用することによって値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成すると理解されるであろう。いくつかの実施形態では、「約X」の値は、X±1%の値を含み得る。さらに、各範囲の終点は、他の終点との関連で、また他の終点とは独立的に、有意であると理解される。
【0010】
図1Aは、従来の燃料電池コラム30の斜視図であり、
図1Bは、
図1Aのコラム30に含まれる1つのカウンタフロー型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタック20の斜視図であり、
図1Cは、
図1Bのスタック20の一部の側断面図である。
【0011】
図1A及び
図1Bを参照すると、コラム30は、1つ又は複数のスタック20、燃料入口導管32、アノード排気導管34及びアノードフィード/リターンアセンブリ36(例えばアノードスプリッタプレート(ASP)36)を含んでよい。また、コラム30は、サイドバッフル38及び圧縮アセンブリ40を含んでもよい。燃料入口導管32は、ASP36に流体接続され、各ASP36に燃料供給を提供するように構成され、アノード排気導管34は、ASP36に流体接続され、各ASP36からアノード燃料排気を受け取るように構成されている。
【0012】
ASP36は、スタック20の間に配置され、スタック20に、炭化水素燃料を含む燃料供給を提供するように、また、スタック20からアノード燃料排気を受け取るように構成されている。例えば、ASP36は、以下に述べるように、スタック20内に形成された内部燃料ライザ通路22に流体接続されてよい。
【0013】
図1Cを参照すると、スタック20は、ガスフローセパレータプレート又はバイポーラプレートと呼ばれることもあるインターコネクト10によって分離された複数の燃料電池1を含む。各燃料電池1は、カソード電極3、固体酸化物電解質5及びアノード電極7を含む。
【0014】
各インターコネクト10は、スタック20内の隣接する燃料電池1同士を電気的に接続する。特に、インターコネクト10は、1つの燃料電池1のアノード電極7を、隣接する燃料電池1のカソード電極3に電気的に接続することができる。
図1Cは、下側の燃料電池1が2つのインターコネクト10の間に配置されていることを示している。
【0015】
各インターコネクト10は、燃料通路8A及び空気通路8Bを少なくとも部分的に画定するリブ12を含む。インターコネクト10は、スタック内の1つのセルの燃料極(つまり、アノード7)に流れる燃料、例えば炭化水素燃料を、スタック内の隣接するセルの空気極(つまり、カソード3)に流れる酸化剤、例えば空気から分離するガス-燃料セパレータとして作用することができる。スタック20の一方の端部には、空気又は燃料をそれぞれ端部電極に供給するための空気エンドプレート又は燃料エンドプレート(図示せず)が設けられてよい。
【0016】
図2Aは、従来のインターコネクト10の空気側の平面図であり、
図2Bは、インターコネクト10の燃料側の平面図である。
図1C及び
図2Aを参照すると、空気側は、空気通路8Bを含む。空気は、空気通路8Bを通って、隣接する燃料電池1のカソード電極3に流れる。特に、空気は、矢印で示される第1の方向Aにインターコネクト10を横切って流れることができる。
【0017】
燃料がカソード電極に接触するのを防止するために、インターコネクト10の燃料孔22Aをリングシール23が取り囲んでよい。インターコネクト10の空気側の周囲部分には、帯状の周囲シール24が配置される。シール23,24は、ガラス材料から形成されてよい。周囲部分は、リブ又は通路を含まない隆起した部分のうちの平坦部分の形態であってよい。周囲領域の表面は、リブ12の頂部と同一平面であってよい。
【0018】
図1C及び
図2Bを参照すると、インターコネクト10の燃料側は、燃料通路8A及び燃料マニホールド28(例えば燃料プレナム)を含んでよい。燃料は、燃料孔22Aのうちの1つから、隣接するマニホールド28に流入し、燃料通路8Aを通って、隣接する燃料電池1のアノード7に流れる。過剰な燃料は、他方の燃料マニホールド28に流入し、次に、隣接する燃料孔22Aに流入してよい。特に、燃料は、矢印で示されるように、第2の方向Bにインターコネクト10を横切って流れることができる。第2の方向Bは、第1の方向Aに対して直交していてよい(
図2A参照)。
【0019】
インターコネクト10の燃料側の周囲領域には、枠状のシール26が配置される。周囲領域は、リブ又は通路を含まない隆起した部分のうちの平坦部分であってよい。周囲領域の表面は、リブ12の頂部と同一平面であってよい。
【0020】
したがって、
図1A、
図1B、
図1C、
図2A及び
図2Bに示すような従来のカウンタフロー型の燃料電池コラムは、複雑な燃料分配システム(燃料レール及びアノードスプリッタプレート)を含み得る。さらに、内部燃料ライザの使用は、燃料電池及び対応するシールに孔を必要とすることがあり、それにより、燃料電池の作用面積を減少させ、燃料電池1のセラミック電解質にクラックを発生させるおそれがある。
【0021】
燃料マニホールド28は、インターコネクト10の比較的大きな領域を占める可能性があり、これにより、インターコネクト10と、隣接する燃料電池との間の接触面積が約10%減少する可能性がある。また、燃料マニホールド28は比較的深いので、燃料マニホールド28は、インターコネクト10の比較的薄い領域に相当する。インターコネクト10は、一般的に粉末冶金圧縮工程によって形成されるので、燃料マニホールド領域の密度は、インターコネクト材料の理論密度限界に近づく可能性がある。したがって、高密度の燃料マニホールド領域をさらに圧縮することができないため、圧縮工程で使用される圧縮プレスのストロークの長さが制限され得る。その結果、圧縮ストロークの制限によって、インターコネクト10の他の場所で達成される密度が、より低いレベルに制限される可能性がある。結果として生じる密度のばらつきは、局所的な偏差につながる可能性があり、これは、インターコネクト10と燃料電池1との間の接触量を減少させ、スタックの歩留まり及び/又は性能を低下させる可能性がある。
【0022】
燃料電池システムの設計における別の重要な検討事項は、稼働効率の領域にある。稼働効率を達成するためには、燃料利用率を最大化することが重要な要素である。燃料利用率とは、稼働中に消費される燃料の量と、燃料電池に供給される燃料の量との比である。燃料電池のサイクル寿命を維持するための重要な要素は、作用面積に燃料を適切に分配することにより、燃料電池の作用面積での燃料欠乏を回避することであり得る。いくつかの流れ範囲通路が、その通路の領域で生じる電気化学反応を維持するのに十分な燃料を受け取れないような燃料の不均一な分配がある場合、その通路に隣接する燃料電池領域で燃料欠乏をもたらす可能性がある。燃料をより均一に分配するために、従来のインターコネクトの設計は、流れ範囲全体にわたる通路の深さの変動を含む。これは、製造プロセスの複雑さをもたらすだけでなく、これらの寸法を正確に測定するために複雑な計測を必要とする可能性がある。燃料が燃料孔及び分配マニホールドを通して分配されることによって、様々な通路ジオメトリが制約される可能性がある。
【0023】
この複雑なジオメトリと燃料マニホールドとを解消するための1つの可能な解決策は、より広い燃料開口部を持たせ、燃料流れ範囲全体にわたってより一層均一な燃料分配を確保することである。燃料マニホールドの形成が密度のばらつきの要因であるため、燃料マニホールドを無くすことで、インターコネクトのより均一な密度と透過性とが可能になるはずである。したがって、従来の燃料マニホールドを使用することなく燃料電池に均一に燃料を分配する一方で、燃料電池との均一な接触を提供する改良されたインターコネクトが必要とされている。
【0024】
燃料電池システムのホットボックスのサイズを拡大する際の全体的な制約のために、ホットボックスの設置面積を増加させることなく、燃料利用率及び燃料電池の作用面積を最大化するように設計された改良されたインターコネクトもまた必要とされている。
【0025】
クロスフロー型の燃料電池システム
図3Aは、本開示の様々な実施形態による燃料電池スタック300の斜視図である。
図3Bは、
図3Aのスタック300の一部の分解斜視図である。
図3Cは、スタック300に含まれるインターコネクト400の燃料側の平面図である。
図3Dは、スタック300に含まれる燃料電池の概略図である。
【0026】
図3A~
図3Dを参照すると、ASPを有さないがゆえに燃料電池コラムと呼ぶこともできる燃料電池スタック300は、ガスフローセパレータプレート又はバイポーラプレートと呼ぶこともできるインターコネクト400によって分離される複数の燃料電池310を含む。1つ又は複数のスタック300は、共通のエンクロージャ又は「ホットボックス」内で燃料電池発電システムの他の構成要素(例えば、1つ又は複数のアノード排ガス酸化剤、燃料改質器、流体導管及びマニホールドなど)と熱的に一体化されてよい。
【0027】
インターコネクト400は、導電性の金属材料から製造される。例えば、インターコネクト400はクロム合金、例えばCr-Fe合金を含んでよい。インターコネクト400は、典型的には、Cr粉末とFe粉末との混合物又はCr-Fe合金粉末であってよいCr-Fe粉末のプレス及び焼結を含む粉末冶金技術を用いて製作することにより、所望のサイズ及び形状のCr-Feインターコネクトを形成することができる(例えば、「ネットシェイプ」又は「ニアネットシェイプ」工程)。典型的なクロム合金インターコネクト400は、重量で約90%を超えるクロム、例えば重量で約94~96%(例えば95%)のクロムを含む。インターコネクト400はまた、重量で約10%未満の鉄、例えば重量で約4~6%(例えば5%)の鉄、重量で約2%未満、例えば重量で約0~1%の他の材料、例えばイットリウム又はイットリア、及び残留不純物又は不可避の不純物を含んでもよい。
【0028】
各燃料電池310は、固体酸化物電解質312、アノード314及びカソード316を含んでよい。いくつかの実施形態では、アノード314及びカソード316は、電解質312に印刷されてもよい。他の実施形態では、導電層318、例えばニッケルメッシュが、アノード314と、隣接するインターコネクト400との間に配置されてよい。燃料電池310は、従来の燃料電池の燃料孔のような貫通孔を備えない。したがって、燃料電池310は、そのような貫通孔の存在に起因して発生し得るクラックを回避する。
【0029】
スタック300の最上部のインターコネクト400及び最下部のインターコネクト400は、それぞれ、空気又は燃料を隣接する端部の燃料電池310に提供するための特徴を有する異なる形態の空気側エンドプレート又は燃料側エンドプレートであってよい。本明細書で使用されている場合、「インターコネクト」とは、2つの燃料電池310の間に配置されたインターコネクト、又はスタック端部に配置され、1つの燃料電池310のみに直接隣接するエンドプレートのいずれかを意味し得る。スタック300は、ASP及びそれに関連するエンドプレートを含まないので、スタック300は、2つのエンドプレートのみを含み得る。その結果、コラム内ASPの使用に関連したスタック寸法の変化を回避することができる。
【0030】
スタック300は、サイドバッフル302、燃料プレナム304及び圧縮アセンブリ306を含んでよい。サイドバッフル302は、セラミック材料で形成可能であり、積層された燃料電池310及びインターコネクト400を含む燃料電池スタック300の互いに反対側の側面に配置されてよい。サイドバッフル302は、圧縮アセンブリ306がスタック300に圧力を加えることができるように、燃料プレナム304と圧縮アセンブリ306とを接続してよい。サイドバッフル302は、各バッフルプレートが燃料電池スタック300の3つの側面の少なくともそれぞれの一部を覆うような、湾曲したバッフルプレートであってよい。例えば、一方のバッフルプレートは、スタック300の燃料入口ライザ側を完全に覆い、スタックの隣接する表側及び裏側を部分的に覆ってよく、他方のバッフルプレートは、スタックの燃料出口ライザ側を完全に覆い、スタックの表側及び裏側の隣接する部分を部分的に覆う。スタックの表側及び裏側のカバーされていない残りの部分によって、空気がスタック300を貫流することが可能になる。湾曲したバッフルプレートは、スタックの一側面のみを覆う従来のバッフルプレート38と比較して、スタックを通過する空気流の制御を改善する。燃料プレナム304は、スタック300の下方に配置されてよく、スタック300に水素含有燃料供給を提供するように構成されてよく、スタック300からアノード燃料排気を受け取ることができる。燃料プレナム304は、燃料プレナム304の下方に配置された燃料入口兼出口導管308に接続されてよい。
【0031】
各インターコネクト400は、スタック300内の隣接する燃料電池310同士を電気的に接続する。特に、インターコネクト400は、1つの燃料電池310のアノード電極を、隣接する燃料電池310のカソード電極に電気的に接続することができる。
図3Cに示すように、各インターコネクト400は、空気を第1の方向Aに流して、空気を、隣接する燃料電池310のカソードに提供することができるように構成することができる。また、各インターコネクト400は、燃料を第2の方向Fに流して、燃料を、隣接する燃料電池310のアノードに提供することができるように構成することもできる。方向AとFは、互いに直交していてよいか、又は実質的に互いに直交していてよい。したがって、インターコネクト400をクロスフロー型のインターコネクトと呼ぶことができる。
【0032】
インターコネクト400は、インターコネクト400にわたって延在して燃料分配のために構成された燃料孔を含んでよい。例えば、燃料孔は、1つ又は複数の燃料入口402、及びアノード排気出口404と呼ぶこともできる1つ又は複数の燃料出口404を含んでよい。燃料入口402及び燃料出口404は、燃料電池310の周囲の外側に配置可能である。したがって、燃料電池310は、燃料を流すための対応する貫通孔なしに形成可能である。燃料入口402の合計長さ及び/又は燃料出口404の合計長さは、インターコネクト400の対応する長さ、例えば方向Aに占める長さの少なくとも75%であってよい。
【0033】
一実施形態では、
図3Bに示すように、各インターコネクト400は、インターコネクト400のネック部分412によって分離された2つの燃料入口402を含む。しかし、2つよりも多くの燃料入口402が含まれてよく、例えば、2つ~4つのネック部分412によって分離された3つ~5つの入口が含まれてよい。一実施形態では、
図3Bに示すように、各インターコネクト400は、インターコネクト400のネック部分414によって分離された2つの燃料出口404を含む。しかし、2つよりも多くの燃料出口404が含まれてよく、例えば、2つ~4つのネック部分414によって分離された3つ~5つの出口が含まれてよい。
【0034】
隣接するインターコネクト400の燃料入口402は、スタック300内で整列されて、1つ又は複数の燃料入口ライザ403を形成することができる。隣接するインターコネクト400の燃料出口404は、スタック300内で整列されて、1つ又は複数の燃料出口ライザ405を形成することができる。燃料入口ライザ403は、燃料プレナム304から受け取った燃料を燃料電池310に分配するように構成することができる。燃料出口ライザ405は、燃料電池310から受け取ったアノード排気を燃料プレナム304に提供するように構成することができる。
【0035】
図1Aに示した関連技術の平坦なサイドバッフル38とは異なり、サイドバッフル302は、インターコネクト400の縁部を取り囲むように湾曲させることができる。特に、サイドバッフル302は、インターコネクト400の燃料入口402及び燃料出口404を取り囲むように配置することができる。したがって、サイドバッフルは、サイドバッフル302間で露出しかつ
図4A及び
図4Bに関して詳細に記載されるインターコネクト400の空気通路を通る空気流をより効率的に制御することができる。
【0036】
様々な実施形態では、スタック300は、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個又は少なくとも60個の燃料電池を含んでよく、これらの燃料電池には、燃料ライザ403,405のみを使用して燃料を提供することができる。換言すれば、従来の燃料電池システムと比較して、クロスフロー型の構成は、
図1Aに示されたASP又はスタックの外部燃料マニホールド、例えば外部導管32,34を必要とせずに、多数の燃料電池に燃料を提供することができる。
【0037】
各インターコネクト400は、導電性材料、例えばセルの固体酸化物電解質と同様の熱膨張率(例えば0~10%の差)を有する金属合金(例えばクロム鉄合金)で製造されてよいか、又は同導電性材料を含んでよい。例えば、インターコネクト400は、金属(例えば、4~6重量%の鉄、任意選択的には1重量%以下のイットリウム及び平衡クロム合金などのクロム鉄合金)を含んでよく、所定の燃料電池310のアノード側、つまり燃料側と、隣接する燃料電池310のカソード側、つまり空気側とを電気的に接続してよい。アノードと各インターコネクト400との間に導電性接触層、例えばニッケル接触層(例えばニッケルメッシュ)が設けられてよい。別の任意の導電性接触層が、カソード電極と各インターコネクト400との間に設けられてよい。
【0038】
稼働中に酸化環境(例えば空気)にさらされるインターコネクト400の表面、例えばインターコネクト400のカソードに面する側は、インターコネクト上の酸化クロム表面層の成長速度を低下させて、燃料電池のカソードを劣化させ得るクロム蒸気種の蒸発を抑制するために、保護コーティング層でコーティングされていてよい。典型的には、ペロブスカイト、例えばランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)を含むことができるコーティング層を溶射コーティング又は浸漬コーティング工程を用いて形成することができる。代替的には、スピネル、例えば(Mn,Co)3O4スピネル(MCO)などの他の金属酸化物コーティングをLSMの代わりに又はLSMに加えて使用することができる。Mn2-xCo1+xO4(0≦x≦1)、又はz(Mn3O4)+(1-z)(Co3O4)と表記され、式中、(1/3≦z≦2/3)であるか、又は(Mn,Co)3O4と表記される組成を有する任意のスピネルを使用することができる。他の実施形態では、LSMとMCOとの混合層又はLSM層とMCO層とのスタックをコーティング層として使用してよい。
【0039】
図4A及び
図4Bは、本開示の様々な実施形態によるクロスフロー型のインターコネクト400の空気側及び燃料側をそれぞれ示す平面図である。
図4Aを参照すると、インターコネクト400の空気側は、載置された燃料電池310のカソードに空気を提供するように構成された空気通路408を少なくとも部分的に画定するように構成されたリブ406を含んでよい。インターコネクト400の空気側は、空気通路408を含む空気流れ範囲420と、空気流れ範囲420の互いに反対側の2つの側面に配置されたライザシール面422とに分けることができる。ライザシール面422の一方は、燃料入口402を取り囲んでよく、他方のライザシール面422は、燃料出口404を取り囲んでよい。空気通路408及びリブ406は、空気通路408及びリブ406がインターコネクト400の互いに反対側の周縁部で終端するように、インターコネクト400の空気側を完全に横切って延在可能である。換言すれば、スタック300に組み立てられたとき、空気通路408及びリブ406の互いに反対側の端部は、スタックの互いに反対側の(例えば表側及び裏側)外面に配置され、吹き付けられた空気がスタックを貫流することを可能にする。したがって、スタックは、外部に空気用のマニホールドを備えてよい。
【0040】
ライザシール面422上にライザシール424が配置されてよい。例えば、1つのライザシール424は、燃料入口402を取り囲んでよく、1つのライザシール424は、燃料出口404を取り囲んでよい。ライザシール424は、燃料及び/又はアノード排気が空気流れ範囲420に入って、燃料電池310のカソードに接触してしまうのを防止することができる。また、ライザシール424は、燃料が燃料電池スタック100(
図3A参照)から漏れ出してしまうのを防止するように機能することもできる。
【0041】
図4Bを参照すると、インターコネクト400の燃料側は、載置された燃料電池310のアノードに燃料を提供するように構成された燃料通路418を少なくとも部分的に画定するリブ416を含んでよい。インターコネクト400の燃料側は、燃料通路418を含む燃料流れ範囲430と、燃料流れ範囲430並びに燃料入口402及び燃料出口404を取り囲む周囲シール面432とに分けることができる。リブ416及び燃料通路418は、空気側通路408及びリブ406が延在する方向に対して直交する方向又は実質的に直交する方向に延在してよい。
【0042】
周囲シール面432上に枠状の周囲シール434が配置されてよい。周囲シール434は、空気が燃料流れ範囲430に入って、隣接する燃料電池310のアノードに接触してしまうのを防止するように構成することができる。また、周囲シール434は、燃料が燃料ライザ403,405を出て、燃料電池スタック300(
図3A及び
図3B参照)から漏れ出してしまうのを防止するように機能することができる。
【0043】
シール424,434は、以下で詳細に説明するように、ガラス又はセラミックのシール材を含んでよい。シール材は、低い導電率を有してよい。いくつかの実施形態では、シール424,434は、インターコネクト400上にシール材の1つ又は複数の層を印刷し、その後、焼結することによって形成可能である。
図5Aは、本開示の様々な実施形態による、ライザシール424を有さないインターコネクト400の空気側を示す平面図であり、
図5Bは、
図5Aのインターコネクト400の変形バージョンを示す平面図である。
【0044】
従来のカウンタフロー型の燃料電池システムの設計では、燃料電池電解質は、燃料電池電解質が、隣接するインターコネクト間の誘電体層として機能するように、インターコネクトを完全に覆う。クロスフロー型の設計では、インターコネクトは燃料電池の周囲を越えて延在してよい。このことは、スタックが傾斜している場合に、又はシールが時間の経過とともに導電性になる場合に、インターコネクト間の電気的な短絡をもたらすおそれがある。
【0045】
図5A及び
図5Bを参照すると、インターコネクト400は、任意選択的には、ライザシール面422上に配置された誘電体層440を含んでよい。例えば、
図5Aに示すように、各誘電体層440は、環状であってよく、対応するライザシール面422の全て又は実質的に全てを覆ってよい。例えば、
図5Aの実施形態では、誘電体層440は、D字形であってもよく、
図4Aに示された載置されるライザシール424と実質的に同じ形状を有してよい。他の実施形態では、
図5Bに示すように、誘電体層440は、C字形であってよく、対応するライザシール面422の一部、例えばインターコネクト400の外周に隣接する部分しか覆わなくてよい。誘電体層440は、隣接するインターコネクト400間に電気的な絶縁バリアを形成し、対応するスタックが傾斜している場合に、又はシールが導電性になる場合に、電気的な短絡を防止する。
【0046】
誘電体層440は、アルミナ、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)、炭化ケイ素、結晶質ガラス(例えば石英又はガラスセラミック)、又は他の高温誘電体材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、誘電体層440は、腐食バリア材料又は腐食バリア層を含んでよい。例えば、誘電体層440は、耐食性ガラス、アルミナ、ジルコンなどを含む複合材料を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、誘電体層440は、SOFCスタック300のインターコネクト400の表面に被着された、少なくとも90重量%のガラス(例えば、約99~100重量%の非晶質ガラス及び0~1重量%の結晶相などの90~100重量%のガラス)を含む、実質的にガラスバリア前駆体層から形成されたガラスセラミック層を含む。一実施形態では、少なくとも90重量%のガラスを含むガラスバリア前駆体層は、酸化物重量ベースで、45~55重量%のシリカ(SiO2)、5~10重量%の酸化カリウム(K2O)、2~5重量%の酸化カルシウム(CaO)、2~5重量%の酸化バリウム(BaO)、0~1重量%の三酸化ホウ素(B2O3)、15~25重量%のアルミナ(Al2O3)及び20~30重量%ジルコニア(ZrO2)を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、ガラスバリア前駆体層は、重量で、少なくとも90%のガラス(例えば、約99~100重量%の非晶質ガラス及び0~1重量%の結晶相などの約90~100重量%のガラス)を含む。例えば、ガラスバリア前駆体層は、酸化物重量ベースで、約30%~約60%、例えば約35%~約55%のシリカ(SiO2)、約0.5%~約15%、例えば約1%~約12%の三酸化ホウ素(B2O3)、約0.5%~約5%、例えば約1%~約4%のアルミナ(Al2O3)、約2%~約30%、例えば約5%~約25%の酸化カルシウム(CaO)、約2%~約25%、例えば約5%~約20%の酸化マグネシウム(MgO)、約0%~約35%、例えば約20%~約30%の酸化バリウム(BaO)、約0%~約20%、例えば約10%~約15%の酸化ストロンチウム(SrO)、及び約2%~約12%、例えば約5%~約10%の酸化ランタン(La2O3)を含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラスバリア前駆体の材料は、ゼロでない量、例えば少なくとも0.5重量%の量のBaO及び/又はSrOの少なくとも一方、例えば、ゼロでない量、例えば少なくとも0.5重量%の量のBaO及びSrOの両方を含んでよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、LSM/MCOコーティングの一部又は全部を、インターコネクト400の空気側においてライザシール424の周囲の領域で除去して、LSM/MCO材料からライザシール424へのMnの拡散を防止し、それにより、ライザシール424が導電性になってしまうのを防止することができる。他の実施形態では、ライザシール424は、LSM/MCOコーティング、例えば上述したホウケイ酸ガラスセラミック組成物と反応しない結晶質ガラス又はガラスセラミック材料で形成されていてよい。
【0049】
誘電体層440は、独立した層、例えばテープ形成層及び焼結層から形成されてよく、燃料電池スタックの組み立て中にインターコネクト400間に配置されてよい。他の実施形態では、誘電体層440は、誘電体材料をインク、ペースト又はスラリーの形態で分散させ、その後、インターコネクト400上にスクリーン印刷、パッド印刷、エアロゾルスプレーすることによって形成可能である。いくつかの実施形態では、誘電体層440は、溶射工程、例えば大気プラズマ溶射(APS)工程によって形成可能である。例えば、誘電体層440は、APS工程によって堆積させられたアルミナを含んでもよい。
【0050】
誘電体層440は、インターコネクト400上に直接堆積されてよい。例えば、誘電体層440は、ライザシール面422上(つまり、ライザシール面422が空気流れ範囲420と接触し、誘電体層440がLSM/MCOコーティングと重なり合う小さなオーバラップ領域(例えば継ぎ目)を除いた、ライザシール424では覆われるが、LSM/MCOコーティングでは覆われない領域内の燃料入口402及び燃料出口404の周囲のインターコネクト400の部分)に直接配置されてよく、それにより、インターコネクト400の露出面からのCr蒸発が防止される。このように、LSM/MCOコーティングは、空気通路408及びリブ406を含む空気流れ範囲420のインターコネクト400の表面には配置されるが、燃料入口402及び燃料出口404を取り囲むインターコネクト400のライザシール面422には配置されない。誘電体層440は、LSM/MCOコーティングによって覆われていない燃料入口402及び燃料出口404を取り囲む領域のインターコネクト400のライザシール面、並びにライザシール面422に隣接する空気流れ範囲420内のLSM/MCOコーティングの縁部に配置される。代替的には、誘電体層440は省略可能であり、燃料ライザ開口部の周囲には誘電体層440が堆積させられない。
【0051】
燃料電池スタック及び/又はその構成要素は、コンディショニング及び/又は焼結されてよい。「焼結」は、燃料電池スタックにシールを形成するために、ガラスシール前駆体材料又はガラスセラミックシール前駆体材料を加熱、溶融及び/又はリフローするプロセスを含み、このプロセスは、空気及び/又は不活性ガス中で、高められた温度(例えば、600~1000℃)で実施可能である。「コンディショニング」は、アノード電極中の金属酸化物(例えば、酸化ニッケル)をサーメット電極(例えば、ニッケル、及びセラミック材料、例えば安定化ジルコニア又はドープセリアなど)中の金属(例えば、ニッケル)に還元するプロセス、及び/又は性能特性化/試験中にスタック300を加熱するプロセスを含み、燃料がスタックを通って流れる間、高められた温度(例えば、750~900℃)で実施可能である。燃料電池スタック300の焼結及びコンディショニングは、同じ熱サイクル中に(つまり、焼結とコンディショニングとの間にスタックを室温まで冷却することなく)実施可能である。
【0052】
図6Aは、本開示の様々な実施形態による、
図4A及び
図4Bの2つのインターコネクト400、並びに
図3Aの燃料電池スタック300に組み立てられた燃料電池310を示す断面斜視図である。
図6Bは、
図6Aのインターコネクト400の燃料側の燃料電池310、及びシール424,434の重なりを示す平面図である。
【0053】
図4A、
図4B、
図6A及び
図6Bを参照すると、燃料電池スタックに組み立てられたとき、燃料電池310は、各インターコネクト400の空気流れ範囲420及び燃料流れ範囲430に面するように、インターコネクト400間に配置される。ライザシール424は、燃料電池310の空気側の第1の対向する側面に接触してよく、周囲シール434は、燃料電池310の燃料側の第2の対向する側面に接触してよい。したがって、シール424,434の部分は、燃料電池310の周囲の(例えば燃料電池310と重なる)内側よりも、燃料電池310の周囲の外側で厚くなり得る。燃料入口402及び燃料出口404に隣接する周囲シール434の部分は、ライザシール424の対応する部分と重なり得る。さらに、燃料電池310の一部は、例えば燃料電池310の角隅で、シール424,434の重なり合う部分の間に配置可能である。したがって、燃料電池310及びシール424,434の重なり合う部分の合計厚さは、シール424,434の重なり合う部分の厚さよりも大きくなり得る。
【0054】
この厚さの変化を考慮するために、及び/又は、燃料電池スタックを適切に密封するために、燃料電池310の周囲の外側に配置されるインターコネクト400の部分の厚さは、燃料電池310の焼結後の厚さに等しい厚さ(例えば、
図3Dに示すように、電極314,316、電解質312及びニッケルメッシュ318の焼結後の厚さ)だけ増加させてよい。
【0055】
シール424,434が燃料電池310の角隅に重なっているので、角隅間でライザシール424の各々の下(例えば電解質312の下)にギャップGが形成されてよい。スタック300が圧縮されると、インターコネクト400及びライザシール424を介して、ギャップGに隣接する燃料電池310の支持されていない縁部に下向きの力が伝達され、この下向きの力は、ライザシール424の下の隣接するギャップGによって、レバーアーム効果を生じさせ得る。
【0056】
従来、燃料電池の電極及び導電層は、燃料電池の作用領域(例えば、燃料電池が燃料及び空気にさらされる部分)にのみ配置される。換言すれば、電極及び/又は導電層で覆われていない電解質部分にシールが配置され得る。
【0057】
本開示の様々な実施形態によると、燃料電池310の縁部を支持するために、導電層318(例えばニッケルメッシュ)がギャップG内に延在させられてよい。いくつかの実施形態では、アノード314及び/又はカソード316は、導電層318をギャップG内に延在させることと組み合わせて、ライザシール424の下の電解質を覆うように延在させてもよい。他の実施形態では、ライザシール424の下の電解質312の片側又は両側に1つ又は複数の電解質補強層325が形成されてよく、セラミック材料、例えばアルミナ及び/又はジルコニアから形成されてよい。電解質補強層325は、アノード314及び/又はカソード316と実質的に同じ厚さを有してよく、導電層318とともに燃料電池310の縁部をさらに支持してよい。いくつかの実施形態では、電解質補強層325は、燃料電池310のカソード側に配置されてよく、クロムゲッタリング材料、例えばマンガン酸化コバルトスピネルから形成されてよい。このように、電解質補強層325は、燃料電池310に供給される空気からクロムを除去するように構成されてよい。
【0058】
そのような高温操作中に、ライザシール424に過度の圧力が加えられると、ライザシール424は、ライザシール面422から、燃料電池310の縁部を越えて、燃料入口402、燃料出口404及び/又は隣接するインターコネクト400の燃料通路418に押し出されるおそれがある。深刻な場合には、このことは、燃料流れの圧力低下を増大させ、セルからセルへの燃料の不均一な分配を引き起こし、さらにはスタック300を使用不能にすることさえある。
【0059】
したがって、いくつかの実施形態では、ライザシール面422は、空気側リブ406の頂部に対して凹んでいてよい。換言すれば、インターコネクト400の空気側を上から見た場合、ライザシール領域は、リブ406の頂部よりも低くてよい。例えば、ライザシール面422は、リブ406の頂部を横切って延在する平面に対して約30~約50μmだけ凹んでいてよい。したがって、例えば約20~30μmの範囲の厚さを有することができる燃料電池310が、インターコネクト400の空気側に接触すると、リブ406が燃料電池310に接触し、燃料電池310と各々のライザシール面422との間に空間又は凹部が形成され得る。
【0060】
燃料電池スタック300が組み立てられると、凹んだライザシール面422は、ライザシール424を収容するための追加の空間を提供する。その結果、ライザシール424に加えられる力を減少させることができ、それにより、高温操作中、例えば焼結中に、ライザシール424をライザシール面422内に留めることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、燃料電池310の1つ又は複数の構成要素は、例えば、密着焼付けによってより肉厚にされ、より肉厚な密着焼付け燃料電池層を形成してよい。また、この肉厚の増加により、ライザシール424に加えられる力を減少させることができる。いくつかの実施形態では、より肉厚の燃料電池310は、凹まされたライザシール面422とともに使用可能である。
【0062】
様々な実施形態では、インターコネクト400の空気側の燃料入口402及び/又は燃料出口404に面取り部407が追加されてよい。面取り部407は、ライザシール面422から逃げたシール材を捕捉するように機能してよい。また、例えば、インターコネクト400の他の縁部、例えばインターコネクト400の燃料側の入口402及び出口404の縁部、並びに/又はインターコネクト400の周囲縁部に面取り部409が追加されてもよい。面取り部は、インターコネクト400を形成するために利用される粉末冶金操作中の欠損を防止するなど、インターコネクト400の形成中に利点を提供することができる。
【0063】
様々な実施形態によると、シール424,434は、高温で安定しているガラスセラミック材料から形成可能であり、スタック300内で、インターコネクト400と燃料電池310との間の結合剤として作用し、(高い燃料利用率を達成し、燃料漏れをほとんど又はまったく生じないように)気密性を提供する。シール424,434はまた、好ましくは、高められたスタック動作温度で長期間にわたって化学的に安定であり、スタック300で使用される電解質312、インターコネクト400、並びに燃料及び空気などのガスに対して不活性である。最後に、シール424,434も電気的に絶縁性であるべきであり、寄生(短絡)電流を防ぐために誘電完全性を有するべきである。
【0064】
インターコネクト400と燃料電池310の電極との間に追加の接触層が存在し得ることに留意されたい。例えば、ニッケルメッシュなどのアノード接触層315は、
図7に示されるように、スタック300内で、アノード314と、隣接するインターコネクト400との間に存在し得る。
【0065】
図7に示される一実施形態では、スタック300内の温度勾配から生じる応力は、一定量の「柔軟性」を提供するシールによって補償される。本明細書で使用される場合、「柔軟性」とは、剪断応力などの応力下で、シール424,434が塑性変形して、スタック300内で、燃料電池310を破壊、剥離又はひび割れさせることなく応力を緩和することができるように、粘度が十分に低いことを意味する。この柔軟性は、大きな温度勾配によって応力が引き起こされる大型(つまり、大きな長さ及び幅)のスタックの場合により重要である。
【0066】
例えば、幅及び長さがそれぞれ100mm以上、例えば100~200mmのインターコネクト400及び燃料電池310の場合、80℃超の典型的な温度勾配が、単一の燃料電池310にわたって隅から隅まで生じる可能性がある。そのような温度勾配は、燃料電池310に大きな固有応力をもたらす。さらに、燃料電池310とインターコネクト400との間の熱膨張係数が、1~5%、例えば2~3%不一致である場合、応力はさらに増加する。例えば、インターコネクト400の熱膨張係数(CTE)は、燃料電池310のCTEよりも、1~5%、例えば2~3%高くてよい。そのようなCTEの不一致は、熱又は電流サイクル中の燃料電池のバックリング(つまり、面内圧縮)を防止又は低減し得る。しかしながら、燃料電池及びインターコネクトのCTEが意図的に不一致である場合には、上記の応力は、燃料電池及びインターコネクトのCTEが互いに等しい場合に比べて、100%超増加する。さらに、不一致のCTEはまた、シール424,434が、垂直に向けられた応力をインターコネクト400から燃料電池310に伝達することに加えて、シールを剪断(すなわち、
図7の水平矢印によって示される横方向剪断応力)にかける。
【0067】
一実施形態では、シール材組成物は、より柔軟になるように製造され、その後、これは、剪断下で変形することができる。そのような変形は、燃料電池310とインターコネクト400との間のCTEの不一致から応力の剪断成分を軽減するであろう。したがって、シール424,434のシール材は、化学的安定性、既存の材料との適合性、誘電性面での完全性、湿潤性及び自己修復性を維持しながら、700~900℃のSOFC動作温度で比較的低い粘度を有する。比較的低い粘度は、シールが塑性変形することを可能にし、燃料電池310への応力を軽減する。一実施形態では、シール材は、850℃で、7.5dPa・s未満、例えば、5.75~7dPa・sの粘度(すなわち、log hの値)を有し得る。
【0068】
以下の表Iには、酸化物ベースの重量で、
40~60%、例えば45~55%、例えば約50%のSiO2、
25~28%、例えば25.5~27%、例えば約26%のBaO、
10~20%、例えば11~15%、例えば約13%のB2O3、
8~12%、例えば9~11%、例えば約10%のAl2O3、
0~2%、例えば0.1~1%、例えば約0.5%のZrO2、
0~1%、例えば0.1~0.75%、例えば約0.5%のY2O3、
0~1%、例えば0.1~0.75%、例えば約0.1%のCaO及び
0~1%、例えば0.1~0.75%、例えば約0.5%のMgO
を含む、シール材組成物が記載されている。
【0069】
シール材組成物は、他の酸化物を含有しないか、又は、0.1重量%未満の他の酸化物、例えばナトリウム、カリウム、ランタン若しくはリン酸化物などを含有し得る。代替的なシール材組成物は、0.1重量%超の他の酸化物などの、追加の成分を含み得る。
【0070】
一実施形態では、シール材は、スタック300内のガラス粉末を焼結して、ガラス粉末を部分的に結晶化して、シール424,434を形成した後のガラスセラミック材料を含む。特定の理論に縛られることを望むものではないが、焼結後に、ガラスセラミック材料は、酸化ホウ素及びシリカを含有するアモルファスガラスマトリックス相と、当該マトリックスに埋め込まれた1つ又は複数の結晶相とを含むと考えられる。結晶相は、クリストバライト相(例えば、結晶質シリカ相)及びケイ酸バリウム相を含み得る。これらが唯一の結晶相である場合もあれば、追加の結晶相が存在する場合もある。
【0071】
柔軟性ガラスセラミックシール材は、上記の酸化物粉末を上記の重量比で混合し、混合粉末を溶融し、溶融物を固化させ、固化した溶融物を粉砕して、上記のシール材の粉末を形成することによって形成することができる。
【0072】
代替的には、柔軟性ガラスセラミックシール材は、比較的低いバリウム含有量(例えば、酸化物ベースで25重量%未満の酸化バリウム含有量)を有する市販のガラスシール材粉末を、酸化バリウム粉末と混合するか、又は、より高い酸化バリウム含有量(例えば、酸化物ベースで少なくとも重量%の酸化バリウム含有量)を有する別の市販のガラス粉末と混合するかのいずれかによって形成することができる。例えば、比較的低いバリウム含有量を有する市販のSchott G018-281ガラス粉末を、より高いバリウム含有量を有する1つ又は複数の他の粉末と混合して、混合粉末組成物を形成することができる。混合粉末組成物は、粉末を混合した後に懸濁液又は分散液(例えば、インク)に提供されてよいか、又は、粉末が溶媒中で混合されて、1回の工程でインクが形成されてよい。次いで、混合粉末組成物(例えば、インク)は、スタック300内で、インターコネクト400と燃料電池310との間にコーティングされる。次いで、混合粉末組成物は、上記のようにスタック300内で焼結されて、
図7に示される柔軟性ガラスセラミックシール424,434を形成する。
【0073】
一実施形態では、より高いバリウム含有量を有する粉末は、酸化バリウム粉末を含むか、酸化バリウムの酸化物ベースで少なくとも45重量%を含有する市販のSchott G018-354ガラス粉末を含むか、又は、2014年3月4日に発行されて参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,664,134号明細書(「’134特許」)に記載されているように、酸化物ベースの重量%で、45%~60%のBaO、25%~40%のSiO2、5%~15%のB2O3、0~2%未満のAl2O3、2%~15%のMgO及び3%~15%のY2O3を含有する結晶化ガラスはんだ粉末を含み得る。例えば、2.5~15重量%、例えば、2.5~10重量%、例えば、2.5~7.5重量%のSchott G018-354ガラス粉末又は’134特許の結晶化ガラスはんだ粉末を、85~97.5重量%、例えば90~97.5重量%、例えば92.5~97.5重量%のSchott G018-281ガラス粉末と混合して、スタック内に柔軟性ガラスセラミックシール材を形成するために使用される混合粉末組成物を形成することができる。
【0074】
一実施形態では、実施形態のシール材のバリウム含有量は、Schott G018-281シール材などの市販のガラス燃料電池シール材と比較して増加している。バリウム含有量は、シール材組成物全体の4~8重量%、例えば約5~7重量%であり得る。バリウム含有量が増加することによって、シール材の柔軟性が改善される。しかしながら、バリウム含有量が高過ぎる場合、バリウムが、Cr-Fe合金インターコネクト(例えば、4~6重量%の鉄と94~96重量%のクロムとを含むクロム鉄合金を含む)のクロムと反応する可能性がある、及び/又は、シールが流動的になり過ぎて構造の完全性を失う可能性がある。特定の理論に縛られることを望むものではないが、バリウム及び/又は酸化バリウムは、シール材のガラス転移温度を低下させるフラックスとして作用すると考えられる。
【0075】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、より低いバリウム含有量及びより高いバリウム含有量の粉末を混合し、次いで、スタック内で混合された粉末を焼結すると、意外なことに、同じ組成を有するが溶融ガラスフリットから形成されたガラスセラミック材料よりもCr-Fe合金インターコネクト400中のクロムとの反応が少ないガラスセラミックシール424,434が得られると考えられる。具体的には、比較的低いバリウム含有量を有するSchott G018-281ガラス粉末をより高いバリウム含有量のSchott G018-354ガラス粉末又は’134特許の結晶化ガラスはんだ粉末と混合して混合粉末組成物を形成し、スタック300の構成要素を混合粉末組成物(例えば、インク)でコーティングし、次いで、スタック300内の混合粉末組成物を焼結すると、意外なことに、比較的高い柔軟性と、Cr-Fe合金インターコネクト400内のクロムとの比較的低い反応性とを有する実施形態のガラスセラミックシール424,434が得られると考えられる。対照的に、Schott G018-281ガラス粉末をSchott G018-354ガラス粉末と一緒に溶融し、次いで、固溶体に固化させ、粉末に粉砕し、これをインクに提供してフリットを形成し、これをスタックにコーティングし、次いで、スタック内で焼結する場合、得られたシールは、粉末を混合することによって形成された実施形態のガラスセラミックシール424,434よりも、低い柔軟性と、Cr-Fe合金インターコネクト400内のクロムとのより高い反応性とを有すると考えられる。
【0076】
柔軟性ガラスセラミックシール材を使用して、大型のスタック内にシール424,434を形成して、燃料電池(例えば、SOFC)310内に熱的に誘発される応力亀裂を防止又は低減することができる。シールの柔軟性を増加させることによって、経時的に生じる燃料電池内の応力亀裂などの、長期的な信頼性の問題が解決される。柔軟性シール材はまた、スタック300のより速い電流ランピング及び/又は熱サイクルを提供し、スタック300の配置を加速し、ダウンタイムを低減することができ、また、リアルタイムで電流を追跡する能力(すなわち、負荷追従)を提供することができる。
【0077】
固体酸化物形燃料電池のインターコネクト、エンドプレート及び電解質は、様々な実施形態において上述されているが、実施形態は、任意の別種の燃料電池のインターコネクト若しくはエンドプレート、例えば、溶融炭酸塩形、リン酸形若しくはPEM形燃料電池の電解質、インターコネクト若しくはエンドプレート又は燃料電池システムに関連しない他の任意の形状の金属物体、金属合金物体、圧縮金属粉末物体若しくはセラミック物体を含むことができる。
【0078】
前述の方法の説明は、単に例示的な例として提供されたにすぎず、様々な実施形態の工程が提示された順序で実行されなければならないことを要求又は暗示することを意図するものではない。当業者であれば理解できるように、前述の実施形態の工程の順序は、任意の順序で実行可能である。「その後」、「次に」、「次」などの単語は、必ずしも工程の順序を限定することを意図したものではなく、これらの単語は、方法の説明を通して読者をガイドするために使用され得る。さらに、例えば冠詞「a」、「an」又は「the」を使用した単数形での請求項の要素へのいかなる言及も、要素を単数形に限定すると解釈されるべきではない。さらに、本明細書に記載される任意の実施形態の任意の工程又は構成要素は、他の任意の実施形態で使用可能である。
【0079】
開示された態様の上記説明は、当業者が本発明を製造又は使用することを可能にするために提供される。これらの態様に対する様々な変形形態は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に定義される一般原則は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示される態様に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲に従うものとする。
【外国語明細書】