(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160009
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02M 51/06 20060101AFI20221012BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F02M51/06 A
F02M51/00 F
F02M51/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019155370
(22)【出願日】2019-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 真士
(72)【発明者】
【氏名】宮本 明靖
(72)【発明者】
【氏名】三宅 威生
(72)【発明者】
【氏名】杉井 泰介
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AB02
3G066BA12
3G066CB12
3G066CC06U
3G066CC14
3G066CC51
3G066CC56
3G066CC63
3G066CE22
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、安定的な高圧燃料噴射が可能な燃料噴射装置を提供することにある。
【解決手段】
燃料噴射装置は、弁体113と、弁体113を上流側に移動させるアンカー110と、弁体113及びアンカー110を周囲から囲む囲繞部材102と、アンカー110の下流側に配置されアンカー110を上流側に付勢するスプリング124と、スプリング124をガイドするガイド部102bxを形成するガイド部形成部102bと、アンカー110の下流側でかつ弁体113の外周面113bから径方向外側に向かってアンカー110の外周面110dに対応する位置まで形成される第1空間部V1と、第1空間部V1の下流側でかつガイド部形成部102bの外周面102b1から径方向外側に向かって形成される第2空間部V2と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を開閉する弁体と、
前記弁体を上流側に移動させるアンカーと、
前記弁体及び前記アンカーの径方向外側に配置され前記弁体及び前記アンカーを周囲から囲む囲繞部材と、
前記アンカーの下流側に配置され前記アンカーを上流側に付勢するスプリングと、
前記スプリングをガイドするガイド部を形成するガイド部形成部と、を備え、
前記アンカーの下流側で、かつ前記弁体の外周面から径方向外側に向かって前記アンカーの外周面に対応する位置まで形成される第1空間部と、
前記第1空間部の下流側で、かつ前記ガイド部形成部の外周面から径方向外側に向かって形成される第2空間部と、を有する燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記第2空間部は、前記ガイド部形成部の前記外周面から前記アンカーの前記外周面に対応する前記位置まで形成される燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料噴射装置において、
前記アンカーの前記外周面に対応する前記位置は、前記囲繞部材の前記アンカーの前記外周面に対向する内周面の位置である燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記弁体の前記外周面から前記第1空間部を形成する前記囲繞部材の前記内周面までの径方向長さが、前記ガイド部形成部の前記外周面から前記第2空間部を形成する前記囲繞部材の内周面までの径方向長さよりも大きくなるように構成された燃料噴射装置。
【請求項5】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記ガイド部形成部の最上流端部から前記アンカーの下端面までの軸方向長さに対して、前記第2空間部を形成する前記囲繞部材の底面から前記アンカーの前記下端面までの軸方向長さの方が大きくなるように構成された燃料噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料噴射装置において、
前記第2空間部を形成する前記囲繞部材の前記底面は、前記スプリングの下流側端部のばね座を構成する燃料噴射装置。
【請求項7】
請求項5に記載の燃料噴射装置において、
前記スプリングの下流側端部のばね座は、前記第2空間部を形成する前記囲繞部材の前記底面に対して上流側に配置されている燃料噴射装置。
【請求項8】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記ガイド部形成部の内周面の下流側には、前記ガイド部形成部の前記内周面と繋がるとともに、前記ガイド部形成部の前記内周面の内径よりも大きい径の内周面を有する内径拡大部が形成され、
前記弁体の前記外周面と前記ガイド部形成部の前記内周面との間の径方向長さに対して、前記弁体の前記外周面と前記内径拡大部の前記内周面との間の径方向長さの方が大きくなるように構成された燃料噴射装置。
【請求項9】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記ガイド部形成部は、前記第2空間部を形成する前記囲繞部材の底面から上流側に突出するように形成され、
前記弁体の前記外周面と前記ガイド部形成部の前記外周面との間の径方向長さの方が、前記弁体の前記外周面と前記ガイド部形成部の前記内周面との間の径方向長さよりも大きくなるように構成された燃料噴射装置。
【請求項10】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記アンカーの前記外周面の外径よりも前記第2空間部を形成する前記囲繞部材の前記内周面の内径の方が大きくなるように構成された燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いられる燃料噴射装置に関し、特に電磁的に駆動される可動子によって燃料通路を開閉して燃料噴射を行う燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2010-216344号公報(特許文献1)に記載された燃料噴射弁(燃料噴射装置)が知られている。特許文献1の燃料噴射装置は、可動子(アンカー)を常時閉弁方向に付勢する第1スプリングと、可動子が閉位置と所定中間位置との間にあるときのみ可動子を開弁方向に付勢する第2スプリングとを備えている。これにより、第1スプリングおよび第2スプリングの噴孔側に向かう付勢合力は、可動子が閉位置にあるときよりも全開位置にあるときの方が大きくなっている(要約参照)。
【0003】
さらに特許文献1の段落0119及び
図10には、ニードル(弁体)と可動コア(アンカー)とが相対移動可能な可動子を採用し、第2スプリングを閉弁力付勢弾性部材として設けた構成が記載されている。この構成では、ニードルと可動コアとが相対移動可能であるので、ニードルを閉弁方向に常時付勢する第1スプリングと可動コアを開弁方向に常時付勢する第3スプリングとで常時付勢手段を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気規制が厳しくなっている近年、燃料噴射装置には噴射量の安定化が求められている。
【0006】
噴射量の安定化の一例として、高圧燃料噴射及び多段噴射における噴射量の安定化が求められている。高圧燃料噴射は、高圧で弁体を開弁するための開弁力が必要である。一方、多段噴射は、弁体の中間リフトで燃料噴射装置のコイルへの通電をオフとした場合における燃料噴射の安定性が必要である。この場合の燃料噴射装置は、中間リフトでの高圧燃料噴射における噴射量の安定化が求められる。
【0007】
特許文献1の燃料噴射弁(燃料噴射装置)を含む従来の燃料噴射装置では、高圧燃料噴射の実現のために素早く弁体を開弁する場合、アンカー下流側の体積変化が大きくなることによってアンカー下流側の圧力が不安定となり、高圧での安定的な燃料の噴射が阻害される。特に、中間リフトにおいては、高圧での安定的な燃料の噴射が阻害される。
【0008】
本発明の目的は、安定的な高圧燃料噴射が可能な燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明における燃料噴射装置は、アンカーの下流側で、かつ弁体の外周面から径方向外側に向かってアンカーの外周面に対応する位置まで形成される第1空間部と、第1空間部の下流側で、かつガイド部形成部の外周面から径方向外側に向かって形成される第2空間部と、を有することにより、高圧での開弁動作中においてアンカー下流側の圧力を安定化する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アンカー下流側の圧力を安定化することで、安定的な高圧燃料噴射が可能な燃料噴射装置を提供することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係る燃料噴射装置の全体構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置の電磁コイルへの駆動電圧(電流)を印加していない状態(閉弁状態)を示す図である。
【
図3】
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置の電磁コイルに駆動電圧(電流)を印加して、アンカーが弁体に当接した状態(開弁直前状態)を示す図である。
【
図4】
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置の電磁コイルに駆動電圧(電流)を印加して、弁体が開弁途中にある状態(中間リフト状態)を示した図である。
【
図5】
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置の電磁コイルに駆動電圧(電流)を印加して、弁体が開弁を完了した状態(フルリフト状態)を示した図である。
【
図6】本発明の一実施例に係る弁部材の挙動(フルリフト、中間リフトの挙動)及びその課題を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の第一実施例に係る弁体及びアンカーの周囲の構成を概略的に示した図である。
【
図8】本発明の第二実施例に係る弁体及びアンカーの周囲の構成を概略的に示した図である。
【
図9】本発明の第三実施例に係る弁体及びアンカーの周囲の構成を概略的に示した図である。
【
図10】本発明の第四実施例に係る弁体及びアンカーの周囲の構成を概略的に示した図である。
【
図11】本発明の第五実施例に係る弁体及びアンカーの周囲の構成を概略的に示した図である。
【
図12】本発明の第六実施例に係る弁体及びアンカーの周囲の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、
図1~
図12を参照しつつ説明する。
【0014】
最初に、本発明の各実施例に共通な構成について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る燃料噴射装置100の全体構成を概略的に示す断面図である。
【0015】
燃料噴射装置100は、例えば筒内直接噴射式のガソリンエンジン向けの燃料噴射装置である。本実施例では弁体を電磁的に駆動する電磁駆動式の燃料噴射装置を例に挙げて説明するが、以下で説明する弁体、ロッドヘッド及び巻ばねを備え、弁体とロッドヘッドとが圧入により固定される構造を有する燃料噴射装置であれば、他の駆動方式の燃料噴射装置にも本発明は適用可能である。またポート噴射エンジン用の燃料噴射装置や、ディーゼルエンジン用の燃料噴射装置にも本発明は適用可能である。
【0016】
燃料噴射装置100の中心軸線100aに沿う方向において、燃料噴射孔112に近い側(
図1では下側)を下流側、燃料供給口111に近い側(
図1では上側)を上流側と定義して説明する。これは、燃料噴射装置100の内部に構成される燃料通路の構造に基づいており、燃料は燃料供給口111から燃料噴射孔112に向かって燃料噴射装置100の内部をほぼ中心軸線100aに沿って流れる。本実施例では、弁部材104、アンカー110、第一スプリング118、調整子119、第三スプリング124、磁気コア101、弁体113、中間部材125、第二スプリング126、及びロッドヘッド127の各中心軸線は、中心軸線100aに一致するように配置されている。従って、弁体113の移動方向である開閉弁方向は、中心軸線100aに沿う。
【0017】
なお、燃料噴射孔112に近い側(下流側)を先端側、燃料供給口111に近い側(
図1では上側)を基端側と呼ぶ場合もある。また以下の説明において、上下方向を指定して説明する場合があるが、この上下方向は
図1に上下方向に基づいており、燃料噴射装置100が実装された状態における上下方向を指定するものではない。
【0018】
燃料噴射装置100には、燃料噴射装置100を駆動するための駆動装置であるEDU(駆動回路)121及びEDU121の制御を行うECU(エンジンコントロールユニット)120が接続されている。
【0019】
ECU120では、燃料噴射装置100による燃料噴射の対象となるエンジン(内燃機関:図示せず)の状態を示す信号を各種センサーから取り込み、エンジンの運転条件に応じて適切な駆動パルスの幅や噴射タイミングの演算を行う。ECU120より出力された駆動パルスは、信号線123を通して燃料噴射装置100のEDU121に入力される。
【0020】
EDU121は、燃料噴射装置100の電磁コイル108に印加する電圧を制御して電磁コイル108に電流を供給する。また、ECU120は、通信ライン122を通してEDU121と通信を行っており、燃料噴射装置100に供給する燃料の圧力や運転条件によって駆動パルスを制御し、EDU121によって生成する駆動電圧(電流)を切替えることが可能である。なお、EDU121は、ECU120との通信によって制御定数を変化できるようになっており、制御定数に応じて電流波形が変化する。
【0021】
ECU120及びEDU121は一体の部品として構成されてもよい。すなわち、燃料噴射装置100を駆動するための駆動装置は、燃料噴射装置100の駆動電圧を発生する装置であれば良く、例えば、ECU120とEDU121とが一体となって駆動装置を構成しても良いし、本実施の形態で例示するようにEDU121単体で駆動装置を構成してもよい。
【0022】
燃料噴射装置100は、燃料が供給される燃料供給口111を有する磁気コア(固定コア)101と、磁気コア101の下流側に設けられたノズルホルダ102と、ノズルホルダ102の下流側端部(先端部)に位置して燃料噴射孔112を形成する噴孔部材103と、を有している。噴孔部材103はノズルホルダ102の内側に挿入され、先端面の外周部に沿ってノズルホルダ102の先端部に溶接固定される。
【0023】
噴孔部材103には、弁部材104を構成する弁体113が離接する弁座103aが形成される。噴孔部材103は、弁体113が着座することで燃料を封止する。弁体113は弁座103aに当接することで燃料をシールし、弁座103aから離れることで燃料の流通を許す。すなわち、弁体113及び弁座103aは協働して燃料通路を開閉する。
【0024】
また、噴孔部材103の内部には、弁部材104を構成する弁体113の下流側先端部117の外周面をガイドするガイド部材105が圧入または塑性結合により固定されている。尚、ガイド部材105は噴孔部材103と一体で形成されてもよい。
【0025】
磁気コア101の上流側内周部(径方向内側)には燃料フィルタ(図示せず)が設けられている。また磁気コア101の上流側外周部(径方向外側)114には、Oリングに代表されるシール部材106が、その下流側にはシール部材106を保護する保護部材107が組付けられている。シール部材106は燃料配管(図示せず)の内周面と磁気コア外周面114との間の隙間をシールし、燃料配管を流れる燃料の漏洩を防止する。
【0026】
ノズルホルダ102の上流側外周部(径方向外側)には電磁コイル108が設けられ、その外周側には電磁コイル108を内包する形でハウジング109が設けられている。ハウジング109、磁気コア101及びアンカー(可動コア)110により磁気回路が形成される。
【0027】
ノズルホルダ102の下流側外周部(径方向外側)には溝115が形成されており、樹脂材製のチップシールに代表されるシール部材116が溝115に嵌め込まれている。
【0028】
磁気コア101及びノズルホルダ102の内部には、弁部材104、アンカー110、第一スプリング118、調整子119、及び第三スプリング124が配置される。弁部材104は、軸方向(中心軸線100aに沿う方向)に移動することによって燃料噴射装置100による燃料の噴射量を調整する。アンカー110は、磁気コア101の吸引力を受けて弁部材104を開弁方向に引き上げる。すなわちアンカー110は、なおアンカー110は、弁体113に対して軸方向(開閉弁方向)に相対変位可能に構成されている。第一スプリング118は、弁部材104及びアンカー110を下流方向(閉弁方向)に付勢する。調整子119は、第一スプリング118を支持し、第一スプリング118の圧縮量(すなわち付勢力)を調整する。第三スプリング124は、ノズルホルダ102に保持されアンカー110及び弁部材104を上流方向(開弁方向)に付勢する。
【0029】
弁部材104は、弁体113、中間部材125、第二スプリング126、及びロッドヘッド127により構成されている。弁体113は、閉弁状態で噴孔部材103と当接して燃料の流れを遮断する。中間部材125は、弁体113の上流側に位置してアンカー110と弁体113との間に間隙G2(
図2参照)を形成する。第二スプリング126は、中間部材125を介してアンカー110を下流側に付勢する。ロッドヘッド127は、第一スプリング118及び第二スプリング126の着座面を形成する。さらにロッドヘッド127は、磁気コア101の径方向中央部に軸方向に貫通する貫通孔101aと対向して摺動する摺動面127d(
図2参照)を形成する。摺動面127dはロッドヘッド127の最外周面で構成される。すなわちロッドヘッド127は、弁部材104の上流側端部に設けられる。
【0030】
本実施例では、ロッドヘッド127に支持される巻ばねを有する。この巻ばねは、一端部がロッドヘッド127に支持されて弁体113を閉弁方向(下流側)に付勢する第一スプリング118と、一端部がロッドヘッド127に支持されて中間部材125を閉弁方向(下流側)に付勢する第二スプリング126と、を備えて構成される。
【0031】
ここで、弁部材104及びアンカー110の構成について、
図2を用いて詳細に説明する。
図2は、
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置100の電磁コイル108への駆動電圧(電流)を印加していない状態(閉弁状態)を示す図である。尚、
図2は電磁駆動部への通電がオフされ、弁部材104が弁座103aに着座した状態で、なお且つアンカー110が静止した状態を示している。
【0032】
アンカー110は、貫通孔110cを有し、弁部材104の弁体113が貫通孔110cの内径に挿通するように構成される。これにより、アンカー110と弁部材104とは軸方向に相対変位可能に構成されている。
【0033】
弁体113は、上流側端部に、アンカー110の内径(貫通孔)110cを貫通する部分113aの直径よりも大きい外径を有する段付き部128を有する。段付き部128は弁体部分113aの外周面から鍔状に張り出す構成とする。アンカー110は、上流側端面110aが段付き部128の下端面(下流側端面)128bと対向し、相対変位時に上流側端面110aが段付き部128の下端面128bに当接することで、弁体113に対する上流側(開弁方向)への相対変位が規制される。
【0034】
段付き部128の上端面(上流側端面)128aから上部は段付き部128よりも小径の突起部129が設けられており、突起部129の上端面(上流側端面)129aには下流方向(段付き部128側)に窪んだ穴部130が形成されている。弁体113の段付き部128の上流側には、中間部材125が設けられている。中間部材125の下端面(下流側端面)125bには上流側(上面125a側)に向けて凹部125cが形成されており、凹部125cは段付き部128が収まる直径(内径)と深さを有している。すなわち、凹部125cの直径(内径)は段付き部128の直径(外径)よりも大きく、凹部125cの深さ寸法は段付き部128の上端面128aと下端面128bとの間の寸法(高さ寸法又は厚み寸法)よりも大きい。凹部125cの底面125eから中間部材125の上端面(上流側端面)125aにかけては軸方向の貫通孔125dが形成されている。貫通孔125dには、突起部129が挿通される。
【0035】
中間部材125の上流側には第二スプリング126が支持されており、中間部材125の上端面125aは第二スプリング126の下流側端部が当接するばね座を構成する。
【0036】
弁部材104の上流側端部にはロッドヘッド127が設けられている。ロッドヘッド127の上端部には径方向に張り出した鍔部127cの下端面127bに第二スプリング126の上流側端部が当接するばね座が構成されている。そして、ロッドヘッド127には第一スプリング118の内径よりも小さい径となるように構成された上流側突起部131が設けられている。上流側突起部131は鍔部127cの上端面127aから上流側に突出している。
【0037】
ロッドヘッド127は上方(上流側)から第一スプリング118の付勢力(第一スプリング力)を受け、下方(下流側)から第二スプリング126の付勢力(第二スプリング力)を受ける。後述するように第一スプリング力は第二スプリング力よりも大きく、結果的に、ロッドヘッド127には第一スプリング力と第二スプリング力との差分の付勢力が弁体113の突起部129の上端面に向かって作用する。
【0038】
中間部材125についてさらに説明する。
図2に示す状態は、弁部材104が第一スプリング118による付勢力を受け、なお且つアンカー110に電磁力は作用していない状態である。このため、弁体113の下流側先端部117が噴孔部材103の弁座103aに当接して燃料噴射装置100は閉弁しており、且つ弁部材104及びアンカー110は静止して安定した状態にある。
【0039】
この状態では、中間部材125は第二スプリング126の付勢力を受けて、凹部125cの底面125eが弁体113の段付き部128の上端面128aに当接している。すなわち、凹部125cの底面125eと段付き部128の上端面128aとの間隙G3の大きさ(寸法)がゼロである。中間部材125の底面125eと段付き部128の上端面128aとは中間部材125と段付き部128とが当接する当接面を構成する。
【0040】
一方、アンカー110は第三スプリング124の付勢力(第三スプリング力)を受けて磁気コア101側に向けて付勢される。このため、アンカー110の上面(上流側端面)110aが中間部材125の下端面(凹部125aの開口縁部)125bに当接する。第三スプリング力は第二スプリング力よりも弱い(小さい)ため、アンカー110は第二スプリング126により付勢された中間部材125を押し返すことはできず、中間部材125と第二スプリング126とにより上方(開弁方向)への動きを止められる。アンカー110の上面110aと中間部材の下端面125bとはそれぞれアンカー110と中間部材125とが当接する当接面を構成する。
【0041】
中間部材125は、弁体113の段付き部上端面(基準位置)128aに位置づけられた状態で下端面125bがアンカー110と当接することにより、弁体113の係合部(段付き部下端面)128bとアンカー110の当接部(上面)110aとの間に間隙G2(G2>0)が形成される。第二スプリング126は中間部材125を段付き部上端面(基準位置)128aに位置づけるように閉弁方向に付勢している。
【0042】
ここで、以上説明した3つのスプリング118,126,124の付勢力について改めて説明しておく。第一スプリング118と第三スプリング124と第二スプリング126とのうち、第一スプリング118の付勢力が最も大きく、次に第二スプリング126の付勢力が大きく、第三スプリング124の付勢力が最も小さい。
【0043】
本実施例では、アンカー110の上端面110aと磁気コア101の下端面101bとが当接するものとして説明しているが、アンカー110の上端面110a又は磁気コア101の下端面101bのいずれか一方、或いはアンカー110の上端面110a及び磁気コア101の下端面101bの両方に突起部が設けられ、突起部と端面とが、或いは突起部同士が当接するように構成される場合もある。この場合、隙間G1+G2は、アンカー110側の当接部と磁気コア101側の当接部との間の間隙になる。
【0044】
次に、
図2~5を用いて、弁部材104及びアンカー110の動作について説明する。
【0045】
電磁コイル108に通電中は、上記磁気回路を通る磁束によって磁気吸引ギャップG1+G2においてアンカー110と磁気コア101との間に磁気吸引力が発生し、磁気吸引力が第二スプリング126の付勢力を超えた時点でアンカー110が磁気コア101側へ動き始める。
【0046】
最初に、
図2の状態について説明する。
図2の状態は、電磁コイル108に駆動電圧(電流)が印加されていない状態(閉弁状態)である。
【0047】
この状態では、アンカー110側の衝突面(上端面110a)と磁気コア101側の衝突面(下端面101b)との間に間隙G1+G2が存在し、弁体113の段付き部下端面128bとアンカー110の上面110aとの間に間隙G2が存在する。中間部材125の凹部底面125eと段付き部上端面128aとは接触しており(G3=0)、また中間部材下端面125cとアンカー上面110aとは接触している。弁部材104は第一スプリング118による付勢力で閉弁方向に付勢され、弁体113の下流側先端部117は弁座103aに当接している。
【0048】
次に
図3の状態について、
図6を参照しながら説明する。
図3は、
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置100の電磁コイル108に駆動電圧(電流)を印加して、アンカー110が弁体113に当接した状態(開弁直前状態)を示す図である。
図6は、本発明の一実施例に係る弁部材104の挙動及びその課題を模式的に示す図である。なお
図6では、駆動パルス(上段)、駆動電流(中段)及び弁体113のリフト(下段)を示しており、弁体113の挙動の概要が理解できるよう模式的に描いたものである。
【0049】
図3の状態は、
図6の時刻IIにおける状態に相当する。電磁コイル108に通電が開始され、アンカー110と磁気コア101との間に磁気吸引力が作用し、この磁気吸引力が第二スプリング126の付勢力よりも大きくなるとアンカー110が上方(開弁方向)へ動き始める。区間I~IIでは、アンカー110は単独で上方に移動し、この間、弁体113は下流側先端部117が噴孔部材103の弁座103aに当接している。
図3は、アンカー110が上方へ移動し、アンカー110の上端面110aが弁体113の段付き部下端面128bに係合した状態を示している。すなわち、間隙G2=0である。
【0050】
アンカー110が上方へ変位した分だけ、アンカー110と磁気コア101との間隙の大きさが減少し、G1(G1>0)となる。また、弁体113の段付き部上端面128aと中間部材125の凹部底面125eとの間隙(寸法)はG3(G3>0)である。G3は中間部材125の凹部125aの深さ寸法から段付き部128の上端面128aと下端面128bとの間隔寸法を差し引いた寸法を有する。すなわち、G3は中間部材125の下端面125bがアンカー110の上端面110aに接触している状態で、アンカー110と弁体113とが相対変位可能な寸法に相当する。
【0051】
区間I~IIにおいて、アンカー110は加速し、ある程度の速度に加速した状態で弁体113の段付き部下端面128bに当接する。このためアンカー110は、段付き部下端面128bに当接した時点から弁部材104を速やかに持ち上げることができ、弁体113の下流側先端部117は弁座103aから離れる動作(開弁動作)を速やかに開始することができる。
【0052】
図4は、
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置100の電磁コイル108に駆動電圧(電流)を印加して、弁体113が開弁途中にある状態(中間リフト状態)を示した図である。
【0053】
図4に示す状態は、
図6の時刻IIIにおける状態に相当する。区間IIIの動作中、アンカー110、弁体113及び中間部材125は
図4に示す状態を維持して、一体となって上方に移動する。中間リフトと、
図6の区間II~VIでフルリフトを行う場合の弁体113にオーバーシュートが発生するまでの期間とでは、弁部材104とアンカー110とが一体となって変位している。そして、弁体113の下流側先端部117は噴孔部材103から離間する。
【0054】
図4では、アンカー110が磁気コア101に向かって変位をしている瞬間を示している。この場合、アンカー上端面110aと磁気コア下端面101bとの間隙G1’(G1’>0)はG1よりも
図3の状態から変位した分だけ小さくなる。また、中間部材125の下端面125bはアンカー上端面110aに当接しており、また、弁体113の段付き部下端面128bとアンカー上端面110aとが当接しているため(G2=0)、弁体113の段付き部上端面128aと中間部材125の凹部底面125eとの間隙はG3(G3>0)である。
【0055】
図4に示した状態(中間リフト状態)において駆動パルスをOFFにすると、電磁コイル108への通電が遮断され、アンカー110と磁気コア101との間に働く磁気吸引力が消失する。このとき、アンカー110は、磁気コア101に向かって変位していることによる運動エネルギーと磁気吸引力とが第一スプリング118の付勢力よりも小さくなると、弁部材104と共に閉弁方向への移動を開始する。電磁コイル108への通電遮断から磁気吸引力が第一スプリング118の付勢力よりも小さくなるまでには時間がかかるため、閉弁開始時刻は電磁コイル108への通電遮断のタイミングIIIよりも遅れる。閉弁方向へ移動を開始した弁部材104はアンカー110と一体になって変位し、弁体113が弁座103aに着座して閉弁状態に至る。
【0056】
図5は、
図1の部分拡大図で、燃料噴射装置100の電磁コイル108に駆動電圧(電流)を印加して、弁体113が開弁を完了した状態(フルリフト状態)を示した図である。
【0057】
図5に示す状態は、
図6の区間II~VIにおいて、弁部材104の変位がピークとなる状態を示している。このときのアンカー110、弁体113及び中間部材125の位置関係は、アンカー110の磁気コア101からのバウンス状態や、弁体113の慣性力による単独での上方への移動量(オーバーシュート量)等によって異なる時間を経て、
図5に示す状態となる。
図5では、アンカー上端面110aと磁気コア下端面101bとの間隙G1の大きさはゼロである(G1=0)。また、弁体113の段付き部下端面128bとアンカー上端面110aとの間隙G2はゼロであり(G2=0)、弁体113の段付き部上端面128aと中間部材125の凹部底面125eとの間隙はG3(G3>0)である。
【0058】
図5に示すように、アンカー110の上端面110aが磁気コア101の下端面101bに衝突すると、アンカー110は上方への移動を妨げられる。このとき、弁体113はアンカー110に対して相対的に変位(オーバーシュート)し始める。すなわち、磁気コア101の下端面101bに衝突して上方への移動を停止したアンカー110に対して、弁体113は慣性力で上方への移動を継続することにより、弁体113はアンカー110に対して相対的に変位する。このとき、弁体113の段付き部下端面128bとアンカー110の上端面110aとの当接は解除されるため、一時的にG2は弁体113のアンカー110に対する相対変位分だけ増加する。
【0059】
弁体113が慣性力により単独でさらに上方へ移動する場合には、G3がゼロとなり、中間部材125が弁体113と一体で上方へ移動することにより、中間部材125の下端面125bがアンカー110の上端面110aから離れてしまう場合もある。弁体113が慣性力により単独で上方へ移動する場合には、所定のストローク量を超えて移動することになり、弁体113の下流側先端部117と噴孔部材103との隙間は一時的に開弁静止状態で維持される所定の大きさを超えることになる。
【0060】
やがて上方へ移動した弁体113は第一スプリング118により押し戻され、段付き部下端面128bがアンカー110の上端面110aに当接した状態(
図5の状態)で静止する。これにより、弁体113が所定のストローク量(G1)だけ持ち上げられた開弁静止状態となる。この状態では、アンカー110が磁気吸引力により磁気コア101に吸引され、弁部材104が第一スプリング118の付勢力により閉弁方向に付勢されるため、アンカー110と弁体113とは当接し一体となっている。すなわち、弁体113の段付き部下端面128bとアンカー上端面110aとが当接して、間隙G2の大きさはゼロとなる。また、第二スプリング126は磁気吸引力に対抗してアンカー110を押し戻すことはできないため、中間部材125の下端面125bはアンカー上端面110aに当接している。このため、弁体113の段付き部上端面128aと中間部材125の凹部底面125eとの間隙はG3である。また、アンカー110と磁気コア101とは当接しており、アンカー110の上端面110aと磁気コア101の下端面101bとの間隙大きさはゼロとなっている(G1=0)。
【0061】
図5に示した状態(フルリフト状態)において駆動パルスをOFFにすると、電磁コイル108への通電が遮断され、アンカー110と磁気コア101との間に働く磁気吸引力が消失する。そして磁気吸引力が第一スプリング118の付勢力よりも小さくなると、弁部材104は閉弁方向への移動を開始する(
図6の時刻V)。電磁コイル108への通電遮断から磁気吸引力が第一スプリング118の付勢力よりも小さくなるまでには時間がかかるため、閉弁開始時刻は電磁コイル108への通電遮断のタイミングVよりも遅れる。閉弁方向へ移動を開始した弁部材104はアンカー110と一体になって変位し、G1だけ変位したのちに弁体113が弁座103aに着座して閉弁状態に至る。
【0062】
次に、中間リフト状態において、弁体113の挙動が不安定になる現象について、説明する。
【0063】
図4に示した状態(中間リフト状態)において駆動パルスをOFFにした場合の安定した弁体113の挙動(パーシャルリフト(安定))と不安定な弁体113の挙動(パーシャルリフト(不安定))を
図6の下段に示す。
【0064】
不安定な弁体113の挙動は、開弁によりアンカー下流側の単位時間当たりの体積変化が圧力変化を不安定にし、動作中の弁体113の変位が非放物運動となる。
【0065】
一方、安定した弁体113の挙動は、不安定な弁体113の挙動に対しアンカー下流側の単位時間当たりの体積変化が圧力変化を不安定にすることなく、動作中の弁体113の変位(運動)が放物運動となる。
【0066】
[実施例1]
上述した不安定な弁体113の挙動を抑制する構成の第一実施例について説明する。
図7は、本発明の第一実施例に係る弁体113及びアンカー110の周囲の構成を概略的に示した図である。
図7では、
図2と同じ図面に対し、第一実施例に係る構成に符号を付している。
【0067】
本実施例の燃料噴射装置100は、流路を開閉する弁体113と、弁体113と係合して上流側に移動させるアンカー110と、弁体113及びアンカー110の径方向外側に配置され弁体113及びアンカー110を周囲から囲む囲繞部材(ノズルホルダ)102と、アンカー110の下流側に配置されアンカー110を上流側に付勢するスプリング(第三スプリング)124と、スプリング124をガイドするガイド部(ガイド面)102bxを形成するガイド部形成部102bと、を備える。
【0068】
ガイド部形成部102bは、外周面102b1、内周面102b2及び最上流端部(最上流端面)102b3を有し、本実施例においてガイド部102bxは外周面102b1に構成されている。
【0069】
本実施例の燃料噴射装置100は、さらに、第1空間部V1及び第2空間部V2を有する。第1空間部V1は、アンカー110の下流側で、かつ弁体113の外周面113bから径方向外側に向かってアンカー110の外周面110dに対応する位置まで形成される。第2空間部V2は、第1空間部V1の下流側で、かつガイド部形成部102bの外周面102b1から径方向外側に向かって形成される。
【0070】
これにより、アンカー110の下流側に第1空間部V1及び第2空間部V2からなる大きな空間を形成することができ、中間リフトにおける弁体113の変位(運動)が放物線を描くようになる。その結果、燃料噴射装置100の高圧での開弁動作中においてアンカー下流側の圧力を安定化することができ、中間リフトにおける安定的な高圧燃料噴射が可能になる。
【0071】
本実施例においては、第2空間部V2は、ガイド部形成部102bの外周面102b1からアンカー110の外周面110dに対応する位置まで形成される。これにより、第2空間部V2の径方向の大きさを大きくすることができる。
【0072】
また本実施例においては、アンカー110の外周面110dに対応する位置は、囲繞部材(ノズルホルダ)102のアンカー110の外周面110dに対向する内周面102aの位置である。本実施例では、囲繞部材(ノズルホルダ)102の内周面102aは、アンカー110の外周面110dに対向する内周面部分と、アンカー110の下流側で弁体113の外周面113b或いはスプリング(第三スプリング)124の外周と対向する内周面部分とが、同一径(同一内径)の内周面102aとして形成されており、内周面102aとアンカー110の外周面110dとの径方向における隙間は非常に小さい。従って、アンカー110の外周面110dに対応する位置は実質的にこの内周面102aの位置と考えることができる。
【0073】
また本実施例においては、ガイド部形成部102bは、外周面102b1が囲繞部材(ノズルホルダ)102の内周面102aに対して径方向内側に内周面102aと対向するように設けられる。このため、弁体113の外周面113bから第1空間部V1を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の内周面102aまでの径方向長さL1が、ガイド部形成部102bの外周面102b1から第2空間部V2を形成する囲繞部材102の内周面102aまでの径方向長さL2よりも大きくなるように構成される。
【0074】
また本実施例においては、ガイド部形成部102bは、第2空間部V2を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の底面102cから上流側に突出するように形成される。このため、ガイド部形成部102bの最上流端部102b3からアンカー110の下端面110bまでの軸方向長さ(中心軸線100a方向に同じ)L4に対して、第2空間部V2を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の底面102cからアンカー110の下端面110bまでの軸方向長さL3の方が大きくなる。
【0075】
また本実施例においては、第2空間部V2を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の底面102cは、スプリング124の下流側端部のばね座を構成する。スプリング124のばね座を底面102cに構成することで、ばね座の径方向外側に大きな空間を形成することができ、第2空間部V2の容積(燃料が入る容積)を大きくすることができる。
【0076】
また本実施例においては、ガイド部形成部102bの内周面102b2の下流側には、ガイド部形成部102bの内周面102b2と繋がるとともに、ガイド部形成部102bの内周面102b2の内径D1よりも大きい径D2の内周面を有する内径拡大部102eが形成されている。これにより、弁体113の外周面113bとガイド部形成部102bの内周面102b2との間の径方向長さL5に対して、弁体113の外周面113bと内径拡大部の内周面102eとの間の径方向長さL6の方が大きくなるように構成される。
【0077】
また本実施例においては、上述した様に、ガイド部形成部102bは、第2空間部V2を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の底面102cから上流側に突出するように形成される。これにより、弁体113の外周面113bとガイド部形成部102bの外周面102b1との間の径方向長さL7の方が、弁体113の外周面113bとガイド部形成部102bの内周面102b2との間の径方向長さL5よりも大きくなるように構成され、アンカー110の外周面110dの外径よりも第2空間部V2を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の内周面102aの内径の方が大きくなるように構成される。
【0078】
上述した実施例1の構成及び作用効果は以下で説明する実施例2~6においても同様である。以下の実施例2~6の説明では、同様な構成については実施例1と同じ符号を付して説明を省略し、実施例1と異なる構成について説明する。
【0079】
[実施例2]
図8は、本発明の第二実施例に係る弁体113及びアンカー110の周囲の構成を概略的に示した図である。
図8は、
図2と対応する、閉弁状態における弁体113及びアンカー110の周囲の構成を示している。
【0080】
本実施例では、実施例1と同様に、ガイド部形成部102bは、第2空間部V2を形成するノズルホルダ(囲繞部材)102の底面102cから上流側に突出するように形成されているが、ガイド部102bxはガイド部形成部102bの内周面102b2に構成されている。
【0081】
また、スプリング(第三スプリング)124のばね座はガイド部形成部102bの内周面102b2に対して径方向内側に形成された底面部102fに構成されており、底面部102fは底面102cに対して上流側に配置されている。その結果、スプリング124の下流側端部のばね座は、第2空間部V2を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の底面102cに対して上流側に配置されている。これにより、第2空間部V2の軸方向長さを長くすることができ、第2空間部V2の容積を大きくすることができる。
【0082】
[実施例3]
図9は、本発明の第三実施例に係る弁体113及びアンカー110の周囲の構成を概略的に示した図である。
図9は、
図2と対応する、閉弁状態における弁体113及びアンカー110の周囲の構成を示している。
【0083】
本実施例では、ノズルホルダ(囲繞部材)102の底面102cに凹部102gを設け、第2空間部V2の容積を大きくしている。この凹部102gは周方向の一部に設けられており、例えば軸方向(中心軸線100a方向)から見た断面形状が円形の凹部(円孔)であってもよい。
【0084】
[実施例4]
図10は、本発明の第四実施例に係る弁体113及びアンカー110の周囲の構成を概略的に示した図である。
図10は、
図2と対応する、閉弁状態における弁体113及びアンカー110の周囲の構成を示している。
【0085】
本実施例では、ノズルホルダ(囲繞部材)102の底面102cの外周部に環状の凹部(環状溝)102hを設け、第2空間部V2の容積を大きくしている。
【0086】
[実施例5]
図11は、本発明の第五実施例に係る弁体113及びアンカー110の周囲の構成を概略的に示した図である。
図11は、
図2と対応する、閉弁状態における弁体113及びアンカー110の周囲の構成を示している。
【0087】
本実施例では、ノズルホルダ(囲繞部材)102の底面102cの外周部に環状の凹部(環状溝)102iを設け、第2空間部V2の容積を大きくしている。この場合、凹部102iは上流側から見た形状が逆テーパー状の円錐台面で構成されており、凹部102iの最外周部が最も深くなる。最深部が最外周部に形成されることで、最深部の周方向長さが長くなり、第2空間部V2の容積を大きくするのに効果的である。
【0088】
[実施例6]
図12は、本発明の第六実施例に係る弁体113及びアンカー110の周囲の構成を概略的に示した図である。
図12は、
図2と対応する、閉弁状態における弁体113及びアンカー110の周囲の構成を示している。
【0089】
本実施例では、ノズルホルダ(囲繞部材)102の底面102cの外周部に環状の凹部(環状溝)102jを設け、第2空間部V2の容積を大きくしている。この場合、凹部102jは上流側から見た形状がテーパー状の円錐台面で構成されており、凹部102jの最内周部が最も深くなる。凹部102jがテーパー状の円錐台面で構成され、最深部が最内周部に形成されることで、凹部102jの形状をホルダ102の大径部102kと小径部102lとを接続するテーパー部102mの形状に合わせることができる。これにより、凹部102jの深さを深くすることができ、第2空間部V2の容積を大きくするのに効果的である。
【0090】
上述した各実施例は、燃料噴射装置100の高圧での開弁動作中においてアンカー下流側の圧力を安定化することで、安定的に中間リフトにおける高圧燃料噴射が可能な燃料噴射装置100を提供する。
【0091】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
100…燃料噴射装置、102…囲繞部材(ノズルホルダ)、102a…囲繞部材(ノズルホルダ)102の内周面、102b…ガイド部形成部、102b1…ガイド部形成部102bの外周面、102b2…ガイド部形成部102bの内周面、102b3…ガイド部形成部102bの最上流端部、102bx…スプリング124をガイドするガイド部、102c…囲繞部材(ノズルホルダ)102の底面、110…アンカー、110d…アンカー110の外周面、113…弁体、113b…弁体113の外周面、124…スプリング(第三スプリング)、D1…ガイド部形成部102bの内周面102b2の内径、D2…内径拡大部102eの内径、L1…弁体113の外周面113bから第1空間部V1を形成する囲繞部材(ノズルホルダ)102の内周面102aまでの径方向長さ、L2…ガイド部形成部102bの外周面102b1から第2空間部V2を形成する囲繞部材102の内周面102aまでの径方向長さ、L3…第2空間部V2を形成する囲繞部材102の底面102cからアンカー110の下端面110bまでの軸方向長さ、L4…ガイド部形成部102bの最上流端部102b3からアンカー110の下端面110bまでの軸方向長さ、L5…弁体113の外周面113bとガイド部形成部102bの内周面102b2との間の径方向長さ、L6…弁体113の外周面113bと内径拡大部の内周面102eとの間の径方向長さ、L7…弁体113の外周面113bとガイド部形成部102bの外周面102b1との間の径方向長さ、V1…第1空間部、V2…第2空間部。