(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160013
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】汚染防止装置および汚染防止システム
(51)【国際特許分類】
B67D 1/07 20060101AFI20221012BHJP
A61L 2/08 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B67D1/07
A61L2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019159275
(22)【出願日】2019-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】519318018
【氏名又は名称】ソニクリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】藤原 智
【テーマコード(参考)】
3E082
4C058
【Fターム(参考)】
3E082AA04
3E082BB03
3E082CC01
3E082EE02
3E082FF01
4C058AA21
4C058BB06
4C058CC02
4C058EE26
4C058KK01
4C058KK22
4C058KK46
(57)【要約】
【課題】液体搬送管の内部の汚染を防止する汚染防止装置の配置自由度を高める技術を提供する。
【解決手段】この汚染防止装置1は、液体搬送管に取り付けて、前記液体搬送管の内部における汚染物質の堆積を抑制する。汚染防止装置1は、液体搬送管を取り付ける凹部211,212を有するケーシング20と、凹部211,212に対して磁波を照射する照射部と、照射部を制御する制御部と、制御部と外部とを無線通信により通信させる無線通信部を有する。照射部、制御部および無線通信部は、ケーシング20の内部に収容される。コントローラの役割を担う制御部と、磁波の照射を行う照射部とが一体に構成されているため、汚染防止装置1が小型化される。さらに、汚染防止装置が、無線通信によって外部と通信できることにより、汚染防止装置と外部との優先接続が電源のみとなる。したがって、汚染防止装置1の配置自由度が高くなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体搬送管に取り付けて、前記液体搬送管の内部における汚染物質の堆積を抑制する汚染防止装置であって、
前記液体搬送管を取り付ける凹部を有するケーシングと、
前記凹部に対して磁波を照射する照射部と、
前記照射部を制御する制御部と、
前記制御部と外部とを無線通信により通信させる無線通信部
を有し、
前記照射部、前記制御部および前記無線通信部は、前記ケーシングの内部に収容される、汚染防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の汚染防止装置であって、
USB給電ポート
をさらに有する、汚染防止装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の汚染防止装置であって、
前記凹部内に配置された光学センサ
をさらに有し、
前記光学センサは、前記凹部内に取り付けられた前記液体搬送管の内部の光学特性の変化を検知し、
前記制御部は、前記光学センサの検知した前記光学特性の変化から洗浄タイミングを判定し、かつ、記憶する、汚染防止装置。
【請求項4】
請求項3に記載の汚染防止装置であって、
音声出力および視覚的な表示の少なくとも一方を行う報知部
をさらに有し、
前記制御部は、判定した前記洗浄タイミングに基づいて、前記報知部による報知を行う、汚染防止装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の汚染防止装置であって、
前記制御部は、前記無線通信部を介して外部のアプリケーションに対して、前記照射部による照射処理の履歴と、前記洗浄タイミングとを送信する、汚染防止装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の汚染防止装置であって、
前記無線通信部は、ブルートゥース(登録商標)通信またはWiFi通信を行う、汚染防止装置。
【請求項7】
液体搬送管の内部における汚染物質の堆積を抑制するための汚染防止システムであって、
前記液体搬送管に取り付ける、1つまたは複数の汚染防止装置と、
前記汚染防止装置と無線通信を行う外部アプリケーションを備えた携帯端末と、
を含む汚染防止システムであって、
前記汚染防止装置は、
前記液体搬送管を取り付ける凹部を有するケーシングと、
前記凹部に対して電磁波を照射する照射部と、
前記照射部を制御する制御部と、
前記制御部と外部とを無線通信により通信させる無線通信部
を有し、
前記照射部、前記制御部および前記無線通信部は、前記ケーシングの内部に収容され、
前記制御部は、前記無線通信部を介して前記外部アプリケーションに対して、前記照射部による照射処理の履歴を送信する、汚染防止システム。
【請求項8】
請求項7に記載の汚染防止システムであって、
前記汚染防止装置は、
前記凹部内に配置された光学センサ
をさらに有し、
前記光学センサは、前記凹部内に取り付けられた前記液体搬送管の内部の光学特性の変化を検知し、
前記制御部は、前記光学センサの検知した前記光学特性の変化から洗浄タイミングを判定し、かつ、記憶するとともに、前記無線通信部を介して外部のアプリケーションに対して、前記照射部による照射処理の履歴と、前記洗浄タイミングとを送信する、汚染防止システム。
【請求項9】
請求項8に記載の汚染防止システムであって、
複数の前記汚染防止装置と、
少なくとも1つの前記汚染防止装置とそれぞれ無線通信を行う、複数の前記携帯端末と、
前記携帯端末のそれぞれとネットワークを介して接続される管理コンピュータと、
を有し、
前記管理コンピュータは、前記携帯端末ごとの前記履歴および前記洗浄タイミングを取得する、汚染防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体搬送管の内部における汚染物質の堆積を抑制する汚染防止装置、および、当該汚染防止装置を有する汚染防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビールサーバ等の、液体供給装置において、飲料等の液体が貯留された樽等の液体貯留部から、液体供給装置へは、パイプまたはダクト等の液体搬送管を介して液体が供給される。このような液体の搬送管の内部には、細菌等の微生物が繁殖し、バイオフィルムを形成することがある。特に、液体がビールや生タイプのアルコール性飲料である場合、酵母菌等の微生物が繁殖しやすい。
【0003】
液体搬送管の内部に形成されたバイオフィルムを除去するため、一般的に、定期的にスポンジや洗浄液を液体搬送管内に通す洗浄処理を行う。このような洗浄処理を行うためには、液体搬送管内に充填されたビール等の液体を廃棄する必要が生じる。
【0004】
そこで、近年、液体の充填された液体搬送管に対して電磁波を照射することによってバイオフィルムの形成を抑制する手段が使用されている。液体搬送管に電磁波を照射する従来の装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、液体搬送管に取り付けるトランスポンダと、トランスポンダを制御するための制御ユニットとがそれぞれ別個の筐体に収容されており、ケーブルで接続される。さらに、制御ユニットが別個の電源装置に接続される(段落0014-0017、
図1)。
【0007】
このような汚染防止装置では、トランスポンダと制御ユニットとを接続するケーブルが短い場合、トランスポンダを液体搬送管に固定する場所によって、制御ユニットの配置場所が問題となる。一方で、ケーブルが長い場合、制御ユニットの配置自由度が高くなるものの、ケーブルが邪魔となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、液体搬送管の内部の汚染を防止する汚染防止装置の配置自由度を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、液体搬送管に取り付けて、前記液体搬送管の内部における汚染物質の堆積を抑制する汚染防止装置であって、前記液体搬送管を取り付ける凹部を有するケーシングと、前記凹部に対して磁波を照射する照射部と、前記照射部を制御する制御部と、前記制御部と外部とを無線通信により通信させる無線通信部を有し、前記照射部、前記制御部および前記無線通信部は、前記ケーシングの内部に収容される。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の汚染防止装置であって、USB給電ポートをさらに有する。
【0011】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の汚染防止装置であって、前記凹部内に配置された光学センサをさらに有し、前記光学センサは、前記凹部内に取り付けられた前記液体搬送管の内部の光学特性の変化を検知し、前記制御部は、前記光学センサの検知した前記光学特性の変化から洗浄タイミングを判定し、かつ、記憶する。
【0012】
本願の第4発明は、第3発明の汚染防止装置であって、音声出力および視覚的な表示の少なくとも一方を行う報知部をさらに有し、前記制御部は、判定した前記洗浄タイミングに基づいて、前記報知部による報知を行う。
【0013】
本願の第5発明は、第3発明または第4発明の汚染防止装置であって、前記制御部は、前記無線通信部を介して外部のアプリケーションに対して、前記照射部による照射処理の履歴と、前記洗浄タイミングとを送信する。
【0014】
本願の第6発明は、第1発明ないし第5発明のいずれかの汚染防止装置であって、前記無線通信部は、ブルートゥース(登録商標)通信またはWiFi通信を行う。
【0015】
本願の第7発明は、液体搬送管の内部における汚染物質の堆積を抑制するための汚染防止システムであって、前記液体搬送管に取り付ける、1つまたは複数の汚染防止装置と、前記汚染防止装置と無線通信を行う外部アプリケーションを備えた携帯端末と、を含む汚染防止システムであって、前記汚染防止装置は、前記液体搬送管を取り付ける凹部を有するケーシングと、前記凹部に対して電磁波を照射する照射部と、前記照射部を制御する制御部と、前記制御部と外部とを無線通信により通信させる無線通信部を有し、前記照射部、前記制御部および前記無線通信部は、前記ケーシングの内部に収容され、前記制御部は、前記無線通信部を介して前記外部アプリケーションに対して、前記照射部による照射処理の履歴を送信する。
【0016】
本願の第8発明は、第7発明の汚染防止システムであって、前記汚染防止装置は、前記凹部内に配置された光学センサをさらに有し、前記光学センサは、前記凹部内に取り付けられた前記液体搬送管の内部の光学特性の変化を検知し、前記制御部は、前記光学センサの検知した前記光学特性の変化から洗浄タイミングを判定し、かつ、記憶するとともに、前記無線通信部を介して外部のアプリケーションに対して、前記照射部による照射処理の履歴と、前記洗浄タイミングとを送信する。
【0017】
本願の第9発明は、第8発明の汚染防止システムであって、複数の前記汚染防止装置と、少なくとも1つの前記汚染防止装置とそれぞれ無線通信を行う、複数の前記携帯端末と、前記携帯端末のそれぞれとネットワークを介して接続される管理コンピュータと、
を有し、前記管理コンピュータは、前記携帯端末ごとの前記履歴および前記洗浄タイミングを取得する。
【発明の効果】
【0018】
本願の第1発明から第9発明によれば、コントローラの役割を担う制御部と、磁波の照射を行う照射部とが一体に構成されている。これにより、汚染防止装置が小型化される。したがって、汚染防止装置1の配置自由度が高くなる。さらに、汚染防止装置が、無線通信によって外部と通信できることにより、汚染防止装置と外部との優先接続が電源のみとなる。よって、汚染防止装置の配置自由度がより高くなる。
【0019】
特に、本願の第2発明によれば、給電電圧の小さなUSB給電ポートから給電することにより、汚染防止装置がACDCコンバータを有する必要が無い。したがって、給電アダプタが100V交流電力用のACアダプタである場合と比べて、汚染防止装置の体格を小さくできる。
【0020】
特に、本願の第3発明によれば、洗浄用スポンジや洗浄水の通過タイミングを検出できる。これにより、洗浄処理を行ったタイミングを検出できる。
【0021】
特に、本願の第5発明によれば、汚染防止装置の外部のアプリケーションによって、汚染防止処理および洗浄処理の管理を行うことができる。これにより、液体搬送管の適切な管理を簡便に行うことができる。複数の液体搬送管を同時に管理する場合には、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る汚染防止システムの構成を概念的に示した図である。
【
図2】第1実施形態に係る汚染防止装置をビールサーバに取り付けた様子を示した概略図である。
【
図3】第1実施形態に係る汚染防止装置の斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る汚染防止装置の斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る汚染防止装置の斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る汚染防止装置の制御ブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る汚染防止装置において駆動電流を構成する高電流波の波形の一例を示した図である。
【
図8】第1実施形態に係る汚染防止装置において駆動電流を構成する低電流波の波形の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<1.第1実施形態>
<1-1.汚染防止システムの構成>
本発明の第1実施形態に係る汚染防止システム9について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、汚染防止システム9の構成を概念的に示した図である。
【0025】
汚染防止システム9は、複数の汚染防止装置1について管理を行うためのシステムである。汚染防止システム9は、複数の汚染防止装置1と、複数の携帯端末91と、管理コンピュータ92と、複数の汚染防止装置1とを有する。
【0026】
この汚染防止システム9では、複数のユーザがそれぞれ有する汚染防止装置1を、ユーザが個々に管理を行うとともに、システム管理者が複数のユーザが有する複数の汚染防止装置1の管理状況を管理コンピュータ92によって把握することができる。
【0027】
汚染防止装置1は、それぞれ、液体搬送管に取り付けられ、当該液体搬送管の内部における汚染物質の堆積を抑制する。汚染防止装置1の詳細な構成および取り付け態様については、後述する。
【0028】
図1に示すように、携帯端末91には、例えば、スマートホン91a,91bやタブレット端末91cが用いられる。なお、携帯端末91として、汚染防止システム専用の端末や、パーソナルコンピュータ等のその他の種類の端末機器が用いられてもよい。
【0029】
携帯端末91は、それぞれ、1つまたは複数の汚染防止装置1と無線通信によって接続される。
図1の例では、スマートホン91aは、1つの汚染防止装置1と無線通信によって接続される。スマートホン91bは、3つの汚染防止装置1と無線通信によって接続される。また、タブレット端末91cは、4つの汚染防止装置1と無線通信によって接続される。
【0030】
本実施形態において、携帯端末91と汚染防止装置1との無線通信手段として、ブルートゥース(登録商標)通信が用いられる。具体的には、当該無線通信手段として、Bluetooth Low Energy通信(BLE通信)が用いられる。Bluetooth Low Energy通信では、従来のクラシックBluetoothと呼ばれるBluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rateと比較して、省電力かつ省コストで通信や実装を行うことができる。なお、携帯端末91と汚染防止装置1との無線通信手段として、従来のクラシックBluetoothや、WiFi通信が用いられてもよい。
【0031】
携帯端末91には、端末用アプリケーションAがインストールされている。ユーザは、携帯端末91の端末用アプリケーションAから、無線通信手段を介して汚染防止装置1へと指令信号等の信号を送信可能である。また、携帯端末91には、無線通信手段を介して、汚染防止装置1から、汚染防止履歴および洗浄履歴等の使用状況を含むデータが送信される。汚染防止履歴および洗浄履歴等のデータの種類の詳細については、後述する。
【0032】
ユーザは、端末用アプリケーションAを用いて、当該データから汚染防止装置1において行われた処理についての管理を行うことができる。例えば、ユーザは、端末用アプリケーションAを用いて、汚染防止履歴および洗浄履歴を参照したり、ユーザが汚染防止装置1毎の汚染防止処理の条件を変更したりすることができる。また、端末用アプリケーションAが、ユーザに対して警告等を行う構成としてもよい。
【0033】
管理コンピュータ92は、複数の携帯端末91のそれぞれと、インターネット900等のネットワークを介して接続される。管理コンピュータ92には、管理用プログラムPがインストールされている。管理用プログラムPには、接続された携帯端末91の端末用アプリケーションAから汚染防止履歴および洗浄履歴等のデータが送信される。これにより、管理コンピュータ92において、各汚染防止装置1における液体搬送管の清浄管理を行うことができる。
【0034】
<1-2.汚染防止装置の構成>
次に、汚染防止装置1の構成について、
図2~
図6を参照しつつ説明する。
図2は、汚染防止装置1をビールサーバに取り付けた様子を示した概略図である。
図3は、汚染防止装置1を表側から見た斜視図である。
図4および
図5は、汚染防止装置1を裏側から見た斜視図である。ここで、汚染防止装置1のうち、LED表示部51が設けられた面を表側と称する。
図6は、汚染防止装置1の制御ブロック図である。
【0035】
なお、
図3および
図5は、蓋部22が閉められた状態を示しており、
図5は、蓋部22が空けられた状態を示している。また、
図5には、汚染防止装置1が取り付けられる液体搬送管81,82が図示されている。
【0036】
図2に示すように、汚染防止装置1は、ビールサーバ80に連結される液体搬送管81,82に取り付けられる。ビールサーバ80は、ビール樽83,84から液体搬送管81,82を介して供給されたビールを吐出ヘッド801,802から吐出する装置である。本実施形態のビールサーバ80は、いわゆる瞬冷式ビールサーバである。
【0037】
ビールサーバ80の内部には、液体搬送管81,82と吐出ヘッド801,802とをそれぞれ連結する配管と、当該配管内を流れるビールを冷却する冷却構造とが収容されている。ビールサーバ80の使用時には、冷却構造によって、配管内を流れるビールが、所定の温度(例えば4℃)に冷却される。
【0038】
液体搬送管81,82はそれぞれ、ビール樽83,84の底部付近と連通接続される。一方、炭酸ガスボンベ85から、ビール樽83の上部の空間へ炭酸ガスが供給される。これにより、ビール樽,84内の圧力は常に大気圧よりも大きい陽圧となっている。このため、吐出ヘッド801,802に設けられたコックをひねって吐出ヘッド801,802に設けられたバルブを開放すると、ビール樽83,84内に貯留されたビールが、液体搬送管81,82およびビールサーバ80内を通過し、吐出ヘッド801,802から吐出される。
【0039】
図3~
図6に示すように、汚染防止装置1は、制御部10、ケーシング20、磁界照射部30、洗浄検知部40、報知部50、無線通信部60、および電源入力部70を有する。
【0040】
制御部10は、汚染防止装置1の各部を制御する。制御部10は、例えば、マイクロコントローラによって構成される。制御部10は、予め記憶されたプログラムに従って、磁界照射部30、洗浄検知部40、報知部50および無線通信部60を制御する。制御部10の役割については、後述する。
【0041】
ケーシング20は、本体部21と、蓋部22とを有する。ケーシング20は、たとえば、ポリカーボネート(PC)、ABS、ポリプロピレン(PP)、シリコン樹脂、ウレタン等の樹脂で形成される。ケーシング20は、全体として略直方体形状である。
【0042】
本体部21は、内部に制御部10、磁界照射部30および無線通信部60を収容する筐体である。本体部21は、略直方体形状である。本体部21には、内部への水滴の浸入を防止するための防水加工が施されている。蓋部22は、板状の部材である。蓋部22は、本体部21の裏側に開閉可能に取り付けられる。
【0043】
図3に示すように、本体部21の表側には、報知部50が設けられている。また、
図4に示すように、本体部21の裏側には、2つの凹部211,212が設けられている。凹部211,212はそれぞれ、本体部21の長手方向に沿って伸びる溝である。汚染防止装置1の使用時には、凹部211,212内にそれぞれ液体搬送管81,82が取り付けられる。具体的には、凹部211,212内にそれぞれ液体搬送管81,82の一部が収容される。そして、蓋部22が閉じられることによって液体搬送管81,82が裏側から蓋部22に押さえられる。これによって、液体搬送管81,82が固定される。
【0044】
以下では、2つの凹部211,212の一方を第1凹部211、他方を第2凹部212と称する。また、第1凹部211に取り付けられる液体搬送管を第1液体搬送管81、第2凹部212に取り付けられる液体搬送管を第2液体搬送管82と称する。
【0045】
磁界照射部30は、制御部10からの指令に従って、凹部211,212に対して磁波を照射する。すなわち、磁界照射部30は、凹部211,212に取り付けられた液体搬送管81,82に対して交流磁波を照射する。
【0046】
磁界照射部30は、電磁波を発生させるコイル31を有する。制御部10を介してコイル31に駆動電流が供給されると、コイル31は、駆動電流の波形に応じた電磁波を発生させる。
【0047】
洗浄検知部40は、第1光学センサ41と、第2光学センサ42とを有する。第1光学センサ41は、第1凹部211内に取り付けられた第1発光部411および第1受光部412を有する。また、第2光学センサ42は、第2凹部212内に取り付けられた第2発光部421および第2受光部422を有する。発光部411,421には、例えば、LED光源が用いられる。
【0048】
本実施形態の第1光学センサ41では、第1発光部411と第1受光部412とは、第1液体搬送管81を挟んだ反対側に配置されている。このため、第1受光部412は、第1発光部411から出射され、第1液体搬送管81内を透過した光を受光する。
【0049】
なお、第1発光部411と第1受光部412とがほぼ同じ位置に配置されていてもよい。その場合、第1受光部412は、第1発光部411から出射され、第1液体搬送管81において反射された光を受光する。
【0050】
いずれの場合であっても、第1受光部が受光した光の強度や波長によって、第1液体搬送管81の内部における光の透過・反射状態を検知することができる。第2光学センサ42についても同様である。
【0051】
報知部50は、音声出力および視覚的な表示の少なくとも一方を行う。報知部50は、LED表示部51と、報知ブザー52とを有する。LED表示部51は、ケーシング20の本体部21の表側に備えられている。報知ブザー52は、
図3に示すように、ケーシング20の内部に収容されている。なお、報知ブザー52のスピーカー部が、ケーシング20の表面に露出していてもよい。
【0052】
LED表示部51は、運転表示LED511、第1警告表示LED512、および第2警告表示LED513を有する。運転表示LED511は、汚染防止装置1の駆動に関する表示を行う緑色のLEDである。第1警告表示LED512は、第1液体搬送管81に対する警告に関する表示を行う赤色のLEDである。第2警告表示LED513は、第2液体搬送管82に対する警告に関する表示を行う赤色のLEDである。報知ブザー52は、制御部10からの音声報知指令に従って警告音を発する。
【0053】
無線通信部60は、制御部10と、携帯端末91とを無線通信によって接続する。本実施形態の無線通信部60では、上述の通り、Bluetooth Low Energy通信が行われる。このとき、携帯端末91がセントラル、1つまたは複数の汚染防止装置1がペリフェラルとして通信が行われる。
【0054】
Bluetooth Low Energy通信を採用することにより、従来のクラシックBluetoothや、WiFi通信と比べて、汚染防止装置1における消費電力を低減することができる。
【0055】
電源入力部70は、
図6に示すように、汚染防止装置1に電力を供給するためのアダプタ71および配線72を有する。
図3~
図5には、電源入力部70のうち、配線72の一部が表示されている。
【0056】
本実施形態のアダプタ71は、USB給電ポートである。このため、電源入力部70には、低電圧(例えば5V)の直流電流が入力される。このように、給電電圧の小さなUSB給電ポートから給電することにより、電源入力部70が、ACDCコンバータを有する必要が無い。したがって、アダプタ71が100V交流電力用のACアダプタである場合と比べて、電源入力部70および汚染防止装置1の体格を小さくできる。
【0057】
なお、電源入力部70は、配線72を有していなくてもよい。アダプタ71がケーシング20の表面に露出して固定されていてもよい。
【0058】
制御部10は、予め記憶されたプログラムによって実現される照射制御部11と、洗浄判定部12と、報知制御部13を有する。また、制御部10は、メモリ等の記憶部100を有する。
【0059】
照射制御部11は、コイル31に対して駆動電流を供給する。本実施形態において、コイル31の駆動電流は、高電流波Hと低電流波Lとを合成した電流である。
図7は、駆動電流を構成する高電流波Hの波形の一例を示した図である。
図8は、駆動電流を構成する低電流波Lの波形の一例を示した図である。
図7および
図8において、横軸は時間、縦軸は電圧値を示している。なお、
図7と
図8の横軸のスケールは異なる。高電流波Hは、ON期間において5V、25mAとなる矩形波である。また、低電流波Lは、ON期間において5V、12.5mAとなる矩形波である。
【0060】
図7に示すように、高電流波Hは、ごく短いON期間Th1と、ランダムに変調されるOFF期間Th2とを繰り返す。本実施形態において、高電流波HのON期間Th1は、250μsであり、OFF期間Th2は、300ms,350ms,400ms,450ms,500ms,550ms,600msの7種類からランダムで選択される。このように、OFF期間Th2が変動することにより、高電流波Hの周期Thも変動する。高電流波Hのデューティは1%未満である。なお、
図7において、ON期間Th1の長さがOFF期間Th2に対して誇張して大きく示されている。
【0061】
また、
図8に示すように、低電流波Lは、ON期間Tl1とOFF期間Tl2とが同じである。すなわち、ON期間Tl1とOFF期間Tl2とはいずれも、低電流波Lの周期Tlの1/2である。したがって、低電流はLのデューティは50%である。本実施形態において、低電流波Lの周期Tlは、410μs,440μs,470μs,500μs,530μs,560μs,590μsの7種類からランダムで選択される。
【0062】
このような駆動電流が供給されると、コイル31には、駆動電流に応じた交流磁波が発生する。これにより、磁界照射部30は、凹部211,212に取り付けられた液体搬送管81,82に対して当該交流磁波を照射する。
【0063】
洗浄判定部12は、洗浄検知部40からの検知信号に基づいて、液体搬送管81,82の洗浄状態を判断する。具体的には、第1光学センサ41の受光部412および第2光学センサ42の受光部422において受光した光量や周波数帯域に基づいて、液体搬送管81,82に行われた洗浄処理を判断する。
【0064】
本実施形態の洗浄判定部12は、受光部412,422の受光した光量に基づいて、洗浄スポンジの通過タイミング(以下では「洗浄タイミング」と称する)およびスポンジ通過時間を判断する。例えば、第1液体搬送管81内をスポンジが通過すると、スポンジが通過している期間、第1受光部412が受光する光の光量が著しく低下する。洗浄判定部12は、この光量が著しく低下した期間をスポンジ通過期間と判断する。そして、洗浄判定部12は、このように判定したスポンジの通過タイミングおよび通過時間長さを、第1液体搬送管81および第2液体搬送管82のそれぞれについて、記憶部100に記憶する。
【0065】
なお、洗浄判定部12は、受光部412,422が受光した光の光量によって洗浄処理が行われたか否かを判断するものに限られない。例えば、洗浄水による洗浄を行う場合に、受光部412,422が色相を判別可能な光学センサであって、液体搬送管81,82の内部に充填された液体がビール等の飲料である場合と、洗浄水である場合との色相の変化を検知および判定する構成であってもよい。
【0066】
報知制御部13は、ユーザに対して汚染防止装置1の駆動状況や警告を報知するために、報知部50を制御する。本実施形態における報知制御部13の動作について、その一例を以下に述べる。
【0067】
報知制御部13は、まず、照射制御部11がコイル31に対して正常に駆動電流を供給している間、運転表示LED511を点灯させる。
【0068】
報知制御部13は、洗浄判定部12の判定した第1液体搬送管81の最後の洗浄タイミングから所定の期間が経過すると、第1警告表示LED512を点灯する。同様に、報知制御部13は、洗浄判定部12の判定した第2液体搬送管82の最後の洗浄タイミングから所定の期間が経過すると、第2警告表示LED513を点灯する。なお、経過期間に応じて各警告表示LED512,513の点灯および点滅を切り替えてもよい。
【0069】
また、報知制御部13は、洗浄判定部12の判定した第1液体搬送管81の最後の洗浄タイミングまたは第2液体搬送管82の最後の洗浄タイミングから所定の期間が経過すると、報知ブザー52を鳴らす。
【0070】
例えば、報知制御部13は、洗浄判定部12の判定した第1液体搬送管81の最後の洗浄タイミングから5日が経過すると、第1警告表示LED512を点灯させ、洗浄判定部12の判定した第2液体搬送管82の最後の洗浄タイミングから5日が経過すると、第2警告表示LED513を点灯させる。
【0071】
そして、液体搬送管81,82のいずれかについて、最後の洗浄タイミングから1週間が経過した場合、1週間が経過した方の警告表示LED512,513を点滅させるとともに、報知ブザー52を鳴らす。
【0072】
このように、この汚染防止装置1では、コントローラの役割を担う制御部10と、磁波の照射を行う磁界照射部30とが一体に構成されている。これにより、汚染防止装置1が小型化される。したがって、汚染防止装置1の配置自由度が高くなる。さらに、汚染防止装置1が、無線通信によって外部の端末用アプリケーションAと通信できることにより、汚染防止装置1と外部との優先接続が電源のみとなる。よって、汚染防止装置1の配置自由度がより高くなる。
【0073】
<1-3.端末用アプリケーションにおける管理>
続いて、端末用アプリケーションAにおける管理について説明する。端末用アプリケーションAには、無線通信を介して汚染防止装置1から各種のデータが送られてくる。具体的には、端末用アプリケーションAには、汚染防止装置1ごとの汚染防止履歴および洗浄履歴が送信される。
【0074】
ここで、汚染防止履歴には、照射制御部11がコイル31に供給した駆動電流の周波数(周期)、供給開始時間、供給期間等の駆動電流に関する情報が含まれる。また、洗浄履歴には、洗浄判定部12が判定した洗浄タイミングおよびスポンジ通過期間が含まれる。
【0075】
端末用アプリケーションAは、無線通信によって接続される汚染防止装置1ごとに、汚染防止履歴および洗浄履歴を保存し、解析する。端末用アプリケーションAにおいて、汚染防止装置1から送信された汚染防止履歴および洗浄履歴そのものをユーザが閲覧可能であってもよい。また、端末用アプリケーションAが、スポンジ通過期間からスポンジの通過速度を算出した上でユーザに閲覧可能としてもよい。
【0076】
また、各汚染防止装置1の報知部50だけでなく、端末用アプリケーションAによって洗浄タイミングから所定の期間が経過した旨の警告を行ってもよい。
【0077】
このように、汚染防止装置1の外部の端末用アプリケーションAによって、汚染防止処理および洗浄処理の管理を行うことができる。これにより、液体搬送管の適切な管理を簡便に行うことができる。複数の液体搬送管を同時に管理する場合には、特に有用である。
【0078】
<1-4.管理コンピュータにおける管理>
そして、管理コンピュータ92における管理について説明する。管理コンピュータ92は、例えば、飲料メーカや、汚染防止装置1および端末用アプリケーションAの管理会社等に備えられる。管理コンピュータ92は、インターネット900を介して、携帯端末91の端末用アプリケーションAから汚染防止履歴および洗浄履歴等の使用状況を含むデータを受信する。
【0079】
管理コンピュータ92の管理用プログラムPは、汚染防止装置1ごとの汚染防止履歴や洗浄履歴をまとめて管理する。管理用プログラムPには、予め、汚染防止装置1ごとのユーザ情報が入力されている。これにより、管理コンピュータ92の管理者は、各ユーザがどのように汚染防止装置1を使用し、適切に液体搬送管の管理を行っているか否かを一括管理することができる。
【0080】
なお、管理コンピュータ92に集積されるデータは、管理用プログラムPにおける液体搬送管の清浄管理以外に用いられてもよい。例えば、端末用アプリケーションAを介して、管理コンピュータ92側へ、ビールの消費量や、ビール樽の管理状況等のその他のデータが送られてもよい。そして、これらのデータを活用して、ビール樽の販売予測サービスや、その他のサービスの提供を行ってもよい。
【0081】
また、本実施形態では、管理コンピュータ92が汚染防止履歴を含むデータを受信および記録しているが、本発明はこれに限られない。例えば、管理コンピュータ92とは別のコンピュータやクラウドサーバが、データを記録する記録部を有し、かつ、管理用プログラムPの実行を行ってもよい。その場合、端末用アプリケーションAは、汚染防止履歴を含むデータを、ネットワークを介して、当該コンピュータまたはクラウドサーバに送信する。そして、管理会社等は、管理コンピュータ92を用いて、ネットワークを介して当該コンピュータまたはクラウドサーバにアクセスし、管理用プログラムPの実行させる操作を行う。なお、管理コンピュータ92と、当該コンピュータまたはクラウドサーバとにおいて、管理用プログラムPの機能を分散処理してもよい。
【0082】
<2.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0083】
上記の実施形態において、1つの汚染防止装置に装着および汚染防止処理を行うことができる液体搬送管の数は2つであったが、本発明はこれに限られない。1つの汚染防止装置に装着し、汚染防止処理を行うことができる液体搬送管は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 汚染防止装置
9 汚染防止システム
10 制御部
20 ケーシング
30 磁界照射部
41,42 光学センサ
50 報知部
60 無線通信部
70 電源入力部
81,82 液体搬送管
91 携帯端末
92 管理コンピュータ
211,212 凹部
A 端末用アプリケーション
P 管理用プログラム